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No.11512の一覧
[0] 迷い込んだ男 (オリ主×とらハ&リリなの+仮面ライダーAGITΩ) 【十一話 大幅改訂】 [Ifreet](2010/09/29 13:50)
[1] 迷い込んだ男 第一話 「出会い」 【大幅修正】[Ifreet](2009/10/31 00:16)
[2] 迷い込んだ男 第二話 「学園生活」 【加筆修正】[Ifreet](2009/10/31 00:24)
[3] 迷い込んだ男 第三話 「喫茶店 翠屋」[Ifreet](2009/09/02 00:38)
[4] 迷い込んだ男 第四話 「ようこそ高町家へ。」[Ifreet](2009/09/02 00:40)
[5] 迷い込んだ男 第五話 「怒り」[Ifreet](2009/09/02 00:41)
[6] 迷い込んだ男 第六話 「覚醒の兆し」[Ifreet](2009/09/02 00:42)
[7] 迷い込んだ男 第七話 「入院生活」[Ifreet](2009/09/02 00:43)
[8] 迷い込んだ男 第八話 「疑惑」[Ifreet](2009/09/02 00:44)
[9] 迷い込んだ男 第九話 「遭遇」[Ifreet](2010/06/04 13:54)
[10] 迷い込んだ男 第十話 「雨と雷」 【大幅改訂】[Ifreet](2010/09/29 13:52)
[11] 迷い込んだ男 第十一話 「記憶の欠片」 【大幅改訂】[Ifreet](2010/09/29 13:50)
[12] 迷い込んだ男 第十二話 「猫まっしぐら」[Ifreet](2009/09/02 00:47)
[13] 迷い込んだ男 第十三話 「契約」[Ifreet](2009/09/02 00:48)
[14] 迷い込んだ男 第十四話 「覚醒」[Ifreet](2009/09/02 00:49)
[15] 迷い込んだ男 第十五話 「模擬戦」[Ifreet](2009/09/04 21:30)
[16] 迷い込んだ男 第十六話 「夏休み」[Ifreet](2009/12/12 22:18)
[17] 迷い込んだ男 第十七話 「月村邸」[Ifreet](2009/10/27 00:06)
[18] 迷い込んだ男 第十八話 「翠屋大パニック!」[Ifreet](2009/10/27 00:08)
[19] 迷い込んだ男 第十九話 「予期せぬ出会い」[Ifreet](2009/09/25 21:56)
[20] 迷い込んだ男 閑話 [Ifreet](2009/09/25 21:50)
[21] 迷い込んだ男 第二十話 「始まり」[Ifreet](2009/10/06 16:22)
[22] 迷い込んだ男 第二十一話 「青の嵐、2つのG」[Ifreet](2009/10/11 22:44)
[23] 迷い込んだ男 第二十二話 「苦悩」[Ifreet](2010/07/05 23:36)
[24] 迷い込んだ男 第二十三話 「彼と彼女の事情」[Ifreet](2009/10/25 21:00)
[25] 迷い込んだ男 第二十四話 「覚悟」[Ifreet](2009/10/27 16:41)
[26] 迷い込んだ男 第二十五話 「変化」[Ifreet](2009/11/13 17:18)
[27] 迷い込んだ男 第二十六話 「花見」[Ifreet](2010/06/03 10:37)
[28] 迷い込んだ男 第二十七話 「剣士」[Ifreet](2010/07/05 23:28)
[29] 迷い込んだ男 第二十八話 「装着」[Ifreet](2010/01/05 09:50)
[30] 迷い込んだ男 第二十九話 「青龍」[Ifreet](2010/07/05 23:30)
[31] 迷い込んだ男 第三十話 「赤い炎の剣」[Ifreet](2010/07/18 11:08)
[32] 迷い込んだ男 第三十一話 「準備」[Ifreet](2010/06/23 20:13)
[33] 迷い込んだ男 第三十二話 「学園祭」 前編[Ifreet](2010/07/06 01:11)
[34] 迷い込んだ男 第三十三話 「学園祭」 後編[Ifreet](2010/02/25 20:50)
[35] 迷い込んだ男 第三十四話 「射手」[Ifreet](2010/04/01 20:56)
[36] 迷い込んだ男 第三十五話 「ティオレ・クリステラ」[Ifreet](2010/05/04 02:15)
[37] 迷い込んだ男 第三十六話 「再会」[Ifreet](2010/05/06 23:51)
[38] 迷い込んだ男 第三十七話 「守りたいもの」 前編[Ifreet](2010/05/09 23:58)
[39] 迷い込んだ男 第三十七話 「守りたいもの」 中編[Ifreet](2010/05/29 02:03)
[40] 迷い込んだ男 第三十七話 「守りたいもの」 後編[Ifreet](2010/05/31 07:34)
[41] 迷い込んだ男 第三十八話「衝撃」[Ifreet](2010/09/29 13:53)
[42] 迷い込んだ男 超☆番外編「まさかのドゥーエEND」 [Ifreet](2009/10/22 00:39)
[43] 迷い込んだ男  【嘘予告】 仮面ライダーΩYAJI[Ifreet](2009/11/14 13:21)
[45] 迷い込んだ男 番外編 テスタロッサ家の平和な日常[Ifreet](2010/07/05 23:34)
[46] 迷い込んだ男 【ネタ】Fateとクロス 序章[Ifreet](2010/07/05 23:38)
[47] 迷い込んだ男 【設定】 [Ifreet](2010/07/18 11:02)
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[11512] 迷い込んだ男 第二十五話 「変化」
Name: Ifreet◆6da6c70d ID:1c3ae593 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/13 17:18
―海鳴警察署…特別演習場…―


バァン バァン バァン バァン バァン バァン バァン バァン バァン バァン


灰色の壁に囲まれた広い空間の中、G3はGM-01をターゲットに向けて連射する。


≪「命中率70%。大分命中する様になって来ましたけど、まだまだ訓練の余地有りですね、勇吾君。」≫

≪「この訓練を始めてからもう2週間だぞ?1つくらいターゲットの真ん中に当てるくらいの事はできる様にならないと。」≫

「はぁ、無茶を、言わ、無いで、はぁ、下さい。」


あの出来事の後、勇吾は正式なG3の装着者に選ばれた。

署内から反論もチラホラと上がったが、アンノウンを撃破した事実、及び現役の警察官よりも屈強な肉体の持ち主だという事が評価され、装着者になる事が決まったのだ。

此処2週間、勇吾は学校が終わるとすぐにリスティたちと合流し、今のような銃の訓練、及びバイク免許の取得、肉弾戦の訓練など、ハードな特訓に励む事になったのである。

しかし……


「銃なんか握ったことも無かったんですよ?2週間でそんなに上手くなれる訳無いじゃないですか。」


現実は厳しく、素人の勇吾では的に当てられる確率は約半分、良くて先程のような7割だ。そして、当たった弾は、いずれもが中央から遠い位置に命中していた。


≪「それでもやるしかないんだよ。G3の武装は射撃がメインなんだ。アンノウンが現れた時に「使えませんでした。」じゃ遅いんだからね。」≫

≪「もうっ、リスティ!そんな言い方は無いでしょう?勇吾君がいなかったら私たちは1から適応者を探さないといけなかったのよ?」≫

≪「分かってるよ。だから、生き残って貰うために訓練してるんじゃないか。」≫


リスティが勇吾に厳しい言葉を投げ掛けるのは、彼を死なせないようにするためだ。

アンノウンは強い。

それこそ、この『G3』のような、本来ならば有り得ないほど規格外な強化服を作らなければならない程に。


「セルフィさん、ターゲットの交換お願いします。今度は、全弾命中させて見せますから!」

≪「分かったわ。すぐに準備するわね。」≫


打ち抜かれたターゲットが撤去され、新しい物がセッティングされる。

勇吾は再びGM-01を構えた。

そして―――――




銃声と共に次々と風穴を空けられて行くターゲット。

やがて、銃声が止んだ。

ターゲットには、打ち抜かれた箇所はバラバラではあるものの、G3の放った弾丸が全て吸い込まれていた。
















二十五話「変化」













―翠屋―


「お花見に行きましょう!」


翠屋の営業が終わり、家に帰ろうと思った時だ。

唐突に、桃子さんは俺とフィアッセさんに向かってそう言った。


「はぁ、花見……ですか。」

「そうそう!今が丁度桜が満開の時期なのよ。凌君も家の店でバイトし始めて長いし、お友達も誘って皆でどうかなって思って。」

「お花見かー、そう言えばそろそろだっけ。」


春真っ盛りの4月、海鳴市では毎年綺麗な桜が咲いている。

通学途中にある桜並木も見事なものだ。

ただ、家の両親は何かと忙しかったりするから、花見なんてものはここ数年やった記憶が無い。


「ねぇねぇ、桃子!いつやるの?」

「日曜日は雨らしいから、それまでにね。」

「リョウも行くよね?ねっ!」

「え、えぇ、まぁ。花見なんてこっちに越して来てからは一回もやってないですし。」


俺がそう言うと、フィアッセさんは目を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。


「じゃあ、今年はリョウも一緒だね!」

「はい。あ、凛も連れて行って良いですか?」

「ええ、良いわよ。他のお友達も呼んで桃子さんに紹介してね?」

「了解です。」


う~ん、楽しみだなぁ。


「あ、それでね、2人に1つ頼みたい事が有るんだけど」

「「?」」

「実はね――――――」


桃子さんが言ったのは、俺たちにとって驚くべき事実だった。










「けど、まさか……ねぇ。」

「うん。まだ場所が決まって無かったなんてね。」


翌日、学校が終わった後、俺とフィアッセさんは桃子さんから頼まれたある事を為すために2人で歩いていた。

ある事…とは、花見をする際に作る弁当の材料&花見ができる場所(できるだけ良い場所)の発見、及び確保だ。

何でも、肝心の花見ができる場所が見当たらないらしい。

それと言うのも、士郎さんが昨日の朝から場所取りをしに行こうと毎年行っている所に行ったところ、物の見事に良い場所が無くなっていたらしい。

やはり、皆考える事は同じなのか、すでに場所取りをしているグループが多く、近場の桜はほぼ全滅のようだった。

高町と美由希ちゃんも学校帰りに探しては見たものの、良い成果は挙げられなかったらしい。


「しっかし、これ見ると諦めたくなりますね。」

「ホントすごいね。何処も彼処も人でいっぱいだよ。」


良さそうな場所は士郎さんの言う通り根こそぎ確保されてしまっており、てんで良い場所が見つからない。


「うー、お花見したいなぁ。」


フィアッセさんがシートで埋め尽くされた公園を眺めながら呟く。


「こんなに人がいっぱいじゃ風情も何も有ったもんじゃ無いしなぁ。取り敢えずこの辺りは一通り回りましたし、もう少し遠くまで行って、無さそうなら買い物だけでもして帰りましょうか。」

「うん、そうだね。」


取り敢えず、暗くなる前にもう一ヶ所だけ回る事にした。




「無いですね。」

「うん、無いね。」


結果は惨敗。

桜は有ったものの、既に場所を取られた後だった。



「うー、一昨年はこんなに混んで無かったのに。」

「去年もそこまで混んでた訳じゃ無いみたいです。今年が異常なんだとか。」

「やっぱり、アンノウンが関係してるのかな。」

「あぁ、あれから出てませんからね。今の内にって事なんでしょうか。」

「多分、そうだと思う。」


宴会中にあいつ等が出てきたら、ぶち壊しだもんな。

そりゃ、早い内に済ませようとするか。


「めぼしい所は全部回ったし、後残ってるのは……」

「桜台くらいしか残ってませんけど…あそこ殆ど私有地ですからね。」

「誰か知り合いが持ってるなら話は別なんだけどなぁ。」

「はは、そう都合良くは…」


――――――ん?


あれ、桜台?

那美ちゃんに頼めばさざなみ寮の面々と一緒に花見ができる…か?

……いやいやいや、直接会った訳じゃ無いけど、真雪さんやリスティさんに、士郎さんと桃子さんが加わったら絶対カオスな事になる。

案外いい案だと思ったけど却下。


「リョウ?突然立ち止まってどうしたの?」


目を瞑って本格的に思考する。

私有地って言葉が妙に頭に引っ掛かる。

俺の知り合いで私有地を持ってる人がいたような気がするんだけど…


「リョウ~、どうしたの?」


――――!

待てよ、俺の記憶が正しいなら、さくらさんの私有地が海鳴に有るんじゃないか?

ゲームで忍がそんな事言ってたような……

よし!そうと決まれば早速…


むにむに。


「リョウの頬っぺた柔らかーい!むにむにー。」

「……あの、フィアッセさん?一体全体何をやっておいでなのでしょうか?」


いつの間にかフィアッセさんは俺の前に回って、俺の頬をむにむにと弄くり回していた。

と言うか、顔が近いです。心なしかフィアッセさんも顔がほんのり赤いように見える。

恥ずかしがる位ならやらないで下さい。


「だって、何回話しかけてもリョウが全然反応しないから…」

「うぐっ、すいませんでした。どうも考え事始めると周りが見えなくなっちゃって。」


うん、本気で気を付けよう。バイクに乗ってる時に考え事してて事故とか起こしそうで怖い。


「うん、いいよ。それでそれで?いい考えは浮かんだ?」

「ええ、まぁ一応。けど、先に買い物の方済ませましょうか。」

「そうだね。日も沈んできちゃったし。」





と、言う訳で場所は変わって近くのスーパー。


「えっと、何々?」

翠屋で桃子さんから貰ったメモを見る。

卵、かまぼこ、餅米、鶏肉、人参、筍etc.


「餅米なんてどうするつもりだったんだ?」

「甘酒を作るのに使うんだと思うよ?去年もそうだったし。それにほら、なのはちゃんはお酒飲めないから。」

「あぁ、なるほど。けど、じゃあ何で消してあるんだ?」

「んー、もう士郎が買って来たとか、そんな所じゃないかな。」


ふむ、何にせよ酒が飲めない俺としては甘酒は有り難い。


「じゃあ、さっさと買っちゃおっか。」

「そうですね。じゃ、2手に別れて買い集めちゃいましょうか。」


数分後、メモに書いてある物を全て買い揃え、俺たちは会計を済ませる為にレジに並んだ。


「あれ、……あ……の…彼…?」

「えぇ!?ち、違います違います!」

「も……!照れ…も……のに。」

「ホントにそんなんじゃ無いですから!」


俺が買った物を袋に詰めていると……フィアッセさんの並んだレジからそんな会話が聞こえてきた。

どうやら、女性の店員がフィアッセさんに何かを言っているようだ。

店員の方は余り聞き取れないが、フィアッセさんは顔を真っ赤にしながら、その店員の言葉を否定している。

やがて、フィアッセさんは顔が真っ赤なまま、会計を終えて俺の方に向かって来た。


「フィアッセさん、何の話をしてたんですか?凄い否定してましたけど。」

「な、何でも無いよ?唯の世間話だから、気にしないで?」


まぁ、本人がそう言うんなら追求しなくてもいいか。


「(うぅ、リョウと恋人同士に見られて恥ずかしかったなんて言えないよぉ。////)」


今だ赤い顔で俯くフィアッセさんを心配しつつ、俺は袋にせっせと食品を詰め込んで行った。






帰り道、翠屋まで荷物を届けた俺たちは、士郎さんと桃子さんに花見の場所が見つからなかった旨を伝えて、お互いの帰路に着いた。








―月村家―


「う~~あ~~。」


中破したG1の修理を2週間に渡って続けていた忍は、その修理が終わった途端に自身のベッドに倒れ込んだ。


「お姉ちゃん大丈夫?」

「ん~~、眠い~。」


フラフラと地下室から出てきた忍を心配して、すずかは姉の体調を気遣う。

ここ2日間は徹夜で作業していた為に体は疲れ果て、強い眠気が忍を襲ってくる。

目元はトロ~ンと緩み、口元からは涎が垂れ始めている。


「じゃあ、少し早いけどお休み、お姉ちゃん。」

「ん~、ありがとね~、すずか。」


すずかは近くにあったティッシュで涎を拭いてやり、電気を消して部屋から出て行った。

忍は、そんな健気な妹に礼を言い、深い眠りに入って行った。




それから少し時間が経った頃、すやすやと規則正しい寝息を立てていた忍の部屋に、忍の携帯から優しい歌が流れ始めた。

忍が大ファンの歌手、『天使のソプラノ』ことSEENAが歌う『ETERNAL・GREEN』だ。


「ん、んん~~~。」


忍は寝ぼけたまま携帯を手に取る。

そのまま液晶画面を見ずに携帯を耳に当てる。


「ふわ~~、もしもし?あなた誰?今何時だと思ってるの?」


安眠を妨げられて自然と不機嫌になる忍。


「藤見だけど、まだ6時なのにやけに眠そうだな。もしかして寝てたのか?」

「う~、藤見君かぁ。何か用?」

「確かに用はあるけど……別に後からでもいいぞ?また起きてから掛け直してくれたらその時にでも…」

「ううん、いい。寝ちゃったらどうせ朝まで起きないと思うし。ふわぁ~。」


眠い眼を擦りながら凌の声に耳を傾ける忍。


「月村に頼みたい事があるんだ。」

「頼みたい事?」

「ああ、実は……」


凌は、事のあらましを最初から説明した。

花見に行く事。その際、友達も誘うよう言われた事。

肝心の場所が未だにきまっていない事。

忍も話を聞いている内に段々眠気も薄れてきたのか、凌の話を楽しそうに聞いている。


「ねぇねぇ!それってノエルたちも一緒に行って良いの?」

「むしろ大歓迎だ。」

「うん、分かった。九台桜隅にさくらが別荘持ってるから頼んでおくね。」

「あぁ、悪いな月村、無茶言って。お前くらいしかこんな事を頼める奴いなかったから。」

「あははっ、アリガト。じゃあ、お花見楽しみにしておくねー。」


そう言って忍は電話を切った。


「はぁ、「お前くらいしかこんな事を頼める奴いない」か。ちょっと、嬉しかったかな。」


頬を薄い桃色に染めて、忍は枕に顔を埋める。

暫くそうしていると、眠気がまた襲ってきた。

けれど、早鐘を打つ自身の心臓の鼓動が煩くて、忍は中々眠る事ができなかった。









「えーっと、場所の確保は完了。んでもって月村を通じてノエルさんとファリン、さくらさんも参加決定。赤星は用事があるらしいから行けるかどうかは未定。アリサちゃん、すずかちゃんはなのはちゃんが誘うだろうから問題なし。うん、あと誘って無いのは那美ちゃんと久遠だけだな。」


そんな独り言を言いながら八束神社の石段を登る俺。

今日の朝、月村から花見の場所についてOKを貰った俺は、早速それを高町に報告し、桃子さんたちに伝えて貰った。

よほど絶望的だったらしく、電話越しに桃子さんと士郎さんから豪(えら)く感謝された。いつも寡黙な高町も、その事を伝えた瞬間「何っ!」と目を剥いていた。

そして今、俺は学校が終わってすぐに那美ちゃんと久遠を花見に誘うため、八束神社へと足を向けたと言う訳だ。

学校で言おうかとも思ったけど、どうせなら久遠にも直接伝えようと思い、敢えて神社に来る事にした。


石段を全て登り切り、久遠の姿を探す。

しかし、今日に限って久遠はいつも居る場所には居なかった。

暫くその近辺を探し回ったが、やっぱりいない。

そして、反対側を探してみようと体を後ろに向けたところに、久遠は何かを探しているかのようにキョロキョロと視線を彷徨わせながら、そこにいた。

そして、久遠は俺の姿を見つけると、瞳を閉じた。

瞬間、久遠が光に包まれる。

そして、その光が収まった時、そこには1人の少女が立っていた。


そう、―1人の少女が立っていた―。

久遠は、俺が知っている子狐の姿をしていなかった。

金色の綺麗な髪、その体には巫女装束を纏い、狐の耳と尻尾を生やしている。

少女と呼ぶに相応しい背格好の久遠は、その可愛らしい顔に満面の笑みを浮かべて、こっちに駆け寄って来た。


「くぅ! くぅ!」


久遠は、俺の近くまで来ると、タンッと軽くジャンプして、俺の胸に飛び込んで来た。


「ぅおっと。」


いきなりだったので少々反応が遅れたが、久遠の体重が軽かった事もあり、受け止める事には成功した。


「くぅ!くぅくぅ!」


受け止めた久遠を地面に降ろしてやる。


「くぅ!くくぅ!!」


すると久遠は、相変わらず鳴き声みたいな声を出しながら、何かのポーズを取り始めた。

えらくたどたどしかったが、それを見ている途中でハタと気付く。



久遠がしているそれは、AGITΩの変身ポーズだった。


な、何で久遠が知ってるんだ?

久遠がこれを知っている訳が無い。雑木林に久遠が居なかったのは確かだし、此処からバイクに乗ってアンノウンの元に駆けつけた時はあのポーズを取っていない。

なら、どうやって………

そこまで考えて思い出す。久遠が持っている特殊能力の存在を。



『夢写し』

確かその効果は、久遠の側で眠っている人の夢や、久遠自身の夢を他の人に見せる事。



近くで眠った時と言えば……もしかしてあの時か!

思い出すのは、フィアッセさんが此処に来た日の事。

確かに俺は、久遠と一緒に石段で眠りこけていた。

じゃあ、あの時…久遠が目を覚ますなり走って逃げたのはフィアッセさんに慣れていないからじゃ無くて、AGITΩの事を知ってしまって気まずくなったからか!


「くぅ くぅ くーん」


自分が伝えようとした事が、俺に伝わったのが分かったのか、久遠は幾分緊張している面持ちで俺を見上げた。

自惚れでなく、久遠は俺に懐いてくれている。

久遠にとって、心を開いた人間に拒絶されるのは、恐らく何よりも恐ろしい事だろう。

にも関わらず、久遠は少女となった姿を俺に見せてくれた。

己が普通の狐では無い妖狐だと、異端な存在である事を証明する姿を。


「くぅ~ん」


どこか怯えるような表情で俺を見上げる久遠。

俺は、久遠と同じ高さまでしゃがんで、目線を同じ高さにする。

手を上に振り上げる。

久遠は、ビクッと大きく震え、目を閉じた。



そして、俺は振り上げた手を久遠の頭に落とし、優しく撫でた。







(久遠side.)


くおん みた ゆめうつし りょう かわった


りょう こわいの たたかう やっつける


りょう かわる みられる こまる


くおん みた くおん きらわれる いや


くおん はしる にげた


くおん かんがえる りょう きらわれない ほーほー


かんがえる


まだ かんがえる


もっと かんがえる


まだまだ かんがえる


くおん いいこと おもいついた!


くおん ひみつ ばらす


なみ それ だめ いった


くおん やくそく やぶる


りょう みても へいき おもう


りょう やさしい


くおん ひみつ ばらす おあいこ


くおん りょう くるの まつ








りょう におい かんじる


くおん りょう さがす きょろきょろ


くおん りょう みつけた りょう こっちみた


くおん ひみつ ばらす りょう おあいこ


くおん へんげ する りょう おどろく


くおん はしる りょう だきつく


りょう だっこ うれしい おろされた ちょっと かなしい


りょう むつかしい かお なった



「くぅ!くぅくぅ!」



くおん しゃべれない


くおん おもいだす りょう かわる ぽーず



「くぅ!くくぅ!!」



くおん それ りょう みせる


りょう また おどろく



「くぅ くぅ くーん」



くおん りょう みせた つたわった?


くおん りょう みあげる


りょう くおん ゆるす? ゆるさない?



「くぅ~ん」



りょう しゃがんだ め たかさ くおん いっしょ


りょう て あげた くおん たたかれる?


くおん りょう きらわれた?


くおん こわい め とじる


いたいの こない


りょう て くおん あたま のる なでられた


りょう て やさしい あったかい きもちいい


りょう わかってくれた これで おあいこ


くおん うれしい


くおん りょう て とって なめる


くおん りょう からだ とびこむ あったか ぬくぬく


くおん りょう かお なめる



「久遠?!それに、先輩!?」


なみ きた りょう なみ いっしょ いちばん たのしい









(凌side.)


「久遠?!それに、先輩!?」


八束神社に、那美ちゃんの声が響き渡る。

俺は少女モードの久遠に抱きつかれ、絶賛顔をペロペロと舐められている最中である。

さっきの事で以前よりも更に懐かれたのか、久遠は俺にギューっとしがみ付いて離れない。


「久遠、あなた…その姿……」

「くぅ♪くぅ♪」

「那美ちゃん、とりあえず久遠を離すのを手伝ってくれないか?このままじゃ起き上がれなくて。」

「あ、はい。久遠!ほら、先輩が迷惑してるから離れなさい?」

「くぅ~ん」


那美ちゃんの言葉でようやく俺から離れる久遠。

甘えるのは俺的に問題ないんだけど、流石に見た目少女の久遠が俺の顔を舐めている絵面は知らない人に見られたら致命傷だからな。

………こう、世間体的な意味で。

事情を知ってる那美ちゃんで良かったかも知れないな。


「あの、先輩。久遠の事……」

「ん?あぁ、俺が此処に来た時に狐から今の姿に変わったんだ。」

「そう、ですか。見ちゃったんですね。」


諦めにも似たような声を洩らす那美ちゃん。

俯き、顔を上げようとしない。

そんな那美ちゃんを、久遠は心配そうに見上げている。


「なぁ、那美ちゃん。俺、さっき久遠とじゃれ合ってただろ?」

「っはい。」

「まぁ、それが俺の答えだよ。多少ビックリしたけどさ、狐から女の子に変わった位で久遠を避けるような事はしないよ。約束する。」


その言葉を聞いた瞬間、那美ちゃんは俯いていた顔を上げる。

そして、その瞳に驚愕の色を浮かべ、信じられないといった表情で俺を見る。


「でも、久遠はっ!」

「関係ないよ。変わらない。久遠がどんな存在でも、俺は態度を変えない。だって、その方が楽しいじゃないか。余計な事なんて考えないでさ、今までと同じように久遠と遊んでいたいんだ。」

「先輩は、久遠を・・・この仔の事を知って………それでも友達で、今までと変わらずにいてくれるんですか?」

「ああ。」


俺がそう言うと、那美ちゃんは久遠に抱きつき、嗚咽を漏らし始めた。

俺は、そんな那美ちゃんから目を離し、泣き声が止むまで、石段に座って目を閉じていた。







数分後、那美ちゃんは「久遠の事、ありがとうございます、先輩。」と、そう言って何度も頭を下げた。



「じゃあ先輩っ、境内の掃除をしてきますから、久遠の事お願いしますね。」


そう言って、巫女のバイトを始めようとする那美ちゃん。……って肝心の事をまだ言ってねぇ!!


「ちょっと待った!」


ガシッと那美ちゃんの細い腕を掴む。


「きゃっ、先輩?」

「実はだな……今日ここに来た本当の理由は久遠と遊ぶ事じゃ無いんだ。」

「そう、なんですか?」

「あぁ、今日は那美ちゃんを花見に誘いに来たんだ。」

「私を……お花見に?……え、えぇぇぇぇぇぇ!!?」


突然大声を上げる那美ちゃん。

あれ?俺、何かおかしい事言ったか?


「うおっ、ビックリした~。どうしたの?那美ちゃん。」

「だ、だって先輩!そ、それ…デ、デー……じゃ。」


声が小さくてうまく聞き取れない。

もう一度言って貰おうとしたその時、俺に抱きついていた久遠が、「くぅくぅ!」と言った。

どうやら仲間外れにされると思ったらしい。


「ははっ、心配しなくても久遠も一緒だよ。けど、なのはちゃんやフィアッセさんも一緒だから、来る時は狐の姿でな。」

「くぅッ♪くぅ~ん♪」


嬉しそうに鳴き、より一層強くしがみ付いて来る久遠。

満足した様子の久遠から視線を外し、何か言い掛けていた那美ちゃんへと戻す。


「なぁ、那美ちゃん。さっき―――――」

「な、何でも無いです。何でも無いですから、さっきの事は忘れて下さい!」


豪い勢いで記憶の消去を希望されました。


「うー、恥ずかしい。ひどい勘違いしちゃいました。」


耳を澄まして、やっと何か喋っている事が分かるくらいの小さな声で独り言を言っている那美ちゃん。

俯いてしまっているのでよく見えないが、顔も若干赤い。

多分、何か勘違い的な物をしてしまったのだろうと自己完結し、用件を伝え終えた俺は、抱きついている久遠の頭を撫でる事にした。


結局、那美ちゃんが境内の掃除を始めたのは、それから30分くらい後の事だった。








(おまけ)


―時の庭園―


「これは…一体……。」


プレシアが巨大パズルを解き終えた後に現れたのは、遺伝子モデルのような形をした物体だった。


「これが、アルハザードへの手掛かりになると言うの?」


俄には信じがたい話。

しかし、プレシアはこれを復元させる事に決める。

どの道、これがダメならばジュエルシードを使ってアルハザードへの道を無理やり抉じ開けるつもりなのだ。

幸い、時間はまだ残っている。

少しでも可能性があるのならば賭けてみよう。

そうしてプレシアは、プロジェクトFの理論を利用して、その遺伝子の元になった存在を復元する準備をし始めた。











後書き

海鳴の桜は4月の下旬位が丁度満開です(オリ設定)。
アンノウン出したりしてたら花見イベントが出せなかったんだ。
取り敢えず次話で花見イベントを終わらせて5月に移行します。
久遠を書き始めたら止まらなかった。ホントはもう少し短くする予定だったのに(汗


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