カタ カタ カタ カタ
大魔導師プレシア・テスタロッサは、自室にある魔導機器の全ての演算機能を最大稼働させ、目の前に鎮座する巨大パズルの謎解きを行っていた。
時の庭園に激突した謎の物体。
それが、目の前にあるコレである。
詳しく解析してみれば、3万年ほど前に作られたという事が分かった。
「アハ、アハハハハハハハハ!」
プレシアは狂喜した。こんな偶然が有り得るだろうか。
約束の地アルハザード、次元断層によって消滅したとされる禁断の魔法が眠る世界。
遥か昔、アルハザードは確かに次元世界の一つとして存在していた。
卓越した技術と魔法文化が発展し、他の世界よりも数世代先を行くその世界。
しかし、アルハザードは次元断層に飲み込まれ、今は次元世界の狭間に存在するとされている。
それが、丁度3万年前。
ロストロギアと言えど、そこまで昔の物はそう多くない。
そして、時の庭園が漂うこの宙域は、かつて、アルハザードが存在したとされる場所なのだ。
目の前のこのパズルは、きっとアルハザードの手掛かりを内包しているに違いない。
そう推測して、プレシアはパズルを解析し続けるのだった。
第二十二話「苦悩」
「じゃあ、ファリンたちが着てたのはあの化け物を倒すために作ったものじゃないの?」
あの後、家に帰ったすずかは、忍からGシリーズについて説明を受けていた。
「そう、さくらが見つけた大昔の遺跡に人間の脅威になる存在が示唆されててね、だからソイツらみたいな奴等がまた現れた時の為に作ったんだよ。」
「そっかぁ、お姉ちゃんが地下室に入り浸ってたのってその所為だったんだね。」
「まぁねー。あと、ノエルとファリンは装着員になってあのスーツの開発に協力して貰ってたんだよ。」
「あれ?Gシリーズって3つあるんだよね。ノエルがG2でファリンがG3なら、G1は誰が着るの?」
「G1の装着員はさくらだよ。負担が強すぎて普通の人だと装着できないの。」
「さくらさんが?あれ、そう言えばさくらさんは?」
自分やファリンが出かける前には居たはずの叔母の姿が見えないのを不思議に思い、忍に尋ねる。
「え?ああ、さくらならあの化け物を見た途端に東京に向かったわよ?」
「えっ?何で東京に?」
「あいつ等みたいなのが現れるのを前々から危惧してたからね。政府の人たちに伝えに行ったんだよ。」
「でも、信じて貰えるの?普通、信じられないと思うんだけど。」
「大丈夫よ。G2とG3に搭載されているカメラでちゃんと撮ったから。」
そう言って、忍はパソコンを立ち上げ、記録した映像をすずかに見せる。
「ねぇ、お姉ちゃん。」
「どうしたの?すずか。」
「うねうねってなってるけど…大丈夫なの?」
「んー、大丈夫なんじゃない?文句言われてもさくらなら何とかするでしょ。」
映像がぐにゃぐにゃに歪んで、殆ど判別できない化け物の姿がそこには映っていた。
「って、えっ!?もしかして、お姉ちゃんこの映像をさくらさんに送ったの?」
「そうよ?編集したら余計に怪しまれるかもしれないしね。」
「うぅ、さくらさん、大丈夫かなぁ。」
「大丈夫、大丈夫。さくらなら何とかするよ。」
すずかは思った。
信頼しているからこんな態度なんだろうか、それとも、さくらさんに丸投げしているだけなのだろうか、と。
「(信じてるからだと思いたい……けど、何か後者っぽいなぁ、お姉ちゃん的に。)」
忍の方を見ると、映像を見ながら、「う~ん、AGITΩって何者なのかなぁ。」と言って、腕を組んでうんうん唸っていた。
「(さくらさん、ファイトです!負けないでください!)」
十中八九、映像の事について詳しい説明を求められて苦労するであろう叔母の事を思い、すずかは心の中で涙した。
ガチャ
さくらは、東京に来た時よく泊まる、ホテルグランシールの8002号室に入った。
「はぁ、遂に恐れていた事が起こっちゃったわね。唯一の救いはGシリーズが完成してる事か。」
さくらは、溜息を吐きながら鞄から取り出したノートパソコンの電源を入れる。
予定よりも早くなったが、G3の試験運用や、謎の生物の出現の件について説明するための準備を行う。
ノートパソコンが立ち上がり、早速メールを確認する。
送信者が忍であることを確認し、そのメールを開いて添付ファイルを見る。
すると………
映像がぐにゃぐにゃに歪んで、音も微妙に乱れている物が再生された。
さくらは無言で忍からのメッセージに目を向ける。
『謎の力が働いているのか映像が乱れてるけど……まぁ、化け物っぽいのはふいんき(←なぜか変換できない)で分かると思うから説明頑張ってヨロシク(は~と)』
その夜、ホテルグランシールの一室で、女の怒鳴り声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
ちなみに、さくらは何だかんだ言いつつも、政府の人間に化け物の存在を認めさせ、海鳴警察署にG3の装着員の決定などを性急に決めさせるように要請したりするのだが、それはまだ少し先の話。
―???―
俺、藤見凌は思う。
世の中、何処にフラグが転がっているかわからない、と。
何で突然そんなこと考えてるかって?
今まさに、俺の目の前に高町兄妹が特注の木刀を両手に構えて立っているからだよ!!
どう見ても殺る気満々Death本当にあり(ry
あっるぇ~?
とりあえず、今日一日を振り返ってみようと思う。
朝から学校へ行って授業を受け、夕方に帰る。
これはいつも通り。
放課後は翠屋に行ってバイトする。
いや、正確にはしようと思った、だな。
制服に着替えようと更衣室に行くと、そこには士郎さんがいた。
そして、士郎さんにこう言われたんだ。
「頼みたい事があるから家まで来てくれないかい?」
と。
そうして、深く考えもせずに士郎さんの運転する車に、バイクでホイホイとついて行ってしまったが最後、士郎さんの巧みな誘導で、あれよあれよと道場まで誘き寄せられてしまったのだった。
そして、現在に至る。
「あの、士郎さん?何で俺は高町家の道場で高町兄妹と対峙しているんでしょうか。何で目の前に木刀が置いてあるんでしょうか、って言うかっ!」
俺は士郎さんに今の理不尽な状況を問い掛けつつ、壁際へと目を向けた。
「桃子さんにフィアッセさん!あんたら何で此処にいるの!翠屋はどうした、翠屋はっ!!」
テンパって敬語とか抜けてるけど気にしない。
「あら、店は他の子に任せてきたわ。」
「昨日、お店で士郎に提案されて私たちも賛成したの。」
「いつ、何を、提案されたんですか!俺聞いてませんよ!」
興奮して語気が荒くなって来る。と言うか、いい加減教えてほしい。
すると、桃子さんと士郎さんとフィアッセさんは声を揃えてこう言った。
「「「昨日凌君(リョウ)が急用とか言って突然帰っちゃった後に決めたから。」」」
「すいませんでしたぁぁぁぁ!!」OTZ
これは罰か?!罰なのか!?これからバイト中にアンノウンが出て、倒しに行く度にこの仕打ちが待ち受けているとでも言うのか!
「まぁ、それは謝らなくても良いんだけどね。」
ガクッ
「なら態々ハモって言わないで下さいよ!」
「ごめん、ごめん。まぁ、ホントは昨日の君の動きが良かったからね。良かったら恭也と美由希と勝負してくれないかと思って。」
良かったら?兄妹2人とも木刀持ってやる気満々なのに?強制の間違いじゃないんですか?
「お願いします凌さん!戦って下さい。」
「…俺も以前からお前とは戦ってみたいと思っていた。」
そう言って俺の目を見る2人。
うぐぅ、逃げ道がない。あぁ、もういいや、発想の転換だ。人間のままでどこまでやれるか試す絶好の機会だと思おう。そう思わないとやってられん。
「はぁ、分かったよ。」
俺がそう言って承諾すると、美由希ちゃんは心底嬉しそうに笑い、「ありがとうございます!」と言った。
高町もフッと笑って、美由希ちゃんと順番を決め始めた。
「「よろしくお願いします!」」
シンッと静まり返った道場に二人の声が響く。
ジャンケンの結果、最初の相手は美由希ちゃんになった。
立会人は士郎さん。
俺の能力は持続時間が短いから、リミットまでに決めれるかどうかが肝なのだが……御神の剣士に五分で決着とかできるのか?
「始めッ!」
士郎さんの声が道場に響き、俺たちはお互い、同時に踏み込んだ。
―海鳴警察署―
「アンノウン対策班……ですか?」
以前のように会議室に呼び出されたリスティは、そこで驚くべき事を聞かされた。
「そう。前々から、我々が知らない新たな生命体が存在する可能性を考慮して極秘裏に作成されていたという『対未確認生命体用強化服 G3』を回して貰うように先ほど政府から連絡があった。」
「今後はそれを用い、最初のアンノウンと遭遇した君に指揮を執って貰いたい。」
「ボクが…ですか?」
「そうだ、前にも言ったが我々は君を高く評価している。初めてアンノウンと交戦した時も、恐れず立ち向かったそうじゃないか。」
リスティが目撃した未知の生物。通称アンノウン。その存在の全てが謎と言っても過言では無い未知の怪物。
彼女が最も得意とする「サンダーブレイク」をまともに喰らって、なおも立ち上がる、人間を遥かに超える存在。
人を、常識では考えられない方法で殺害する人類の敵。
彼女にソレを拒む理由はなかった。
「分かりました。リスティ・槇原、本日を以てアンノウン対策班に転任します。」
「うむ。君ならばそう言ってくれると信じていたよ。」
「G3装着者の選抜は君が行ってくれ、頼むよ。」
「それでは、解散とする。全力でその任に当たってくれ。」
「了解!」
そう言って、その場を後にしたのだが………
「ああ言ったものの、どうするかなぁ、コレ。」
対策班の主な活動は、Gトレーラーに待機し、アンノウンの出現時に即座に対応することだ。
機材も最新の物がコンテナに搭載してあるし、全く以て不満は無い。
だが……G3のマニュアル、装着者の基準の項目を見て、リスティは頭を抱える事になった。
「少し要求が高くないか?」
最低基準は一般成人男性の値を上回り、余程鍛えていなければ着こなせない様に書いてあった。
「こりゃ、下手したら一般人からも募集しなくちゃならないかも知れないなぁ。」
そう言って、吸っていた煙草をGトレーラー備え付けの灰皿に擦りつけると、リスティは携帯を取り出してメールを打つ。
「まっ、ここはもう一人の仲間の方を先に決めておきますか。」
そのメールの宛先には、『セルフィ・アルバレット』と表示されていた。
―とある林の前―
その頃、一人の青年がキックスケーターで遊んでいるのを林の地面から顔を出してジッと見つめる銀色のアンノウンがいた。
徐々に地面から地上へと姿を現したアンノウンは亀のような容姿をしていた。
対象から視線を外さず、アンノウンは胸の前でサインを切った。
青年は何も知らずに依然遊び続けており、彼が林に近づいたところを狙って、アンノウンは彼に襲い掛かった。
「ヒッ!」
彼は、いきなり目の前に現れた異形の姿にパニックに陥り、尻餅をつきながらも後ずさり、アンノウンに背を向けて全速力で逃げ始めた。
「ハァ ハアッ ハアッ ハァッ」
どれ位走っただろう。
荒い息を吐き、辺りを見回すと化け物の姿は何処にもいない。
彼は、フゥと深呼吸して気を緩めた。
その瞬間――
ガバッという音と共に、アンノウンは地中に潜めていたその身を、再び地上へと現した。
彼は急いで後ろを振り返るが、アンノウンはすでに自分に向けてその手を振り被っていた。
避ける事など出来る筈も無く、人を遥かに凌ぐ怪力で頭を殴られた彼は、あっという間に地面に倒れ伏し、アンノウンによって地中に埋められてしまうのだった。
―道場―
「いや~、やっぱり凄いよ凌君。負けたとはいえ美由希や恭也の動きに付いて行けるんだから。」
そう言って俺の肩を叩く士郎さん。
当たり前だが俺は試合に負けて、今は床にへたり込んでいる。
負けたのは、もちろん美由希ちゃんと恭也の両方にである。
最初の五分は能力のおかげで動きも見切れて、美由希ちゃんとの戦いはあと一歩のところまで行けた。
しかし、現実は甘くないと言うか、あと一歩のところでタイムリミット。
身体能力がガクッと落ちて逆転負け。
恭也に至っては能力発動してても終始押されっぱなしだった。
んでもって能力が切れる前にやられました。
防御しても内面にダメージが来るとか如何しろと?
「おにいちゃん、元気出して!すごくカッコよかったよ!」
士郎さんの反対側からは、試合途中に帰宅したなのはちゃんが慰めの言葉を掛けてくれる。
なのはちゃん、気持ちは凄く嬉しいんだけどね、勝ったお兄ちゃんの方にも言葉を掛けてあげて欲しいなぁ。
何か、若干羨ましがってるような恭也の視線が突き刺さって来るから。
「凄いよリョウ!負けちゃったけど、恭也が最初っから御神の技使ってたんだもん!美由希との試合を見て本気になっちゃたんだよ、きっと!」
そう言って、若干顔を赤らめているフィアッセさん。
ふむ、なのはちゃんもそうだけど、やっぱり試合とかって見てる人は自然と興奮しているものなんだろうか。
そうやって皆で笑い合い、楽しい時を過ごしていた時――――
「ッ!?」
「すいません!俺、ちょっと!!」
アンノウンの気配を感じた俺は、すぐさま立ち上がり、そう言って道場から飛び出した。
そして、高町家の前に停めておいたバイクに乗って、本能に導かれるままアンノウンの処へ向かった。
暫くして、アンノウンの気配を感じた場所に到着したものの、一向に姿が見えない。
警戒し、辺りを見渡してみても見えるのは木々ばかり。
ガチャ
靴に、土の感触とは違う固いものが当たり、視線を下ろすとキックスケーターが落ちていた。
それを拾い上げ、辺りを見渡す。
すると、いきなり足元の地面が盛り上がり、俺は空中に放り投げられた。
「がっはッ!」
地面に落下し、呼吸が一瞬できなくなる。
アンノウンは俺の右腕を掴み上げ、再び投げ飛ばした。
「ぐっ!?」
地面を転がり、思うように体勢を立て直せない俺に、容赦なく追撃を浴びせてくるアンノウン。
「げふっ!」
腹を踏み付けられ、空気を吐き出させられる。
アンノウンは、そのまま俺に伸しかかり、首を掴み上げようとする。
だが――
「調子に、乗るなぁぁ!!」
俺は、能力を使って瞬間的に底上げし、アンノウンの腹を思いっきり蹴っ飛ばした。
グゥゥゥゥ
アンノウンから距離を離し、俺は両手を左腰に当て、右手を素早く前へと突き出し、そのまま脇の下まで引き戻す。
腰に『オルタリング』が出現し、引き戻した手を再び、そのままゆっくり前に突き出していく。
「変身ッ!!」
そして、ベルト両腰にある二つのドラゴンズアイを同時に押したその瞬間、『賢者の石』から青白い光が溢れ、俺の姿はAGITΩへと変わる。
俺は、殴り掛かって来たアンノウンをいなし、逆にカウンターを喰らわせる。
そして、俺は立ち上がって此方に突進してくるアンノウンに殴り掛かって行った。
「リョウ………なの?」
丁度その時、木に隠れてAGITΩとアンノウンの戦いを見つめる人影があった。
話は数十分前に遡る。
(フィアッセside.)
「すいません!俺、ちょっと!!」
突然リョウはそう言って、いきなり道場を飛び出して行ってしまった。
まるで昨日と同じ様に。
「いきなり出て行ってしまって、一体どうしたのかしら。」
「ふむ、昨日も似たような事を言って翠屋から飛び出して行ったな。」
「あのあのっ、なのはがおにいちゃんが嫌がるような事言ったのかな。」
「大丈夫だよ、なのは。凌さんはそんな事で怒るような人じゃないよ。」
「…ああ、それに、なのはの言葉に藤見が嫌がるような言葉は無かった筈だ。」
皆、それぞれリョウの心配をしている。
私も、リョウのおかしな態度が心配で堪らない。
今追えば、リョウに追い付けるかも知れない。
私は、鞄を持って立ち上がり、皆に向かって言う。
「私、心配だからリョウの事探してくる!」
答えも聞かないままに走りだし、外に出る。
見ると、リョウのバイクは突当たりを曲がるところだった。
私は急いで車のエンジンを入れ、リョウを追い駆けた。
途中、危うく見失うところだったけど、何とか後を追いかけた。
そして、リョウはバイクに乗ったまま、林の中に入って行ってしまった。
私は車を止め、バイクが通ったタイヤの後を辿って、奥へ奥へと進んで行った。
そして、リョウのバイクが停まっているところまで来て、私はリョウの姿を探した。
「ぐっ!」
突然、苦しげな声が聞こえて、私はその声の方向へ急いで向かった。
そして、そこで見たものは―――
「げふっ!」
見たことも無いカメのような怪物に、お腹を踏まれて苦しんでいるリョウの姿だった。
「な、何……あれ。」
リョウが怪物に襲われているのに、私はただ呆然とその光景を見ているだけだった。
そして怪物はリョウに伸し掛かって、リョウの首に手を―――
「イヤ、いやぁぁぁぁ!」
リョウが死んでしまう。
私はそう思った。
あんな怪物に勝てる訳が無い。
私は目を瞑り、遂にはしゃがみ込んでしまった。
そして―――
「調子に、乗るなぁぁ!!」
リョウの声が聞こえた。
目を開けると、リョウは怪物を蹴飛ばして、立ち上がっていた。
すると、リョウはいきなり何かのポーズを取り始めた。
リョウが右手を脇の下あたりに持ってきたかと思うと、リョウの腰に行き成りベルトのような物が現れた。
「変身ッ!!」
リョウがそう言ってベルトの腰に付いているスイッチを押したと思った瞬間、眩い光が放たれ、私は思わず目を瞑ってしまった。
そして、私が目を開けると、リョウの姿は何処にも無く、代わりに赤い眼をして金色の角を持った生き物が怪物と戦っていた。
信じられない。
さっきまで戦っていたリョウはいなくなって、今はあの金色の生き物が戦っている。
じゃあ………アレは。
あの、金色の生き物の正体は―――
「リョウ………なの?」
(フィアッセside. END)
AGITΩが銀のトータスロードに殴り掛かろうとしたその時、木の上から金色のトータスロードが飛び降り、AGITΩの体を締め付け、身動きを封じた。
「(もう一体!?)」
AGITΩは何とか抜け出そうと踠くが、それよりも先に銀のトータスロードが突進してくる。
「ぐぅっ!」
二度・三度と続けてソレを受けるが、自力で金のトータスロードの締め付けを振り解き、AGITΩは空中へと跳び上がった。
またしても突進しようとした銀のトータスロードは、金のトータスロードとぶつかり合い、転倒した。
二匹のトータスロードとの距離を離したAGITΩは、クロスホーンを開放する。
そして、起き上がって突撃して来た金のトータスロードを打ち倒して踏み台にし、銀のトータスロードへ、必殺のライダーキックを放った。
しかし、それが命中するより早く、銀のトータスロードは此方に背中を向け、甲羅でソレを受けた。
だが、大きく吹っ飛ばされたものの、銀のトータスロードは未だ健在だった。
AGITΩはすぐに体勢を立て直そうとするが、それより速く金のトータスロードは背後に忍び寄っていた。
「!? ぐあっ!」
背中に体当たりを喰らい、そのまま持ち上げられたAGITΩは、思いっきり木に向かって放り投げられた。
「ぐッ!」
そのまま地面に激突し、AGITΩはすぐに立ち上がったが、その時には既に前に銀・後ろに金のトータスロードに挟み込まれていた。
二匹のトータスロードは同時に突っ込み、AGITΩを倒そうとする。
AGITΩは、自分も銀のトータスロードに向って疾走し、首に拳を喰らわせ怯ませると、その両腕を掴んで後ろから迫って来る金のトータスロードへと投げ飛ばした。
ウウウウゥゥゥゥゥ
グウゥゥゥゥゥゥゥ
二匹は木を巻き込みながら吹っ飛ばされると、苦悶の声を上げて、逃げる様に地面へと潜ってその場から完全に姿を消してしまうのだった。
「チィッ!」
AGITΩは二匹が消えた場所に近づき、周囲を警戒するも、そいつ等が姿を現す事は無かった。
「くそっ、逃げられたか!」
俺は、アンノウンが既にこの場に居ないことを悟り、変身を解く。
気持ちを切り替え、どうやって皆に謝ろうか考えながら自分のバイクを止めた場所まで歩いて行く。
そして、見てしまった。
木から顔を覗かせて、呆然としているフィアッセさんを。
「何で、フィアッセさんが此処に……」
「ッ……………」
フィアッセさんは一度ビクッと震えた後、何も言わずに走りだした。
車のエンジン音が聞こえ、それがどんどん遠ざかって行った。
…………俺は、その場から動く事が出来なかった。
茜色に染まった太陽が、やけに眩しく見えた。
後書き
忙しくなる前に何とか書き上げました。
アルハザードの設定はほぼオリジナルです。
美由希、恭也との対決。一回描写入れて書いたのですが酷い出来になったのでこんな感じに落ち着きました。
G3の装着員選抜方法はディケイド形式で行きます。
セルフィについては完全に思いつき。口調とか知らないんで考えて書こうかと。あ、でも知ってる方がおられたら教えて下さると助かります。
諸事情により、暫く小説を書く時間がとれません。何卒ご容赦を。
p.s.ふいんき(←なぜか変換できない)はネタです。間違いではありません。