習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第10話洛陽から陳留。そして徐州へ。これが高順の立てたプランである。徐州からも更に移動するつもりだが、一応は数ヶ月滞在するつもりだ。陳留では目立つことは絶対に出来ない・・・とは思いつつも夏侯惇のせいで意味無く目立つ羽目になった。今曹操と出会っても意味が無い。高順は判断した。それに、夏侯惇怖いし。滞在する期間が長いのも理由がある。それは彼の地が呂布が敗死する場所であり、自身の終焉の地だからだ。史実の呂布が曹操に敗北した理由は様々だ。元の能力の違いもあっただろう。戦力、政治力、その他諸々。また、劉備を手懐けようとして失敗した、ということもある。劉備という男の本質を理解できていない、という点で人を見る眼も無い。部下の能力も・・・実際に大したことの無い連中ばかりだ。頼れるのは張遼と陳宮くらいしかいない。歴史の結果を知ってるからこその評価でしかないのだが、それでも他の呂布軍武将の経歴を知ってる高順にとって、武将の不足というのは由々しき事態だった。そして、高順にとってはこれが一番の理由だと思うのだが・・・民の信頼を得られなかったことではないか?とも思うのだ。つまり、高順のやることは。呂布が来る来ないに関わらず、僅かなりとも民の信頼を得ておこう。ということだ。当然、数ヶ月だからそう眼に見えた成果というのは出ないだろうがやらないよりはマシだ、という結論だった。それに、もしかしたら部下・・・いや、仲間を得られるかもしれない。それで呂布の敗北、そして自分の死を防げるかどうかまでは解らない。自分が史実どおり呂布に仕えるかどうかすら解りもしない。しかし、やらないよりはマシだろう。そう思っていた時期が俺にもありました。あったんです・・・。どうも皆さん、高順です。前置きが長くなりましたがいかがお過ごしでしょう?俺は今・・・またしても大変です(涙「どうしました?高順殿。」「あー、いや。どうしてこうも面倒ごとばかり巻き込まれるかなぁ?と考え事をしてまして。」高順は目の前にいる少女に返事をする。銀髪で、前髪を短く刈り込んでいるが後ろは伸ばしており、三つ編みにしている。髪の形が・・・なんとなく耳を垂らした犬のような形に見えなくも無い。金属で作られた無骨な軽鎧でしなやかな身体を包み、腕に手甲をはめている。その手甲は拳の部分まで包み込んでいて、手甲というよりも「ナックル」といったほうが良い代物だった。身体のあちこちに傷がついているが、それは彼女が厳しい鍛錬を己に課し、それだけの戦いをくぐってきたことの証左といえるかもしれない。彼女の姓は楽、名を進。字を文謙。真名を「凪」と言った。「も、申し訳ありません。まさかこんな事になるとは。」「はは、まあ楽進さんのせいではありませんしね。」「あー。高順さんまだ凪ちゃんって呼ばないのー。」「あーあー。ほんま高順はんは強情やなー。凪も苦労するで。」「おい。沙和、真桜。おかしなことを言うんじゃない。」そう言いながら高順たちの元へ歩いてくる2人の少女。1人薄く紫がかった髪で腰に工具のようなものをぶらさげている。胸を・・・現代の感覚で言えばビキニ水着のようなもので覆っている。彼女の胸は大きく、歩く度に自己主張するかのようにたゆたゆと揺れる。何故か関西弁を使っている。高順は彼女と話すたびに張遼を連想してしまう。もう1人は金・・・いや、栗色の髪。大きな眼鏡とそばかすが大きな特徴で、彼女もまた胸が大きい。関西弁を使う少女の姓は李、名を典。字は曼成。真名は「真桜」。眼鏡の少女は姓を于、名を禁。字を文則。真名が「沙和」。今高順のいる地は大梁と呼ばれる地のとある村落があった場所。「梁」とも呼ばれるこの地は陳留のすぐ南東に位置する。この場所は高順の目指す除州への通り道なので通過するだけなら特に問題は無い。無いのだが、何故か彼女たち3人が高順の旅についてくることになったのだ。そもそもの発端は高順が陳留を出る少しだけ前の事だった。~~~数日前、陳留にて~~~例の騒ぎの後、高順はリンゴと馬草を買い込み食堂へと向かっていた。「今日は麻婆豆腐とご飯の気分だ。」と呟きながら虹黒の手綱を引きつつ移動している。流石に乗りっぱなしでは人目につく、ということを理解したからだった。「ちょっとここで待っててくれよ。すぐ帰ってくるからさ。」少し迷惑かもしれないが、虹黒を食堂の前で待機させる。周りの人の奇異の視線などまったく気にはならない。ただ、虹黒だけにするのも不安ではあった。誰かに連れて行かれたり、傷つけられたりしないだろうか?「じゃ、行ってくるからな」「ぶる。」食堂にすぐ入ってから「ずごしっ!」という音と「ぎゃああああああ~~!」と叫ぶ誰かの声がした。高順が店に入ったと同時に誰かが虹黒を盗もうとして、そして反撃を食らったのだろう。「・・・心配は不要、かな?」乾いた笑みを浮かべる高順だった。適当な席に座り、店主に「すいません、麻婆豆腐とご飯」と注文し、何となく店内を見回してみる。時間もちょうど昼ごろで、賑わっているとは言わないが人が少ないというわけでもない。3人の少女がすぐ隣に座っており、一目見ただけだったが「ふむ、また可愛い女性がいるな」程度の認識で特に気になるものでもなかった。そこら辺で、店員のお姉さんが「はい、お待ちどうさま」と麻婆豆腐とご飯を持ってきてくれた。ありがとう、と応えレンゲを持ち「いただきます。」と言った瞬間。喧嘩が発生した。「ちょ!何すんねん!?この竹かご大事な売り物やっちゅーに!」「うるせぇ!んなとこに置いてるのが悪りーんだ!」「何やと!」「さ、真桜ちゃん・・・やめようなの。厄介ごとはよしたほうがいいの。」「そうだ、真桜の言うとおりだぞ?」「せやけどなぁ・・・悪いのあいつらやんか!」「はっ、んな竹かごの1つや2つでうだうだ抜かすんじゃねえ。っけ。」そう言って男は竹かごに唾を吐きかける。「こ、この酔っ払いのオッサン・・・!もう限界や!」どうも、彼女達の売ってる物を壊され、その上ケチをつけられたらしい。それに対して・・・また随分巨乳な少女が文句をつけたらしい。あーでもないこーでもないと文句を言い合っている。どこの町でもよくある光景といえばそれまでなのだが、どんどんエスカレートしていってる。「そんなもん、足元に置いとくほうが悪いんだよ!」「邪魔にならんようにしとったわ!おどれが酔っぱろーて足元ふらつきながら歩いたのがそもそもの原因や!」「なんだとぉ!?」「なんや、やるんかい!?受けてたったるどコラァッ!!!」(また随分と熱いやり取りだな・・・。)正直、この件に干渉するつもりは高順にはまったく無かった。どちらにも非があるしどちらにも言い分がある。これは高順の考えだが、もし実力行使になったとしても少女達の方が確実に勝つ、と踏んでいる。結果の解ってる小さな喧嘩に介入したくなかった。それに今高順は麻婆豆腐を食べるのに忙しい。と、そこへ少女が「落ちてきた。」どがしゃあん、と派手な音を立てて高順の座っていた席にさっきまで言い争いをしていた少女が飛び込んできた。いや、飛び込んだというか、突き飛ばされてバランスを崩した。といった感じか。「あ・・・・・・。」「痛っつつつ・・・ああ~、背中にご飯とか麻婆豆腐がぁ~・・・。」「はっ、ざまぁみやがれってんだ。」と吐きながら酔っ払いの男が自分の席に帰っていく。その席には8人ほどの男達が座っている。「おいおい、餓鬼相手にやりすぎんなって。」「ああ?あいつらが全部悪いんだ。ったく、迷惑料払ってもらってもいいくらいだぜ。」と、自分勝手なもの言いをしている。「な、あんた。大丈夫か?」「うう、大丈夫やけど・・・背中が気持ち悪い・・・。あ、凪・・・どこ行くん!?」ん?と、隣を見やる高順。見ると、銀色の髪の少女が男の席に向かっていくのが見えた。「おい。」「あ?んだよ?」殺気を押し殺した声で先ほどの酔っ払いを呼び止める。「ただの口喧嘩ならまだしも・・・暴力を振るうのなら話は別だ。彼女に謝ってもらいたい。」「はあ?なんで俺が謝らなきゃなんねーんだ?」ニヤニヤと嫌らしい、下卑た笑みを浮かべつつ酔っ払いは言う。「竹かごを壊した事と彼女に手を出したことは全くの別問題だ。」「けっ、うるせえ餓鬼だぜ。・・・おらっ!」酔っ払いは銀髪の少女の頬をいきなり殴りつけた。「凪!?」「凪ちゃん!?」「くっ・・・。」そこへ店の店主が「お、お客様、どうか喧嘩沙汰になるようなことは・・・」と、やってきたのだが・・・酔っ払いの仲間が「いやいや、被害者はこっちですから」とかまたも自分勝手なことを言っている。「で、ですが・・・。」「おいおい、おっさんは黙ってなって。悪いのは全部この餓鬼どもだからさぁ・・・。」「ううっ・・・。」店主は完全に怯え、他の客も皆怖がって近づこうともしない。「あ、あんの酔っ払いども・・・もう我慢でけるかぁ!」「ここまでやられて黙ってるほど私もお人よしじゃないのっ!」舐められた真似をして黙っていられなくなったのだろう。眼鏡さんと巨乳さん(高順命名)が酔っ払いの席へ向かっていく。「て、てめぇらっ・・・えべふっ!?」さっき巨乳さん(仮)と銀髪さん(仮)に乱暴なことをした男が一瞬でのされる。「こ、この餓鬼どもっ!やっちまえ!」「うるさいっ!」「ぎゃあああっ!」気勢を上げた男も銀髪さん(仮)に一撃でKOされた。他の男たちも仲間の敵を討とうとして向かっていく。周りの客は悲鳴をあげ(一部はしめしめ、といった感じに)店から逃げ出していく。「あ・・・あーあ・・・やっちゃったか」そんな混乱にも動じることなく自分の席を片付けていた高順がやれやれ、と首を振った。まあ、何がどうなってもあの子達が勝つだろうな。気の毒なのはここの店主さんだけど。「ぎゃああああああっ!」男が2人同時に高順の近くまで吹き飛ばされてきた。高順は周りを見渡してみるが、さっきまで威勢よくほえてた男達は一人残らず倒されていた。今目の前にいる2人が最後だったということか。「はんっ、ざまぁ見さらせこのスットコドッコイどもが!」「佐和たちの完全勝利!なの!」「全く。素直に謝っておけばいいものを。」「あー・・・でも、どないしよ。飯全部駄目になってもうたし、竹かご・・・うわ、全部壊れとる・・・。」「うええ・・・どうしようなの・・・」「・・・困ったな。せっかく村の皆で作ったのに・・・。」喜んだり落ち込んだり、忙しい。(あんだけ暴れておいて・・・元気なお嬢さん達だな。)実際のところ、高順と1つか2つしか違わないような齢だが、そう思わずにいられない。何せ息切れ1つしていない。割と本気で強いのかも、と高順が思ったその時。目の前に飛ばされた2人の男がゆっくり立ち上がり、懐から短刀を取り出した。「あ。」高順が間の抜けた声を出す。「く、くそ。よくもやってくれたなぁ。ええ、おい?」「ここまで恥かかせてくれたんだ。生きて帰れると思うんじゃねぇぞ、クソ餓鬼がぁ・・・。」得物を出した男達に、3人娘の表情が硬くなる。「うわっ、喧嘩で光り物出しよったで。」「負けることはないと思うけど・・・。」「しかし面倒だな。・・・どうもあの2人だけではないらしい。」え?と周りを見る眼鏡(仮)と巨乳(仮)。他に3人の男が立ち上がり、短刀を取り出す。「むー。こんな狭い所でか。一気に組み付かれたら・・・凪やったらええやろうけど。」「ふう。突破するしかないか。」「へっへ。もう謝っても許してやらねぇ。」「謝るべきなのはそっちのほうなの。」「うっせぇ!今度こそやったらぁっ!」短刀を構える男達。だが――――。一瞬で動きが止まった。いつの間にか高順が三刃戟の槍部分を男の首元に突きつけていたからだ。「え?」「あれ・・・?さっきの兄ちゃんやんか。」「・・・手助けしてくれるつもり、か・・・・・・?」三人娘と短刀を握り締めてる5人の男達の視線が一斉に高順に注がれる。「な、てめぇ・・・」「ったく。酔っ払いのすることだと思って黙って見ていれば。でも、そんなもの使うつもりなら黙ってられないねぇ・・・?」ぐい、っとさらに三刃戟を突き出す。もっとも、高順は三刃戟の刃部分すべてに木製の鞘をつけている。それでも本気で振り回せば殺傷能力は十分にある。「そこのお嬢さんたち、こっちへ。」高順は手招きをする。彼女達も素直に従い高順の所へ移動する。男達も追いかけようとするが仲間に武器を突きつけられて動くに動けない。「あ、あの・・・」「話は後。まずはここから出よう。」「は、はい。・・・行くぞ、真桜、佐和。」銀髪さん(仮)が真桜、佐和と呼ばれた2人を促して食堂から出る。ふう、行ったか。「さて、と。おっさんたち。この落とし前どうするつもりかな?どれだけ店に迷惑かけたか。わかってんの?」威圧感と殺気を込めて言ってみる。今まで感じたことの無い寒気を覚えて、完全に男達は黙り込んでしまう。高順はこれまで幾度か戦場に出ている。人を殺したのは晋陽軍との戦いが初めてだったが、それまでにも小規模な賊の捕縛などはこなしていたのだ。その上、数千の兵が戦う戦場を一度とはいえ潜り抜けている。そこらで喧嘩をしているチンピラなどとは比べるべきではない。「う、うう。」「あ、店主さん。」店の中で呆然としていた店主に高順は声をかける。「は、はい?」「警備隊呼んどいて。で、こいつらに責任とらせりゃいいさ。ちゃんと状況説明してね。」「へ、は、はい。すでに店員に行かせましたけど・・・。」「あはは、手際いいねおっちゃん。んじゃ、遠慮なしね。」言うが早いか、高順は三刃戟の柄のほうで男を叩きのめした。「うわ!?よくもぶぺらっ!」他4人も一撃で気絶させていく。「はあ。こーいう手合いはいつも同じ事しか言わないんだから。・・・じゃね、おっちゃん。迷惑かけてごめんよ。」そのまま高順は出て行こうとするが、まだお代を払ってないことに気がついた。「ごめん、忘れてた。・・・はい。」懐から結構な額の金を出し、店主に手渡す。「い、いえ。こんなに沢山は頂けません・・・。」店主は恐縮するが、高順は無理やり同然に押し付けた。「まあそう言わないで。修繕費の一部に使って、ね?足りなければこいつらから取り立てればいいからさ。」それじゃ、と今度こそ高順は店を出た。外で待たせていた虹黒の元へ急ぐ高順。「よし、虹黒。行こうか。」そこにタイミングよく街の警備隊がやってきた。「うわ、やべっ。急ぐぞ!」「ぶるるっ」高順は虹黒に飛び乗り陳留を出たのだった。「はぁ。なんだか忙しい一日だったな、虹黒。」「ぶる」高順のぼやきに、虹黒はいちいち反応して鳴き声を上げる。律儀と言うか何と言うか。この当たりは微妙に高順と似てるのかもしれない。そこへ。「おおーい!待ってんかー!!」さっきの少女達が追いかけてきた。「ふえ?」「ぜっ、はぁぁ・・・酷いで兄ちゃん。「話は後」言うてまさか放置してくとは・・・」あ・・・忘れてたよ。高順は虹黒から降りる。「ああ、申し訳ない。自分の身を守るのに精一杯でして。」「あんだけの殺気出せるのに?冗談はやめてや?」「ううっ、疲れたの~。」「ふう。・・・2人とも修行が足りんぞ。」「うっさい。凪みたいな体力なんて修行したところでそうそうつかんわ。」賑やかな人たちだ。嫌いじゃないけど。「それはそうと。先ほどは有難うございました。」「せやせや、ほんまおおきにな。」「ありがとうなの!」どうも、感謝の言葉を言うためにわざわざ街の外まで追いかけてきたらしい。「はは。俺の助けなんて必要なかったと思いますけどね。」「それに、貴方の乗っている馬にも助けていただきました。」「はい?虹黒に?」「虹黒という名前なのですか。あの後、店から出たところで警備隊に捕まりそうになってしまって。そこを助けてもらったのです。」銀髪さん(仮)の言葉を聞いて高順は虹黒の首を撫でつつ(虹黒・・・何やったんだよ?)と思っていた。「・・・もしかして、頭突きか後ろ回し蹴りのどっちかですか?」「・・・・・・両方です。」両方かよ。「はぁ。長居するつもりは無かったとはいえ。」「申し訳ありません・・・。」「いやいや。今も言ったとおり長居するつもりは無かったですからね。」「せやけどなー。うちらも困ったことになってもうてなー。」「困ったこと?・・・えーと。名前なんですっけ?」「あ、せや。名前教えとらんかったな。うちは李典、字を曼成いいます。で、この眼鏡が・・・。」「むー。眼鏡とか言わないで欲しいの。私は于禁。字は文則なの!」「私は楽進。字を文謙と申します。」少女達は皆、高順に一礼をする。楽進、李典、于禁。いずれも名のある武将だ。しかも3人も。というか、またしても女性か。神様。お願いです。どうか、誰でもいいから男性武将を出してください。もう俺色々きつすぎて泣きそうです・・・。しかし、夏侯姉妹に続いて3人も後の魏の将に出会うとは。「で、兄ちゃんの名前は何ちゅーの?」「・・・はっ。」もうあれです、立て続けに事が起こって俺の神経がついていきません。本当助けて・・・じゃない。「申し訳ない。俺は高順と言います。」「高順殿ですか。解りました」「で、困ったことって?」自分には関係のないことなのにわざわざ聞いてしまうのが高順の弱点であり、長所だった。何せ甘いというか何にでも首を突っ込みたがる。高順の人の良さは、矯正しようの無いレベルだった。おかげで多くの人が彼に好意的な評価を下すのだから、世の中というのは解らない。そのせいで常に厄介ごとに巻き込まれるおまけがついてくるのだが。「その。私達もお尋ねものになってしまったようで・・・。」これで街に入れなくなってしまいました。と楽進が顔を伏せる。「ただ入れない、というだけなら良いんだけど。」はぁ、と李典がため息をついて更に続ける。「村の皆で作った竹かごを陳留で何度か売ってたの。そうやってお金を作って村の資金に充てて・・・。」「その上、今回は先ほどの騒ぎのために予想していたより稼ぎが少なくなってしまいました。これでは村の皆に合わせる顔が無い。」「なるほど。本来稼げた額を遥かに下回った。でもって一番近場で栄えてる都市に行商にこれない。それが困ったこと、か。」彼女達は事情を説明すればいいのだろうけど、虹黒が警備隊相手に頭突きとか、後ろ回し蹴りとかかましたらしいから・・・無理かもしれないな。高順には村のことなど関係のない話なのだろうが、虹黒が彼女らを助けるためとはいえ警備隊相手に大立ち回りをしてしまったので無関係とも言い切れない。人の良さも相まって(何とかしてやりたいな)と高順は考えていた。ただ、単純に金を出しても楽進あたりが絶対に拒否するだろう。となると方便が必要になってくる。さて、どうしたものか。(ん?そうだな・・・これくらいしかないかな。よし。)「なあ、楽進・・・さん?ちょっと聞きたいんだけど。」「はい?何でしょう?・・・あと、呼び捨てで構いませんよ、高順殿。」「そうですか。それじゃ楽進・・・さん。」3人娘が「がくっ」とずっこけそうになる。「ま、まあ後々慣れてくれれば・・・で、何ですか?」「ここから大梁の・・・あなた方の住んでる村?日数としてはどれくらいかかります?」「ここから、ですか?そうですね・・・3、4日もあれば。」「そうですか。じゃあ・・・道案内と護衛。お願いできます?」『え!?』高順の言葉に全員が驚いた。道案内?護衛?自分たちの村に何か用でもあるのだろうか?特に何かがあるわけでもない小さな村なのに。「あー。実はですね。徐州に向かう途中なんですよ。ですから皆さんの村を通るかもしれないでしょ?道とか解らなくて不案内ですからね。それでそこまでの道案内を兼ねた護衛お願いしたいかなー、と。」「それくらいやったら別にかまへんけど・・・。」「うん、全然問題ないの!」「ありがとうございます。で、報酬のほうですが。」『はあ!?』また3人娘達が驚く。「報酬って、金払うつもりなんか!?」「ただ道案内するだけでお金だなんて・・・貰える筈がありません!」「そうなの!ここら辺は平和なほうなの。前は多かったけど。太守様が変わってから盗賊討伐が盛んになったし・・・。」3人同時に言ってくるので流石に高順も戸惑う。「お、落ち着いて。まず最初の質問。護衛もしてもらうんだから当然です。2つ目。何をするにしても報酬は必要だと思います。我々は主従関係ではありませんしね?3番目。あまり。ということは出ることは出ますよね?危険性はあるということです。」そのあたりのことを考えての報酬です。と高順は締めくくった。ここまで言われて楽進たちも気がついた。彼は自分たちを助けようとしてくれているんだ、と。余計なお世話と言えなくもないが、彼は恐らくこう思っているのではないだろうか?「街に入れなくなった原因を作ったのは自分だろう」と。確かに、あの町で商売を出来なくなったのは大きな痛手だ。ほとぼりが冷めればそんなこともないだろうが・・・それでも若干やりにくくなる、という事実は残る。それを考えれば、悪い話というわけではない。「・・・ほな、商談と行きまっか?」「あ、おい。ま・・・じゃない、李典!」「ええやんか。高順はんはうちらに仕事任してくれようとしてるんやで?そこに報酬まで付けてくれるとまで言うてる。稼げなかった分、取り戻す機会やで?」「しかし、だからといって!」「いいんですよ、楽進さん。」「こ、高順殿。」「あなた方にはそれだけの実力があると思いますしね。その腕を高く評価して、と。」さらさらと竹簡に筆で金額を書き込んでいく。「3、4日分の拘束代金・・・で・・・成功報酬・・・ん~。こんなものかな?」そう言って3人に代金を書き込んだ竹簡を見せてみる。『ぶーーーーー!?』竹簡を見た3人は同時に吹いた。「ちょ、何事!?」「どどどどど、どいだけ高額やねん!?」「こ、こんな額ちょっと見たことないの・・・」「我々が何回陳留に行けばこれだけの額になるんだ・・・?」「10回や20回じゃきかんと思う・・・。」あれ?なんか呆然とされましたよ?おかしいな。彼女らの腕を鑑みればこれくらい普通だと思うんだけどな。じゃあ現物支給のほうがいいのかな?ならば、と思い高順は自身が背負っている袋(大きいリュックサック)の中身を探し始めた。このリュックサックは上党で服や布の仕立て屋さんに手伝ってもらって作成したものだったりする。金属の留め金を使っているからそこそこに値段はかかったものの、大量の食料や水などを仕舞うのに相当役に立つ。そのリュックは4つあり、そのうちの1つを高順は物色し始めた。普段は虹黒の鞍に引っ掛けてあるのだが、数が多くて砂漠移動中の駱駝を連想しそうな装備である。余談ではあるが虹黒に乗せている鞍も職人に頼んで作ってもらった特注品で、槍や剣、弓などを取り付けれるような形にしてある。三刃戟もそこに挟み込まれており、いつでも取り出せるようにしてある。「あの、高順殿?」楽進が遠慮がちの声をかけてくる。高順はまだリュックサックの中身を漁っており振り返りもせずに返事をした。「何です?」「お気持ちは嬉しいのですがこれは少し貰いすぎだと思います。僅か3日程度の道のりでこれほどの額を頂くわけには・・・。」「何言うてんねん凪。こんだけ貰えりゃ村の皆も喜ぶやんかっ?」「そうなの。高順さんの好意を最大限利用するの!」李典と于禁が小声で楽進を止めにかかる。「いや、しかしだな・・・それより人前で真名を呼ぶんじゃない!あと最大限利用とか言わなかったか今!?」何の漫才をしているのやら。「ごほんっ。そうじゃなくて。あの、高順殿?」「あったー!」高順が目当てのものを見つけたらしく歓声を上げる。「え?あの、あったって何が?」「これです。どうぞ。」高順が何か丸い鏡のようなものを楽進に渡す。楽進も流されるままに素直に受け取ったが、「それ」をじぃっと見て驚きの声を上げた。「こ、これって、璧じゃないですか!緑色の・・・もしかしてこれ、翡翠ですか!?」「ご名答。で、もう1つ。」もう一個、銀色の棒のようなものを楽進に投げ渡す。翡翠の璧に傷をつけないように片手で持ち、もう片方の手で棒を受け取る。「わっと!?・・・高順殿、これは何でしょう?」その棒を穴が開くほど凝視する3人。高順はこともなげに「何って。銀ですけど?」と応える。「はぁ。」と気の無い返事をした楽進達だったが数瞬後、またも「はああああああっ!?」と叫んだ。「・・・あー、えらく驚き癖がありますね、3人とも。お兄さんは嬉しいです。」「ぎ、銀!?銀の、のべ、延べ棒っ・・・。これ、本物なの!?」「う、うち、こんなん初めて見たで・・・。」楽進はもう何を言っていいのかも解らないようで唖然として口をぱくぱくさせるのみだった。3人とも「何でこんな高価なもの持ってるの!?」とでも言いたげな顔をしていた。実は翡翠の璧も銀の延べ棒も洛陽で購入していたものである。虹黒を購入したことでかなり減りはしたものの、大量のお金が残った。要するに「重い」のである。持って来すぎた・・・と、内心で後悔したのだが「じゃあ換金できる物品に換えれば良いよな?」と考え、璧や銀、金といった「価値が高いがあまりかさ張らない」ものを買い込んだのだ。それがこんなところで役にたつとは。「ど、どんだけ金持ちやねん・・・?」「ま、あまりお気になさらず。で、いかがです?引き受けていただけます?」もうここまで来ると圧倒されたのか、それとも呆れたのか。3人ともただコクコクと頭を縦に動かすのみだった。ここで終わればよかったのだが、やはりというか何と言うか。高順はまたしても厄介ごとに巻き込まれることになる。~~~楽屋裏~~~どうも、あいつです。流石にこれだけ書くと1日更新は無理です。というか1日1回とか2回更新はあほすぎる、と今さらながらと思いました、本当に。で、書いてみての感想なのですが。あ、あるぇー(゜3゜)?でしたorzあれ・・・?なんで1話で終わってないの?約束したじゃないお姉さんと。(誰が)罪なので罰としてt(以下略誤字が多いですね。徐州なのに除州とか・・・ちょっとだけ修整しました。それではまた!