どうも皆さん、高順です。俺の役職、レベルアップしました。どんな風に?兵士→兵士(物資点検も兼ねる)→親衛隊という名前の丁原様の小間使いなんかどんどん兵士から離れていく・・・死亡フラグ折るはずが全然違うほうに行く・・・orz第2話 やっと話が前に進んだ。俺の苦労も加速度的に増えた。小間使いになった理由、というのは簡単なものでして。自分の仕事をせこせこやってたら、丁原様に「身の周りの仕事を助けるのが欲しいからお前やれ。」少し前に物資点検やれ、と言ったのにもうジョブチェンジですか。フリーダム過ぎる。この人横暴なんだけど逆らったら殺されかねんし、逃げたら逃げたで家族に迷惑かかるしなぁ。兵士になる前から逃げろといわれればそれまでだけど・・・。母上が地の果てまで追ってきそうな気がします。ま、フリーダムは置いておくにしても、小間使いです。物資点検はどうなったって?それは俺が不要になっただけです。俺に色々仕事頼んでくる人もいれば、どう数えればいいの?と聞きに来る人もいるんです。それに対していちいち対応してればそれこそキリが無いのですが・・・。いちいち教えていくうちに、聞きに来てた方々も内容を心得たみたいです。掛け算割り算の仕様を覚えてくれたんだろうな。そしてそれを他の人々に伝えていったらしいので、簡単な計算できる人が多くなりました。そうなると、必然的に俺の仕事が減っていきます。そこに目を付けられたようで「お前暇だろ?いや暇に決まってる。だから私の仕事を手伝え。」なんつー俺様主義ですか、丁原様。ちなみにどんな仕事かというと・・・。「おい、高順。酒買ってきてくれ。」「高順、酒のつまみがないぞ。ほかに無いのか?」「ううっ・・・昨日は飲みすぎたか・・・高順、水もってこい・・・・・・」「高順、この書類に判子押しとけ」・・・ぜんぜん兵士としての仕事してないんですけど?あと、判子は本人で押してください。だから小間使い。最初は秘書?とか思いましたけど、買い物いきーの酒仕入れーの以下省略。ちくしょう|||orzそんな関係が半年続き1年続き。丁原様の声色1つである程度何して欲しいか理解できるようになりました。慣れって怖いなぁ。1年ほど側に仕えて解ったことも色々あります。まず、丁原様。武人としても指揮官としても優秀ですが官吏としてはそれほどじゃないです。ただ、人を差別しない方ですし身分に捉われずに意見を聞いたりもしてくれます。政治方面に自分が向いてないというのも自覚してるようで、周りの意見に頼りたがるっていう側面もありますが部下としては仕えやすい部類ではないでしょうか??こういう人だと解ってれば・・・。いや、やっぱ斬られるような気がする。まあ、側で見ないと理解できない面も多々あるものです。前にも、「なぁ、高順。」「はい?何でしょう?」「もっと、農作物の出来がよくならんものかなぁ・・・」というやり取りがありました。そういえば、このあたりの時代で・・・・韓浩ですっけ?流民を引き入れて農業に従事させるという屯田制度を曹操に提言した人がいます。王朝の末期になると大抵反乱やら賊の横行やらで農作物の出来が悪くなり、先祖伝来の土地を離れて一村まるまる人がいなくなる、とかそういうことが多いのですよ。もちろん、今の後漢もそうなのです。実際には前に丁原様が言ってた「人が少ない」時代とでも言いますか。「人が土地に集まらない」と言っても良いのかもしれません。屯田というのは軍屯と民屯という2つの状況がありまして、今は軍屯のほうが主流です。その流れを民屯へ向けたのが韓浩さんという訳。俺自身も物資点検という名目の文官さんの仕事押し付けられてたのでその辺りは憂慮していたところです。韓浩さんの言ってたのと似たようなことを言いました。「この地域に限らず、流民が多いから引き入れましょう。最初の2年か3年は税なし、農具はこちらから貸し出し、牛馬を自分で持ってきた人は税率を下げる。という形で。」「悪くない案だと思うが流民を引き入れることができんぞ?彼ら全員を受け入れる食料もないし、土地も無い。」「全員でなくても良いのです。街の外には荒れた土地がいくらでもあるでしょう。少しずつ開墾していけばいいのです。収入が増えていけば少しずつでも街の規模を広げて、開墾地を増やしましょう。」「ふむ・・・しかし、それでは最初のほうは収支が減るのではないか?」「引き入れてから1年2年は収益が少なくなるかもしれませんが、長期的に見れば必ず収入は増えます。生産力が上がれば軍屯だけの今より食糧事情を改善できると思います。」「ふーむ・・・。だが荒れてる土地と解ってるんだぞ?肥料はどうするんだ?そんなに大量に用意できるわけではないぞ。」「馬や牛、鶏の糞を使用する物は時間がかかりますね・・・草や木を燃やした灰でもある程度代用できます。」「灰で?ほう、それは初耳だな・・・。」「あとは魚を干し、それを砕いたもの。石や貝殻、それと骨を細かく砕いたもの。こういったものを混ぜ合わせれば肥料にもなるんです。ただ、灰や石を砕いた物を使う場合はたい肥なども使用しなくては土地が痩せていきますけど・・・。」「おい、高順。」「はい?」「お前、そんな知識をどこで得た?」「え・・・、あ。その、それは・・・。」…しまった。調子に乗りすぎたか。この時代にある知識かどうか考えて言うべきだった。灰や魚粉ならともかく、石やら貝殻が肥料の代わりになるなんてこの時代の人々が知るはずも無い。「いや、そのー。前にどこぞの本にそんなことが書いてあったような無いような・・・。」やばい、ぜんぜん言い訳になってないよ。どうする俺。「・・・まあ、いいか。どこでそんな知識を得たかは知らんが・・・使い物になるんだな?」「は、はい。間違いありません。」丁原は、ふふ、と少しだけ笑い、高順の目を見て言った。「お前の案、採用しよう。しかし結果が出なければ・・・。」「もちろん出せます。ただ、結果が出るのはどうしても先になってしまいますが。(危なかった!追求されたらもう本当どうしようかと!)」と、こんなやり取りをしたのです。正直めっさ疑われてると思います。でも、一応はやらせてくれるんですよ。一度やらないと結果が出るかどうかすらも分からないですからね。あれ、やっぱ仕えやすいじゃん?その後も色々とありました。肥料作ってる人々に意見求め、改良点が無いか調べたり、丁原様が贔屓にしてる酒処の酒(酒処・桃園とかいう名前。どっかで聞いたような)を買い求めたり、流民を少しずつ領内に引き入れて、土地を耕して、酒処(ryあと、流民を引き入れて、開墾して。肥料撒いて。大変でしたが1年後2年後が楽しみです。あと、個人の欲求としてですが味噌汁欲しいです。確か大豆から作るはずだったから・・・。材料何とかなるかな?とか考えてたり。・・・やっぱ兵士として働いてないような。とか考えてたらまたも丁原様から呼び出しくらいました。何かやったかなぁ?と考えて政庁に向かったのですが開口一番、「そろそろ兵士として働きたいだろ?いや働きたいに決まってる。そこで賊の討伐に向かう。賊討伐の嘆願書も近隣の村々から幾度か出ていたし、兵の訓練の成果も見たい。てわけで準備しろ。」俺の死亡フラグ、再び。本来ならこんなところで死なないから大丈夫だよね・・・?そして何がなにやらわからぬままに出陣用意。軍需物資や輜重の用意などは専用の文官さんがやってくれるので楽チンです。俺のやることといえば自分の装備とかきっちり確認するくらいなものです。ただ、用意だけで数日かかるのは仕方ないですね。つれてく兵士の数がそうは多くないからまだ楽なほうですが。そう思ってた時期が俺にもありました。出陣1日前のこと。政庁にて。「おい、高順!」「はひっ!?何ですか丁原様!」「こんなところで何をしてる!」「何って・・・自分の用意が終わったので何するかな?と・・・」といいつつ俺が持ってるのは濡れ雑巾。だって掃除してくれる人少ないんだもの・・・。濡れ雑巾で汚れてる壁とか床を必死こいて拭いてます。今度、パートタイマー制度の導入を進言してみよう、うん。明日出陣だというのに随分と気楽だなぁ、と自分でも思いますけどね。・・・現実逃避してるだけです。「そんなもんは他の誰かにやらせておけ、お前にはもっと大事な仕事がある!」「いや、ほかに誰もやってくれないから自分でyメメタァッ!?」「口答えするな!」めっさ全力で殴られましたよ、ええ。母上を思い出します。下邳で処刑されるより暴力で死にそうですが・・・逃げれないよなぁ、きっと。「ううっ・・・だ、大事な仕事って何ですか?」頬をさすりながら呻くように聞いてみる。実際一兵士のやることなんかそうは無い物だ。自分の武具を用意して出陣を待つだけ。戦闘になったらそりゃ大変なんだが。でも、本当に何か大事な仕事あった?と考えてみる。・・・駄目だ、思いつかん。「申し訳ありません、何も思い浮かびません。」この言葉が癪に障ったのか、いや、もともと機嫌が悪いからか、丁原の表情が険しくなる。「ええい、気の利かん奴だなっ・・・。酒だ、酒。酒を買い占めて来い!」この発言にはさすがに驚きです。明日出陣なのに酒盛りする気ですかあなた。何処の酔っ払いかと。「あの。酒買い占めて来いって?桃園の酒なのは解り切ってますが、明日出陣ですよ?今日酒盛りするつもりなんですkパウッ!?」「だーれーがー今日酒盛りするといった!?出陣中に私が飲む酒が無いだろうが!?」いや、兵士に与える酒で我慢しろよ・・・。と思ったがこれ以上は言わないでおこう。死ぬかもしれん。割と何事にも無頓着な主君ではあるが、酒・・・とりわけ「酒処・桃園」に対しての拘りは半端ではなかった。高順はあまり酒を飲まないので他の酒とどう違うか全く解らなかったが、本人曰く「他の酒よりも飲み慣れてる上に、いい酒でな。少し味が変わっただけですぐ解る。」それの何がいいのか解らないが、「味が変わればその良し悪しを判断できる。旨くなってればよし、不味くなれば一言言いに行く。あそこの主とも長い付き合いだ。ある程度わがままを通せるんだよ。」とも言う。付き合いというわけではなく、ある程度気心の知れた間柄というところか。そのあたりは自分に合う味にしてくれるから、と高順は解釈していた。しかし。だからって。「しくしく・・・何も殴らんでも・・・・・・。」「私はな、桃園の酒意外口にするつもりは無いぞ。無論、戦いの最中は控えはするがな。そういうわけだ、とっとと買って来い。」ほんっきで俺様主義だな。なにが「そういうわけ」か全然解らんし。自分で行けよ、と思うが正直に言うと小間使いなんだよな、俺。これ以上口答えしても全力で殴られるだろうし、痛いの嫌だから従おう。「解りましたよ。そうですねえ・・・3,40瓶あればいいですか?」「買い占めろといっただろう?まあ、あまったらそれはそれで構わん。帰還した後で飲む。」独り占めか、この人は。「はぁ。では行って来ます。」「おう、早く行け。」こんな緊張感の欠片もないやり取りを終えて―― 一晩たった今、丁原率いる6000の兵が上党から出陣しようとしていた。政庁の近くに軍勢が集結している。その軍勢のすぐ目の前に丁原と、数十人の親衛隊、そして高順もその中に混じっていた。側仕えに近いといっても高順はあくまでただの兵士であった。それが少し前に丁原に「今のままじゃ立場上都合が悪いだろ?だから今から親衛隊な。」とか通達されたのである。親衛隊の扱いで丁原の側にいるのは、彼が丁原だけでなく他の者から認められている、という事実があったし、丁原の小間使いという立場は言い換えれば個人秘書のようなものだ。それがいつまでも一般兵士のままでは、という丁原なりの配慮だった。肥料のことに関してもそうだが、簡単ではあるが学の無い兵士でもある程度数字計算できるようにしたのは他ならぬ高順だった。穏やかな性格でほとんどといってもいいほど人の言うことを聞かない丁原に(理不尽な暴力に晒されても)諌言、助言の類が出来る数少ない人物。そして、これはあまり知られていないことだったが・・・。武のほうでも割りと優秀な部類である。高順にとっては、軍に入ってからの訓練というものが温く感じる程度のものだったようだ。そう感じるのは彼が幼少期から体験した、母親の「マヂスパルタ」訓練が原因のようだが・・・。そのおかげか彼自身の武術は相当なものだった。母親からかなりの武才を引き継いでいたのかもしれないが、本人もそれ相応の努力をしているのである。最初はそのことを知らなかった丁原も正直に感心するほどの才だった。武の才覚に恵まれ、丁原に対して一歩も引かず諌言し、才知もあり、穏やかな人柄で万人に慕われる。間違っているかもしれないがこれが高順の周りにいる人々の、高順に対しての評価。ただ、それを後に聞いた本人は「過大評価過ぎる」と頭を悩ませる事になった。「全軍、集まりました!」丁原の副将である老齢の男が報告をする。その言葉に丁原は頷き、口を開く。「うむ。・・・皆、よく聞け。これより我らは晋陽方面へ向かう。皆もよく知ってると思うが、このところ賊の数が増えている。晋陽のほうでも幾度も賊を鎮圧するために出陣しているようだが、此度は数が多く、幾らかの村が占領されており・・・・自力で鎮定できない故、我らが出陣することとなった。」その言葉に兵たちは僅かに動揺し、ざわめく。晋陽は上党ほど規模の大きい都市ではないが、それでも相当な規模の兵力はあるはずだ。それなのに何故?それほど規模の大きい賊だというのか?兵士の動揺に対し、丁原は眼を閉じしばらく無言だったが「静まれ。」と、一言を発する。その発言だけで兵士たちは口を閉じ、姿勢をただし丁原のほうへと向き直る。「皆の疑問も尤もである。だが!!!恐れることは無い。数が多いと言っても烏合の衆。お前たちが日々行ってる訓練を思い出せ。我等が負けるはずが無い。負ける道理などありはしない。負ける要素など何1つ無い!」この言葉に兵士たちの表情が今まで以上に引き締まる。「全軍、騎乗せよ!」丁原が、高順が、兵士たちが。馬に跨り、槍を携える。「全軍、出陣っっ!!」向かうは北。晋陽と上党を結ぶ街道よりも大きく外れた村々。上党と晋陽を結ぶ街道より離れた村々。そしてそこから更に数理ほど南に、陣を張っている軍勢がいた。その陣には6千ほどの兵士が行きかい、夕餉の支度をしたり、陣幕を立てたりしている。一番豪華な陣幕に、いうまでもなく総大将の陣幕なのだが、その中で苛々としている人物がいた。「ああ、くそ。苛々する・・・・。」「まあそう仰らないでください。総大将がそうだと部下も不安になりますよ?」「あー、うるさいうるさい。…あのくそ太守め。自分の責任を果たさんとはいい度胸だ…!」そう言いつつ、陣幕の中で酒を煽る女性。そして、その女性を宥める若い男。女性は言うまでもなく丁原で、男は高順だった。なぜ丁原がイラついているのか?それは晋陽の太守に原因があった。数日前のことである。上党より出陣した丁原軍であったが、彼女らはあくまで「応援部隊」という形での出陣だった。何故かと言うと、これは晋陽方面で起きた騒ぎだからだ。丁原は并州の刺史である。并州は上党と晋陽の2都市を擁する土地の総称で、上党には丁原。そして晋陽にも、もう1人の太守が存在する。丁原は立場として「并州の責任者」という位置づけになるので、その太守よりも位が上ということになり・・・請われれば出陣はするのが当然なのだが血の気の多い彼女からすればむしろ望むところだったりする。するのだが、この問題はあくまで晋陽の問題だ。上党周辺の治安状況は、丁原が赴任した頃は盗賊の類が多かったものの幾度も征伐に乗り出し、その成果か今は割りとおとなしいほうだ。治安がよくなり生活も不安が少なくなった為、たまに出没するとしても近隣の村々に幾度か、という程度だ。しかし、今はその「近隣」というのが上党よりも晋陽側になっている。丁原もその辺りを憂慮して何度と無く賊討伐を早急に行うように指示をしていた。が、返ってきた返事が「我々も努力していますが何分にも賊の数が多く手出しもしにくくて…なにとぞお助けください」的な情けないものだったらしい。そんな情けない返事に対して「じゃあ応援部隊出してやるからどれだけ出して欲しいか言え。それとそちらが捻出できる兵の数も教えろ」と怒りを抑えつつ(ついでに胃の辺りも押さえつつ)また指示を出した。その返事が「賊の数も多いので出来るだけ多く出してください。こちらからは500くらいしか出せません。あと、見せしめのために全滅させてください」という、すさまじく自分本位というか面の皮の厚い内容だった。このあまりといえばあまりな内容に、丁原は本気で機嫌を損ねたのである。(出陣前に高順に当たってたのは、これがほとんどの原因だったりする。)合流してみたらしてみたで、当初500と言っていたにも関わらず、実際には誰も送って来ない。非常識なことに500を送るのも渋っているらしい。丁原がイラつくのも、無理の無いことだった。そのせいで当り散らされる高順や、親衛隊にとっては不運なことこの上ないのだが。「ところで、丁原様。」「ん、何だ?」酒を煽りつつ、丁原は投げやりに応える。「それ何杯目ですか、自重sいや、そうじゃなく。賊の規模とか、誰が先導しているかは知っておられるんですか?」「ああ・・・。一応な。賊の名は…なんと言ったか。えー…」「黒山賊。首領の名は張牛角、ですな。」そう言って陣幕の中に入ってきたのは丁原の副将。朱厳という名の老人だった。「これは、朱厳様。」拱手し、高順が出迎える「おい、治心。私が今言おうとしたことをだな…。」「ほっほっほ、申し訳ございません。齢をとると、空気が読めませんでな。」そこまで言って高順が椅子を用意したことに気がつき、「ああ、すまんの。…どっこらせ」と老人くさい言葉を口にしつつ座り込む。朱厳、字は治心。丁原の副将であり、齢60をゆうに超える老将。并州の勇者と呼ばれる人物だ。老人であるが、武才は全く衰えておらず、寧ろ老境に入ってからその技は更に磨きがかかっている、と言われる人物である。外見的には白い顎鬚をたっぷりとたくわえた好々爺で、穏やかな性格、普段の生活で声を荒げるようなところを高順は見たことがない。それでいて戦場では勇猛果敢、神速果断といえるほどの鋭さを見せ付ける。戦場指揮は当然の事ながら、得意の二刀流で眼前の敵を切り飛ばし畳んで行く。高順から見て上党で彼に適う者はいないだろうな、と思うほどの腕前だ。実際何度か稽古をつけてもらったものの彼に勝てた事は一度もない。いや・・・・・・自分の母親なら勝てるかも、と思ったのは内緒だ。丁原が物心つく前から仕えているらしく、彼女が唯一といっていいほど頭が上がらない存在である。まさに上党、丁原軍最強・最良の存在。「数は・・・・聞いたところだと3000程、とわしは聞きましたな。」「ああ、そうだ。あのくそ太守の報告ではな。」「丁原様、くそ、とは何です?くそ、とは。そのような言葉遣いは治して欲しいとあれほど申しておりまするに。」ああ、わかったわかった、と手を振りつつ丁原は投げやりに応える。「まったく、幼い頃はワシのことを「ちしん、ちしん」と呼んで後ろをついて来るほどの、それはもう眼に入れても痛くないほどの・・・」「あー!あー!うるさい!昔の話はするんじゃない!!!」「皆の者、丁原様も昔は可憐でなぁ。」「わーーー!!言うな、解った、口の悪さは治すから!それ以上言うなーーーーー!」「ほっほっほ、解ってくだされば良いのです。」回りにいる者はこんなやり取りは慣れているためか苦笑するのみ。高順も最初は「あの傍若無人な丁原様が!?」と驚きはしたもののもう見慣れてる光景だ。朱厳の横まで歩き「どうぞ」と言って酒と杯を差し出す。すまんの、と言いつつ話を続ける。「しかし、おかしなものですな。晋陽の兵力は総兵力で約7000。他の賊を鎮圧してる様子でもないというのに送ってきた兵士は皆無。」「ああ、おかしすぎる。…どうせ、私に厄介ごとを押し付けて、自分はのうのうとしてるとか、そんな程度だろうさ。こっちは6000出してるんだぞ?守備兵力除けば半数近く出してやってるんだ。くそっ・・・」そこまで言って、丁原はまた酒を呷る。「・・・ふぅ。守備に3000使おうが4000使おうが構わんがな。結局軍を送ってこないとは。職務放棄と受け取られても仕方ないだろう。」「ほっほっほ、丁原様の言うとおり、厄介ごとを避けて通りたいのでしょうな。」「まあ、構わんさ。奴のお願いどおりきっちり全滅させてから・・・・。」職務怠慢という責任を追及してやる、どこまでもな。と殺意も露に言った。(さすがに刺史になるだけあって、こういうときの迫力は凄いな。)高順たちは丁原たちのやり取りを横で聞くだけだったが、普段と違う迫力を見せる主君を頼もしい思いで見つめていた。夜が明け、丁原軍は当初の目的地である村の1つに向かう。斥候を幾度か放ったので、ある程度の数にも目星がついている。目の前の村と、その西と北にある3つの村に賊の痕跡あり。という内容だ。目の前にある村の周りでは賊の被害が出てなかったようだが、他2つの村の周辺では被害が発生している。もしかしたら、ここが賊の本拠かもしれない。ただ・・・進発する前の軍議だが、情報を掴んだものの、正直頭をかしげる様な情報がいくつかあった。「報告によれば目前にある村にいる賊の数は800から1000程度ということだ。装備も不揃いで、おかしなことに…女子供もいるらしい。」「女子供、ですか。妙な話ですな?」「ああ、妙だ。どこかから連れ去られてきたか?と思ったのだがな。どうも、その村で生活しているらしい。」「生活・・・?そこで自炊して、生活を営んでると?」「うむ。斥候に出した者も頭を傾げていたがな。もう少し詳しく言えば、男たちは武装をしているが女子供は強要されて生活を営んでるということではないようだ。」「つまり、彼らにとっては男はともかく、それ以外は普段どおりの生活をしている、といったところですか?」「ああ、住み慣れた土地に住んでいる、といった感じか。」「本拠地であれば、不思議ではないでしょう。しかし、聞いた限りでは賊とは縁のないような生活ですね。」その場にいた全員が考え込む。男は武装しているが、女性や子供といった非戦闘員は普段どおりの生活をしている?「1つ、よろしいでしょうか?」「ん、高順か。かまわんぞ。」「彼らは本当に賊ですか?賊であればその…堕落した生活をするでしょう?子供も殺し、女性には乱暴をする、とか。なのに、男性はともかう、それ以外はごく普通の生活をしているというのは・・・。」「だな、やはりそう思うか…。一度、自分たちで見たほうが早そうだな。」丁原は立ち上がり、軍勢の割り振りをしていく。まず、丁原率いる2000の兵で村に入る。その間に朱厳率いる3000で村の入り口を固め、逃げられないようにする。残りの1000は輜重部隊であるから直接的な戦闘には参加しないが、もしも襲われるようなことがあったとしても自衛できる程度の装備と能力はある。ちなみに、高順は丁原率いる第1陣に属する。彼らが賊であると判明すれば殲滅、賊でないと判断すれば何が起こってるのかということを詳しく聞く。大まかに言えばこんなものだ。「では治心よ、頼んだぞ。」「はは、お任せを。」こうして、丁原率いる第1陣が村へ向かった。村のほうでも、丁原軍が来たことを察知し、官軍が来たか!?とか、くそ、もう来やがったか!とか、女子供は家に篭るんだ!とかそういう声が飛び交う。村が騒然とした頃に、村にある一際大きな家から1人の少女が扉を開け、広場へとやって来る。まだ幼い少女だ。年の頃12,3といったところか。黒く長い髪を結い上げており快活な感じだが、服装は上品なもので、良家の子女を思わせる。「もう・・・・来た?」幼いにも関わらず、周りが慌てる中で唯1人落ち着いている。少女に気がついた周りの誰かが、危ないです、なにとぞ家にお入りください。と言っているが、彼女は聞いていなかった。「行かないと…!」少女は走り出した。後ろからお待ちください!とか何とか聞こえてくるが、聞くわけには行かない。こちらに向かってくる官軍―――誰が来たのかは知らないけど、話を聞いて貰わないと。同じ頃、村からやってきた数百人の男たちが思い思いの武器を手に取り、丁原軍の前に立ちはだかっていた。「くそ、この村に官軍は入れねぇぞ!」「そうだ、これ以上行かせるな!」など、随分と士気が高い。そして、武器をかざし丁原軍に威嚇を続ける。そんな光景にも丁原は恐れもせず、馬から下りる。高順を始め、親衛隊も馬から下り、丁原の周りを固めようとする。それを片手で制し、信じられないくらいの殺気を放ちつつ、「我が名は丁原!この并州の刺史である!賊がこの村を襲い、支配していると聞き討伐に来た!」と一喝する。その一喝だけで村の男たちは怯み、それ以上何も言えなくなってしまう。「そんな…俺たちは悪くないじゃないか…。」「そ、そうだ…。お前たちが悪いくせに…。」今までの威勢が嘘の様だった。「ほう、私たちが悪い、と?何がどう悪いのだ。詳しく言ってみろ。」「それは…それは」武器を構えてる一人の男が声を震わせて反論しようとする。だが、その後方からざわめきが起こる。そして、道を開けるかのように皆下がっていく。「む…。」こちらにやって来たのは一人の少女だった。少女が丁原の目の前まで進み、頭を下げた。「お初にお目にかかります、丁原様。どうか、皆の無礼をお許しください。」「ふむ、無礼か。」少女の謝罪を聞いた丁原から殺気が薄れていく。声色から、上辺や偽りで謝罪をしている訳ではない。そう感じたからだ。高順たちは警戒を解いていないようだが、こちらが指示するか、向こうから行動を起こさない限り無用なことはしないだろう。「いや、こちらこそ脅すような真似をして済まなかった。娘よ、名を聞かせていただこうか?」その言葉に安堵したのか、いや最初から恐れてもいなかったのか。微笑を浮かべ、少女は応える。「性は褚、名を燕と申します。丁原様。」~~~楽屋裏~~~どうも、あいつです。出ないようなことを言っておいて、あっさり出ましたオリキャラ。もうほんとごめんなさい。でもまだ1人目だよ?1人くらいならいいよね!?と、言い訳をしつつ。最後に出てきた褚燕はどうだって?さぁ・・・・?(笑白状しちゃうと、朱厳さんは後漢の将で実在した人物、朱儁がモチーフです。史実でも・・・・ゴニョゴニョ(ぉ高順の武力ですが、恋姫基準で言えば現状ではそれなりにあると思ってください。無双できるほどではありませんが、恋姫で出てくる男性として考えたら、もうあれです(あれって何1年も仕えれば、普通に高順の訓練を丁原さんも見たでしょう。その辺りまで書くと余計に長くなるかな、と思いまして省きましたが・・・・。でも書いたほうがよかったのかなー。彼が逃げないのは感想でも書きましたが逃げたほうが酷い目に合わされるから、と考えてるからです。実際こんな理不尽な人がいたら逃げますねwこの時代は兵士が逃げた場合、その家族に累が及ぶという時代ですから両親大好きな高順くんは逃げるに逃げれないのでしょうね自分で「兵士募集の立て札あったよ」と迂闊なことを言っちゃうから・・・wところで。今第7話くらいの途中まで書いていたのですが気づきました。「あれ?恋姫キャラ1人も出てなくね?」・・・・・・・。書き直しぢゃああああああああっっっ!!!(涙てなわけでどっかに恋姫キャラ押し込むために書き直し中。こんな作品に期待してくれてる人はあまりいないでしょうがもう少しお待ちくださいませ(涙ご意見・ご感想、お待ちしてます。