真・恋姫†無双 ~~~高順伝外伝 河北の王・袁紹伝~~~ 第9話界橋の戦いが、曹操の仲裁によって一応の終結を見た3ヵ月後。許昌・・・許都と呼んでもいいが、そこを根拠地としている曹操は「宣戦布告」と「袁紹南下」の報を同時に聞いて「はい?」と首をかしげた。宣戦布告の報告が届いたと同時に一気に国境付近の小城に向かって攻め寄せたのだという。その数はおよそ3千。対して、城を守る曹操軍の守兵は700かそこら。まさか、公孫賛・張燕を放置して此方へ来るとはね・・・、と曹操は自分の予測が大きく外れた事に舌打ちした。もう少し時間が欲しかったものだ、とも思う。今はまだ万全とは言いがたい状況だから。許都の会議室ではその対策にどう動くか、と曹操以下、重鎮が顔をつき合わせて話をしていた。曹操はそれを片手で制して、荀彧のほうへと顔を向ける。「桂花(荀彧の真名)、今すぐ動かせる兵の数はどれくらいかしら。」「は。予測よりも動きが早すぎます。現状で動かせる兵数は2、3千がいいところです。」「少ないわね・・・。」「申し訳ありません。もう少し時間をいただければ2万以上の動員は可能です。」「親衛隊を動かせばどれほどになるかしら。」「曹操様・・・」親衛隊を動かす、と言う言葉に夏侯淵が眉をひそめる。親衛隊を使うというのは、それほど曹操が追い詰められた状況と言うことだからだ。典韋と許褚もそこには含まれている。「火急の事態だもの。贅沢を言う余裕など無いわ。」「親衛隊を含めれば、更に五千といった所です。それでも7・8千程度」曹操と荀彧はあれこれと話し込んでいるが、一人・・・夏侯惇だけはよく解っていなかったらしい。隣にいる妹、夏侯淵にボソボソと、「なぁ、秋蘭(夏侯淵の真名)」「む、どうしたのだ、姉者。」「袁紹軍は3千とか言ってたよな?」「うむ。」「じゃあ、なんでこっちの兵が7千とかで少ないんだ? 楽に勝てるじゃないか。」「姉者、あの袁紹だぞ? あの無理無茶無策無謀の、だ。それが僅か3千で攻めて来るなど普通にありえん。」「・・・だから???」全く解ってないな、と苦労性の妹は溜息1つ。「つまり、だ。後続の兵がいるだろうという事だ。」「その数は?」「それがまだ掴めていない。だから7千や8千で足りるかどうか、という話なのさ。」「・・・むぅ」そういった話をしている間にも曹操は話しを進めていく。「そうねぇ・・・霞(張遼の真名)と沙和(干禁の真名)を派遣しようかしら。あの2人にもそろそろ働く場を与えてやりたいところね」「沙和はともかく、霞ですか・・・。」「あら、桂花は不満かしら?」「いえ、そういうわけでは。ただ、彼女はついこの間出産したばかり・・・大丈夫でしょうか?」「ふぅむ・・・そういえばそうね」そう、張遼はほんの少し前に娘を産んでいた。今は彼女の義理の母親である閻行、戦友ともいえる干禁と共に住んでいる。その子・・・張遼は「張虎」と名づけたそうな。夏侯淵に匹敵する武才と統率力を持つ張遼だが、身重と言う事情があってこれまでは働かせようにもやりようがなかった。だからこそここで抜擢しようと思ったのだ。だが、その思考も「報告いたします!」と入ってきた物見によって一旦遮られた。「何事?」「は、袁紹軍は国境付近で停止。城に攻めかかることなく・・・付近の地形を調べている模様!」「・・・何ですって? 攻めかかってくるつもりは無いという事・・・?」あの麗羽(袁紹の真名)が? 攻める事もせずに偵察・・・?そ ん な 馬 鹿 な。(ありえないわ、絶対に・・・あの娘、悪いものでも食べたのかしら? それとも頭の中身がひっくり返りでもしたのかしら!?)微妙に混乱する曹操であったがすぐに気を取り直した。「解ったわ。稟(郭嘉の真名)と風(程昱の真名)が守備をしていたわね・・・。後で呼び戻すわ、麗羽がどう動いていたかを直接聞きたいわ。良いわね、荀彧」「はっ。では、袁紹軍が退いたらすぐに。」「よろしく。でも・・・そうね、もし攻めて来てもいいように援軍を出しておく。春蘭!」「はいっ」夏侯惇は元気よく返事をする。頭の中身は残念な彼女だが、こういう時は自分の出番だと理解していた。「貴方が兵を率いて向かいなさい。数は500もあればいいでしょう。ただ・・・」「ただ?」「向こうに着いたら風と凛の指示に従いなさい。これは私からの命令、守れるわね?」「うっ・・・解りました。」「宜しい」言い渡されて頷く夏侯惇であるが、その場にいる全員が「言う事なんて聞かないのだろうなぁ・・・」と思っているのは公然の秘密だったりする。(荀彧が珍しく何も言わなかったが、それどころではないようだこの騒ぎは、袁紹が地形・地理を調べ上げたところで軍を撤退させたために小競り合いにすらならなかった。地形調査は、曹操と袁紹の国境の広範囲にわたって行われたらしく、徐州方面でも袁紹軍の姿を目撃したといわれる。その後に、夏侯惇と共に許都へ帰還した郭嘉・程昱に曹操は色々と袁紹軍の様子を聞いたが、2人は「袁紹は最初から此方を攻める気が無かったようです」と答える以外出来なかったという。これを聞いていた曹操以下「本当に三千しか出してなかったのか・・・」と意外に思ったとか。袁紹だが・・・こちらもこちらで大変な事になっていた。田豊が本当に病にかかってしまったのである。高齢である彼にとって、北方の寒さは袁紹の言う通り相当に堪えたのだろう。田豊は現在、自分の居館で静養しているのだが相当性質の悪い病にかかってしまったらしい。咳が止まらず、熱も中々下がらない。このような体調では曹操との戦に随伴させる事は不可能だ。袁紹はそれを重く見て曹操との戦いを先延ばしにする、とまで考えたが田豊がそれに反対をした。「曹操は未だ開戦準備が整っていない。時間を与えれば公孫賛らも動き出すだろう。両面作戦にならぬように、という当初の方針に従うなら今しかありません」と。それを受けて、迷いはしたものの袁紹は当初の予定通りに開戦を決定。北平・晋陽に対して最低限の、その他の各都市にも賊や治安維持のための兵力を残し、動員可能な兵力を全て南下させる策に出た。三千の兵が国境沿いに・・・というのも、本当にただ地理を調べ上げ、どこから攻めいるか策定していたのだ。その他の地域にも僅かな兵を繰り出してあれこれと調べさせたが・・・やはり、本拠である許都を叩くべきだ、という結論に達した。袁紹が本拠地と定める鄴の南東に濮陽。その濮陽の南西に、順番に陳留・許都となる。そして、許都は鄴から見て真っ直ぐ南に位置する。そして、その許都にこそ漢王朝の象徴たる皇帝、劉協がいるのだ。そこをとって、皇帝を奪還さえすれば曹操の求心力も支配力も一気に落ちる。ただ、袁紹が皇帝を推戴するのか、ただ保護するだけにするのか。まだ本人もそこを考えていない。一部、「このまま曹操を倒し、北方も平らげてしまえば敵対できる勢力も無い」と豪語、袁王朝を作っても良いのではないか、とまで考える配下がいる。審配など「天下は天下の天下にあらず。別段、劉氏が帝でなくとも良いのです。」と進言してきた。暗に「天下をお取りあそばせば如何です」と言っているのだ。これを聞かれたら即逆賊認定ですわね、と苦笑してその意見はやんわりと却下したものの、審配は本気でそう考えている。ともかく、袁紹は兵も将もできるかぎり曹操との戦いに投入するつもりである。郭図や許攸まで連れて行くというのだから、それだけの決戦になる、と踏んでいるのだ。兵も将も揃え、物資も必要分量を揃えた、と袁紹は出陣前夜に田豊の居館を訪ねた。小間使いやら何やらが慌てて応対してくれるが、それらを気に留めず袁紹は田豊の寝室まで歩いていき、扉を叩いた部屋に入っていく。「入りますわよ、翁」「ごふっ・・・ほほほ、入ってから言う言葉ではありませぬな、ごほっ」寝台で横になっていた田豊は起き上がろうとするが、袁紹はそれを制した。「そのままで構いませんわ。寝てなさい」「ほほ、申し訳ありませぬ。」調度品など無い、飾り気の無い部屋だ。田豊翁らしいですわね、と思いつつ袁紹は椅子に座る。「・・・明日、我が軍は出陣しますわ。向かうは許都。もっとも、曹操さんが出張ってくるのは見えておりますけど。」「そうですな。あの御仁ならば自身の手で決着をつけようと考えるのでしょう。まったく、このような事にならなければこの爺も同行いたしまするに。ごふっ」「ふふ、ご老体に無理強いは致しませんわ。早く病気を治しなさい。翁にはまだまだやって頂くことがあるのですからね?」「おやおや、殿は老人をこきつかうおつもりですか。酷いですなぁ・・・げほっ、げほ」笑って咳をする田豊を、袁紹は寂しそうに見つめる。この戦いには、袁紹は全てをかけて挑む。負ければ二度と巻き返しがきかない。逆に勝てば曹操に反撃する力が残らない。2つに1つの結果である。それを見越してか、袁紹は各都市の太守に「此度の戦いで私が負ければこれを開いて、後の指示に従いなさい」と木簡を届けさせている。簡単に言えば「降伏してしまえ」という内容だ。自分が負けてしまえば、そこで見放されても仕方が無いし、変に忠誠心を出されてしまっても困る。負けたら負けたで、潔く降ってくれれば見せしめで誰かが滅ぼされるという事は少なくなる。民にも将兵にも被害が極力出ないように、という彼女なりの考えだった。戦う前から負けた心配をするのはらしくないとは思うのだが、なにせ事が大きすぎる。「ふ、減らず口が叩けるのならば心配は不要ですわね。・・・さて、そろそろ行きますわ。」「ごほっ。お気をつけて。」「ええ。せいぜい、勝利の報を待っていなさいな。」袁紹は、部屋を出るときに一度だけ振り返り・・・そして、今度こそ出て行った。袁紹は出陣の下知を出し20万以上の兵を率いて南下、黄河を越えて曹操領の白馬を攻める。白馬を守備するのは曹操の配下である劉延と言う男で、兵力は数千。一万にも満たない。そして、急造ではあったが曹操も3万ほどの兵力をかき集めており白馬の救援に向かっている。だがこの戦いは袁紹軍の圧勝、というかそれ以前の段階で終了している。曹操は、干禁に別働隊を率いさせて遊撃させ、自分達が白馬で守りを固めていけばある程度防げると思っていた。統率力の無い袁紹の事だから、先鋒部隊を出して任せきりにしているだろう、と踏んだのである。ところが、袁紹は僅か数千の篭る白馬を全軍で攻撃。白馬は1日と保たず陥落。劉延は僅かな兵と落ち延びるのだった。間に合わなかった、ということでしかないが、袁紹はその白馬を前線基地か、或いは補給基地にするために人を入れて守りを固めた。補給経路の1つにしようと言う魂胆だ。ここで一気に攻めるべきかもしれないと思ったし、懲りない郭図らがそう進言してきたが袁紹は迷った挙句それを却下している。補給を甘く見ると痛い目にあう、ということを田豊から何度と無く教わっていたからだ。「時と場合にもよりますが・・・何よりここは敵地。少しくらい慎重なほうがいいですわ」と言う事だった。~~~白馬にて~~~「あーぁ・・・折角思っきし戦えると思ってたのにさぁ。」設営されている陣を歩いている文醜が、つまらなさそうに歩いている。その隣にはいつものように顔良がいる。「そんな事言ったら駄目だよ、文ちゃん。」軽くたしなめるが、文醜は気にしていない。「そりゃ、楽っちゃ楽だけどさぁ。出番も何もねーじゃんか。なんつーか、こう・・・ドババーン! って感じでズッギュゥゥウン! な戦いになると思ってたからさ、肩透かしって感じ?」「・・・。文ちゃんの、ドババーンとかズッギュゥゥウンの中身がある程度理解できる自分が怖いよ」全くもう、と嘆息する顔良。「言いたい事は解るんだけどね。でもさ、考えたら凄い事だよね。」「へ? 何が?」「だってさ、袁紹軍のほぼすべての武将と兵士がここにいるんだよ? 私、何人か見たこと無い人がいたし。それだけ、麗羽様が今回の戦いに本気でかかってるんだなぁ、って。」「むー。」これに関しては文醜も同じ意見だった。話をはぐらかされた事に気づいていないあたりが彼女らしいが、確かに文醜も見たことのない武将までがこの地にいたのだ。洛陽で曹操と同格の「西園八校尉」の職にあった淳于瓊(じゅんうけい)は流石に知っていたが、趙叡(ちょうえい)やら蒋奇(しょうき)、孟岱(もうたい)とか初めて聞いた名である。「まあ、いいけどさ。これじゃあたいらの活躍の場所が無いような気はするかなぁ」「ところがそうでもない。」「うぉ!?」つまらなさそうに頭の上で手を組んでぼけーっとしていた文醜だったが、いきなり後ろから審配が話しかけてきたので驚きつつ振り向いた。「審配さん。ご苦労様です。」「ん。・・・はぁ、田豊殿の苦労がようやく解ったよ。」「はい?」審配は少し疲れているようで、肩をゴキゴキと馴らして呟いた。「文官のまとめ役を一時的にやらされてるんだがな。これがまあ大変のなんの。」「あぁ・・・まあ、癖のある人々が多いですからね。」「そういうことだ。」顔良が苦笑するのにあわせて、審配も笑う。郭図・許攸のような自分の利益ばかり考えているような連中もいれば、崔琰や王修のように、律儀に働く文官もいる。短期戦で行くべきだの、長期戦でいくべきだの、幕僚内での不和も多く、そういうことのまとめ役をやらされているのだから、苦労も多いだろう。「ったく、幕僚の見解不一致はまだしも。許攸の甥が不正を働いた、だの・・・そういう情報は今は不要だ。まぁ、そういう雑多な情報を殿の耳に入れないようにするのも私の仕事さ」「へ? 何で麗羽様に知らせちゃ駄目なんだ?」「今は、と言ったろ。現状で大切な事は曹操に勝つ事だ。あまり余計な情報を入れて判断を曇らせないように、ってことだよ。・・・私が伝えるまでも無く知っておられたけど。」はぁぁ・・・と、審配は今日何度目になるか解らない溜息をついた。「大切な時期なのに、不正を働いて財貨を得る事を重視する・・・それを見逃せと言ってくる許攸もどうしようもない奴だよ」「・・・始末はつけないんですか?」「ああ。伝令を出して役人に逮捕させるさ。殿はそういう不正を見逃さないようにしてるしな。許攸の始末は微妙なところだけど」流石は、というべきか、審配は既に役人を仕向けていたらしい。その審配にしても、他所から流れてきた犯罪者を匿ったりして「亡命者の親玉」扱いされているが、それはあくまで袁家の兵力に充てるためで私心などは一切無い。余談だが、許攸は自身の家族を逮捕された事に怒り、袁紹に審配の処分を申し立てるが「不正をしたのは貴方の甥でしょう。本来ならば貴方も処分を免れないという事を理解なさい」と叱責され、袁紹と審配を逆恨みする。「なー、審配ー。」「さんをつけろ、さんを。で、何だ、文醜」「さっきさぁ、そうでもない、って言ってたっしょ。それって近々・・・」「ん? ・・・あぁ、その話か。そろそろ、お前の望む大決戦になるぞ。」「うっそ、ホントに!?」さっきまでのやる気の無さが嘘のように、文醜の目が輝いた。審配も顔良も、単純だな、とつい笑ってしまう。「ああ、嘘じゃないぞ。ここから南に「官渡」という場所があってな。曹操はそこに砦を築いていて・・・兵を詰めている。その数、恐らく10万は越えるだろうさ」文醜と顔良はふむふむ、と頷いて素直に聞いている。「その官渡を抜けば許都は目と鼻の先。そこが曹操にとっての最終防衛線といえる。殿と曹操の決戦の場となる、ということだ。」「じゃ、あたいの活躍の場があるってこと!? 10万以上の兵力がぶつかり合う大会戦に!!」「そりゃ、活躍してもらわなければ困るさ。殿も期待しておられるだろうからな。」「うおぉぉおっ! そうと決まりゃぼけっとしてらんないな! 斗詩、すぐに特訓だぁぁっ!」「え、ちょっと一人で盛り上がって・・・駄目だってば、引っ張っちゃ駄目ぇぇえっ!!?」顔良の服の裾を思い切り引っ張って、文醜は一気に走り出した。・・・どこに行くのかは知らないが、審配は無責任に「夕飯までには切り上げろよー」とあっさり送り出した。「審配さんのばかー!」という叫びが聞こえたが、それはあっさり無視した。まだやらなくてはならない事が多い。袁紹の命令を竹簡などに書き込んで、それを各部署に回して、とか色々と。口頭で伝えるとどうしても細かい事が上手く伝わらないので、戦争中でもそういう事に従事する内政官が必要だったりする。これほど規模の大きい軍団であれば尚更だ。あれこれと指示を出す袁紹も、その指示を間違いのないように各軍へ伝える審配も大変なのである。その頃の官渡要塞。こちらも既に曹操軍の主力部隊が集結している。当初こそ袁紹の速攻を予測して、兵站・将兵の集結など相当無茶をしてかき集めたせいで、過労で荀彧が倒れる程の突貫作業。袁紹が慎重に動いたお陰で、なんとか対抗できる戦力を集中配備する事ができたから結果的には余裕が出来たと言うべきである。曹操・夏侯姉妹は当然として、許褚、典韋、張遼、干禁、満寵、曹仁、曹休、曹洪、徐晃、史渙など、このときに動員できる武将級はほぼ動員されている。参謀としては郭嘉・程昱。他にもいるが、今回の戦いではこの2人がメインである。荀彧は本拠である許都で留守居。曹操側の兵力は12・3万ほどだが、武将の質で言えば此方のほうが高い。曹操もその点に自信を持っており「支えきれる」と判断しているようであった。弱点と言えば、屯田制度が思いのほか成果を挙げておらず、兵糧に不安がある。また、袁紹軍のほうが兵数が多く、それに怖気づいている将もいる。内通するべきかもしれない。と考えている者がいてもおかしくは無い。兵糧を少しでも多く持たせるためにどう切り詰めるか、そして将を離反させないためにどうするべきか。曹操が抱えている不安は概ねこの2つだった。南の劉表や袁術が、領内を狙ってくることもありえたが、曹操は「劉備では劉表を動かす事はできない。袁術も外部に兵を派遣できるほど資金の余裕が無い」事を理解していて、参謀である郭嘉・程昱も同意見だ。もしかして、という可能性をもつのが孫策だが、彼女は楊州制覇に向けて行動しており、此方に攻め込んでくることはまずない。荀彧が残るのは、その攻め込んでくるかもしれない可能性を考慮してのものである。袁紹とは違って後顧の憂いの無い情勢といえる。「ねぇ、張遼おねーさま」「ん、どないかしたか、干禁。」干禁に張遼。呂布勢力から降伏した2人は、すぐ部隊を与えられ一軍の将に抜擢されている。一部の心無い連中からは「降伏者の分際で」と陰口を叩かれているようだが、本人達はさほど気にしていなかった。結果さえ出せば文句を言う奴もいないし、何より張遼が妊娠していて、そちらのほうに意識を集中していたからだ。今は出産も無事に終わり、母子共に健康そのもの。まだ子も生まれたばかりで、曹操も荀彧の言う通りに出撃を取りやめさせていたが、それを聞いた張遼が発奮して「誰がなんと言おうとうちは出るからな!」と無理やり付いて来てしまった。さすがに張遼の事を案じた曹操によって、干禁は張遼の目付け役のような形にされている。(彼女は最初から出撃が決定していた。白馬でも一軍を任されている。その干禁と張遼は馬に乗って陣内の見回りをしている最中の話である。「張虎ちゃん、大丈夫なの?」「あー。そら問題あらへんやろ。閻行かーさんに任せとるし。」そう言われて、干禁は高順の母の姿を思い返した。閻行は最初「高順の子を宿した」という張遼に驚き、そして大笑いした。「まさか、朴念仁のあの子が貴方みたいな佳い女をね」と思ったそうだ。閻行は張遼を「霞さん」と呼んで家族として認識しており、張遼も閻行を母と慕い仲が良い。張虎が産まれた事で閻行は、これで私もお祖母さんになったのねぇ・・・と感慨深げであった。初孫ということもあって、彼女は張虎を凄まじく可愛がっている。張遼は母親だから当然だが、干禁も張虎を何度か抱かせてもらって「あうぅ・・・可愛いの!」と頬が緩む事が多かった。「確かに閻行さんだったら絶対守りきると思うけど・・・張遼おねーさまは大丈夫なの?」「ん? うち?」「うん。そのー、何と言うかいいにくいけど。」「・・・? ああー、授乳か?」「あぅ、はっきり言われるとこっちが照れるの。」顔を真っ赤にした干禁を見て張遼は「照れんでもええやろ?」と笑った。「確かに辛いかなぁ。かーいい娘に会えんのもやけど。胸が張って張ってしゃあないわ。」そう言った張遼は自分の胸を見下げて苦笑した。張遼は今まで、胸はサラシで巻いて、肩から着物を羽織って・・・と、露出の高い服装だった。ところが、子供が生まれたせいかどうか。サラシは変わっていないが、着物をきっちりと着るようにしている。本人は「さすがに一児の母になったからなぁ。順やん以外に肌見せるつもりもさらさら無いし。」とあっけらかんとした口調である。これには「意外と身持ちは堅いんだよね」と干禁は感心している。「ま、そんなんは速攻袁紹にお帰り願えば済む事や。ちっと鈍った身体にはちょうどええ刺激や。それにな。」「それに?」「これ終わらせたら、今度の狙いは劉表か袁術・・・もしかしたら孫策か? そこら全部叩けば順やんもおるやろ。更に劉備潰せば呂布とかも来れるし。なんとか早ぅにとっ捕まえてしまわんとなぁ。」「ん・・・そうだね。」「そしたら楽進・李典。趙雲達かて一緒に来る。順やんは曹操の事苦手みたいやけど、それで元通り。また皆で一緒に暮らせるってもんや。」「うん・・・うん!」張遼の言葉に、干禁は何度も頷くのであった。張遼は、彼が去ったであろう南の空をちらりと見やる。(この空の下、順やんもどこぞで生きてる。もしかしたらどこぞの勢力と戦っとる。・・・死なんといてや。うちの、んでもって皆の為に。張虎に片親おらんような寂しい結末にはしとぅないんや。頼むで、ほんま・・・)何かよく解らないけど地味に評判がよかったので無理やりでっち上げてみる。~~~むっさ番外編・もしも賈詡が高順を敵視しなければ? その弐~~~注意:状況が飛び飛びになってます。劉備が少し遅れて徐州へ入った状態でのお話になります。徐州、というか下邳(かひ)に入城した劉備達であったが、ここは既に呂布の勢力下にあった。下邳だけではなく徐州全域がそうだ。力で得たとは言え、それなりに善政を敷いて、それなりに民衆から支持されている呂布。劉備が交渉を試みたのは賈詡。下邳の広間にて、下邳は呂布の代わりに話し合いに・・・華雄や張繍をも従えて劉備との交渉に臨んでいた。いきなり「徐州全てを寄越せ」と言えば呂布の機嫌を損ねるだろう。それを危惧した劉備(というか諸葛亮や龐統)の考えで「まずは下邳と、下邳に蓄えてある物資の割譲」を迫った。ここを足場にしてじりじりと勢力を拡大したい、という願望があったが・・・それに増して重要なのが人員・物資の確保である。元からの持分が少ない事情もあって、とにかく一応の足場と人・物の確保が最重要事項。龐統は張飛と共に下邳郊外で陣営を張って入城を待っている形になる。・・・張飛だけでは何をするか解らないし。これに対して呂布・・・いや、この場合は賈詡だが、まず小沛(しょうはい)の張遼と広陵(こうりょう)の高順に相談をしたい、或いは呼び寄せるのでそれを待て・・・と持ちかけている。数日前でが張遼と高順の両名に、劉備の情勢と要求などを記した手紙を出しており、両者の到着と判断を待ったのである。その間、「広陵から送られてきた物資」は小沛へと輸送した。劉備は「それは下邳の物資だよね!?」と文句をつけて取り戻そうとしたのだが、賈詡は「あれは元々広陵の物資なのよね・・・つまり、高順の管轄にある物資。二人の答え次第で下邳に「元から」ある物資は全部渡すけど?」と相手にしなかった。明らかに詭弁だ。立場としては正式に州牧に任命されている劉備が上だが、実際に譲るかどうかの決定権を握るのは賈詡。その賈詡は自信満々であった。彼女は戦場で武を振るう才能は無いが、誰が相手でも恐れる事のないようなクソ度胸を持っている。関羽、張飛といった強者を並べた劉備にも全く恐れを抱かない。「ボクは構わないけどね。文句があるなら殺せば?」「え? そ、そんな事しないよ!」物騒な言葉に、劉備は首を横にぶんぶんと振って否定する。「でもねぇ・・・武神と謳われた呂布、神速を旨とする騎兵の申し子、張遼。汜水・虎牢で連合を相手に一歩も退かず、実質自分の手勢で下邳を陥落せしめた高順。4人がかりとは言え夏侯惇を押さえ込んだ華雄達。彼女達が貴方を叩き潰すために動き出すわよ。解ってんの?」「むぅ・・・そんな事しないって言ってるのにぃ・・・」これは、張遼らに手紙を介して返事を求めるのではなく、直接来させる理由の1つである。もし自分に何かあっても呂布なら押さえ込めるだろう。そこに押さえとしてあの2人と2人の部隊をここに向かわせている。「正統性があろうと何だろうと、今ここに住むのはボク達な訳。漢王朝がどうとか知った事じゃないわ。そもそも、あんた達にココ(下邳)を明け渡してボク達が得る物って何?」まくし立てられると何も言えなくなる劉備に代わって諸葛亮が答える。「私達と、漢王朝を敵に回さないという理と利です。反逆者の烙印を押されない、というのは大きな得ですよ?」この言葉に、賈詡はそれこそ侮辱めいた笑みを浮かべて鼻でせせら笑った。「ふん。反董卓連合を組んだ正義のお味方に相応しい言葉ね。あんたらのせいで、ボク達は住んでいた場所を追い出されて放浪する羽目になった。特に民衆に迷惑もかけてない、悪政もしてない。攻撃される謂れのないボク達がね! そのしわ寄せが民にも行ったってこと理解してるのかしらね。」「はぅ・・・そ、それは」「ボク達は負けて賊軍に。あんた達勝者は晴れて官軍になったわけ。それにねぇ、さっきも言ったけどもう漢王朝なんてどーだっていいのよ。賊認定される? 知ったこっちゃないわ」確かに、その通りである。既に賊認定されてるようなものなのに、それをネタに脅されたところで怖くも何ともない。賈詡の遠慮ない物言いに関羽が「無礼な」と怒るが、賈詡はそれにすら真っ向から立ち向かい、華雄も殺気を放ち威嚇する構えを見せる。それを、彼女は制する。賈詡にしても、今本気で劉備と矛を交えるつもりは無い。彼女の後ろにいる曹操を刺激したくないからだ。挑発をするのは、過去に攻撃された事への恨みと彼女の元の性格である。「利益を約束も出来ない、示す事もできないなら交渉にもならないわ。あんた達の手札全てを見せられてもこっちが納得できる物が何も無いのよ、解る?」「うぅぅうう・・・」「はぅ・・・」劉備達としては、ぐうの音も出ない。漢王朝云々は呂布勢力にとっては価値の無い話だ。賈詡はそれに変わる何かを示せ。ということを言っているに過ぎない。これが劉備側の泣き所であった。金も無ければ食料も無い、という弱点と、一応は漢王朝の血筋に在るとは言うものの「ただそれだけ」の劉備には、賈詡を納得させる材料など欠片もないのである。それでも下邳を譲ってやるという方向で動いているのは、劉備の後ろに曹操がいることが賈詡には解っているからだ。高順と張遼を呼び寄せるのもポーズのようなものだし、ここで劉備がおかしな事をしても(呂布と華雄だけでも充分可能だと計算しているが)確実に押さえ込める。押さえ込んだ後が続かないからしないだけで、地力があれば劉備に遠慮をする必要だって無いのだ。劉備にだってそれが解っている。が、ここまで言われては関羽が黙っていられない。彼女は劉備同様に漢王朝復興に懸けている。それを否定されて面白い筈が無いのだ。静かに殺気を漲らせるが、それを見て取った賈詡が「パキンッ」と指を鳴らした。直後、劉備・関羽・諸葛亮の目の前に数本の槍が突き立った。「っ!?」一同が見上げると、天井に穴があいており・・・そこから槍を突き下ろしたのがわかる。呂布や華雄もいるから劉備達を恐れているわけではないが、これくらいの手は打たせてもらっているよ・・・というパフォーマンスである。この辺り、諸葛亮ではできない賈詡の凄味であった。「で? どうするつもり? そっちが現状案で満足するか、それとも突っぱねるか・・・」言いかけたところで「がちゃり」と広間の扉が開いた。そこにいるのは張遼と高順・・・それと、蹋頓と沙摩柯の姿もある。(趙雲や楽進達は留守役その場にいる全員を見回して「いやー、遅ぅなってすまなんだな。」と適当に弁明しつつ入ってくる。「む、間に合いませんでしたか。」「遅いじゃない、張遼、高順。」「なはは、悪い悪い。順やんらとそこでかちおうてなぁ。んで、話どこまで進んでん?」賈詡は咎めるが、別に怒っている訳ではなく、軽い口調だ。華雄や呂布も「ひさしぶり」だの「やっと来たか」などと話し合っている。逆に、劉備らの表情は硬い。もしここで武力沙汰になってしまえば勝ち目など無いのだ。何とか有利な条件で話を纏めたかったが・・・よく考えれば、張遼と高順もこの件での決定権を持っている節がある。賈詡にどこまで話が進んだのかを聞かせて、「で、二人の意見を直接聞かせて欲しいのよね」と返事を求めた。張遼と高順は顔を見合わせていたが、張遼は「ま、うちはええけど。順やんは?」と高順に話を振った。高順は肩を竦めて「なるようにしかならんでしょ。」と、曖昧ながらも賈詡の考えを肯定する立場を選んだ。「答えは決まったわね・・・じゃ、色々と手続きするから。ボク達が出て行くのはその後よ。それは良いわね。」「え・・・ふえ? 今ので決定? 私達の議論なんていらなかったんじゃ・・・これってどういう」もう、劉備たちの意思など、どうでもいい形で流されどうでもいいノリで決定してしまった。あまりに流れが速すぎてついていけないのだ。「うるっさいわねぇ。あんたらにとって悪くない条件でしょ。あ、張遼と高順は行っていいけど、あとで話があるわ。」「ほいほい、ほれ、いくでー。」「え、俺達ってこれだけのために呼ばれたの?」高順も張遼に引っ張られてあっさり退出していった。~~~夜になって~~~「悪かったわね。折角ここまできてもらったのに。」「うちはかまへんけどなぁ。文句あるのは順やんみたいやし。」「そりゃ、人並みにはね・・・。」ある程度の話をつけた後、賈詡から「執務室まで来てくれ」というお達しがあり、張遼と高順は2人で執務室まで出向いたのであった。「広陵の物資の事? あれは小沛に輸送済みよ。劉備たちにただでくれてやるつもりは無いの。あれは袁術との外交で使用する予定なんだから。」「それもありますけどね。なんで劉備に下邳を明け渡すんです。」「ふふん。劉備の後ろに控えるのは曹操。どっちにしたって来るのは解ってる。劉備を追い返したら、それこそ「待ってました」と来るでしょうね」「だから、最低限の物だけ渡して、顔を立ててやったって事ですか。えげつない・・・」げんなりとしてしまう高順だったが、賈詡は「でも、物資を無駄にしないだけマシでしょ」と答える。「大体、あんなもん交渉ですらないわよ。漢王朝の権威を笠にしてれば言う事聞くと思ってんだから。馬っ鹿じゃない?」すっごく不機嫌そうに言う賈詡。「そう言ってやりなや。んで、うちらに用事って何なん?」「ああ、忘れてたわ・・・張遼、この街を引き渡したら、私達は小沛に入るわ。あんたを太守にしといて、今更だけど。」張遼は小沛の太守と言う扱いだ。ただ、下邳を引き渡してしまえば呂布の行き場所は小沛か広陵のどちらか。賈詡は西の曹操への警戒を最も強く感じており、ここにいた呂布軍の武将と兵を全て小沛へと移動させる腹積もりらしい。「ん、そら当然やな。うちも太守とかやらされて大変やったし、それはええけど。」実際、張遼は「あー、めんどくさい仕事少し減るわ」と安堵していた。資金も人も足りないという状況だったし、他の武将も来てくれるならそれはそれで大助かりだ。賈詡は悪いわね、と言って今度は高順へと向く。「で、高順。あんたには頼みがあるのよ。」「はぁ。」「1つ。あんたには袁術と同盟を結ぶ使者をやってもらうわ。」「はぁ・・・はぁぁっ!?」外交の使者を任せる。これは高順にとってはトンデモ発言であった。「本気ですか賈詡先生!? 俺に外交なんぞできるわけ・・・」「面倒な根回しやらなにやらはボクの役目。あんたはそれに沿って動けばそれで良いわ。でも、本当の目的はそこじゃない。」「・・・? 袁術と同盟は本命じゃない、って事?」「そうよ。ボクの狙いは孫家のほう。あんた、孫家の宿将である黄蓋や周喩と仲悪くないんだってね?」「む。」他家との武将と仲が良いと言うのは、あまり好意的に見られないことがある。何かあると内通を疑われる可能性もあるからだ。高順は何とも答えようがなく、賈詡も安心させるように繕った。「あのねぇ、おかしな意味で言ったんじゃないわよ。あんたのその伝手を利用してくれって事。」「ははぁ。袁術と同盟を結んでおいて孫家にも力添えをしておけ、と。軍師殿は腹黒いなぁ」「うるさいわよ、張遼。てかそれくらいじゃないとできないわよ、こんな仕事。高順、説明しとくわよ」孫家は間違いなく楊州への進出を考えている。それに力添えをして、その上ある程度の物資を回して勢力を作り上げるのに協力して来い、というのだ。「・・・むぅ、またしても他家の下で働く事になるか。」丁原様から(一時的に)曹操、公孫賛殿、張燕殿、董卓殿、呂布、そして今度は孫策殿・・・。正史の劉備ですらここまで主君を変えてはいないだろう。あれとは違って主君を裏切り、見捨てるような真似はしていないつもりだが・・・ああ、曹操さんとは敵対してるか。色々と思い出し「ずーん・・・」と落ち込む高順。「すまないとは思ってるわよ。でもね、これくらいしないと曹操と戦う事はできない。反曹操同盟を作り上げる事が、ね。いつか孫策が袁術を越えるわ。その時の為に縁と貸しを作っておきたいのよ。」「それで動いてくれるほど孫策殿って甘くないと思いますけどね・・・。ご命令とあれば動きますよ。あ、広陵は趙雲さんに任せていきますが良いですか?」「ええ、構わない。それとね、もう1つ頼みにくいことがあるんだけど。」「まだ何かありますか。」「もう少し、物資を融通してもらえないかなー、なんて・・・駄目?」「・・・理由は聞きましょうか。」またかよ、ってな表情で賈詡を見やる高順。ううっ、と少し気圧されつつも賈詡は理由を述べ始めた。「袁紹が動き出してるわ。」この言葉に、高順と張遼は「むっ・・・」と表情を険しくした。張遼は「あの馬鹿が動き出したんやなぁ」と思っているが、高順としては「公孫賛殿と張燕殿が不味い事になるな・・・」という事を思っている。「その袁紹と繋がりを持ちたい、っちゅーこっちゃな?」「ええ。でね、交渉用の物資を高順に賄って欲しいのよ。・・・白状すると、小沛にも物資の余裕があるわけじゃない。劉備を追い返さない理由の1つよ。今曹操と戦っても、勝ち目が少ない。」「はぁ・・・でも、繋がりを持つといっても。袁紹と接触する方法は? 曹操領通らないと無理じゃないですか。」「心配は無用ね。袁紹は平原を併合してるのよ。その隣にある北海まで進んでくるのも時間の問題・・・。」「そこまで計算しとるんかい・・・せやけど、よぅそこまで知っとるなぁ。」「ふふん、高順に貸して貰った影を総動員して情報をかき集めたのよ。袁紹と袁術は仲が悪いけれど、上手く巻き込んでやるわ!」一応の補足をすると、この大陸は現状で「袁紹と袁術の派閥」に分類される。益州や交州などは含まれていない派閥もあるが、袁紹派に属するのが曹操や劉表、袁術派が(強引に分類するなら)公孫賛や孫策と言うことになる。呂布はその狭間にある形で、両派閥と関係を持つと言うことになるが。袁紹派に属す曹操だが、彼女の戦力・兵力が大きくなりすぎた上、漢王朝を奉じた関係で袁紹から独立した一派と言うことになってしまっている。そういった異なる派閥と上手く付き合わないと先が見えないのが呂布であった。袁紹・袁術と結ぶとは言うものの、賈詡は「確実に孫策が袁術を圧倒するか滅ぼす」事を見越している。孫策が独立の方向で動いている、と言うことまでは流石にわからないまでも、あの孫堅の娘が袁術の客将で終わるはずなど無い。袁術との同盟など手切れとなることを前提に、かつ孫策とのコンタクトを取るためのダミーに過ぎない。楊州を征した孫策と北方で勢力を拡大する袁紹。それらと組めば「反曹操同盟」となって対抗が出来る。ここが賈詡の狙いであった。高順はこれらを聞かされて、相当に悩んだ挙句「解りましたよ・・・」と嘆息した。「袁紹にはできればかさ張らないようなものがいいのだろうけど・・・価値が目減りしない宝玉とか。」いや、その前に公孫賛が滅びないようにしないと・・・でも、そんな手があるかなぁ、と高順は別の方向で悩む羽目になる。「あ、そうだ。先生、ちょっといい?」「何よ。」「何でこんな大事な話なのに呂布が同席してないのさ。」「理解できないからよ。あの子「セキトと遊んでくる」ってどっか言っちゃうし。」「・・・だから陳宮もいないわけか。」「ええ。一緒に遊びに行くし・・・ったく、子供なんだから。」「実際に子供やけどな。」賈詡は、ふっ・・・と、とても遠くを見つめる。「会議とか、こういう話し合いにきっちり応じてくれるあんた達がものすごく頼もしいわよ・・・・・・。」『・・・頑張れ。』続かない。~~~楽屋裏~~~いきなりレベルの高いアルカディアに投稿した己の愚かさ(ry あいつです(挨拶ぐぢゅっ・・・ぬがが、蓄膿から来る鼻炎が大変な事に。さて。官渡前哨でしたね、今回のお話は。これであと数話のお話・・・袁紹は・・・死なないでしょう、多分(笑これが終われば高順君のお話に戻ります。ちなみに「何かよく解らないけど~」は続けるつもりはありません。これ続けると多分曹操が負けますしね・・・そうなったら勢力図がどうなるやら。ではまた次回・・・えくしっ(クシャミ