【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第26話~~~袁術軍。孫策陣営にて~~~どうも皆様。高順です。今現在、孫策殿の下で連れて来た騎兵を編成し終えて開戦の時を待つ身なのですが・・・。無闇にしんどいのですがどうしてですか!(血涙いやね、何がしんどいって黄蓋さんからは「このまま孫家に来ないか?」と誘われたり周喩さんからは「どこで孫堅様の事を知った?」とか色々質問攻めにされたり!しかもあの「ぱつんぱつん」なエロスな身体を布地面積少ない服で!男として天国か地獄なのかと!女性の兵士さんもチラホラといますが、皆一様に露出度高いのですよ?なんか凪さんが「ギリギリギリ・・・」と歯軋りしてこっち睨んでます、だから何で毎回こう俺に関係のないところで俺が辛い目に会うのさ?ぼすけてー!誰かー!さて。前日、周喩・黄蓋とある賭けをした孫策だったが早速後悔したくなってきた。高順は3人娘・沙摩柯らを連れて700ほどの騎兵部隊を率いてきたのだ。まさか高順が精鋭部隊(この時代の騎兵部隊は大抵精鋭)を率いていると思っていなかったが、それ以上に驚いたのは高順の乗っている馬、虹黒だった。ちょっと見たことの無い巨躯で、その上気が荒い。珍しく思って触ろうとした孫策だったが、頭突きをされそうになって慌てて離れたり。高順曰く「この子は俺の相棒なんです。その上、きっちりと人を見てますよ。」と。(そんな気難しい馬に認められて、更に騎乗してる高順って一体・・・。)心底から思う孫策であったが、肝心の「武将としての力量」を見たわけではない。黄蓋は「まだまだ未熟」とは言っていたし、賭けの期間もさすがに1日ではあるまい。そこを考えて心を落ち着かせるが、虹黒に睨まれて腰を抜かしかけた自軍の兵を見て「やっぱり止めとくべきだったかなぁ・・・」と後悔する孫策だった。そして、攻撃開始当日。鄴の城壁には黄巾弓兵がずらりと並んでおり、攻め寄せようとする官軍に弓を構え、いつでも戦えるようにしている。鄴の黄巾総兵力は不明だが、20万は下るまい。本来、攻城戦では攻める側が守る側の3倍以上の兵力を用意するのが常道と言われている。その為、兵糧戦に持ち込みたいところだったが、洛陽からも毎日のように「早く攻めろ」という催促が来ている。戦の事も解らぬ青瓢箪どもに好き勝手言われるのは気にいらないが、奴らも文句を言うのが仕事なのだ。これ以上諸侯をこの場所に留め置くことも困難と見た皇甫嵩は現状戦力12万で攻める事を決断。公孫賛・袁術の合同部隊の先鋒のみならず、既に持ち場に着いた全部隊はすでに布陣を終えて出撃の合図を今か今かと待ち続けていた。公孫賛先鋒の将軍は田楷。その下に趙雲も配置されている。袁術軍先鋒は孫策。配下に周喩、黄蓋。そして公孫賛から援軍として派遣された高順。両部隊合わせて9000ほどの軍勢だ。すでに全軍弓兵・歩兵の配置も済ませ攻城兵器(と言っても雲梯と破城槌くらいしか無い)の準備も整っている。あとは皇甫嵩が命令を下すのみだ。「さぁて、命令はまだかな~?」もう戦が始まる直前だというのに孫策は呑気なものだ。「孫策、あなたね・・・。」「そう目くじらを立てるでない、周喩。大将が萎縮すれば兵にも萎縮が伝わろうもの。これくらいで丁度良いわ。」「そうそう、黄蓋の言うとおり♪」「はぁ・・・おい、高順。こういう大将にはなるなよ?」周喩が近くにいた高順に話しかける。「こんなやり方が通用するのは孫家くらいのものだ。まったく・・・。」「はぁ。まあ、無駄に緊張するよりは・・・。」こんなやり取りの最中に、銅鑼の鳴り響く音が聞こえてくる。攻撃開始の合図だ。その瞬間、孫家の武将、そして高順の表情が一気に戦士のそれと変わる。すぅぅ、と息を吸い込み孫策は腹の底から声を出す。「行くぞ、孫家の勇士達!勇を奮え、勝利せよっ!私に続けーーーーーっ!」「うおおおおおおおっ!!!」孫策の号令の下、孫家の兵が城壁へと殺到する。いや、孫家だけではない。東西南北、その場にいる全ての諸侯の軍勢が攻撃を開始した。「さすが江東の虎の一族だな・・・高順隊!孫家に遅れをとるな!全兵、生きて帰れよっ!」」『はいっ!』「虹黒、お前も頼むぞ。」「ぶるっ!」虹黒の首を撫でて、高順は先頭を駆けていく。その後に、楽進・干禁・李典・沙摩柯、そして700の騎兵が付き従う。暫くして孫策・公孫賛前衛部隊が城壁に取り付いて、なんとか雲梯で登って行こうとするが、弓兵に狙い撃ちにされて上手くいかない。「全兵、城壁の弓兵を狙えっ!」沙摩柯の声に兵士が弓を構え、城壁の敵を狙い撃つ。当然、高順の部隊も狙われ、何人かが射倒されていく。そこで城壁に楽進の気弾が炸裂した。1発、2発、3発、と立て続けに同じ場所に撃ち込まれて穴が開いていく。その上にいた兵士達の重みに壊れかけた壁が耐え切れず、少しずつ崩れ始める。「くそ、あの女を殺せっ!」黄巾の弓兵も楽進を放置していては危ないと思ったか、楽進を狙い撃とうとするものがいる。そのうちの幾人かが高順や干禁の放った矢で射抜かれて城壁から落ちていったが、何本かの矢が楽進に向かって放たれていく。だが、楽進はそれを軽やかなステップで回避する。その内一本が身体に当たりそうになったが、手刀で叩き落した。「・・・もしかして、援護いらなかったのでは?」と思う高順だったが、それ以上は考えずさらに矢を撃ち込んでいく。そこへ少し遅れ気味だった攻城兵器(破城槌)が城門付近まで進んできた。破城槌というのは現代で言うところの「寺の鐘」を叩くのと同じような原理を使用した城門を攻撃するためのものだ。槌は基本的に木でできているが破壊力を上げるために先端を鉄で、更に尖らせている。車輪がついてはいるものの速度が遅く、槌で城門を攻撃する人々も無防備になる。その為に屋根をつけて矢から身を守れるようにしているが、熱湯などに対してはあまり意味を成さない。ともかくも、その破城槌を近づけさせまいと黄巾兵は矢を射込んで行く。両軍共に矢を射続け被害が少しずつ広がっていくものの、矢の数が少ないのか黄巾側は石つぶてを放ち始めた。石と言っても握り拳ほどの大きさがあって、当たり所が悪ければ当然死ぬ。その代わり飛距離が無いため、雲梯を登ろうとする兵士に当てることしかできない。それを見て、高順は少し距離をとるように兵士に伝達。当然孫策や公孫賛側にいる趙雲も同じように下がり一方的に矢を撃ち込み続ける。一番目立っていたのは黄蓋で、1本の矢で確実に1人ずつ黄巾兵を撃ち抜いていく。というより、場合によっては貫通している。「すっげー・・・多分、淵さんもあんな感じだろうなー。」いつも虹黒に蹴り倒される姉を「死ぬなー!?」とか叫んで抱きかかえてる気苦労の多そうな夏侯淵を思い出す。曹操軍は東門を攻めているようだが、当然彼女も従軍してるのだろう。淵さんに会うのはいいけど、その姉と主君がなぁ・・・いや、そうじゃない。馬鹿な考えは追いやって、高順は城壁の上にいる兵をまた1人射抜いた。それから数時間ほど戦闘を続けるも、黄巾側は出撃してこない。というよりも出来ない。多くの兵士に囲まれ、全ての城門を破城槌で固められてしまい、出撃しようにも出来ないのだ。日が落ちたので両軍共に際立った戦果を上げる事も無く兵を引いた。城門が傷だらけになり、防衛戦力を削った、という事くらいか。数日間同じ事を繰り返すが、黄巾は本当に矢が尽きてしまい、遠距離攻撃が出来なくなった。その上城内の兵糧が欠乏しつつある。ここ、鄴の指導者は黄巾の首魁・張角だが、戦闘指揮官は他に数人いる。その指揮官、高昇・厳政は相談した結果、討伐軍の兵糧を奪う事にした。狙いは北側の官軍だ。東・西・南共に精強な軍勢が揃っているが北側だけは動きが鈍い。見たところ、数は多いがその中核部隊が動こうとしない。3万ほど兵士がいるが、きっちりと戦っているのはその半数ほどだ。戦力を北門に集中させ、襲撃。糧食を奪い撤退する。北側の兵力は3万ほどだが、こちらが疲れきっていると思い込んでいる。油断をしている筈、実際に動けるのはその5割もいないのではないか。と考えていた。問題はそこまで錬度が高くない黄巾兵が上手く動くかどうかだが、やるしかない。その頃、孫策と公孫賛の軍勢は部隊を分け、何時間ずつかで交代、見張りをしていた。当然、高順部隊も同じように見張りをしている。完全に眠っているのは袁術軍くらいのものである。袁術はまだまだ子供でその辺りを理解していないし、その部下の張勲という名の武将も「全部孫策さんに任せておけば良いんですよ♪」とか抜けたことを言っている。それは置いておくとして、孫策達と高順は「そろそろ敵が打って出て来るだろう」と言う事を直感で感じていた。戦闘が終わった後、城壁の上にいる兵士が北側を見て相談したり、きょろきょろとして落ち着きが無いのを見たからだ。矢も撃ってこなくなったし、恐らくは城内に備蓄してある軍需物資、そして食料が無くなりつつあるのではないか?と見立てていた。公孫賛も同じ考えだったようで、趙雲部隊もずっと見張りをしている。夜も更けた頃、高順の陣幕に沙摩柯が入ってきた。高順の陣は一番城へと近い場所にある。状況としては一番最初に黄巾と接触するだろうし、袋叩きにされることも覚悟しなくてはならない。そして、これはわざとであるが篝火を1つか2つ程度に抑えて、こちらが油断しているぞ、と見せかけてもいる。本来ならもっと数の多い孫策や趙雲のやる仕事なのだろうが、数が少ないほうが敵も油断するだろうと考えての事である。「ん・・・、どうかしましたか?」「ああ。そろそろ来る。孫策の元にも使いを出しておいたほうが良いぞ。」「さすが夜目が利きますね。3人娘と兵士達は?」「既に準備を整えている。」高順は沙摩柯の言葉に頷く。傍にいた兵3人を呼んで、「そろそろ黄巾が攻めてくる、準備をされたし」という内容を孫策・趙雲・公孫賛の陣へ走らせる。続いて2人も陣幕を出る。すると、既に兵が整列していた。その前に高順が立つ。「これより黄巾が攻めてくる。規模はまだ解らないが相当数攻めてくることが予想される。既に公孫賛殿と孫策殿の陣に伝令は送ったけどね。」高順の言葉を兵士達は黙って聞いている。「今までで一番辛い戦いになるだろうな。だが、これさえ乗り越えれば黄巾も打つ手がなくなるはずだ。・・・全兵に通達。なんとしても生き残れ。生き残る事こそが勝利に繋がると知れ、以上だ。騎乗!!」言葉に従い、兵士が自身の馬に乗る。高順も虹黒の背に乗って部隊の先頭に進んでいく。黄色の布を頭に巻いた一群がこちらに向かってくるのが見える。その数およそ・・・数万!?「おいおい、多すぎだろ・・・。」冷や汗をかきつつ高順は呟く。既に兵は全員射撃を行えるように弓を構えているが、この差は如何ともしがたい。すぐに孫策たちの部隊が来るだろうが、時間稼ぎをするには少し辛そうだ。だが、やるしかない。「俺達に攻撃を仕掛けてきた事を後悔させてやれ!撃ち方用意っ!!」「応っ!」黄巾勢も目の前に6百ほどの騎兵が迎撃態勢を構えていることに気がついていた。夜襲を仕掛けに来たというのに、面前の部隊は既に展開してこちらを待ち構えていたのだ。遭遇戦、という形になってしまった。しかしこちらは4万もいるのだ。たかが数百の騎兵で持ち堪えられる筈も無い。高をくくって突き進んでいく。そこへ、何百と言う矢が打ち込まれて兵士が射抜かれていく。部隊を分散させず一丸となっている上、数が多いせいもあって、矢を打ち込まれれば打ち込まれた分だけ被害が広がっていく。「くそっ、ひるむなっ!」誰かが勇ましく叫ぶも、矢が間断無く打ち込まれ続けて、先頭を進んでいく兵がばたばたと倒れていく。高順部隊は600の軍勢を3つに分けて、鉄砲3段撃ちではなく矢を3段打ちにしていた。防御陣地を敷く余裕など無いので下がっては打ち、下がっては打ちを繰り返す。数万相手にそれではまさに「焼け石に水」程度の損害しか与えられないが、多少の効果はあったようで黄巾の進撃速度が鈍っている。出撃した黄巾兵は歩兵ばかりだ。これが全て騎兵部隊であれば今頃高順隊は蹴散らされていただろう。そのまま、同じように下がりつつ矢を打ち続けていく。既に先ほどまで自分達が使用していた陣からは、随分と距離が離れている。見ていると、陣幕が荒らされているのが解る。黄巾兵が食料を奪っているのだろう。ここまでは高順の狙い通りだった。僅かばかりでも時間を稼ぐために幾ばくかの食料や飲料水は残しておいた。あとは、仕上げを残すのみ。高順部隊は転進して黄巾部隊のほうへと向かって行く。一部の黄巾勢は、陣に残された食料を全て奪い、後方へと運んでいった。小規模な陣なので、期待していたほどの量があるわけではない。この夜襲部隊を指揮していた厳政は更に攻め込もうとするのだが、1つだけ気がついたことがあった。「何故、この辺りはこれほど油の匂いが・・・。」思った所で、先ほどまでこちらの足止めをしていた騎兵部隊が向かってくるのが見て取れた。「奴らめ、血迷ったか?僅か数百程度で。」だが厳政は血の気が引くのを感じた。騎兵部隊は火矢を弓につがえていたのだ。これは・・・まさか?こちらが不用意に陣に入ったところを火で―――「い、いかんっ!全軍・・・」最後まで言い終えることもできないまま、大地は炎に包まれた。「うっしゃ、作戦成功やっ!」李典は馬上でガッツポーズをしていた。元々、この作戦は彼女の考え出したものだ。「あいつらって、食料目当てで攻めてくるんやろ?せやったら、足止めするために陣に物資残しといてやな。油を辺り一面に撒いとくねん。そこへ火矢ぶっ込めば2重の嫌がらせやで!」と、こんな感じだ。ある程度の頭があれば誰でも考え付くだろうし、黄巾兵も全員馬鹿ではないだろうから成功するかどうかは5分5分だろう。だが高順はここで、もう1つの利用価値を見出した。「それやれば、他から駆けつけてくる部隊も「あそこで戦っている!」って解りやすくなるよね?」つまり、目印としての意味合いもあるよ、ということだ。成功しようとすまいと、目論見は達成できる。上手く行けば儲け物、くらいのつもりでやってみたのだがまさかここまで上手く行くとは。よほど黄巾は食料に飢えていたと見える。ふと後方を見ると、孫の旗印、そして趙、公孫の旗印も見える。彼らもあの炎を目印にして進撃してくるだろう。李典は高順の隣まで馬を進ませる。「なっはっは、思った以上に上手くいったやん。な、高順兄さん?これって特別手当貰てもええ働きと思わん?」「そうだなぁ、作戦発案者は李典だしな。俺が自腹切ることも考えよう。でも・・・。」「解ってるって!頑張ってくれた皆にご褒美与えなって事やろ?」「仰るとおりで。その前に先ず生き残らないとなっ!」「ほいなっ!」その頃、東側の曹操部隊、西側の袁紹部隊、南の皇甫嵩も北の異変に気づいて兵士を派遣していた。各々数に違いはあるものの総勢で3万ほどになる。曹操側から繰り出された部隊は夏侯惇と夏侯淵が、袁紹側からは顔良と文醜が。皇甫嵩側からはなんと皇甫嵩自身が兵を率いて急行している。一番早くたどり着いたのは曹操軍で、炎が燃え盛っている辺りで黄巾兵が右往左往しているのが見えた。「姉者、あそこだっ!」「それくらい言われなくても解ってる!」夏侯淵の言葉に夏侯惇が怒鳴り返す。夏侯惇は少し不機嫌だった。せっかく曹操と陣幕であんな事やこんな事をして楽しんでいたというのに。このやり切れない怒りと切なさと心強さ(?)は黄巾兵をメッタメタのギッタギタにして晴らしてやる。夏侯惇は心中で怒りをたぎらせていた。(もう少しまともな表現の仕方は無いのだろうか・・・?)見ると、孫策軍と公孫賛軍もその火を目印にして突撃しているのがわかる。公孫賛は本陣の兵士まで動かして黄巾勢を横から突いているし、孫策も突出してきた黄巾兵を包囲、殲滅している。夏侯惇は普段は頭の中身が残念な事になっている人だったが、戦争の事になると野生的な勘に頼ることは多いものの、割りと頭が働く。公孫賛がどんな人物かは知らないが、こういう事態で迷い無く本陣の兵を投入するとは。なかなか思い切りの良い奴ではないか。その隣にいる袁術軍は何が起こったかよく解らずオロオロとしているのも見えたので余計にそんな風に見えたのかもしれない。孫策軍も、数が少ないようだが率いる武将が随分有能なのだろう。一糸乱れぬ動きで、隙の無い戦い方をしている。隣にいた夏侯淵も同じことを思ったらしく「ほぅ。なかなかの決断力だ。悪くない。」と言っている。既に曹操軍の先頭部隊は公孫賛の軍勢と同じく黄巾兵を横脇から崩し始めていた。夏侯淵が弓を構え、夏侯惇が刀を構え、兵士に混じって突撃をしようと更に馬を駆けさせる。「姉者、我らも行くぞ!・・・うむ?」「ああ、解って・・・る・・・。」その時、夏侯姉妹はある人物を見ていた。孫の旗印の下で戦っている男。あの漆黒の巨馬に跨り、戟を振り回して黄巾兵を薙ぎ倒していく男を。「あれは・・・まさか、高順かっ!?」「こーーーうーーーこーーーくーーー!」瞬間、夏侯惇は迷うことなく虹黒のいる方向へ馬を走らせた!「ちょ、なっ!?姉者、黄巾兵はどうするつもりだー!?」夏侯淵の叫びも虚しく、夏侯惇は現状を一顧だにせず馬を加速させる。「今度こそ、今度こそ逃がさんぞ虹黒ー!」その叫びが聞こえたかどうか。虹黒は「ぶるるっ!?」と妙な反応を見せた。「ん、どうした虹こ・・・く。」「どうしたの、高順さ・・・ふええっ!?」高順と干禁が虹黒の見つめている方向を見てみると、炎に照らされた形であるが、夏侯惇がこちらに向かってくるのが見えた。何あの鬼の形相?つか何でこっち来るの!?「ええええええっ!?なんで惇さんこっち向かって来てるの!?俺敵じゃないって!あっち行ってあっち!」思わず黄巾兵のいる方角を指差してしまう高順だったが、夏侯惇にはそんな事が解る筈もない。「・・・!?隊長、危ないっ!」楽進の声に高順がハッとなる。見れば横に3人程の黄巾兵が槍をかざして突撃してくる。「チッ!」三刃戟を振り下ろそうとした高順だが、それよりも早く虹黒がその場で黄巾兵に背を向ける形で回転した。「へっ?・・・まさかっ?」そのまさか。虹黒は久々の後ろ回し蹴りを炸裂させ、その直線状にいる黄巾兵数人を天高く弾き飛ばした。当然その射線上に夏侯惇がいる。飛んできた黄巾兵を一刀で叩き切り、夏侯惇は勝ち誇る。「ふははははっ!そうそう何度も同じ手を喰らわんぞ、虹黒!今度と言うこんd」言い終わらぬうちに、同時に蹴り飛ばされた黄巾兵の1人が夏侯惇の馬に、もう1人が夏侯惇を直撃した。「ごばはぁっ!?」堪らずに馬から落ちる夏侯惇。そして、同じように馬も耐え切れずにそのまま倒れこむ。よりにもよって夏侯惇の上に覆いかぶさるように。「え?嘘、待・・・あぎゃあああああああああああああっっ!?」へちょっ。(潰された音「姉者ーーー!?」馬に押しつぶされ悲鳴を上げる夏侯惇、その惨劇を見て悲鳴を上げる夏侯淵。戦場なのに何をしているのやら。高順も高順でその惨状を見てげんなりとしていた。まさか夏侯姉妹に見つかるとは思ってなかったし、こんな事になるとは・・・。間違いなくあの2人は曹操へ「高順が参加しておりました」「虹黒がいましたっ!」とか報告してしまうのだろう。その場面をリアルに想像できる分、余計に疲労感が増える。「虹黒・・・どうして、そこまで惇さん嫌いなのさ・・・?」「ぶるっ?」何かをやり遂げたみたいな感じの虹黒。それを見て(戦闘中にも拘らず)脱力する高順であったが、気を取り直して攻撃を再開するのだった。厳政は何とか火に包まれた陣から逃げ出して、状態の推移を見ていたが夜襲は完全に失敗した事を悟っていた。自分達が奪った陣から北にどうしても進む事ができない。煮え返り沸き返りしているうちに東・西・南の官軍からも増援が来て、兵数に差が無くなってしまっている。素早く奪い、素早く退く。という目的が失敗した以上、夜襲は失敗したも同然。それを理解できない所が賊でしかない厳政の限界だった。そこへ、最初に自分達に矢を打ち込んで進軍を遅らせた部隊の先頭にいた男。高順のことだが・・・その男が向かってくるのが見えた。随分と巨大な馬に跨っている。せめてあの男を討たなくては面目が立たない。厳政は槍を構え、雄叫びを上げて高順へ向かって馬を走らせた。その時、高順のすぐ隣に黄蓋が追従するような形で着いて来ていた。「おう、高順!中々やるのう!?」「何がですか!?」「たった600ほどであれだけの数に嫌がらせ、かつ目印となるように火計とは!周喩も「考えたものだ」と抜かしておったわ!」そう言って笑う黄蓋。だが、高順からすれば「感心するような事じゃないよな。」と思うのだった。高順隊は数は少ないし、やれる事も限られている。自分の頭の出来は決して良い訳ではない。手元にある兵士・物資などを考えて結局この程度しかできなかったのだ。褒められたところで気分が悪くなるだけなのである。「大軍師、周喩殿に比べれば児戯ですよ、とでも伝えてくださいな。」少しだけムスッとして、そうぼやく高順に黄蓋はまたも笑う。「はっはっは!そうむくれるでないわ。あやつは「自身にできることを考えた上でこの結果を出そうとしたのだろう。悪い策ではない。」とも言うておったぞ?」「そうですか・・・っと。」尚も向かってくる兵を突き倒し、速度を緩めることなく戦場を疾駆する。その後ろに楽進達も続く。そこへ、少し立派な身なりをした黄巾兵が高順に向かってきた。「そこの男っ!俺と一騎打ちをしろ!」「・・・俺、だよな?」高順は周りに男がいないかどうかを確認してみた。隣には黄蓋。近くには3人娘と沙摩柯。全員が女性だ。どう考えても男は自分のみ。「俺は張宝様の将、名は厳政!尋常に勝負だぁ!」「・・・賊の名前なんざ、どうだって良いんだよ。」名乗りをあげ、厳政は高順に突進してくる。それに対して高順は特に速度を上げるでもなく、そのまま進んでいく。すれ違いざま、高順の繰り出した三刃戟はあっさりと厳政の胴を貫き通していた。「ほほぉ・・・やるではないか。」見ていた黄蓋は感嘆の声を上げる。と、高順は三刃戟を肩に担ぐ。貫かれたままの厳政の身体が高順の後ろを走っている黄蓋の前に差し出されるような格好になった。「た、隊長!?何のおつもりです?隊長の挙げた功績を黄蓋殿に譲るというのですか!?」「お主・・・何のつもりじゃ?ワシに敵将首をくれてやる、と言いたいのか?」楽進、黄蓋の両名が非難の声を上げる。声を出さないまでも、干禁ら他の者も同じ事を言いたいだろう。「さあ?」「馬鹿にしてくれるなよ、儒子が・・・。」どうも、敵将首を譲るという高順の態度が気に入らないらしい。やれやれ、別におかしなつもりでこんな事をしてる訳ではないのに。「黄蓋殿、少しお考えください。」「ふむ?」「孫家に援軍に出された俺の功績は、簡単に言えば「孫家の功績」になるんですよ?どちらにせよ、孫家にとっては悪くない条件です。」「解っておる。」「では、「援軍に出された俺」よりも「孫家生え抜きの武将」である貴女が首を取るほうが見栄も外聞も良くなると思いません?」「ぬっ・・・。」「今、孫策殿は幾つも先にある利と同様、目先の利も求めなくてはいけない。独立の為に少しでも多くの功績を挙げないといけないのでしょう?」「ぬぬっ。しかし、それをしてお主に何の利がある?」「・・・さあ?強いて言えば、江東に覇を唱えるのは孫策殿のほうがよほど絵になるでしょう?俺は会った事ないですが、袁術じゃ力不足ですね。」「ふっ・・・。江東の虎の娘が躍進する姿を見たい。その為に自分の功績をふいにする、か?おかしな奴じゃな・・・。」黄蓋は笑っている。自分の利を考えずにこんな事をする奴がいるとは、とでも思っているのだろう。事実、高順は功績どうこう等は二の次であった。自分が、仲間が生き残っていけばそれで充分だ。望み過ぎはかえって不幸を呼ぶ。自身の死亡フラグを折るのならば戦いを止めてしまえば良いのだが、これ以外に自分が生きる術が無いのも良くわかっている。性分だな、と苦笑する以外に道は無い。黄蓋は目の前に差し出されたままの厳政の首を掴み、剣で斬り付けた。鮮血が迸るが、気にする風でもなくそのまま厳政の首を高々と掲げる。「敵将、厳政!孫策軍が将、黄公覆が討ち取った!」その大音声に、孫策軍の士気が大いに上がったのだった。討伐軍は襲撃を仕掛けてきた黄巾賊を迎撃、目的を達成させずに押し込む。厳政を失い、統制の取れないまま次々と兵は討ち取られ、城内へ撤退していく。高順達も退いて行く黄巾賊を追撃するが、ある場所で楽進が止まり、馬から下りる。高順らは何事かと思い、馬速を緩めて後ろへ向き直った。「ん、どうしたんだ、楽進?」「申し訳ありませんが暫くお待ちください。・・・こぉぉぉっ・・・。」突然、楽進が気を練り始めた。この戦いで毎日のように気弾で城壁を攻撃し続けていたが、今回もそのつもりらしい。当初は城壁から矢が飛んで来て中々上手く行かなかったようだが、日が経つにつれて弓矢での抵抗が薄くなっていた。一日に何十発と気弾を撃てる筈もないが、楽進は城壁に対して常に攻撃を続けていた。その為か、北側の城壁はボロボロになっている。実は、楽進は最初に3発程度の気弾で城壁が崩れかたったのを見てから「城壁を崩す」事にのみ目的を置いていた。徐州で短い期間ながら、李典と共に家屋等の解体業をこなしていた時に培った「目」で、何処が一番崩しやすいか?と探し続けたのだ。城壁の範囲が広いので、時間がかかっていたが一箇所に目星をつけていた。明日でも良かったのだろうが、敵が撤退して反撃が来ない今のほうが都合が良い。しかし、徐州での経験がこんなところで活かされるとは。何があるか解らないものだ。「全兵、来ないとは思うが敵に注意、円周防御だ。」高順の命令で兵士達が楽進の周りを囲んで警戒。黄蓋は何をするつもりかと興味深そうに見ている。この1年近く。3人娘は沙摩柯・蹋頓・趙雲。名だたる勇将相手に訓練を続けた。楽進の気の総容量、コントロール、破壊力。彼女に限らず、3人娘の力量は大梁にいた頃とは比べ物にならない。皆が警戒する中、楽進の掌にある気弾は通常と比べ物にならないほどの密度になっている。大きさ自体は普段と変わらないが、込められた気の総量が大きいのだ。楽進は目標の場所に身体を向け、思い切り気弾を投げつけた。「行けええええええっっ!!!」高順隊が固唾を呑んで見守る中、討伐軍の頭上を飛び越えて気弾が城壁に迫り―――轟音をたてて命中した。その場所は確かに大きく崩れたが、城壁全体にダメージが行ったようには見えない。「くそっ、失敗か・・・?」思わず楽進が呟いた瞬間、今しがた気弾が命中した部分に大きく亀裂が出来た。そこを中心にして亀裂が更に広がっていく。その場にいた官軍も黄巾兵も呆然とする中、どんどんと亀裂の規模が広がっていき、最後には北側の城壁全体がひび割れた姿になった。「うぉ。楽進さんすっげー・・・。」「むぅ・・・や、やるのう。」高順と黄蓋は感嘆と、半ば呆れが入り混じったような言い方をした。これで、北側の城壁はほとんどと言っていいほど防衛能力を失った。城門ではなく城壁を破城槌で叩いたほうが早いだろう。恐らく、向こうにとってもこちらにとっても明日が正念場だ。そんな事を思いつつ、高順は部隊を纏めて後方に下がった。~~~翌日~~~いつもと同じように布陣を整え、討伐軍は出陣を待っていた。違うところは北門の軍勢がいつも以上に猛っているという事、そして破城槌が最前線に位置している事か。あと少し攻めれば城門どころか城壁すら突破できるのだ。無理も無いだろう。良く考えたらこの戦いの最大の功労者って楽進ではないのか?と高順は思っていたが、一武将のその配下のやった事でしかない。正当な評価など望めないだろうな、と少し残念に思った。さて、高順は孫策側への援軍と言う形なので当然孫策の傍にいる。昨日は黄蓋が敵将の首を挙げたので彼女の機嫌も大変良かったのだが、今は少し悪い。というより疲れきった表情だ。高順は同じく傍にいた周喩にヒソヒソ声で話しかける。「なんか、孫策殿の機嫌がよくないですね。何かあったのですか?」「ん?ああ。昨日は機嫌がよかったのだが、すぐ後に袁術の使いが来てな。その首を寄越せと言ってきたんだ。」どことなく周喩もうんざりした様な表情だ。「はぁ?」「袁術曰く「孫策は妾の部下。ならば孫策の功績は妾の功績じゃ!」とか言ってな・・・。結局、首・・・功績を奪われてしまった。」「・・・ちょっと、用事が出来たので行って来ていいですか?すぐに潰してきますから。」割と真面目な表情でそんなことを言う高順を見て周喩は珍しく笑顔を見せた。「はは、気持ちはありがたいが止めておけ。これは孫家の問題だからな。これ以上巻き込むつもりも無いさ。・・・すまんな、折角譲ってくれた功績を。」「・・・黄蓋殿から聞きましたか。」「孫策も知っているさ。ふふ、借りを1つ作ったな。いつか返すからな?」「気にしなくても良いですよ。・・・そろそろ出陣ですかね。」「うむ。気をつけろよ。」他にも黄蓋と色々話をしていたところで銅鑼が鳴る。「む、始まるか。今日こそ終わらせてくれよう。着いて来い高順!」張り切る黄蓋に苦笑しつつ、高順も兵士を率いて飛び出していく。見ると、破城槌は既に城壁に取り付こうとしている。昨日、楽進が気弾を撃ち込んだ所だ。そうはさせまいと、黄巾兵が城門を開けて破城槌へと突進していくが、そこに公孫賛軍前衛の田楷軍が突撃し、足止めをしている。城壁の上にいる黄巾兵が石つぶてを飛ばしてくるが、破城槌はそのまま進み続け城壁に向かって槌を叩き付けた。3度、4度と繰り返すうち、城壁が音を立てて崩れ始めた。何人かの兵が巻き込まれている。「高順、私達はどう動けばいいんだ!?」横にいる沙摩柯に聞かれるが、城攻めで騎馬隊ができる事など知れている。「俺達は城壁内部まで攻める。建物の中は歩兵に任せておけば良いさ。あと、非戦闘員には手を出すな!」「解った。お前たちも聞いたな?行くぞっ!」「はいっ!」高順隊は他の部隊と共には城壁の残骸を越えて黄巾兵を駆逐していく。黄巾の乱と呼ばれる戦い。それが今、終結しようとしている。~~~楽屋裏~~~お久しぶりですあいつです(まだ1週間たってない本当はもう少し書く予定でしたがもう駄目です、気力0です。本編までが長いのに本編に入ってからが短いこのシナリオって・・・。そして久々に出ました、夏侯姉妹。それに名前だけですが顔良と文醜も出ましたね。惇さんは相変わらずですけどね・・・(遠むしろ、このシナリオではこういった役割を期待されてるような気がしないでもありません。厳政があっさりと死にましたが・・・演義のみの、出番が少ないくせに割とろくでもない奴です。王門と同じくらい酷いかもしれない。(あいつ主観さて、恐らく次回で黄巾編が終わりますね。その次はどうしようか・・・。ご意見、ご感想お待ちしております(・×・)ノシ