【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第122話「隊長、劉備達を通しましたが・・・私達はどうすればいいのでしょう」劉備軍が西に向かってから数時間。楽進は高順にそんな事を聞いていた。「どうすればって?」「私達の役目は本陣より東に移動して後方を守る事です。このままここに張り続ける、という認識で構わないのでしょうか」「うんにゃ。孫権殿は劉備らに備えさせるつもりだったんだろ。けど、時間経過が不利どころか有利になると判ったんで、適当な足止めをさせる程度で済んだわけだ。」「は・・・と、言う事は」「ん、このまま陣を引き払って俺達も西に行く。何かあったら劉備軍の後方から突撃を仕掛ける、くらいは考えておいてくれ」劉備が通り抜けてから、高順隊は自分達の陣所の片づけを行い兵を西に向ける。高順は(戦闘にはならんだろうけどね)と踏んでいるし、もし戦闘になっても負けはすまいとも思っている。劉璋がそこに兵を出してくれば辛いが、何とかはなるだろう。その代わり、こちらも一度兵を退くくらいは有り得る訳だが。そこまで悪い事にはならんだろう・・・と多少楽観しつつも、高順は「あれ」の用意をさせるのであった。それから更に時間が経過。ついに(?)孫権と劉備の会談が実行される事となる。「・・・」「・・・」孫権、劉備。両者の気まずい沈黙が、陣屋を支配している。高順に対しては部下を遣わせただけの劉備だが、孫権相手ではそうもいかずに自身が兵(や諸葛亮、張飛)を伴って出向いて来ている。孫権も甘寧に呂蒙、黄蓋らを筆頭にした武将連も集めての話し合いだから、孫家としてもこの会談を軽視しているわけではない。一応、成都へ行く為の話し合い、という名目な訳だが・・・これは話し合いと呼べるようなものでもなかった。劉備は「成都に行くから道開けろ」。孫権は「何で開けてやる必要がある。その前に何故成都へ向かう、理由を話せ」と、至極当たり前の疑問をぶつけている。これで嘘を言うわけにも行かないので、劉備は素直に「劉璋さんを助けに行くんです」と話した。諸葛亮も「北方の張魯という人に攻められて困ってるというから、私たちが救援に向かうんです。納得していただけますよね?」と続く。「それは構わないわ。ただ、我々は現在交戦状態にある。それを途中から来て道を開けろ、というのは横暴では?」「むぅー。そんな事を言われても知りませんよ。私たちとしては劉璋さんが滅びたら困るんです! 折角ここまで来たのに、引き返せって言うのが横暴じゃないんですか」「交戦していると言っているでしょう、劉備。貴方達が劉璋に味方をするなら、孫家はそれを盟約破棄と見なさなければならない」「じゃあ、講和しましょうよ。劉璋さんと話し合いをして・・・」虫のよい事を言う劉備を、流石に我慢できなくなってか黄蓋が立ち上がって声を荒げた。「自身に都合の良い事ばかり抜かしおって・・・」「黄蓋、座りなさい」「しかし権殿!」「良いから座りなさい」「・・・ちっ」露骨な舌打ちをしつつ、黄蓋は座る。孫権の傍に控える甘寧も斬りかかってやろうかと言うほどの殺気を膨らませていたが、劉備はこれに怖じていない。むしろ、心中でペロリと舌を出しているくらいだ。「悪かったわね。でも、彼女のいう事も事実よ。劉璋と何を話せというのかしら?」「んふふー。劉璋さんはきっと「取った土地を返せ」と言うと思うんです。それが講和条件、って」「ふん・・・?」「ですから、返しましょ? 今まで孫家が不当に取った土地を劉璋さんに返して軍を退く。良い案ですよね?」これには孫家の武将たちも我慢できず、一斉に立ち上がろうとするがそれすら孫権は「静まりなさい」と制する。「しかし!」「静まれと言ったのよ・・・しかし、不当、ね・・・」「不当です! 大体、劉璋さんが孫家の方々に何かをしたんですか? これって侵略じゃないですか。だから不当という言葉も間違いじゃないです」「我らが盟友である孟獲の民が攻撃され浚われ非道な仕打ちを受けた。その条件が噛み合って交戦に及んだのだけど。それでも不当かしら」「それはそちらの都合です。孫家の方々には退いていただき、不当に取得した土地も全て劉璋殿に返還、という形で私たちが話を付けたく思っているのです」(このっ・・・)諸葛亮の態度になんとか冷静を保とうとする孫権だが、実際は甘寧同様劉備に斬りつけたい衝動に駆られている。自分達の都合は押し通そうとしてこちらの都合は「知らない」の一点張りで押し通すつもりなのだ。が、孫権はここで怒っては相手の思う壺という事も理解している。話の折り合いが付かなければ「孫権はこちらの言い分に耳を貸さなかった。仕方ないので押し通る」とか言いだすだろう。だがまだだ、まだ。と孫権は無理やりに怒りを押さえつけていた。また、劉備と諸葛亮もこの時点では内心は冷や汗ものである。自分達が自分達に「だけ」都合の良い言い分を押し通そうとしているのは百どころか千も万も承知である。良い手とは言えないが、少しずつ少しずつ条件を緩和して最良とは言えなくても、出来るだけ良い条件での落とし所を探らなければならない。そして、これが長々と続いたせいで、話し合いと呼べない代物である、という事になる。こういった話は両者が得をしなければならないものだから。本来は格が下の劉備が譲らなければならないのだが、劉備は「孫権よりも自分が上」と言う認識がある。名目上と言うけれど荊州の支配者という立場である劉備と、孫策の妹であってもあくまで方面軍の大将でしかない孫権。かなり曖昧であるが、この状況では自分が上という認識で会談に臨んでいるわけだが、その劉備には最後の一手があった。彼女の最後の一手こそが、孫権・・・いや、高順の「読み」である。「んもう、我侭ばかり! そんなにこちらの条件を聞き届けて頂けないなら・・・」そこで、伝令が「失礼いたします」と陣屋に入って孫権の元へと駆け寄って何事かを呟く。「ん、解ったわ。陣屋に入れてあげなさい」「はっ」その伝令は陣屋の外で待っている人々の元へと向かい、暫くしてから高順・周倉・趙雲が陣屋に入って来た。「お邪魔しますよー。」(うわっ・・・)高順が部隊ごと自分達の後に尾いている事は知っていたが、ここまで来るか、と諸葛亮も劉備も嫌そうな表情であった。張飛だけは「おー、高順なのだ」と暢気なものである。時間が空いたとはいえ、すぐ後ろにいただけあってここまで来るのに時間はかかっていない。彼らはこの人数で劉備軍のど真ん中を堂々と突っ切っているのだが、ともかく。高順は飽きもせず下座に自分の席を探し歩き、「貴方はあっちだろ!」と各武将に駄目出しされ、あと趙雲らに引っ張られて「あ~う~・・・」と渋々上座の方へと向かわされる。黄蓋が「隣に座れ」と席を空けたので、これまた渋々従って座る。「お主、もう少し自覚せぃ・・」「うぅぅぅ。でも、自惚れるよりは良いと思いんです。「いやお前は少し自惚れろ」「まったくですな」「・・・隊長が自惚れるというのはあまり想像できません」「別にいいんじゃね?」・・・それで、お話は何処まで進んだんですかね?」「私から説明致します、高順殿。劉備殿は劉璋に頼まれて張魯との戦いに向かいたいと仰っています。」呂蒙の言に、高順は「ほー」と相槌を打つ。「劉璋が滅ぶと自分達が困るから、包囲を解き不当に奪った土地を返還という条件で、向こうと此方の講和を計りたい、とも」「はぁ? なにそれ阿呆ですか? 何処の馬鹿ですかそんな事考えたの。」「!?」(言っちゃったよこの人・・・)ある程度劉備に遠慮して誰も言わずにいた事を、高順はさらっと言ってしまう。これに隣の黄蓋は「ぷふっ!」と噴出していたが。「何で勝ってる戦を放棄してやらにゃならんのです。劉備殿の都合こそ、こっちは知ったことじゃないですからね」そんな不当な言い分を聞くつもりじゃないですよね? と高順は孫権に向き直る。無礼な態度に見えるが言っている事はまともだし、咎めるほど酷いものでもない。「当然よ。それともう1つ・・・こちらが言う事を聞かないなら考えがあるとも言っていたわ。それを聞かせてもらえるかしら?」「・・・あっ、そ、そうだった。ごほんっ。えと、このまま蜀を奪うつもりなら、私は山に入って隠遁しちゃうんですから!」多分、前会話を微妙に忘れてたらしい劉備の、しかしぶっとんだ発言に孫家側は凍りついた。『・・・何・・・だと・・・?』「良いんですか? 私達は孫家にとって同盟者。共に曹操に立ち向かう仲間なんですよ?」「む・・・」この孫家の反応に劉備らは(やった、上手くいった)とこっそり心の中で笑んでいる。劉備の戦力は小さいが不要と言うほど酷くもない。まだ自分達が孫家にとって幾許かの利用価値があるのなら、それを無闇に捨てる事をしない、と諸葛亮も龐統も一致した考えを持っている。また、食糧事情は厳しいが、話を長引かせば劉璋に対して時間を与える事に繋がり多少なりとも恩が売れる。こうして、相当飛んだ事・・・どう見ても受け入れがたい提案をしておき、少しずつ落とし所を見定めるというのが取り得る少ない手段である。(これには流石の高順さんも焦るよねっ。今まで随分してやられたけど(漏らしたとか含めて)今回ばかりはこっちの・・・あれ?)周りの反応に比べ高順は「あっそ、ふーん」みたいな感じで何1つ驚きもせず、平静そのもの。その周りも、驚いてはいるものの劉備にではなく高順へと意識が向いているようにも見えたが、これは当然であろう。何せ、高順は劉備が今言った事を前の軍議で「こんな事言うと思いますよー」と、ほぼ同じ事を教えているのだ。(何だろう、思ったのとは違う反応・・・朱里ちゃん、これってどういう事なのかな・・・?)(わ、解りません。)言い出した側の2人も、思っていたのとは違う反応に少し戸惑っているらしい。無言の時が続くも、皆と同じく高順を見つめていた孫権が「・・・んん。」と咳払いをした。「山に入って隠遁、ね。我々がそちらの言い分を聞かねば、それを実行するの?」「え、ええ勿論です!」「考え直してくれ、と言っても無駄なのね?」「当たり前です!」「どうしても?」「はい♪」「そう・・・仕方が無いわね」孫権は目を閉じ暫く考えるような素振りを見せ、劉備と諸葛亮は(やった♪ これは良い条件を呑ませることが出来るかも)と期待を抱く。少ししてから孫権は立ち上がり命令を下す。「全ての関係者に通達しなさい。我々は・・・」(うんうん♪)すぅっ、と息を吸ってから、孫権は結論を述べる。「劉備の隠遁を認める!!!!」「・・・・・・。・・・えっ?」「残念だけれど早くお姉様にも伝えなければ」「えっ? えっ?」「その事ですが孫権殿。既に手はずが整えてありましてね。後は馬を駆けさせるだけとなっております」「えっ? えっ? えっ?」「完璧ね、高順」「感謝の極み」このやり取りに、事情を既に理解している趙雲らは先ほどの黄蓋と同じように無理やり笑いを堪えている。彼女たちは高順の後ろに控えており、この状況で趙雲を連れてくるのはやりすぎ、というか勿体無いレベルだが、何らかの事情で張飛が暴れ出した場合に備えての事だったりする。「いや、ちょっと待ってくださいよぉ!?」「何? 隠遁なさる劉備殿?」これには流石の劉備も「うぐっ」と言葉を詰らせる。「じゃない、「解った」って言うなら後は当然「軍を退く」って続けるべきなんじゃないですか!?」「意味が解らないわ。高順も言ったけど勝っている戦を放棄する理由が無い。何よりも、私は止めたでしょう? 考え直して欲しいとも言った。それでも翻さないと言い切ったのは?」「はわわ・・・え、えぇと、それなら」何かを言いかけた諸葛亮だが、ここで呂蒙がポンと手を叩き「そういえば」と横槍を入れてきた。「高順殿。南中から送られる援軍の規模はどれほどでしょうか?」「ん? ・・・あ、あー。援軍、援軍ね。」「万を超える数、とは聞いておりますが・・・?」(ま、万を超えるって!)おもいもがけない部分からの援軍という言葉に、劉備達はギクリとしてしまう。「超えますね。必要だと仰るなら派兵を増やしてもらうようお願いしてみますか?」「そうですね・・・南中の方々は高順殿の頼みなら、多少の無理をしてでも聞いてくれるでしょうけど、今は無用でしょう。我々とは同盟を結んでいるとはいえ、無理をさせる事は出来ません」(うぇぇ・・・孫家と南蛮って同盟してたとは聞くけど、そこまで・・・)呂蒙は横槍を入れたが、これは自棄になった劉備や諸葛亮がおかしな行動・言動を取らないように先手を打っただけの事だ。こちらにはまだ頼りになる盟友がいるんですよ、と聞かせ、その兵力も馬鹿に出来ない・・・劉備には手が出しにくくなる事実を口にして一歩引かせた、といったところか。これらの事もあり、劉備は隠遁発言を取り消す事となる。微妙に自身の評判を落としただけであったが、そんな彼女に孫権は「孫家の邪魔をせぬなら入城しても良い」と、ある意味では破格の条件を提示、劉備もこれに同意して無傷の軍勢を入城させる事に成功する。が、成都の食糧事情は知らされていないし、先ほどの条件に「ただし」といくらかの条項が付け加えられた。劉璋が成都を孫家に引き渡し北へ行く事。兵士や民を連れて行くのは構わないしそれらを養う為の食料持ち出しも問題ないが、財物など民に還元するべき物の持ち出しは許さない。この条件を呑めば劉璋と一時休戦もする事。返答期限は2日。返答の引き伸ばしは認めず、そちらからの条件提示も認めない。これらの条件を呑めば良し、呑まぬなら包囲攻撃を行う。おおまかに言えば、成都引き渡して逃げれば一時的に見逃してやんよ、という脅迫だ。これさえ達成できれば孫家としては目的達成と言えるのだから、本当に休戦でも構わない。劉備側も劉備側で「呂布」という手札を切ろうとしていた。高順には知られないように隠していて、しかもこの戦場にも連れて来ているが、やはり表立ってその存在は出されていない。最終手段とも言える手札だが、しかし南蛮の加勢で孫家の軍勢がこれ以上増えるとなると・・・と、諸葛亮はあっさり見切って手を引く事にした。一応、入城は出来るのだし、それさえ達成できれば良いわけだ。ただでさえ呂布のせいで食料が大変なのに、戦闘をしたら更に消費が早まる。孫家の用事を伝えてしまえば、後は何とでもなる。多少力技(呂布を連れているのはこれが主目的)で益州を奪ってしまえば、孫権とて自分達と争う姿勢は見せまい・・・そんな打算もあって、ここで手打ちと相成った。そうやって、心なしかションボリして自陣へ引き返していく劉備勢。そんな劉備に「劉備殿ー」と後ろから声をかける男がいた。高順である。話し合いが終わってから直ぐに追ってきたのだろうか。「うわっ・・・な、何か御用ですか」この人が関わってくると碌な事にならない、という警戒心から劉備は半歩後ずさるような動きを見せる。高順としては「お互い様だろう」と苦笑したくなる反応だったが「ええ、用事です」と気にせず話を進める。「劉璋にこれ渡して置いてください。」高順は一つ小さい樽を劉備に渡す。先ほどの陣幕では所持していなかったので、その外にでも置いていたのだろう。「はぁ。」と答え、(これ、多分塩漬けにされた首が入ってるんだろうな・・・)と、劉備はすぐに張飛に「これ持っててね」と回した。「で、渡すのは良いですけど報酬はあるんですよね?」「受け取ってから報酬ですか。良い性格ですね」「はい♪ 皆から「とても性格が良い」って褒められます♪」なるほど、と苦笑してから、高順は「じゃ、報酬を」と言い置いて話し始める。「孫家としては、成都さえ獲れればそれで良いんですよねー」「はぁ。」「綿竹辺りまでは押さえますが、そっから北の事は知ったこっちゃないんですねー」「?」「付け加えると、そっから北で起こるであろう戦には特に介入しないという方針みたいですよー。休戦したら、向こうが手を出すまでは知らん振り」「えっと・・・それが、報酬?」「ええ。まだ孫家の殆どの人が知らない情報を、そのままそっくり、しかも貴女の陣営に有利な情報を差し上げたんです。さっきの渡し物も後々有利に働くかな? これ、報酬としては破格だと思いますよ?」「・・・良い性格ですね」「ええ、よく言われますよ。まあ、貴女が劉璋をきっちり口説ける事を期待してます。」「良いんですか? 私が劉璋さんと連合するかもしれないんですよ?」「無理ですね」「言い切りますね・・・理由を聞かせて欲しいです」「んー・・・まあ、報酬の一部として良いか。・・・死ぬよ?」「えっ?」「向こう、食料少ないから兵士が空腹になって動けなくなる。そこに5万の兵を足すとどうなるかな。それに、一度に5万も増えれば兵の置き場所にも困るでしょう」『・・・・・・え、ええー!?』そんな、成都ほど大きな都市ならきっちりと食糧備蓄してますよね!? と諸葛亮と劉備は高順に詰め寄ってくる。「俺に言われても知りませんよ。向こうの食糧事情は細作に任せて聞いただけですし」「そ、そんなぁ」「それでは劉備殿・・・御機嫌よう(ニヤリ」「!!!!」な、あ、あ、あ・・・と絶句する劉備らを放置して、高順は陣幕へと戻って行った。「大将、あんなこと教えてよかったのかー?」「構わんよ。いずれ解る事実を事前に情報として教えただけで痛む懐も何も無い。意図を理解したところで、向こうが取れる手段が限られてるわけだしな」「はー。休戦しようとしまいと奴らが北に向かった瞬間孫家が勝ったも同然って事かー」「劉備陣営の食料も少ないでしょうしな。北に向かうという選択を取らざるをえない。後は猛烈な食い合いになるでしょう」「加えて、劉璋と休戦するといっても劉備と休戦するという約束もしていない。盟を結んでいるといっても、脆弱な絆ですね・・・隊長、貴方は本当にお人が悪い」「それを俺に言われても・・・取り決めをしたのは孫権殿だし」劉備は劉璋と北へ逃げて劉璋が追われるか殺されるかで決着が付く、それはまず不可避だ。その後は奴らが魏への盾になった状態で・・・恐らくは漢中辺りまで取り、そのまま魏と消耗戦になる。(そこいらの展開もほぼ史実どおりになるかな。けど、今の状況で夏侯淵さんを討てるのかねぇ、あいつら。)劉備軍の成都入城後、孫家は予定通りに成都を包囲。そのまま2日間は劉璋からの返答を待って攻撃はせずにいた。さて、劉璋側と言えば劉備の来援を喜んだのも束の間、孫家からの脅迫を聞いて直ぐに会議が開かれた。殆どの臣、あの戦いと酒こそ人生と言って憚らない厳顔ですら「成都放棄已む無し」(篭城するだけの食料が無い為。もし孫家と戦うなら張魯を降してから、という考え)を主張したが、劉璋は「財物の持ち出し不可は認められん」と、当初そこだけは譲らなかった。が、しかし。劉備が「こんなの預かったんですけど」と樽を渡し、劉璋がその中身を確認したところ。「ひぃぃぃぃぃっっ!」と、彼は座っている椅子から転げ落ちて、尻餅をついたまま樽を指差して震えている。周りの者は「客将の前でそこまで狼狽するなよ・・・付け込まれるぞ」と思うしかない。何が入っていてそこまで驚くのやら、と厳顔が樽の中身を見にいけば。「何じゃ・・・楊懐の首か。む、口を塞がれておるな」樽の中には、塩漬けにされ口を縫われた楊懐の首。景観の一部とされたが回収され、このような末路である。口を縫う糸を小刀で切り取ると、中には彼の陰茎と思われるモノが詰め込まれていた。更に、樽の中に木簡が1枚差し込まれている。厳顔はそれを拾い、塩を払って「何々・・・」と読んでいく。「「自国、それどころか他国の民にまで無残な仕打ちをする者は、この楊懐らと同様の末路をたどると知れ」・・・江州の奴ばらと同類、というのは」「うっ」厳顔は厳しい表情で劉璋を見やる。彼女は、楊懐らが裏でどれだけの事をしていたか詳しい中身までは知らない。散々酷い事をやっていた、という事だけは知っていて、劉璋もそれを見逃していたという事も知っている。南蛮の少女を鞭やら何やらでいたぶり虐待していたり、嬲ったりという噂も絶えない。周りが知らないところで金なり貰ってそういった裏事を容認していたのかもしれない。楊懐の首と、それに添えられたこの言葉。これらで劉璋が酷く怯えているという事。(この木簡を書き送ったのが孫家の誰か知らぬが。ふんっ。劉璋のクソボウズめ。自ら「同類」と認めたも同然よな)証拠さえあれば最初からぶん殴ってでもやめさせていたがなあ・・・憤懣やるかたない、といった風情の厳顔は劉璋に「・・・して? どうなされるおつもりか?」と判断を求める。劉備らの目の前でやる事ではないが、少しの時間も惜しい。権力争いなど後でやれば良いわ、といった風情である。(ねえ、朱理ちゃん、さっきの無残な仕打ちって何のことかな)メッセンジャーの役目を果たし一応賓客の立場で迎えられた劉備は、この状況を見て、脇にいる諸葛亮にヒソヒソ声で話しかける。(うぅん・・・どうも、楊懐という人がやった事らしいですね。劉璋さんが酷く怯えているのは・・・恐らくですが、通じていたのではないかと)(という事は)(はい、どんな行いかはともかく劉璋さんの家臣団に付け入る隙が増えました。これを詳しくは知らない人が多そうですし、使える話題です)(許せないなぁ・・・民に手をかけるなんて、言い訳できないよ?)(だからこそ、付け入る・・・あ、高順さんの言った「後々の有利」って、これの事かも。あの人、どこまで本気でどこまで冗談なのか解らない事を言うけど、おかしいくらいに状況見透かしてるね・・・)(彼を経由して「無残な行い」を知っていたから、孫家が退こうとしなかった・・・という事情があったのかもしれません)(でも、これで有利になったよね)(はい。後は雛里ちゃんと、こちらへの旗幟(きし)を鮮明にしている法正さん・張松さん・孟達さんとの連絡を密にして家臣団の切り崩しにかかります)(うん、お願いね♪)今後の事を協議している劉璋達と、表向きのほほんとしている劉備達。これから主導権の奪い合いが始まるというのに酷い温度差である。最終的な条件として劉璋は孫権に「国庫にあるものは持ち出さないが私財は持っていく。ついてくる物は兵士・民問わず攻撃をしない。残された民の事は宜しくお願いする」と、案外物分りのよい物を提示した。当初の条件以外は認めないとしつつも「これなら然程問題は無いだろう」としながらも「奴隷などは人的なものは財貨として認めない。また南中軍が向かっているが、彼らはお前達に容赦するとは思えないぞ」と付け加え、余計に恐怖した劉璋はこれを受諾。もし受諾しなければ、投石器が活躍しただろうが、向こうが出て行くのなら民衆にも都市部にも被害が出ないのだ。それに越した事はない。孫権軍は、劉璋軍と兵の家族らが北に落ちていくのを(大分時間がかかったが)確認してから成都へと入っていく。この時に民衆が「孫家が乱暴であったらどうしよう、食料も無いのに徴収とか言い出さないだろうか」と混乱・恐怖していたが、孫家軍は直ぐに炊き出しを開始。兵士に乱暴狼藉をせぬように、もし破れば厳罰を以って処断するとも伝えてあり、大多数の兵士がそれに従っていたので、然程混乱が広がることも無かった。この後に南中軍も成都に入り、劉璋や劉備が攻めて来ても対処できるように、と態勢を整えていく事になる。成都入城が決まったとき、孫家の面々は喜んでいたし安心もしていた。劉璋が思った以上のボンクラで助かったと言っても良い。劉備が合力していれば厄介ではあったし、一丸となって孫家に攻めかかってくれば苦戦もしただろう。その場合騎馬隊も投石部隊も役立っただろうが、それらを同時に所持している高順隊としてはあまり歓迎できない話だ。城内に投石しろとか火付けをやれとか、食料以上に直接的な手段を使わずに済んで助かったよ、と高順は別の意味でも安心していたのだった。~~~番外編、劉璋さんはどうやって脱出したの?~~~成都城内にて。「さあご主君、参りますぞぉ」「ちょっと待て、離せ張任。一体何処に・・・おい柱の上下を蹴り飛ばして・・・はあ!?」(長大な柱をぶん投げ)「ほっほっほ。これで先に梓潼まで行くですじゃあ! しっかり掴まって下されー!」どこぞの暗殺者の如く、投げ飛ばした柱に飛び乗る張任。当然、劉璋を引っつかんだまま。「どうやってだ! お、おい・・・のぉぉぉぉぉぉぉっっっ・・・」劉璋は張任に掴まれたまま、北の空へと消えていった。「・・・。大丈夫なんですか、アレ」「ワシに聞くな。」総大将不在で撤退軍を任されてしまった厳顔は呆れ、疲労しきった表情で答える。・・・・・・こんなだから、余計に手間がかかるのでは? と思われるがそれは秘密。後に梓潼付近で地面に突き刺さっている柱と、地面にぽっかり開いた2つの穴を発見される事になるが・・・それが何なのかは誰も考えないことにした。~~~楽屋裏~~~大体ドラゴンズドグマのせいです。遅れまくってごめんなさいあいつです(挨拶劉備の隠遁云々はどうも実話のようですね。で、これを認めちゃうのは、同盟者としての劉備が不安定で頼りになるか判らない+馬騰さんがいるから、なんでしょうね。劉備勢は期待されてないのだと思います、やはり前科があるだけに・・・。馬騰さんが西涼奪還に動けば、高順一党が全力支援に入るのが簡単に予想できますし。あと、こんな簡単に成都明け渡していいのか、と言いますと・・・まだ篭城可能な兵糧を所持して、官民が劉備に対抗する意思を示しているのにあっさりと降伏した、という正史・演義の劉璋さんの駄目っぷり発揮と思ってください。こっから先の流れは孟節さん達が来て、劉璋の残した南中捕虜全て奪還した・・・くらいですかねえ。このあたりまで書くと遅い筆が更に遅くなるので勘弁してくだしあ;;さて・・・P4Gやるか(ぉぃ