【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第24話高順と趙雲。現在、公孫瓚軍ではこの2人が組む事が普通になっていた。賊征伐、警邏、兵士訓練。何をするにも公孫瓚はこの2人を組ませる。高順配下の人々も当然それに従う。この2人を組ませる状況は大抵、征伐など武力関係の仕事になってくるが2人が共に仕事をすると他の武将に任せるよりもよほど効率良く鎮圧していく。彼らの鍛えた兵士が強い、ということもあるし、高順に従う将の能力も高い。それ以上に高順と趙雲の相性が良い。阿吽の呼吸とでも言おうか、特に打ち合わせをしたわけでもないのに、戦場で抜群の連携能力を見せつける。公孫瓚は2人の能力を評価していたし、期待も高かった。高順が公孫瓚のもとで客将として働いて数ヶ月。彼は公孫瓚陣営にきっちりと馴染んでいたのである。その2人が何度目になるか解らない賊討伐を劉備たちとこなし、北平へ向かう間に。洛陽からの勅使が公孫瓚へ黄巾討伐へ参加するように、という勅令を下しているところだった。~~~北平~~~劉備、趙雲、高順。彼らは公孫瓚に賊討伐成功を報告するために政庁へと向かっていた。3人娘や関羽達は兵を纏め兵舎へと向かっているのでここには居ない。「うーん、今回も皆頑張ったよね~♪」劉備が歩きながら身体を反らせて伸びをする。「そうですな。我々にかかればあの程度、容易いものです。」趙雲も当然だというように笑う。高順はそんな2人を後ろから見ているだけであった。別に彼女らに含む事はない。高順は他ごとを考えていたに過ぎない。この数ヶ月で劉備は義・情という言葉を使わずに戦い続けた。その能力と彼女本来の優しさで、この数ヶ月を過ごしていたのだ。甲斐あって、北平のみならず、周辺の邑や街での彼女の評判は高まるばかりであった。そして趙雲。戦場ではお互いの考えがある程度、ではあるが読めるようになってきた。彼女と共に戦場を駆けた時間は1年にも満たないのだが・・・もともとの相性でも良かったのだろうか。「あれ?高順さん、ボーっとしてどうしたの?もしかした私のことでも考えてた?なーんちゃって♪」「そんなことは未来永劫ありませんからご安心を。」能天気な劉備の発言に普段と変わらぬ態度で辛らつな言葉を浴びせる高順。やれやれ、また始まったか。と趙雲は苦笑するのみだ。彼らの間はぎくしゃくしている、という訳ではない。が、どうも高順は劉備に未だ慣れないらしい。心底嫌っているのであれば勉強に付き合ったり、忠告などもしないはずだ。なのに、高順は劉備から一定の距離を置いての付き合いをしている。そのあたりのことは本人にしか解らない事情があるのだろう。趙雲はそう結論付けていた。そんなことを考えるうち、3人は政庁へとたどり着いた。が、どうにも騒がしい。「ん?何だろ、皆忙しそうだね・・・。」「そうですな。何かあったのでしょうか?」「さあ?公孫瓚殿にお聞きすれば解るのではないでしょうかね。どちらにせよ報告をしなくてはいけませんから、急ぎましょう。」そう言って高順はそのまま歩いていく。劉備と趙雲はいぶかしむ様な表情をしていたが、高順は2人に比べれば幾分落ち着いていた。そろそろ来るんじゃないかな?と思っていたからだ。3人はいつもよりも歩く速度を速めて公孫瓚の元へと急ぐのだった。政庁・玉座の間で公孫瓚は頭を抱えていた。黄巾征伐に参加するつもりではあるが、何せ現段階の情報では黄巾「賊」の兵力規模が大きすぎる。烏丸の事を片付けてからまだ数ヶ月しか経っていないと言うのに。公孫瓚は内心で盛大なため息をついていた。そこへ侍女が傍にやって来て「劉備様、趙雲様、高順様がご帰還なさいました。ご報告に参っておられますが、お会いになられますか?」と聞いてくる。公孫瓚は迷う事も無く「ああ、会おう。」とだけ告げた。侍女はそのままで部屋から出て行き、入れ違いで3人が入室してきた。「やっほー♪白蓮ちゃん、賊征伐完了しましたー!」「・・・はは。お帰り、3人とも。」能天気すぎる桃香の発言に苦笑しつつ公孫瓚は3人を見る。「賊征伐、完了いたしました。」高順と趙雲は律儀に言い直す。「ああ、ご苦労様。しばらく休んでもいい。と言いたいところなんだけど・・・。」「?」「先ほど洛陽から勅使が来てね。3人にも知っておいて貰いたいんだ。」そう言って公孫瓚は勅使から聞いた内容をそのまま高順たちに聞かせた。1年ほど前から太平道と言う・・・全容は掴めていないが、そういった名前の「恐らく」宗教組織が勃興していた。あまりに規模が大きすぎるので幾度も解散命令が出されたものの、一向に応じる気配が無い。そんな中、数週間ほど前に洛陽にて反乱を起こそうとした馬元義という男を捕らえ、拷問で自白をさせた結果・・・太平道の手の者だと発覚。即日車裂きの刑で処刑したのだという。その後、太平道を壊滅させようと数万の官軍を派遣したところ、「数十万」の黄色い鉢巻を頭に巻いた太平道の兵に反撃を食らって官軍が全滅。各主要都市を占領してその勢いは増すばかり。それに恐れを為した現後漢皇帝「霊帝」は寵愛している側室「何后」の兄「何進」を大将軍に任命。太平道、いや、「黄巾賊」を壊滅させよ、と命令した。何進は洛陽にある官軍の兵力では鎮圧できないと判断、各地の太守に兵を派遣するように勅使を遣わせた。その勅使の1人が公孫瓚の元へとやって来て勅令を伝えた。掻い摘んで言うとそういうことなのだそうだ。それを聞いた3人は黙っている。劉備と趙雲はどうしたものか、と考え高順は「命令を下したのは霊帝ではなく十常侍だろうな。」と、別のことを考えていた。「私は参加するつもりだし、配下も参加するべきだと言ってる。でも、3人の意見も聞いておきたいんだ。」「うー、普通に参加するべきだよね?」「そうですな。そのような輩、放っておく事こそ天道に反すると言うもの。」「まあ、放っておいたら大変な事になるでしょうね。」3人の言葉に公孫瓚は頷く。「そういうと思っていたよ。で、話は変わるのだけど、今回の件は桃香にとって好機だと私は思うんだ。」公孫瓚の言葉に劉備は「へ?好機って?」と間抜けな反応を返す。「はぁ。つまりだ。独立するための好機だ、って言う事。考えてもみなよ、これだけの騒ぎになっているんだ。武力によって、という形で手柄を上げる絶好の機会じゃないか?」「そうですね。劉備殿達がそのつもりで行くなら・・・恩賞に与る可能性は高いでしょう。そうなれば、どこかの土地とそれなりの地位を賜るかもしれませんね。」「ふむ。そうなれば劉備殿の仰っていた「多くの人を守る」という理想に僅かながら近づく事になりましょう。」公孫瓚の言葉に高順も趙雲も賛同する。「え?え?えっとぉ・・・。その、あたしの一存で決められないかなぁ、あはは。愛紗ちゃんと鈴々ちゃんに相談したいんだけど・・・。駄目?」「それは構わないさ。でも、なるだけ早く決めてくれよ?」「うん!」公孫瓚の言葉に元気良く頷き、劉備は走って部屋を出て行った。これから関羽達と相談をするのだろう。高順も趙雲も、公孫瓚の判断は適切なものだと考えている。その魅力で他の欠点を補っているとはいえ統率力・政治力、どれをとっても劉備は公孫瓚に勝てるものが無い。2人とも劉備が公孫瓚より有能だとは思っていないし、公孫瓚にしても別段おかしな思惑を持って独立を勧めたわけではないだろう。人の良い公孫瓚は素で劉備にとっての好機だと思っているのだ。それくらいのことは劉備でも理解しているはずだ。彼女らにとってこの話を断るべき理由は何も無い。「なあ、2人とも。」公孫瓚に声をかけられた高順は思考を停止させた。『何ですか?』「桃香にああは言ったけど・・・その。」どうも歯切れが悪い。何か悩んでいるのだろうか?「えーと・・・ふ、二人は独立しよう、とか考えてるかなー。って思って。」公孫瓚は何か自信なさげに、そんなことを言った。「いえ、別に。趙雲殿は?」「私も特には。・・・何故そのような事をお聞きなされる?」高順も趙雲も公孫瓚の言いたい事がよく解らない。「そ、そっかぁ。いや、それなら良いんだ。あは、あはははは・・・。」乾いた笑みを浮かべながら力無く、かつ少し嬉しそうに公孫瓚は笑う。その態度を見て趙雲は意地の悪い笑みを浮かべつつ「成る程・・・そういうことですか。」と呟いた。「え、な、何だ?その何か考えてそうな表情・・・。」「高順殿。伯珪殿は我々に出て行かれると寂しいと申しておるようですな。」「なっ!」「ほほー。」趙雲の指摘に公孫瓚は思い切り首を横に振って否定し、高順は成る程とばかりに頷いた。「ち、違うぞ!?今2人に出て行かれたら困るなー、とかそれくらいで!寂しいとか頼れる人が少なくなるなーとかそんな・・・あ。」自分の言葉に真っ赤になって公孫瓚は俯いてしまい、そのまま黙り込んでしまう。さすがにやりすぎたか?と思う趙雲だったが、公孫瓚は暫くしてぽつぽつと話し始めた。「正直言うと、さ。今2人に抜けられると本当に困るんだ。黄巾賊の規模は数十万。私の軍勢は1万程度。勿論戦うのは私だけじゃない。他の軍閥だって動くんだ。それでも数はこっちが不利みたいだけど・・・。」公孫瓚の言葉を2人は黙って聞いている。「趙雲、高順の武勇と統率力。そして高順の部下のあの子達の戦力。情けない事なんだけど、2人以上に力を持っている武将は我が軍にはいない。桃香が抜けるのも痛いんだけどね。この状況で、もし2人に抜けられたら」「さて、俺はここで失礼します。」「え?ちょ・・・。」「高順殿!?」公孫瓚の言葉を遮って高順は部屋を出て行こうとする。「こ、高順~~~・・・」なんだか、公孫瓚がすっごく悲しそうな顔をする。「申し訳ありませんが、これから兵に一層気合を入れるように、と言わなければなりません。」「・・・え?」「え?じゃないですよ。黄巾賊との戦いが始まるんでしょう?今までの賊とは訳が違います。一部隊を預かるものとして兵士には言うべきことを言っておかねばなりません。」では、と言って高順は今度こそ部屋を出て行った。言葉無く呆然としている公孫瓚。そして。「くく、あはははははっ!」いきなり笑い出す趙雲。「え、何だ!?」「いえ。高順殿も素直ではないところがお有りだと。ふっ、くくく・・・。」「何だ、どういう事だよー!?」「ですから、高順殿は「黄巾賊との戦いが終わるまで出て行きませんよ」と言ったのです。」「へ・・・?」「当然、私もそのつもりですが。ここで公孫瓚殿を放って行くことなど私にはとてもとても。さて、私も兵に喝を入れて来なければなりませんな。」「星・・・。」思わず真名で呼んでしまう公孫瓚に苦笑しつつ、趙雲も部屋を出ようとする。「その、あ、ありがとう・・・。」恥ずかしそうに言う公孫瓚に「その言葉、高順殿にも伝えておきましょう。」とだけ言って趙雲は退出していった。趙雲は先に部屋を出た高順に追いつこうと小走りに廊下を進んでいく。すぐに追いついたのだが、高順は壁にもたれて俯いてしまっている。なんだか落ち込んでるように見えるが・・・さして気にもせず趙雲は高順に話しかけた。「高順殿?」「あー、趙雲殿。どうなさいました?」「私も兵に声をかけておかねば、と思いましてな。それと伯珪殿がありがとう、と申しておりました。」「そうですか・・・。」何だろう、本当に元気が無い。自分の判断に後悔しているのだろうか。「高順殿、後悔でもしておいでか?」「まさか。黄巾賊との戦いが終わるまで公孫瓚殿の元に留まる、というのは最初からそのつもりでしたからね。ただ。」「ただ?」「あんな似合いもしない格好の付け方するんじゃなかった、と絶賛後悔中なだけで・・・。なんであんな言い方してしまったのだろう・・・。」ず~~~~ん、という表現が似合いそうなくらいに落ち込んだ表情を見せる高順に、趙雲はまた笑い出す。「笑わないでくださいよー・・・。今、自決したいくらいには後悔してるんですよ?」「最初、あんな受け答えをしたときには劉備殿に毒されて腹黒くなったか?とか伯珪殿が困る顔を見て楽しんでいるのか?と思ったものですが・・・いやはや。」「ううっ・・・死にたい・・・。」遠慮なく笑う趙雲の表情とは裏腹に高順のテンションは際限なく下がり続ける。「ふっ、高順殿に死なれては私も困ります。戦場で私の動きに合わせてくださるのは貴方くらいしかおりませぬ。」ここまで冗談めかして話す趙雲だったが、急に真剣な顔になる。「ですが、軽々しく「死にたい」など・・・たとえ冗談でも2度と申されるな。」「・・・?」「貴方の命は、最早貴方だけの命ではない。貴方に従う兵士がいる。貴方を慕って貴方の後ろについていき、或いは貴方の横で共に戦うものがいる。高順殿が死ねば、行き先が無くなる者達がいるのです。」「趙雲殿・・・。」「少し説教がましいことを言ってしまいましたな。されど、これは私の本心です。貴方はもう、一騎駆けの兵に有らず。私の言った言葉の意味、よくよくお考えあれ。」そんな事を言って、趙雲はその場を去っていった。彼女の後姿を見送り、高順は今言われた言葉を心の中で反芻する。(俺の命はもう、俺の物だけではない、か・・・。)それが命を賭けるべき舞台であれば、趙雲も高順も平気でその舞台とやらに臨むだろう。彼女は「今はその時ではないでしょう。」とも言っているようにも感じた。どちらにせよ、今は黄巾賊のことだけに集中しよう。自分の終焉の地になるかもしれない徐州の戦までにはまだ時間はある。それまでに、何とか状況を変える事が出来れば良いのだが。その1週間後、劉備は関羽らを引きつれ北平を発った。公孫瓚の好意で劉備達は兵を集める事を許可されたが、その数は最終的に5000を超えている。その報告を聞いた公孫瓚は「私が募集してもその半分集まらないのに・・・」と相当に凹んでいた。武器・防具、そして食料も公孫瓚から分けられており、ある程度軍としての体裁も整ったようだ。彼女達が発つ時、一応高順らも見送った。この時、高順も「餞別」として烏丸から購入していた名馬3頭を贈っている。張飛が乗れるかどうか不安だったが、何とか乗りこなしていたようだ。高順は劉備、関羽には苦手意識を持っていたが(メメタァされかかった)張飛にそのような意識を持つ事はなかった。よく臧覇と遊んでくれたし、鍛錬に付き合ってくれたりもした。その感謝も込めて張飛に馬を送った際にこっそりとお菓子を渡している。その後、諸葛亮と鳳統という少女が劉備軍に合流しているのだが、それは高順達にとっては与り知らぬ事であった。だが、もしもその2人の姿を見たら高順はこう言ってたであろう。「あの天才軍師2人がこんな幼女だとーーーーー!?」と。劉備軍が北平を出立して更に数日後、公孫瓚も1万3千の兵を率いて豫州黄巾軍と戦うために出撃。留守として王門・公孫範が3000の兵で北平を固める事になっている。この戦いの最中、高順は戦とは関係のないところで色々と苦労をする羽目になるのだが・・・。それが語られるのはもう少し先の事である。~~~楽屋裏~~~私のシナリオでは人物崩壊がすごいですあいつです(挨拶もう全員恋姫キャラじゃなくなって別人になってるよ・・・orzこの回は幕間みたいなもので短いのです・・・(言い訳豫州黄巾党は黄巾本隊でそれこそ本気で何十万の軍勢だと思うのですが・・・。そこにいきなり行かねばならない公孫瓚の運命は如何に。本来は黄巾「賊」という呼び名ではなく単純に「黄巾」だったらしいですね。このシナリオの初期ですが波才を初めとした豫州・潁川の黄巾賊の根幹を成す人々が全員戦死、処刑されてますので曹操さんは随分楽になってます。黄巾は本編よりも早く終結してしまいそうです。荊州方面ももしかしたらすぐに収束するのではないですかね。この乱によって漢王朝の寿命が無くなるのは変わりませんけど。さてさて、高順君の明日はどこなのか。次回作じゃない、次回にご期待ください・・・え?期待なんてしてないって?(汗