「どうしよう!アレキサンダーがまた復活しちゃう!」
遂に俺達はアレキサンダーを倒すことに成功した……だが、まだ終わってはいない。長かった旅に終止符を打つため復活しようとするアレキサンダーに対してヨヨが一歩前に踏み出す。
「大丈夫、私に任せて!」
「ヨヨ!」
そんな彼女を支えようと横に立つパルパレオス。マテライトとセンダックも当然のように周りに立つ。だが、俺は……俺は。
「パルパレオス!……マテライト、センダック。オレルスの仲間達、皆さんも……力を、私に力を!強さをください!」
ヨヨの声が聞こえる。オレルスを救うまでは……この戦いが終わるまでは……と、聞こえないようにしていた声。
「ビュウ……あなたも、お願い……私、ビュウには嫌われてる……私がいることで、ビュウをいやな気分にさせてしまう……それは分かってるの、でも……ビュウ、貴方はやっぱり私の大切な人なの。貴方がいなければ今の私はいなかった。私に大切なこと……教えてくれた。空を越えて伝わる気持ち……本当にあること、今だけでもいいの……私に……強さを!あの頃のように!」
「「「ビュウ」」」
俺は無言で4人の立っているところに歩いていく。まだ……まだ終わっていないんだ。せめて最後までは……そう自分に言い聞かせる。
「ありがとう……ビュウ。ねえ……もっと強く、捕まってもいい?」
「……」
無言を肯定と受け取ったのか、ヨヨが強く捕まってくる。くだらない感情だとわかっていても皆に見えぬように唇を噛んでしまう。怒り?悲しみ?悔しさ?……それとも自分自身の不甲斐なさか、この感情は結局この時まで消えることがなかった。
「ビュウ……ありがとう。さあ、神竜の王アレキサンダーよ!私の中に入ってきなさい!あなたなんか恐くない。私には皆がついているから、みんなが強さをくれるから!アレキサンダー!!来なさい!」
ヨヨがそう叫んだ瞬間、周りにいた俺達はヨヨを基点に弾きとばされる。
「な、何が起こったんじゃ!?」
「アレキサンダーが姫の中に!?」
「それでは……ヨヨの中で神竜たちが戦い始めたのか!?誰か!誰かなんとかしてくれ!」
あのパルパレオスがどうすればいいかもわからず慌ている姿は少し滑稽で……ただそれ以上に自分が滑稽な存在ということを認識させられた。こんな時にこんなことを考えるなんて、意外と人間なんてのは余裕があるもんだ。
そんなことを考えていると、どうすればいいかわからない俺達の元に竜人が近づいてきた。
「ヨヨ様!ヨヨ様!おう竜人!早くなんとかするんじゃ!」
『強い娘だ……よく頑張ったな。もう大丈夫だ……さぁ、ヴァリトラ』
竜人の言葉と共にヴァリトラがヨヨの体から姿を表す。出てきたヴァリトラはそのまま竜人に導かれるように体に吸い込まれていく。残る5人の竜人達もそれに続くように神竜へと呼び掛ける。
『リヴァイアサン』
『……ガルーダ』
『ユルムンガルドはわたしに!』
『おいで、ヒューベリオン!』
『さぁ、復活の時だ!バハムート!!』
その言葉でアレキサンダー以外の神竜が竜人達と融合。さっきに比べるとヨヨの顔色も大分よくなっている。だがアレキサンダーが残っているにも関わらず続くはずの竜人の声が聞こえない……ついにセンダックが声をあげる。
「アレキサンダーは!?」
『生き残った竜人はこれだけのようだな……アレキサンダーは娘の中だ。しかし、戦いはなくなった……あるのはアレキサンダーの怒りと憎しみ、そしておそらく悲しみ……』
「それではヨヨは?!」
竜人という器に入ったバハムートの表情はあまりいいものではなかった。それがヨヨの心にかかっているということを表しているかのように。
『後はこの娘の心の強さ次第だ……』
「なに?!なんとかせんか!その為のお主らじゃろ!」
バハムートにマテライトが詰め寄っているが何の解決法も出ない。あんなことがあってから俺は自棄になっていたのだろう。もう俺の存在も必要ないと思いながらヨヨの元へと歩いていく。
「ビュウ……?」
「アレキサンダー!!」
ドラグナーでもなんでもない、ドラゴンに好かれやすいだけの俺にできるかもわからない……だが何故かそう叫ばずいられなかった。
「アレキサンダー!怒り、憎しみ、悲しみ……俺が全てを受けとる!」
その言葉と共にヨヨから出てきたアレキサンダーが俺の体を貫く。
「ビュウ?!」
貫かれた瞬間、頭に様々な感情が溢れだす。頭の処理が追い付かないのか視界が真っ暗になり耳からも何も聞こえない、腕などの感覚も消えてなくなる。あるのは溢れだす怒り、憎しみ、悲しみの感情のみ。気が狂いそうになる……が、それとともにこのまま壊れられるという喜びもあった。意識がもう保てなくなってくる……
『……知りたい……』
意識が途切れる寸前に、そう聞こえた気がした。
「……なさい。……ュウ!……ら、起きなさい!」
「うっ……」
まぶしい光と妙に懐かしい声でむりやり頭を覚醒させられる。
「ほら、早く起きなさい!今日は訓練の日でしょ!」
「……訓練?」
まぶしさに慣れてきた目を開けると、何故かそこには決戦の地にいるはずのない育ての親がいた。
あとがき
ふと書きたくなってしまった