☆Side ??????★
「これが我々の立てた、計画の全てだよ」
ギル・グレアム氏はアタシにプロジェクト・デュランダルの全て、予備計画、今後の方針なども含めて全部説明してくれた。尤もアタシの機密レベルを越えすぎる情報は省いている筈だけどね。
まあ、そんな細かい、つまんない事はどうでも良い。アタシにとって大事なことはただ1つ。だからアタシはそれを問いかける。
「貴方にとって、アタシは只の駒だったのですか?」
プロジェクト・デュランダル・予備計画。アタシそのもの。みんなにとってのアタシって?
「! アンタ」
「待ちたまえ」
血相を変えるリーゼ達をとめ、あの人はアタシの事をジッと見詰める。だからアタシも見詰め返す。
「最初はただのつかえる駒、確かにそんな風に思っていたよ」
……そう
「でも今は、娘として心から愛している」
……そう。
……そうなの。
なら、いい。
だってそうじゃない。親が子供になにか期待するのは、極当たり前のことなのさッ
だからアタシは父さんに抱きついた。返してくれる抱擁。タバコの匂いと意外と小さい、弱々しい背中。だからアタシは……
☆Side Alicia★
「と、いう夢をみたのさッ」
≪夢ではないです。昨晩実際にあったことです≫
リニスったら分かってないのさッ。
「昨日は通信だったじゃない。父さんとハグ出来た筈がないのさッ」
≪ああ、大事なのは其処ですか?≫
勿論なのさッ。ここ1ヶ月ほど直で父さんと会ってない。父さん成分が不足するよ。
ふん、ファザコンだと笑えば笑え。父さんはアタシんだい、母さ……あの女なんかには渡すもんか。
「ねっ、リニス」
≪ニャー≫
……あれ?
「……リニス、壊れた?」
昨日無茶させすぎたかな? プロトタイプでカスタム版で高級品なリニスは実は壊れやすいんだ。メンテ出さなきゃダメかな?
≪I am sorry, in the plot which was being planned at the beginning, I was to tell a joke here. ≫
……、おい。
「良くわかんないんだけどさ、……あんまりメタな事言うと、ギャグデバイスになるよ」
≪申し訳ありません≫
二人して思う存分ボケまくったところで、さてどうしよう?
アタシが居るのはアースラの一室。昨日寝た時には隣にフェイトが居たんだけど、今は居ない。となるとちょっと困るのさッ。
アタシの左手は壊れたまんま。替わりは届いていない。
アタシの右手は怪我したまんま。肩からつるして固定している。
なもんで取りあえず着替えが出来ない。トイレにだって行けない。
「リニス、フェイトの居場所分からないかな?」
≪済みません、現在艦内には居ない模様です≫
「居ないって?」
≪朝早くなのはが来て、どこか連れて行きました?≫
フェイトとなのはが外出? もしかしてシェマルにお話? アタシも連れて行ってくれればいいのに。
≪アナタは昨晩遅かったので、寝かしておいてあげて、との事です≫
納得。でも困った。着替えとかフェイトに頼もうと思ったのに。
≪マリヤは自室にいる模様です≫
……マリヤが居たらなんだって言うんだ。確かに着替えとかなら手伝って貰うのもありだよ。
だけど、親友とは言え男の子のマリヤに、トイレの手伝い頼めって? 具体的にはパンツ下ろして貰うとか?
無理無理、10年、いや5年は早いよ。イロイロな意味で。
リンディ姉さんとかエイミィとかは忙しいだろうし。仕方ない、医務室で頼もう。とか考えていると、
「ん?」
ドアがゆっくりと開いていく。
「え~と、アリシアさんの部屋、ここでいいんよね」
その隙間から顔を出したのは一匹の子狸、ではなくて『闇の書』の主。
確か名前はヤガミ…………何だっけ? あ、思い出した。
「うん、えっと八神ライトちゃんだよね」
「ちがぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!、誰がそんな新世界の神のパチモンやね。はやて、や、あたしは八神はやて」
「をを、少し間違えちゃったのさッ」
「少しって、1文字も合ってないやないか」
「と、言われてもね。アタシって自己紹介されてないし」
というと八神ラ……はやては首を傾げた。覚えてないかな? この子やプログラム達がクロノと話してたとき、アタシはマリヤと別件だったのだよ。
しかし何故ライトって名が出て……、ああ先週なのはに借りた、この世界のコミックにあった名だ。納得。
「で、はやては朝早くなんか用事?」
「あ、そうや」
八神はやては遠慮を無くしたのか、ドアをグッと開け、部屋に入ってくる。
て、車椅子? 昨日この娘、飛んでなかったっけ? そういえば『闇の書』の主の個人情報、父さんから聞いてないや。
「家の子達が居ないんや。アリシアさん、なんか知らへん?」
家の子? 誰それ? なんでアタシに聞くの?
「ほら、守護騎士のみんなや」
守護騎士? はあ? この娘にとってあのプログラム達は『家の子』なるの。ふぅん。
まあ、それは良いとして、どういうこと? ……さて、反応どうするか。いずれにせよ。ここは、
「やるな、居ないって、もしかして脱走?」
「そんなことない」八神はやては自信満々。「家の子があたしを置いて出て行くわけ無いわ」
なら別の理由が居るんだけど。
兎に角、フェイトとなのはが居なくて、そんでもって守護騎士も居ない。これってやっぱり『お話』かな。
でも、なんか気になるな。クロノの目もあるはずだから、流石に勝手は出来ないはず。
うん、服はBJで何とかなる。念話でマリヤも呼んで、さっさとみんなを探しに行こう。
☆Side Fate★
詠唱。
沈黙。
念じよ。
わたし達の前には一人の女の人、いや一冊の魔導書
その名は『夜天の魔導書』、リインフォース。
わたしとなのはは彼女を見取ること事、書を閉じることをシグナム達に頼まれた。
わたし達で良いのかと言うと、わたし達だから頼むと頭を下げられた。誰かがやらなきゃならないこと。だからわたしは引き受けた。
シグナム達に自分の同胞を消させるのは流石に忍びないし。
最初は姉さんも一緒にやるのかと思ったんだけど、わたし達二人にとのこと。
クロノが言うに、姉さんは色々あって疲れているので休ませたいとのことだった。
確かにそうなんだけど、なんか変だ。
まるで『闇の書』の件から姉さんを遠ざけようとしているような。
変だと言えば姉さんとクロノの距離、空気が今までと違っている。
例えば姉さんは今までクロノの事をクロにぃと呼んでいた。なのに何時の間にかクロノと呼んでいる。
というか、姉さんは微妙にクロノにきつく当たっているような気がする。二人の間になにかあったのだろうか?
……いけない、集中しないと。今はリインフォースを天に還すことだけ考えよう。
でも本当にこれが正しいことなのだろうか。
ヤガミハヤテは、『夜天の魔導書』の主はどう思うのだろう。騎士達はヤガミハヤテを悲しませたくないから、彼女には知らせないという。でもそれは本当に正しいことなのだろうか?
クロノや騎士達の判断はユーノからの『闇の書』の調査結果が元だ。
でも、ジェイルさんと一緒に、別口で調査していた姉さんを外して良いのだろうか?
ならわたしは……
「……てや」
……?
声?
「…ってや!」
女の子の叫び声?
わたしは詠唱を一時止め、声の方に振り返った。
「待ってや!」
其処に居たのは車椅子の女の子。ヤガミハヤテ!
「あかん、やめて。みんなやめて。
破壊なんてしなくていい、あたしがちゃんと押さえる」
と、ヤガミハヤテだけじゃない。車椅子を懸命に押しているのはマリヤだし、その横で辛そうに走っているのは姉さんだ。
BJ姿だけど左腕がない上に、右腕を吊っているのが痛々しい。
……クロノ正解。今の姉さんにこの仕事は無理だ。
「話、聞かん子は嫌いや、あたしがマスターや。話し聞いて」
ヤガミハヤテがリインフォースに縋って、それを受けて、
「取りあえずね、アタシも反対なのさッ」
と姉さん。
「アリシア・グレアム?」
「というか、殺人事件の証拠物件を破棄なんて、みんな何考えてるのさッ」
「殺人……」
「……事件?」
皆の顔、特にヤガミハヤテの顔色が変わるのが分かる。ついでに言うとわたしもだ。
「おい、待て。適当なこといってんじゃねぇ」
「幾ら貴公とは言え、その一言は聞き逃せん」
「そうよ、私たちははやてちゃんの道を汚さないように、ちゃんと手加減してきたわ」
「黙れ、プログラム」
姉さんに掴み掛かるように向かう守護騎士達の前に、マリヤが立ちふさがって。
「みんな、待て」
ミッド式の魔法陣が展開。そこから慌てて姿を現したのはクロノだった。
「シア、いやアリシア・グレアム。今の発言、どういう意味だ」
「どういう意味もこういう意味もないのさッ。今回のプログラム達の蒐集で、人が死んでる」
「てめぇ、まだ……」
「ちょっと待て。僕たちの調査ではそんな事実は確認されていない」
……人が死んでるって、どういうこと。
姉さんはマリヤと顔を見合わせ、肩を竦めた。……なんか仲良いな、ちょっと気に入らないかも。
「そりゃそうなのさッ、クロノ達武装隊は守護騎士を追ってただけなんだし。騎士達を見付けられなかった処は調べてないでしょ」
? どういう…… ああ、アースラが見付けた蒐集事件は全体の一部なんだ。そうか、わたし達の知らない処でも蒐集は行われていた。そこを姉さんが調べた。
でもなんでそれを姉さんが?
疑問が顔に出ていたらしい。姉さんに微かに笑って
「知り合いに頼んで追加調査してもらったのさッ」
「知り合い? まさかグレアム提督か!」
「外れ、ネコさんなのさッ」
「ね!、ネ、ネコムラかぁっ!」
「兎に角データ送るんで、確認して」
リニスが一回光って、クロノの胸元でも光。クロノはS2Uからウィンドを展開して、顔色を変えた。
「これは……」
「ど、どういうことだよ?」
「ふっ」
「えーと」
話の流れが変わったのに気付いたように、ヴィータが呻いた。シグナムは自信ありげに立っているが、シャマルはどこかハラハラしている。ザフィーラはよく分からないけど。
「つまりだ、お前達プログラムは分からないだろうが、生身の生き物はデリケートってことだ」
マリヤ、それじゃよく分からないよ?
「たしかにアンタ達は直接人を殺した訳じゃないよ。だけどね蒐集し終わったらその場に放りっぱなし
BJも維持できないくらい魔力を奪っといてね」
「? どういうことだ」
「人間は暑くても寒くても死ぬの。意識を失って、BJもなくなって、変なところに放り出されたら命に関わるの」
「えっ?」
「?」
「あっ!」
「む」
あっ、そうか。そういうことか。
シャマルは気付いたみたいだけど、所謂熱中症とかいうやつだ。TVでみたことがある。
この夏、わたし達は管理局に居たから知らないけど、この日本という国は暑くて何人も人が亡くなったらしい。
BJなしで暑い屋外に放り出されたら確かに危ないかも。
「調べてもらった限りじゃ、全部で4人。2人は熱中症、1人は凍死。残る1人は……」
姉さんは一瞬わたしを見て、なんだろう?
「現住生物に生きたまま喰われた……」
……ゲンジュウセイブツニイキタママ
--カツカツ、カツカツ--
あの音が蘇る。蟲の牙。わたしを食べようとした蟲。現住生物。
ああああああああああっ
次の瞬間わたしはその場にへたり込んでいた。
「フェイト」
「フェイトちゃん」
姉さんとなのはが駆けつけて、支えてくれて。でも、大丈夫。
そう、大丈夫。あの時姉さんが助けてくれた。そして姉さんはわたしの隣に居る。だから大丈夫。
「大丈夫?」
姉さんは私の目を見て、私はそれを見返して。
「はい」
「ん」
姉さんは手は動かせないのでちょっと頬擦りしてくれて、騎士達の方に向き直りました。
「一応言っておくけどね、アンタ達が殺した魔導師は全員指名手配の賞金首。だから危険地帯単独行動だったり、助けが来なかったのさッ。
この辺は腕の良い弁護士雇えばなんとかなるレベルだって。
でもね、だからといって、裁判でこれ以上突っ込まれる事するのはやめてほしいのさッ」
「だったらどうしろと言うのだ!」
叫んだのは『夜天の魔導書』、リインフォース。
「本音をいうと私もまだ消えたくはない。幼い主と騎士達と時を刻みたい。しかし私の中の防衛プログラムは今この時も修復していっている。私には、私達にはもう時間がないのだ」
「リインフォース」
リインフォースが泣き崩れてヤガミハヤテの膝の上に。あ、危ない……、と、滑り出しそうな車椅子はヴィータが支えてくれた。これで一安心か。でも、
でも、人が泣くのは嫌だな。
病院の母さんを思い出す。普段はボウっとしてるんだけど、時々わあわあ泣き出すんだ。オリジナルのアリシアを思い出して。それが悲しくって寂しくって。
泣くの嫌だ。泣かれるのも嫌いだ。大切な人と別れるのもダメだ。
出来るのだったら、とびっきりの顔で笑いたい。光の中で。
だからわたしはつい漏らしてしまう。
「ねえ、姉さん」
「ん、何?」
「なにか方法はないかな? リインフォースを止めないで、みんなが泣かずにすむ方法」
「あるのさッ」
そうだよね、そんな都合の良い方法が…………、え?
「「あるの!!」かよ!!」
「ねえ、アリシアちゃん」
「アリシア・テスタロッサ?」
縋るように姉さんを見るハヤテと疑わしげなリインフォース。でもそんな絶望に染まったリインフォースの瞳の奥に、微かな希望が見えるのはわたしの気のせいじゃないはずだ。
クロノ、リインフォース。騎士達は無視して姉さんはハヤテを見るとニカっと笑った。
「心外なのさッ、アタシ達がなんの代案も持たずにこんなことを言うと思われてたって」
「えとな」
「まあ、いいのさッ
八神ライトは知らないと思うけど」
「アリシアちゃん、二度ネタ禁止や」
「はいはい」
なんの事だろう? なんか微妙に仲良さそうだけど。
というか、姉さんハヤテに名前呼ばせるの許してるし。なんか妹として不安かな。
「八神はやては知らないと思うけど」
「「うん、うん」」
何故かみんな一緒になって頷く。
「アタシのデバイス、リニスは氷結、凍結・封印用魔法をメインとして使えるように調整されているのさッ」
姉さんの胸元でリニスが自慢げに光ったのは多分気のせいだろう。
「それが昨日なんで使えなかったというと、エネルギーの問題と総質量なのさッ。暴走に向けてある程度制御された大エネルキーと、暴走体のでっかさがネックだった訳」
たしかにそれは言える。
「でも今の『闇の書』はちっちゃい……」
何故か姉さんはリインフォースを見上げ、何故か胸元をみて、
「……ちっちゃい」
「突っ込まないぞ、僕は突っ込まないぞ」
クロノ、結局突っ込んでるよ。
「つまり、ちっちゃくて、防衛プログラムが修復段階にある今なら、アタシとリニスの極大氷結魔法で『闇の書』を封印出来るはずなのさッ」
なるほど。確かに昨日の暴走プログラムなら封印は難しい。でも今のリインフォースなら封印できるはずだ。封印してしまえば防衛プログラムの再生も止められるし、これなら……、でも、
「ちょっと待てよ」
「口を挟むな、プログラム」
「いや黙れねぇ。
アリシア・グレアム、それなら確かにリインフォースは消えないで済む。だけどよぉ、確かに消えるわけじゃねぇが、封印されちまえば居なくなるのと同じじゃねえか」
「待て、ヴィータ」
姉さんに掴み掛かる勢いだったヴィータをシグナムが止めた。
「アリシア・グレアム、その手段だと確かにリインフォースは止められる。
だが、それでは管理局として意味をなさんだろう」
それはそうだ。管理局としては裁判で『夜天の書』の情報を使うことが必要なんだから。つまり、
「貴公のプランにはまだ先があると」
「ふうん、ただの骨董品と思ってたんだけど、使えるロジックも走ってんだね」
シグナムの挑発に変な切り返しをして、姉さんは肩を竦めます。でも骨董品って、……否定できない。
でも、ここからが本番だね。
「発掘調査中だけどね、スターシーカーって言う、ロストロギアがあるのらしいさッ」
「えっ、スターシーカー?」
その名に、何時の間にか輪に交じっていたユーノが首を傾げていた。知っているの? ああスクライアだからかな。
「ロストロギア・スターシーカー。<深遠を探るモノ>
その能力は、ありとあらゆる情報機器へのアクセス。コンピュータだろうとデバイスだろうと携帯端末だろうとなんでもアクセス可能。
でもこのロストロギアの一番凄いところは対象の状態に依らずアクセス出来るところ。エネルギーを切っていても、直接接触出来なくてもハッキングできちゃう。
勿論氷結状態のデバイスだってね」
「それってどういう……」
「ああ、そういうことか」
クロノ分かったの? わたしは今ひとつ分からないんだけど。
「ユニゾン・デバイスでもある『闇の書』は、一種の複合プログラムとして考えても良いらしいのさッ
だから氷結中の『闇の書』にアクセスしてその構造とプログラムとデータを解析。問題点の除去とか修理が出来れば」
「リインフォースは目覚められるんか」
「現物が無いんで、今のところ机上の理論でしかないけどね」
「でも……」
「そう、可能性はゼロじゃないのさッ」
「あ」
「ついでに言っておくが、ロストロギア・スターシーカーの事は我々聖王教会でも調査している。手がかりが見つかれば管理局に知らせる手はずになっているはずだ」
「そうかぁ」
ハヤテは泣き笑いを浮かべ、リインフォースと、守護騎士達と顔を見合わせていく。
そうだよね。たとえ消えそうな微かな光だって、追いかけたいよね、あの星のように。
ん、全て脱げ? 真ソニック? 何のこと? 今忙しいから電波はスルーだよ。
☆Side Nanoha★
「というわけや。よろしくお願いや、アリシア先生」
「よろしく」
「頼む」
はやてちゃんと守護騎士達がシアちゃんに頭を下げています。別に其処までする必要はないと思うのに。
シアちゃんは優しいからちゃんと頼めば力を貸してくれるはずです。なのですが、
シアちゃんはマリヤちゃんと顔を見合わせ、溜息をついて一言。
「無理」
「「ぇ、ええっっっっっっっっっっっっっっっっ!!」」
……シアちゃん、空気読もうね。
「ち、ちょっとアリシアちゃん、空気読もうな」
「てめぇね、ふざけんなよ」
「ま、待て。ヴィータの態度が気に入らないのなら謝らせる、だから」
「アリシアちゃん。怪我したところは私が責任もって直します。だから機嫌なおしてね、ねっ」
「クゥーーン」
なんかみんな必死です。でもなんで?
そんなみんなを見て、シアちゃんはもう一度大きく溜息。空っぽな左腕を見て、吊ってある右腕を見て。
「今ね、デバイスが持てないのさッ」
「「…………………………」」
ああ、そういえば。
気付けばみんなの視線はシアちゃんを外れ、シャマルさんの方に。
「えーーと、私がなにか?」
「……シャマル」
「はい、はやてちゃん」
「少しお話したいことがあるんや。後で家の裏庭に来るように」
「主はやて、私もご一緒します」
「アタシも付き合うぜ」
「我もだ」
なんか何処かで聞いたような会話です。
でも、シアちゃんが撃てないんなら。
それなら、リインフォースさんはどうするの?
「だからね、こうするのさッ」
☆Last Shoot★
伸張
普段は1mに満たないリニス。だが今は2m近くまで伸張している。
長いだけでなく、内部の魔法回路まで外部に露出した姿。
リニスの持つ唯一の形状変化、封印砲撃特化形状・"モード666"。
威力を追求しすぎたあまり屋外での運用が難しく、実戦運用が困難な大出力砲撃形態だ。
そのリニスを取り囲むのは4人の少女。
実はデバイスは術者が持っている必要はない。魔法術式的に繋がっていれば良いのだ。
だから3人の少女がデバイスを支え、術者である少女、アリシアはリニスに触れているだけで良い。
また、この3人の少女も優れた魔導師である。彼女達の力も借りれば、更に強力な力を発動することが出来る。
「みんな、良いね?」
4人の一番前、リニスの左前に位置するアリシアが確認する。
「はい」「うん」「OKや」
「メイン制御はアタシがやる。サポはフェイト」
「はい」
アリシアの後ろでフェイトが頷く。右手でリニスを、左手にバルデッシュを持ちやる気満々だ。
「なのはは収束とエネルギー制御を。反動が大きい筈だから気をつけて」
「分かった、シアちゃん」
なのはの様な大規模砲撃魔は大魔力にも慣れている。
「えーーと、あたしは?」
仲間はずれは嫌だとばかりに、左肩にリニスを乗っける形ではやてが問う。
「魔力をよろしく、あとは」
デバイスを持たない今のはやては魔力を供給することくらいしかできない。だが、
「……祈りを」
出来ることは、したいことは力だけじゃダメだ。大事なのは信じる心。
ちらりと右後ろを見るアリシア。一瞬そこに浮かんだゆったりとした微笑みに目を引かれ、そしてはやては元気に頷く。
「任しときや!」
「いくよ、みんな」
「「「おおっ!」」」
「凍って、眠れ……」
八神はやてが祈り、
「ハイパー……」
フェイト・テスタロッサが詠い、
「ゼロドライブ……」
アリシア・テスタロッサ・グレアムが望み、
「ブレーカー」
高町なのはが願う。
そして、祈りは星になる。
4人の少女の願いを込めた星は輝きを増し、
「「「「シューーートっっ!!」」」」
四色の光を帯びた流星。それが向かうのは魔導の神髄。
両の目を閉じ、待ちわびるように微笑みを浮かべた1人の女性。
光が彼女を包み込み、その残滓さえ消えた後に残っていたモノ。
それは固く暖かい氷に包まれて眠る、一冊の魔導書。
これが数百年に渡り次元世界を脅かしていた『闇の書』事件の真の終演であった。
PS1
本編終了、次回エピローグ
で、こんなところで投稿おくれて済みませんでした。
ランス・クエストが面白くてはまってました。リセットちゃんに会えたのでこっち再開です。
……そういえばランスとかルドラサウス系となのはのクロスってないな。設定上、3人娘は魔人どころハニーにも勝てないし、ちとおもしろいかも。ふむ、どっかにないかな。
PS2
リインフォース復活フラグOn。
ヴォルケンズアンチと言われたこのSSで、これは意外だったでしょうか?
はやて封印後のことはクロノがあーだこーだ言っただけで、グレアムのプランは語られていません。綺麗なグレアムさんならその後の事を考えていても不思議じゃないでしょ。
PS3
ロストロギア・スターシーカー。
唐突に出てきたキーパーツみたいに見えますが、7話で名前を出しています。
8話でマリヤが言っていた聖王教会が探しているロストロギアもこれです。
ちゃんとネタふりしてるんですよ
PS4
マリヤ・キャンベル、性別:秀吉(笑
女の子のように見えるとは書いたけど、女性と断言させたシーンはないですよ。
これを踏まえて8話のラストを読むと別の見方が出来るかと。
要するにアリシアは優良物件を親友ポジでキープしているちゃっかり者なのです。
PS5
4人で撃つクアドラプル・ブレーカー。
元ネタがハイパーボリアゼロ・ドライブだからハイパーが付くのが正しいのです。尤もハイパーボリアゼロで固有名詞(地名)なのでボリアが無いのはアレなんですけどね。
ラストシーン用に張った伏線(前話でのアリシアの怪我とか)も回収。よかったよかった。
ところでこのシーン、よく見てみれば戦隊物の必殺技のようだと書いてから気付いた。魔導戦隊・シニカルⅣとか……
PS6
少し分かりにくいけど、実はアリシアもマリヤも、はやては勿論リインフォースにも悪感情は持っていません。
アリシアにとってははやては自分と同じグレアムの被保護者で、内心この回から妹ポジになってます。
マリヤにとってはベルカの評判を落とした経緯を問題視しているのであり、なにも知らない(出来ない)2人に悪感情を向けない程度の自制は出来ています。
ifの話ですが、はやてを助けるため蒐集するより前に聖王教会に接触していたなら、マリヤはシグナム達に協力(献血的イメージで献コア)くらいはしています。
PS7
守護騎士達ははやてに罪が行かないように殺人は避けていた。これはその通りだと思います。
ただし収集した後のフォローをしていたかと言えば、してなかった、と誰でも思うでしょう(コミック版ではフェイト蒐集後、誰かが来るまでシグナムが護っていた的絵がありますが、これはあくまで例外)
Stsでも守護騎士は人間より丈夫的表現があります。
プログラムで生身の人間の弱さを知らない(強力な魔導師の筈の主とか、敵対者しか知らない)彼女達がこの辺考慮したとはとても思えません。で放置して熱中症とかでアウト。
この辺、アリシアが調べて貰ったのは別に守護騎士を責める為ではありません。
何か余罪があった場合、管理責任とかが回り回ってグレアムの元に行かないか、その前にフォローするためです。
今出てこなくても、潜伏していつか発覚すると拙いということ。
要するにアリシアは、親思いの娘なのです。
PS8
冒頭のシーン、最初のプロットではアリシアが月村邸で目覚める場面でした。すずかとアリサに魔法の説明した後、みんなでお泊まりって原作ではなっていたんだと思って。
でも実は、アースラに居んでたですね。
なんでこんな勘違いしたかというと、リインフォースの終焉にはやてがやってきたから。
はやてがその場に来れたのは、はやてが海鳴に居たから。間に合ったのはあの丘と朝起きた場所が近いからと。
アースラの医療室にいた筈のはやてが何故にこのタイミングでここに? どー考えても説明つかないと。(クロノか誰かが転送したのならもっと近い位置に送るはず)
なのでこのSSではアリシアに送って貰うこととなりました。
おまけとして最初のプロット時の冒頭シーン付けときます。これを受けてリニスが≪ニャー≫です。
☆Side Alicia★
まぶしい、お日様?
フカフカ、お布団?
隣に優しい気配。
ペロリ、何かが頬に当たる。おはようのキス?
アタシは瞼を開くと視線を上げた。
そこには……、黒い毛並みをした一匹の猫さんがいました。
「あれ?」
不自由な身体でよいしょを身を起こす。
そんなアタシを見て猫さんは、
「にゃ~」
とアタシにスリスリ。
可笑しい、昨日の夜、アタシはフェイトと一緒に寝たはず。だったら、
「アンタ、フェイト?」
「みゃ~♪」
猫さんは小首を傾げて、甘えるように鳴く。あれ?
「もしかして変身魔法」
「みぃ♪」
……チョイスが違うと思うよ。フェイトが変身するならウサギさんかキツネさんじゃないと。ネコさんも可愛いけど、基本は護らないと。
「そこんとか分かってるの?」
「にゃ~」
「みゃ~」
……あれ、鳴き声が1つ多い。キョロキョロと辺りを見渡して、次にベットの下をのぞき込むと、
「みぃ」
白い影がベットに飛び乗ってくる。て、また猫さん?
「みゃ~」
「にゃ~」
黒いフェイト猫の隣に来たのは白い猫さん。えーーと、フェイトが黒BJだから白は……
「アンタ、なのは?」
「なぁ♪」
フェイト猫となのは猫か。今日は一体どういう日?
CatDays、でありますか?
「ねえ、リニス。これどうなってるの?」
≪ニャー≫
……
「……リニス、壊れた?」
≪えと、外しましたか?≫
「良くわかんないんだけどさ、……あんまりヘタな事言うと、ギャグデバイスになるよ」
≪申し訳ありません≫