【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第103話。「と、言うわけで貴方に行ってほしいのよ」「いや、何が「というわけ」なのか・・・」寿春、太守の間。ここには孫策、周喩を初めとした孫家の主将、馬家・高順一党など、主要な面々が勢揃いしていた。集まった理由は・・・劉備が敗走し、曹操が荊州を制した。この情報が入ってから直ぐに、孫策と周喩は協議を重ね「劉備を支援する」事にしたのである。馬騰を初め、孫権らも反対。高順も反対しようとしたが「華雄姐さんがいるからなぁ・・・」と、表立っての意見がしにくい立場であった。「大体、孫家単独でも曹操と争うことは可能でしょう。何故劉備の手を借りる必要があるのです?」馬騰のこの意見に周喩も「尤もです」と応対しながらも理由を話し始めた。「まず、劉備は江夏に逃げるでしょう。そして我々に助けを求めています。我々には助ける理由も義理もありませんが。」「それが解っていて・・・何故?」「孫権殿。劉備が孫家を利用しようとしているのは良いですね?」「え? え、ええ・・・」「我々は、確かに単独で曹操と戦えます。ですが、まだはっきりと戦うという意思表示は出していません。そして、曹操の狙いは明白ですが、向こうも孫家と戦うという意思表示もしておりません」「え・・・?」「現状ではあくまで曹操と劉備の戦いなのです。となれば、劉備がどんな理由で助けを求めてきたのか?」「・・・。孫家を、巻き込みたい?」ええ、と頷く周喩。彼女は間違ったことは言っていない。開戦の意思はあるが、それを孫家という勢力は何処にも表明してはいないのだ。曹操にしても同じ事で、そのつもりではあってもただ「南征」という曖昧な表現のみを使っている。「我々を巻き込み、曹操との戦いに利用し、自分達は・・・そうですね。南荊州辺りに攻め込んで地盤としたい。劉備の思惑としてはそんな所でしょう」「軍師殿。それを解っていて、それでも劉備を助けると・・・?」甘寧の言葉に、周喩は「ふっ」と笑う。「だから、利用し返してやるのさ。」『???』「奴らは南荊州を攻めたい。だが、それには戦力が要る。最低でも2万か3万くらいの兵がな。そして、今現在・・・というか、江夏ではそれだけの戦力を保有していると私は見る。」「私達を盾としようとするなら、逆に盾にしてやる、ですねぇ~。」「盟を結んだとて、こちらが向こうの要請に乗ってやるという形になりますね。立場の上下で言えば、孫家が上。こちらの要請に劉備殿は逆らえない筈です」周喩の言に乗るかのように陸遜と呂蒙、孫策も続く。「あいつらが戦力を隠しているのならそれを理由に滅ぼしてもいーのよ。素直に従うのなら、南荊州の一郡や二郡くらいくれてやるわ。曹操への盾として、ね」これらの言葉に、武将たちは顔を合わせる。「他の狙いもあるさ。一応、我々としては戦う意思がある。しかしながら、この意思が一致しているわけではない。主戦・非戦に意見が分かれている。」特に、孫暠様一派が厄介でな・・・と周喩は溜息をついた。「ふむ、だから自分たちは巻き込まれる形であっても戦うしかない、仕方ないから戦う、という方面に持って行き、なし崩し的であれ意見一致を図る・・・ですね?」「そうです、馬騰殿。貴女や高順にとっては劉備は気に入らない存在でしょうが、曹操と戦う事には反対いたしますまい? 巻き込まれた、ならば漢王朝に対して積極的に敵対したという形にはなりません。どんなに弱い理由といえ、理由の1つくらいにはなるのですよ」「・・・成程。気持ちとしてはそう思い込めれば楽ですね。ならば、私は軍師殿に従いましょう。」「ありがとうございます。他の者はどうか? 意見が有るのならば忌憚なく言ってくれ」周喩は集った面々の顔を見渡して言う。そこで、高順が手を挙げた。「高順。意見を聞こう。」「俺としては反対したいところですが・・・ま、良しとします。それで? 誰が話を付けに行くのです。それに、劉備が曹操に追いつかれている事だって考慮するべきですよ」「既に人選は決めてあるさ。話を付けるのは魯粛。部隊を率いるのは高順、お前だ。」「・・・」「・・・。」「・・・・・・」「・・・? 何だ?」「・・・e? oreですか?」「ああ。お前だ」頷く周喩。それに対して高順は全力で頭を振った。「・・・い、嫌ですよ絶対! 何で俺? 何で俺なの!?」「大事なことかも知れんが何度も言うな。・・・考えても見ろ。孫家で一番機動力がある部隊は? そしてそれを率いるのは?」「高順よね。」高順が答える前に、孫策が答えた。「あの」「馬騰殿と、西涼軍は使うわけには行かん。同盟者を使いに出すわけが無いし、馬騰殿も嫌がる。船? 既に軍船として使える船は収集をかけて集めている。一隻でも無駄にはできん」いきなり選択肢を潰されている高順である。「と、言うわけで貴方に行ってほしいのよ」「いや、何が「というわけ」なのか・・・」うう、選択の余地無しか・・・と高順はがっくりと肩を落とした。「意味が無い訳ではないのさ。「助けてやった」という貸しを作ることに十分意味がある。それは理解してくれるだろう?」「それは、まぁ。」「我々の手札で強力な一枚を切った。高順隊という孫家に於ける最強の陸戦力を場に出した、という事を教えてやれば良い。それだけ孫家は劉備の力を評価して結ぼうとしている、と誤解させてやれ。」「誤解か・・・周喩殿も人が悪いですね」「ふ、そうでなければ軍師などやってられんさ。・・・頼めるな?」頼めるも何も断れる空気じゃないでしょうに、と嫌そうにぼやいてから、高順は「解りましたよ、行けばいいんでしょ」と投げやりに答えた。「すまんな、お前にとっても因縁のある相手だが・・・お前の部隊全員を連れて行ってくれ。劉備と揉め事は起こすなよ」「無理。」颯爽と言い切る高順であった。~~~後日~~~昨夜、馬超が「私も付いて行きたい!」と駄々をこね出したが、未だ騎馬隊の練兵が済んでおらず、それは却下された。味方として共に肩を並べて戦いたいという願望があったようだが、母親である馬騰に諌められて「次の機会に」という事になってしまった。彼女は出立時に見送りに来てくれて「絶対帰って来いよ! 約束だからな!」とエールも送ってくれたのだが・・・高順の頭上を、大量のカラスの群れが飛び去っていき、いきなり嫌な予感満々であった。高順と共に行くのは趙雲・楽進・沙摩柯・周倉。それに兵士6千弱と魯粛である。「いやー、頼むぜ、旦那!」「ああ、うん・・・ま、何とかなるよ、きっと・・・」魯粛に肩をバムバムと叩かれ、高順はやる気のなさそうな声で応対した。「つうても、俺の馬術じゃ皆さんにゃ付いて行けんよ。手加減してくれよな?」「手加減できるもんじゃないと思うけどな。急いで行け、みたいな感じだし。」こんな軽口を叩きつつ彼らは江夏へ。昼夜兼行で高順隊は疾走して行く。途中で江夏に立ち寄るも、劉備らは到着していなかった。仕方なくそのまま通過。その頃の劉備。彼女達は、心ならずも民衆を曹操軍への盾とする事で逃亡している。荷物を持った民衆と馬に乗った劉備が同等の速度で進むことは出来ない。どうしても劉備のほうが足が速いからだ。かと言って、歩測を緩めることも出来ない。劉備が先頭で逃げないと話にならず、また曹操が民衆に対して攻撃をしない保障も無い。劉備は民衆を犠牲にしてしまっている結果に、泣きつつも前を見据えて進んで行く。劉備に付き従うのは・・・武将は関羽や陳到、そして諸葛亮を初めとした文官連である。呂布と陳宮もいるが、彼女達はここでは特に働きが無い。武将の中には張済・張繡兄弟もいるが、どちらかと言えば彼らは董卓の護衛官のような扱いである。いないのは張飛と華雄(と徐栄)のみである。これらは2百ほどの騎兵と共に、長坂橋を未だに越えていない民衆の守備に当たっている。先行している劉備と、後続の張飛とで随分と距離が離れてしまっているが、この後続は老人や子供といった長旅をするには些か辛い集団だ。それら両方を守らなくてはならない。だから余計に足が遅いのだが・・・そんな劉備軍だが、先頭を進む劉備とその近臣は自分達に向かって進んでくる一団を発見していた。「あれって・・・何、かな。」劉備が指差す方向を見て、関羽が目を細める。砂塵が舞っており、こちらに何かが近づいているのが解る。あの早さから考えて騎馬隊だろう。「あれは・・・」「て、敵でしゅか? でも、回り込まれるような状況では」背の低い諸葛亮には見えていないようだが、曹操に先回りされたとは考えにくい。そうなると、孫策さんの・・・? と思考を速めて行く。「恐らくは、だな。しかし、敵対するかどうかの意思表示はまだだ。戦闘態勢はできているな」「は、はぃっ!」慌しく命令を飛ばしていく諸葛亮に対し、関羽は冷静に向かってくる一団へと目をこらす。そして、先頭にいる黒紫の鎧を身を纏った武者の姿が見えた。北平で、反董卓連合で、徐州で。見覚えがあった、いや、忘れようの無い姿。「高順・・・まさか、あの男が!?」「ははわわわわっっ!?」徐州での「アレ」を思い出したのか、高順の名を聞いた瞬間に諸葛亮が悲鳴を上げた。~~~時間経過~~~劉備はどこか引きつったような笑顔で、高順達を迎えていた。下手な対応をすればいきなり攻撃されることもあり得るし、その高順が孫家からの救援部隊である事も理由で無礼な態度は禁物。どちらも騎乗したままである。本来、相手が格上である場合は先に下馬して拱手するなりして礼儀を示すのが一般的だ。だが、高順は馬から下りようという意思を欠片も見せない。もしも相手が公孫賛や張燕なら、高順は自分から馬を降りて礼節を示しただろう。敵となってしまった曹操は無理として、董卓や呂布でもそれなりの礼儀は見せていた筈だ。例えば公孫賛や張燕などは、事情があって身を寄せたという形だったが、一時的にでも間違いなく主君であった。僅か一日でも、曹操は高順の主君であったし、董卓・呂布も同じだ。しかし、劉備に対しては頭を下げる理由が無い。どう考えても立場が上の孫家、その孫家に仕えて救援としてやって来た高順。この状態でどちらが上か、というのは微妙な線であるが、少なくとも高順は現在の劉備にはこの対応で良いだろうと思っている。というか、交州全域を自身の領地としている高順と、未だ充てもなく彷徨っている劉備のどちらが上か、などは議論する意味すらない。高順は自分からそんな事を言うつもりは無いし、聞かれもしないから黙っているだけだ。魯粛が交渉をする際にそんな話が出るかもしれないが、それはそれで別に構わない。この高順の態度に、魯粛は何も言わないし趙雲達も同様だ。むしろ、ここで高順が下手に出たら魯粛どころか趙雲に叱られるだろう。諸葛亮も龐統も、高順が馬から降りない事には不満はあったようだが救援されている自分達では分が悪い・・・と思って黙っていることにしたようだ。「そういう訳でな。あんたらを救援してこい、だとさ」「あ、あはは・・・ありがとうございます。孫策さんに仕えてたんだ・・・」「うん。あと実際の話し合いは・・・こっちの魯粛がやる。」そう言って高順は魯粛へと視線をやり、劉備も魯粛を見やって「はぁ・・・。」と気の無い返事をした。「ともかく、江夏まで退くんだな。それまでは協力しておこう。話の内容次第では・・・まだ解らんからな。」兜の下からでは解りにくいが、劉備は高順に睨まれている気がしていた。話し方自体は穏やかだが、自分に対して敵対意識を向けている感じだ。徐州での顛末を考えればそれも致し方ない。江夏までは同道する、と高順隊は馬首を返して進み始めた。劉備は「とりあえず、孫家に渡りをつける事が出来そうだね」というところで満足しておく事にして、それに従おうとしたが「待ってくれ」と高順を押し留める者がいた。関羽である。「頼みがある。」との言葉に、再び体を向ける。「聞く理由は無いが聞くだけは聞いてみようか?」「ここから西・・・当陽の長坂に後続がいる。そこには張飛・華雄が200程度の兵で民を守っているのだが・・・」「へぇ?」華雄の名に、高順が僅かに反応を示した。「皆の様子を見に行ってくれないだろうか。もし曹操に襲われているのなら、助けてやって欲しい。張飛は心配要らないと思うが華雄と民が心配だ・・・華雄も大切な仲間で友人だ。死なれたくは無い」そう言って、関羽は高順に頭を下げた。これを見て、周りの人々・・・劉備ですら「ええっ!?」と我が目を疑った。あの誇り高く、人に頼み事をしたり頭を下げるのが苦手な関羽が、自ら頼み込み、頭を下げたのだから。これに、高順はやれやれ、と頭を振った。「はぁ・・・何で俺がそこまでせにゃならんのです。」「う・・・」「彼らは劉備殿に付いて来た民でしょう。俺が関羽殿の頼みをかなえる理由がありますか? 守るならあんた達が守ってください。」「そ、そうだな。その通りだ・・・」正論で返されてがっくりと肩を落とす関羽。(劉備も何もいえなかった関羽も、行けるものなら自分で行きたいのだろう。しかし、代わりに劉備を守る役割を果たせそうな部将がいない。陳到では力不足だし、張兄弟は董卓の身辺警護。他に頼れる者がいない、というのが劉備軍のお寒い事情であった。「・・・・・・」誰もが無言となって、静寂が辺り一帯を支配する。暫くして、高順は「はぁ~~~・・・」と溜息をついて方もう1度馬首を返し、関羽の横を通り過ぎた。すれ違った時に「ま、生きてたら拾ってやる。民衆のことまでは責任取れないけど」と、一言だけ。「高順、お前・・・」「進撃します。遅れないようにね」それだけ言って、高順は虹黒を駆けさせ、兵もそれに続いていく。途中、隣を通り過ぎた趙雲も関羽に「いい目になったな」と言葉をかけて行った。長坂へ進む高順の裾を「旦那、旦那」と魯粛引っ張る。「何だよ?」「いやぁ、まさか助けることにするなんてねぇ。恩を売ったつもりかい?」魯粛の言葉に、高順は「嫌味は止めてくれ」と苦笑した。「自分の為だよ。華雄姐さんを助けられたらそれで良い。他はさっき言ったとおり生きてたら拾う。こっちから曹操に喧嘩売る形だから良いかどうかはわからんけどね。」「良いに決まってるさー。ほら、俺達「孫家」の旗使わないし、別に俺らが孫家ってばれてもいいし」ここまで言われて「・・・ああ、そうか」と高順は得心した。孫家が劉備に巻き込まれて開戦する以上はどうでも良いのだ、という事だ。孫家の旗を立てずに行けば、曹操は高順がどちらに属しているか悩む。ばれたとしてどうと言うことはない。曹操が孫家を放っておく事は無いのだし、ばれるのが遅いか速いかの違いでしかない。周喩にしてもそこは折込み済みで、だから「交戦するな」という類のことは一言も言わなかったのである。「それよりもな、お前は劉備と一緒に行っても良かったと思うんだが」「おいおい、冗談はよしてくれよ。俺みたいなか弱い羊さんが、あーんな怖い目したねーちゃんらに囲まれてたら貞操の危機! 自分の身を守る術がねぇもの。それになぁ」「貞操っていう柄かよ・・・?」「あの陥陣営の戦いを間近で見れるかもしれんからな。こっちのほうが興味ありありさね♪」「そんなたいそうな事はしないよ。・・・なんだ、さすが魯家の狂児だな」「お褒めの言葉だねぇ。ま、弓で撃つ位はやったるからさ。」へいへい、とまたも苦笑して高順は前を見る。彼らの進む先には長蛇の民衆が列を成し、高順隊を見て「何事だろう」といぶかしんでいる。民衆は重い荷物を背負い、子の手を引き、老人を背負って劉備の後ろへと続いていく。これを横目で見つつ、よくもこれだけの人数が付いてくるもんだ、と高順は改めて劉備の魔性とも言えるカリスマに感心し、そして更なる用心が必要だとも感じていた。華雄が絡んでいなければ高順が関羽の依頼を断っていたかどうか? という話は断っていた可能性が高い。与えられた役目はあくまで劉備の撤退の手伝いであって、劉備の指揮下に入って戦う事ではない。趙雲ですら手伝おうと言い出さなかったのは、やはり高順の言うとおり「自分の民は自分で守れ」ということだ。この間、張飛・華雄は長坂橋で民衆の守備に就いている。張飛は民が渡り終えるのを待って橋を切り落とすつりだったが・・・曹操本人が軽騎兵5千を率いて長坂橋へと迫りつつあった。~~~楽屋裏~~~横山三国志の長坂橋はジャンプで渡れそうだったよね! あいつです(挨拶というわけで長坂です。本当は漢水の渡しとかが必要なんですけど、面倒なので省きます(は夏口ではなく最初から江夏目指してるんで大丈夫・・・かな?それと、船団を率いて云々、というのは本来なら関羽にするべきだったのでしょうが・・・これは(行ったとしたら)陳宮と呂布あたりがいったんではないでしょーか。このお話では呂布は凄まじく燃費が悪い(食料的な意味で金くい虫)ので、劉備軍にとってはかなりの経済負担。そもそも劉備には確固とした経済基盤が無いので、頭が痛い話なのでしょうな。孫家は(今までは)明確に曹操に敵対意思見せてないのですね。曹操に攻撃を仕掛ける=漢王朝に逆らう みたいなもんですが、劉備に吹き込まれ巻き込まれて開戦 のほうが名分としてはマシ・・・かな?このお話での孫策・周喩は曹操には逆らいつつ漢王朝とはコンタクトを取る・・・というような路線で行くのでしょうね。史実とは違って荊州占領で魏王になるのかもしれません(史実では漢中の張魯を降してから)ふと思いましたが、実際の長坂橋ってどれくらいの規模だったのでしょうね?蒼天やゲームなどではかなり大きい橋で、しかも崖レベルの高さでした。横山氏の三国志では「あれ、守る必要ないくらい小さくね?」って感じで・・・歩いて渡れる程度の規模でした。この話では前者の崖レベル採用しますがw次回は高順くん(つうか虹黒?)と惇さんの戦いになりそうです。これが終わったら・・・そろそろ孫策の暗殺イベントかなぁ?(ニヤリちょっとお話が短いと思ったので・・・~~~番外・張遼さん~~~劉備を叩き、孫家と雌雄を決する為の南征。曹操は各地より将軍を集めて南へ攻め込むという。この大戦に、小沛の守将である張遼と干禁は参戦していなかった。理由は簡単。「おぎゃあああああぁぁぁっ・・・!」「あーよしよし、乳かー? それともおむつかー!?」生まれた娘、張虎の世話の為だった。まだまだ授乳を続けなければならない。乳母に任せる、という選択肢もあったが「なんかあったら困るし!」ということで、最低限授乳期間が終わるまでは自分で面倒を見ることにした。幸いにも、閻行も張虎の世話を見てくれるし、何より母親という子を育てた経験者である事が大きい。干禁も「将来役立つから」と一緒に張虎の面倒を見てくれて、慣れない事に右往左往する張遼にとってはありがたい事だ。・・・閻行が初孫である張虎にメロメロであり「うちの娘、閻行かーさんを母親と勘違いしたらどないしよ・・・?」と思うほどの可愛がりようで、ちょっとばかり不安ではある。そうやって立派に母親(?)をしている時に「南征」「長安へ公孫賛が赴任」「西涼壊滅」という話が聞こえるようになってきた。南征・公孫賛赴任の話は、曹操が発表して直ぐに話が来た為に早めに知ることが出来たが、西涼壊滅の報は知らなかった。負けたのか勝ったのかよく判らない結果となってしまったし、これに関しては曹操が積極的に公表をせず、かといって話が広まるのを故意に押さえつけようとしたわけでもなく。広がっていくことに関しては、どうでもいいよ、というスタンスである。これを聞いた閻行は「まさか、あの二人に限って・・・」と信じようとしなかったが、独自に調べて真実であることを早期に突き止めた。微妙に情報が錯綜していたものの、馬騰・馬超・馬岱は行方不明、他の韓遂含む主だった将も全て戦死したという話である。~~~その時の閻行の反応、張遼宅にて~~~「あ、あの・・・閻行さんが怖いのっ・・・」「閻行かーさん、あの・・・ちょ、まぢで落ちつこ、な? な?」「あら、干禁さん、張遼さん。私は冷静ですよ? 燃え盛る烈火の炎の如く、どこまでも。この炎は中原を燃やし尽くすまで止まることを知りませんウフフフフ・・・」(むっさ怒ってはるー!?)薄ら笑いで(何故か)戦装束に着替えた閻行を見て、干禁は全泣きでガクガクと震え、張遼も「え、閻行かーさん落ち着き!?」と必死に宥めていた。「では、ちょっと行ってきますね?」とか言いつつ、玄関へと向かっていく閻行。「ど、どこにやねん? つかなんで完全武装!?」「いえ、ちょっとそこまで」「そこまで?」「こう、曹操の首を「コキャリ」と♪」「やめてぇぇぇーー!??」左腕で頭を抱え、右手でへし折るようなジェスチャーをした義母を見て「あかん、この人なら本気でやりかねんし、つか成功しそうな気がする」と張遼は身震いした。実際に手合わせして解ったが、閻行は本気で強い。が、さすがに呂布には敵わないだろうとは思う。ただし、呂布には弱点がある。それは凄まじい燃費の悪さだ。とにかくすぐに空腹になり、空腹時だと本来の力の2割か3割くらいにまで能力が下がる。爆発力は強大だが、それが持続しない、という弱点だ。そこを行くと、閻行は燃費が良い。攻撃・防御に楽進同様に「気」を使うが、はっきり言ってこの人の攻撃には気など必要が無いのでは? と思ってしまう。防御にだけ気を使用すれば、そもそも攻撃が当たらない。当たっても大抵弾かれる。手合わせのとき、張遼が本気で打ち込んだ堰月刀を素手で握って止めた時、どうすればええねん!? と張遼も泣き言を言ってしまったほどだ。その上、本人の持久力・集中力も高く・・・体力の切れ目がないように感じる。下手したら、一日中ずっと戦い続けても平気なんちゃう・・・? と思うほどの持久力で「これはうちでは勝てん。下手したら呂布でも敵わん」と認めざるを得ないほどの強さである。これには「もう老いぼれていますからね。若い頃に比べれば弱くなりました」と閻行は言っているのだが、それが本当なら若い頃ドンだけ強かったんやろ? と張遼は空恐ろしくなった。ともかく、閻行を行かせるわけには行かない。この人に何かあったら高順にも申し訳が立たないし、何より自分達の、そして張虎の命にも関わる。考えれば誰にでも解る事なのだが、頭に血が上りすぎた閻行はこの辺の考えがスッポリと抜け落ちていたようだった。閻行は、止めようとしている干禁と張遼をずるずると引きずり家を出ようとする。「止まってなのーーーー!!!」「不味いって! ほんま不味いってぇー!」「いえいえ、だいじょーぶ♪」何が大丈夫なのかはよく解らないのだが、閻行はぶち切れつつも笑顔である。もうどうしようもない、干禁と張遼が思ったその時。「おぎゃあぁぁぁ、おぎゃぁぁぁぁぁっ・・・!」「!!(猛然とダッシュする閻行」「おぇ? ちょうkのわぁぁああぁあっ!?(引きずられる張遼」「ぎょええええっ!(引きずられる干禁」寝室で寝ていた張虎が目を覚まし、大声で泣き始めたのである。泣き声が聞こえた瞬間、閻行はすぐさま寝室へと(二人を引きずって)走っていき、すぐさま張虎を抱き上げて「おぉ、よしよし。」と孫娘をあやし始める。「どうしました張虎ちゃん? 何か怖い夢でも見ました? お腹が空きましたか? それとも、私達が大声で話してるのが怖かったのかなぁ?」「うー、うぅぅぅ・・・」「ああ、ほら泣かないで、ね? ほぉら、高いたかーい♪」「・・・(にぱぁ」今まで泣きじゃくっていたのに、閻行にあやされた途端にそれが止まり、笑顔になる。張虎は赤ん坊で何が何だか解っていない筈だが、母親である張遼は当然、閻行にあやされても泣き止む。それが上手く作用したらしかった。閻行も初孫を溺愛しているし、今のように泣き声が聞こえただけでも様子を見に行く。この後も、閻行がこっそり出かけようとする度に張虎が泣き喚く、というのを繰り返した為に閻行も「そうですね、孫を巻き込むことは出来ません・・・」と渋々諦めることにしたようだ。こんな意外な形で決着するとは誰も思いはしなかったが・・・張遼は心底思うのである。「張虎、ええ仕事したで!」と。~~~楽屋裏~~~関羽の武力を100とすればこのSS呂布の武力は700くらい。あいつです(挨拶・・・え? なに? 馬超さんとは子作りしないのかって?もう終わったよ!! 話に上がってこないだけで!てな訳で張遼さんの今、みたいな感じでした。出てこないだけでお父さんもゲンキデスヨ?また、話としては出ませんでしたが満寵も南征に行ってます。