【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第23話~~~北平・政庁にて~~~侍女に案内された劉備らは公孫瓚との対面を果たしていた。両者共に友人であるし、100人程度とはいえ兵士を引き連れている、という理由であっさりと面会がかなったのだ。「桃香!ひっさしぶりだなー!」「白蓮ちゃん!久しぶりだねー♪」わざわざ玉座(?)から立ち上がり、公孫瓚は劉備を出迎える。「蘆植先生のところを卒業して以来だから・・・。もう3年以上もたつのか。はは、元気そうで何よりだ。」「白蓮ちゃんこそ元気そうだね♪それにいつの間にか太守になって。中郎将になった上に都亭侯まで送られたって聞いたよ?凄いなー。」まるで自分のことのように喜ぶ劉備に公孫瓚は恥ずかしそうに頬をかく。「いやー。別に私の力だけでなったわけじゃないし。それに、ここはまだ通過点だ。こんなところで止まるつもりは無いぞー?」「さっすが秀才の白蓮ちゃん。言う事が大きいなぁ。」「ま、まぁこれくらいはな。それよりも桃香は一体何をしてたんだ?連絡が取れなかったから心配してたんだぞ?」「んっとね、あちこちでいろいろな人を助けてたの。」「ほほぉ、それで?」「それでって・・・それだけだよ?」劉備はきょとんとして言い返す。「・・・はぁぁぁぁぁっ!?」「ひゃっ!?」こんなやり取りをしている公孫瓚らを見て、末席にいた高順は隣にいる趙雲にぼそぼそと話しかける。「趙雲殿。あの人一体何者でしょう?」「さて、なんでも伯珪殿のご友人だとか。」「・・・そりゃ、真名で呼び合ってるんだから友人でしょうね。しかし、公孫瓚殿のご友人といったら・・・」実を言うと、この時点で高順には誰か察しがついていた。彼女は・・・恐らくだが劉備なのだろう。第一印象ではどうも頭の中身が緩そうなタイプに見えるのだが。しかし、油断をするべきではない。。どこぞで「乱世の道化師」と呼ばれるような人なのだ。彼自身はそこまではいかなくても「乱世のペテン師」だろうとは考える。何せどこの陣営に行っても迷惑ばかりかけるような人物だ。公孫瓚には特に損になるような行動をしている訳ではないが、袁紹・曹操・劉表・劉璋と渡り歩いてその全ての陣営に疫病神のような形で関わっている。呂布も、自業自得ではあるものの劉備に死刑宣告をされたも同然の形で処刑されたのだ。自分にとっても警戒するに越した事はない。そんなことを考えている内に劉備は公孫瓚に関羽、張飛のことを紹介していく。張飛はまだわからないが関羽は高順から見ても凄まじい手練に見える。なんというか、今まで戦ってきた相手とは比べ物にならない闘気のようなものを感じる。趙雲も同じ事を考えているらしく、彼女らの一挙手一投足を見逃すまいと注視している。そこで高順の後ろにいた干禁が話しかけてくる。「ねぇ、高順さん。」「ん?どうかした?」「あの関羽って人・・・なぁんか気に入らないの。」「へ?なんで?」「よく解らないけど・・・う~、なんだか好きになれそうに無いの・・・。」そこで高順は「ああ、そういえば史実でも演義でも干禁は関羽にボコボコにされてたんだっけ」と思い出した。そのせいで死後も不名誉を蒙ったのだから干禁にとっては天敵もいいところだろう。「まあ、我慢しなよ。俺だってあの人たちは微妙に気に入らないけど。第一印象で決め付ける事もないよ?」「う~~~・・・。」そう言いながらも高順は劉備たちを第一印象で決めかかっている。まだ不満そうな干禁はさておいて、高順は公孫瓚らの話を聞いていた。「で、桃香が私を訪ねてきたのは旧交を温めに来た、というわけでは無いと思うのだけど・・・。本当のところはどうなんだ?」「うん、白蓮ちゃんが烏丸とか盗賊征伐をするって聞いたから私達も力になれないかな、と思って。」「へえ、そうだったのか。それはあり難いな。兵の数は・・・実は烏丸と戦った後だからそれほど多くはないのだけど、指揮官はいくらでも欲しいからな。聞いた話だとけっこうな数の兵を連れて来たらしいじゃないか?」「あ、う、うん。沢山いるよ、兵隊さん!」「そうかそうか。・・・で?」公孫瓚は見透かしたような表情で意地悪く劉備を見つめる。「で、でって?何かなぁ・・・。」「本当の兵士はどれくらいいるんだ?」「うぇ・・・そ、それはぁ・・・。」言葉に詰まる劉備を見て公孫瓚はやれやれ、と苦笑する。「ふふ、桃香の考えてる事くらいお見通しだ。だけど、私にそういう小細工はして欲しくなかったな。」「はぁ、バレてたんだ。」「おいおい、これでも太守なんだぞ?それくらい見抜く目がないと務まらない。ま、気にしないで良いさ。私が同じ立場なら同じ事をしてただろうから。」「う、うん。」「けど、友人の信義を蔑ろにする者に人がついてくる事はない。覚えておきなよ?」公孫瓚は下手な小細工を弄するよりも誠心誠意を基本にぶつかれば良い、と言っている。当然それは人によるが、それを見抜く目を持て、ということでもあるのだろう。真心を見せても心を開かない人はいるものだ。幸いと言っていいのか、高順の周りにいる人々は全員心を開いている。これは単純に運が良かっただけだ。今の公孫瓚の言葉は自分にも当てはまる言葉だ。覚えておくべきだろう。「うん、覚えておく。えへへ、相変わらず良い人だね、白蓮ちゃん。」「なっ、ば、馬鹿なこと言ってるんじゃない!ただの老婆心だよ、老婆心!」「えへへー♪」「くぅう・・・。」なんとなく、2人の関係がわかった高順は苦笑した。良くも悪くも常識人の公孫瓚は色々と劉備に振り回される役割だったのだろう。ごまかす様に咳払いをして、公孫瓚は話を続ける。「それよりも!兵士の数を教えてくれよ?」「それが・・・1人もいないの。」「・・・はぁっ!?」「最初から一緒に行動してくれてるのはさっき紹介した2人だけで・・・。」「2人って・・・関羽と張飛だっけ?うーん、2人の力量がどれほどのものなのかがよく解らないのだが・・・。」「あう・・・そうだよね・・・。」しゅん、となる劉備の後ろから関羽達が進み出る。「鈴々はすっごくつおいのだ!」「左様。必ずやお役に立ちまする!」「うーん・・・。」彼女達の言葉にも公孫瓚はいまいち歯切れの悪い言葉しか出てこない。と、そこへ助け舟を出す人物がいた。趙雲である。「人を見抜け、と言った本人がその2人の力量を見抜けぬでは話になりませんぞ、伯珪殿?」自身の座から歩いていく趙雲。その言葉に公孫瓚はほんの少しだけムッとする。「むぅ・・・。なら、星はわかるのか?その2人の力量を。」公孫瓚の言葉に「当然ですな。」と趙雲は頷く。「武を志すものであれば姿を見るだけで2人が只者ではない、ということくらいは解るものです。」「ん~・・・星がそういうのなら間違いはないのだろうけど・・・。」まだ悩む公孫瓚から一度視線をはずして、趙雲は関羽のほうへと向く。「そうであろう、関羽殿?」「そういう貴女も腕が立つ。私にはそう見えるが?」「うんうん、鈴々もそう見たのだ!」「さぁ・・・それはどうでしょうか?」2人の言葉に意味ありげな笑みで返し、また公孫瓚のほうを向く。「して、如何なさいます?彼女らを受け入れますか?」「・・・そうだな、桃香の実力は知っているし、他の2人も星が言うのだから間違いは無いだろう。不安が無い訳じゃないが、当家には人材が少ないんだ。私に力を貸してくれ。」こう言って頭を下げる公孫瓚に劉備は少し慌てつつも、「もっちろん!頑張るからね!」こう返事をしたのだった。「張飛殿、関羽殿もよろしく頼むぞ。」「ああ、我が力。とくとご覧じろ。」「任せるのだ!」こちらも鷹揚に頷くのだった。彼女らのそんな様子を見て、楽進が高順にはなしかける。「隊長・・・。なんだか、我々のことを忘れて話が進んでいるような・・・。」「ん?そうだねぇ。」「そうだねぇって・・・。」「仕方ないさ、あーいうのは。他所から横槍入れるのが野暮って物です。」「うーん・・・。」何か納得いかないように腕を組む楽進に、高順は苦笑するのみだった。数日後、陣割が決まって3姉妹・趙雲、そして高順達も呼び出されて城門に向かう。そこには3千ほどの兵士が整列していた。その様子を見て劉備たちが「うわー!」とか言って感嘆の声を上げる。「すごーい、これ全部白蓮ちゃんの兵隊さん!?」「いやー・・・正規兵と義勇兵が半々ってところかな。」「それほどに義勇兵が集まったのですか。」感心したように呟く関羽に趙雲が答える。「それだけ大陸の情勢が悪化し何とかしたいと考えている人々が多い、ということの証左でしょうな。」「ふむ、確かにここ最近は賊の数が多くなっている。それも当然なのだろうな・・・。一体、この国はどうなるのだろう。」「民のため、力なき人々のため。間違った方向に向かわせたりはしないさ。この私がな。」胸を張り言い切る趙雲に関羽は好意的な表情を見せる。「・・・趙雲殿。」「ん?如何なされた?」「あなたの志に深く感銘を受けた。どうだろう、我が盟友となっていただけないであろうか?」「鈴々もおねーさんとお友達になりたいのだ!」関羽と張飛は、趙雲の意思に自分達と同じものを感じたのだろう。この混迷している国のために力を振るいたい。人々を守るための盾となり、矛とならんという志を。「ほう、志を同じくする者は考える事も同じと言うことですかな。」「・・・?それはどういう―――」趙雲は関羽に手を差し出し、穏やかな笑みを浮かべる。「必ずやこの大陸に安寧を。友として誓いあおう。」「・・・ああっ!」「誓うのだ!」「あー!私も!仲間はずれにしないでよー!」がっちりと手を組む3人を見て劉備も慌ててその上に自分の手を載せる。「皆で頑張って平和な世界を作ろうね!大丈夫、皆で力を合わせればすぐに平和な世界が来るから!」「そんなわけないのだ。お姉ちゃんは気楽だなー。」「ふ、そんなお気楽さも世の中には必要なものでしょう。」こうやって盛り上がる4人は、お互いに真名を教えあい救国の志を確かめ合っていた。それを外から見ていた高順は、その周りで参加したがっている公孫瓚を見かけた。「・・・参加したいのなら参加すればいいんじゃないですか?」「な、ばっ、馬鹿!ただ、私も救国の志があるんだから忘れないで欲しいなー、って・・・。」「じゃあそういえば良いじゃないですか?」「あうぅ・・・。」公孫瓚は顔を真っ赤にして俯いてしまう。「拗ねなくてもいいと思うのです。」「拗ねてない!」更に顔を真っ赤にして公孫瓚はぷいっ、っと横を向くのだった。高順達は、というと。劉備たちのやり取りを心なしか冷たい視線で見ていた。含むところが無いではないが、彼女達の言っているのはあくまで理想論で中身が伴っていない。「皆で頑張れば」と簡単に言うが、それで平和な世界が来るのなら当の昔に平和になっているはずだ。言葉通りに受け取るつもりは無いが、そのあたりの現実を理解していない子供の理論にしか聞こえなかった。どうも3人娘と沙摩柯も同じようで苦虫を噛み潰したような、そんな表情をしている。清濁併せ持つ、という言葉がある。今の劉備はその「清」しかない。そのままでは乱世で生き延びる事など出来はしないだろう。ゆくゆくは敵となることがわかっている相手だが、公孫瓚の友人だ。「その辺りは放っておけないよなぁ・・・。」と考えてしまうところが高順の甘いところだった。ここで公孫瓚は陣割を発表した。公孫瓚は中央の部隊を率い、劉備達は左翼の陣を率いる。右翼は趙雲が率いてそこに高順隊も配置されている。数としては中央が1300。左翼が1000、右翼は700である。前回の戦闘で相当数の兵士が死傷し、烏丸征伐の後すぐに盗賊たちが行動を活発化。その鎮圧のために各方面に兵と武将を配置したために数が少ないのだ。それでも恐れることなく賊討伐に向かうというのだから公孫瓚も豪胆な性格をしている。「しかし、劉備殿に左翼を丸ごと任せるとは。伯珪殿も剛毅ですな。そう思いませぬか、高順殿。」右翼の先頭に立つ趙雲が隣にいる高順に話しかける。「そうですね。剛毅です。それだけ力量を信じておられるのでしょうねえ。」「・・・高順殿。劉備殿がお嫌いで?」なんだかそっけなく言い放つ高順に趙雲は少し不満そうな表情をする。彼がここまでぶっきらぼうな態度を取るのは初めてのような気がする。「そうですね。好きか嫌いかと言われれば嫌いな部類です。理想家すぎますからねぇ、現実を全く見てませんし。」こう言い切った高順を趙雲は不思議そうに見つめる。彼がここまではっきりと嫌うと明言したのは、王門以外では初めてだ。しかも自分では話をしたことがないというのに。彼女達との間何かあったのだろうか。不機嫌になるようなことでも?しかし、彼は劉備殿達と接触をしたがらなかったようだし・・・はて?と考える趙雲だったが、軍勢の戦闘に立つ公孫瓚の声が聞こえ一時その考えを中断した。「諸君、これより我らは出陣する!烏丸を沈静化した後、行動を活発化してきた賊を私自ら殲滅してくれよう!公孫の勇士よ、功名を立てる機会がまた来た。存分に手柄を立てて見せろ!」公孫瓚の言葉に兵士達が大音声をもって応える。この大地を揺らさんばかりの鬨の声を聞いた公孫瓚が剣を掲げ号令を出す。「出陣だ!」意気揚々と出撃する兵士達。それに続いて劉備部隊、そして趙雲隊が続いていく。盗賊が根城にしている場所まではそう遠くはない。「ま、生き残るために頑張るとしますか。死ぬなよ、皆。」「応!(ほいな!はいなの!ああ。了解っす!)」高順は後ろに顔を向けて3人娘や沙摩柯、そして今回、田豫と入れ替わりで従軍した閻柔に声をかけた。・・・まったく息が合ってないが、いつものことなので高順は気にもしていなかった。平原を進み数時間。本陣からの伝令が命令を伝えるために各陣へと急行していた。「全軍停止!これより我らは鶴翼の陣を敷く!各部隊、行動を開始なされよ!」これを受けて、各部隊が一斉に動き始めた。本陣を真ん中に据えて、左翼・右翼ともに兵を分けて5つの部隊を展開する。趙雲が、そして劉備(実際に訓示をするのは関羽達)が自部隊の兵に戦闘前の訓示を言っている。聞いていると、立派な事を言っている。流石後の世に神となる存在だな、と素直に感心する。それに対抗する訳でもないが、高順も自分に従う兵に訓示を垂れていた。「生き残れ、そして必ず勝て。いつも通りにやればいい。烏丸との戦いを生き延びた皆だ、自信を持て。以上だ。」「はいっ!」高順の言葉に兵も応える。ここで、盗賊たちがこちらに突撃を仕掛けてくるのが見えた。「盗賊がこちらに向かってきます!各部隊、ご注意を!」また伝令が本陣へ向かっていく。盗賊の数は5000ほど。だがこちらの陣容を考えれば勝てない相手ではない。「全軍、迎撃態勢!必ず勝つぞ!」公孫瓚の命令が各部隊へと届いていく。「関羽隊、出るぞっ!」「鈴々も負けないのだ!」闘志をあらわに、劉備隊が動き始める。「ふっ、高順殿。われらも負けてられませぬぞ!?」「承知。高順隊、彼女達に負けるなよ!」『おうっ!』こうして、公孫瓚部隊3000と盗賊5000がぶつかりあった。先ず最初に両軍ともに弓を打ち合う。が、統制の取れていない賊軍はてんでばらばらの行動を取るばかりで足並みも揃わない。対して公孫瓚軍は歩兵に槍と盾を構えさせ、その後ろから弓を間断なく放っていく。両軍の兵が矢で射抜かれて倒れていくが、盾を持たない賊のほうが被害が大きかった。これでは埒があかないと思ったのか、賊は遮二無二突撃を仕掛けてきた。だが、歩兵が槍を構えているため一定以上から進めず、後ろから進んできた兵に押されて槍の餌食になるものも少なくなかった。そうやって躊躇をしている賊に、更に矢を射込んで行く。鶴翼の陣、というのは数が少ない側が使用する防御陣形である。本陣を餌にして、その餌に喰らいついてきた所を右翼と左翼が挟み撃ちにして殲滅する、というものなのだ。弓の打ち合いだけで賊軍が相当に消耗している。最初こそ威勢よく突撃を仕掛けてくる賊であったが、消耗した人数が多いためかすぐに尻込みして下がり始めようとする。通常ならば罠か?と疑うのだが、この辺りは公孫瓚、趙雲、ついでに高順(とその部下達も)も幾多の戦いを潜り抜けた猛者である。(あの動き・・・随分と雑だ。罠の類は無いだろうが。深追いをしないほうがいいか?)by公孫瓚(ふむ。罠、として見るなら伏兵であろう。だが、この見渡しの良い平原で伏兵は・・・無いだろうな。向こうが先に突出してきたのだから落とし穴なども無いだろう。」by趙雲(見通しの良い平原だから岩とかを使用する事は不可能。あるとすれば火くらいだが・・・風もない。その前に奴らを駆逐できるだろうな。)by高順結果、公孫瓚は鶴翼の陣を維持する必要は無いと判断。本陣が先行、そこへ右翼と左翼が着いて行く形・・・蜂矢の陣に近い形になって突撃を開始する。中央・右翼の歩兵と騎馬隊は槍を構え全速力で賊部隊に突撃を仕掛けていき、左翼の劉備隊も負けじと突撃していく。「関羽隊、突撃だ!匪賊共を1人残らず討てっ!」「鈴々も負けないのだ!皆、頑張るのだー!」そう言って先頭を進む関羽と張飛は、逃げていくか或いは立ちふさがる賊兵を苦も無く討ち取っていく。青龍刀、そして蛇矛が振り下ろされる度、薙ぎ払われる度、1人といわず3人4人と吹き飛ばされていく。それを遠目から見ていた高順も内心で大したものだと考える。軍神と呼ばれた関羽。長坂においてただ一騎で曹操軍数十万を震えさせた張飛。その威名は伊達ではないという事か。劉備は・・・なんだろう。剣を抱えてあっちでふらふら、こっちでふらふら、という感じでおたついている。・・・あれで、何で公孫瓚殿は「実力を知ってる」のだろう。どう見ても素人にしか見えない。劉備は置いておくとして、関羽と張飛はただひたすらに敵を薙ぎ倒して行く。本陣から遅れて突撃をしたのに、すでに追い抜いて少々突出した形になっている。「・・・隊長。」「ん、どうした?」虹黒が後ろ回し蹴りで賊を1人蹴り倒したところで楽進が隣にやって来る。「劉備殿の左翼が少々突出気味です。あれでは囲まれませんか?」「囲まれるだろうね。」「そ、それでは助けに行くべきでは?」「俺達は右翼ですよ。一番遠いじゃない?それに、関羽さんや張飛さんがなんとかするよ。」「確かに、彼女達は凄まじい強さですが・・・。」「それ以前に自分の目の前にいる敵に集中するべきだね。右翼が一番数少ないんだから、っと!」かなり遠くにいる賊を矢で仕留めつつ高順は馬を進めていく。「彼女らを援護するのはこっちに余裕が出来てからでいいさ。」もっとも、こちらに余裕が無いか?と言われればそんなことはない。関羽達に匹敵する力量を持つ趙雲がいるし、楽進・李典・干禁もいる。沙摩柯も閻柔もいるのだ。それに、前回の烏丸戦を生き延びた兵士達も頼りになる。沙摩柯や蹋頓らに鍛えられる前はどことなく頼りない感じだったが、今ではあの大きな戦いを生き残ったことに自信を持ったのか勇敢に戦っている。もしかしたら自分より勇猛かもしれない。前から感じていたが、どうも自分は数千の兵士が戦う大規模な戦に縁があるらしい。それに、人を殺す事をなんとも思わなくなりつつある自分に恐れを抱く事も多い。迷っていては自分が殺られる。解っているのだが人の死に鈍感になっていく事が怖くて仕方が無い。だが、楽進を初めとした部下、いや、仲間達。自分を信じて着いて来てくれる兵士達の死に鈍感になるつもりは無い。まだまだ守られる立場の自分だが、いつの日か1人でも多くの仲間を守れるくらいには強くなりたいものだ。それが自分の死を回避する事にも繋がるだろうから。そんなことを思いつつ、虹黒、楽進と共に眼前の敵を討ち続ける高順だった。そのまま戦闘を続ける両軍だったが、最初の出だしで躓いた賊軍が当初の勢いを取り返す事ができない。公孫瓚側は、反撃を開始してから勢いに乗りまくり、退却しようとした賊軍に追いすがり次々と討ち取っていく。「敵は総崩れだ!行け、追いまくれ!」「皆、鈴々に続くのだー!」周囲にいる兵士を鼓舞しつつ、関羽と張飛は戦線を維持できず崩壊していく賊軍に更に攻撃を仕掛ける。同じように中央・右翼も敵陣へと深く食い込んでいく。その後、数時間もせぬ内に公孫瓚の軍勢は勝利した。公孫瓚側の被害・・・死傷者数は僅かなもの。その後も執拗に追撃を繰り返しほぼ全滅させた、といえるほどの成果を上げるのだった。こうして、関羽や張飛。趙雲らの活躍もあって公孫瓚軍は完全勝利を手にしたのだった。引き上げていく公孫瓚に、劉備隊と趙雲隊(ついでに高順隊)が合流する。「おお。皆よくやってくれたな。こちらの被害も少なかったし。いや、良かった。」公孫瓚のねぎらいの言葉に皆が笑顔になる。実際、関羽らの奮闘があったからこそ兵の士気が上がり勝利に繋がったのだ。「やったね、白蓮ちゃん。さっすがぁ♪」「いや、皆の力あってこそさ。本当に感謝している。」「えへへー♪」そんなお気楽な会話をする公孫瓚らを尻目に趙雲は空を睨みつける。「ん、どうしたんだ、趙雲?」「・・・公孫瓚殿。この頃、世の雰囲気がおかしくはありませぬか?」「へ?雰囲気?」「左様。この所、争乱が続きすぎている。何か良くない事の前触れのような、そんな気がしてなりませぬ。」趙雲の言葉に、関羽が頷く。「確かに、趙雲の言う事は正しいと思います。この頃匪賊の動きが多すぎる。」「お主もそう思うか・・・。」「ああ。賊は増えてる上、飢饉も疫病も猛威を振るっている。」「食料が少なくなるからどこかから奪ってくる。だから余計に食糧不足になる、か。」公孫瓚はぽつりと呟いた。「その上、国境付近では五胡が動き始めているとも聞く。先ほどの話ではありませぬが、何かが起こる前触れのようにも感じますな。」「大きな動乱、その前兆か・・・。」関羽が険しい表情で空を睨む。「高順殿はどう思われる?」「・・・はっ?」全くのアウェーだった高順は自分に話を振られるとは思っていなかったらしく素っ頓狂な声を上げる。「・・・聞いておられなかったのですか。」趙雲は少しがっかりしたような顔をした。「聞いてなかった訳ではないですが。まさかこっちに話を振られるとは思ってなかったですし。・・・で、何かの前触れとかそんな話でしたね。」「うむ。」ここまで来て劉備たちが、ちょっとした質問をしてくる。「あのぉ、すいません。」「?」「その、そちらの方・・・どなた?」劉備たちは公孫瓚に顔を向けて質問をした。「な、なんだ。知らないのか?」「その、何度か見かけたことはあるんだけど。一回もお話をしたことがないかなー。あははは。」これは嘘ではない。公孫瓚と政庁で話をしていた時も、この数日間でも何度か顔を合わせてはいる。高順はできれば劉備達と係わり合いになりたくなかったし、劉備達も誰か知らないので接触しても挨拶をする程度の間柄でしかなかった。「高順。自己紹介をしてやってくれないか?」「・・・はぁ。」まあ、仕方ないか。ここで紹介を渋れば不審がられるだろうしな。「俺の名は高順です。よろしく。」なんだか凄まじくそっけない。普段の彼の性格を知っている公孫瓚と趙雲は顔を見合わせる。その顔には「何かいやな事でもあったのだろうか?」と書いてある。そのそっけなさに多少驚きつつ劉備達も自己紹介をする。「あ、えーと。私は劉備、字を玄徳って言います。」「鈴々は鈴々なのだ!」「・・・それは真名だろう。この子は張飛、字を翼徳。私は関羽、字を雲長。よろしく頼む。」「どうも。」・・・やはりそっけない。普段の彼を知っているだけに公孫瓚と趙雲は違和感を感じる。「さて、さきほどの趙雲殿の質問にお答えしますね。動乱がどうこうとか、そんなお話だったと思いますが。」「あ、ああ。」「起こりますよ。」「はぁ。」あっさりと言う高順に皆が「あーそうか。」という反応を見せる。「いや、そうじゃなくて!そんなあっさり言うか!?」「そうだぞ、高順殿。何か根拠があるというのか?」公孫瓚と関羽が微妙に抗議をする。「根拠なら幾らでも。まず1つ目。漢王朝の腐敗ぶりは相当なものですよ。どれだけ中央の官僚が腐敗していると思ってるんですか?まともな人もいるでしょうけど、そういった人々が頑張ったところでどうにもならないところまで来てるんです。もう民草は限界なんですよ。」「そんな・・・。」後漢王朝、劉家の血筋に連なる劉備が悲しそうな顔をする。「劉備殿達だって見てきたでしょう?民草の生活の実情を。先ほど戦った賊どもは一体何故賊になったのか。飢えたから奪う側に走ったのではないですかね?奪う側になった彼らに同情など必要ありませんが、彼らがそうならざるを得ない現状を作ったのも漢王朝そのものですよ。」劉備がさらにシュンとする。実際、彼女らも公孫瓚の元へたどり着くまでに、同じような状況を幾度も見た。それを理解しているからこそ旗を揚げて人々のために戦いたいと思っている。高順も流石に言い過ぎたか、と反省したが・・・彼女らのことを考えれば辛い現実も教えてやらねばならない。「そういった人々の敵意、悪意は少しずつ形になってきています。それがそろそろ暴発する、俺はそう考えていますよ。」ねえ?と、高順は3人娘のほうへ向き直り同意を求め、楽進達も至極真面目な顔で頷き返した。彼女達は黄巾党と一戦交えており、あの勢力が民に浸透しているのを痛感している。高順達は自分達の経験を鑑みて「何かが起こる」と言っているのだ。(高順は知識としても知っているが。)「大事なのは、そこでどう立ち回るか、ですよ。どうせ漢王朝から通達が来るのは事が起こってからでしょうしね。それまでにやれることをやっておかねば。」高順はこう締めくくる。そんな彼を、公孫瓚、趙雲、劉備達は感心したような面持ちで見つめていた。「・・・えーと、どうしました?」「いやぁ、大した分析力だなー、と思ってさ。どうしてそこまで解るんだ?」公孫瓚は本当に感心しているようで、興味深そうに聞いてきた。「どうしてって・・・経験をしているからです。前にそういう勢力とやりあいましてね。立ち上がるならそれに似た勢力だろうと思うんです。」そして、そこが乱世の呼び水となっていく。それを確信している高順であった。その後も公孫瓚は劉備達を従えて幾度も賊征伐に乗り出した。その甲斐があって劉備の名もそこそこに知られる様になっていたし、持ち前の優しさからか北平の人々からの人気も高かった。高順もある程度は彼女達と話をする程度の間柄にはなっていたが、やはり自分から傍へ行くような真似はしなかった。劉備は高順ともっと仲良くしたいと思っているようだ。趙雲の疑念にあっさり答えたときの洞察力に感心もしていたし、関羽、張飛に敵わないとしてもかなりの武の才能を持っている。それに彼の部下も相当な猛者揃いだ。仲良くしておいて損は無い。趙雲もだが高順は公孫瓚の客将であることを知っている為、自分たちが旗揚げをした後、どこかで自陣営に引き込めないだろうかと言う打算もあった。少し話がずれるが、高順が北平でソーセージを作ったのはちょっとした理由があった。実は、北平に限った事ではないがこの時代のこの国の北部では気候や水の問題で米があまり作られていない。主流なのは麦である。その麦を加工してパンのようなものに加工するのだ。そして、肉は豚がよく食される。パンに豚肉のソーセージを挟んで、というのは現代人の考えだが高順もそう考えたらしい。それがどういうわけか当たって大人気となったのだが・・・劉備達も随分気にったようだ。これはあくまでついででしかないのだが、その作り方を教えてもらえないかなー、と劉備は考えてもいた。関羽は彼にあまり好意的ではなく、どこかよそよそしい。干禁ともそりが合わないようだ。逆に張飛は高順と仲がいい。(というか一方的に付きまとっている。)高順は子供好きな性格(丘力居や臧覇を可愛がっている)のようで、嫌だ嫌だと言いつつも張飛に遊びに誘われたときはあっさりとついていくし、幾度も鍛錬に付き合ってもいる。高順は一方的に倒される事が多いが、近頃は少しずつだが張飛の動きに付いていけるようになっていた。同じくらいの年齢だからか、張飛は臧覇とも仲良くやっているようだ。公孫瓚も趙雲も、お互いの関係が険悪なのだろうか?と不安がっていたが、これらのことで一応安心したらしい。それはともかくも、ある日の事。「う~・・・。」劉備が城の中庭のある場所に陣取り筆を持って目の前の書物を見ながら何かを書き写している。その日、高順は兵の訓練と3人娘、沙摩柯らと組み手をした帰りでそんな劉備の姿を見かけたのだった。「何をしているのやら。」筆を持って、書き写しては頭から湯気が「どしゅ~・・・」と吹き出てるような、そんな感じだ。(・・・関わらないようにしよう。)決断してそのまま去ろうとする高順だが、その姿を運悪く(?)劉備に見つかった。「あ・・・お~~~い、高順さ~~~~~ん!!」OK、俺には何も聞こえない。俺は風、ふりーだむ。「こーーーーじゅんさーーーーーーーーーん!!!」・・・流石にこれだけ大声で呼ばれて無視は無いよな。むしろそんな真似したら関羽さんに頭握り潰される。メメタァって感じに。高順は諦めて劉備のほうへ向き直り、歩いていく。「何か御用ですか?」「うん、あのね。政治のお勉強教えてほしいなーってちょっとなんで逃げるの!?」引き返そうとした高順の服の裾を引っ張り劉備が抗議する。「俺は政治とかそういった類が苦手なので。ではってちょっと首!絞まってる極まってる絞まってる!?」「教えてくれるまで離さないんだからぁ~~~!」「解りました!わかる範囲で教えますから・・・!く、くるじい・・・」本人が意図するより、割と仲良く(?)している高順と劉備だった。~~~楽屋裏~~~どうも、子供の鈴々に手を出す一刀は犯罪者です、あいつです(挨拶高順くんを劉備大嫌いにしようと試みましたが・・・無理でした。なんかこっちのプロット崩しにかかってくるんですよ、高順くん。お人好しもここまで来るとただの馬鹿のような気がします。今回は原作の会話を微妙に取り入れてみましたが如何でしたか?あいつは大変やりにくかったです(笑しかし、盟友云々のくだりは・・・なんでしょうね。原作のほうでも違和感を感じる会話でしたが自分で書いてみるとやっぱり違和感がががががが。これも友愛仁愛軍団の為せる業・・・なわけないですなwこれはあいつの疑問なのでスルーしていただいても全然構わない質問なのですが。最初にも書きましたが今回のように「原作会話も取り入れる」のは読者様としてどのようなものでしょう?意図無く似たような会話になるのはともかく。「作者の考えた会話のみでいいよ!」とか「原作会話取り入れてもいいんじゃないかな?」とか「どっちでもいいよ、(゜3゜)ペッ」という人もいらっしゃると思います。アンケート、というものではありませんが教えてくださると後々やりやすいかな?と。それと文章量。毎回多かったり少なかったりです。安定させたほうが良いのでしょうか・・・?さて、ようやっと次から黄巾編に入ります。本当に長かった・・・。もしかしたらどっかで番外編を書くかもしれません。ふと(仕事中に)思った事がありまして、「自分、戦闘編になると1つの戦争につき日常も含めて2~3話書いてるよね?」・・・これからの戦い、少なく見積もっても(規制)回ほどあるんですけど・・・現在、番外編も含めて25話程度です。そこから換算すると・・・最低でも終わる頃に40話は軽く超えるよね?のオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお|||orz俺・・・30話で打ち切るんだ・・・このお話があいつの最初で最後の作品になる事請け合いですが・・・なんで処女作でこんな長編になるのか誰か教えてorzそれではまた次回、お会い致しましょう。(・×・)ノシ