【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第25話鄴と呼ばれる地。黄巾賊と呼ばれる集団の根拠地はそこにある。公孫賛率いる1万3千は鄴に向かうまでに幾度も黄巾賊と戦い続けた。そのほとんどが小規模な軍勢であるが、放っておく事はできない。そのまま放置すれば関係のない村落を襲うだろうし、鄴の黄巾本隊と合流か、あるいは背後を脅かされる危険が付きまとう。潰しても潰してもまた出てくる黄巾賊。まるでもぐら叩きのようだ、と高順は思う。これほどまでに民間に浸透していたという事にも驚いた。未来知識で知っていたが・・・どうも甘く見ていたらしい。数十万どころか本当に100万ほどの勢力ではないだろうか。それはともかくも、高順隊も趙雲隊も、公孫賛軍の主力部隊として戦い続けた。趙雲も高順もこれまでの活躍で認められたのか率いる兵士数が増えている。趙雲は1000、高順は700と言ったところだ。劉備軍と鉢合わせをすることは無かったが、彼女達はもっと南の方へと向かったらしい。劉備が曹操軍と協力して黄巾を叩いてるなど露ほども知らない高順だったが「まあこんなとこで死ぬ人たちじゃないしなぁ。」とさして心配もしていなかったのであった。数ヶ月ほど同じことの繰り返しをしていた公孫賛軍だったが、ようやくと言うべきか鄴まで進む事が出来た。荊州方面・潁川方面共に各地の太守と官軍が(表面上)協力して片を着けたからか、史実よりも早く黄巾賊を追い詰める事に成功したようだ。(潁川方面はほとんど黄巾の勢力は無い。以前に曹操が潁川黄巾賊を立ち上げたであろう黄巾幹部を軒並み滅ぼした事が原因である。)公孫賛の率いる兵士は1万1千程度にまで減ってしまっていたが、何とか鄴にたどり着いていた。その鄴城には「天已死 黄天当立 歳有甲子 天下大吉」と書かれた旗が多く立っている。正直に言うと見飽きたと言いたい位に何度も見てきた旗だ。それだけ多くの戦い続けた、と言うことだ。公孫賛軍は少し遅めに到着してしまったが、どちらにしても独力で攻める戦力は無い。この地に既に集まっている他の軍も軍勢も自分達以外の軍勢が集結してからでいいだろうと思っているはずだ。当然、自分達が美味しいところを持って行こうと言う思惑がある。如何に被害を少なく、如何に大きな勲功を得るか・・・それが一番の関心事であった。それは公孫賛にとっても同じ事。やはり戦力を失いたくは無い。今この場に集っている軍勢は10万にも満たないが・・・黄巾はまだ20万、或いは30万以上の兵数だ。官軍の司令官・・・皇甫嵩という名の女性だが、彼女もまた悩んでいた。いつ攻撃を仕掛けるべきか、と。蘆稙は宦官に賄賂を贈らなかった為に更迭されてしまい、朱儁もまた更迭されるのでは?という噂が流れている。そうなると皇甫嵩としてもやりにくくなる。ようやく集まりだした諸侯が不安を覚えてしまえば士気を喪失しかねない。武働きなど期待できなくなってしまうのだ。その上にいつまで待てばいいのかと言う焦燥感も一部諸侯の間で流れ始めている。役に立つか立たぬか解らぬようなものが多い状況だ。曹操や袁家、公孫賛。頼れそうなものが多いのもまた事実ではあるのだが・・・。初期では黄巾戦に参加していた呂布の軍勢も、今は不穏な気配を見せている西涼に派遣されてしまい、ここにはいない。最悪、今現状で集まっている軍勢で攻めるしかない。しかし、黄巾の兵力は2~30万ほどという報告を聞いている。これだから政治と言うものは嫌なのだ。倒すべき敵は目の前にいるのに、こんなときにまで賄賂だ何だと。高順の仕えていた丁原も宦官を嫌っていたが皇甫嵩もまた宦官を嫌っていた。と、そこへ伝令が皇甫嵩の陣幕に入ってきた。内容を聞くと袁術の軍勢が到着したらしい。伝令の報告に、そうか、と呟いて皇甫嵩は陣幕から出て行き確認をする。その視線の先にあるのは「袁」の旗と、到着した兵士が2万ほど。そして、その軍勢の中に・・・「孫」と書かれた旗の下に、それほど規模の大きくない部隊も混じっていた。~~~夜、公孫賛軍・宿営地~~~宿営地で高順らがやっていること、それは夕飯作りであった。周りから見たら「何で武将がそんなことを!?」と思うのだろうがこれは高順隊ではごく普通の常識だった。当番制で食事を作るのだが、その当番の中に高順も入っているだけのことだ。兵士も最初は驚いていたが、今ではその光景はありふれた物となっている。味噌汁に具を突っ込み、飯を炊き、惣菜の用意など。700人規模とはいえ、けっこうな量である。公孫賛本人は皇甫嵩の陣幕、つまり本営に呼び出されており、恐らくは今後の事を相談、指示をされているのだろう。高順は丁原がいないか探してみたがどうもここにはいないらしい。その代わり「曹」の旗を見つけたときはなんだか「どよ~~~ん」と気分が沈みかけた。顔見知りではあるし、前に虹黒が夏侯惇を跳ね飛ばし・踏み潰し・蹴り飛ばし・の3連撃かましたので謝罪に行くべきかもしれない。だが行ったら行ったでろくな目に会うまい。まあ良いや、と思って気にしないでおく事にする。どうせ高順は自前の旗など持っていないので目立つ事もない(虹黒に乗れば嫌でも目立つ)。一部隊を率いるとは言え、彼も趙雲もあくまで公孫賛の私兵であり客将だ。「公孫」の旗が在ればそれで良い。それから暫くして公孫賛が帰って来たようだ。伝令から「高順殿と趙雲殿も陣幕までお越しください」と伝えられたので、後は3人娘と沙摩柯に任せて陣幕へ向かう事になった。陣幕には公孫賛、そして今回の戦いで従軍してきた武将全員が揃っている。「ああ、良く来てくれた。すまないな、炊き出しの最中に。2人とも、座ってくれ。」その言葉に従い高順達は席に着く。「よし、これで全員揃ったな。先ほど皇甫嵩殿・・・今回の戦の総司令官とでも言うべきかな。その皇甫嵩殿に呼ばれて他の諸侯と協議をしてきた。結果・・・2日後、早朝に総攻撃を仕掛ける事になった。」公孫賛の言葉に諸将がざわめく。「静かに。今回の戦いは基本的に攻城戦になる。当然、黄巾が城から打って出て来る事も予想されるのだが・・・どうも黄巾は兵糧が欠乏しつつあるらしいな。」これは当然と言えば当然だ。鄴は相当堅固かつ巨大な城、城砦と言っても良い。だが巨大と言っても何十万の兵を一箇所に留めておけばその分食料の消費も早くなるし、衛生状態も悪い。鄴を囲んで数週間になるが、攻める側より攻められる側のほうが有利なこの状況。出撃してこないのはそういった事情があるのだろう。、「そして、まだ仮ではあるが陣割りが決定した。我々は鄴の北門を攻める。東からは曹操、西からは袁紹、南から皇甫嵩殿。他はまだ聞いていないが・・・すぐにそこらも決まるだろうな。」さすがに規模の大きい城だけに、東西南北に門があるようだ。完全に包囲して張角達が逃げられないようにする。ただ、問題が無い訳ではない。張角の顔を知っているのもが誰もいないのだ。他に張宝・張梁もいるのだが性別も解らない。皆殺しにしろ、ということか。そんな命令を受けているわけではないだろうが、そうせざるを得ない場合もあるかもしれない。そこは覚悟を決めるべきかもしれない。その後、公孫賛軍の陣割りも発表された。現状のままで行けば騎馬隊の出番はあまり無いだろう。城攻めであれば攻城兵器、そして弓・歩兵隊の出番だ。万が一黄巾が出撃した場合の事も考え、先鋒部隊にも趙雲、高順部隊が追従する事になった。細かい打ち合わせを終えて軍議もお開きになる。ほとんどの武将が出て行った後、高順も趙雲も陣に戻るか、と思った矢先・・・とある人々が公孫賛を訪ねてやった来たのだった。伝令が陣幕に入ってきて公孫賛に耳打ちをする。内容を聞いた公孫賛はどうしたものかと迷っていたが、まあいいか、と呟いて伝令に「入ってもらっても構わない。」と言った。その言葉を受けて伝令は陣幕の外へと出て行く。「・・・何かあったのですか?」「いや、ちょっとした客が来たみたいでね。もう少し早く来れば良かったのだけど。」高順の質問に公孫賛は首をすくめた。「ふぅむ、どなたが来られたのでしょうな?」「ああ、それは―――」「失礼するわ。」言いかけた公孫賛だったが、そこにその「客」とやらが入ってきた。客の数は3人。皆、肌の色が浅黒い。背も高く、スタイルも抜群だ。その上美人ときている。現代世界であればどこかの有名なモデル、と言っても誰も疑わないだろう。そして、服の布地の面積が妙に少ない。豊満な胸が溢れそうなほど・・・簡単に言えば凄まじい露出度であった。1人は眼鏡をかけていて、割ときつそうな感じのする女性。1人は胸元の開いた少し薄い紫色のチャイナドレスを身に纏っていて、妖艶な女性だ。そして、もう1人は紫か、桃色に近いような感じの髪を蓮・・・?のような髪飾りで束ねて後ろに流している。額に真っ赤な塗料で紋様のようなものを描いている。この女性がこの3人の中でリーダー格なのだろう。「あー・・・ようこそ、お越し頂いた。」その凄まじい美女3人を見て言葉を失っていた公孫賛だったが、礼儀に従って拱手して迎える。先頭にいた女性も拱手をして応える。そして、笑顔でこう言ったのである。「お目にかかれて光栄だわ。私は孫策、字は伯符。」その言葉に高順は1人呆然としていたのであった。これで、三国の英雄3人(孫権か孫堅でもいいけど)が出てきた訳だ。しかし、策さんが?孫堅さんはどこにいるんだ?それに、あの後ろにいる2人。多分、眼鏡のほうは周喩か陸遜・・・孫策が連れて来たって事は周喩だろうな。あの胸が一番でかい人・・・誰だ?程晋?それとも朱治だろうか、あるいは黄蓋?そこまでは解らないけど・・・しかし、3人とも凄まじくナイスプロポーションですよ。あの胸の大きさ、蹋頓さんや沙摩柯さんともタメを張る。呉のおぱいはギガントか!?そうじゃない、いや、落ち着け俺。そんなことを考えている高順と、趙雲の目の前で公孫賛と孫策は色々と話をしている。「こちらと共同で当たりたい、と。袁術殿はそう仰ったのか。」「ええ。袁術軍の先鋒として出るのは私だけどね。」「こちらとしては構わない。我々の持ち場は既に決まっているからな。しかし・・・こちらから孫策殿の部隊に援軍、それも騎兵部隊を送ってくれと言うのは虫が良すぎないか?」「あたしに言われてもなぁ。これはあくまで袁術の言い分だし・・・ま、自分の軍の損害出したくないだけなんでしょ?正直うざいったら無いわよ。」そんなことを言い出す孫策に後ろにいた眼鏡の女性が注意する。「おい、孫策・・・。」「解ってるってば、周喩は心配性ね。・・・でも、助けが欲しいのは本音なのよ。うちは歩兵ばっかで騎兵が全然いないもの。向こうが出撃してくると数が少ないからきっついのよねー。」「ふーむ。」公孫賛と袁術軍の兵を足すと3万前後にまで膨れ上がる。公孫賛の軍勢だけでは明らかに力が不足しているので袁術の申し出は受けるべきなのだが・・・公孫賛側から先鋒として出る兵数はおよそ4千と言ったところ。袁術側の先鋒は孫策の5千ほど。どうも孫策は袁術の客将といった感じで立場が良くないらしい。何かあったらすぐに見捨てられる形になるだろう。そうなれば公孫賛側の軍勢も巻き込まれて痛手を負うのが目に見えている。袁術の目論見が「自軍の兵の被害を最小限に」という事は解りきっているが・・・さて、どうしたものだろうか。「はぁ。仕方ないな。こちらも兵に余裕があるわけじゃないから、回せても少ないと思うけど。それでも良いなら。」「うん、構わないわ。都合してくれるだけでこちらとしては大助かりよ。」「どの部隊を派遣するかはすぐに決めて、明日向かわせるよ。それで良いかな?」「ええ。・・・では、そろそろ失礼するわ。また会いましょう。」拱手して孫策達はその場を去って行った。「・・・はぁ~・・・。頭が痛くなってくるよ・・・。まさかこっちから兵を派遣だなんて。」疲れた、と言わんばかりに項垂れる公孫賛。本当に困っているようだ。「これも弱小太守の弱みだなぁ。・・・でもどうしよう。」騎兵部隊と言えば白馬義従だが、これは公孫賛直属の部隊である。小隊長などはいるが、部隊長と言う意味では公孫賛のみ。そうなれば他に主力騎兵部隊として考えるのは・・・趙雲か高順だ。公孫越あたりを派遣しようかとも思ったが、能力を考えると派兵するにしてはどうも頼りない。きっちりと戦力になる部隊を送らないと、面子が立たないと言う問題もあるのだ。そうなると必然的に高順、或いは趙雲になる。悩む公孫賛だったが、仕方ないとばかりにため息をついた。「すまない、高順・・・。悪いんだが明日、援軍として孫策殿の陣に行ってくれないか?」「こちらは客将ですからね。行けと言われれば行かなくてはなりません。孫策殿の陣に合流するのは明日で良いのですよね?」「うん。本当にごめんな・・・。」「構いませんよ。」と笑って高順は陣幕を出て行った。それに趙雲もついて行く。「高順殿、貧乏くじを引きましたな。」「そうかもしれませんね。ですが、これは実質袁術からの要請ではなく命令みたいなものですからね。」「向こうの方が勢力は大きいですからな。仕方ないといえばそれまでかも知れませぬが。」「ええ。・・・では、俺はこちらなので。」「うむ、ではまた。」陣が別にあるので両者は別れて自分の陣へと歩いていく。その途中で考えている事が1つ。「もしかして、ここで微妙に歴史が変わるか?」ということだった。場所や時期は違うかもしれないが、袁術に要請を受けて出撃するのは本来は公孫賛の弟である公孫越なのだ。そこで公孫越は戦死して袁家と公孫賛の間柄は険悪になる。少なくとも歴史上ではそうなっている。だというのに、まさか自分がその役目につくとは思いも寄らなかった。もしかしてここが自分の死に場所か?と思うと背筋も寒くなるというものだ。だが、3人娘や沙摩柯もいるし、何より孫家の人々も一緒だ。大丈夫だろう・・・いや、大丈夫だと思いたい。考えつつも暫く歩いていくと、孫策達が高順の陣付近で立っているのが見えた。出て行ったのは自分達より前だったはずだが、こんなところで何をしているのだろう?高順の陣では現在夕餉の支度をしている。高順は支度を開始した頃に呼ばれたのだが、ちょうど支度が終わった時間だったようだ。味噌汁を炊く良い匂いが漂ってくる。「んー。良い匂いねぇ~。」「ああ。今まで嗅いだ事の無い匂いだが・・・ふむ、肉を焼いている匂いもするな。」「ふぅむ、食欲をそそられる匂いじゃな。・・・ったく、袁術め。もう少しマシな飯を回して欲しいものよな。」「ふふ、それは祭殿が贅沢なだけでしょう?」「なんじゃとー!?ワシが贅沢なのではない、冥琳(周喩の真名)が淡白なだけであろう!」「ほら、二人とも喧嘩するんじゃないわよ。・・・でも、正直羨ましいわね。美味しそう。」「ならば、食べていかれますか?」「え?」いきなり後ろから話しかけられたことに、3人は多少驚きつつ振り向く。「あ・・・えーと。貴方はさっき、公孫賛殿の陣幕にいたわよね?名前は・・・」「名乗っておりませんね。俺は高順と申します。以後お見知りおきを、孫策殿。」「え、ああ。そう。よろしくね?」拱手した高順に拱手を返す孫策。「ところで、食べてく?って今言ってたけど。あなたがこの陣の責任者なのかしら?」「ええ。そうですよ。なんだか「良い匂い」だの「食欲がそそられる」だの「袁術がけち臭い」だのと仰っておられたので。」「・・・ワシ、そこまでは言っておらぬぞ・・・?」「はは、冗談ですよ。それはともかく、夜も更けて寒くなってきましたからね。失礼を承知で申せば・・・その、お三方の格好では寒くないだろうか?と思った次第。少し食事をして体を温めてください。」高順の言ったとおり、3人は凄まじいまでの薄着である。どうして胸とか露出しないで済むの?と疑問を持ちたくなるくらいに。「別に寒くは無いけどね・・・でも、本当に良いの?わたし達誘っても良い事なんか無いと思うけど?」「遠慮などしないで頂きたい。食事と言うのは皆で食べるから美味しいのです。客が来れば皆喜ぶでしょうしね。」さ、お早く。と急かす高順に押されて孫策達は困ったような表情で歩き始めるのだった。~~~高順の陣~~~「おそーい!何やっとたんや!?」「え、俺のせいじゃないよね!軍議で呼ばれたんだから俺悪くないよね!??」「皆を待たせるのが悪いの!よって高順さんが悪なの!」「悪とか断言された!?」「お前ら、隊長を困らせてそんなに楽しいか?」『うん』(即答)「・・・まあ、何だ。高順、強く生きろよ?」「俺、もう駄目っぽい・・・。」帰陣早々、部下に目一杯文句を言われて落ち込む高順と、それを見て驚きのあまりぽかん、となってる孫策達。なんというか、上司と部下の間柄が随分不明瞭に見える。軍規がないわけではないだろうが・・・。「・・・ところで高順。この3人は何者だ?」「あら、自己紹介してなかったわね。私は孫策。で、眼鏡が周喩で乳でかが黄蓋。」「・・・眼鏡。」「・・・乳でか・・・。」なんとも失礼すぎる紹介である。というか全員胸は大きいと思うのだが。「・・・凄まじく失礼な紹介ですね、孫策殿。っと、それは後にして。悪いんだけど孫策殿達の分も用意してくれる?」高順に言われて楽進が「解りました、しばしお待ちを。」と頭を下げてから歩いて行き、数分もせず戻ってくる。お盆の上に皿やらお碗がいくつも乗っている。豚汁やら白米やら魚やら野菜やらウインナーやらチョリソー(っぽくしたもの)やら。色とりどりである。それを楽進はどうぞ、と言って3人に渡していく。良く見ると兵士たちも思い思いのところに座り、自分の皿を足元に置いていたりする。孫策らは「何で食べないのか?」と思う。高順は全員に食料がいきわたった事を確認して「それでは皆さん、手を合わせてください!」と叫んだ。その声に合わせて皆が手を合わせ、孫策たちも釣られて同じように手を合わせる。そして、全員で―――「いただきまーす!」と高順と同じように叫んで、一斉に食事を取り始める。「・・・。」「・・・。」「・・・。」孫策達は驚いて声も出ない。まさか、こんなことを部隊丸ごとでやるなんて。「どうしました?美味しいですよ?」「え?あ。うん。じゃあ、一口・・・。」高順に促されて孫策は少しだけ豚汁をすする。別段躊躇した訳ではなく、驚いていただけだ。「へぇ、美味しい・・・。」「ほぅ、では私も。」「・・・策殿が美味いというなら。」周喩と黄蓋も試すように一口だけすする。「ほほぉ・・・中々良い味だ。」「ふむぅ、野菜と肉の出汁が効いておるの・・・美味いではないか。」「ふっふっふ、お口にあったようで何より。」2人の反応を見て高順はニヤリと笑って食事を続ける。3人娘も沙摩柯も談笑しながら食事をしている。いや、兵士達もだ。和気藹々という言葉がしっくり来る。良い雰囲気だ。孫策達はそう思った。お互いの関係が不明瞭と言うのではなく、これがこの部隊の「普通」なのだろう。部隊の長、或いは武将が兵士達と同じように地面に座って兵士達と肩を並べて同じ物を食べる。先ほどは部下に弄られていた高順だが、あれも考えようによっては部下達は友人の延長線上に近い関係なのかもしれない。あまり褒められた事ではないと思うが、絆というものが強いのだ。あの若さで兵士と同じ目線で過ごすのは大したものではないか。(高順という人間の本質は良く知らないが、人となりだけは評価できるな。)孫策はそんな事を考えつつ、また豚汁をすすり始めた。その後、暫くして。「のぉ、高順。他に酒のツマミになりそうなものは無いのか?」と黄蓋が話しかけてきた。「ツマミ?辛肉詰め(チョリソーの事)じゃ足りませんでしたかってちょっと、酒飲んでるんですか!?」「おうよ、酒は人生の伴侶!酒なくして人生など語れぬというものよっ!」わっはっは、と偉そうに笑う黄蓋を周喩がたしなめる。「黄蓋殿?他者の陣にまでやってきて酒を飲み、あまつさえツマミを要求?孫家に恥をかかせるつもりですか?」「ぬっ、うるさい奴が。少しくらい構わぬであろうが?」「貴方の少しはちっとも少しではありません。」「ええい、やかましいわ!」「いえ、良い機会です。今日と言う今日は言わせていただきますが・・・。」周喩と黄蓋の言い争いが始まった。理詰めで諭す周喩と、酔っ払いの黄蓋なので、両者共に延々と食い違う事を行っている。そんな2人を尻目に、孫策が高順に謝罪する。「ごめんね、高順。私の部下が勝手に酒飲むわ説教開始するわ・・・。困ったもんよ。」「そういう貴女も随分深酒してませんでしたか?」「うっ、バレてた?」「それはもう。堂々と飲んでましたからね。」ううっ、とたじろぐ孫策と、それを見て少し笑う高順。「ああ、孫策殿に色々と聞きたいことがあるのですが宜しいですか?」「ん?聞きたい事?構わないけど。」「あなたの親に孫堅様という方がおられませんか?」高順の言葉に、孫策は少し悲しそうな・・・遠い目をする。そんな彼女の表情を見て、高順は「あれ?」と首をかしげる。「母様は・・・死んだわ。劉表と争ってる最中に流れ矢に当たってね。あっけないものだった。あれほどの人がね・・・。」「そうでしたか。それは・・・申し訳ない。」「いいわ、貴方のせいじゃない。母様が死んで、そこからがケチのつきはじめよ。袁術に領土の大半掠め取られるし、その袁術の客将になってこき使われるし。」「・・・。」孫策の話を聞いた高順は「少しおかしい」と感じた。本来の歴史からすれば孫堅が死ぬのは反董卓連合の後だ。にも拘らず、黄巾の乱時点で戦死?どうも、自分の知識として理解している三国志から少しだけ時系列がずれている様な気がする。まさか自分が影響を与えたなどとは思わないが・・・そうなると自分の処刑、あるいは戦死時期が早まったり遅くなったりもするのだろうか?今目の前にいる孫策が死なずに済むかもしれない、という「自分も知らない三国志」という世界に行きかけているのか?顎に手を当て考え込む高順を見て、孫策は「気にしないで、って言ったのだけど。」と苦笑していた。どうも誤解をされたようだ。が、孫堅に会えないのは本当に残念であった。どのような人だったのだろう。「いえ、こちらこそ申し訳ない。」「で、他に聞きたいことって?」「何故貴方のような人が袁術の元で働いているのか、と思っていたのです。今答えを頂きましたから・・・。」「そう。なら良いのだけど。じゃあこっちからも質問。」「はい?」「何で母様のことを知ってるの?」・・・しまった。またやってしまった。何でこう毎回毎回同じミスをするんだ俺・・・。考えろ俺、何とか切り抜けろ!「えー。俺、ちょっと前に旅をしていたんですよ。洛陽・陳留・それに呉に近い徐州の下邳とかね。その辺りで聞いたのですよ。亡くなってる事は知りませんでしたが。」「へぇ・・・?人は見かけによらないのね。ちょっと甘いどこぞのお坊ちゃまとか思ってたのに。」「甘い、ですか。ふぅ、よく言われますよ。育ちはあまり良くないですけどね。」「今回誘ってくれたお礼じゃないけどその甘さ、何とかしたほうがいいわ。いつか足元を掬われる。或いは身を滅ぼすわね。」孫策の、辛らつではないが諭すような言い方に驚きつつ、「何故、そうお思いに?」「さあ。強いて言えば勘。貴方みたいな人はね、裏切りとか・・・そうね、大切な物や人を失ったときに立ち上がることが出来なくなる。心が脆いせいでね。」「心が脆い・・・。」甘いとか言われるのは良くあるが。心が脆いなどと言われたのは初めてだな、と思う。「貴方は矛盾してるように見えるのよね・・・。そんな甘さを残したまま戦場に立つ。非情になり切らなければならない場面で、その甘さが出て来てしまいかねない。足元を掬われるって言うのはそういう意味。」「むぅ・・・。」「・・・ふふっ。」深く考え込む高順の顔を見て孫策は噴出した。「その甘さのおかげで美味しいご飯にあり付けたのだから、それは感謝するべきでしょうけどね。さて、私達はそろそろお暇するわ。あまり迷惑をかけることもできないし、ね。」そう言って孫策はまだ言い合いを続けている黄蓋達の下へと歩いていった。甘さ、か。・・・このままで、自分は死亡フラグを折れるのだろうか。ただ、皆に嫌われたくないだけで、上辺だけの生き方をしてるだけでは無いのか?自分は本当はどうしたいのだろう?その後孫策らを見送ったが、高順の心は晴れないままだ。明日からは孫策と一緒に戦わねばならないので、そんな迷いを残したままというのは不味いのだが・・・そこで高順は1つ孫策に言い忘れていた事があるのを思い出した。「派遣されるのが俺だって言い忘れていた・・・。」~~~孫家の方々~~~「いやぁ、思いもかけず上手い飯にありつけたのぉ。」ほくほく顔の黄蓋。「酒も沢山飲めましたからね。そういえば雪蓮(しぇれん)も飲んでいたような?」雪蓮というのは孫策の真名である。周喩の指摘に孫策も黄蓋も「げっ」と言いたげな表情を見せる。「い、いいじゃないのよ。高順が良いって言ってたんだしさ。」「その割りに高順は「いつ飲んだの!?」と驚いていましたね。」「うっ・・・。」周喩に口で勝とうと言うのがそもそも無理なのだが、孫策のこういうところ癖のようなものだ。言ったところで治りはすまい。「追求するのはこれくらいに致しましょう。いつ黄巾の襲撃があるか解らぬこの状況で酒を飲むのはいささか不謹慎では、と言いたいだけですから。」「うう・・・。これくらいって言ったのに・・・。」」「軍師として、友人として、これくらいは言わせていただいても罰は当たりません。・・・祭殿もですよ?」「くっ。こっちまで飛び火するか!?」「当然です、元はと言えば・・・。はぁ、もう止めましょう。それよりも雪蓮。」「ん?」「あの高順という青年。貴方の目から見てどう思う?」周喩の問いかけに「んー。」と唸ってから振り返る。「甘すぎるわね。優しいと甘いは同義ではないわ。部下に対して優しいのはかまわないけど、疑う事を知らなすぎる。私達が袁家の間者だったという可能性もあるのにね。ただ・・・」「ただ?」「母様の事を知っていたわ。」「!・・・ほぅ。先代の事を・・・成る程。」黄蓋と周喩が納得したような素振りを見せる。孫堅の名を知っているのであれば、「江東の虎」の異名を知らぬわけが無い。だからこそ袁家の間者である可能性など考えてもいなかったのかもしれない。虎の子は虎。虎が袁術ごときに飼える道理が無い。ということを理解していたのだろう。「知っていたのはただの偶然かもしれないけれどね。で、冥琳、祭から見た高順はどうだった?」「そうじゃなぁ。ワシはあの辛肉詰めが中々。じゃなくて、あの性格は評価できるのでありませぬかな?最初、部下に弄られていたのには驚きましたがな。」「そうですね、性格の事は祭殿と同意見です。ああ見えて配下からは随分信用をされているようにも見える。腕のほうは見ていないので何とも言えないですが、悪く無いのでは。」「何じゃ、冥琳。お主、その辺りは節穴よの。」「ほう。では祭殿の見立てでは?」黄蓋の言葉に周喩は興味深そうな表情を見せた。「まだ未熟。と言いたいがあれで中々鍛えこんでおるぞ。無駄な筋肉が無いと言ったほうが良いか。それにあ奴の戟。名前までは知らぬが、相当に重いぞ?」「そこまでご覧になっていたのですか?」「うむ、と言いたいところじゃがな。あの鎧を着込んだ娘、楽進と言うたか?あれに聞いてみたのじゃ、どんな男なのかとな。得られた情報は少ないものだったが、あの戟を片手で扱うのだと。」「ほほう。どのような戟かまでは見ておりませんでしたが・・・。祭殿がそこまで買われるとは。」黄蓋はそうだが、どうやら周喩も高順のことを多少評価しているらしい。黄蓋は「武才」を、周喩は配下に慕われる「統率」を。人柄については孫策の云うとおりで、確かに甘い。「そっかぁ。2人は大なり小なり評価してるのね。私はちょっと微妙かな・・・。」孫策は歯切れが良くない。高順の甘さが気にかかっているといったところか。「ふむ。ならば雪蓮。1つ賭けをしてみないか?」「賭け?」「ああ。私は高順が将来的に武将として大成しそうな気がする。あの甘さでは政には向かないだろうが、戦場での勇という形であれば祭殿と意見は合いそうだ。」「へぇ・・・。」孫策にとっては少し意外だった。周喩が他者をこう評価すると言うのもだが、それに賭けを追加してくるなんて。冗談として受け流せといっているのか、それとも余程自信があるのか。「ふふん。冥琳が賭けで私に勝てるなんて思わないけど乗ってあげる。そうねぇ・・・負けたほうが勝ったほうにライチ酒進呈でどう?」「いいでしょう。ただ、時間はかかるでしょうね。1年か2年か3年か。期限をつけなくては。」「あら、何年でもいいわよ?絶対に勝てる自信があるもの。」悪戯っぽく微笑む孫策。その言葉に周喩も意地悪く笑う。「ふぅ、後悔しても知らないわよ、雪蓮。」「おいおい、ワシは参加させてもらえんのかい?」黄蓋は腰に手を当てて呆れたように言う。「ほう、祭殿はライチ酒を作れましたか?」「それくらい作れるわっ!」「別に良いじゃない、参加させてあげれば。で、祭はどっちにするの?」「大成するほうですな。今回はこちらこそ負ける気が致しませぬ。」黄蓋は何ら迷うことなく言ってのけた。2対1か。絶対に負けられない、とは思うが・・・邪魔のしようが無いし、賭け自体ほとんど冗談のようなものだ。「ま、次に会うのは何時か解ったものじゃないけどね。今回の戦いで戦死したらそれまでだし。」「全くです。案外、明日派遣されてくるという公孫賛殿の武将・・・高順かもしれませんからね。」「はは、まっさかぁ。」そういって笑う孫策。いくら何でもそれは無いだろう。孫策はこの時ばかりは周喩の言葉を本気で笑い飛ばすのだった。だが。夜が明けた後、派遣されてやって来た武将が高順だった事を知って、「・・・まさか周喩の言う通りになるなんて。賭けまで周喩の言った通りになったらどうしよう・・・?」と、賭けに乗ったことを本気で後悔する孫策であった。~~~楽屋裏~~~前に言った大変ってこういう意味ですあいつです。(挨拶ちょっとした質問ですがどこの軍勢でも騎兵部隊って精鋭部隊なんですよね?基本的に馬ってお金かかりますし。これで、魏・呉・蜀の3君主が出揃いましたね。一武将なのに、こんな短期間に3人に会うとはどんな運ですか、高順くん。しかし、どこの君主も高順に対しての評価が違いますね、当然ですけど。曹操→時代の先を見越すし、武力も中々ある。あの3人娘も中々のものね。主力を張れるわけではないけど、欲しい人材ではあるわ。劉備→愛沙(関羽)ちゃんと喧嘩しちゃったけど(これはどっちか言えば高順が悪い)鈴々ちゃん(張飛)とは仲いいし・・・高順さんの部下も有能そうだから引き入れたいなぁ。孫策→あの甘さが無ければ良いんだけどね。武力とか統率力はこれから見せてもらえば済む事よね?こんな感じ?行く先々でヨイショされちゃうのはこういうご都合シナリオでは仕方ないかもしれませんが、違和感がありすぎますね。ナントカシタイナァ。さて、次回はどうなることやら。それではまた。(・×・)ノシお・ま・け。公孫賛→星(趙雲)ー!高順ー!お願いだから戻ってきてええええええっ!!!!(涙)(袁紹に攻められつつ・・・これ、評価じゃないような?(汗