【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第5話メジャーな方々と出会いました。でも全員女性でした。嬉しいやら悲しいやら・・・。「はぁ、はぁ、はぁ!」「あともう少しだ、走れ!」「風はもう駄目です。後はよろしく・・・ぐぅ。」「ああ、もうまた寝始める・・・。諦めないでください、風!」こんなやり取りをしつつ褚燕の村へひた走る趙雲達。途中に岩場があり、彼女たち3人はそこを素早く抜けたが、後方の盗賊たちは数が多いためかそこで少し渋滞し、ある程度距離を稼ぐことが出来た。「はぁ、ふぅ。しかし星殿!あの村・・・何かおかしいぞ!」「ああ、どうも戦ってる真っ最中に見えるな!」村に近づくにつれ、どうにも様子がおかしいことに気がつく。何重にも柵をはり、騎兵やら歩兵やらが村の内外に陣を展開している。あれは官軍だろうか。そしておそらく村人だと思うが・・・柵の内側で槍を構え、弓を構え、こっちを見ている。「風もそう思いますねえ。こっちに対しても殺気満々。「おう、姉ちゃん達。もしかして誤解されてるんじゃあねえかい?」と言っておりますよ?」「・・・だから漫才は後にしてください、風。」「戦闘中か・・・。だが、入り込めば何とかなるのではないかな?少なくとも」最後尾を走る趙雲じゃ後ろをチラッと振り返る。そこには40人ほどの盗賊たちが『ヒャッハー!』×40「・・・・・・。こんな状況からは抜け出せると思うのだが!?」「それに関しては同意です!とにかく、どうにかして村に入れてもr「ぐぅ。」寝るなーーーー!!!」趙雲達は必死だった。(特に戯志才が。「高順、高順ーーー!!」黒髪を三つ編みにして肩から垂らしている女性兵士が走りながら高順の名を叫ぶ。「どうした!?・・・って何だ、郝萌?」郝萌と呼ばれた少女が不満そうな表情になる。「何だ、ですって?何か不満あるの!?」「いや、そんな息せき切って走ってくるからさ。もう内部まで攻め込まれたのかと。」「はぁぁぁ・・・。ま、いいけどさ。もう。」彼女の姓は郝、名は萌。この物語の1話において、いきなり高順が叫んだことに驚いて竹簡を取り落とした人だ。彼女も親衛隊であり高順から見れば先輩に当たる。2人とも齢が近く(郝萌のほうが年下だが)、よく一緒に仕事をする間柄のせいか良い友人関係だったりする。高順よりも年齢が下だが彼よりも早く親衛隊に抜擢され、優秀な人なのである。ただ、影が薄いのか派手さが無いのか、微妙に目立たない人であった。「で、何があったのさ?」「あ、そうそう。何かね、村の人から聞いた話なんだけど。東のほうから盗賊がこっちに向かってるんだって。」「何?盗賊?・・・まさか敵の援軍?」「でも、数が40人ほどだそうよ。これじゃ援軍にならないでしょ?それに、その先頭を3人の少女が走ってて・・・どうも、追われてるみたい。」「その3人が盗賊ってことはないよな?」「そこまでは。でも先頭の3人は必死になって逃げてるみたいだし、服装からして盗賊には見えないって聞いたよ?村の人もどうしようって。」うーん、と高順は腕組みをして考える。厄介のときに厄介なことがやってくるとは言うものの。こんな状態じゃなければ迎えてやりたい所だが・・・。しかし、このままではどっちにしても戦闘に巻き込まれるだろう。いっその事村の中へ避難してもらったほうがまだ生き残れる確率も高いだろう。賊の討伐も官軍の仕事だ、と思うし。ただ、自分の指揮権はあくまで与えられた100の騎兵だけ。機を見て一気に敵の横腹を突け、と言われている以上、ここで勝手に部隊を動かすわけにも行かない。この場合、一度朱厳に伝令を出し許可を得るべきだな。と高順は考えた。「よし、郝萌。悪いんだが・・・。」「朱厳様にも伝令出したわ。」「・・・流石だね姉者。」「へ?何よそれ?」「いや、何でも。」相変わらずよく解ってるな、と高順は感心した。指揮官は朱厳だから当然と言えば当然だ。この場合、一番近くで部隊を展開できるのは高順。なので朱厳にも高順にも知らせるのが一番最良だ、と考えたのだろう。ほどなくして朱厳のもとから伝令が来る。「高順殿!朱厳様よりの言伝を預かってまいりました!」「ご苦労様です。して、朱厳様は何と?」「村の方々に先頭を走る女性3人を村へ避難させるように伝えよ、と。そして騎兵隊を率い盗賊どもを追い散らせ、とのこと!」「承りました。」「では、私はこれにて!」伝令は慌しく帰っていった。「郝萌!村の人々に説明を!」「解ったわ!」高順は後ろに控えていた部下達のほうへ振り返る。「皆、聞いていたな!?これより我らは盗賊どもを殲滅する!面倒かもしれんが付いて来てくれ!・・・全兵、騎乗せよ!!」「おう!」~~~村東部~~~「おい、二人とも!見えるか!?」「ええ、あれは官軍の騎馬隊ですね!」「おおー、助けてくれるのですねー。」村のほうから騎馬隊がこちらに向かってくるのが趙雲たちからも見える。「ただ、問題は・・・。」「私達も盗賊と思われてるかもしれませんけどね・・・。」「・・・・・・。」そうだった。もし彼らが自分達を盗賊と勘違いしてたら?挟み撃ちにされる形になるか。というか疑われたら、自分達が盗賊ではないと証明する手立てが無い。「ま、まあそこは智謀の士である二人に任せるとして!」「おお、星ちゃんが全部丸投げにしてきましたよ。というわけで稟ちゃん頑張るのです。ぐぅ。」「あなたも丸投げするつもりですか!?」割と考えなしの3人だった。そうこうしているうち、騎馬隊がこちらへと走ってくる。これはまずいか?と思う趙雲達だったが・・・。先頭を走ってきた男、高順だが――速度を落とし「そこの3人!」と呼びかけてきた。先頭の男に倣って周りの騎兵達も速度を落とし始める。そこで稟が機先を制する形で「官軍の方ですね!盗賊に追われております、どうかお助けを!」と叫んだ。「俺の上党の・・・って、くそ、名乗る暇は無いよな。貴方達、早く村の中へ!」「え・・・?」その言葉にきょとん、とする趙雲達。「え?じゃなくて!早く逃げてください!」「その・・・そんなあっさり信じるなんて・・・我々の事を疑わないのですか?」「そんな事はいいから早く!・・・誰か!彼女達を護衛して村に!」「解った!さあ、早く!」「あ、ああ・・・。」「わ、解りました。」「おお、助かったのです。」とか何とかいいながら10人ほどの騎兵に付き添われ村の方へと走って行った。高順はそれを見届け、再度盗賊たちのほうへ馬を駆けさせる。「突撃!生かして返すなあっ!」「おおーーー!!!」盗賊たちも盗賊たちで今更ながらにどうするべきか悩んでいた。狙ってた娘達は官軍に保護されてしまったし、ほとんどの騎兵がこちらに向かってくる。目先の欲に囚われすぎて引き際を完全に見誤ってしまった。今の彼らに出来ることは3つあった。真っ先に逃げること、降伏すること、戦って死ぬこと。最後の1つだけはありえない。あと2つ、どっちが生き残れるかと考えたせいで。逃げれる可能性を失った。「斉射用意!・・・放てっ!」何十本もの矢が盗賊たちに飛んでいく。「う、うわ・・・に、逃げおげあっ!?」「お、お頭ぁっ!?ぎゃああっ!!!」始めの射撃のみで盗賊頭が射抜かれ、周りにいた十人ほどの賊も巻き添えになる形で死んだ。「ひ、ひぃぃ。逃げろ!」盗賊たちは一目散に逃げ出したが趙雲達を何里も走って追い続けた彼らは体力が残っていなかった。先頭を走る高順は槍で数人の賊を刺し貫いた。逃げようとして背を向けた瞬間に槍で貫かれる者。矢で射抜かれる者。剣で斬られる者。様々だったが、高順たちは盗賊たちをただの一人も残さず殲滅した。盗賊を殲滅した騎馬隊は、休むことなくまた村へと駆けて行く。その一番後ろを進むのは高順と途中で追いついてきた郝萌だ。その高順は凄まじく顔色が悪い。というか吐きそうな顔をしている。「・・・高順?」「・・・・・・うぅっ。」(やっぱそうなるよね・・・。)郝萌ははぁ、とため息をついた。別に高順が軟弱だとか、そんな感想を持ったわけではない。これは兵士という人を殺す職業なら大抵誰もが通る道だ。郝萌も初めて戦場に出て人を殺したときは思い切り吐いてしまった。(辛そうだなぁ。・・・よし。)郝萌は高順より先行し、回りの者に話しかける。高順には聞かれないように。「ごめん、皆。ちょっと先行っててくれる?」「お?どうかしたのか?」「あー、ちょっと高順が。その、ね?」「あぁ・・・。そっか、わかった。じゃあ先に行ってるぜ!」行こうぜ、とか何とか言いながら高順と郝萌を除いた騎兵達はすぐに村へと駆けて行った。「お、おい・・・あいつ、ら。う、うぅっ・・・。」郝萌が高順と同じくらいの位置にまで戻ってきて、馬を並べ心配そうに言う。「高順、皆気を使ってくれたんだよ。ほら、馬から下りて。」「うぐ、そ、そんな心配しなくても・・・・・・。おぅ・・・。」「無理しないの。別に恥ずかしいことじゃないんだからさ。そこの岩陰あたりで吐いて。」「う・・・。」駄目だ。もう限界だ。くそ・・・。高順は馬を止めそのまま下りる。もう歩く気力が無いらしく、その場で蹲ってしまった。心配した郝萌が肩を貸し、岩陰まで連れて行く。「す、すまん・・・。み、見ないでく・・・おぅぅっ」「大丈夫だって、ほらほら。」そう言ってしゃがみ込み、郝萌は高順の胸の辺りを小突いた。ただでさえ限界だったのにそこまでされたらどうしようもなく、高順はそのまま吐き上げてしまった。郝萌はそのまま高順の背中をとんとんと叩いている。「うう・・・。な、情けない・・・・・・。」嘆く高順に、郝萌は自分の水筒の蓋を開け、差し出した。「ほら、これで口ゆすいで。少しは気分良くなるよ。」「あ、ああ。すまない。」口をつけ水を含み口をゆすぎ、ぺ、っと吐き出した。水筒を返そうとしたが、そのまま返すのは失礼だよな?と考えた高順は口をつけていない自分の水筒を変わりに差し出す。「ぷっ。そんなの気にする必要ないのに。」笑う郝萌に、俺が気にするんだよ、と言い返し無理やり水筒を手渡した。はいはい、と苦笑して水筒を受け取る郝萌。吐けるものを全て吐いたからかもしれないが、高順の具合はすぐに元に戻った。人前で醜態を晒したのを気にしているのか、少し落ち込んでるように見える高順だが、郝萌は少しも恥ずべきでは無いと思っていた。人を殺したのだ。それも自分の手で。気分が悪くなって当然だ。「あまり気にする必要は無いわ。」と言うのみだったが、その優しさが辛いような嬉しい様な、微妙な気分を味わう高順だった。村に帰還した高順たちだったが、まだ本命の晋陽軍との戦いが終わったわけではない。朱厳が村の外で粘っている。すぐに伝令を出し、民間人の保護と盗賊を殲滅し終えたことを伝えた。これで朱厳様も退かれるだろう、と思い、また出撃の準備をしていると。「もし、そこの御仁。」「・・・?」呼びかけられた高順が振り向くと、先ほど村に避難した3人が立っていた。「おや、あなた方は・・・・・・。あ、先ほどは失礼しました。名乗りもせず、その上馬上から偉そうに。俺の姓は高、名を順と申します。」と拱手をする高順。「いえ、そのような。助けていただいたことに感謝しております。」と、3人は頭を下げた。「私の姓は趙、名を雲と申す。」「私は姓を戯、名を志才と言います。」「私は程、名を立と言いますよ、お兄さん。」「・・・。・・・・・・はい?」何?と言った感じで聞き返す高順に、趙雲達も何か?と言った感じで首を傾げる。ちょううん?ぎしさい?ていりつ?OK。ちょっと待て。考えろ俺。趙雲といったらあれだ。演義で蜀の五虎将か何かの人で長坂をただ一騎で駆け抜けた勇者。もうメジャーすぎるくらいメジャーな人だ。戯志才は・・・ちとマイナーだが曹操の信頼が篤く、死後、荀彧だかに「何とか後任を探してくれまいか」と言わせるほどの智謀の人だったよな?程立は、確か曹操のブレーンの1人で夢で日輪掲げたとか十面埋伏とかの、これまた智謀の人じゃないか。・・・・・・もしかして、本人達?もしかして俺、三国時代を彩った英傑を目の前にしてる?なんか、また性別が女性だけど。「あー・・・・・・。えー、どうしたものか。」「???」高順の挙動がおかしな感じになって更に首を傾げる3人。「ああ、駄目だ。埒が明かん。・・・すいません、お三方。質問させてもらっていいです?」「え?はぁ、どうぞ。」「まず、青い髪のあなた。趙雲さん、ですよね?」「そうだが、それが・・・?」「字は子龍って言いますか?」「何と!?何故私の字を知っておられる!?」「本物!?じゃあ常山の昇り龍本人か!」「何!?そんな通り名は初めて聞いたが・・・ふむ、中々の響きですな。常山の昇り龍。ふふふ。・・・良い!」うわ、やっぱだ。ビンゴ。大当たり。なんか常山の昇り龍っていうのが偉く気に入ったのか身悶えしてるし。「戯志才さんは・・・あまり知りませんけど。すごく頭のいい人ですよね?策に自信があります?」「え?ええ、すごくかどうかまでは解りませんけど・・・。それなりに自信はあります。」おお、こっちも当たり。あとはこの・・・なんだろう、お子ちゃま?「「おう、兄ちゃん。今ものすごく無礼な考え事しなかったかい?」と、この子が言っております。」そう言って頭の上に乗ってる謎生物(?)を指差す程立。「うお、ごめん。・・・えーと、程立・・・さん?あなた、字は仲徳・・・で良かったっけ。」「おおっ!私の字まで知ってるとは・・・。お兄さん、お目が高いねぇ。」お目が高いって何だ?と思うがそれは受け流して。うわー、すごいよ本物だよ。丁原様初めて見たときも感動したけど。まさかこんな有名人にまで会えるとは思わなかった。「あの、高順殿?如何しました?」「ふぉっ!?ああ、すいません。あなた達ほどの英傑に会えたことが嬉しかっただけです。」「ほほぅ、我らを英傑とは・・・。お目が高い、と言いたいところですが少し過大評価ではありませぬかな?」趙雲がにやりと笑う。「おお、それよりも。こちらからもお聞きしたいことがあったのです。」「趙雲殿たちから?」「ええ。・・・何故、我らをお助けになられた?盗賊の一味であるかも知れぬ我らを。」今までの雰囲気は何処へやら。趙雲が真面目な表情で聞いてくる。程立も戯志才も同じ疑問を持っているのか、やはり真面目な顔つきになっている。「何故、か。まあ、簡単に言えば・・・貴方達が逃げるのに必死だったとしても、この村が今戦闘に巻き込まれてるのは理解できましたよね?」「無論。」「この村の物資が目的としても、軍勢がぶつかり合ってるときに好き好んでやってくる盗賊はいない。そう思いませんか?」「それは確かに。」「そんな状況でも村に向かってくる。それだけ貴方達が追い詰められていると思っただけです。たとえ戦闘に巻き込まれるとしても、賊に捕まるよりはまだましだ、ということかな?それに。」「それに?」「賊がらみとかで困ってる人々を助けるのが官軍の仕事でしょ?誰も彼にも手を差し伸べることが出来なくても、少しくらいなら。自己満足もいいところなんですけどね・・・。」高順は苦笑して人差し指でこめかみの辺りをぽりぽりとかいた。「主君にもその甘さを何とかしろ、みたいなことを言われたのですが・・・。性分でして。」俺みたいなのはなんて言うのかな。ただの偽善者かなぁ。と無邪気に笑う高順。そうして笑う彼の事を戯志才と程立は勿論、物事を皮肉に見ることが多い趙雲ですら好意的に受け止めた。そういう人間がどう呼ばれるのか。それは趙雲達はなんとはなしに理解できたが、それは彼が自分で理解するべきことで、今言うべきことではないのだろう。「では、皆さん。ここから先は官軍の仕事です。3人とも、安全・・・は無いかもしれないですが、戦闘が終わるまで村の中で待っていてください。」「お待ちを。私達もお手伝いいたします。」「そうですね~。戦力比がどの程度のものかは知りませんけどー。私達もお手伝いできると思いますよ~?」「左様。高順殿。我らも戦列にお加えくだされ!」と、三者三様に頼み込む。だが、高順は首を横に振った。「駄目です。少なくとも今は。」「高順殿!」「さっきまでずっと走り続けてお疲れでしょう。それに俺には貴方達を戦列に加えるとかそんな権限が無いんです。ただ、気持ちだけは受け取っておきます。」「ですが・・・。」戯志才がなおも言い募るが、議論するつもりは無いとばかりに高順は頭を下げ、周りに待機していた兵達に出陣する旨を伝えた。その言葉に兵士達は騎乗し、持ち場へと駆けて行った。「・・・。どうします、星ちゃん?」「決まっておろう?我らは我らのやりたいようにするさ。ふふっ、楽しくなってきたな。」そのころ、朱厳たちは――――「ぐわぁあぁっ!」朱厳の双剣で切り裂かれた晋陽兵が悲鳴を上げる。「ほっほっほ。この程度かの?」余裕の体で朱厳は笑う。その朱厳の前には重症、軽症、そして死亡したもの。数十人の晋陽兵が転がっていた。上党兵も晋陽側に比べれば数は少ないものの、錬度と士気の高さによって善戦していた。幾人かは倒れ重軽傷を負っている者もいたが、尚士気は衰えることなく戦い続けている。「く、くそぉ・・・。やっぱ、あいつら上党軍かよ?」「じゃあ、本物の朱厳様なのか・・・?」「冗談じゃない、勝てるわけ無いぞ・・・!」「俺はやだぞ、なんで上党軍と戦わないといけねーんだ!」何人かの兵が自陣に向かって逃げていった。それに釣られるように更に多くの兵が武器を捨て逃亡し、または降伏し・・・遂には先鋒部隊全体が士気を喪失。完全に瓦解していったのだった。~~~晋陽軍~~~「将軍!先鋒部隊500が壊乱!」「な、こんなに早く!?しかも壊乱とは・・・!」時間を稼ぐことも兼ねて同数の兵を当てたのだこうも早くとは・・・。あと少しで突撃準備が整うというのに。これでクソ太守も余裕が無くなるだろう。コレまで以上にせっついて来るだろうな。しかし、上党軍と戦って勝てるか?彼らの被害はほとんど・・・?何だ、村へと退いて行く・・・。朱厳様は何を考えてるのだろう。我々を村に引き込んで叩くというのか?しかし、ほとんど被害を出していないのに退くとは。いったい何を考えている?そこへ、また伝令が駆け込んでくる。「将軍!後方から進軍してきた部隊ですが・・・。」「何だ、どうした。」「その部隊を指揮する方が将軍にお会いしたいと。」「ふん、どうせ早く攻撃しろ、というお達しだろうが。」「・・・解っているなら早くしていただこうか?」「・・・・・・入って良いとは一言も言ってないのだが?」いつの間にか陣幕に1人の男が入って来ていた。真っ赤な鎧に、嫌らしい笑みを浮かべた頭の禿げ上がった男だ。名前までは覚えていないが武の才に恵まれており、それを普段から自慢し続けてるいけ好かない奴だ。武将としては自分より格下も格下なので言葉遣いに気をつける必要も無い。「太守殿は早く攻撃しろ。と仰っておられるのですぞ?」「言葉に気をつけろよ貴様。貴様に指図を受ける覚えは」それ以上彼は言葉を口にすることが出来なかった。いや、出来なくなった。目の前の禿げ男の突き出した剣に胸を刺し貫かれたからだ。「ぐぶぉお・・・き、きさ、ま・・・」「まったく、五月蝿い男だ。やれと言われた以上とっととやれば良かったんだよ。」剣を引き抜く。将軍はそのまま血反吐を吐きながら倒れ伏した。「しょ、将軍!?なんという事を!」「おい、そこのお前。将軍殿は名誉の戦死を遂げられた。指揮権は太守様の命令により俺が引き継ぐ。用意が整い次第全軍突撃だ、兵士どもにそう伝えろ。」「くっ・・・。」「とっとと行け。それともお前も名誉の戦死を遂げるか?えぇ?」わかりました、と憎憎しげに呟いて兵士が陣幕を出て行く。その態度に多少腹を立てた禿男だったが、すぐに気を取り直した。ようやく機会が回ってきたんだ。のし上がるためにこの状況を利用してやる、と。彼は解り易いくらいに権力というものを妄信する男だった。男は自分が新たな将軍であると触れ回った。そんな彼を兵士達は「自称将軍」と、平気で陰口を叩くのだった。~~~上党側~~~「よし、こんなものじゃな。退け!」朱厳の指示の下、兵士達は負傷者を収容し村内部へと退いていく。高順に騎兵を預けたものの、出番が来る前に終わってしまったようだ。まず、初戦は大勝利といって良い。これで退けば晋陽側も「何故有利なのに退くのか?」と思うだろう。元々戦意が高くない上、自分達の任務に疑問を抱いてる様子だ。このまま時間を稼げればそれで良し。朱厳はこう考えた。この時点での彼の思惑は成功していたし、晋陽側の混乱までは知る由が無かった。そして同じ頃、数日前に張牛角を斬った丁原がこちらに向かっていることを知る者もいなかった。~~~褚燕の村~~~「朱厳様、ご無事でしたか!」「当然じゃ。あの程度のこと造作も無いわ。」喜ぶ高順とそう言って笑う朱厳。「申し訳ありません、盗賊を片付けるのに時間がかかってしまいまして・・・。」「なぁに、構わぬ。今日に限って言えばお主らの出番が来る前に終わってしまったからの。」出番を取ってしまって悪かったの、朱厳は笑う。村の中に兵士を収容し終えた朱厳は「まずは良し」と考えた。夜も更けた頃、部隊の主だった者を陣幕に集め次の策を練る。時間を稼げば良いだけだし、晋陽側もどうも戦意が低いのか積極的に攻めてこない。今現状で言えば兵力もこちらが負けてはいるものの、守るだけならば問題はないだろう。そう考え、さてどうするか、と考え始めたところに伝令が朱厳のもとまで駆けて来た。「朱厳様!」「おう、どうした?」「先ほど放った斥候より急報!「敵に援軍あり!」。その数・・・1500ほど!それと・・・指揮官が変わったと。」「む・・・。1500?しかし指揮官が変わったとは。どうしてじゃ?」「その、援軍として派遣された将が先ほどまで我々と戦っていた将軍を殺したとか・・・まだ詳しいことまでは解りません。」回りの者も多少は驚いた顔つきになる。「それが本当であれば・・・少々見くびっておったかな?このような強硬手段に出るとは。これで敵の軍勢が3000ほどにまで膨れ上がったしまったか。」「こちらも被害が無かった訳ではありませんし・・・。今戦える兵士は輜重隊の方々も総動員して1100程度ですか。」今回の戦いで上党側の兵も100人ほどが死傷していた。全員が全員戦えぬわけではないが、無理をさせることも出来ない。「この村に砦並みの堅牢さを期待することは出来ません・・・。指揮官が変わった以上、積極的に攻めてくるのは眼に見えている。村人にも戦ってもらわなくては。」「村の人々まで前線に出すのか?それは・・・。」誰かの言った言葉に反対しようとする高順だが、それを朱厳が手で制する。「高順よ、お主の気持ちは解らんでもない。しかし、時と場合を考えるのじゃ。村人を巻き込むのは得策とは言えぬがな。その当たりはまだまだ若いの。」「ぬぅ・・・。」確かに朱厳の言う通りである。朱厳自身も村の人々を盾にして戦うつもりは無いようだが、この戦力差はかなり大きい。今日の戦いは相手が様子見をするような感じだったのであっさりと勝てはしたが、全軍で攻め込まれれば・・・。守りきれないかもしれない。さて、どうするべきか。皆が腕組みしたところで兵士が陣幕に入ってきた。兵士が一礼し、朱厳に報告をする。「朱厳様。褚燕様がお越しになられました。お会いになられますか?」「ふむ、褚燕殿が?よし、お会いしよう。」はっ、と返事をした兵士が陣幕の外へ出て誰かに、どうぞ。というのが聞こえた。そして陣幕に褚燕と・・・3人の少女が一礼し入ってきた。その3人を見た恭順が驚く。「・・・趙雲殿?それに戯志才殿に程立殿まで!?」「何じゃ?知り合いか?」「はい、盗賊たちに追われていた方々で・・・。」「朱厳様、皆様。このような時間に失礼いたします。実はこの方々がどうしても、と。」褚燕が言葉を切り、趙雲達がその場で跪く。「私は姓を趙、名を雲と申します。賊から助けて頂き、感謝しております。」戯志才も程立も名乗り、感謝の意を伝える。「この方々が何故このような戦いをしているのかどうしても知りたい、と仰るのでお教えしたところ、義勇兵として参加させて欲しいと申しまして。」「民を守る立場のものが民を苦しめる。そのような暴挙、許しがたし!」「どうか、我らも参加させていただきたい。」「皆さんの力になれると思いますよー?」褚燕の言葉に続き言い募る趙雲達。朱厳もふうむ、と唸りどうしたものかと考える。義勇兵はともかく、彼女達の腕を知らないのだから何とも応えようがないのだが。「それがしは槍の腕に多少の自信がございます。戯志才と程立は智謀の士。必ずやお役に立って見せまする!」趙雲が尚も続ける。「うーむ。」「多少、ではなぁ・・・。」「それに、あの程立とやらはまだ子供ではないか。子供に何が・・・」上党の兵たちもぼそぼそと疑問やら何やらを口にし、不安そうな表情をする。だが、3人は特に表情を変えるわけでもなかった。正直こんな扱いは慣れている。女の分際で、とかそんな事は言われなかったがやはり大抵の人は疑ってくるものだ。やはり、認められることは無いのだろうか?我々のような流れ者がいきなりこんなことを言っても信用はしてもらえないかな、と趙雲が自嘲的な思いに駆られるが・・・思わぬ援護が入る。「良いのでは?」「高順殿・・・?」後押しする高順を3人が不思議そうな顔で見る。「高順、お主は彼女らの実力を知っているのか?」「ええ、知っています。趙雲殿と言えば幽州随一の槍の使い手と聞き及んでいます。戯志才殿も程立殿も智者としてその名を幾度か。自分達から手を貸すと言って下さってるのですから断る道理はありません。」その言葉に朱厳はまたも、ふうむ、と唸る。正直、今の状況ならば一人でも多くの兵士が欲しい。問題は趙雲達の実力を知らないということだが・・・高順は必要とあらば嘘をつくが必要ではない嘘をつくような男ではないことを朱厳は知っていた。「・・・そうじゃな。村人にも力を貸していただこうというのに断る必要も無いな。では、お三方。参加を認めましょう。」「感謝いたします!それと、1つ我侭をお許しいただきたい。」「我侭?」「はい。それがしは・・・高順殿の下で戦いたく思います。他2人は策で貢献いたしますゆえ。」「ちょ、ちょっとお待ちを。」趙雲の言葉に高順は慌てる。「俺の下、と言われても俺は指揮権のない兵士ですよ?それを」「それでもです。高順殿に命を助けていただいた恩があるのですから。今度は私が命をかけて高順殿をお守りいたします。」「・・・・・・。」何故か郝萌が高順を思い切り睨み付ける。そして何故か回りの者もニヤニヤとする。俺、何も悪いことしてないよね・・・?「・・・あー、じゃあお願いしますね、趙雲殿。戯志才殿も程立殿も無理をなさらぬように。」その言葉に満面の笑みを浮かべる趙雲達だった。こうして、一時的にではあるが趙雲達が共に戦う事になったのであった。~~~陣幕の外~~~「高順殿。」軍議が解散され、陣幕から出た高順を趙雲が呼び止める。「なんです、趙雲殿。」「ふふ、あなたもお人が悪い。昼は出しゃばるなといい、今は我々が参戦することを後押しとは・・・。」「ああ・・・そうですね、悪いと思ってますよ。」高順は苦笑する。「ただ、昼と夜でこうも状況が変わるとは思わなかったので。正直、お三方が手伝ってくれると聞いて驚きましたよ。」「ほう、我らが恩義を返さぬままどこへなりと去っていくような者に見えたと?」「意地悪だなぁ・・・。そんなじゃないですよ。」「では、どのような?」「簡単に言えば・・・あなた達のような英傑と肩を並べて戦う事になるとは。と、そんなところですよ。」高順はしごく真剣な表情で言う。「・・・ふ、あっはっはっはっはっは!!!」「ど、どうしました?」「くっく・・・英傑云々は先ほど聞きましたが。そこまで期待されているとは思いませんので。・・・ふふふ。」「別に笑わなくてもいいじゃないですか・・・。」「・・・正直、感謝したいのはこちらです。」さきほどの高順か、それ以上に真面目な表情で趙雲が応える。「我々は幾度も同じような状況を見たことがあります。たとえば盗賊に悩まされ、山賊に悩まされ、泣き寝入ることしか出来ない人々の苦しみ。」「・・・。」「そんな人々を助けるためにこの槍を振るい、力を尽くそう。そして仕えるべき主君を探そう。そう考えて旅をしているのです。ですが誰も・・・私のような女のことを最初から打算無しで信頼し、仕事を任せようとしてくれた人などいなかった。高順殿、あなたを除いて。」「俺だけ、ですか?」「はい。故に、あなたの言葉が嬉しゅうございました。あなたの期待に応えたいと思ったのです。恩を返すというのも理由ですが・・・」「・・・そうですか。」「もっとも・・・誰でも彼でもそうやって信じようとなさる部分はまだ甘いですかな?」そう言ってまた笑う趙雲。いや。この甘さこそが彼たる所以なのだろう。趙雲はこの甘さは嫌いになれそうにないな、と思う。「ぬう・・・。」「ふふ。それでは私はこれにて失礼いたす。明日からよろしく。」「ええ、こちらこそ。」高順に拱手し、趙雲は待たせていた戯志才・程立と共にしばらくの間宿として使用させてもらえるようになった褚燕の館へと歩いていく。「星ちゃん?」「ん?何かな、風殿?」「なんだか嬉しそうなのです。」「ふむ、私にもそう見えますね。予想はつきますけどね。」「ふっ、ならばその予想が当たったと思えば良いさ。」趙雲は空を見上げる。自分の旅は弱き者を助けるために。そして乱世を鎮める主君を見出すための旅だった。それほどの大器を持つ者は未だに目の前に現れてはいない。だが思う。自分が仕えたいのはどこかの太守や王なのか?否。一武将でも良いのだ。歴史に名を残したいとか表舞台で戦いたいとか、そんな野望は持ち合わせていない。自分の仕える存在が、どこかの誰かに仕えていても構わない。自身の使える何者かが乱世平定の原動力たる者であれば。趙雲は高順の優しさ、いや、もうどうしようもないほどの甘さに何か感じ入るものがあった。彼のような手合いは、太守とか政治的な意味で人の上に立つ立場には絶対になれないだろう。なったとしてもあの甘さを誰かに利用されて潰されるのがオチだ。だが、あの甘さ。嫌いではない。まだ将としての実力自体は解らないが・・・もし、あるのなら。その力がこれからも伸びるのだとすれば。彼が将たるものとして一皮向ければ。高順という男を自分の可能性の1つとして考える。「・・・ふふ。面白い出会いがこうも立て続けにあるとは。この2人に出会い、高順殿と出会い。世界というものは本当に広い。」その呟きは誰にも聞かれること無く、中空に溶けていった。~~~楽屋裏~~~どうも、うp主のあいつです。いやぁ、またやってしまいました。新しい武将。つうても実在の武将ですけどねw郝萌なんてマイナー武将誰が知ってor覚えてるやら。つか、晋陽ネタいつまで引っ張るんだ自分。文才が平凡以下だからいつまでも長くなってしまうのでしょうね(遠ご意見、ご感想、お待ちしておりまする。