【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第72話 盧江攻防戦。銅鑼の音を聞いた周倉は斧を構える。そして、一度だけ深呼吸をして、腹の底から声を出して叫ぶ。「いくぞ、てめぇらっ! 高順隊の力ぁ、見せてやれやっ!」周倉の檄に、兵は『姐御! 姐御!! 姐御!!!』と叫んで士気を高揚させる。「何度言わせりゃあ気が済むんだよっ! 姐御って言うんじゃねえええっっ!」周倉は怒鳴りながらも袁術軍に向かって走り出した。彼女の走行速度は人間の比ではない。馬と同等である。その証拠に周りの兵の一部は馬に騎乗しているが、周倉はその馬をあっさり追い越せるし、先頭を走る周倉に誰も追いつけていない。先頭部隊が駆けて行くのを見ていた高順は、自分を乗せている虹黒の首を2回ほど撫でて「いけるか?」と問う。「ぶるるっ!」『ふん、当然でしょ。私を誰だと思っているのよ。・・・べっ、別に高順の為に働くわけじゃないんだから!! 誤解しないでよね!』「・・・。」「・・・。」「ひひんっ。」「・・・。行こうか、虹黒。」「な、なんと冷たい。突っ込みも無しとは!?」隣で妙な事を呟いた趙雲を完全に無視して高順は虹黒を駆けさせようとする。「いや、高順殿はどちらかと言えば(規制)に突っ込むほうが得意でしたな。むしろ挿入「ぽこっ!」痛っ!?」「おかしな事を言わないように! つうか自分の部隊の統率はどうしたんですよ!?」「おお・・・やっと突込みが!」趙雲は素でやっているのか場を賑わせようとしてふざけているのか、そこがどうにも掴めない。どっちでやっていようと問題発言でしかないし、すぐ傍で聞いていた蹋頓もくすくすと笑っている。なんで戦を目の前にこんな事をせにゃならんのか、と高順はげんなりしてしまうが、今度は高順から去ろうとする趙雲に声をかけた。「趙雲さん。」「む?」呼ばれた張雲は振り返る。「勝ちに行きますよ。」彼の言葉に趙雲は「当然ですな。」と笑って今度こそ下がっていった。楽進と李典はと言うと、きっちり部隊を統率して真面目に待機している。趙雲は部隊の展開を終えてから、からかいに来たようだ。変なところで仕事が速いというのが何とも。ともかく、周倉が行動を開始した。自分達も行かなければ。高順は虹黒の背を「ぽむぽむ」と軽く叩く。応じるかのように虹黒は高く嘶(いなな)き、3・4歩軽く足踏みをするように歩き、少しずつ速度を上げていく。騎馬隊は暫くそれを見つめた後、一斉に雄叫びを上げた。趙雲、楽進、李典、蹋頓、沙摩柯、閻柔、田豫。そして5千からなる高順騎馬隊。今まで溜まり続けていた物を吐き出すかのような猛りだ。「行くぞ! 高順に続け!!」黎骨朶を構え馬を駆けさせた沙摩柯の言葉と同時に、ついに騎馬隊が動き出す。「陥」の字が大きく描かれた新造の旗をたなびかせ、大地を蹴立てる馬蹄の音を響かせて、高順隊は全軍で突撃を開始した。同じく動き出す趙雲だが、彼女は先に駆けて行った高順の姿を目で追っていた。ああやって駆け出せば、高順は勝利にのみ向かって進んでいく。大局的な戦いでは負け続けの自分達だが、今回は絶対に勝てる。趙雲には、そんな確信があった。高順隊が全軍突撃したのを見て、両翼の孫権・韓当部隊も前進。敵真正面を高順隊に任せて、自分達は袁術軍前衛の両翼を抑えようと少しだけ左右に広がりながら進んでいく。孫権は「高順隊であれば5千で1万の働きをするわ」と見越しており、彼らが負けることなどありえないと考えていた。袁術軍前衛部隊の武将は陳蘭と雷薄という男であったが、自分達からは突撃をせずに弓矢で迎撃をして迎え撃つやり方だった。弓矢でやることと言えば基本は点ではなく面を撃つ。つまり乱射しまくることなのだが・・・一番最初に袁術軍が見たのはたった一人で、しかも徒歩で向かってくる周倉。高順も周倉もそれを読んでやったわけではなかったのだが、これが功を奏した。前線の弓兵は、周倉一人に向かって矢を射かけ始めた。周倉が前に出ることで袁術側からの射線が狭まったのだ。当然、周倉の後に続く兵に矢で射られて倒れる者もいたが、その頃には周倉が袁術軍と交戦している。「しゃおらぁっ!」「げぅっ」周倉は自分に向かってきた敵兵の目の前で飛び、その首筋を斬った。悲鳴を上げ鮮血を撒いて倒れていく兵士の肩を蹴り飛ばし、軍勢の只中へと踊りこんだ周倉は目に付いた者を片っ端から斬りまくる。「姐御に続けっ!」周倉が暴れまわって弓兵が混乱している隙を付いて、先駆けた高順前衛部隊が槍を入れる。500程度の騎・歩混成部隊の突撃に、一部の袁術兵が浮き足立った。部隊はともかく、周倉の猛進を止めることができない。走り周り飛び跳ね、一定の場所で止まらずに常に別の敵を探して戦場を駆け、斧を振るっていく。一部の兵が、その首を取ろうと駆け寄るが、それを周倉は一喝。「首なんざ置き捨てにしとけ! どーせ持ってくならそこそこ位の高そうな奴1つに絞れ! 雑魚首なんざ武勲狙いのクソ共にくれてやりなぁ!」10も20も首もってりゃ動けなくなるだろうが、と言い捨てて更に暴れ回り、兵も思い直して周倉の後に続いていく。そして黒馬に跨った黒鎧の男と、それに付き従う騎馬軍団が袁術軍前衛へと攻撃を開始。周倉が撹乱していた中へ、高順を先頭とした騎馬隊が一気に乗り入れていく。袁術軍の中には反董卓連合に参加していた兵も多く、孫策軍や曹操軍を押し返した高順隊を覚えているものもまた多かった。あんなに目立つ格好と目立つ馬を覚えていないという方がおかしい話ではあるが。李典隊は少しだけ後方に下がって矢を放ち援護に徹しているが、高順・趙雲・楽進はいずれも部隊の先頭に立って戦っている。その強さは兵士などで敵うはずもなく、一方的な展開になりつつあった。兵がそちらに集中して集まったところに、孫権・韓当の部隊が横合いから突撃を開始した事もあって袁術軍前衛は早期に崩れ始めていた。「ふん、脆いな。」自分に向かってきた兵を殴り飛ばした楽進は、密集陣形を取った敵兵に向かって気弾を叩き込む。それだけで崩れ、抗戦意思を失う袁術の兵を見た楽進は「数が多いだけの烏合の衆だな」と考えている。徐州の陶謙も弱かったが、今回もまた弱い。それまでにぶつかってきた相手が強すぎただけ、と言うこともあるがこの弱さはまるで手ごたえが無かった。ふと見ると、高順が槍を振るう度に何人もの袁術兵が吹き飛んでいく。趙雲も同じく、あっさりと敵軍を蹴散らす。蹋頓や沙摩柯もこれまでの鬱憤を晴らしているようにしか見えないほどの暴れっぷりであった。特に冷たい笑顔で敵兵を倒して・・・いや、もう虐殺に近い戦い方をする蹋頓の姿は少し怖い。あれが彼女の本来の戦い方なのだろうか? と思ってしまう。もう少し後の事だが、雷薄という武将を追い詰めて命乞いをされた蹋頓は「貴方の首、そこそこ価値がありそうですね・・・?」と笑顔で斬り捨てている。この話を知った高順は、「命乞いしてるのに斬っちゃ駄目ですよ?」とやんわりと注意しており、蹋頓も素直に謝っている。蹋頓はこの事について「生かして登用しても邪魔になる気がしたのですよねぇ・・・」と後々に語ったそうだが、ある意味大正解であった。袁術軍本陣では紀霊が前衛部隊の苦戦に顔を顰めていた。士気が低ければ兵も飢えて本来の実力が出せない、とは思っていたがまさかここまで。紀霊は指揮の低さも兵の飢えも、兵数の多さでなんとか埋められると考えていた。その為にこそ前衛部隊に兵数を一番多く配置したというのに。それに、あの陥陣営・・・高順部隊がいると言うことが信じられなかった。高順が孫家に保護を求めたのか、或いは孫家がどこかから連れてきたのか。自分達を苦しめた武将を迎え入れるとは・・・孫策殿も器が大きいものよ、と紀霊は感心し、そして羨ましく思った。自分の主ももう少し見識と言うか常識があればなあ、という気持ちである。高順隊の動きに合わせて、紀霊は中衛部隊も前線へと押し上げた。孫権・韓当の部隊も無視できないし、此方よりも将兵の質が高い。自分たちが対峙している前衛部隊は多くても3万といったところだろうが、此方はそれに倍以上の兵を叩きつけなくてはいけないとは、と紀霊は嘆息した。~~~孫策軍、中陣にて~~~「・・・。」「どうした、徐盛。まさか「あそこまでのモノとは」とか考えておるのか?」「はっ・・・その。」高順隊の突撃を見て呆然としていた徐盛をからかうかのような黄蓋の物言い。此処からでは解らないが、他の陣にいる「今まで高順を馬鹿にしていた」人々も多少は驚いたのではないだろうか。黄蓋はニヤニヤして周りの反応を窺っている。彼女は高順隊の突撃のみ見ていたわけではなく、孫権と韓当が混乱した敵前衛を上手く横から突いた事もきっちりと見ている。最初こそ高順隊への圧力が大きいと思われたが、あっさりと崩れたせいでそれもなかったように見受けられる。袁術軍が弱すぎて勝負になっていないということのほうが要因としては大きいが、それでも向こうは中衛部隊を繰り出しており数の差では大きく不利だろう。「しかし、ただの突撃ですよ? あの勢いは確かに凄まじいと感じましたが・・・何故あれほどの突破力を」あの無茶苦茶な突破力は一体、と徐盛はまだ信じられないようだ。黄蓋は(おそらく、武将の動きに兵が付いて行くからであろうな)と見ている。自分勝手に動いているように見えるが、高順や趙雲という部隊の統率者の動きを見て、それに追従しているのだ。高順が矢を撃つ方向に同じように矢を撃ち、出鱈目な場所へは絶対に撃たない。そこらへんを見極めておきながら、黄蓋は答えを教えない。「そんなものをワシが知るものかよ。知りたければ自分で聞きに行くがよい。さて、向こうの中衛も動き出したのぉ。我々も動くとするかい。・・・徐盛、いつまで呆けておる!」「は、ははっ! 申し訳ありません!」徐盛は慌ててその場を離れて自分の部隊へと走っていった。徐盛に限らず、新規で採用された武将は腕が良ければ統率力もそれなりにある。教えなくとも自分で気付くだろうし、戦の機微を口であれこれ言っても効果は薄いと思っている。経験が足りぬだけであれらも何れは良き将となりおるわ、と黄蓋は見ているが・・・気になるのは、どうにも他国者や降伏した者、武勲を挙げていないものを露骨に見下す部分がある。特と虞翻という文官は口汚く高順を罵り、孫策に「あのような男を生かして置くのは為にならない」と処刑まで具申して高順をいびり倒している。各陣営を渡り歩き、その都度その陣営が崩壊していて信用ならぬし縁起が悪い、というのが虞翻の言い分だ。高順はこの虞翻に面と向かって罵りを受けており、それを知った趙雲や蹋頓が報復を行おうとしたが、それは罵られた当人である高順が止めている。とは言うものの、罵っている本人が大した働きをしていないので虚しいだけだ。それと、これは全く別の話になるが、徐盛らが周泰の下に付けられた時も不満を口にして従おうとしなかった事がある。周泰は武将と言うよりも密偵方のイメージが強く、実際にその通りなのだが個人的武勇も統率力も人並み以上。これには孫権と孫策が宴席を設けて、周泰の働きがあるからこそ自分達は戦場の事だけを考えていればよい、と諸将の目の前で周泰の功績を称えている。情報収集や輜重と言う裏方を馬鹿にするな、と言い聞かせたのである。更に酔っ払った孫権は周泰の体に残る傷のいくつかを(周泰が嫌がるのも無視して)諸将に見せて「この傷のすべてが私を守ろうとしてくれた時に付いた傷だ!」と言っている。(流石に服をはだけさせる真似はしなかったが。悪乗りをする奴はいるもので「それくらいの傷ならば俺だって!」と言いながら体の傷を誇示する・・・どきっ☆ 汗臭い男達の体の見せ合いっこ大会(ボロリ有り)になってしまって周泰や呂蒙など、男性に免疫のない女性武将の阿鼻叫喚つうか地獄絵図状態になってしまっている。そんな中、黄蓋が「高順の胸の傷や楽進はどうなる?」と言って「何で黄蓋殿が高順の胸の傷を知っているのだろう?」という話題になりかかったが・・・どうでも良い話である。閑話休題。袁術軍中陣が出張って来た頃に、高順隊は一度陣形を整えるために下がり始めた。孫権・韓当の部隊はほとんど被害は無いが、高順隊に倣う形で一度後退。袁術側の前・中隊が一体化して攻めて来るのを、こちらも黄蓋率いる中衛と連携して迎え撃つ。尤も、前衛の将軍であった陳蘭は孫権隊に属していた太史慈に、雷薄は蹋頓に。また多くの兵が死傷、逃亡している。この後も両軍の前・中衛部隊が押し合っていたが将兵の質に勝る孫策軍が終始圧倒。その中で中衛部隊の武将である陳紀が孫権隊に属していた甘寧に討たれている。日が沈んだので両軍共に軍を退いたが、この日だけで袁術側の死傷者は万に近く、孫策側は千数百ほど。負傷者を含めればもっと多かっただろうがまだまだ元気な者が多い。まずは孫策の勝利と言って良い結果に終わった。これ以降数日に渡って両軍は何度も衝突。時には紀霊自らが夜襲部隊を率いて攻め込んでくることもあったが、常に細作を放ち続けていた孫権・高順隊によって完全に阻まれて被害を大きくしただけ。この夜襲時に紀霊は趙雲と再び対戦し、今回も何合と打ち合ったが敵わずに撤退している。連日の敗北で士気が低下する袁術側だが、これに加えて「食料が無い」という弱点を抱えていた。紀霊は袁胤に食料の手配を求める使者を送ったが返事も来ない。待っていても食料は来ず、かといって前面の孫策軍と戦わないわけにも行かない。兵は毎日のように逃亡し、或いは孫策側に降っていき、更に食料も底を尽いた。紀霊は自分の食べる分を減らして兵士に回していたが、その程度では焼け石に水だ。、10万を超えた兵も半数を切り食料も無い以上、紀霊率いる袁術軍は盧江に撤退する意外に道は無かった。俺に出来る事は何も無いのか・・・と意気消沈して退く紀霊だったが、この時点で盧江を守っている筈の袁胤は勝手に寿春まで撤退していた。理由は簡単、紀霊の送った使者からあれこれと事情を聞いた袁胤は「紀霊ですら勝てないのに私がどうにかできるわけが無い」とすぐに兵を纏めて逃げていったのである。ご丁寧に城内に蓄えてあった僅かばかりの食糧も全て持ち去って。城に入った後にそれを知った紀霊は「我々はまだ、戦っているのだぞ・・・? それを、こうもあっさり・・・」とその場で膝から崩れ落ちたという。まだ兵もいる、盧江の民もいる。それなのに、この盧江を任された責任者が彼らの食料まで奪って逃げる。動く気力も失った紀霊の傍にいた李豊、橋蕤らは遠慮がちに「紀霊殿、降伏致しましょう・・・」「もう、勝ち目は・・・」と語りかけてきた。「我々の首を献上すれば、孫策殿も兵を殺すような真似は致しますまい。」と、これは閻象。紀霊は振り返り、生き残っていた武将を見回して「・・・うむ。」と頷いた。彼らはその日のうちに孫策の陣まで赴き「自分達の首を差し出すので、兵と官民の降伏を認めていただきたい」という意思を伝えた。孫策は降伏を受け入れたが彼らの命を取るつもりはなく、また周喩や趙雲の命乞いもあって「降伏してきた将兵全て」登用、希望があれば帰農も認めることにした。ただし大きな問題があって、彼らの食料と盧江の民の分の食料を孫策側で手配しなければいけないという事だ。このために後方から大量の糧食を後方から運搬。けっこうな時間を浪費するが、このお陰で「袁術の圧制から助けてくれる解放者」という認識を民に与えることが出来たので不利になる、ということは然程無い。袁胤の行動は孫策軍を一時的に足止めすることに成功し、最初から低い袁術の声望を更に落とした、と言う事かもしれない。これが曹操であれば僅かな時間で戦力を出来る限り建て直すだろうが、何せ袁術である。折角得られた時間を何1つ有効活用できないまま、寿春攻防戦へと移っていく。~~~楽屋裏~~~虞翻の狭量さは凄いですよねあいつです(挨拶虞翻という人は内政とか医術(と、何故か占い)に長けて有能ではあると思うのですが・・・自分の気に入らない人は徹底的にこき下ろす・・・という困った性癖(ぇ?)を持っています。誰かに似てるなぁ、と思って考えたら、曹操の息子の曹丕にそっくりです。曹丕は「自分の気に入った人とは兄弟同然に付き合うが、嫌いな人や憎しみを抱いた人は忘れなかった」と言う人・・・嫌いな人には無茶苦茶こき下ろしてますし、主君すら軽んじる虞翻。曹丕の史実での干禁への仕打ち。そら狭量だわな・・・今回、生き残った袁軍武将は紀霊・李豊・橋蕤・閻象・梁綱です。死んだ奴らは個人的にあまり好きではない連中・・・w紀霊もですが閻象も好きだったりします。結構な硬骨漢だと思います。今回少し短かったかも(投稿してから気づいた後で何か追加しようかな?で、周倉のぇろすですが・・・あ り ま せ ん か ら。(本当に・・・と言っても誰も信じてくれそうに無い、何故だろうか・・・。さて、今回はこの辺で。次回お会いいたしましょう。ノシ