【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第36話 第2次晋陽攻防戦。総数4万ほどの軍勢、いや、討伐軍が上党を通り過ぎ張燕晋陽軍を殲滅するために進軍している。所詮は賊討伐、と高をくくって出陣した張温だったが自身の戦績に不安があり、十常侍からの命令もあったので助っ人を用意していた。ただ、助っ人を用意していても破砕槌(城門攻撃兵器)をほとんど用意してない時点で張燕晋陽軍を甘く見すぎている。だからこそ助っ人として派遣されてきた武将と、その配下6千の兵士は不安が募っていたのだった。助っ人・・・紫を基調とした服。服と言っても下はチャイナドレスのような大胆なスリットの入ったものだ。上半身は胸当てと両腕を覆う腕当て、首当てのみ。その首当てから2本の長いリボンのような布地を垂らしている。流石にそれだけでは寒いので、その上に白地の外套(マントのようなもの)で身を覆う。その武将。名を華雄(かゆう)と言う。「ふう、流石にここまで北に来ると寒いな・・・。」軍勢の先頭付近を進む華雄は体をブルッと震わせて呻くように言った。「ならば、もっと厚着をしてくるべきだったのでは?」「そうですな。普段の薄着でさえどうかと思いますが。」「それで良く風邪を引かないなと感心さえ致します。」「そうですよぉ、そんな控えめな胸でそんな露出の高い服は駄目ですって。」「・・・お前ら、後で覚えてろよ?」周りを囲む武将の軽口に、華雄は少しへこみつつもにらみ付けた。言った順番に武将の紹介をすると。胡軫(こしん)・樊稠(はんちゅう)・李粛(りしゅく)・徐栄(じょえい)である。「まぁまぁ、そう仰らないでくださいよ。」繕う様にいう徐栄をジト目で睨みつつ、華雄は「うるさい。」と返す。「私みたいに大きければそれはそれで邪魔なんですよぉ?」「うっさいうっさい聞きたくないー。胸の話はやめてくれ!」武才には自信がある彼女だったが、胸の大きさには多少コンプレックスがあるらしい。耳を塞いで頭を振りまくる。「そうだぞ、徐栄。華雄将軍はご自身の薄い胸に大いに不満があるのだ。」「うむ、将軍の薄い胸の話はそれくらいでだな。」「薄い胸薄い胸と年頃の女性が言うべきではありませぬな。」「解りました、薄い胸の話はもうやめておきます。大丈夫です、小さくてもそれはそれで!!」「・・・お前らが私のことを嫌っているのは良く解った。」あまりの言い草に、流石の華雄もふてくされてしまった。「えー、私は華雄将軍の事大好きですよ?苛めると楽し・・・まあ、胸はいいとして。華雄様が今回の戦に不満があるのは解るのですけど・・・。」徐栄は声を落としてそんなことを言う。確かに華雄は今回の出撃に不満があった。張温が戦下手だから、とかいうことではない。張温が自分達と対立する十常侍派の立場の人間であるからだ。華雄は立場上、呂布陣営・・・董卓陣営と言い変えたほうがいいかもしれない人である。十常侍はその董卓と友人である賈詡を共に呂布に対しての人質としたのだ。当然、自分達に対しても。何とか奪還できれば直ぐにでも逆襲に転じるというのに。監禁されている場所も解っているが流石に守りが厚い。だが、機会は必ず来る。状況は揃っているのだ。あとは何進か十常侍。どちらかが暴発してくれれば洛陽守備隊として残っている呂布・張遼の出番だ。正面きって宮中に奪還に行っても董卓らが人質にされて結局は動けまい。しかし、何らかの形で宮中の混乱が起きればどさくさに紛れて両者を取り戻すことだって出来るはずだ。最低限十常侍を取り除ければそれでもいい。問題は何進が手元に置いた袁家の軍勢。「・・・呂布たちに任せるしかないのだがな。」頼んだぞ、と心中で思うしかない。今は自分達の戦に集中しよう。圧制に対して立ち向かった晋陽の連中には悪いと思うのだが・・・。ここで、華雄はあることを思い出した。「おい、樊稠。例の手配書を持って来てただろ?一度見せてくれないか。」「は。・・・どうぞ。」樊稠と呼ばれた男は懐から丸められた一枚の紙を取り出して華雄に手渡す。「高順、ねえ。丁原とやらの配下だったとか色々な話は聞くが・・・。」華雄は高順のことを一応は知っている。呂布に聞いた話でしかないが気の毒な男だと同情してしまう。丁原に直接手を下したのは呂布であるが殺すように指示したのは十常侍だ。高順とやらが主の仇を討とうとして呂布に挑んだという話も張済から聞いた。その結果、賊にされてしまったのだから不幸としか言いようがない。「丁原に罪はないのだがな。主従どちらにとっても不憫な話さ。十常侍め・・・。」しかし。しかしだ。この手配書に書かれた高順の似顔絵。一体何だこれ?華雄は手配書とじっと睨めっこをしてそんなことを思っていた。「なあ、お前ら。こんな腕とか目が沢山あって下半身馬っていう存在を見たことがあるか?」『ありません。』「そうだよなぁ・・・・・・。」即答だった。「呂布・・・高順と言う男の外見を素直に喋るつもりなかっただろ。これを正式な手配書として公開するのもどうかと思うぞ・・・これを頼りに探せって言われても先ず無理だ。」「特徴を伝えたのは呂布様だそうですが・・・書いたのは陳宮殿だとか。」「あいつが書いたのか・・・。」もう少し、なんと言うか絵心のある奴に書かせるべきじゃなかったのか・・・?馬上でじっと似顔絵を睨めっこを続ける華雄であった。~~~晋陽~~~張燕側でも、既に討伐軍4万がこちらに向かって来ている事を「影」の報告で掴んでいた。この晋陽に討伐軍が到着するのは恐らく2日3日かかる、という事らしい。強行軍で来る可能性もあるから油断はしない。張燕の指示で既に城壁上に守備隊を配置。城内にも李典お手製の投石機が3基配置されている。城外にも陣地を構築してあり迎え討つ準備は万全・・・と言いたいところだが、一部そうとは言えない人々がいた。高順達である。「李典ー! 俺の武器はまだなのかー!?」「ちょ、ちょい待ってもうちょい待ってー! 高順兄さんのはも少し待ってー!」「おい、この改修された鎧どうやって着るんだ!」「だあああっ、さっき説明したやんかーーーーー!」新武器の扱いで困り果てていた。「はぁぁ・・・高順殿と楽進はもう少し時間がかかりそうですな。」「ああ。楽進の場合は鎧の部分が多くなったから仕方ないのかもしれないけどな。」趙雲と沙摩柯はため息をついている。閻行は城内守備(というか城門)、干禁は既に城外陣地へと赴いている。趙雲と干禁の武器も新調されている。外見はそれほど変わっていないが趙雲の槍「龍牙」は少しだけ変化していた。この槍は対となった先端のある槍で刺すことに主眼を置いていた。新たな「龍牙」は、その先端部分の交換が可能となっている。装着できる物は青釭の刀。薙刀のようにも使用できる。青釭の剣の威力も高いので刺すだけでなく斬るという動作も可能になった。趙雲はこの槍を「龍閃」と呼ぶことにしたようだ。干禁は二刀流の使い手で、彼女の双剣「二天」も同じく改修されている。見た目は変わらないが鋼鉄製になっていて、耐久性・威力共に底上げされている(これは他者の改修武器も同じである)。干禁は見た目の変わらない自分の武器に何と言う名前をつけようか大いに悩み、高順に助け舟を求めていた。「俺、そういう命名に対しての才能はないよ?」と言いつつも高順は必死に考えたらしく、出された名前が「摩利支天」である。天がかぶってるから、とかそんな理由だったようだが干禁本人はいたく気に入ったようでそのまま摩利支天と呼んでいる。そして楽進の鎧、「閻王」。この鎧は軽鎧といったほうが良い物だった。胸・膝から足・手甲、と楽進の戦い方に合わせてのものだったが防御力は大して無い。そこで、防御力と攻撃力を重視したものに作り直そうと、ほとんど新規に作り直したといってもいいほどの代物を李典は作り上げた。簡単に言えば全身鎧。ちゃんと腕・太もも・腹部・首・そして顎部分まで覆える鎧になっている。そのくせ間接部分に工夫を凝らしており、楽進の軽快な動きを全く損なわない作りだ。一番変わったのは手甲であろう。今までは拳を傷つけないように丸く作られていたのが、かなり鋭角的な作りへと変化している。そしてこの手甲。専用の長剣をはめ込むことが可能だ。馬上戦でリーチの短い手甲では戦いにくいことこの上なかったが、専用武装を作り上げて、且つそれを装着できるような形にしたわけだ。これで馬上戦でも対応可能になっていたが、楽進は「刃物はあまり使いたくありませんけど・・・。」と少し残念そうではあった。この鎧、楽進も良い名前は思い浮かばなかったらしく、またも高順が名前を考えさせられる羽目になる。結果的に閻王ではなく「焔摩天」と名づけられた。(「マヤで良いんじゃないか?」と言ったら何か全力で嫌がられたそして高順の武器。これがまだ完成していない。最悪の場合、倚天の大剣で戦わないといけないか・・・と、高順は考えている。だが、それ以上に最も厄介な事があった。つい先ほどまで高順は閻行と特訓をしていたのである。これまで延々と特訓を繰り返してきたが、今の高順は他の誰よりもボロボロである。腕と足は包帯だらけ。胸の傷は少し無茶をすればまた出血するだろう。楽進の癒術で痛みはほとんどないものの、いきなり戦闘に参加するのは辛い。その上、三刃戟に代わる武器がまだ完成していない。今すぐ戦闘になるわけではないが「間に合わないかも・・・」と高順は考えていたのだった。~~~2日後、晋陽~~~高順・閻行・李典以外の全員が城壁或いは城外陣地に配置され、迎撃態勢をとっている。討伐軍は張燕軍陣地より3里(約1・2km)南に布陣。こちらも攻撃態勢を敷いている。その先鋒には華雄軍6千が布陣。後方に張温率いる官軍3万数千が控える。対する張燕軍の城外陣地には7千ほどを配置して、城壁ならびに城内守備に合計3万。篭城策を取るべきなのだろうが、破砕槌で城門を突破される事を懸念して迎撃。また、城内設置の投石機には2通りの種類があって、攻城兵器を攻撃するための大岩投擲用が1基。人を攻撃するためのものが2基。指揮を取るのは李典である。対人間用はとにかく「数撃ちゃ当たる」なもので、握り拳大の石を大量に且つ広範囲にばら撒く。便宜上「散弾型」とでも呼ぶことにしよう。これは一基が城壁前に石を飛ばせるように、もう一基が大岩投擲と同じ場所にばら撒くように調整されている。当然移動もできるし射角も変更可能だ。破砕槌さえ壊してしまえば後は篭城で石をばら撒けるだけばら撒く、もいい。(篭城して大岩投擲で破砕槌のみ狙えばいいという意見もあったが城門に取り付かれると射角の問題で当たらない)陣地を作ったのも、そこから南であれば大岩が届くという場所でもある。とにかく防御に徹して相手の攻撃手段を封じ込め、そこから反撃をするという作戦であった。破砕槌が出ないのならばそれはそれで良い。城門守備に閻行が配置されたのは城門を突破された時の為でもある。さすがの閻行といえど、単独で破砕槌を破壊する事などできよう筈もない。誰もがそう思っていたのだ。そして晋陽陣地。そこには張燕・趙雲・沙摩柯がいる。騎馬隊は前晋陽軍からあった部隊をそのまま使用しておりその総数は1500ほど。残りは全て弓・歩兵だ。常に他方向から射掛けられるようにジグザグに、幾重にも巡らせた木柵。城壁上からの方向指示で散弾型投石機の攻撃も待ち構えている。守りを固め続けていれば確実に討伐軍は消耗する。また、張燕は「影」に命じて補給部隊があれば妨害するように命じている。補給が完全に途絶えることはなくても滞れば更に討伐軍の消耗は早まるに違いない。問題はこちらには補給がなく、長期戦になれば食料が保たないという点である。防衛戦を展開しつつ、時間との勝負・・・。だが、やるしかない。そして明朝。降伏勧告も宣戦布告もなく、討伐軍は張燕晋陽軍に突撃して行った。「来ましたか・・・。弓兵、構えっ!」張燕の指示を受けて兵が弓を構える。総大将である彼女は本来城内で指揮を取るべきなのだが本人がそれを良しとせず前線(本陣だが)まで赴いている。張燕自身もかなりの武力を持っており、決して邪魔になるような人ではない。対して討伐軍先鋒部隊の華雄も騎兵に弓を構えさせて自身も同じように突撃をしている。「行けっ!反乱軍を蹴散らせ!」「ははぁっ!」華雄の号令一過、騎兵部隊が先駆けていく。彼女もまた「将たるものが後方でダラダラしているべきではない!」という人で、部下から何度も諌められているがその癖が治らない人だった。その上、武力も統率力も高く結果を出してしまうから余計に人の言う事を聞かなくなってしまう。徐栄も何度か諌めたが結局言う事を聞いてくれない。少しくらい痛い目にあったほうがいいのかも?と考えているが、流石にそれを口に出す事はできないだろう。華雄に従って徐栄達4将も華雄に従い駆けていく。「もう少し引きつけて・・・撃てっ!」張燕の号令に従って弓兵が矢を放ち、討伐軍の騎兵が倒れていく。味方の亡骸を乗り越えてきた討伐軍兵士も騎射(馬に乗りつつ矢を放つ事)で反撃。張燕側の兵も同じく倒れていく。討伐軍先鋒部隊は6千で、張燕側は7千。防御陣地に篭って戦うがどうしても不利だ。(投石機を使用したいですが、まだそれほど多くの兵を釣り出していない。もう少し引き付けなくては・・・。)兵士達に混じって趙雲と沙摩柯も矢を放つ。特に沙摩柯の矢は確実に敵騎兵を撃ち抜いていく。趙雲もそうだが、威力の点で言えば沙摩柯のほうが上で矢を番える速度もまた速い。ちょっと不満そうに趙雲は呟く。「むぅ、槍では負けぬと思いますが・・・弓では敵いませぬかな?」「そんな事はないだろう。・・・ふっ!」沙摩柯の放つ矢がまた騎兵を捉える。「そんな事とはどちらですかな。槍では負けぬ、と言う意味か、私の弓の腕が沙摩柯殿に劣らぬ、ということか・・・。」負けじと趙雲も矢を放ち兵士を討ち取る。「さあな。それは自分で考えろ!」言いながら沙摩柯はまた矢を放った。最先頭を進んでいた討伐部隊は柵を越える事ができないまま、手数の差で押し込まれて後退。その後ろから徐栄が少し先行するように一騎で駆けていく。当然、弓兵が徐栄を狙うが殆どの兵士が徐栄1人を狙って矢を放った。自身を狙って飛んでくる矢を見ながら徐栄は笑った。「貴方達は正しい。まったくもって正しい。けどね・・・。」徐栄は槍を旋回させて、飛んできた矢を全て叩き落した。「そんな程度でこの徐栄を止められると思うなぁっ!」その徐栄の直ぐ横に樊稠も追いつき、同時に進んでいく。それを見ていた沙摩柯と趙雲は、1つ目の柵を放棄して後方へ下がるように兵士達に命令を下して、干禁と共に待機している自軍の騎馬隊へと向かっていく。張燕側の陣地には柵が4段あるが、後方に行くほどに柵は広がり、控える兵の数も多くなる。退き遅れた兵士達があっさりと柵を越えた徐栄たちに討たれ、後続の騎兵隊も遅れじと追いついてくる。その頃には趙雲達も自身の馬に跨っており、突撃態勢も整っている。突撃してきた討伐軍の騎馬隊を第2の柵と兵に防がせ、趙雲達は迂回、横腹を突く。そうすれば後方で待機している討伐軍本隊を釣りだせる布石くらいにはなるはずだ。ただ、彼女達は討伐軍大将の張温が臆病な性格であることを全く知らなかった。そして、樊稠らの後ろに控えていた華雄という将軍の事も。流石に徐栄達でも守備兵が多数いる柵を抜く事は容易ではないらしく、手こずっている。武将達は手傷を負っていないが、張燕軍はとにかく歩兵が槍衾で防御を固め続けて後方から矢を撃ちまくってくる。「ちっ、思ったよりも・・・!」李粛が矢を叩き落しつつ叫んだ。徐栄は楽に矢を落としたが、彼女ほどの武勇を持っていない他3将には少し辛いようだ。その上、防御部隊に手間取っている間に騎兵主体の攻撃部隊がこちらの側背を突こうと迂回し始めているのが見えた。「くそっ、たかだか反乱兵と思っていたが中々やる!」なんとか第2の柵も突破してしまいたいが張燕軍の抵抗も激しく先に進めない。そこへ、華雄が進み出てくる。「これを突破できればいいのだろう?」「は・・・? 華雄将軍!?」長槍の槍衾・引っ切り無しに射掛けられてくる矢をものともせずに前に進んでいき、得物である大斧「金剛爆斧」を思い切り柵に叩き付けた。柵がめきめきと音を立ててあっさり崩れていく。華雄は破壊した柵を乗り越え、何が起こったのか解らないまま呆然としている張燕軍兵を金剛爆斧で薙ぎ倒す。「・・・はっ!?」徐栄達も呆気に取られていたが、すぐさま思い直して華雄に続いて突撃。張燕第二陣も切り崩され始めていく。迂回して討伐軍側面を付こうとしていた趙雲だったが、柵を抜かれたのを見て馬首を翻した。このままあの先頭を進んでいく武将、名前は知らないが放っておけば張燕本陣まで崩されかねない。「干禁、沙摩柯殿はこのまま進み攻撃を!我が隊は本陣救援に向かう!」伝令を飛ばし、趙雲は300の騎兵を伴って引き返す。「やはり何事も思い通りには行かぬか!・・・チッ!」趙雲が引き返すことを察知したか。武将と思われる男が幾許かの兵を兵を率いて足止めをするためだろう、こちらに向かってくる。その武将が長剣を掲げて名乗りを上げながら駆けて来た。「我が名は胡軫!反乱軍の将と見受けたぞ、勝負いたせ!」「ええい、かかずりあっている暇は無いと言うのに!!」~~~晋陽城・城壁~~~自軍が苦戦している様子を、高順と楽進は黙って見ていた。ここで投石機を使うべきなのだろうが、柵2つを短期間で越えられた事で乱戦となってしまい使用することが出来ない。しかも、先頭を進んでいる女武将(華雄)が強く兵士達では太刀打ちが出来ない。何とか兵士が足止めしようとしても大斧を振り回して寄せ付けない。その周りを固める3人の武将も強く、余計に手が付けられない状態だ。趙雲が本陣守備のために動き始めたが足止めの部隊に邪魔をされて思うように進めない。救いがあるとすれば干禁と沙摩柯も討伐軍の脇腹を突いて面白いくらいに突き崩している事だが・・・これは敵戦力が前方に集中しているからかもしれない。どちらにせよ、ここで城方から援軍を派兵しないといけないようだ。閻行が城門守備ではあるが投石機のほうへ行っている。彼女1人で腕力に秀でた男衆数人分の膂力だ。まだ城門を攻められる事はないと見越して「投石機に石を運び込む・発射」の流れ作業に組み込まれている。「こうなったら楽進か俺が行くしかないか・・・しかし、まだ俺の武器は完成してない。倚天の大剣と丁原様の長刀だけで行けるか?」その上高順の体の傷が完全に癒えていない。癒術が間に合わなかったのだ。倚天の大剣の柄を握り締めて、高順は城壁の階段を下りようとする。「お待ちください、隊長。」そんな高順を、楽進は止めようと声をかける。「止めないでくれ、楽進。このままじゃ本陣が落とされるぞ?」「いえ、アレを。」「・・・?」楽進は城内の往来を指差す。そこには閻柔と田豫が2人がかりで布に包まれた大きな槍のようなものを運んでいる姿が見えた。「あれは・・・。まさか三刃戟の改修が終わったのか?」そう言って階段を駆け下りていく高順の姿に、楽進は苦笑してしまった。怪我だらけだというのに、思った以上に元気そうだ。自分達の元へと駆け寄ってくる高順の姿を見つけて、閻柔と田豫も急ぎ足で近づいていく。「高順様、ようやく改修が終わったっすよー!」「急いで持ってきたつもりだったんですけど・・・重かったっす・・・。」「そうか・・・ご苦労様。」礼を言って、高順は2人がかりで担いでいた物を片手で軽々と持ち上げ、包んでいた布を取り外す。それを見た高順は感嘆の声を上げた。柄まで傷だらけだった三刃戟だったが、これは傷1つない。また、三つの刃があった三刃戟とは違って、これは刃が一つ。ただ、その刃がこれまでのものに比べて数段大きく刀のように反りがある。槍なのだが・・・解りやすく言うと刃が巨大で、美麗な装飾などは何もない青龍偃月刀と言ったところだろうか。装飾がないのは李典に頼み込んでいたからだ。そんな物をつける余裕があるなら他に回してほしいと思っていたのだが、きっちりとこちらの意を汲んでくれたらしい。「うわぁ・・・自分達2人でやっとこ担げたのを片手で。凄いっす!」閻柔が感心して高順と槍を交互に見比べる。それを余所に、高順は鳴らしのつもりでそれを4・5回ほど振り回した。「ふむ、重さは前に比べて重いけど・・・違和感はないな。今までどおりに使える。・・・よしっ!閻柔さん、田豫さん。俺達も出ますよ。」「え、ええ!自分達もっすか!?」「うん。2人とも俺の部下として部隊に組み込まれてますから。ほら、早く部隊の皆を集めて来てください!」「は、はいっすー!」なぜか敬礼をして田豫達は来た道を引き返していった。高順に与えられているのは歩兵が900ほど。もっと多く引き出すべきかもしれないが自身の指揮下に無い連中を動かすことは出来ないだろう。このままでは張燕が負けるかもしれない。城門から見れば張燕本陣はすぐ近く。ここで粘れば趙雲の騎馬隊も来るだろうし相手も退くだろう。そうすれば、投石部隊で追い討ちをかけることも可能。問題は先頭を進んでくる武将を自分が止められるかどうかだが、それはやってみなければ分からない。城門付近に佇んでいる虹黒に近づき、高順は首筋を撫でてからその背に跨る。高順は自分の新たな武器を肩に担いで感慨に耽っていた。やはり、この重さが無いと物足りない。高順は馬上で(不気味な)笑みを浮かべていたが、それから20分もせず田豫達は兵士を引き連れて城門前に整列。高順はそれを確かめて城門を開けさせた。幾つかある閂(かんぬき)が引き抜かれ、城門が開いてゆく。その前方では討伐軍先鋒部隊によって、すでに本陣近くまで押し込まれて苦戦している張燕軍。その後方では趙雲隊が兵士を減らしつつも本陣を襲う敵に撃ちかかって行き、沙摩柯らも奮戦して先鋒部隊の後方を撹乱している。どういうわけか、討伐軍本隊は動こうとしない。この状態で一気に攻めかかってこられたら、それこそ張燕側は壊滅するのだが。まあそれは良い。動かないのならそれで好都合だ。「さあ、行くか。」槍を構え直した高順は突撃命令を下す。その声に従って虹黒が、そして兵士達が一斉に駆け出した。郝萌・朱厳の遺剣と、高順の三刃戟から作り出された重さ69斤(約15キロ)にもなる高順の槍。三者の武器から作成されたその槍は後に「三刃槍」と呼ばれることになり、これから後の高順の戦いを支え続ける愛槍となる。~~~あとがき~~~こんなので精一杯でした、あいつです。見返してみると状況を上手く説明できてない・・・(吐血流れとして討伐軍到着→戦端開くけど張燕側大苦戦(げぇっ、華雄!)→あっさりと切り込まれたので投石機出番なくね?→高順の槍完成、突撃開始じゃおまいらー! ・・・こんなん?(なぜか疑問系本来なら最初から高順も出るべきだったのですが、武器がまだ完成していない→もう少しで完成するから待って になってしまったのですかねえw当初は城壁から飛びおりて、走ってきた虹黒の背中に乗る、という感じにしたかったのですがそれやると虹黒が死ぬor高順が乗るのに失敗して転落死になるのでやめました(ああ一人で行っても、役に立ちませんしねえ・・・呂布ならともかくも、怪我がまだ完治してない高順君です。さて、次回は高順君と華雄さんの直接対決です。高順君にとっては初めて戦場で命のやり取りをする原作キャラになりますね。え?惇さん?彼女は虹黒としか戦ってません(?ここで1つだけ補足を。華雄さんは原作より少し落ち着いており、その上で実力も高い状態になっています。実力は漢女ルートで例の2人組相手に互角に戦ったことを考慮されて、だったりするのですが・・・性格は・・・w原作に比べて、ですから猪突なのは変わりませんが僅かでも将軍っぽく描写したいな、と。高順君は傷だらけの状態で華雄さんに勝てるでしょうか?それではまた次回で。追伸:徐栄さんはお遊びです本当御免なさい石投げないでー!