【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第40話 高順、洛陽へ(行くのにも一悶着)。高順が晋陽で(何か色々と)大変な事になっていたとき、洛陽では董卓が軍・政共に権利を掌握しつつあった。何進と十常侍が共倒れになり、権力の空白状態が生み出されてしまったのだ。本来、董卓の現在での地位を狙ったのが袁家であり、十常侍を殲滅せんと動いたのだが・・・計算違いが生じた。皇帝である劉協を擁してしまったのは呂布であった。彼女からすれば董卓と賈詡さえ保護できれば良かっただけで、帰還した張遼達に皇帝が一緒についてくるとは夢にも思わなかったようだ。だが、賈詡と陳宮は「このまま、袁軍を掃討するべきだ」と呂布に進言した。十常侍を誅した後、袁紹・袁術軍は宮中を荒らし回っている。総大将である袁紹はそんな事をしたい訳ではなかったが、一部の兵が暴徒同然となって宮仕えする女官に乱暴を働いたり、宝物を奪ったりという状況だった。それを許す法は無い。幸いにも呂布のほうにこそ利と理があり、袁軍にはそんなものは無い。皇帝の有無も理由になる。決断した呂布は、全軍を以って袁軍に総攻撃を仕掛けた。彼女達の手元にある兵力は、宮中を占領している袁軍とほぼ変わりは無い程度だったが、相手が悪すぎた。1人で万人を相手に出来る、という武を持つ呂布。張遼・張済・張繍・賈詡・陳宮といった勇将知将。そして精悍無比な西涼騎兵の心をきっちりと掴み結束させている董卓。呂布を前面に押し出した「正規軍」は袁軍に強襲を仕掛けてあっさりと蹴散らした。袁軍に所属する孫策が援護に出ていればもっと時間を稼げただろうが、孫策は地図を押収して(他にも色々と欲しいものはあったが)あっさりと退いていた。表向きは袁術軍の退路を確保しておく、という理由で。呂布から攻撃を仕掛けられた事にも気づいていた。だが、普段から自分達をこき使い後ろでふんぞり返っているだけの袁術を助ける気などこれっぽっちも無い。呂布に散々に追い散ららされて、ほうほうの体で逃げていく袁軍であった。その後董卓は賈詡に命じて宮中の修復、洛陽の治安維持などを行い成果を挙げていく。軍政共に再編を行い、何とか体制を整えた漢王朝は董卓を「賊である袁軍を蹴散らし洛陽に平和を取り戻した功臣」と賞し司空の座を与えた。皇甫嵩と朱儁も高位の将軍位に就く予定だったが本人達は「この事態に我々は何もしていない。身に余る光栄ですが、功績を挙げていない我々が受けることは出来ない」と辞してしまい、繰上げのような形で董卓になってしまった。(これは賈詡が裏で動いた事も大きいその後は、混乱の中で外戚、宦官共と多くの人材を失った漢王朝は軍事・政治も徐々に董卓に任せるようになる。これは、董卓が呂布らを取り込み(最初から呂布は董卓派であるが)数万と言う自前の兵士を持っており、洛陽に駐屯させているからでもある。それほどの大軍勢を官軍と為し、徐々に正規の兵士も自軍に取り込んでいく董卓・・・というよりは賈詡なのだが、その威容に皇帝となった劉協とその取り巻きも遠慮をし、かつ認めたということだろう。漢王朝の董卓への厚遇が各地諸侯の反発を招き後々の大乱へと繋がっていくがそれを予見しているものはまだ少ない。洛陽でそんな事が起こっていると知らない張燕は、警戒はしつつも影に情報収集を行わせている。高順も(あまり色々と考えたくは無かったが)楊醜と眭固を洛陽に派遣して情報を得ようとしていた。張温率いる討伐軍が退いたとは言ってもいつ来襲してくるかわかった物ではない。最低限、官軍の動きだけは掴んでおきたいというものだったが・・・話はそれ以前の物で終わりそうになっている。この時の状況を説明すると、南で乱を起こした区星は討伐軍の攻撃で半月と持たず壊滅。西の馬騰は不穏な動きを見せただけで攻めかかっていく事は無く、ただ防備を固めているのみ。中央の政権が変わりつつある、という事を馬騰側が掴んでいたという話があったのかもしれない。ともかくも、明確に反旗を翻しているのは晋陽のみという状況であり、総力を挙げて攻められればひとたまりも無い。そして董卓側でも晋陽の乱と言うのは頭が痛い話であった。政権を建てたとはいえ、十常侍派の者、権益を得たい者・・・多くの思惑が宮廷にはあるもので、足元が固まっているとは言えない。軍事力を使用して晋陽を叩き潰すという手が無いでもないが、政権を建てたばかりで大規模な軍事力行使は・・・と思う向きもある。荒事を好まない董卓は賈詡や陳宮といった軍師、そして呂布や張遼などと相談を重ね、外交的解決を考えている。賈詡は「更に漢王朝の威信が低下するのではないか」と不安視もしていたが・・・。また、華雄が晋陽勢に捕らわれているらしいという事、高順一党が晋陽勢に加担しているという報告も徐栄から上がっておりそれも原因の1つだった。ここで問題が1つ。誰が晋陽へ使者として赴くか、である。確実に向こうが殺気だっているのは解っている事だし、降伏をさせるにせよ和平をするにせよ・・・胆力のある人物でなければ耐えられないのではないか?という考えである。(それを思えば張温が派遣した使者は胆力のある人物だったのだろう。そこで名乗りを上げたのは張遼だった。最初はそれほど興味を示さない彼女だったが、華雄が捕らわれている可能性がある事・高順一党が加担している事を知って態度を変えた。呂布では口数の少なさから使者には向かないし、陳宮か賈詡では上から目線になりすぎて余計に反感を高めてしまうだろう。特に反対も無く、ここまではすんなりと決まったものの、肝心の内容に関しては相当に揉めた。まず、晋陽側の要求が無く何を何処まで望むのかが解っていない。 賈詡に限らず、まず独立を望んでいるというのは理解しているのだがどこまでの権利を認めてやるかだ。そして漢王朝に反逆したという高順一党の処分についてもどうなるかが解らない。この件に関しては(珍しい事に)呂布と張遼が特に熱心に赦免を望んでいた。十常侍が存在しているのならば無理だったろうが、その十常侍自体が消滅している。呂布らの主張は「丁原達はあくまで十常侍に反発しただけで漢王朝に反旗を翻した訳ではない。高順も同じことで、おかしな流れでいまの状況になってしまっただけだ。」というもの。それはおかしいでしょ・・・と賈詡は突っ込みかけたが、「ん・・・?」と思い直した。要は全ての罪を十常侍に擦り付けてしまえば良い訳だ。呂布達からも色々な事を聞かされたし、丁原達の事情も知っている。実際、晋陽の乱にせよ高順一党にせよ、全て十常侍の「身から出た錆」と言うことは事実なのだ。多少の権利を譲ってやる事は覚悟の上で、張燕・高順一党に赦免を出して足元の定まらない董卓政権のシンパに仕立てる事も可能か?と考え始めた。それに、徐栄の報告で高順一党は油断できない相手で、相当な武力を持っているようだ。一騎打ちで華雄が負けるというのは相手がかなりの力量だと言う事・・・。彼女を打ち倒したのは別人らしいが、高順と言う男も負傷しているにも拘らず華雄と互角に打ち合った、とも言っていた。ただでさえ人材が少ないのだ、そういう人物は幾らでも欲しい。自分達を「善」とし、十常侍を「悪」として自分達の正当性を主張する1つの機会か。そこで賈詡は董卓の許しを得て和平文書を書いた。それを張遼に託し、後は彼女自身の裁量に任せる事にした。問題はどこでどう落し所をつけ、それをこちらが実行できるか・・・というところか。まぁ、何とかなるだろう。張遼ならば問題ないだろうし、最初に垂らした餌も相当美味しくしたつもりだ。そんな流れで、張遼は2千ほどの兵を引き連れて晋陽へと向かっていく。その情報を晋陽側が掴んだのが張遼が到着する2日前であった。~~~晋陽~~~「・・・おかしなことになりましたね。」張燕は高順一党を政務室に呼び出して対策会議を行っていた。影からの報告によれば張遼は約2千の兵士を率いてこちらに向かっている最中だと言う。だが、2千と言うのはどういうことだろう?それだけの兵士で、戦争を出来るはずはない。「あくまで護衛のためと言うことか。降伏勧告でもするつもりか?」趙雲は顎に手を当ててじっと考え込んでいるがそれくらいしか理由が浮かんでこない。他全員も同じ意見らしく、頷くばかり。「相手の目的が解らないとはいえ、警戒を怠るべきではないでしょうね。影からの報告ではあと2日ほどで晋陽に到着するとか。投石機の準備、迎え撃つ場合の兵の編成・・・仕事は減りませんね。」楽進は確認するかのように言った。結局、いつも通りに警戒だけは怠らないように、ということになるのだが高順は1人、半々の確立の流れになるか、と考えていた。楊醜と眭固の報告に「董卓が十常侍を消して政権の足固めをしている」という物が(不鮮明ではあるという条件付で)あった。そうなると、董卓治世の漢王朝側としては晋陽と争う理由が一気に減る。張燕は乱を起こしたといっても、どちらかと言えば十常侍の配置した太守への乱・・・十常侍のやり方に反発したという意味合いが強い。消去法で考えれば、手打ちの打診をしてくるだろう・・・くらいは考え付く。十常侍を抹殺したのが誰か、までは伝わっていない。普通に考えれば袁紹あたりか。自分の手で仇を討ちたかったが・・・だが、片割れの呂布は残っているがそれは保留しておこう。さて、もう半分は不安がある。董卓という人物が史実どおりであれば力任せで来ることもまた考えうる。結局は警戒するしかないか、と思い直すが、もしも後半分の良い予感が当たれば・・・一気に張燕の立場は良くなるだろう。ただ、自分達の扱いは良くならないかもしれない。張燕の独立を認める材料の1つとして自分達の引渡しが利用される可能性は高い。(そうなると、俺達はお役御免・・・さて、どうなるのかなあ。)やれやれ、皆には余計な苦労をかけてばっかりだ・・・はぁ、とため息をつく高順であった。この会議の2日後、張遼は予定通りに晋陽へ到着。張燕との交渉を行いたいと使者を送る。張燕達は魂胆を読みきれないが、応じると決断。話し合いに応じるという返事を受けた張遼は、(周りの武将は止めたが)寸鉄も帯びずにただ1人晋陽の門を潜っていった。その彼女を出迎えるのは楽進と趙雲だ。こちらには欺くつもりは無い、ということをアピールするためである。そもそも争うつもりも無いのだから、と張遼は平然としていた。「ほほぉ・・・」案内役兼見張りの楽進と趙雲に付き添われて張遼は政庁へと向かっていく。投石機やら街並みやらを興味深そうに見ているが、何よりも興味があるのは高順一党と目された楽進達の方である。一度全力で手合わせをしなければ掴みきれないだろうが、この2人は相当な腕前だ。華雄で相打ちにもっていけるか否か・・・くらいの強さやな、と予測をつけている。他に何人いるかは知らないが、高順達を取り込めば更に董卓軍の戦力・・・そして戦術・戦略の幅が広がるだろう。取り込めれば、の話なのだが張遼は絶対に引き込むつもりだ。賈詡にとっても、ある程度の餌で釣ったとして彼らの能力を知れば納得はするだろう。(どうやって晋陽、ならびに順やんを引き込もかなぁ。書状の内容はあんま知らへんけど・・・書かれてる条件で満足してもらえるんかいな。)自分を警戒して殺気をみなぎらせている楽進の視線など気にも留めず、張遼は思案していた。~~~政庁~~~「・・・ってな訳で、うちの主君は張燕殿と和平を結びたいと考えとります。詳細は・・・。」こちらに書いてありますんで。と張遼は一通の書状を取り出した。使者としては随分態度が軽く見えるが、張燕にせよ、高順達にせよ、中央での礼儀作法など知りはしないし拘っている訳でもない。その点では両者共にありがたいと言えばありがたい。政庁、この場所には張燕だけではなく高順達もいる。書状を受け取った張燕はさらさらと読んでいく。やがて、全てを読み終えた張燕は張遼のほうへと向き直った。「・・・ふむ。張遼殿。」「何でしょ?」「これに記されている内容は・・・事実ですか?」「事実や、嘘ついてもしょーがあらへんし?」「・・・ふーむ。」張遼の言葉に、張燕は考え込んでしまった。高順らは内容を知らないので何故考えているかは理解できなかったが、面白くない内容だったのだろうか。「あの、張燕様。その書状の内容は・・・。」遠慮がちに言う高順に、「あ、申し訳ありません。」と答えた張燕は内容を簡単に纏めて読み始めた。「この書状に書いてある内容。「華雄を引き渡して欲しい事。高順一党を差し出す事。漢王朝に帰属し、2度と乱を起こさぬこと。以上の件を呑めば・・・。」張燕は一旦言葉を切り、続ける。「張燕・・・つまり、私を晋陽太守として認め、同時に平難中郎将に任ずる。と書いてあります。」この言葉に、その場にいた全員(張遼ですら)が絶句した。破格の処分・・・いや、処遇と言い換えても良い。反旗を翻した事を許し、かつ官位まで与える。馬騰と同じような扱いである。その為には華雄の身柄と高順達を差し出さなければならないのだが、普通に考えれば一も二もなく差し出すだろう。うわ、不味いなぁ。引き渡されて処刑の流れかなコレ。高順は寒気を感じたが・・・張燕はここで結論を出さなかった。「張遼殿。華雄さんは無事ですからいつでもそちらに身柄を移しましょう。ですが、高順様達はどのように扱われるのです。それを聞かせていただいてから答えを出しましょう。」「へ?」張燕は毅然とした態度で張遼を問いただした。答えによってはこの条件を呑まないという事を仄めかしている。「あー、うちに決定権は無いんやけどな。うち個人の考えでは・・・」「貴女の考えは良いのです。貴女の上の考えをお聞きしたいのです。」「・・・あー。」(参ったなぁ、賈詡はある程度うちの裁量で何とかしろ言うてたし、順やんらを殺そうとは思うてへんのやけど。うちの一存で全部決めてええもんか。)張遼も張燕も悩みどころだった。張燕としても確かに良い条件だが、それと高順達の身の安全が保障されないというのは別の話だ。民の事も考えれば引き渡すべきかも知れないが共に戦った仲間を官位欲しさで売ったと言われ、或いは思われる。それは面白くないし、そのせいで彼らが処刑されたなどとあっては自分自身の気分が悪すぎる。「高順様達の身の安全、立場の保障が無い限り私は和平を受け入れません。それら全てを証明していただけない限りは・・・この話を進めるつもりもありません。」張燕は毅然と言い放つ。当然、張遼はすぐに話を纏めてしまいたいので困ってしまう。僅かに考えて、(まあええわ。纏めてこい言うたんは賈詡やし。うちとしては丁原はんや順やん含めた上党組が被った汚名消したいし・・・。)と結論を出した。「順やん達の身の安全と立場の保障はきっちりしてみせる、約束や。」「それを証明する手立ては?」「今は無い。けどな、上の人間からうちの裁量でなんとかして来い言われてるし、ある程度の事なら融通利かせるとも言うてた。そもそも順やんらを殺す予定自体があらへん。」「話になりません。私が欲しいのは確証です。」張燕は冷たく言い放った。張遼がいくら言おうと、彼女の言う「上の人間」の言葉を張燕は何も知らないのだ。董卓側の事情を知らない以上、張燕としても譲れない。「うー・・・信じてもらわれへんかぁ・・・。」参ったなぁ、と張遼は本当に困った様子で頭を掻いた。と、そこで挙手をして待ったをかけた者がいた。高順である。「張燕様、ちょっと宜しいですか?」「え・・・? どうぞ。」どうも、と言いながら高順は前に出た。「張遼殿。書状の内容に嘘はないでしょうね?」「うちも内容自体は知らへんかったよ。せやけど、書いてあるっちゅー事は本音やろうし、それを書いた奴の本心は知っとる。」「つまり、俺達が行って処刑という事は無いと?」「ありえへん。上は順やんらが欲しいんや。張燕はんにも解ってはる思うけど、言い方悪いの覚悟で・・・物々交換やな。」「物々交換?」「董卓政権はできたばっかで足元がユルユルや。何進・十常侍が消えてもその支持勢力はあるはずやんか?」「ふむ。」張燕だけではなく、高順達にも何となく読めてきた。それら対抗勢力が多いが、董卓側は人材、或いは手数が少ないのだろう。張燕の独立を認めるのも自分達の支持勢力をにしたいとかそういう理由だろう。華雄の返還と高順一党の罪を許す代わりに、張燕は董卓を支持。高順達も董卓の配下に・・・ということか。(どうしたものかねぇ・・・。)高順側から見れば、張燕の気持ちは解るしありがたいと思う。だが、ここで突っぱねて武力での鎮圧になってしまったら? という不安がどうしても出てくる。前回は討伐軍の総大将が勝手にビビッて退いたも同然だから良かったが、呂布辺りを前面に押し出して攻撃されたら・・・正直、間違いなく張燕は負けるだろう。自分達が死ぬだけならまだ良いが、そのときには罪のない民草まで巻き添えになる。民の声に推されて立ち上がった張燕が民を道連れに・・・笑えない冗談だ。仕方ないな、と高順は考えた。前々から思うが、どうして自分は仲間として付いてきてくれる人々に苦労ばかりさせるのだろうか?「解りました、行きますよ。」「え!?」その場にいたほぼ全員が声を上げた。「た、隊長!?」「高順殿・・・宜しいのか? 罠である可能性のほうが高いのですぞ?」構わないさ、と趙雲に対して言う高順だったが、直ぐに張遼の方へと顔を向けた。「張遼殿、高順一党と目されてるのは俺と趙雲殿と沙摩柯さんだけか?」「今んとこはな。他の連中は晋陽軍の一員程度や。」「ならば、着いて行くのは3人だけで良いのですね?」「んー・・・うちらとしては全員着てもらいたいんやけどな。」「それは却下。全員で行って一網打尽とかはあり得るからね。それと、保険として蹋頓さんにも付いて来てもらおう・・・悪いと思っているけど。」高順は申し訳無さそうに3人を見たが、趙雲達は苦笑して「やれやれ」と首を振るばかりであった。「俺達全員が赦免されると解ったのなら全員呼ぶ。もし俺達が騙されて殺されるとしても、最低限の被害だけで済むしな。何もかもそっちの思う通りには動いてやりませんよ。」最も、俺達を欺くメリットが董卓にあるかどうかは知らんけどね、とこれは心中で付け加えた。「・・・順やんも人が悪いなぁ。」ちょっと棘のある言い方に感じたらしく、張遼は唇を尖らせた。が、自分達は高順の大切な友人を殺したのだ。今ここで斬りかかってこないだけまだマシかいな、と思い直した。「当然だろ。張燕様も、張遼殿もそれで宜しいですね?」「ふぅ。解りました。高順様の意思を尊重いたします。」「しゃあないな。まずはそれで手打ちや。」2人が頷くのを見た高順は「じゃ、俺はこれで。」と退室した。これから先の詳しい話を纏めるのは2人でやればいい。華雄姐さんと両親にも伝えないと・・・。そう思っていた高順だったが、趙雲と沙摩柯は良いとして、おかしな具合に3人娘が来てしまった。全員「納得行かない!」と騒ぎ立てている。「高順さん、詳しい説明を求めるのっ!」「せや、納得いくかこんなもん!」「隊長、我々も連れて行ってください! 蹋頓さんが良くて私が駄目とか差別ですか!?」1人、論点がずれている人がいるようだが気にしてはいけない。「あのね、さっきも説明したでしょ? 全員で行って一網打尽とかになったらどうするのさ?」「無理やり突破します!」何処をだよ。じゃなくて。「んーとね。俺の見立てじゃ、これは罠であるという確率が相当低い。罠ですらないと思う。」「はぁ・・・?」楽進は何故そんなことが解るのだと言いたげな表情を見せる。「俺は董卓って人に逆らった訳じゃないし、向こうの言う支持勢力がほしいって言うのも事実なんだと思う。だから、それを確かめに行くって言うのが正しいかな?」「では、それが事実だとわかったら。」「そ、皆を呼び集める。先遣隊と言うべきかね。」「先遣隊・・・うーん・・・。」全員、腕組みをして考えてしまう。高順には勝算があるかもしれないが、周りの人間には何故董卓という人間を信じようとするかがいまいち解らない。未来知識が無ければ解るはずがないのだから当然と言えば当然だが、高順にも不安はある。史実の董卓はあまりにアレすぎて人としてどうかと思うタイプの人間だ。この世界じゃどうか知らないがあまりに不安すぎる。それは置いておくとしても、今回の条件は決して悪くない。自分達と張燕の件もそうだが、張遼の言う「丁原達が被った反逆者の汚名も無かった事にする」というのが高順の決断材料となった。これで、堂々と丁原達の墓を作り直して、弔う事ができるというものだ。まだまだ時間はかかるだろうが、平和な時代になればそれもできるだろう。そのせいで巻き込まれる人は堪った物ではないが、高順達を騙し討ちにする理由が向こうには無いし、そこが高順のねらい目であったり。「さて、華雄姐さんにも伝えないとな。」考え込む皆を尻目に、高順はさっさと歩いていくのだった。出立の日程などは直ぐに決まったようだが、1人だけ「私も行きます!」と意見を曲げない人物がいた。楽進である。蹋頓や趙雲におかしなライバル意識を持っているかどうかは判然としないが、こういう時にこそ連れて行って欲しいと考えているのだ。まだ高順一党とされていない蹋頓を連れて行くというのがイマイチ解らないところだったが、それについては高順はきっちりと説明をしていた。漢王朝に対して、敵対も味方もしていない烏丸族の元とはいえ単干であった蹋頓。その蹋頓に何かあれば丘力居も、烏丸族も黙っていない。そういう意味では蹋頓の存在も保険と言えるし本人もその理由でついて行くことに了承している。だが、そんな話し合いをしている場所が・・・。「そういう話をするのは構わないのだが・・・出来れば他でやってくれないか?」華雄が疲れた顔で言う。今、高順達がいるのは華雄の使用している部屋。そろそろ出発ですよ、用意しておいてくださいね。と伝えに来た高順に皆が引っ付いて来て、部屋はかなり狭苦しい事になっている。「いやー、皆が今回の話で過敏になってましてね。洛陽に帰還できる華雄姐さんにとっちゃ問題の無い話ですが。」「・・・あのな、高順の言うとおりにこの話には裏がないと思うぞ。賈詡はともかくも董卓様がそんな謀を出来るとは思えん。」褒めているのかいないのか。「罠で無いならば全員で行っても構わないのではありませんか・・・?」「だから、念の為ってことさ。」「はぁ。だから大丈夫だと言っているだろ、楽進。心配せずともな。そう不安そうな顔をするな。」華雄はぎこちない手つきで楽進の頭をぽむぽむと撫でた。この2人に限った事ではないが、華雄は高順一党と本当に仲が良かった。楽進も素直に撫でられて「うぅ・・・」と唸っている。「華雄姐さんは董卓って人に直に接してるからそう言えるのでしょうけど。俺達は賈詡ってどんな人かも知らないですよ?」「気性は少々荒いが悪い奴では・・・いや、智謀の士だから悪いか? まあ良い、私に任せておけ。何かあっても取り成して見せるさ。」「華雄姐さんが・・・?」「ああ。」何をどうするつもりか知らないがな自信満々な華雄であったが、楽進はまだ納得できなかったようだ。その後もついて行く、行かせないで相当揉めたのだが晋陽側に何かあったときの備えとして、3人娘と閻柔・田豫が居残りとなった。すったもんだの騒動の後、高順について行くのは趙雲・沙摩柯・蹋頓と烏丸騎兵700。それと、討伐軍相手に暴れ(まわりすぎ)た閻行も行く羽目になった。(父親は留守番3人娘は「何かあったらすぐ呼べ!」と息巻いていたが・・・。何かあってからでは遅いのだけどなぁ、と皆苦笑していた。このような流れで、高順達は一部の仲間と分かれて張遼・華雄と共に洛陽へ向かう。その結果、彼がどのような道を選び進んでいくのか・・・。それが解るのはもう少しだけ先のお話。~~~楽屋裏~~~突っ込みどころの多い回になりました、あいつです(挨拶今回は随分説明不足がryまず、董卓政権が出来るのは数ヶ月とかはかかったでしょう。何進の死やら袁紹の強襲などで一気に宮中の人材が減ったとでも思えばいいのかなぁ。それでも色々な派閥があるのでしょうね。しつこい位に話に出てますが、董卓側は本気で高順一党と晋陽勢力を取り込むつもりです。呂布からも話を色々と聞いたでしょうし、じゅーじょーじ絡みで無実なのに罪人にされた上党勢を赦免する・・・恩赦とは少し違う気もしますが、そういう感じですか。董卓や賈詡にしても自陣営の武将数の少なさ(層の薄さ)が解っていますから、華雄と互角に戦えるような人は欲しいのだと思っていたり。まともな人、呂布・張遼・華雄・(オリキャラだけど)徐栄・張済・張繍・・・あれ、けっこう多い?こういう内政・外交絡みのお話って地味ですし、面白くないと思うのですが・・・読者様はどのように見ておられるのでしょうね。そもそもこんな程度じゃ内政とか外交にすらなってないと思いますけど。それと、今回の話の中で出てきた「張燕を晋陽太守・平難中郎将に任じた」のは史実のようです。任じたのは董卓ではなく、何進かじゅーじょー侍の筈ですけど。前回とーとん姉さんと高順君に何があったのかと申しますと・・・。・・・やっぱXXXになって書けないな・・・(汁夜這いされましたが、とーとんさん酒が入っていたのか寝てました→朝起きたら、だるい上になぜかリボン巻いてありました(どこに?)とか書いたところでやっぱ需要はなさそうです。こんなのでOKですか!?わかりません><(何がデスカ1つ余談ですが高順君は呂布同様、張遼に対しても複雑な感情を抱いているようで・・・。丁原さんと朱厳のじっちゃんは、戦場で彼女らと真っ向から戦って武将として散った形になってます。その事に対して高順君は「武将として本望だっただろう」という感情があるようですが、カクボウや兵士の事もあるし・・・と、悩んでいるのでしょう。呂布と張遼、2人の人柄を知っているからこそ余計に辛いのかもしれません。高順君がどんな道を進むのか・・・いや、もう解りきってることですな(笑それでは、また次回。ノシ