只今、四字次試験会場に向かう船の上。
「はあ……」
三次試験が終わってからトンパさんに避けられてる。
唯一の話し相手が………
「どうしたんだい?ため息なんか吐いて◆」
「ほぼ貴方のせいです」
こいつを話し相手とは認めたくない。
こっちくんな!
というか、
「よく話しかけられますね。次の試験の内容聞いて」
次の四次試験は、無人島での一週間のサバイバル。
しかも受験生たちは互いのナンバープレートを奪いあって、六点分を期間内に手に入れなければならない。
プレートの点数は自分のが三点、ターゲットのも三点、その他のものは一点。
ターゲットとは、あらかじめ引かされたクジに書いてあった番号のプレートを持っている相手のこと。
ちなみに俺のターゲットは191番。
誰だよ。
「僕のターゲットは君ではなかったし…仮に僕が君のターゲットだったとしても楽しめるからね◆」
「残念、違います。ほら」
ターゲットの番号を見せる。
「確かに、残念だ◆」
「……」
三次試験の時から思ってたが、ヒソカはどこまで本気なのかが全然分からない。
…もしかすると、俺はコイツの好みから多少外れているのかもしれない。同類と思われてるし。
トリックタワーで聞かされた話だとコイツは幻影旅団だかいう集団に所属していて、そこの団長にフォーリンラヴ中。
他にも、一次試験で『試験官ごっこ』に合格した連中が育つのを待ちたいとか言ってたし……俺の優先順位は低いんだろう、多分。
それでも、気は抜けないが。
キ○ガイは何をするか分からないのが怖い。
そんな風に少し会話しつつも島に到着。
島に入る順番は三次試験の合格順なので、俺が一番最初に島に入った。
……ターゲットが誰か分からないから意味ないよな、これ。
いっそ待ち伏せして全員ぶちのめすことも考えたが二番目に来るヤツがヒソカなので無理。
できるだけ開始地点から離れた。
どうしようもないので『円』を使いながら半日ほど歩き回っていたら、武道家風のお爺さんに話しかけられた。
いろいろ言ってたけど、要約すれば俺がお爺さんのターゲットだからプレートを寄越せとのこと。紳士的な対応で驚いた。女性には手を出せないとか、そういう人だろうか。
適当に後ろに回って当て身を喰らわせる。向こうには消えたように見えただろう。当て身ってなんかカッコいい。
お爺さんのプレートは191番。運がいいにも程がある。
お互いにターゲット同士だったらしい。
後はヒソカが暴走してないかに気を配っていれば問題なく合格できるな。アイツがまた『試験官ごっこ』始めても巻き込まれないようにしないと。
数分ごとに『円』を使い、ヒソカに出会わないようにしながら休める場所を探しているとトンパさんを見つけた。ぼこられて縛られたようだ。
『餌は与えないでください!!』と書かれた看板をくくりつけられている。これは酷い。
「大丈夫ですか!トンパさん!」
「ひぃっ!来るなぁ!」
「……」
ちょっと傷ついた。
まあ、俺だって身動き取れない状況でヒソカに近づかれたら舌噛む。
そのまま無言で近づき、ロープをほどく。
「え?」
「では…」
……この状況を見る限りだと、トンパさんの合格は絶望的だろう。
俺がトンパさんのプレートを取り返して、トンパさんのターゲットのプレートを奪う。そうすることは簡単だ。
だけど、それで喜ぶような人だろうか?
新人にアドバイスしたり35回も試験を受けてる人だ。
きっと、そんなあからさまな施しは受けないだろう。協力とかならともかく。
……だけど、完全に恐がられている。一緒の空間にいるのも嫌なのだろう。
ここはロープをほどいて去るのが正解なんだ。
「ま、待ってくれ!」
向こうから呼び止めてきた。
「ど、どうして俺に構うんだ?お前みたいなヤツからすれば俺なんてゴミ同然だろ?」
そんなこと、思ってない。
「好きだから」
「へ」
「トンパさんが好きだからです」
「ぶふぉあ!!」
あ、これじゃ告白だ。
「いや、変な意味ではなくて………トンパさんって父さんみたいだなあ、と」
「父さん?」
「試験が始まる前にいろいろ教えてくれたし、元気づけてくれましたよね?
『私』、優しくされたのって初めてだったんです」
実際、こっちに来てからは初めてだ。雛鳥が初めて見たものを親と認識するみたいなもんか。
「……」
「それが嬉しくて…できればトンパさんには合格して欲しいな、って思って……」
「……」
「でも、余計なお世話でしたよね。ごめんなさい。
……さよならっ!」
「あっ!おい!」
客観的に見れば変なことやってるな、とか考えながらその場を離れた。
二度と会うことはないんだろうな……
それから何事もなく一週間が過ぎた。
合格者は9人。
……トンパさんは落ちたようだ。来年頑張って欲しい。
次は最終試験。
また飛行船に乗った。
最終試験の前に簡単な面接をするとのことで、ネテロ会長に呼び出された。
「何故ハンターになりたいと?」
「自分の証明が欲しいからです」
戸籍もないし。
「一番注目している受験生は?」
「44番です」
針男も警戒してはいるが、一番ヤバいのはコイツだ。
「一番戦いたくないのは?」
「405番です」
あの子をボコるのは気が引ける。
面接はそれで終了。内容から考えると最終試験では戦闘する必要がありそうだ。
会場に到着。最終試験は負け抜けトーナメントで、不合格者は一名だけ。一回勝ちさえすればハンターになれる。ただし、殺人は失格。
案外楽で助かった。
しかし、トーナメント表を見て軽く絶望。俺はヒソカと金髪の戦いで負けた方と戦うことになってる。
ヒソカが負けるとは思わないが…………
ちらっと、ヒソカの方を見る。
にやぁ
うん。対戦相手は決まったね。
おまけ
<トンパside>
今年の新人は曲者ぞろいだった。
まあ、それでこそ潰しがいがあるってもんだぜ。
………397番のメイは変なヤツだったな。メイド服だし。あそこまで俺を信じたヤツは初めてかもしれない。
下剤も効いていないようだ。
一次試験が始まって六時間。そろそろ新人のニコルが脱落しそうだったので、三兄弟に精神攻撃を頼んだ。
ああいったエリート嗜好のヤツは挫折に弱いからな。
そこら辺を強調すれば二度と試験を受けに来ないだろう。
そう考えてたら、メイがニコルに話しかけていた。
少しするとニコルは絶望した表情を見せて崩れ落ちた。
そう!その顔が見たかった!
思わず笑みが浮かぶ。
メイは俺と似た人間なのかもしれない。
二次試験が終わって、俺と似た人間だという認識は改められた。
試験官を毒殺しようとするとは………ヒソカ側の人間かもしれない。単に事故の可能性もあるが。
三次試験会場に向かう飛行船の中でレオリオとクラピカに『試験はいつ、どこで始まるか分からない』といったデタラメを吹き込んだ。
せいぜい緊張でズタボロになりな、と思ってたらメイにも聞かれていたらしい。
起こしてあげるから寝ていいよ、私は寝ないから。要約するとこんな感じのことを言われた。
全然疲れていないらしい。
ヒソカレベルの化け物かよ!
それなのに俺を起こしてくれる?
訳が分からん。
精神的に凄く疲れながら眠りについた。
あんまりこういうヤツには関わりたくないんだけどな……
目を覚ますと、メイドさんに膝枕されているという黄金体験をしていた。
俺が、起こしにきたコイツに倒れこんだらしい。
周りからの圧力が凄いので即座に逃げた。しかし、三兄弟やらレオリオやらにボコられた。
「メイドさんの膝枕とか……」「どこのエロゲ主人公だよ!」「羨ましいぞ!このっ!」「中身はともかく、可愛いメイドさんと仲良くしやがって!」
その中身が問題だろうが。
確かに……感触は最高だったが……どちらかと言うと死を覚悟したぞ、俺は。
三次試験になんとか合格すると、談笑(トンパ視点)するメイとヒソカの姿が。
やはり危険人物らしい。
何故か近づいてくるので徹底的に避けた。悲しそうな顔をしてたが騙されやしない。
四次試験、ソミーと組んでレオリオを嵌めたがクラピカにやられた。
プレートもないし身動きも取れない。
そこにメイが現れた。
これは死んだかもしれない。
しかし、予想に反してメイは俺を助けてくれた。
あまりに予想外で、止せばいいのに呼び止めて理由を聞いてしまった。
「トンパさんが好きだからです」
思わず噴き出した。
……ラヴではなくライクだったようだ。
俺が父親みたいだとか、人に優しくされたのは初めてだったとか好き勝手ぬかして去っていった。
………アイツは善人ではないと思う。
新人潰しを辞めようとは思ったわけでもない。
だけど、なんとなく、本当になんとなくだが………………来年ぐらいは本気で合格目指そうかな、と思った。
<続く>
少し短いかも。
やっとトンパタイム終了です。再登場させるかは未定。
後二回くらいでハンター試験は終了です。
メイの能力について意見をくれた皆さん、ありがとうございました。
そのうち開発します。