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No.11512の一覧
[0] 迷い込んだ男 (オリ主×とらハ&リリなの+仮面ライダーAGITΩ) 【十一話 大幅改訂】 [Ifreet](2010/09/29 13:50)
[1] 迷い込んだ男 第一話 「出会い」 【大幅修正】[Ifreet](2009/10/31 00:16)
[2] 迷い込んだ男 第二話 「学園生活」 【加筆修正】[Ifreet](2009/10/31 00:24)
[3] 迷い込んだ男 第三話 「喫茶店 翠屋」[Ifreet](2009/09/02 00:38)
[4] 迷い込んだ男 第四話 「ようこそ高町家へ。」[Ifreet](2009/09/02 00:40)
[5] 迷い込んだ男 第五話 「怒り」[Ifreet](2009/09/02 00:41)
[6] 迷い込んだ男 第六話 「覚醒の兆し」[Ifreet](2009/09/02 00:42)
[7] 迷い込んだ男 第七話 「入院生活」[Ifreet](2009/09/02 00:43)
[8] 迷い込んだ男 第八話 「疑惑」[Ifreet](2009/09/02 00:44)
[9] 迷い込んだ男 第九話 「遭遇」[Ifreet](2010/06/04 13:54)
[10] 迷い込んだ男 第十話 「雨と雷」 【大幅改訂】[Ifreet](2010/09/29 13:52)
[11] 迷い込んだ男 第十一話 「記憶の欠片」 【大幅改訂】[Ifreet](2010/09/29 13:50)
[12] 迷い込んだ男 第十二話 「猫まっしぐら」[Ifreet](2009/09/02 00:47)
[13] 迷い込んだ男 第十三話 「契約」[Ifreet](2009/09/02 00:48)
[14] 迷い込んだ男 第十四話 「覚醒」[Ifreet](2009/09/02 00:49)
[15] 迷い込んだ男 第十五話 「模擬戦」[Ifreet](2009/09/04 21:30)
[16] 迷い込んだ男 第十六話 「夏休み」[Ifreet](2009/12/12 22:18)
[17] 迷い込んだ男 第十七話 「月村邸」[Ifreet](2009/10/27 00:06)
[18] 迷い込んだ男 第十八話 「翠屋大パニック!」[Ifreet](2009/10/27 00:08)
[19] 迷い込んだ男 第十九話 「予期せぬ出会い」[Ifreet](2009/09/25 21:56)
[20] 迷い込んだ男 閑話 [Ifreet](2009/09/25 21:50)
[21] 迷い込んだ男 第二十話 「始まり」[Ifreet](2009/10/06 16:22)
[22] 迷い込んだ男 第二十一話 「青の嵐、2つのG」[Ifreet](2009/10/11 22:44)
[23] 迷い込んだ男 第二十二話 「苦悩」[Ifreet](2010/07/05 23:36)
[24] 迷い込んだ男 第二十三話 「彼と彼女の事情」[Ifreet](2009/10/25 21:00)
[25] 迷い込んだ男 第二十四話 「覚悟」[Ifreet](2009/10/27 16:41)
[26] 迷い込んだ男 第二十五話 「変化」[Ifreet](2009/11/13 17:18)
[27] 迷い込んだ男 第二十六話 「花見」[Ifreet](2010/06/03 10:37)
[28] 迷い込んだ男 第二十七話 「剣士」[Ifreet](2010/07/05 23:28)
[29] 迷い込んだ男 第二十八話 「装着」[Ifreet](2010/01/05 09:50)
[30] 迷い込んだ男 第二十九話 「青龍」[Ifreet](2010/07/05 23:30)
[31] 迷い込んだ男 第三十話 「赤い炎の剣」[Ifreet](2010/07/18 11:08)
[32] 迷い込んだ男 第三十一話 「準備」[Ifreet](2010/06/23 20:13)
[33] 迷い込んだ男 第三十二話 「学園祭」 前編[Ifreet](2010/07/06 01:11)
[34] 迷い込んだ男 第三十三話 「学園祭」 後編[Ifreet](2010/02/25 20:50)
[35] 迷い込んだ男 第三十四話 「射手」[Ifreet](2010/04/01 20:56)
[36] 迷い込んだ男 第三十五話 「ティオレ・クリステラ」[Ifreet](2010/05/04 02:15)
[37] 迷い込んだ男 第三十六話 「再会」[Ifreet](2010/05/06 23:51)
[38] 迷い込んだ男 第三十七話 「守りたいもの」 前編[Ifreet](2010/05/09 23:58)
[39] 迷い込んだ男 第三十七話 「守りたいもの」 中編[Ifreet](2010/05/29 02:03)
[40] 迷い込んだ男 第三十七話 「守りたいもの」 後編[Ifreet](2010/05/31 07:34)
[41] 迷い込んだ男 第三十八話「衝撃」[Ifreet](2010/09/29 13:53)
[42] 迷い込んだ男 超☆番外編「まさかのドゥーエEND」 [Ifreet](2009/10/22 00:39)
[43] 迷い込んだ男  【嘘予告】 仮面ライダーΩYAJI[Ifreet](2009/11/14 13:21)
[45] 迷い込んだ男 番外編 テスタロッサ家の平和な日常[Ifreet](2010/07/05 23:34)
[46] 迷い込んだ男 【ネタ】Fateとクロス 序章[Ifreet](2010/07/05 23:38)
[47] 迷い込んだ男 【設定】 [Ifreet](2010/07/18 11:02)
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[11512] 迷い込んだ男 第二十六話 「花見」
Name: Ifreet◆6da6c70d ID:1c3ae593 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/03 10:37
今日は土曜日、時間は11時を回ったところ、そして天気は見事な日本晴れ。

花見を行う現地には12時集合予定だ。


「お、おじゃましまーす。」

「そんな、おっかなびっくり入ってこなくても……普通の家だよ?」

「い、いえ、先輩のお家に来るの初めてなので…何となく緊張しちゃって。」


今、俺の家には那美ちゃんと久遠がやって来ている。

那美ちゃんは自転車くらいしか移動手段が無い、との事だったので、少し前に俺がバイクで迎えに行った。久遠は毎度の如く那美ちゃんが背負っているリュックの中だ。


「いらっしゃい。那美ちゃん、お久しぶり。」

「はい、凛さん。翠屋で一緒に働いて以来ですよね。」

「もう少ししたらフィアッセさん達も来るだろうし、その辺に適当に座っててくれ。」

「あ、はーい。」

「くーん!」


本当はバイクで行こうとしていたのだが、フィアッセさんの友人『若き天才』こと、アイリーン・ノアさんに送って貰う事になったのだ。

何でも、彼氏とデートに行くついでらしい。


「リョウー。」


玄関からフィアッセさんの声が聞こえる。

どうやら、お迎えが到着したようだ。


「よしっ、那美ちゃん、それに凛と久遠も行こうか。」

「はい。」

「くーん」

「分かりました。」


デートに向かうアイリーンさんを待たせては悪いので、俺たちは取り敢えず車に乗り込んで、目的地まで運んでもらう事となった。


向かうは……九台桜隅。





…………ちなみにその頃、勇吾は――――


「はぁ、みんなは楽しく花見か。それに比べて俺は……」

「シェリー、次のターゲット出して。勇吾、10発中5発真ん中に当てるまで終わらせないから。」

「(ちくしょー!!)」


心の中で絶叫しながら、GM-01を、ターゲットに構えて撃ち続ける勇吾。

美少女2人と一緒に訓練、そうは言っても、やっぱり納得がいかない勇吾だった。


「一発しか当たって無いじゃないか。シェリー、もう一回!」

「ねぇ…少し厳しすぎない?リスティ。」

「これくらいが丁度良い。まだまだ実力不足だからな。それに、こっちは殆ど此処から動けないのに花見に行きたいなんて言った罰だ。」

「リスティ……逆恨みって言う言葉を辞書で調べて、赤線を引いておきなさい。(はぁ、流石に可哀想だし、後で慰めてあげようかな。)」


いろいろ理屈を重ねるリスティであったが、結局のところ、自分がさざなみ寮の花見に行けないからこその逆恨みなのである。











二十六話「花見」











そして、俺たちは目的地に着き、アイリーンさんにお礼を言って車を見送った後、高町家や月村家の面々と落ち合う。


「お待たせ。」

「よ」


集合場所には、すでに高町たちが揃っていて、その後に俺たち、そして最後に月村たちが合流する形になった。


取り敢えず、手持ちの荷物の大半は俺と高町、そして士郎さんが担ぐ事に。


「あ、ゴメンね高町君、私たちの荷物持って貰って。」

「いや、鍛えてるからどうって事ない。」

「少し持ちましょうか?」


高町家の荷物は士郎さんが担いでいるので、手が空いていた高町は月村たちの荷物を担いでいる。


「ふむ、軽そうだなぁ、恭也。お前には不足だろう?だからそこで拾った手頃な岩でも乗っけたいんだが…いいか?」


何か悪戯心が刺激されたのか、士郎さんが高町にちょっかいを掛け始めた。

つか、桃子さんも美由希ちゃんも楽しそうに笑ってるんですけど、助ける気0か、あんた等。


「止めろ、父さん。リュック傷んだら如何するつもりだ、家のじゃ無いんだぞ。」



『(そう言う問題!?)』



瞬間、俺たちの心の声が恐らく1つになった。

高町的に、重量が増えるのは問題ないらしい。


「楽しみだなぁ、どんな所なんだろう。」

「絶対に気に入るよ、すっごく綺麗なところだもん。」

「すずかがそう言うなら期待できそうね。実は私、お花見って初めてなのよ。孤児院育ちだったし、パパは色々忙しいから。」


アリサちゃん達も楽しみなのか、今からはしゃいでいる。


「皆さん、こちらです。あ、ここを登れば見えてきますから。」


さくらさんの案内の元、山の中の歩道を登って行く。

そして――――――――




「ふわー……」


「凄い凄い!」


「うわーーー。」


「はーーーーー。」


「……ほー。」


「…ぅわ……すっげぇ…」



……溜め息が出た。

湖と、きれいに整備された歩道の当たり一面に、桜がこれでもかと咲き乱れている。

やわらかな風に吹かれて舞う桜の花、その光景は俺の目にはとても幻想的に映った。



「すっごーーーい」


「これは……見事なもんだ。」


「はやー…」


「…凄いわねー、圧倒されそう。」


「すっごいやー…」


「凄く…綺麗です。」


「くぅん♪くぅん♪」



全員が感嘆の声を洩らす。

ここまで綺麗な桜を見たのは初めてだ。

それは、皆も同じだったのだろう。

この光景に目を奪われ、声が出てこない。


「…気に入って、」

「頂けましたでしょうか。」


先導していた月村とさくらさんがそう言って俺たちの方を振り向く。


「いや、もう、気にいるなんてものでは!ねぇ、あなた?」

「ああ、こんな素晴らしい場所に連れて来て頂いて、感謝の極みですよ。」

「本当にアリガト!えーっと………」

「私がさくら、こっちが姪の忍です。」


それを聞いた途端、感極まったのか、桃子さんはさくらさんと月村にガバッと抱き着いた。


「ありがとう!さくらちゃんに忍ちゃん!!」

「ふふっ」

「あははっ」


2人は目を合わせ、笑い合った後、互いにグッと親指を立てた。


「取り敢えず、どこかその辺に荷物、置いちゃいます?」

「はい!」


月村のその言葉に、美由希ちゃんは元気に返事を返し、持っていたシートを広げ始めた。

そして、俺たちは、早速その上に荷物を広げたのだった。









「みんな、飲み物は行き渡りましたかー?」

「よし、じゃあ……。高町家関係者一同の健康と平和……そして、素晴らしい友人との出会いと温情に感謝して、僭越ながら私…高町士郎が、乾杯の音頭を取らせて頂きます。」

「では皆さん、グラスを取って頂いて……」

「………かんぱーーーいっ!」


『かんぱーーいっ!』


桃子さんと士郎さんの合図で、俺たちはグラスをぶつけ合い、それぞれの飲み物を飲む。


「それじゃあ、乾杯も済ませたところで、初対面の人も多い事だし、簡単に自己紹介でもしていきましょうか。」

「そうだな、じゃあ美由希、まずはお前からだ。後はそこから時計回りで順番にしていってくれ。」


桃子さんも士郎さんも、生き生きした顔をしている。

それにしても、流石は年長組、見事に仕切っている。


「えーと、高町家の長女です。高町美由希、って言います。風芽丘の1年A組です…えと、よろしくお願いします。」


「綺堂さくらです…海鳴大学で大学院生やってます。専攻は、かつて存在していたとされる日本の古代文明が中心です。」


「ノエル・K・エーアリヒカイト…忍お嬢様の屋敷でメイドをさせて頂いてます。趣味は……特にありません。それで、こっちが妹のファリンです。」


「ふぇ…え、えっと、ファ、ファリン・K・エーアリヒカイトと言います!趣味は、えとえと、猫さんたちのお世話…です。」


「月村すずかです。私立聖祥大附属の2年生です。趣味は読書で、好きなものは猫さん。あと、体育がちょっぴり得意です。」


「あ、高町なのは…です。すずかちゃんと同じで、聖祥の2年生です。趣味はゲームとかで、機械いじりも結構好きです。」


「アリサ・L・バニングスです。少し前まで孤児院にいました。特技…じゃ無いですけど、勉強は得意です。」


「…高町恭也です。高町家の長男で、風芽丘3年G組です。趣味は寝る事、特技は何処でも眠れる事です。」


「月村忍です。藤見君や高町君のクラスメイトで…藤見君の後ろの席です。…趣味……読書とゲーム…後は、映画とか…かな。」



美由希ちゃんから順々に回って来て、ついに俺に順番が回って来た。



「藤見凌です。2人と同じ3年G組……翠屋でアルバイトやってます。趣味は月村と同様で読書とゲームです。」


「ちなみに、凌君は喧嘩とか強いぞ?何せ、うちの恭也や美由希と良い勝負したからな。」


せっかく無難な事言って、手っ取り早く締め括ったのに士郎さんが余計な一言を言いやがりました。


「高町君って確か……」

「うちは俺たち兄妹と父さんが剣術家なんだ。少し前に藤見と試合してな、中々強かった。」

「あはは、私は危うく負けちゃうところでした。」

「……はー、凄かったんですね、先輩って。」

「へぇー、凄いんだ、藤見君って。」


いやー!やーめーてー。

能力使ってなかったら俺なんて瞬殺なんだから、そう言う事言わないでくれー。

罪悪感が、罪悪感がー!



「あー、もうっ!俺の事はいいんだよ!ほら次、那美ちゃんの番だよ。」



俺は強引に話を変え、那美ちゃんに自己紹介するように促す。

そこっ!逃げたとか言うな!


「あ、はい。えーっと……神咲那美です。風芽丘の2年E組で、西町の八束神社で、そこの管理代理と、巫女のアルバイトをやってます。」


「……くーん…」


「あ、この仔は…わたしの友人で久遠って言います。」


「くぅん!」


久遠は、自己紹介が終わると、那美ちゃんの膝の上に登り、丸くなった。


「…フィアッセ・クリステラです。職業は、海鳴商店街喫茶店『翠屋』のチーフウェイトレスと…あと、ちょっとだけ、歌手の卵もやってます。」


「凌の従姉で藤見凛と言います。趣味は家事全般、特に料理が楽しいですね。」


「高町桃子です。喫茶『翠屋』のパティシエと、経理も担当しています。」


「俺は高町士郎。桃子と一緒に、『翠屋』を経営していて、店長兼マスターをやってます。桃子の作るお菓子は絶品ですよ。今度、是非食べに来て下さい。」



と、一頻り自己紹介が終わる。

しっかし、士郎さん……流石…なのか?自己紹介ついでにちゃっかり店の宣伝もしてるけど。


「じゃ、とりあえず…皆で仲良く、やりましょうか。」


桃子さんの言葉に皆が返事をし、それぞれ食事と話、花見へと入って行く…。


「あ、お料理はこちらにありますから…皆どうぞ好きなだけ食べて下さいね。」

「おつまみ系はこっち、食事系はこっちの重箱になります。」


リニスとノエルが重箱の蓋を開けて、ジャンル別に分けていく。

ちなみに、弁当を作ったのは、桃子さんとノエル、それとリニスだったりする。


「あ、じゃあ…いただきます。」

「いただきます。」

「じゃ、俺も。」


月村と那美ちゃんと一緒に重箱へと箸を伸ばし、思い思いのおかずを皿へ載せる。


「んんっ!」

「…はー…」

「うまっ!」


月村はリニスの、那美ちゃんは桃子さんの、そして俺はノエルの作ったのを食べる。

桃子さんやリニスの作った物がおいしいのは分かり切ってたけど、ノエルさんの作った物もそれに負けないくらいおいしい。

月村たちも、驚いたように2人で顔を見合せる。


「凄い、おいしい!」

「本当ですね。」


2人はそう言って、更に小皿へといくつかの料理を載せていく。

かく言う俺も、3人が作ってくれた料理を1種類ずつ小皿に取っていく。


「凄いなぁ、お料理上手なんですね、お二人とも。」

「ふふっ、ありがとう忍ちゃん。」

「たくさんありますから、どんどん食べて下さい。那美さんも如何ですか?」

「あ、はい。ありがとうございます。」


自分の料理を褒めて貰って嬉しいのだろう、桃子さんもリニスもニコニコ笑いながら、2人の小皿に料理を取ってあげている。


「藤見様、こちらも如何ですか?」

「あ、すいません、ノエルさん。」


空になった俺の小皿を見て、ノエルが新たに装ってくれる。


「いえ、やはり自分の作った物を美味しそうに食べて貰えることが何より嬉しい事ですから、遠慮なさらないで下さい。」


柔和な笑みを浮かべて、俺に小皿を渡すノエル。

心の底から、本気でそう思っているのだろう。そう確信できるだけの自然な笑顔がノエルの顔には浮かんでいた。


「あなた、はいっお酒。」

「おぉ、悪いな桃子、おっとと。」


桃子さんが士郎さんのグラスに酒を注ぐ。

まぁ、車で来てるからそこまで大量には飲まないだろうけど。


「忍ちゃん、さくらちゃん、お酒はどう?」

「あ、えーっと…実は、ちょっと好きです。」

「私も、お酒は大好きですね。藤見君や高町君はどうなの?」


さくらさんから、俺と高町に質問が飛んできた。


「俺は飲めませんね。」

「え、全く駄目なの?」

「以前、父さんに飲まされた時は1口でダウンしました。」

「ありゃりゃ、そんなに弱いのか。」


月村は、俺の言葉に苦笑しながら、グラスの酒を傾ける。


「……俺も藤見と同じで下戸だ。」

「あら、高町君も?お父さんの方は良い飲みっぷりなのに。」


さくらさんも、そう言ってグラスの酒を一気に飲み干す。


「そうなのよー。お酒飲めない、甘いもの苦手と…お酒好きで甘いもの大好きの士郎さんの息子とは思えないわ。」

「そうだぞ、俺が桃子にプロポーズしたのだって、桃子が作ったシュークリームに感激したのが切っ掛けなんだ。そんな事じゃ、いい恋人は出来ないぞ?」

「あのな、とーさん。大体、甘い物が好きな事と、恋人が出来る出来ないは関係ないだろう。」


こめかみを押さえながら士郎さんに反論する高町。


良く見ると…だが、確かに士郎さんの顔が赤くなっている。あれ?って事はそろそろ――――


「思い出すなぁ、若かりし青春の日々。」

「そうねぇ、士郎さんと出会った、あの運命の日。」

「桃子。」

「士郎さん。」


見詰め合って完全に2人の世界に突入する万年新婚夫婦。

これを見るのが初めてな忍とさくらさんは、余りのラブラブっぷりに顔を若干赤らめている。


「ねぇ藤見君、みんなスルーしてるけど、これっていつもの事なの?」

「まぁ、大体。酒が入ってなくてもいつかはこうなってたでしょうけど。」

「そ、そうなのね。けど、桃子さんは良い旦那さんを見つけたわね。中々いないと思うわよ?周りを気にしないでここまでいちゃつける夫婦なんて。」

「まぁ、確かに羨ましくはありますね。流石に、ここまでは無理でしょうけど。」


まぁ確かに、そんな人と結婚できるんなら幸せだろうな。


「あ、シノブちゃん、注ごうか?」

「え?あ、お願いしますフィアッセさん。」

「オッケー、それじゃあ、とぽとぽとぽ……っと。」

「…あ、ありがとうございます。」

「サクラさんもどうです?」

「頂くわ。ありがとうね。」

「リョウと、恭也は?」

「すいませんがパスで。」「…同じく。」

「ふふっ♪りょーかい。」


月村は若い子向けの果実酒を、さくらさんは日本酒をグラスに受け、それをくーっと呷る。

どちらも酒に強いのだろう、あっという間に飲み干してしまった。


「はぁ……」

「ふぅ、美味し。」


「あ、いける口だね2人共……じゃあ…はい、もう一杯。」

「ありがとうございます。」

「ありがとう。フィアッセさんも飲みましょう?」

「おとと、はい、じゃあ有り難く。」


『乾杯っ』

チンッとグラスを合わせ、3人はそれをぐいぐい飲み干していく。


「はぁー、おいしー!」

「ホントね。桜を見ながらだと格別だわ。」

「そうですねー。」


俺と高町が飲んでいるのは単なる炭酸飲料だが、確かにさくらさんの言う通り、いつもよりも美味しく感じられるから不思議だ。


「♪……」


月村は慣れた手つきで果実酒を飲む。

ふと、月村の方を見ると、何だか幸せそうな顔をしていた。

この表情が見れただけでも、誘った甲斐があるように思えた。




「すずかちゃん達ー、甘酒はいかがですか?」

「わーい、甘酒ー。」


ファリンさんがなのはちゃん達の湯飲みに甘酒を注ぐ。

なのはちゃんの様子から察するに、甘酒が大好きなんだろう。ソワソワしながら、ファリンさんが注ぎ終わるのを待っている。


「はー、あったか…。あ、久遠ちゃんも、ちょっと舐めてみる?」

「くぅ?」


なのはちゃんが用意してきた油揚げを、はむはむと食べながら、アリサちゃんに向かって首を傾げる久遠。

アリサちゃんは小皿をすずかちゃんから受け取り、久遠に少し甘酒を振る舞う。


「………」


久遠は、ふんふんと匂いを嗅いで、少し離れたかと思うと……。

じっと、アリサちゃんの顔を見る。


「ん?どうしたの、美味しいわよ?ねぇ、すずか。」

「うん、ちょっとだけでも舐めて見て?ほら。」


ぺろ、と皿の甘酒をすずかちゃんが舐める。


「……………」


久遠は、差し出された甘酒をぺろ、と一舐めして……。


「…………………………」


気に入ったのか、すぐに又ぺろぺろと甘酒を飲み始めた。


「おお。」

「気に入ったみたいだね。」

「くーちゃん、かわいー♪」


一心不乱?に甘酒を飲む久遠の姿を見て、なのはちゃん達もまた甘酒に口を付け始める。



「神咲先輩は、お酒は…?」

「あ、私も全然ダメなんですよー。」

「うーん、じゃあ、甘酒は?そっちも、ダメですか?」

「えーと、どうだったでしょう。あんまり、飲んだ記憶が無くって。」


お酒がダメなら、せめて…といった感じに、那美ちゃんに甘酒を進める美由希ちゃん。


「とりあえず、美味しいですよ?えっと、ポットは……」

「あ、はーい。こちらにございますー。わきゃ!!」


ポットを持って行こうとしたファリンから上がる悲鳴。

ぐらりとファリンの体が前へと傾き、それに伴ってポットも傾きかけている。


「(まずっ!)」


逸早くそれに気付いた俺は、即座に能力を使い、身体能力を跳ね上がらせる。


「はうっ!」

「あ、あぶねぇぇぇ。」


『おぉー!』


今のを見ていたらしい周りの連中から声が上がる。

しっかし、間一髪とは正にこの事だ。完全にこけてしまう前に、何とかファリンを抱きとめる事に成功した俺は、安堵の息を吐いた。

もし間に合わなかったらと思うとゾッとする。あのままなら、間違いなく那美ちゃんが被害を被っていただろう。


「はわっ!ふ、藤見さん。ありがとうございました。」

「いや、大惨事にならなくて良かったよ。」

「本当にすいません。わたし、いつもドジばっかりやっちゃって。」

「いえいえ、それよりも、那美ちゃん達にその甘酒、注いであげて下さい。」

「は、はい!分かりました。」


ふぅ、と一息ついて、再びシートに座り直す。

そして、未だに残っているグラスの中身を一気に飲み干す。


「…じゃあ、神咲様…どうぞ。」

「あ、はい、ありがとうございます。」


ファリンが、甘酒のポットから那美ちゃんの湯飲みに甘酒を注ぐ。


「はー……」

「…どうですか…?」


少し不安そうに聞く美由希ちゃん。桃子さんが作った物だし、気にしているのは味では無く、口に合うかどうかの方だろう。


「あ、美味しいです!」

「よかったー。」

「では、もう一杯いかがですか?」

「はいー!あ、ファリンさんも飲みましょう?」


にこにこと、那美ちゃんとファリンの2人は、互いに杯を注ぎあう。


「でも、なんだか不思議ですよねぇ…。」


湯飲みに入った甘酒をぷはっ、と飲み干し、那美ちゃんは俺に向かって話しかけてきた。


「先輩と出会ってなかったら私、ホントなら此処にいる皆さんとは、多分話をする事も無かったんですよねー。」

「そうなんだよねー、私も藤見君に会わなかったら、高町君や赤星君とも話す機会がなかったと思うし。」

「んー、そう言うもんか?」


隣で、フィアッセさん&さくらさんと飲んでいたはずの月村が、会話に入り込んで来た。


「私と神咲さんだって、普通ならそのまま話もしないで…3年間過ごしちゃうだろうし。」

「学年が違いますから。あ、先輩…甘酒、どうぞです。」

「お、ありがと。」


それぞれのペースで飲み物を空けながら、俺たち三人はまったりと会話を続ける。


「私が、先輩に出会えたのは、久遠のお蔭なんですよねぇ。」

「……くーん」

「あ、甘酒、おかわり?」


自然と目が久遠の方を向く。久遠は、よっぽど甘酒が気に入ったのか、何杯目かの甘酒を飲み干し、なのはちゃんから更におかわりを貰っているところだった。


「そうだった、そうだった!神社に狐が住んでるって噂を聞いたなのはちゃんに連れられて八束神社に行って、そこで会ったんだよなぁ。」

「先輩と、月村先輩は……どうやって?」

「私たち?うーん。」

「俺と月村が会ったのは、とある墜落事故が切っ掛けなんだ。」

「つ、墜落事故って……」

「実は、俺が崖から墜落したのを助けてくれたのが、月村なんだ。」


俺の意図を読み取ってくれた月村が、俺に話を合わせてくれる。


「あの時は、大変だったね。」


「確か…カナダだったよな。」

「…そう……。カナディアンピークの、西側ルート。『絶対不可侵の神の領域』って呼ばれてる地帯に、藤見君が一人でチャレンジした時の事。」

「はー………」


那美ちゃんは、俺たちの話に聞き入り、感心している。


「月村は、俺の命の恩人なんだ。」

「何を水臭い。私と藤見君の仲じゃない。」


月村が、俺に擦り寄って来て、ぽんっと俺の肩に手をやる。


「はー…そうだったんですか…いい、話ですね。だからお二人とも、そんなに仲がよさそうなんですね。羨ましいなぁ……すごく。」


折角だから、と原作での高町と月村の掛け合いを再現してみたんだけど…ホントに信じちゃったよ、那美ちゃん。

俺と月村の嘘話に感動してしまっている。

さて、じゃあそろそろ、本当の事を言いますか。

俺は月村と目を合わせて……。


「いや、実は…。」

「…ゴメンね?信じちゃった?」

「…………は?」


俺たちの告白に、那美ちゃんの目が点になっている。


「ホントは、この近くの臨海公園で…すずか共々、車に轢かれそうになったのを、助けて貰ったのが切っ掛けなの。」

「え?え?じゃ、カナダで絶対不可侵の登山、って言うのは…。」

「うん、まぁ嘘だね。」

「そ、そうだったんですか!?………って、車に轢かれそうになってたのを助けたのだって十分に凄いですよ!?」


おぉ、那美ちゃんがツッこんだ。多分、これは滅多に見れない貴重な光景じゃないかと思う。


「あはははははは。」

「あぅ、そんなに笑わなくても……。」

「あ、ゴメンゴメン。そんなつもりじゃなくて、何か楽しくなっちゃって。」

「楽しく…ですか?」

「うん。今まで、友達なんかいなかったから、こうやって大勢で集まってワイワイやったのなんか初めてでね…それが何となく、いいなぁって。」

「そうですね…何となくですけど、分かるような気がします…その気持ち。」


油揚げを食べながら、甘酒も飲んでいる久遠。

その久遠と戯れながら、甘酒を飲んでいる最年少組。

年が近い事もあり、話がはずんでいる様子の美由希ちゃんとファリンちゃん。

桜を見上げながら酒を飲み、笑い合っているフィアッセさんとさくらさん。

リニスとノエルは、メイドについてお互いに語り合っている。

桃子さんと士郎さんは、高町を捕まえてお酒を飲んでいる。


誰を見ても、幸せそうな表情をしていた。


「そうだな。俺も、分かる気がするよ。」











「はーい!ちゅうもーく!そんじゃ、ぼちぼち桃子さん、イッパツ、歌いまーーすっ!!」


桃子さんは、持ってきたステレオの電源を入れ、マイクを握り締める。


「いいぞー!桃子ー!」

「曲は『涙の海峡』……ばい、華村佳代。」


高町家持参のステレオから、演歌が流れ出す。

そして、桃子さん・士郎さん・さくらさん・アリサちゃんと、歌は順々に回って行き…マイクが俺たちの方まで回って来た。


「はい、次は藤見様たちですよ、どうぞー♪」


軽く酔っ払っているのか、いつにないハイテンションになっているファリンちゃん。

……こういうのって、歌える曲とかが無い場合はどうしたら良いんだろうか。

無言で高町の方を見る。

静かに目を閉じて顔を左右に振られた。

……仕方ない。


「月村、歌ってくれないか?」

「え、私?……ま、いっか。」

「曲は、なんにするー?ディスクに入ってない曲でも、私が弾ける曲ならオッケーだよ♪」


そう言った、フィアッセさんの膝元にはミニキーボード。

どうやら、リュックに入れて持って来ていたらしい。


「んー、じゃ、えーっと…これにしようかな。うん、これにします…17番。」

「はーいっ…17は……あ。」


フィアッセさんが、くすりと微笑んでステレオを操作すると、すぐに静かで穏やかな曲が流れ出す。

「月村忍さんが歌います。……SONG・BY・SEENA……曲は、ETERNAL・GREEN…………。」


…………………。


「………♪……」

「………わぁ」

「流石です、お嬢様。」

「綺麗な歌声。」

「凄いわねぇ、すずかのお姉さん。」


静かな旋律が辺りに響き渡る中、誰しもその歌声に聞き惚れていた。


「♪…♪………」


英語の発音も、綺麗だし、ステレオから流れる曲の旋律に乗って、自然と耳に入って来る。


「♪………………」


ぱちぱちぱちぱちぱちぱち


月村が歌い終わると、みんなが大きな拍手をする。


「お粗末でした。」

「凄い!上手い!」

「凄いですー!」

「あ、ホントですかー?」

「ちゃんとレッスンすれば、プロになれるよー。」

「あはは、ありがとうございますー。」


現役の歌手に褒められて、照れくさそうにする月村。


「やるね。」

「凄いな、ホントに上手かったよ。」

「あは、2人共ありがと。じゃあ、高町君、はいっ。」

「おねがいしまーす!」


那美ちゃんから声援を受け、月村からマイク手渡された高町は―――。


「すいません、歌は勘弁して貰えると助かります。藤見、行け。」


逃げやがりましたよ、この野郎。

高町は、マイクを俺にヒョイッと放り投げ、GOサイン。


「お前なぁ、俺だって歌はダメだよ。えー、リニ……ごほんっ!凛、行ってくれ!」


ぽん、とマイクをリニスに渡す。


「ええっ…わ、私ですか!?」

「スマン、頼む!」


両手を合わせて頭を下げる。

プライド?そんなものは無いです。


「うう…しょうがないですねぇ。じ、じゃあ、歌います。」


リニスは、フィアッセさんに歌の番号を教わり、その中で自分の知っている歌のナンバーを指名する。


リニスの、澄みきった歌声が流れて行く。

リニスは魔法世界の住人ではあるが、地球に来てから約1年。テレビを見て、大体の歌ならば知っているのだ。


「上手ですねー、凛さん。」

「ホント、綺麗な声ね。」

「うわー、リンも凄いなぁ。音程全然外さないよー。」


多分、その辺は元からのセンスなんだろうな。

もしかしたら、母さんがよくテレビ見ながら歌っているのを間近で聞いているのも影響してるのかも知れない。

あの人、カラオケとか行ったら大半の曲で90点近く出すらしいし。


「えっと、ありがとうございました。じゃあ、次はノエルが歌って?」

「わ、私がですか?!」

「お、それ良いわねー。ナイスです、凛さん!」


主である忍からそう言われては断れないノエル。

おろおろと視線を彷徨わせ、さくらさんに目を向ける。

けど、まぁ当然と言えば当然で、ノエルの無言の訴えを首を横に振る事で断るさくらさん。

さくらさんも興味あるんだろうなぁ、ノエルの歌。


「わ、かりました。では――――――」



………そうして賑やかな宴は続き――――――。





いつのまにか日も落ちて、そろそろ夕方になり始めていた。


「はー、お弁当も殆どカラになっちゃったし、綺麗な桜もいっぱい見られたし…そろそろ、お開きにしましょうか。」


桃子さんの言葉に、みんなが頷き、それぞれに帰り支度を始める。


「よし、じゃあ…燃えるゴミはこっちの袋、燃えないゴミはこっちに入れてくれー。」


士郎さんの合図で、それぞれにゴミを捨てて行く俺たち。

しかし、それも出来ない程に酔っ払っている面々もいた。


「ほにゃー、ちょっとふらふらするよー…」

「あぅ、わたしもー。甘酒で酔っ払っちゃうなんて、不覚だわ。あー、でも気持ちいー。」

「あわわ、危ないよ、2人とも。うん、しょ!」


あっちへふらふら、こっちへふらふらと、足がおぼつかない2人を、真ん中に入って支えるすずかちゃん。


「うーん……はー、いーきもち…………」

「…くぅぅぅん…」


那美ちゃんと久遠も、へろへろになってしまっている。

信じられるか?那美ちゃんが飲んでたのって、甘酒なんだぜ?

甘酒…だよなぁ。たかだか甘酒で、よくもここまで酔えるなぁ……。


「那美さん、立てます?」

「あ、はい…ちょっと待って下さい。…ええと…おろろ。」


那美ちゃんはそう言ったものの、台詞とは裏腹に体の方はふらふらとよろけ…。


「あわわ、わわ」


美由希ちゃんに向かって倒れこむ。


「はわっ!美由希さん!」


ファリンちゃんが、2人を支えようと美由希ちゃんの背後に回る………が。


「へぅ!」

「むぎゅ…」


支えきれずにそのまま、ずでんと3人は転んでしまった。那美ちゃんは美由希ちゃんの胸に顔をうずめる形で倒れ込み、ファリンちゃんも2人分の重さに潰されて、うんうん唸っている。


「はあぁ、す、すみません……っっ」

「あ、その、いえ……ごめんなさいっ」


顔を上げて、美由希ちゃんに謝る那美ちゃん。


「むきゅう……」


「え?あ、あぁ!ファリンさん!大丈夫ですか?」

「ご、ゴメンなさい…すぐに退きますから。」

「きゅ~……」


2人は頬を染めつつ、立ち上がる。そして、ファリンちゃんは、目をぐるぐる回しながら気絶していた。


何と言うか……こんな事を思うのは不謹慎なんだろうけど、あの3人って、実は物凄く似た者同士なんじゃないか?………ドジっ子的な意味で。


「くぅぅん、くぅん。」


足元から久遠の鳴き声がして、下を見てみると、俺の足に久遠がもたれ掛かっていた。


「よいしょ。」


一旦しゃがんで、久遠を抱きあげる。

……やはり酔っ払ってるのか、顔が少しだけ赤い。


「くぅ!」


久遠は、ヒョイッと俺の腕から抜け出して、俺の顔目掛けて跳び上がって来た。

そして――――――



チュッ



俺の唇に、久遠の小さな口が当てられる。

久遠はそのまま、唇を舐め始める。

…これもキスの内に入るんだろうか。

まぁ、酔っ払っての行動だし、気にする事も………


「ぅぉ!」


何か、背中に鋭い視線を感じる……


「ふっ」


勢い良く後ろを振り向く。

そこにいたのは――――――



笑顔でこっちを見ているリニスだった。

……ふぅ、何だ…唯の気の所為か。

先程の視線が何でも無かった事に安堵しつつ、酔っ払っている久遠を、再び抱っこする事にした。






「さて、じゃあそろそろ解散だな。」

「そうですね、日も沈みかけてきた事ですし。」


ゴミの回収も済み、いよいよ花見が終わる時が来た。


「それじゃあ、解散!」


士郎さんの掛け声が掛かり、遂に花見が終わる。


「それじゃあ、私たちはお先に失礼しますね。」

「またねー、ファリンさん、那美さん。」

「じゃあな、藤見に月村。」

「ばいばーい!アリサちゃん、すずかちゃん。それに、くーちゃんもー!」

「そう言えば…とーさん、酒飲んで運転は不味いんじゃないか?」

「息子よ、良い事を教えてやろう。事故を起こさなければ何の問題も無い。」


賑やかに帰って行く高町たち。


「それじゃあ、車は下に停めてあるから、先に荷物積んじゃおうか。」


アイリーンさんの車で来た俺たちは、帰りは月村の車に乗せて貰える事になっている。


「それは良いけど、流石に全員は無理だろ?誰が先に乗るんだ?」

「そうねぇ、アリサちゃんがちょっと眠そうだし、すずかとファリンと一緒に私が送って行く事にしましょうか。」

「あふ、すいません。めーわく掛けて…ふわぁ。」

「アリサちゃん、大丈夫?」

「俺が下まで負ぶって行こうか?」

「そうね、そうして貰えると助かるわ。」


そうして、とりあえずアリサちゃん・すずかちゃん・ファリンちゃん、さくらさんが荷物と共に車に乗り込み…ノエルの運転する車で、一足先に家へと帰って行った。

残った俺たちは、しばしの間、茜色に染まった桜の余韻を楽しむ事にした。


「……久遠、どう?少しは酔いが醒めた?」

「くーーん………」

「はぁ……」

「大丈夫?神咲さん。」

「は、はい……なんとか……」


今もまだ少し顔の赤い那美ちゃんを心配する月村。


「久遠ちゃんも、まだ酔っ払ったままなのね。」

「くーーん…」


苦笑しつつ、俺の腕の中に入る久遠の頭を撫でるフィアッセさん。


「すみません、月村先輩。」

「『先輩』…じゃなくていいよ?普通で。」

「あ、じゃあ……忍さん…」

「ん。」


今日の宴会で、何やら友情が芽生えた模様。

ここは暫くの間、2人にさせておこうか。その方が仲も深まるだろうし。

俺たちは、少しその場から離れた場所に移動する。


「はーー……今日は楽しかったー!」

「ええ、ホントですね。テレビで見た事はありましたが、桜という物が…あんなにも綺麗な物だったなんて、知りませんでした。」

「確かに綺麗だったよなー。ここに越して来る前…って言っても、ガキの頃の話だけど…その時に親子揃って見た時よりも、何倍も綺麗だったように思うよ。」


夕暮れの空と桜を眺めながら、今日の事を語り合う。


「ありがとね、リョウ。こんな素敵な場所に連れて来てくれて。」

「私も、ありがとうございます。」

「いや、俺は月村に頼んだだけだから、お礼なら…月村の方に……。」


フィアッセさんとリニスの2人にお礼を言われ、少し照れくさい。


「ふふっ♪月村さんにはもう言ったよ?けど……」

「凌にも、言っておこうと思いましたから。」

「あー、えーと、どういたしまして?」


俺たちは、その後もしばらく、迎えが来るまでそうしていた。









「ありがとう、ここまで送ってくれて。」

「どういたしまして。こっちこそ……ありがとね、藤見君。今日は、すっごく楽しかった。」

「それはこっちの台詞だ。場所の提供、本当にありがとな。」

「いいよいいよ、お蔭で私たちも楽しめたんだから。」


俺と月村は、しばしの間、無言で見詰め合い…そして―――――


「ぷっ。」

「あははははははは。」


同時に笑いだした。


「はー、じゃあ明後日、また学校で会いましょ。」

「忍さん、今日はどうも、ありがとうございました。」

「いえいえ。」

「藤見様、今日は私やファリンまで誘って下さってありがとうございました。……それでは、失礼いたします。」


ぺこり、とノエルさんが頭を下げて…月村を乗せた車は、走り去って行った。

ふぅ……


「さて、荷物片付けて、しばらくのんびりして、晩飯にしようか。」

「はい、お父様とお母様は……?」

「今日は帰って来ないってさ。携帯にメールが入ってた。」

「そうですか。では、早速作りますので、凌は片付けをお願いします。」

「ん、任された。」


リニスは夕食の準備を、俺は荷物の片づけを始める。


そうして、楽しかった花見の一日は…終わって行ったのだった。










後書き
キャラが多すぎでヤバい事に…。
修羅場…書いてみたかったけど無理だったよ。
正直、もうこんなに大勢のキャラ出した話を書きたくないです。
どれだけ頑張っても、これが俺の限界……ガフッ。


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