【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第93話「行きますよ、孟起、龐徳!」「はい、母様!」「心得た!」馬騰の命令に馬超と龐徳が応え馬を駆けさせ、その後ろには5千ほどの西涼騎馬隊が続く。疾走する馬騰軍の眼前には夏侯淵率いる守備隊が展開している。数はおよそ5千ほど。さすが夏侯淵といったところか、部隊は既に防御陣形を敷いている。前衛に長矛、中後衛に弓。夏侯淵本人は中衛に陣取り、先頭を進む馬騰に狙いをつけている。流石に此処からは届かないが、射程圏内に入ったと同時に、討つ。砂塵を巻き上げ来る騎馬隊。その先頭に有るのは、馬騰。馬超、龐徳が脇を固める形で突き進んでくる。「全軍、斉射用意・・・放て!」夏侯淵の号令に、弓兵隊は引き絞っていた矢を放ち始める。そして、夏侯淵も馬騰を討つための一撃を討ち放った。馬騰騎馬隊が、夏侯淵隊の放った矢に晒される。だが、馬騰は慌てることなく更に進んでいく。「母様、弓兵隊が・・・っ!?」「撃ってきましたね。そして」龐徳が馬騰へと飛んできた夏侯淵の一矢を、戟で弾き飛ばした。「うぇっ・・・?」「一斉射撃と思わせておき、時間差で思わぬ一撃を放つ。夏侯淵とやら、姉とは違って味な真似をしますね。」最初から解っていたらしい馬騰は、笑みさえ浮かべている前方を見れば長矛を構えた歩兵が待ち構えているが、大したことではない。あの程度で止められると思っていたなら、それは間違いだ、と馬騰は笑う。「孟起。」「はいっ!」「あなたは3千で夏侯淵を足止め。退路の確保をもしておきなさい」馬騰も中々に無茶を言うが、馬超であればそれが可能だ、と考えている。歩兵部隊を突破した後に控える弓兵では、少なくとも騎馬を止める事は難しい。近接攻撃も出来るように剣を所持しているが、長矛を持っていなければ騎馬を捉え切れないだろう。夏侯淵は強敵だが、弓が使いにくい間合いにまで詰めきってしまえば馬超のほうが数段有利だ。「解りました! おい、龐徳! ちゃんと母様を守れよ!?」「言われるまでもない。」「よーし、それじゃあ突撃だぁーー!!」おおー! と雄叫びを上げる騎兵を率いて、馬超は駆ける。「孟起」「はい・・・なんですか、母様?」「私よりも先に逝く事は許しませんよ。絶対に許しません。必ず生き残りなさい。」良いですね、と馬騰は念を押す。「解ってます!」と笑顔で返し、今度こそ馬超はまっしぐらに夏侯淵部隊へと突き進んでいった。見送った馬騰は、横にいる龐徳へと顔を向ける。「さて、龐徳。頼みましたよ。」「承知。お任せあれ。」馬超が突撃して注意を逸らしても、前方に広がる部隊全てをやり過ごす事はできない。馬騰と龐徳、残りの騎兵2千もまた打ちかかって行く。~~~曹操軍本陣~~~「随分と慌しいわね」曹操は床几に腰をかけ、事態の推移を見極めようとしていた。回りは親衛兵に囲まれており、背が低いので現場を見ることが出来ない訳だがそれはそれ。北へ向かった夏侯惇の部隊が封じ込められて砦から出られなくなっているようだが、そこは織り込み済み。韓遂は上手くこちらを騙せたと思っているようだが、それは違う。本陣を手薄にしたのはわざとで、馬騰なり馬超が一点突破を仕掛けてくるだろうと見越しての事だった。南に向かわせた朱霊は中々苦戦しているようだが、そちらは別に構わない。膠着していればそれで良いのだ。本陣を守る親衛隊は数こそ少ないが、魏軍精鋭中の精鋭。そこに徐晃、許褚、典韋と自分。守るどころか、これだけで攻め入ることが可能な陣容だ。防御が薄くなったと思い込んで攻め入ってくるなら、それこそ自分の思う壺だ。と曹操はほくそ笑む。(さぁ、来なさい。馬騰でも馬超でも良いわ。でもって組み伏せてあんな事やこんな事・・・うふっ、ふふふ・・・じゅるっ。・・・ふぉっ!?)我知らず涎が出掛かっていたことに気がつき、曹操は慌てて口を布で拭いた。夏侯惇が暴走したせいで台無しになった面もある会談だったが、あの時に見た馬騰の美しさや凛とした態度は実に曹操好みだった。(声も綺麗だったし、髪も艶やかだし体つきも涎垂もの・・・じゅるるっ。・・・ふぉわっ!?)・・・魏の総大将はたいへんなへんたいです。たいへんなへんたいと発覚したのはともかく、曹操は僅かに違和感を感じた。(ん? 少し早い・・・?)夏侯淵が守りに徹しているが、その守りも鉄壁という訳ではない。少しくらいは取りこぼしがあるだろうし、牽制部隊が残ればそちらを優先して叩きもするだろう。しかし、それにしては・・・こう、戦場の熱気のようなものの伝わりが早い。馬騰であれ誰であれ、突破をしてくるのはもっと遅いはずだ。だが、喧騒は少しずつ確実にこちらへと近づいている。(まさか、突破してきたの? でも、そんな筈は)そう思ったのもつかの間、伝令が「曹操さまー!!」と親衛兵を押しのけて来た。「どうした。」「ばばばばばヴぁ、馬騰がすぐ其処まで! 今は許褚殿、典韋殿と徐晃殿が防いでますけど長くは・・・ってうわ、もうきたー!?」「!」伝令が叫び、曹操が床几から立ち上がろうとしたその瞬間。「曹操ーーーー!!!」「!!」馬騰が単身、曹操ただ一人を狙って斬り込んで来た。曹操は床几に座ったまま迎え撃ち、自身の得物である大鎌で馬騰の刀を食い止める。「ほぅ」「ちぃっ・・・」馬騰は馬に乗っていない。陣を抜けてくる時に馬を失ったらしいが、馬が無いにもかかわらず、この攻撃力。これほどの突進力と、それが乗った斬撃を受け止めるの曹操も大概だが、余裕などは欠片もなく寸でのところで受け止めたようなものだ。「まさか総大将が直接斬り込んで来るなんて、ねっ・・・」「貴方も、それが必要とあらば躊躇い無く実行できる手合いでしょう・・・ん」鎌と刀の鍔迫り合い(?)を続ける両者だが、それは親衛兵の放った矢によって遮られた。曹操もいるのに矢を放つのは危ないのだが、其処は曹操や夏侯惇が鍛えた兵だけあって、そんなヘマはしない。馬騰は矢を避けてすっと後退、距離を稼いだ。その隙に、馬騰の突撃に対応が遅れた親衛兵は曹操の周りを固める。「殿!」「奴を討ち取れ! これ以上はやらせるな!」「応!」と、斬りかかって行く者もいる。「ふむ。邪魔者がいるようですね」呟いた馬騰は、一度刀を鞘に納めて、構えつつ親衛兵に向かって歩いていく。馬騰に向かっていった親衛兵は10人ほどだが・・・矛で衝くか、剣で斬りかかろうとした瞬間。彼らは首から大量の血を吹き出し斃れた。「なっ!?」「・・・邪魔をするモノは全て斬り、倒し、捨てるのみ。」何が起こったか解らず狼狽する親衛隊に走り寄り、馬騰は目にも止まらぬ速さで斬りつけて行く。親衛隊は応戦するが、そもそも攻撃を当てられない。人と人の間を苦も無くすり抜け、致命の一撃を繰り出す馬騰の姿。もしも、ここに高順一党がいればこう言っていただろう。閻行の戦い方にそっくりだ、と。「はぁ、はーっ。くう、強い・・・」「・・・。私達3人でも、保たせるので精一杯。」「ふぇぇ・・・何なのこの強さはぁ・・・」典韋・徐晃・許褚は、何とか息を整えつつ目の前にいる男を見つめた。その男の名は龐徳。典韋の得物は、今で言う巨大なヨーヨー。ただし、その巨大さ。彼女の怪力から繰り出される一撃は当たれば即死確定な代物である。徐晃の得物は大斧で、典韋や許褚に負けない膂力と、何よりも技術がある。力だけに頼った戦い方を好むがそれだけではない辺り、彼女の部将ではなく武将としての本質がある。許褚は・・・フレイルと言うかモーニングスターと言うか、巨大な鎖鉄球。質量武器と言う点で見れば典韋とそれほど変わらない。そして、その3人と、曹操直下の親衛隊に囲まれても龐徳は何1つ怖じていない。むしろ、その強大な武力で3人を、曹操の誇る親衛隊を押さえつけているのだ。彼は馬上で典韋らを見つめていたが、3人が呼吸を整えているのを見て「そろそろかまわんか?」と戟をかまえた。典韋は内心で(まさか、ここまで)と歯軋りしていた。秋蘭様の防御を軽々と抜き去ってきたのはまぐれじゃないんだね・・・とも思う。本陣に斬り込んで来た2千ほどの馬騰騎馬隊だが、道を切り開いてきたのは目の前にいるこの男と馬騰だ。この2人が、本陣へ続く道を守備していた親衛部隊を瞬く間に蹴散らし、蹴散らして出来た「穴」に騎馬隊を投入して更に傷口を悪化、拡げさせている。お陰で指揮系統がズタズタに寸断されてしまい、曹操が直接采配を取るしかない程に追い詰められ、しかもその曹操が馬騰と交戦中だ。龐徳の周りには、彼を討とうとした曹操親衛隊の屍が折り重なっている。これだけやっても龐徳は疲労を見せていない。典韋に限らず、その場に居合わせた将兵は「今まで自分たちが戦ってきた奴らとは違いすぎる」と圧倒されていた。曹操軍の将兵は呂布本人とは本格的にことを交えていないのだが、もしも直接交戦していれば似たような印象を受けたのかもしれない。余談だが、夏侯淵も含む曹操直下の最精鋭部隊がここまで押し込まれたのは、西涼兵の用いる「五胡式戦闘(格闘)術」・・・どちらかと言えば西羗式と言うべきだが、それが大きな要因である。格闘、あるいは関節技、あるいは甲冑兵法。相手を効果的に無力化し、殺す。そういう手合いの殺人術だ。連日の戦闘で、西涼兵が格闘戦を得意としていること、その殺傷力が高い事は曹操も理解していた。曹操は「組み付かれる前に倒せばいいのよ」とのたまったが、いきなりそんな芸当が出来るのは将軍級か、典韋らのような強大な戦闘力を持つ一握りに限られる。そんな技術も戦闘力も無い一般兵は「いきなりそんな事言われても無理です!」と叫びたかっただろう。それに、馬騰が率いてきた兵は馬超や龐徳が直接に技を叩き込んだ荒くれ揃い。乱戦に持ち込んでしまえば、武器が無くても戦えるという点を活かせる西涼兵のほうが数段有利なのだ。夏侯淵も、被害を恐れず距離を詰めてきた馬超隊の猛進を上手く捌けず、苦戦してしまっている。ちなみに、高順隊には西羗を始めとした五胡(異民族)出身の者が多い。もしも五胡・・・いずれかの氏族と戦う事になった場合、五胡式戦闘術を使って敵対してくる者は相当な脅威である。洛陽で馬超と組み手をしたとき、高順は関節を極められたりして再起不能になりかかったこともあるが・・・そんな経験もあり、その威力の高さを有用であると判断した高順はこの戦闘術に精通した者に頼んで、末端の兵にもそれらの技術を仕込んでいる。高順本人はこれの扱いはさほど得意ではないのだが、知識だけでも知っておけば多少の役に立つだろうと言う事で習っていた。それはともかく。「さて、休憩時間は終いだ。再開させてもらうが、かまわんな?」3人の息が整うのを待っていたのか、待ちくたびれたとばかりに言う龐徳。「っ・・・」「来る。守り抜く。」「絶対に負けないんだから!」戟を構えた龐徳に、徐晃と典韋と許褚は武器を握りなおした。「・・・む」馬を駆けさせようとした龐徳だが、何かに気がついたのか。じっとその方向を見つめて「いかんな」と呟き、目の前の3人を無視して馬騰が斬り込んで行った場所へと疾駆する。「あれ?」「はえ?」「・・・。無視、された?」武器を構えていた3人を無視して龐徳は駆けて行った・・・。「ってそんな事言ってる場合じゃないよ何あっさり通られてるの!?!?」「あ・・・あー!?」「追いかける。早く。」「解ってる!」徐晃の言葉に頷き、典韋らは急いで龐徳を追いかけた。(徒歩で馬騰、曹操は激戦を繰り広げていた。先ほどの技で来られれば手のうちようがない、と恐れていた曹操だが、不思議と馬騰はその手を使ってこなかった。いや、使えなかったというほうが正しい。あれは、けっこうな量の気を消費する。地面を蹴立て、その反動で走り抜け、攻撃にも気を使用する。全身を気で固めているに等しい技だ。考え付いたのは過去の閻行で、ていうかあんなものを考え付いて実行に移す閻行がどうかしているのだが、馬騰にも素養があったらしく閻行ほどの威力がなくとも使用は出来る。全盛の頃であればもっと長時間使用できただろうが、病を患っていた事と、昔に比べれば低下した体力ではどうしても使用時間が限られる。閻行のようにはいきませんね、と思いつつ戦う馬騰であったが自分よりも若く余程体力のある曹操に対して、彼女は有利に戦っていた。まだ生き残っている兵は多いが、見守る事しかできない。2人の戦いが凄まじいことになっていて手出しが出来ないのだ。曹操もソレを悟ったのか、積極的に攻撃を仕掛けているし、反撃も受け流すなり受け止めるなりしている。最初の攻撃に、先ほどの一閃。あれさえなければ・・・ということだ。事実、馬騰の斬撃は先ほどまでと比べて勢いが無いように感じた。剣舞を舞っているかのような動き。繰り出してきた攻撃もゆったりとした物で、威力も低い。これならいける、と思うのも当然だが。しかし、曹操は何かに気がつき始めていた。(気のせいかしら・・・さっきと比べて、速度が上がってきている。それに、少しずつ一撃の重みが増して・・・つぅっ!?)違う、気のせいじゃない。一撃の威力が徐々に上がり始めている! 重みどころか、キレも速度も上がっている・・・。あれだけ暴れ回っておいて、こんな体力が残ってるなんて反則だわ・・・と曹操は愚痴りたくなってきた。しかも、速度の上昇に曹操のほうが追いついていけない。頭で理解していても、錯覚を起こしているのか体のほうがついていけないのだ。(なんかよく解らないけどこれは不味い。知らない間に劣勢に立たされてるとかどういう事!?)なんとか反撃を繰り出すが、馬騰はタイミングをあわせて斬り上げる。その衝撃には耐えたものの、握っていた右手に痺れが走り左手で庇うように握り締める。「くぁっ・・・」先ほどとは逆に、曹操が後方へ飛び退いて距離を開ける。このままでは不味い。覚悟を決めるべきかしらね・・・と曹操が思った瞬間、追おうとしていた馬騰の動きがピタリと止まった。彼女は東を見つめ、「・・・ここまでですね」と呟き、曹操に背を見せ走り出した。「え・・・? 何が」と、曹操も東を見つめるが、すぐに理由は解った。翻る「公孫」の旗、砂塵を巻き上げて向かってくる軍勢。曹操に置いてけぼりにされた公孫賛が、足の速い軽騎兵数千を引き連れて漸くに到着したのである。走っていった馬騰は、徐晃らを無視して突破してきた龐徳に引き上げられ、彼の馬に相乗りになりつつ自軍の兵に撤退を呼びかけ退いていく。公孫賛の援軍に龐徳が一番に気付き、馬騰、曹操という順番だったようだ。普通ならば、とうの昔に気づいていただろうが、味方の援軍に気付かぬほど追い詰められていた、というのが一番正しい。今回ばかりは本当に危なかった・・・と曹操は無い胸を撫で下ろした。この奇襲戦における馬騰側の被害は2000ほど。曹操側は4000ほどの死傷者を出している。本来ならば追撃を仕掛けるところだが、前衛の夏侯淵部隊も損害が出ており、本陣部隊の消耗も激しいためにそこまでの余裕はなかった。戦力比から言えば馬騰側の被害が大きいのだが、4000のほとんどが曹操直下の親衛部隊と夏侯淵の率いた一部の主力部隊。戦力として秀でていた主力兵を多数失った、と言うことを鑑みれば実質的に曹操の敗北、と言っても良さそうだ。ただし、これ以降は公孫賛の援軍を得て息を吹き返した曹操軍が馬騰軍に猛攻を仕掛けていく事になり、馬騰は苦境に立たされることになる。悪いことは続くもので、西では親馬騰派であった羌族の迷当大王(めいとうだいおう)が、反馬騰派であった徹里吉(てつりきつ)に屈服させられてしまっている。徹利吉は余勢を駆って西涼へと侵攻し、武威・西平といった主要都市は陥落。そして、その事実を馬騰はまだ知らない。漸くに勝利が見えかかった曹操軍だが・・・まあ、夏侯淵やら典韋なんかは公孫賛に「お前らがいて、何で此処まで押し込まれてるんだ!?」と怒鳴られ、曹操本人も「先発するならするで一言言うくらいの伝令は出してくれ頼むから!」と叱られてしまっている。これに関しては完全に曹操のうっかりであって、公孫賛の言う事は全く正しい。ただ、この時。「ごめんなさい、完全に忘れ・・・ぁ。」「忘れた!? おいちょっと待て華琳今忘れたって言ったよなそんなに存在感薄いのか私はーーー!!?」「・・・(目逸らし」by曹操『・・・(ついっ』by典韋とか徐晃とか「・・・・・・(沈黙」by夏侯淵「ちきしょーーーーー揃いも揃ってぇぇえぇぇえええぇっっっ!!!!(涙)」曹操の危地を救った割りに、微妙に報われない公孫賛であった。~~~南中~~~南中は雲南。各部族の長やら何やらが、新たな孟獲(美似)への挨拶などを行っている。高順、そしてその後ろにいる孫家との仲を深めたいという思惑もあるし、きっちりと後見がついて助力もあるのなら、劉璋よりも孟獲に付く方が利口だという読みもある。そんなこんなで、各部族長の挨拶や献上品の目通りなどを雲南城内、王の間で行っているのだが・・・何故か、その場に高順も同席させられていた。玉座には孟獲。その右には孟節、左には高順。彼らのいる場所は少しだけ段差があって、人を上から見下ろすような位置になる。彼らの前には、阿会喃(あかいなん)という第三洞の主が傅いている。他の洞主もだが、孟獲への挨拶もだが高順への目通りが目的である。現在、高順が着用しているのは「あの」髑髏龍の鎧。軽装鎧は一時的に止めて、この無駄に威圧感のある鎧を着ていた。それは周りが「蛮人王だか蛮族王だか呼ばれてるのに、重圧感の無い格好は駄目だろう」「ですよねー」「というわけで、こんなこともあろーかと高順にーさんの鎧は持ってきてるでぇ」「さすが李典さん!」「えっ」と、こんな流れで高順の意見など完全無視のまま状況進行されてしまっている。確かに、何も知らない人が見れば「とんでもない場所だ・・・」と尻込みするのだろう。だが、全てを・・・というか、普段の高順のへたれっぷりを知る人から見れば、笑いを堪えるのに賢明なくらいだった。そもそも、高順本人が鎧の下で冷や汗をかきっぱなしなのだ。(やばいよまずいよ、俺って見下ろされるのは慣れてるけど、宮廷とかで見下ろすのなんて初めてですようわこの阿会喃って人俺の事ガン見してるし疑われてることなくね? やばいやばいやばいやばい・・・)本当に駄目駄目である。謁見っぽいイベントが終わった後、高順は中庭でぐったりしていた。あの後、孟節から「では、高順殿から皆様方へお言葉を」と予告無しの無茶振りアドリブを求められ、汗だくだくになりつつ一言を言う羽目になり、後で李典にはゲラゲラ笑われ・・・。はっきり言ってストレスだけが溜まる場だった。もう二度とやるものか。 この場にいるのは彼一人ではなく、いつも通り個人での手合わせや訓練の為に、主だった人々が集まっている。交阯からの後続部隊は到着するのに少し時間がかかるそうだが、黄蓋の部隊は既に到着していた。どうも高順が勝手に話を進めたことに怒っていたらしく、出会いがしらに高順が一方的にシバかれた。曰く「独断専行が過ぎるわ!」なのだが、高順に与えられた仕事と権利を考えれば、それもまた止むなしと言う側面もある。時間をかけることは好ましくないし、悠長なことなどやっていられないという事は黄蓋にも解っていたが、彼女も立場上、怒りたくなくても叱責しないといけない。だからと言って一方的にシバくのはどうかと思うが。今は、と言うと、黄蓋は孟節を捕まえて色々と話し込んでいる。状況・・・つまり、南中側では孫家の、孫家から見れば南中の実情、南中から見れば孫家の実情。両者、知っておきたい話だ。不味いところはぼかしたり逸らしたり。南中は高順が仲介として中に立ったからこそ孫家との同盟にも応じた、という立場を強調したり。中庭では蹋頓が正座で座っている。ニコニコ笑顔で李典達の立会いを見守っている彼女の脇には、包帯や軟膏の入った箱が置いてある。実力者同士の立会であり、もしものことがあった場合はこれだけでは足りない気もするが、無いよりはましと言ったところか。そんな彼女からは少し遠い場所には孟獲や、ミケ・トラ・シャムといった仲良し4人組が固まって眠りこけている。すぴー・・・と、仲良く眠っていた娘達だが暫くしてそのうちの1人、桃色の髪のシャムと言う少女が目を覚ました。皆で固まって寝ていたところ、周りで眠っている娘たちの寝返り攻撃を喰らって「むぅー・・・」と目をこすりつつ起き上がったのである。この時、たまたま蹋頓の姿が目に映り、この娘はふらふらと彼女のほうへと歩いていった。蹋頓からも、自分のほうに向かってくるシャムの姿は見えていたがまさか自分を目指して歩いてくるとは思っていない。なので、シャムが自分の目の前でぴたりと止まった時、蹋頓は不思議そうな表情を見せた。「・・・(じぃぃ」「? あの、何か・・・?」シャムは答えず、ただ蹋頓を上目遣いで見つめてモジモジしている。「・・・???」蹋頓は少し首を傾げて(何をしたいのでしょうね?)と考え、暫くして「ぽむ」と手をついた。多分、だが。甘えたいのだろうか。この子の年頃なら・・・と思ったのだ。それなら、と蹋頓は手を伸ばしてシャムを両脇から抱きかかえて、自分の膝の上に乗せた。そのまま、髪を撫でて抱き寄せる。「あやっ・・・うにゃぁ~~・・・(ごろごろ)」最初は戸惑うシャムだったが、すぐに目を細めて気持ち良さそうに喉を鳴らす。「ふやぁぁ・・・蹋頓しゃまぁ~~~」「あらあら、ふふ」こうして昔は丘力居の世話をしていたものです・・・難楼達とうまくやっているのでしょうか。と、彼女は姪と、信頼する友人らの事を脳裏に思い返した。丘力居を育てていたこともあり、子供の扱いには慣れている。この娘よりは年齢は下になるが、それくらいの子を授かっていてもおかしくない蹋頓である。「みゃぁぁ・・・蹋頓しゃま、かあ様みたいなのにゃ~・・・」「・・・。あの、シャムちゃん?」「にゃぅ?」「あなたのお母様は?」「・・・解らないにゃあ」蹋頓の質問に、今までほっこりしていたシャムの笑顔が消え、一気に表情が暗くなる。「前に「しょく」が来た時に「ちょっと行って来るから大人しく待っててね」ってとう様とどこかに行って、それっきり帰ってこないにゃあ・・・」「それは、何時ごろ・・・?」「何ヶ月も前にゃあ。シャム、寂しいにゃ・・・」(;;)な顔になってぐしゅぐしゅ鼻を鳴らすシャム。興味本位で聞いたことを、蹋頓は後悔した。恐らく、シャムの父母は先代孟獲に従って、蜀との戦いに臨んだのであろう。その時に孟獲軍は、先代孟獲本人も含めて壊滅したという話を聞いている。恐らくは、その時にこの子のご両親も・・・。同情もあったが、どうにも人事と思えなかった。だから、かもしれない。蹋頓はほとんど無意識に口を開いていた。「でしたら・・・シャムちゃんのお母様が帰ってくるまでの間、私のこと「も」かあ様と思っても良いですよ?」「ふぇ・・・?」「シャムちゃんが迷惑でなければ、ですけど。」子供にはちょっと難しい言い回しだが「も」と言う事で、自分の母親を忘れる事はないですよ、と言うのだ。この子の父母が無事かどうかは解らない。多分だが、生存は絶望的だろうし・・・生きて戻ってきてくれればそれに越した事はないが。最初は良くわかってないシャムの頬にさっと赤みが差し、蹋頓に思い切り抱きついてくる。「にゃああ♪ かあ様っ♪ 」「はい、何ですか?」「にゃぁ~~~♪」本当に嬉しそうである。蹋頓も笑顔でシャムを優しく抱きしめる。ふと周りを見ると、何時の間にやら他の娘たち・・・つまり、孟獲、トラ、ミケまでが周りで蹋頓をじぃ~~~~っと見つめていた。「・・・あ、あら? どうしまs「シャムばっかりずるいのにゃー!」「ミケもー!」「トラもーーー!」え、あのちょっと・・・きゃあっ!?」自分たちも撫でて欲しいらしかった彼女たちは一斉に蹋頓に抱きついた。「とーとんは、美似の母様になるのにゃ!」「ははしゃま~♪」「はは~♪」「かあ様ぁ~(すりすり」「え、ちょ・・・美似ちゃんには孟節様が・・・というか、皆さんのご両親はどうn」「姉は姉で母様じゃないのにゃあ」「・・・それって物凄く酷いことを言っているような気がします・・・」孟節様もお立場が無いですね・・・と、変なところで同情してしまう。ここで終わればそれなりに済んだだろうが、ここでシャムが余計な一言を口にした。「うゃ・・・蹋頓しゃまがかあ様だと、とう様は誰?」尤もな疑問であるが、蹋頓はこれまた無意識に高順を指差して「あの方がお父様です」とのたまった。指差された高順は意味が解らず「え、何が?」と返すが、孟獲達は高順に近寄っていく。「ばんぞくおーが父様なのかー?」「ととしゃまー?」「ちちー?」「とう様?」「・・・。蹋頓さん。これは一体何事ですか。」子供たちの行動と発言に戸惑う高順は蹋頓に説明を求め、説明を受けた高順は「・・・何で俺の知らぬ間にそういう事を言っちゃいますかね」と嘆息した。そんな高順をじぃ~っと見上げる4人の娘たち。(いかん。俺はこういうのには弱いっ・・・)元来が子供好きな高順に、これはきつい。無垢な表情で見つめられるとそりゃあもうやばい。邪気が無く、好意的に見てくれる子供らの視線に、しばらくしてから高順は根負けしたかのように項垂れた。「・・・まぁ・・・す、好きに呼べばいいんじゃないかな!?」『にゃー♪』その後はもう、お子ちゃま達の独壇場。シャムが蹋頓に「かあ様ー」と抱きついて、胸をはだけさせて乳に吸いつくわ、それで蹋頓が色っぽい喘ぎ声を出して同性の李典や周倉にまで「うわぁ・・・襲いたいっ・・・」と思わせるわ。もしもこの場に趙雲がいれば、子供たちに好かれた蹋頓を見て寂しそうに笑うか、それとも表面上では何も無かった様に振舞うかしたのだろう。ともかく、何時の間にか4人も子供を持つことになってしまった高順が(俺・・・南中に来たの間違いだったかも・・・)と、身も蓋も無いことを思いつつ隅っこのほうで三角座りしてたりするのだが、時既に遅し。中庭に程近い渡り廊下にて。父様だの母様だの言われて、孟獲達に纏わり付かれる高順達の姿を見て、黄蓋は「親子、か・・・」と少し感慨深げであった。戯れ少し、殆ど本気で「子作りどうよ?」と高順に水を向けた黄蓋。おかしな意味で子供が苦手であった彼女だが、どちらかといえば睦まじい親子のように見える高順らを見れば、悪くない。と思うのだ。「ふむ・・・もっと本気で迫るのも良いやも・・・って、どうしたんじゃ?」orz、とその場で突っ伏している孟節を見て(ああ、そういえばこやつは孟獲の姉じゃったな)と思い出す黄蓋。「・・・お主・・・立場が無いのぅ」「腕白でも良い、逞しく育って欲しい|||orz」「あー、いやその・・・イ、イキロ?」壮絶に落ち込む孟節と、(何故か)それにフォローを入れる黄蓋の姿があったとか無かったとか。~~~楽屋裏~~~3分待ってやる。今すぐ俺に2万貸すか、俺の半ベソ土下座を見るか選べ(某県の方言で「お待たせしてごめんなさい、あいつです」の意味)(挨拶正直に言います。馬騰も龐徳も強くしすぎましたごめんなさいorzさて、特に意味も無い補足ー。馬騰さんも気の使い手と判明したっぽですが・・・そうなると、この世界では使い手が三人いますというか判明しましたね。一応、性能差など。 気の総容量(多い順楽進・閻行・馬騰 威力閻行=馬騰・楽進燃費・・・つうか、気の使用の上手さ馬騰・閻行・楽進総容量はあれです。エロイことやりまくってるk(削除というのは冗談にしたいところですが、やっぱり実戦に身を置いているとか、現役とか年齢とかもあるのでしょう。馬騰さんは病気で実戦から離れていた期間も長いでしょうからー。威力は・・・まぁ、純粋に戦闘能力の違いから。燃費は、楽進は他2人に比べれば修行が足りないという事でしょうか。気の使い方に無駄が多いとかそんな感じ。多分、馬騰も癒術使えるのではないでしょうかね?あと、喘ぎ声を上げた蹋頓+戯れる子供たちを見て子が欲しくなった黄蓋のエロとかも想定してましたが面倒ですし描きませんし削ります。文句のある方はn(以下中略)とか言うk(中略)やk(中略)にちょk(中略)ということです(何?も1つ、これは原作のところでも思ってたことですが・・・何で南蛮勢には大人がいないのだろう、とか思ってまして。このお話では蜀(りゅーしょー)軍と戦って数がいなくなった、ということにしました。南蛮軍って、ミケ・トラ・シャムと、それに良く似た量産型だけなんですよねぇ・・・蜀漢(劉備)軍との戦いで殆ど死んだ、でもいいのですがソレやると・・・ねぇ。諸葛亮率いる蜀漢軍との戦いで大多数死んでいるのも事実なんですけどね。正史にしろ演技にしろ。リア充なんて爆発しろ! としっとマスク4545号なあいつでした。それではまた次回ノシ