説明会開始十分前。
ヒソカが俺の隣の席に座った。こっち来んな。
「来ないでください。妊娠したらどうするんですか」
「まあまあ◆ そんなに殺気だたないでよ◆」
こいつに言われたらオシマイである。
だけど、確かにこいつに下手に殺気をぶつけたせいで興奮されても困る。
とりあえず我慢するのが正解か。
「ところで◆ メイは果実はとれたて派? 完熟派?
僕は前にも言ったけど…………」
やっぱり無理かもしれない。
軽い拷問のようなトークに耐えていると、ネテロ会長を始めとした審査委員会の方々がやってきた。
同時にヒソカのトークが終わる。
拷問タイムを終わらせてくれたネテロ会長の背に観音様が見えたぜ。
合格者はゴンくん以外全員揃っている。
まだ寝てるんだろうね。昨日のアッパーはいい感じに決まってたし。
「ではこれより、合格者説明会を開始する」
……説明の大半はキングから貰った知識通りのものだった。
一年以内に5人に1人はハンター証を紛失する、つまりは奪われる。
念能力者の俺がハンター証を盗られることはまずないと思うが、戦闘力の強化をした方がいいんだろうか?
ヒソカが弱いとは思わないが、念能力者の相場が分からないからな………。
一応用心はしよう。
後は一流企業並みの融資を受けられるやら公共機関をただで使えるやら………………ニートできるじゃん……………いや、あれはあれで辛いと聞くし働こう。
説明は大体そんな感じ。
クラピカくんとレオリオさんが何かそわそわしていたけど、どうせキルアくんのことだろう。
でも、昨日の試験は傍目から見れば不自然ではあるが特に問題と言えるようなことはなかった。
異議を唱えるには足りないな。
バーンッッ!!!
ドアが勢いよく開いたかと思ったらゴンくんだった。
もう少し礼儀正しく入室して欲しい。内心びびった。
入ってきたかと思えばギタラクルに喧嘩を売るゴンくん。
「お前に兄貴の資格ないよ」
「兄弟に資格がいるのかい?」
お、何かギタラクルがいいこと言った。やってることは酷いけど。
……あれも愛情、と見ることはできなくもないけど。
歪んでるなあ。価値観が違いすぎてついてけない。
ちょっと会話をしたかと思えばギタラクルを投げようとするゴンくん。
ギタラクルは着地したけど……あれ?腕折れてね?
やっぱり末恐ろしい。隣のヒソカがハァハァうるせえ。
話の流れ的に、ゴンくんはキルアくんの家に行くのだろう。
知り合って約一週間、薄い友情だ。暗殺一家の家に殴り込む理由にはならないと思う。実際、キルアくんはゴンくんとの友情よりも自分の保身を選んだんだ。
それが悪いとは言わない。
ようはゴンくんがお人好しなだけなんだろう。
説明会も終わり、廊下に出る。
ふと見ると、ヒソカとギタラクルが会話している。
「意外ですね。仲、良かったんですか?」
「この試験中は組んでたのさ◆
言ったろ?あの子には怖いお兄さんがいるって◆」
「そう言えば………」
そんな話をされた気もする。
「こうやってお話するのは初めてですね、ギタラクルさん。
メイ=ドートゥウェイと言います。
早速ですけど、この変態の抹殺っていくらかかりますか?」
「ヒソカは……20億は欲しいね。これ、名刺。
頼みたくなったら連絡頂戴。三割引きで請け負うから」
「これはご丁寧に。
命や貞操の危機を感じる前にお金を貯めて依頼しますね。
………あ、偽名だったんですか」
「キルにバレるわけにもいかなかったし……暗殺者なら偽名ぐらいなきゃね。
地元じゃ実家が観光名所になってるけど」
「ははっ。思ってたより面白い人ですね、イルミさん。
もう少し堅い人のイメージありました」
自分でも驚くくらい和やかに会話できてる。なんだこの紳士。
最近はヒソカとしか会話してなかったから感覚が麻痺してるのかもしれない。
「ところで、ヒソカはこれからどうするの?」
「待つよ◆果実が美味しく実るまで…」
恍惚の表情で震える変態。
だが、待つということは俺の優先順位はやはり低いのだろう。イルミさんにも喧嘩売ってないし。
悪いなゴンくん、君は生け贄だ。
「メイは?」
俺にも聞くのか。
「私は……兄の葬式をやって………その後は未定ですね。
金稼ぎはしたいと思いますが」
兄とはキングのこと。戸籍はキングの妹として登録するつもりだ。それならホームコードとかをそのまま使えるし。
「それなら天空闘技場はどうだい?
メイなら簡単に稼げるよ◆」
「天空闘技場?」
なんだそれ?
ヒソカが言うには、天空闘技場は大きなタワーでありそこで闘えば実力に応じたファイトマネーが貰えるとのこと。
一試合で二億とか貰える場合もあるとか。
それに、ファイトマネーは貰えなくなるが、勝ち進めば念能力者がいる階にいけるらしい。
念能力者の相場が知りたい俺にはうってつけではないだろうか。
「教えてくれてありがとうございます。
一段落ついたら行ってみますね」
「是非そうしてくれ◆
ついでに、これ、僕の連絡先」
「マジでいらないんですが」
「まあ、そう言わずに◆」
「…………」
まあ、連絡先ぐらいはいいかな。これからはハンター仲間になるわけだし。
同業者との繋がりはあった方が安心できる。
保険(イルミさんの名刺)も手に入ったことだし。
「……これは私のホームコードです。
携帯は今ないので、手に入ったら連絡します」
「分かった◆
…ところで、君はこれからどうするのかな?」
イルミさんに尋ねるヒソカ。
そういや聞いてなかった。
「仕事だよ。これでも忙しくてね。9月にも大きい仕事があるし」
「9月……ヨークシン関連かな?」
「そうだけど」
「僕も9月はそっちで仕事があるんだ◆
もしかしたら手伝いを頼むかも◆」
「有料ならいいよ」
ヨークシン……知識検索………ヒット。天空闘技場の時も使えば良かったな。
それで、9月1日からヨークシンでは世界最大のオークションが開催されるらしい。
そこで大きな仕事がある暗殺者……首を突っ込まないほうがいいな。
しばらく三人でビジネスライクな会話をしているとゴンくん、クラピカくん、レオリオさん登場。
キルアくんの居場所が知りたいらしい。
あっさり教えるイルミさん。
………観光名所って、冗談じゃなかったんすね。
ゴンくんたちが行ったあと、9月にヨークシンで仕事が重なったら会えるかもね、的な会話をして解散。
できれば会いたくねえ。
ハンター試験で手に入った連絡先は暗殺者と変態…………これから先のハンター人生に暗雲が立ち込みまくってる気がする。
帰宅。棺桶の中身チェック。
……よし、腐ってない。
帰りにハンター証を使って戸籍を登録したし、金も借りた。
さあ、葬儀屋を呼ぶぞ!
葬式当日。新聞にも日程を載せたのだが、誰も来ない。
一人で御焼香をあげて読経を聞いていると涙が込み上げてくる。
てか仏教徒だったんだな…キング。
結局、お通夜にも誰も来なかった。
キング……………哀しき男よ、誰よりも愛深きゆえに。
今さらだが、葬式に参列者が来ない男の妹になって良かったのか不安になった。
<続く>
二回続けて短めの話。
ここで区切るのがちょうど良かったので。
メイはちゃくちゃくと死亡フラグを立ててますね。
まあメイドさんは死にませんが。
能力は、それほど強くない能力を一個か二個、今の能力の派生という形などでつけます。
あんまり無茶苦茶やるとグダグタになりかねないので。
まあ、もう十分グダグ(ry
この作品って、勘違い系なのでしょうか?
一応最強もののつもりだったんですが………