【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第37話 第2次晋陽攻防戦その2900の歩兵と共に城から出撃した高順はまず張燕の姿を探す。討伐軍は確実に張燕を狙うはずだ。あの攻撃力の高さなら間違いなく本陣まで突破されてしまうだろう。趙雲が間に合えばよいのだがそれも若干時間がかかり、干禁らも後方撹乱を任務としているため援護は期待できない。その干禁達にせよ、何時までも先鋒部隊の撹乱は行えまい。その更に後ろには討伐軍本隊も控えている。どちらにせよ張燕が討たれたら負けだ。ならば張燕を探して守り続けて時間を稼げば後方に回った将兵も戻ってこれる。相手が退きはじめたらこちらも軍勢をまとめて投石機で攻撃でもいいかもしれない。「張燕殿は・・・あれか。」随分と露出の高い女武将と張燕が馬上で戦っている。僅か数十分であそこまで押し込まれていたとは・・・。急いで救援に向かわなければ、と高順は虹黒を駆けさせる。見ると、相手は随分な剛力のようで荒々しい戦い方をしている。それでいて隙が少なく、張燕も持て余しているように見える。兵士達は両者の戦いについていけない事もあって、とにかく討伐軍を押し戻そうと奮戦していた。「く、強い・・・!」張燕は何とか食い下がっているが限界が近かった。相手の攻撃力が高く、上手く受け流せないのだ。まだ保っているがそれだけだ。先ほど配下武将の張楊の弩による狙撃援護があったが、それすら弾かれてしまって策が尽きていた。趙雲が本陣救援に向かっているようだがそれも間に合うかどうか。このままでは不味い・・・。その焦りが、張燕の判断を誤らせた。「・・・くっ!」華雄の攻撃を避けて反撃を試みたが、逆に間合いに入り込まれて斧の一撃で吹き飛ばされた。「げほっ・・・は、はぁ・・・。」馬から叩き落されたのだが、受身を取り損なって背中から落ちた張燕。凄まじい衝撃と痛みで暫く呼吸すら出来なくなる。その状況を見て晋陽兵が華雄に向かっていくものの、金剛爆斧を振り回されて弾かれる。「う、ぐ・・・。」仰向けに倒れている張燕の頭上には、大斧を振りかぶった華雄。(気の毒だとは思うのだが、な・・・。許せ!)心中で詫び、彼女は大斧を振り下ろ―――さなかった。いや、振り下ろそうとしたのを一本の矢に邪魔されたのだ。大斧の刃で矢を弾き、馬を後退させる。「ちっ・・・。」そういえば、先ほどもあの少女と戦っている最中に矢を撃たれたがそれと同じ奴か。随分と精巧な狙いだ。辺りを見回して張燕の姿を探す華雄だったが、どうもこの一瞬の隙を突いて退いたらしい。引き際を心得ている。と、そこへもう1つ視界にある者が写った。巨大な黒馬に跨り、呂布の放天画戟のような大きな刃・・・いや、槍を肩に担いでこちらに向かってくる男。明らかにこちらを目標に進んでくる。腕に(乾いているが)血の滲んだ包帯を巻いており痛々しいのだが、逆にちょっとした不気味さもある。「ふむ、骨のありそうな奴もいるな・・・。相手になってもらおうか。」華雄も金剛爆斧を担いで馬を駆けさせる。その男が高順であることを知らないまま。高順から見ても、大斧を肩に担いだ女性武将がこちらに向かってくるのが見て取れた。張燕があと少しで討ち取られるところでヒヤリとしたが、一瞬の隙を突いて後退。高順は内心で「流石に飛燕とあだ名されるだけはある」と感心していた。だが、それも一瞬の事だ。高順は目の前に迫る将に集中した。彼女は途中で邪魔をしてくる兵士を悉く薙ぎ払い、平然と馬を寄せてくるのだ。両者は距離が縮め、ある一定の距離で馬を止めた。高順は華雄の、華雄は高順の顔をまじまじと見る。華雄は高順を「いい面構えだな」と考えている。先に口を開いたのは華雄だった。「我が名は華雄。名のある将と見受けた・・・一手、相手をしてもらおうか!」聞いた高順は半分意外・半分納得、といった心境である。(これだけの攻撃能力ならば華雄と聞いても納得できるな・・・。しかし、なんだって華雄が晋陽まで・・・?)華雄は関西の人なので、西涼・・・涼州の人である。董卓配下の騎馬隊将軍の筈なのでこの時期に来るのはおかしいのだが・・・まあ、細かい事は良い。「どうした、怖気づいたか?」「・・・ああ、申し訳ない。少し考え事をしていましてね・・・俺は高順、張燕殿の客将です。以後お見知りおきを。」華雄は高順と言う名を聞いて「何?」と不審そうな表情を見せた。「おい、今高順と言ったか。何と言う字だ。「高い」に「順番の順」か?」「はぁ・・・そうですが。」「お前が呂布に挑んだ高順・・・ははっ、やはりな。全然似てないじゃないか。」「?」華雄は少し楽しそうに笑う。あの馬鹿、やっぱりまともに話すつもりはなかったようだ。下半身が馬・・・というのは当たらずとも遠からずだが。呂布の事を思いつつ華雄は虹黒に目をやった。毎回の事だが、高順と対峙或いは接した人は大抵虹黒のほうに注意が行く。馬の特産地である涼州(というよりも関中)出身の華雄ですら、これほど立派な黒馬はお目にかかったことがない。そして、そんな馬の背に乗って手綱を引くことなく戦場を走る高順。しかし、1つだけ気にかかる事がある。高順という男、どこかで見た覚えがある。いや、誰かに似ているのだ。アレはいつだったか・・・。「まあいいさ。腕はどれほどのものか知らないが馬術は相当・・・面白い。さぁ、始めるか・・・!」華雄はようやく、といった感じで金剛爆斧を構える。高順も同じように三刃槍を構えた。(さて、華雄相手にどれだけ渡り合えるか・・・。)高順は華雄という人に対して全く油断をしていない。演義では華々しい戦果を上げながらも、関羽に対してのかませ犬同然にあっさりと討たれ、正史でも何が何だか良くわからない間に孫堅に討たれた武将だが、今目の前にいる彼女はどちらかと言えば演義に近い勇将だ。自分が今まで命のやり取りをしてきた相手の中で三指に入る腕前だろう。(1は呂布・2は閻行いや、2番目はおかしいような気はするが気にしたら負けだ。2人とも、自分ではなく馬が動く。カッカッと馬蹄の音が地に響く。そして・・・華雄が先に仕掛けた。「こぉぉおおおっっ!」気合と共に、斧を袈裟懸けに振り下ろす。その一撃を高順は三刃槍で受け止めた。ガキィンッ!と金属がぶつかり合う音が響き渡る。そこから華雄は息をつかせず更に切り込み続けていく。右からの横薙ぎ、それを防がれれば馬が反転、遠心力をつけて逆方向からの切り払い。それらを虹黒を後方に下がらせて避けるが、華雄は直ぐに距離をつめて追撃を仕掛けてくる。高順は攻撃を何とか受け止めるがそのたびに腕に激痛が走る。「ちぃ、傷が・・・。」攻撃の全てを見切ったわけではないが、長い時間は戦えないようだ・・・そろそろこちらからも仕掛けるべきか。華雄はただ力任せに斧を振り回すだけではない。たまにフェイントも織り交ぜてきて意識を逸らせようとしてくる時もある。少し違うかもしれないが呂布をそのままパワーダウンさせたようなタイプだ。それでも充分強い。攻撃速度・威力共に凄まじく、勝てるかどうか、それ以前に生きて帰れるかも怪しい。張雲か沙摩柯であれば勝てるだろうが・・・。とにかく反撃をしなければ。振るう速さはあるのだが、振り切った後に構えを戻すまで僅かに隙が生じている。そこを高順は狙い始めた。斧を振り切った華雄に三刃槍で突き入れ、打ち下ろす。「むっ・・・」先ほどまでとは違い、今度は華雄が守る側に徹し始めた。高順の攻撃は速い。腕の怪我もあって本来の威力を引き出せていないものの、隙そのものが少ない。また、威力が出てないといってもそれを虹黒が補う。華雄も高順も馬上戦では一箇所に留まらず、移動しながら攻撃をしていた。馬を駆けさせ、すれ違いざまの攻撃・または武器を合わせての鍔迫り合い等。ただ、高順の場合は攻撃のたびに「馬が踏み込む」のだ。高順の攻撃に合わせて虹黒が踏み込み、体重を乗せた一撃と為す。華雄は心中で素直に驚いていた。先ほど「高順の馬術は相当だ」と思ったものだが、その認識を更に「相当どころではない」と改めた。人馬の呼吸が1つ。人馬一体とは言うが、目の前の男はそれを平然とこなしている。馬の扱いでは張遼か呂布並みかもしれない。それに加えて、一撃の重さと速さ。見ていると、一撃を放ち、こちらの一撃を受けるたびに腕の包帯の赤い染みが広がっている。傷が開いているのだろう。本来の威力が発揮できていないのかも知れないが、あの怪我でこの威力。(怪我さえなければ、という所か。もしも万全の状況で戦っていれば・・・)なんとも恐ろしい。馬上戦で限って言えば、この男は張遼並みの実力を発揮するのではないか?そんな考えが頭をよぎり、華雄は小さく笑った。たかが反乱軍と侮っていたが、正直驚かされることばかりだ。張燕は恐らく馬上戦に不慣れだっただろうが、それでも自分相手に粘り強い戦いを見せた。自軍の後方を撹乱している部隊長・・・名前こそ知らないが、こちらの主力部隊が前面に集中した頃を見計らって一気に側面を突いてきた。そして、高順一党の長、高順。これほどの剛の者とは思いもしなかった。世にはまだ見ぬ強者がいる・・・なんとも面白い。そんな考えをしていた華雄だったがすぐに思考を切り替えた。(さて、そろそろ退き時か。高順と戦うのが楽しくて忘れていたが・・・)見れば、高順の腕の包帯は完全に真っ赤に染まっていた。そして、自軍の後方部隊は押されて散り散りに。その上に数は少ないながらも騎馬隊数百が直ぐそこまで迫っている。胡軫が足止めに向かっていたはずだが、蹴散らされたようだ。その部隊長もこちらの予想以上に「出来る奴」と言う事らしい。このまま留まっていても得る物はなさそうだ。繰り出された高順の一撃を受け止め、華雄は馬を反転させて駆け出した。「あっ!?」「ははっ、もう少し戦いたかったが時間だ、今回は退かせてもらうぞ!・・・徐栄、撤退だ!軍を纏めて退く、遅れるな!」「は、はい!全軍撤退!撤退だ!遅れるなー!」高順は追いかけようとするが、腕の痛みに顔をしかめて反応が遅れてしまった。見ると華雄と徐栄と呼ばれた女性武将は帰り掛けの駄賃とばかりに行く手を遮る張燕兵を蹴散らしていく。趙雲部隊が本陣に到着したが、その頃には華雄とその軍勢は後方に撤退、追撃しようにも被害が大きくてそれどころではない。干禁らも、一丸となって退いてくる華雄隊とぶつかるのは得策ではないとあっさりと道を譲っているが・・・後方をかき混ぜていた干禁と沙摩柯の部隊は1000ほど。一気に退いてくる華雄隊は5000以上。賢明な判断だろう。その後、傷の痛みに耐えつつも張燕は軍勢をまとめて城内へ後退。両軍共に痛み分けと言いたいところだったが・・・張燕側の死傷者は1000近く。華雄側は700ほどと、重症を負った胡軫。張燕側の負けと言ってもいい状態だった。~~~晋陽城内~~~張燕に従って帰還した高順であったが、医務室でなぜか正座をさせられていた。理由は、腕の怪我が治っていないというのに無茶をしすぎたという事だ。張燕は助けられた側の人間なので弁護してくれていたが、趙雲と楽進の怒りは収まらなかったらしい。「―――やはり、お止めしておくべきでした。・・・聞いていますか、隊長!?」「高順殿、無茶なしないと約束をされたばかりでしょうに。そんなに約束を破るのがお好きですか?」「いや、あの・・・ほんまスンマセンっした・・・。」楽進と趙雲は文句を言いながら血まみれになった高順の腕の包帯を替えている。文句を言いつつも世話を焼いているのだから素直でないと言うか何と言うか・・・。当然、他の者もいい顔はしなかった。沙摩柯ですら、不満そうな表情を見せている。そこへ、閻行が部屋に入ってきた。「あら、皆様おそろいで。・・・随分やられたみたいね、順。」高順の腕の傷を見ながら閻行はため息をついた。しかしまあ、あれこれと良い娘に世話を焼かれる息子だ。奥手奥手とばかり思っていたが、こうしてみていると女性との縁が多いのかもしれない。これならば気を回さなくても良かったか、とも思ったが・・・古来から「英雄、色を好む」とも言う。息子が英雄の器とはこれっぽっちも思わないが、甲斐性はあるようだから幾らでも良い娘を見つけてほしいものだ。速く孫の顔を見たいし(閻行の願望が入りすぎているが気にしたら負け。)「いや、傷が開いただけで向こうからの攻撃は貰っていないのですが。」「へぇ・・・。中々の腕のようね。相手はどんな武将だったのかしら。」「名前は華雄と名乗ってましたよ。」高順の返事を聞いた閻行は「華雄?」と首をかしげた。少しして、楽しそうな笑みを浮かべる閻行。「・・・まあ、良いでしょう。順、次に出撃するときは貴方は休んでいなさい。」「え?しかし・・・。」「代わりに私が出ます。」『!?』~~~討伐軍陣地~~~「胡軫。大丈夫なのか?・・・随分手ひどくやられたわね。」陣幕の中で寝転がっている胡軫に徐栄は声をかけた。酷い状態だった。全身ボロボロ。片腕を骨折。そんな状況でも何とか助かったのだから運が良いとは言える。「ああ・・・趙雲という女・・・正直、強さの桁が違っていた。何が起こったのかまったく解らなかったぞ・・・。」胡軫は、趙雲に挑んだ。挑んだのだが、自分が斬りかかった所までしか覚えていない。目を覚ましたら陣幕の中だった、と本人は言っている。胡軫を助けて帰還した兵士によると、趙雲が槍を薙ぎ払い、その一撃で胡軫は馬から叩き落されたのだという。趙雲は止めを刺すでもなく、そのまま直進。兵も蹴散らされたが必要以上の交戦をせず、本陣を目指したのだとか。そのおかげで胡軫隊はそれほどの被害を出さずにすんだ・・・らしい。つまり、胡軫は趙雲とやらにとって「お呼びでない」扱いだったのだ。「・・・そこまで実力に差があると、腹が立つよりいっそ気分がいいな。」と胡軫は言うのだった。「ところで、華雄様はどこに?」「ああ。総大将殿の所へ文句を言いに行ったわ。どうして後詰を繰り出さなかったのかってね。」徐栄ははぁ、とため息をついた。後半は華雄が抑えこまれた為に機を逸したが、前半は完全にこちらの流れだった。その流れに乗って張温が軍勢を差し向ければ、一気に晋陽城まで戦線を繰り上げることも出来たはずなのに。もしかしたらそのまま張燕を討って終わらせることも出来たのかもしれない。どうせ、華雄に任せて置けば安心とでも思っていたのだろうが。どうして官軍のお偉方はこうも能無しが多いのか。「皇甫嵩殿か朱儁殿であれば、機を逃さなかったでしょうに。」思わず愚痴をこぼす徐栄であった。「おいおい、徐栄。愚痴を言うのは構わないがもう少し声を落とせ。外まで丸聞こえだったぞ。」「あ、華雄様・・・。」華雄が呆れ顔で陣膜の中へと入ってきた。「胡軫も苦労だったな。」「は、はい・・・。」華雄は胡軫の横にどかっと座り込んだ。「反乱軍と侮った為にこのざま、か。」「申し訳ありません・・・。」「いや、お前ではない。張温と・・・私だな。正直侮りすぎていた。」そう、反乱軍を侮っていた。その為に胡軫は重症、攻め抜く機も逃した。「張温と協議をして来てな。補給が滞ってるのだそうだ。」「え?そんな・・・。」徐栄の表情が曇る。もしかして、自分達の足を引っ張るつもりだろうか?「別に十常侍が関連している訳ではないようだがな。襲撃されて火矢を射掛けられたりとか、そういう話を聞いた。まだ大丈夫だが、こちらにも余裕がなくなってくるということだな。」「それが、張温が出てこない理由ですか?」「はっ、まさかな。ビビッてただけに過ぎん。で、説得(と言う名の脅し)した所、明日もう1度攻める事になった。」「明日ですか?」「ああ。当然張温にも出てもらう。一気に城門を抜きたいところだが油断できん相手だということはわかった。それに、向こうも死にもの狂いで抵抗をしてくるはずだ。今日以上の戦いになるぞ。」華雄の言葉に徐栄が頷く。残念ながら胡軫はここで留守番だが。(しかし・・・高順。彼の顔はどこかで見た覚えがある。顔、というか・・・ええい、もどかしいな。)記憶の糸を手繰って思い出そうとするが、すんでのところでそれが出てこない。一応、張温に高順一党が晋陽軍にいるという事を伝えたがいまいち反応が鈍かった。十常侍に対しての点数稼ぎにはなるはずだが、よくよく考えれば晋陽を落とせば良いだけの話だ。あの怪我では明日は出て来れないかもしれないが、総力戦になれば出てくることもありうる。そのときに聞けばよいかと思い直し、華雄は自分の陣幕へと向かっていった。~~~翌日~~~張温率いる討伐軍4万弱。そして張燕率いる反乱軍、同じく4万弱。この日、討伐軍はほぼ全軍を投入して攻城戦に入る。対する張燕側は篭城、今回は投石機を使用する。とにかく敵の数を減らす。ある程度抵抗すれば、相手は退く筈。そこを閻行・趙雲・沙摩柯の攻撃部隊が後ろから攻めかかり損害を与える・・・と、消極的だが、現状で出来る戦い方である。高順・3人娘・閻柔・田豫は城壁守備。(李典は投石機の指示があるので厳密には違う。体の傷もあって高順は出撃を止められているものの、弓くらいなら撃てると言う事で城壁守備である。討伐軍はと言うと華雄が先頭に立ち、出撃の時を待っている。こういう仕事は張温がやるべきなのだが土壇場で「いや、こういうことは華雄殿の方が絵になるし・・・」と言いだして、結局矢面に起つ事になってしまった。だが、昨日の違うところはその後ろにつき従う兵数である。昨日は6千ほどだったが今回は3万5千。本陣(張温)の守備に4千ほどがいるだけで本当に総力戦の構えである。馬の背に乗って目を閉じている華雄。その後ろには樊稠・李粛・徐栄。華雄が静かに目を開けた瞬間、攻撃開始を知らせる銅鑼が鳴った。「・・・行くぞっ!」『応!』華雄の言葉に、兵士が武器を構えて晋陽城へと突き進んでいく。「さぁ、張燕よ。どう出る・・・?」舌先で唇を舐めて、華雄も馬を駆けさせた。晋陽側でも討伐軍が突撃してくるのが確認できた。3万数千の軍勢が一気に攻めてくるのは流石に迫力がある。その上、一番先頭に起って軍勢を率いるのは華雄だ。主戦場となるであろう城門上の城壁にいる高順は弓を手に、息を呑んだ。昨日は気にしていなかったが討伐軍の旗には「華」だの「張」だの「徐」だのと書かれた旗がひしめき合っている。張、は誰の事なのだろうか?と考えていた高順だったが、そこで急に城門が開いた。「・・・え、何で城門が開いて・・・そんな作戦じゃないだろ・・・。皆は何か聞いているか!?」だが、誰も聞いていないらしい。城壁から見ていた楽進も干禁も真っ青になって首を横に振る。なぜか兵士まで蒼白になっている。この時、2人は高順の質問に首を振ったのではない。城門から出て行った人間を見て首を振ったのだ。高順も慌てて城壁から確認をするが、やはり彼も真っ青になった。「一体誰が・・・げえっ!?」その視線の先にいたのは閻行・趙雲・沙摩柯。それに続いて1000ほどの騎兵が集結していく。彼らは追撃隊のはずなのだが・・・閻行は城壁に振り返って「援護よろしくー♪」と手を振っている。「あああああ! 何やってんですか母上ー!? 援護よろしく♪ じゃないですよっ! 命令無視もいいかげんにしてくれー!」いきなり作戦を崩されてしまって、高順は混乱した。いや、彼だけではなく楽進達も。城内で指示をしていた張燕も、城門が開いて閻行たちが出撃した状況に訳もわからず唖然としていた。そんな城壁・城内の混乱を他所に閻行達は陣を敷く。「あのぅ、母上殿・・・本当に宜しかったのですか?」「当然♪」「しかし、軍令違反ですが・・・。」「問題無し♪」いや、大有りだろ。と内心で突っ込む趙雲と沙摩柯だったが、彼女らにしてもこの行動は冷や汗ものである。城門で待機していた彼女達だったが、討伐軍が向かってきたという報告を受けた閻行が「じゃ、ちょっと行ってきます。」と散歩に行くような感じで城門を開けてしまったのだ。「ちょっ!?」と、大慌てで閻行を引きとめようとした趙雲達だったが、閻行曰く「大丈夫大丈夫。あの討伐軍で核となる戦力は数千と言ったところ。先頭を突き進んでくるだろう武将さえ押さえれば勝機は見えてきます。」とむしろ引っ張られて出て来てしまった。何でそんなに自信があるのかは解らないが、華雄という人物に心あたりがあるのか。それとも張温という人間の戦い方を知っているからなのか。閻行は大斧を肩に担いで、待った。その目には獰猛な光が混じり、討伐軍を見据えている。城壁から息子が「何やってるんすかー! 戻ってくださいよ!」とか叫んでいるが、聞こえない振りをしておこう。「楽しみねぇ・・・。」彼女の見つめる先には、華雄がいる。その華雄も、城門前で布陣している軍勢を見据えていた。数は1000程度と言ったところか。見た限りでは昨日見かけた武将が2人ほどと、あと1人は・・・昨日はいなかった。どうも、自分を見ているようだが。はて、どこかで見たような。まだまだ距離が離れているので良く見えないが・・・。その距離もぐんぐんと縮まり、次第にその姿をきっちりと確認できるようになっていた。晋陽側では何かあったのか城壁上の部隊が慌しい動きを見せていたが、今は迎撃の構えを見せている。この勢いのまま攻め込んでやろう、と思っていたのだが華雄はあることに気がついて、慌てて軍勢を停止させた。それに驚いたのか、後ろにいた徐栄が「どうしました!?」と叫んでいる。「あ、あれは・・・まさか・・・?」徐栄の言葉など全く聞こえてない様子で、華雄は目の前の女性を見ている。その女性は閻行なのだがその閻行は目の前にいる3万以上の兵士など眼中に無いような風情で、すたすたと華雄に向かって歩いていく。後ろにいる趙雲達、そして城壁にいる高順達もいつ討伐軍が攻めて来ても良い様に得物を構えている。そんな事などお構い無しに、閻行は華雄に話しかけた。「お久しぶりね、「おはなちゃん?」」「え、ええ・・・えーーー!? え、閻行様ぁぁぁぁあぁっ!!?」華雄の絶叫が木霊した。~~~楽屋裏~~~久しぶりですあいつです。高順君は不憫です。頑張ってるのに叱られてばっかり・・・。いや、作者が悪いのですが(ぁぁそして、母上は自重するべき。でも、戦場ではこれが最後の見せ場になるはずなのでお許しを。感想で、華雄さんは高順(或いは虹黒)にどんな目に合わされるのか!と期待(?)しておられる方がいましたが残念。正解はまま上さまでした。これはもう結果が見えているとしか言わざるを得ない・・・。ところで、これまでも何度も言って来たことですが、話数が結構多くなってきました。10話から20話へ。20話から30話へ。現在(番外編含めて)40を突破して50には確実に届く状況・・・。普通なら既に終わりが見えていたシナリオがどんどん迷走しています。それでですね。この37話書いてる時点でまたネタが出来上がってしまいまして。あいつ「あれ、今度は60話辺りで終わらせる予定が70越える?(汗」・・・ナンテコッタイ。なんで書いてる最中にネタが湧き上がってくるのかと子一時間。ごきげんようアンダーソン君。(え?それ以前に「晋陽編3話位で終わらせます」と言っておきながら現在5話位使ってるんですよね・・・・・・ナンテ(ryもう1話か2話で晋陽編も終了・・・するといいなぁ(願望その後はどうするか。俺、投稿数が50になるまでにPV50万越えてたらその他版へ移動するんだ・・・(嘘ではまた次回、お会いいたしましょう。