高順伝【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第4話彼女達は遅れてやって来た。やっぱり名を残す人はチートなんですね?「ほっほっほ。来るだろうとは思っていたが、案外遅かったのう。」「そうですね。この遅さは有難いですが、なんと言うか。」村より少し北に布陣した晋陽軍を見据えて話す朱厳と高順。晋陽軍が布陣したことを察知し、陣を敷いて3日。正直、これほど晋陽太守が無能だとは思わなかった。丁原が出陣して既に20日以上。それだけの時間が過ぎてからやっと出陣とは。多少考えれる頭があるならもっと早く行動を起こしただろう。丁原が出陣してすぐに攻められれば準備の整ってない状況で迎え撃つ羽目になっていただろう。黒山賊にしても、動員できるだけの兵力を差し向け殲滅すればそれこそ自身の暴政など知られるはずが無かっただろうに。他人任せにするからこうなるのだ。よほど自分で考えるのが嫌なのだろうか?まあ、その無能さが朱厳たちにとっては有利な状況を作り出したのだから何とも言いようのないものがあった。既に上党と住民たちの混成部隊は所定の位置についている。村の方は、住人が柵を何重にも設置し、内側から槍でけん制しつつ後ろから弓矢で応戦。保険もかねて輜重隊200人の兵士もつけている。彼らはあくまで防衛部隊だ。村の外には朱厳率いる騎兵400、歩兵が600。歩兵とは言っても、全員が弓を持っているし、騎兵の中にも弓を所持している者がいる。向こうが攻撃でこちらが防衛だから当然といえば当然だが。そして何故か・・・朱厳の本陣に褚燕も混じっていたのだった。~~~数十分前~~~「危ないですって!危険ですから下がっててくださいよ!!」「大丈夫です!私の実力は高順様が一番良くご存知でしょう!?」「知ってますけど、そういう問題じゃないんですって!」「じゃあどういう問題ですか!」「わざわざあなたが戦う理由が無いんです!」「あります!父の敵を討つ。十分すぎる理由ですよ!?ちゃんと武器も所持していますし、足手まといにはなりませんから!」「そういう問題じゃなくってー!朱厳様も何とか言ってくださいよー!?」こんなやり取りが朱厳の陣幕内で行われていた。晋陽軍が攻めてきた。という話を聞きつけた褚燕が出向いてきた。それだけなら良かったのだが、その時に彼女はこう言ったのだ。自分も部隊に参加させて欲しい、と。これに反発したのが高順だった。別に彼女が幼いから、とか戦争は戦争屋に任せろ、とかそういうことを言いたいわけではない。彼女の実力はよく理解しているし体力面に不安があるものの、この戦いでどうにかなるということも無いだろうと踏んでいる。だが、戦に限らないことだが命のやり取りに絶対など無いのだ。もし流れ矢が飛んできたら?戦が終わったと安堵したところを襲われたら?彼女はこの一連の騒動での被害者であり、彼女の証言は晋陽太守を追い詰めるのに必要なものの1つである。高順自身、彼女に死んで欲しくないという気持ちもある。そのあたりを考えてを反対をしているのだが・・・。こんなやり取りを繰り返しているが、まったく話が先に進まない。「まあまあ・・・。高順よ、本人が仰っているのだし、参加していただいてはどうかな?」「朱厳様までそんなことを・・・!」「しかし。我が軍と共に突撃、ということはしてはいけませぬ。このような状況では村に敵を引き込んで戦う事になります。その時に力をお貸し下され。」「朱厳様・・・。いえ、ありがとうございます。」「はぁ・・・。」こうして、朱厳の賛成案の為に高順が引き下がらざるを得ない形になってしまったが朱厳も注意を忘れなかった。「高順の言うとおり、あなたは体力が無い。村人を前面に押し出して戦うつもりはありませんが・・・。無理だと思ったらすぐにお退き下され。」褚燕もこれには言い返す言葉も無く頷くのみであった。そして今。「彼らは何をしてるんでしょうね?攻めかかって来るわけでも無し。」「さあのう。大方向こうの大将が混乱でもしとるのではないかの?」~~晋陽軍~~~「おい、なんで俺たちの目の前に上党の兵士が布陣してるんだ?」「俺たちの任務は賊征伐じゃ・・・。」「出陣が取りやめになったと思ったらまた出陣とか・・・くそ、あの豚太守め。」村の北部に布陣した晋陽軍だが、兵士たちからはこんな声が上がっていた。それを聞いたこの軍の総大将は近習に「静かにさせろ」と怒鳴るばかりだった。実際彼自身も自分に与えられた任務に疑問がないわけではなかった。いや、疑問しかなかった。最初に500で出陣しろとか、それを準備が終わった頃に取りやめ。そしてまた出陣。上党側が援軍なのに、本隊である自分たちが500で出陣しろ。何の冗談だ。そこで急に2000で出陣しろ。くそ、ふざけやがって。そんなことを思って進軍したのだが。目的地に着いたら着いたで、またも彼は苛立ちを覚える状況に遭遇した。目の前にいるのはどう見ても賊じゃなく自分たちと同じく官軍。その上自分たちの援軍として来た筈の上党軍じゃないか。上はいったい何を考えてるんだ!布陣して1日が過ぎ、目の前の部隊が上党軍と悟った彼は「自分たちの目の前にいるのはどう見ても上党軍だ。なのに何故攻撃をする必要があるのか?」と太守に伝令を出した。返って来た返事は「それは偽官軍だ。賊が変装しているに違いない。そんなことを考えてる必要があるなら早く攻撃して全滅させろ。」放った密偵も「村の守備をしている軍は上党軍に間違いありません。その上指揮を取っているのは朱厳様のようで・・・。」と言って来た。朱厳様だと?冗談じゃない!俺たちが束になっても勝てるお人じゃないぞ!!その上、布陣してるのは1000程度とはいえ、こちらより錬度も装備も上の上党兵だ。それを1人残らず全滅させろ?くそ、あの豚め。戦いの事を知らないくせに無茶苦茶言いやがって。「将軍・・・。」「何だ。」「その、また伝令が手紙を・・・。」「ああ?・・・見せてみろ。何々・・・『早く攻撃しろ、さっさと行け。さもなくば後詰で繰り出した精鋭部隊1500にお前たちの背後を攻撃させるぞ』」「・・・・・・。」「・・・・・・あ・・・あっんのクソ豚は・・・!!!」「しょ、将軍!落ち着いてください!」「落ち着けるか馬鹿野郎!」「ちょっとmぎゃあー!?」「おい、誰か!将軍がご乱心だ!?」「将軍!どうか、どうか落ち着いてー!?」「あーもう!こうなったら破れかぶれだ!通達だ!先鋒部隊は突撃!時間を置いて我らも出陣るぞ!」こんな感じだった。~~~上党軍~~~「攻めて来ませんね。」「来ないのう。」「来ないですね。」高順、朱厳、褚燕が同じようなことを同時に口にする。彼らが布陣してから3日。睨み合いばかりで衝突には至っていない。時間をかけるのは晋陽軍にとっては不利になるばかりだというのに。今こうしてる間にも丁原は黒山賊と戦ってるか、追い詰めてるかのどちらかだ。その丁原が軍勢を引き連れて帰還すれば晋陽側には打つ手が無くなる。攻めかかかって来ないのは戦いたくないからか。目の前にいたのが賊でなく自分たちと同じ官軍だからか。それとも、何か考えがあってのことか。援軍でも来るのだろうか?だが、援軍が来るにしては遅い気もする。3日も睨み合いをしていては兵士たちが緊張状態に慣れて精神的に弛緩するのだろうが朱厳がきっちりと引き締めているため、油断をしているような兵士はいない。そこまで考えたところで、晋陽軍が慌しく陣を整えてるのが見えた。「ほっほっほ、奴さん、攻めて来るようじゃな。・・・伝令!」さっきまでの穏やかな感じは何処へやら、朱厳の表情が一気に引き締まる。「はっ!」「歩兵隊に伝えよ!これより敵が攻めてくる。軽々しく討って出ず、守りを固め、突撃してくる部隊をけん制せよと!騎兵部隊300は一当てしてすぐに退け!」「承知!」「高順!」「ははっ!」「おぬしは騎兵100を率いて村へ入るのじゃ。」「わ、私が・・・ですか?」「うむ、敵部隊はおそらく時間差で攻めてくるじゃろう。敵全軍が攻めてきたらば、我らは一度村まで下がり防戦に徹する。その間に他の出口より抜け、一気に敵の横腹を突くのじゃ。」「しかし、私は指揮などしたことが・・・」「なに、先頭でお主が勇を振るえば良い。それだけで兵は着いてくるものよ。無論そこそこ指揮もするべきじゃがな。然る後、反撃に移る。」ほっほっほ、と笑い朱厳は高順の肩を叩く。「戦場を見よ。個人の眼でなく、全体を見る眼でじゃ。なあに、今はまだ解らずともいずれ解る。よいか、機を見誤るなよ。」「は・・・はい!」「うむ。では行くのじゃ。褚燕様は村にお残りくだされ。」「え?私も高順様と共に・・・。」「なりませぬ。約束致しましたな?残っていただきます。どうかお下がりくだされ。高順が攻撃を開始するまで村内部で戦う事になるでしょう。その時に」朱厳の言葉に褚燕は唇をかみ締める。今、高順と共に行って、万が一のことがあってはいけない、という配慮。約束もある。それは解っている。解っているのだが。「褚燕様、我々が突撃するときに形勢が逆転するということでしょう。その時までの我慢です。兵数に差があるのですから最初は仕方が無いとお思いください。」「・・・。解りました。高順様?」褚燕は両手で高順の手を包む。「きょ、褚燕様?」「どうかご無事で。決して無理をなさらぬように。そして・・・お願いします。」そのまま、褚燕は頭を下げた。「・・・お任せを。」彼女の手を握り返す。褚燕は安心したのか、そっと手を放した。「では、行って参ります!」~~~同時刻、村より北東に4里ほど進んだところ~~~「はぁっ・・・はぁっ・・・」「くっ、まだ追ってくる?」「はぁ、ふぅ・・・疲れたのですよー。」「まだだ、あと少し西に行けば村落があるはず。急げ!」3人の女性がひたすらに西に向かって走っていた。1人は青みがかった髪に胸元の開いた白い服の少女。目の前を走る2人の少女の足の遅さに焦れるが、こればかりは仕方が無い。彼女たちは智謀の士ではあるが、体力は一般の女性のものと変わらない。3里も4里も延々全力で走りぬけ、というのは相当辛いに違いない。だが捕まれば何をされるか解らない。自分1人ならば渡り合う事も可能だろうが誰かを守りながらという条件付では厳しいものがあった。そしてその後ろに追いすがる40人ほどの男たち。盗賊か山賊かとしかいいようのない風貌で、交渉というか話そのものが通じそうに無い連中だ。「ひゃっはー!待ちやがれええええっ!」「いい女が3人もいるぜぇ!」「おいテメェら!あの3人を捕まえた奴にゃあ褒美をくれてやるぜぇ!」「さすがお頭ぁ!売っちまうつもりですね!?」「あれだけの上玉だぁ、高く売れるぜえ!」「その前にお楽しみも・・・グフフフ。」「さすがお頭、あくどい!そこに痺れる憧れるぅ!」『ヒャッハー!』×40「・・・だ、そうだぞ!2人とも!人気者は辛いな!?」青い髪の少女が前を走っている2人の少女に語りかける。「じょ、冗談ではありません!」「おー、このまま捕まれば美味しく食べられそのまま・・・。ぐぅ。」「こんなときに寝るな!しかも走ったままとかどんな器用さだ!?」「おおっ!?襲い来る悪意についつい現実逃避を」1人は茶髪に眼鏡をかけた少女。もう1人は金髪碧眼。頭の上になんだかよく解らない妙な生物(?)を乗せている。その頭の上の生物(?)は何故か手に飴を持っている。「おい、2人とも!漫才は後にするべきだと思うぞ!?」「「まぁ、勘弁してくれよお嬢ちゃん。こいつはまだまだ若いんだぜ。若さゆえの過ちって言葉、知ってるかい?」と、そう申しておりますのでどうか1つ。」「・・・。それ、喋れたのか?」「そんなことを言っている場合では!星殿、あなたの武勇で何とかならんのですか!?」星と呼ばれた少女はその言葉にやれやれ、といった感じで首を横に振る。「私1人ならまだしも、2人を庇いながらではとても力を発揮できませぬな。私が30人と戦ってる間に10人が2人のもとへ行けばどうにもならぬ!それよりも、2人の自慢の知恵でなんとかならぬのか!?」意地の悪い笑顔で問い返す。「くっ・・・。」「おー、稟ちゃん、頑張るのです。」「お前も考えろぉぉぉぉっ!」「風はとてもお疲れでその上眠くて頭が働かないのです。・・・ぐぅ。」「そう言ってる割には足はちゃんと動いてるな!?あと寝るな!!!」「・・・・・・2人とも、漫才をしている元気があるならもっと早く走っていただきたいですな!」「言われずとも!」星、稟、風。お互いを真名で呼び合う彼女たち。星と呼ばれた少女は趙雲。稟と呼ばれた少女は戯志才。風と呼ばれた少女は程立。稟と風はその後名前を変え、稟は郭嘉、風は程昱と名乗る事になる。そんな彼女らが向かうのは今まさに戦闘が開始されようとしている褚燕の村。英傑たちと高順の出会いが、刻一刻と近づいていた。~~~楽屋裏~~~短いですねぇ・・・それはそうとついに出ましたね、恋姫のキャラが。本当はもっと遅く出すつもりだったんですが「恋姫キャラまだ?」みたいな空気だったので無理やり(ぉ上党というか晋陽は幽州のお隣だし趙雲たちが旅で立ち寄っても多分大丈夫だよね?色々プロットを考えては棄却しーの却下しーの。大変です。ご感想お待ちしております。