~第3視点~「うん、さすが若いね。もう回復が始まっている。でも、暫くは魔法が使えないからね」「はい。ありがとうございます」ここはアースラの医務室。リンカーコアを奪われたなのはだが、どうやらしばらくすれば回復するらしい。(仙豆を使う必要は無くなったな)悟空はそう思い、仙豆の袋をしまう。「なのは…」「フェイトちゃん…」「ごめんね…せっかくの再会が…」「ううん。フェイトちゃんこそ大丈夫?」互いに心配しあう言葉をかける。「なのは、1つ聞かせろ」「なに?悟空くん」悟空から質問をされる理由が思い当たらないなのは。「身体もロクに出来てない癖に、何故あんな大出力魔法を使った?」「そ、それは…」「訓練は魔法中心で、基礎体力は殆ど鍛えてないようだな。それにあの場合、他の方法も考えられる余地はあった。それでも、スターライトブレイカーを強行した。何故だ?」「だって…、わたしも何とかしたかったから…」なのはの言葉に軽く溜息を吐く悟空。「…もういい。どうせ言ったところで聞きはしないだろう。この一連の事件が終わったら、徹底的に鍛えてやるからそう思え。お前の自己犠牲はある意味美徳だが、逆に鋭すぎる諸刃の剣だ。基礎も出来てないうちから、やるもんじゃない」厳しい悟空の言葉に、フェイトは止めようとするが…、「戦いは常に命のやり取りだ。子どもだからという言いわけは通用しない。それに、この間の戦いは見たろ?結果的にプレシアは助かったが、本来なら死んでいた。話し合いの通用しない奴だっているんだ。それに、話し合う余地すら与えてくれない奴もいる」「「…」」悟空は続ける。なのはの性格ならば、反論しているはずだが、【前例】を見てしまっている以上、すぐには言い返せなかった。「オレの本来の年齢は知ってるな?オレの妻と子供も、理不尽に殺されている」そういって、指輪を見せる悟空。なのはとフェイトは、何と言っていいかわからなかった。「オレも小さい頃から戦っていたから、お前らに戦うなとは言えない。でも、戦うならば、しっかり修行しろ。心も体もな」それだけ言うとユーノを探すと言って、悟空は医務室を出た。残されたなのはとフェイト。なのはは立ちあがろうとするが、よろめいてしまい、フェイトに抱えられる。「なのは…」「フェイトちゃん…」互いに頬を染めながら抱き合う二人。なのはの気が乱れたのを不審に思った悟空が、戻ってくると、自販機で買って飲んでいたコーヒーを吹きかけたという。「あ…あいつらそういう関係だったのか!?」いやいや、あの2人はガキだ。いや、ミッド人は早くから大人扱いされるからもしかしたら…。「やめよ…、あほらし」そこで思考を打ち切り、ユーノの気を頼りに彼の元へ向かった。「あ、悟空さん」「リンディとエイミィか」ユーノの所に向かう途中で、遭遇した3人。今回の事件の担当は、アースラスタッフに決まったらしい。「ところで悟空くん…、襲撃者の一人の、隻腕の人なんだけど」リンディが悟空に尋ねる。「ああ、サイヤ人だな」あっさり答える悟空。「あの人、孫悟飯さんって言ったわね?家族かしら」再び質問をするリンディだが、その回答は彼女の予想斜め上を行っていた。「オレのひいひいひいじいちゃんだ」「「!!?」」驚く2人を尻目に悟空は補足する。「平行世界から来たのか、時間を越えてきたのかはわからん。…まあ、恐らくその両方だろうが」そう言って、悟空はユーノの所に行くと言い残し、歩みを進めた。(予言の隻腕の戦士は、彼でほぼ確定ね。何とか説得できればいいんだけど)リンディは、悟空を見送りながらそう考えていた。途中、悟空は何故かおなかが痛くなり、トイレにこもっていた。その時、八神家では悟飯がシャマルの料理を食していた(前話のおまけ参照)。そして、20分後。「…何かヘンなシンパシーを感じたような気がしたが、気のせいだと思いたいな」そう言いつつ、悟空はデバイスの状態を見ているユーノ達を見つけた。「あ、悟空。おなか大丈夫?」「ヘンなシンパシーを感じたような気がしたが、嫌な予感がした」「そ…そう…」ユーノはそれ以上聞かない方がいいと、本能的に悟っていた。悟空がトイレに行っている間に、なのは達も来ていたようだ。「ベルカ式?」「ああ、なのは達にはもう説明したが、簡単に言うと、なのは達の使う魔法がミッド式、あの騎士たちのように、対人戦闘に特化した形態がベルカ式」「ベルカ式の優れた術者は、騎士と呼ばれる」ユーノの説明に、クロノが付け加える。「悟空もどっちかと言ったらベルカ式だね」「バカを言うな」クロノの言葉を否定する悟空。「オレは魔法が使えないから、どっちにも該当せんだろう」「それもそうか」そこで会話が終わり、クロノがなのはとフェイト、悟空に視線を向ける。「3人ともちょっといいか?」「?」とある一室「グレアム提督」「クロノか」そこにいたのは初老の男性、ギル・グレアムだった。「まあ、3人とも、楽にしていいよ」そう言われ、席に座るなのはとフェイトと悟空。「フェイト君、キミの人がらは聞いている。とても優しい子だと」「はい…」そう言われ、若干頬に茜が差すフェイト。悟空は、特に何も言わない。「フェイト君、保護観察と言っても、形だけだよ。約束して欲しい事は1つだけだ。自分を信じてくれる友達は、絶対に裏切ってはいけない。それさえ出来れば、私はキミの行動に何も制限しないと約束しよう。…できるね?」「…はい!」「うむ。いい返事だ」そう言って、グレアムはなのはに視線を移す。「なのは君は日本人なんだね。いやあ、懐かしいな。日本の風景は」そして、なのはは、グレアムがイギリス人と聞いて、大層驚いた。「魔法の出会い方まで私とそっくりだ。地球には稀に、魔法資質を持った者がいるんだよ」その事に関心を抱くなのは。グレアムは悟空に視線を向ける。「キミは次元漂流者なんだね。リンディからキミの人がらは聞いている。とても思いやりのある子だと…いや、キミは既に40近い年齢だったね。俄かには信じられないが」「リンディから聞いていましたか。フェイトは自己主張に乏しいし、なのはとクロノは融通が利きませんが。…3人とも、もうちょっと我儘言ってもよさそうな気もするんですが、どうでしょう?」悟空から出た言葉に、振られた3人は顔を真っ赤にする。「ははは!そうだね。子どものうちにしか出来ない事もあるしね。その通りだ」「て、提督!」クロノは恥ずかしいようだ。「…それで、キミの世界も探してあげる事は出来るが…」「この世界でやる事が出来た。それを成すまでは帰りません」「そうか…」そう言って、話は終わりになり、退室しようとするが…。「フェイト、なのは、オレはこの人とサシで話がしたい。先に行ってな」そう言って、フェイト達を退室させる。フェイトが少し不満そうだったが。「それで…なにかな?」グレアムが悟空に尋ねる。「リンディから、予言とやらについては聞かされた。オレがその一人らしいですね?」「ああ。私も聞いているよ…」「…で?あなたは闇の書を主ごと凍結させて、どこかの世界に閉じ込める気ですか?」「!?!?」グレアムは驚愕に目を見開く。まさか、情報が漏れた!?そう考えていると。「プレシアの資料には、闇の書に関する事も書かれていたし、半年前に、アースラの端末でデータを除いていたときに見ました。…八神はやてに生活支援をしていると」「…キミは」グレアムが何者かと尋ねるが、悟空はそれを無視し、「予言については知っているから、説明は省くが、呪われし書を喰らいつくす、神々を殺した究極の殺戮…。アレは、魔導師ごときで、相手に出来るシロモノではないです」「!?」「予言が成就したとして、もし、オレや他の2人が殺されたら、全宇宙はパァだ。そうなれば他の次元も危うい」「…キミはあれが何なのか知っているのか?」グレアムは悟空に問いただす。「…オレも意図的に記憶を封印されたが、少しだけ思いだした。【夜天の書】のマスターが、オレの妻だったんだ」「…今、闇の書の本来の名前を」「それに寄生した【何か】は、まだ思い出せない…が、惑星破壊レベルの力では済まされないでしょうね」「…」グレアムは何かを考え込む。「オレの言いたい事は以上。後は勝手にしてください」「…」そう言って悟空は退室した。残されたグレアムは、これから自分がどうすべきか悩んでいた。~おまけ~「ん?リニスか?」「あ、悟空さん」そこには妙齢の猫耳と尻尾の生えた女性、リニスがいた。「ナニを持ってるんだ?」「転校する小学校の征服ですよ。フェイトと、アリシアと、悟空さんの」それを聞いた悟空は、石になって固まっていた。~おまけその2~ぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽり…。「ザフィーラ、身体をかく音が気になるんだが」そう言うシグナムだが、「いや、シャマルの料理を毒見させられてから、無性に身体がかゆくなってな」ぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽり…。地味にキツイのだった。今日も男どもの苦悩が続く。一方でシャマルは…「え~っと…、カレーにはワサビだったかしら?」「違う!」マリアに否定されるのだった。~あとがき~次回は引っ越しです。自信はそれほどありませんが、頑張ります。アリサとすずかが本格的に出てきますね…。悟空のおなかが痛くなるネタは、私自身、よくおなか痛くするので…(汗それと、何人かにご指摘されましたが、冒頭にも記しましたが、キャラの性格その他が変わっている点は否定はしません。まあ、何に対しても、どう解釈するかは人それぞれですから。ではみなさん、次回をお楽しみに。それと、新型インフルエンザにも気を付けてください。