【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第30話 北へ。 高順達は、丁原の墓前を離れていた。理由は1つ。これからの方針を決定するためである。高順は呂布と切り結んだし、趙雲達は顔も見られている。少なくとも3人は漢の正規軍に挑んだ形になってしまっていた。捕まれば斬首されるなり何なりされてしまうことが目に見えているし、高順は父母をも巻き込んでしまっている。この件に3人娘は全く関係なく、高順は彼女らに暇を出そうとしたのだが本人達がそれを拒否。「ならどうするんだ?」という事になり、一度高順宅で話し合おうということになった。幸いと言っていいのか、呂布達は未だ上党に到着していない。その間に結論を出してしまおうという話だった。「えー・・・何これ。家族会議?作戦会議っつーの?開催しまっせー。」李典のあまりやる気のない声で始まった作戦会議。各人から色々な意見が出される。楽進始め、3人娘が主張したのは「公孫賛に助けを求めたらどうか?」だった。確かに彼女は顔見知りであるし、事象を知れば匿ってもくれるだろう。だが、高順達が漢に対しての反逆者と言うことになれば、態度も違ってくる。いかに公孫賛とは言え、反逆者を匿うというのは立場上好ましくない状況だろう。彼女に迷惑をかけたくもない。ならば南・・・例えば荊州を南に抜けて交州、或いは西に抜けて益州などに逃げてはどうか、という意見。悪くない案だとは思うが、子供である臧覇がそこまで長い旅路を耐えられるか?という問題が出てくる。益州にしても劉焉が治めており、彼は漢王朝とは馴染みの深い人物である。高順は駄目元で「曹操殿のところは?」と言ってみたが、これは自分も全くの乗り気ではないし、何より全員が嫌がった。前回、黄巾の乱のときに曹操の陣に顔を出したがその時に、明確にではないが一部百合百合しい雰囲気を感じてしまったらしい。趙雲は曹操陣営を「排他的」とも評しており、あそこに行くのは嫌ですな・・・と明確な意思表示まで示した。陶謙は名前すら出てこなかった。そこで、閻行(高順の母)が「私の伝手を利用して馬騰のもとへ行くのはどうか?」という提案をしてくれた。馬騰は幾度も漢王朝に逆らっては服従し、ということを繰り返しており、反逆者が逃げてきたところで気にも留めないだろう、ということだ。この場合、呂布達をかわして、かつ洛陽方面を抜けなければならない。河内(かだい)・洛陽・弘農(こうのう)、そして長安。皇帝お膝元というか、漢王朝の支配力のもっとも強い場所を無事抜けられるのか、という問題に突き当たる。そうなると必然的に東・北・南、ということになってしまうのだが・・・。「さて、どうするのだ、高順?」沙摩柯の問いに、高順も迷う。北は公孫賛・東は曹操や袁紹。南は袁術。・・・高順自身は曹操と公孫賛以外をあまり知らないのだが、袁術は孫家の手柄を奪ったり、袁紹は・・・なんか嫌な予感がする。正史を鑑みても、あの袁術の血縁と考えても忌避したくなる。「・・・一度、公孫賛殿を頼ろう。俺達全員が手配されているかどうかも解らないからな。もし迷惑をかけるようであれば退去するさ。他に皆の意見はあるかな?」高順は皆を見回してみるが、得にこれと言った意見は出てこない。この案は「事情を知った場合、公孫賛がこちらに手を出してくるかどうか」が一番の問題である。(他の諸侯にも言えるが)彼女の性格であれば、可能性は半々といったところだろうか。「そうと決まれば膳は急げ、ですな。ぐずぐずしていればそれこそ手遅れになりましょう。」趙雲は立ち上がり、部屋を出る。自身の荷を纏めるのだろう。他の者も彼女に続いて部屋を出る。残っているのは閻行と高順のみ。その高順は俯いて母に詫びる。「母上、俺は・・・。」「何も言わずともよいのですよ、順。」「しかし、父上と母上を巻き込んでしまいました。俺は親不孝者ですよ・・・。」「・・・ふふ、私も若い頃は馬騰、韓遂と組んで漢に対して挑んだものです。私の中にある「叛」の血が貴方にも受け継がれていた、ということでしょうか。」たとえ一時期の怒りであっても、この息子は官軍・・・漢に対して挑む事を選択したのだ。若い時期の自分も同じように色々な人に迷惑をかけたのだ。夫はともかくも、自分が文句を言う筋合いは無い。「さあ、我々も準備しますよ、順。・・・その前に、夫を引きずってこなければ。」閻行は部屋と言うか家を出た。言うとおりに、夫を探しに行ったのだろう。高順も、準備・・・と言っても、武器と虹黒くらいしかない。金銭の管理は李典に預けているし、臧覇は沙摩柯が何とかするだろう。後は荷の上げ下げとかそんな程度だ。虹黒に鞍を乗せつつ、高順は「自分が一番回りに迷惑をかけているのに、一番働きが無いよな・・・。」と自嘲する。呂布が丁原を討った事は、もうどうしようもない。本位だったか、そうでないか、それも解らない。高順は「恐らく、黒幕は十常侍だろう。」と見当をつけている。酒宴のときに見た呂布の素顔を知っている高順としても辛いが、すべて真相が明らかになってからだ。今はまだ仇の1人、と認識すればいいだろう。1時間ほどして、閻行は本人の言ったとおりに夫(高順の父)を引っ張ってきた。何故か気絶していたが・・・聞き分けの無いことでも言って、実力行使でもされたのだろうか?また、父親以外にも引っ張ってきた人物がいる。閻柔と田豫である。曰く「親方からの命令っす、どこまでもついていくっすよ!」とのことだったが、これまた大量の資金を持参していた。「一体どれだけ稼いでたんだろう・・・?」と思うがそれは後回しにして。家財道具などは諦め、身の回りの物を最低限馬車に詰め込んで、高順達は上党城門を抜けて北へ落ち延びようとする。だが、少し遅かったらしく城門を抜けようとしたところで呂布軍の・・・恐らくは先遣隊だろう、1500程度の軍勢がこちらに向かってくるのが見て取れた。速度のあまり出ない馬車があるので追いつかれる可能性が高い。高順はそのまま馬車を護衛する形にして、全員に全速力で離脱するように伝え、自身は少しだけ遅れて殿(しんがり)を勤める事にした。これに対して趙雲や楽進が「また命を粗末にするつもりか!?」と怒ったが、高順は「そんなつもりはない。丁原様の仇も討てないまま死ねるものか。皆は馬車を護衛するために行ってください。」とだけ言って馬速を緩めた。両者共に渋々高順の言葉に従い、進んでいく。高順は後方を警戒しつつ、虹黒を北へと進ませる。そして、高順達の様子は先遣隊として遣わされた2人の武将にも遠目ではあるが見えていた。~~~先遣隊・先頭~~~まだ、どこか幼さを残した感じの青年が先頭を進む男に話しかける。話しかけた男も話しかけられた男も高順よりは年上に見える。「なあ、兄貴。あそこにいる奴ら、北へ脱出するつもりじゃねーか?」「そうだろうな。」「じゃあ、攻撃していいんじゃねーの?あいつら逃亡兵だろ?」青年の言葉に、男・・・この先遣隊を預かる武将はため息をついた。「そうだろうが、呂布殿は抵抗する者以外は見逃せ、と仰せだったろう?」「そりゃあそうだけどさぁ。あいつらがどっかに助けを求めるとかそういうの考えたほうがいいんじゃねーか?」「さてな。助けを引き出せたとしても彼らは漢に対して弓を引くことになる。そんな度胸のある諸侯がいるとは・・・ん、あの男・・・?」「どしたよ、兄貴?」兄貴と呼ばれた男は目を細めて集団の後方へ移動した騎馬兵をじっと注視する。そして、小さな声で「呂布殿のお考えどおりか・・・」と呟いた。「おーい、兄貴ー。どしたー?」「・・・ふむ。役目を果たせそうだな。30騎ほど連れて行くぞ、繍。」「へ?ってことは、あいつ、高順?」「そのようだ。では行ってくるぞ。」「ちょ、兄貴!たまには俺に行かせてくれよー!?」「お前が行ったらいきなり戦闘を仕掛けるだろうが?」「あったりまえだ!あの呂布殿と僅かでも渡り合えるような男なんだろ?手合わせしたくなるのが人情ってもんだぜ!?」「だから余計に任せられんと言うのだ。大人しくしていろ。」苦笑して、男は高順を目指して30騎を率いて駆けていく。~~~高順視点~~~騎兵の一団がこちらに向かってくる。数は2~30といったところか。流石にあの数を相手に生き残れる自信は無いな、と半ば覚悟しつつ高順は倚天の大剣を構える。三刃戟は呂布と戦ったときに戦場に置き去りにしてしまったので倚天の大剣と青釭の剣が今の武器である。だが、先頭を進んでくる男は「待たれよ、こちらに戦闘の意思は無い!武器を収められよ!」と叫ぶ。「戦闘の意思が無い。その割りに何十騎も連れて来ているな。警戒をするに越したことは無いな・・・。」程なくして、集団は高順に追いついてきた。その時には高順も反転して彼らと相対している。集団の先頭にいる男が一歩だけ進み出て「高順殿とお見受けするが?」と言ってくる。向こうに敵対意思は無いと言っているが、実際はどうかわかったものではない。ちょっと勝てる見込みは無いが、ここで暴れて敵を釘付けにしておけば皆を逃がせる確率も少しは高まるだろう。「その通りだ、と言ったら?」「やはりそうか。呂布殿と渡り合おうとした男を見間違えるはずも無いがな・・・。おい。」男は部下に何事かを命じた。すると、後方から何人かの兵が武器を携えて進み出てくる。彼らの携える武器に高順は見覚えがあった。「これは・・・。」三刃戟。朱厳・郝萌の剣。そして丁原の長刀。あの戦いで逝った人々の、そして高順の武器だった。「呂布殿にこれを届けるように、と言われたのだ。間に合わぬかもしれぬ、とは思っていたのだがな。」「呂布が?何故・・・。」「さて、な。あのお人は「彼らが逃げても見逃せ。」とも仰せだった。何をお考えかは解らないが。ともかくも、これは貴公の武器だろう?受け取られよ。」言われたとおりに、高順は戟を受け取る。この戟は兵士が2人がかりで持っていたが、高順は片手で持ち上げて肩に担いだ。剣と長刀はどうしたものかと迷ったが・・・考えてみれば丁原達の形見になる。剣はボロボロになってしまっているが、これらも受け取って武器を固定するための腰紐に差し込んだ。「本来なら、貴公は反逆者の一味として討伐されるはずだろうが・・・呂布殿も張遼殿もそれを望んでおられぬようだ。丁原殿が反逆者かどうかも実際はわからぬしな。」「いきなり何を・・・。」「まあ、聞け。今回の件は十常侍からの命令だ。大将軍何進の命令ではない。」「何?」「何故に十常侍から直接命令が来たのかは解らぬ。丁原殿を逆臣として扱うという詔勅も来たが、偽ではないかと疑う声も多い。」「偽詔勅・・・。」「かも知れぬ、という程度だな。さて、そろそろ行かれたほうが宜しい。本来ならば手合わせの1つでもして頂きたい所だが、向こうの女性がこちらを延々と睨んでいるのでな。」向こうの女性?と高順が振り返ると、楽進が両手に気弾を作り出して高順というか、高順の話している男を睨んでいる。何かあったら気弾を叩きつけるつもりなのだろう。「あー・・・。」「では、俺はこれで失礼するとしよう。また出会える事を期待している。」そう言って、男は部隊を率いてさっと退いてしまった。彼らが去った後、楽進が近づいて来る。「隊長~~~・・・?」「・・・はぇっ!?何、なんでそんな睨んでるの!?」名前聞き忘れたな、とか呂布は一体何を考えているのだろう、と考えていた高順はいきなり話しかけられて身体をビクリと震わせた。「とりあえず、一発殴って良いですか?良いですよね?というか殴る!」「ちょ、あれ!?なんで?どうして殴られないといけないの!?」「死ぬつもりは無いといっておきながら、いつまで経っても追いかけてこないわ、敵と話し込むわ・・・ぬぐぐぐぐ・・・。」楽進は、胃の辺りを押さえつつ、握り拳を振り上げる。「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!許してー!?」なんかもう、すっげぇ情けないくらいに許しを請う高順だったが、楽進は脱力したように俯いて腕を下げた。「はぁ・・・お願いですから、こんなことは2度としないでください。何度無茶をすれば気が済むのですか・・・?周りがどれだけ心配しているかも知らないで・・・。」「へ?あの、楽進さん?」狼狽する高順だが、楽進は肩を震わせて泣いていた。「どれだけ皆を心配させれば気が済むのですか。どれだけこちらの寿命を削れば・・・・・・。」後は声にならず、鼻をすすって嗚咽を上げるばかり。その姿を見て、高順は「ああ、またやってしまった・・・。」と激しく後悔した。趙雲にせよ、楽進にせよ、高順の無茶っぷりで相当神経を削っているらしい。彼女らに限らず、皆が高順を心配しているのだが。高順は楽進を促して北へと向かう。何とか泣き止んでもらえまいか、と何度も謝罪する高順であったが楽進はなかなか涙を抑えることができず、先行していた皆に追いついたときに「女泣かせですか?」と散々にからかわれる事になった。からかうものの、皆内心では安堵したようだった。更に「これに懲りたら二度と独断専行をしないように!」と李典や干禁にまで何度も釘を刺される羽目になった。それだけ皆に心配をかけてしまっていた、という事なのだろう。高順も「自重しないとな・・・」と反省しながらも、北を目指すのだった。~~~呂布軍・先遣隊~~~既に彼らは上党城門を抜けて政庁にまで達しようとしていた。上党側も逆らうつもりはないようで、迎えの使者が先遣隊の先頭に立っている。その後ろを、先ほど30騎を連れて行った男が急いで追いかけていく。「繍!」繍、と呼ばれた男は軍勢の真ん中あたりにいたが、声に振り返る。「んあ?おお、兄貴。早かっt「この馬鹿者が!」うへえっ!?」「誰が先に行けと言った!危急のときであればともかく、勝手に軍を動かすなといつも言っているだろう!」「で、でもよ・・・。」「でも、ではない!・・・今回は上党側が素直に屈してくれたから良いものの・・・。彼らに異心あればどうするつもりなのだ!?先遣隊なのだから、というお前の気持ちは解らぬではない。しかし、軍を任されたのは俺だ。お前の一存で勝手に動かすな、良いな?」「わ、わかったよ、兄貴。すまなかった・・・。」「まったく・・・。」説教も一段落したところで、兵士が話しかけてきた。「張済様、そこまで仰らずとも。お止めできなかった我々にも非があるのですから。」兵士の言葉に、張済と呼ばれた男は「やれやれ」と首を左右に振った。「お前なぁ・・・助け舟出すならもっと早くしてくれよ!?」「兵に当たるでない、繍。まったく、どうしてお前はいつもこう、アレなのだ・・・。」「ひでぇ!アレとか言われた!?」「張繍様も抑えて・・・。」何だか緊張感が全く無いが、先遣隊は滞りなく上党制圧を為した。張済、そして張繍。高順はこの兄弟と再会をするのか。それとも敵として戦場で相対するだろうか。高順達は北を目指して進んでいく。彼らは生き残る事ができるのだろうか。公孫賛の元へたどり着けるのだろうか?それとも・・・。~~~楽屋裏~~~なんとかしてみました、あいつです。皆様、こんな作品をきっちりと読んでくれているのですねえ。重箱の隅をつついたような感想が来ると言い訳を考えるために作者も慌てます。そして自滅します(汗呂布は高順を見逃しました。破棄された30話と同じような流れで丁原たちの形見も託しました。私はどうも呂布を喋らせ気味の傾向にあるようです。原作イメージを壊されたくない方々の事も考えて・・・これから先彼女の出番はないかも知れません。私自身の力不足で上手く表現が出来そうに無いのです。知らぬうちに死んでたとかそういう扱いにされるかも・・・。高順、弱すぎね?という意見もチラホラといただきます。しかし、チート女性武将と比べられるのは・・・女性チートの世界に男として生まれた彼の不運ですなあ。女性だったら遠慮なしにチートにするのですけど。さて、今回は今迄で一番の難産シナリオでした。上手く説得力ある状況を作り出せなかったためにシナリオを修正した為ですね。中々上手く考えられず、ここで「以降、彼らの姿を見たものは誰もいない。」とかにして終わらせてやろうとも思いましたが、まだ始まったばかりですしね、お話的に。打ち切るにしてももう少し進めてからの方が良いだろう、と。もう疲れたよパトラッシュ。はてさて、彼らは公孫賛の元へ無事たどり着けるでしょうか。たどり着けたとしてその後、どう動くのでしょうか。力及ばずな状況に陥ったら・・・本当どうしよう・・・。次回作:「三国時代、最もけしからん名を持つ男。その名は謝旌。」お楽しみに。嘘ですけど。それではまた。ノシ