【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第70話 拠点ふぇーず。孫策は叔父の呉景の援護、という名目で袁術の下を脱し、己の勢力と足がかりを得るため劉繇を撃破。これによって一応の足場(丹陽)を得る事に成功した孫策は人材の招致・発掘に励みつつも更に勢力を広げていく。呉郡・会稽郡を始めとして各地を陥落させ、揚州を制圧。母・孫堅の時か、或いはそれ以上の領土を得ることに成功した。ただ、電撃的に勢力を拡大したために叛乱を企てるものも多く、特に呉の太守であり、一度は降伏した許貢という男は孫策を「危険な存在だ」と朝廷に上奏。曹操の力に頼って孫策を追い落とそうとしたのである。これに怒った孫策は許貢を抹殺。その時に許貢の世話になっていた食客数人が曹操の下へと逃げ、後に禍根を残すこととなるが・・・。他にも「東呉の徳王」を名乗った山賊の親玉、厳白虎(げんはくこ)が不穏分子を取り込んで孫策に反抗するも、これもすぐに鎮圧される。ようやく足場が固まってきた、というところで何かを勘違いした袁術が「孫策の得た領土は全て妾のもの、こちらから太守を送るので従うように」という指示を送ってきた。特に、丹陽の支配というのは微妙な線引きで、呉郡・会稽郡を陥落させたのは「孫策の兵力」だが、丹陽郡は「孫策と袁術の兵」ということになる。丹陽郡を陥落させた後、孫策は叔父の呉景と、彼の兵力を袁術の下へ送っている。これはおかしなことではなく、呉景は孫堅亡き後は袁術に従っており、その時点では最初から袁術配下であって、その兵力は袁術と同義。孫策はその叔父と軍勢を「返却」した後に呉と会稽の攻略に乗り出しており、こちらは独力で陥落させた、という話だ。また、袁術はこの時に国号を「仲」として「妾が皇帝となるのじゃ! 妾の手元には伝国の玉璽がある。すなわち、天が妾に皇帝となるべきと言うておる!」とこれまたお子様レベルの言い分で皇帝僭称を行う。孫策の得た領地と自分の領地を合わせれば確かに大勢力だろうが・・・孫策は「んなもん従うわけ無いでしょ」とあっさり拒否。袁術は「何故じゃー!?」と叫んでいたが、その腹心である張勲は「こうなるのは解りきってた事じゃないですか。それもわからないなんて、頭の中身沸いちゃってるんですね♪」と実も蓋もない発言をしている。各地の勢力からは「偽皇帝など認めるわけねーよ!」とそっぽを向かれ、孫策は「偽皇帝に従うつもりないし、独立しまーす」と袁術との断交を明言。これによって孫策は漢王朝へと形だけ近づき、正式に官位を得ることになるがそれはともかく。袁術の本拠は淮南(わいなん)の寿春、他に廬江(ろこう)という場所だが、劉表の治める荊州にちょっかいを出してそちらにも勢力がある。劉表からすれば追い出したい相手であるし、孫策からすれば袁術を倒して領土に組み込みたい、というところか。どちらにせよ、孫策は袁術と断交。孫策からすれば袁術を倒さない限りは真の意味での独立たりえないということで手加減をするつもりも無い。両者が決着をつけるのはもうすぐの話である。あるのだが・・・。揚州は建業。袁術との決戦を睨んだ孫策はここを一応の本拠地と定めていた。何せ寿春、廬江に程近く都市の大きさもかなりのもの。現状では此処が本拠地としてうってつけである。~~~建業城中庭~~~「平和だ・・・」高順は中庭に生えている木陰に座り込んでぼんやりとしていた。別に仕事をサボっている訳ではない。蹋頓や楽進達は警邏を行っていたり、李典は新造した投石器の調整。高順の仕事はそろそろ対袁術戦が近いから部隊の点呼や装備の点検を行って、という程度のものだったから既に終わってしまっている。だから、ぼんやりとしていても咎められる事はない。そうやって一時の平和を満喫しているところで、ある少女が走って逃げてきた。その名は孫尚香(そんしょうこう)、真名を小蓮(しゃおれん)という。孫尚香は孫家の末姫で、孫策・孫権の妹になる。年齢は若い・・・というかまだ子供だが、中々の武力を誇り、姉に劣らず猪突猛進なところがある。ところが色事に関して言えば、ともすれば孫策以上に積極的な面があって「小悪魔」というのが一番しっくりくる。よく陸遜や孫権の勉強タイムから抜け出して遊びまわっているようだが、今回も同じらしく、息せき切って走ってきた。「あー、こ、高順だ!」「おやおや。どうしました?」孫尚香はその場で駆け足をしつつ、回りをキョロキョロと見回し、高順のすぐ横にある茂みに身を隠した。彼女は高順を嫌っていない。むしろ、自分より少し年代が上の男性として懐いているし、高順もこの娘を嫌っておらず普通に接している。よく「ラーメン食べに行こ!」と誘われ(たかられ)ているし、この娘の食べっぷりは傍から見ていて気持ち良いくらいだ。飛び込んだ茂みからガサガサ、と音がしてそこから「高順、私がここに隠れてること言わないでね!」と聞こえてくる。「時と場合によります。」「ひどい! ・・・あ、来た・・・絶対言っちゃ駄目だからね!」抗議の声に応えることなく、高順は孫尚香が今しがた走ってきた方向へと目をやった。彼女を追うように走ってきたのは、高順も良く知る臧覇(ぞうは)であった。はぁはぁ、と息を切らせて走ってきた彼女は高順の側まで走ってきて急ブレーキ。「こ、高順さん。あの、小蓮様を見かけませんでしたか!?」昔は高順お兄さん、と呼ばれたものだが、臧覇はこのところ高順を「高順さん」と呼ぶ。「どしたの、臧覇ちゃん。」「どしたの、じゃ無いんですよ! 小蓮様ったら、またお勉強から逃げ出したんです!」「ほほー。また、ねぇ・・・。そんなに逃げ出す回数が多いのかい?」「多いどころじゃなくて、毎回逃げ出そうとするみたいです・・・。孫権様だってお忙しい中で機会を作ってお教えくださるんですから」困りました、と臧覇は本当に困っていた。まったく、このお姫様もわがままだなぁ、と高順は茂みを見る。どの時代でも勉強をさせてもらうのは金がかかる。こんな時代で教養があるというのはそれだけで素晴らしい事なのに。そういえば、上党の兵も計算とか出来ない人ばっかりで丁原様も困ってたな、とふと思い出した。「そっかー、解った。そこの茂みにいるから連行しちゃってください。」『!!?』高順の言葉に、臧覇は茂みの中へ押し入り、孫尚香は茂みから逃げ出そうと、同時に動いた。「見つけましたー!」「なんで言っちゃうのよー!?」そりゃ言うでしょ、と高順は呟いた。孫尚香はそれでも上手く逃げようとちょこまかと動いて臧覇を撒こうとする。ところが毎度の事なのか臧覇も慣れた物で、ぴゅいいいっ! と指笛を吹く。するとどこからか孫尚香の親衛隊数人が現れ、一瞬で孫尚香を捕縛。縄で縛って連行していった。「うわーーーん! 高順の馬鹿ぁぁぁっ!」孫尚香は吊るされたまま目の幅涙を流しつつ、高順への恨み言を叫びながら連れて行かれたのだった。それを「はいはい」と適当に手をひらひらさせて見送る高順。どこからあの人たちは出てきたんだろう、とか考えているが、多分突っ込んではいけないのだろう。臧覇は「はー・・・」と溜息をついてから高順に「ご協力感謝です!」と頭を下げた。「いやいや。・・・しかし、きっちり仕事してるんだね。」「え? ぅ、そんな事ないですー。」実は臧覇、孫尚香の親衛隊(見習い)の一人として働いている。「臧覇を尚香殿の親衛隊として少し鍛えてみないか?」と周喩や黄蓋からの申し入れがあり、臧覇もそれに乗り気になったため、こういう事になっている。だが、これは体のいい人質だということを高順達は理解している。宮廷に近いところに置いて自分たちが裏切らないように、ということだ。そんなことをせずとも裏切ったりとかはしないが、もしも臧覇に何かあれば高順一党は平気で反旗を翻す。しかし、孫策や周喩もそれを解っているし、人質である事も否定は出来ないが周喩はどちらかと言えば臧覇の能力に着目している、と言うところが一番の理由だったりする。臧覇は反董卓連合の騒ぎから、少しずつだが高順らに師事をしている。自分の育ての親に当たる沙摩柯が武の人だし、高順一党全体に尚武の気風があるから自然に臧覇も武の道を目指す事になる。何せ、彼女の師が凄い。当代随一と言える人々ばかりなのだ。高順・趙雲・楽進・周倉・沙摩柯・蹋頓。今はいないが閻行や張遼、華雄にも一時的に教えを乞うている。馬術・馬上戦闘術・剣術・槍術・拳術(五胡式格闘術)・気術・・・と、あれこれやっているが、与えられた課題は全てこなしているので本人の本気振りがわかろうというものだ。今のところ陸戦特化だが、周倉が水上戦闘を(何故か)得意としており、そちらの知識も教わっている。そんな人々から教わっていて、実力が付かないはずもない。実際、臧覇の戦闘力は同年代を軽く突き放すどころか桁が違うものだ。臧覇の訓練風景などをたまたま見ていた周喩が「このまま遊ばせるのはいかにも勿体無い。尚香殿の護衛にして、孫家に忠を尽くす武将の一人に・・・」と考えるのも無理からぬことだったし、孫策もその考えを受け入れている。「ところで」「はい?」臧覇は行儀良く高順の隣に正座している。「臧覇ちゃんはお仕事行かなくて良いの?」今日は非番ですから・・・と笑う臧覇。そういえば、今日は親衛隊の服を着用していない。(孫権の親衛隊服は甘寧の着用するのと同じらしく小蓮の親衛隊服もそれほど変わらないものだ。それなのに捕獲に駆り出されていたようだ。それだけあの小さいお姫様の逃げる回数が多いと言うことか。「孫権殿も回りも苦労するだろう。大変だなぁ・・・」と高順は笑うが、臧覇は「そんな事はありません」と返した。高順のほうが沢山の人命を抱え込んでいるのだから、と臧覇は答える。彼女は真面目な話を続けるのを忌避するように「あの、1つお願いがあるのですけど。」と切り出した。「ん?」「久しぶりにお手合わせ、願えますか?」「・・・ふぅむ。」高順はちょっぴり考えた。いろいろな人に教えを乞い多くの技能を得ながら、その結果少しずつ自分自身の戦い方が解ってきた臧覇だが、彼女は高順から見てかなり厄介な使い手なのである。彼女の戦い方は、呂布や閻行に似ている、と言えなくも無い。ただ強力な攻撃を、ただ速く打ち込んでくる。シンプル且つ付け入る隙の無い手合いで、打ち破るとすればそれ以上に強く、速く打ち込むというものしかない。小手先の技術では勝ちにくいというものだ。時折体術を織り交ぜた攻撃を仕掛けてくるからそれも厄介だが、純粋に強い、と言う言葉が当てはまる。考えた高順だが「ま、いいか。負けても良いし。」と情けない事を考えつつ「じゃあ、やろうか。」と立ち上がった。「はいっ!」と元気良く答える臧覇は嬉しそうであった。~~~2時間後、中庭~~~「ぜぇ、はぁ・・・」「はー。はぁー・・・」「ははは、頑張れ頑張れ。」息切れする高順と臧覇。その二人に声援を送るのは趙雲。彼女は何時の間にやら、ギャラリーとしてこの場所にいた。趙雲だけではなく、孫権と、その孫権の授業から抜け出してきた孫尚香。孫権は追いかけてきたらしいのだが、中庭での立会いに興味を持ってそのまま居座ってしまった。他にも周倉、周喩、甘寧、黄蓋など・・・多くの人々が高順と臧覇の訓練を見に来ていたのであった。「臧の字も大将もがんばれー!」「あの歳でああも動くか。驚いたな・・・。」「臧覇も大したものね。周喩が目をつけるだけあるわ。」「ふふ。しかし、高順も大したものです。」「そうさなぁ。臧覇の奴め、攻撃が早いだけではなく重い。教えた者共の薫陶が行き届いていると見える。」応援やら何やらが混じっているが、それを言われている本人達に聞こえてはいない。(ふぃぃぃ・・・また随分と腕を上げたな。)by高順(うう、隙が無い・・・どうしよう・・・?)by臧覇お互い決め手が無く(流石に高順も本気は出せない)、「さあ、どうする?」と悩んでいる。それにしても強くなったものだ。やはりこの世界は女性のほうが元からの身体能力・成長率共に高いのだろう。男性はどちらかと言えば大器晩成なのかな・・・? と少し考えた所で、高順に隙が出来た。その隙を見逃さなかった臧覇は槍を上段から振り下ろす構えを見せて突撃。高順も上段からの攻撃に備えて防御の型を取る。「せああああっ!」臧覇の雄たけびが響き「ぶつかる」と思った瞬間、振り下ろされるはずの槍は高順の足元に突き刺さった。「足・・・!?」足というより、足と足の間の砂地に刺さったのだが、臧覇はその反動を使って槍の柄を握ったまま棒高跳びのように高順の顔元へと飛び掛る。過去の事だが、高順が呂布に挑んだ時も同じような事をして意表を衝いたものである。「ちぃっ! って、ちょっ・・・!」そのまま蹴りの一発でも来ると思ったが、来たのは臧覇の太ももと太ももの間。しかも、何故かスパッツのようなものを履いていて、何と言うかいろいろと丸分かりである(?『なぁっ!?』「もがぁっ!?」「ちぇやああああ!!!」硬直する人々など気にもせず、臧覇はそのまま高順の頭を太ももと太もも、ついでに股間で挟み込み、柄を握った手に力を込めてフランケンシュタイナーの要領で高順を投げ飛ばそうとした。しかし・・・槍の突き刺さり方がイマイチ悪かったのか。単純に刺した時の力が足りなかったのか。あるいは練習用で先を丸めてあるのがいけなかったのか。込められた力に耐えられなかったのか、槍の穂先が「すぽーん!」と地面から抜けて、そのまま高順の股間へと。めごしっ。「くぁwせdfrgtyふじこlp;@:「」「!?」意味不明な叫び声をあげた高順は、天国と地獄を同時に味わい股間を押さえて轟沈。周りにいた人々は全員「・・・」と、呆然&絶句していた。まさか、こんな訳のわからない幕引きになるとは誰も思っていなかった。意外というか馬鹿らしい決着に孫権はこめかみを押さえて「はぁ~・・・」と溜息をつく。今、自分達の目の前で股間を押さえて苦しんでいる高順に自分は負けたのだなあ、と思うと恥ずかしいと言うか何と言うか。黄蓋と周喩も「はぁ・・・」と何とも言いようのない表情。臧覇、周倉は「ごめんなさいごめんなさい!」「たいしょー!? しっかりー!」と叫んで混乱、誰も纏めようとしない。警邏から戻ってきた蹋頓と沙摩柯がその惨状を見て、慌てて高順を抱えて医務室に駆け込むまで、高順は延々悶絶する羽目になるのであった。・・・体調が戻るのに3日ほど要したそうだ。その後、臧覇は蹋頓に「高順さんが(性的な意味で)使い物にならなくなったらどうするのです!」としこたま叱られ、その説教を聞いていた人々は(そっちの理由で叱るんだ・・・)と思ったとか。高順も高順で蹋頓に「いいですか。私は女性関係には寛容ですけれど、臧覇ちゃんはやめてください。あと数年して食べ頃になってから「ぱくり」といくべきなんです! あ、でも双方の合意の元にお願いしますね?」言われ(え、問題なのは年齢なんだ・・・?)と周りが思ったのも言うまでもない。単純に臧覇が歳若いから、でそんな事を言われる辺り信頼があるのか無いのか解らない高順である。そもそも高順は臧覇を可愛く思っていても妹を可愛がるような気持ちであって、よこしまな考えを抱いているわけではない。それでも発育が良く、胸の大きさならとっくに甘寧を追い越して周泰程度はある臧覇に魅力を感じないか、と言われたら・・・あと数年したら有りかな? くらいは思うだろう。蹋頓はそれを敏感に感じ取ったのだろうが、本人の言う通り前述のものは年齢を考えての発言だ。それさえクリアすればいつでもヤっていいよ、というのは少しばかり感性がずれている気がしないでもない。ただ、臧覇本人も「あぅぅう」と真っ赤になって反論もしなかったことを見れば、兄として以上に高順を慕っている気持ちはあったのかもしれない。こんな日常を繰り返しながらも、孫家は着実に将兵を揃えて戦いの準備を進めている。その孫家が袁術との戦いに臨むのは高順がおかしな説教を受けてから数週間後の話であった。~~~楽屋裏~~~臧覇ちょーき○ーものを一瞬でも思い付いた私は死ぬべきだと思うあいつです(挨拶今回は拠点フェイズでした。ほぼ出番のない臧覇のお話でしたねー。歳が近いから小蓮のお友達兼護衛の一人、みたいな。これだけ強ければ孫呉の次代の将として目をかけられてもいいかなぁ、ということでこんな設定と相成りました。しかし、主人公・・・本当にアレですなあ(遠そういえば、原作では袁術が荊州を牛耳っていたのですな。その辺りすっぽーんと忘れておりました。まあ・・・いいか(ナヌゥさて、次回がようやく孫策vs袁術でございます。袁術もまたあっさり負けるのでしょう。そこから先は内政とか拠点フェイズになるのかな?それではまた次回。