「槙原君、謎の生物と遭遇したというのは本当かね?」
海鳴警察署の会議室、そこではリスティと警察署の幹部である3人の男が対面していた。
「私たちは君の功績を高く評価している。だが……」
「何の証拠も無い現状ではそれを信じる訳にもいかない。」
「ボクが嘘を吐いていると仰るんですか!?」
バァン!と机を叩き立ち上がるリスティ。
「ふぅ、落ち着きたまえ。誰もそんな事は言っていない。」
幹部の内の1人が、興奮して冷静さを若干欠いているリスティを宥め、椅子に座るように促す。
「しかし、君の言っていることが本当なら早急に対策を取らねばならないな。」
「まさか君の全力の攻撃でも仕留められない存在が現れるなんて…信じられんな。」
「それから……コレ。最終的に未確認生命体を倒したという『AGITΩ』と言う生物だが、何なのかね。」
1人の幹部がリスティの提出した報告書の、ある一点を指差してそう言った。
「それは……分かりません。ボクが遭遇した未確認生命体がソイツの事をそう呼んでいたんです。」
「むぅ、こちらも正体不明か。分かっているのは名前だけで、未確認生命体との関連も、人類の敵かどうかも分からん。」
「未確認生命体の方に関しては全く情報が無い。目的は何なのか、何故あのような殺し方をするのか、仲間はいるのか、何処から現れるのか。その全てがまるで分かっていない。」
「まさに未確認……いや、アンノウンと言ったところか。」
幹部たちはそう言って締め括り、リスティは静かに会議室から退室して行った。
第二十一話「青の嵐、2つのG」
翌日、俺は現在3時限目英語の授業を受けている、のだが…
「藤見君、藤見君、当てられてるよ?」
「あ~?」
俺は完全に眠ってしまっていた。それこそ、月村に揺さ振られていても完全に覚醒しない程に。
「もうっ、藤見君!」
「うぐっ!」
直後、後頭部に鋭い痛みが奔る。
後ろを見ると、いつまでも起きない俺に業を煮やしたのか、月村がチョップの構えをして此方をジト目で睨んでいた。
「目が覚めた?」
「おかげさまで。」
「じゃあサッサと前向いた方が良いと思うよ?」
「え?」
そう言って前を向くと……
「俺の授業で寝るとは良い度胸だ。」
鬼がいた。
「痛って~。」
拳骨喰らいました。凄い痛い。
「珍しいね、藤見君が授業中寝ちゃうなんて。」
「昨日寝たの遅かったから眠いんだよ。」
「何時に寝たんだよ。」
「確か4時頃だったと思う。」
「…遅すぎないか?」
「俺だって好きで夜更かしした訳じゃない。」
昨夜、家に帰った俺を待っていたのは案の定、怒り心頭のリニスだった。
まぁ、その後説教されて、アンノウンの事やこれからの事を話し合って、気が付いたら4時だった。
それからすぐに寝た訳なんだが、よく考えてみれば徹夜した方がまだマシだったかも知れないな。
「大丈夫?目がショボショボしてるけど。」
「眠い。」
「次は現国か。寝てるのバレたら五月蠅いぞ?」
「…保健室に行ったらどうだ?」
「あ~、動きたくない。悪い月村、また当てられたら起こしてくれ。」
「それはいいけど…怒られても知らないよ?」
「現国の時間いつも寝てるお前に言われたくないよ。」
コイツ文系の授業の時は総じて肘をつき、ノートを取るふりをしながら熟睡してるからな。(通称:高等技術)
ん?そうだ!俺もそれ使おう。
「月村、お前の『高等技術』俺も使わせて貰うわ。」
「ええっ!」
「じゃ、おやすみ~。」
月村の驚いた声と共にチャイムが鳴り、俺は即座に行動に出た。
ノートを広げ、右手にはシャーペン(芯は出してない)を装備。左肘を机に立てて、掌を顎にそえる。
準備完了。
そして、礼を終えた後、俺は夢の世界へと旅立って行った。
その頃、綺堂さくらは月村家へと訪れていた。
「いらっしゃいませ、さくら様。」
「今、お茶とお菓子をお持ちしますね。」
「ありがと、ノエル、ファリン。」
政府との交渉が漸く終わり、一つ肩の荷が下りた為か、上機嫌である。
前々から交渉は続けていたのだが、未知の敵に対してどの様な対応を取ればいいのか…と言うところで話が滞り、進展らしい進展が長らく無かった。
しかし、この間完成したG2とG3のスペックデータを見て貰ったことで話が進み、取り敢えずは警察で運用し、凶悪犯の鎮圧などの成果を重ねた上で、もし未知の敵が現れた場合はこれを使用することが決定した。
「では、これで正式に国からの認可が出たという事ですね?」
さくらの話を聞いたノエルは、そう言ってカップに紅茶を注いだ。
「そう言うことね。まぁ、G1は問題外にしても、G2とG3のどちらを運用して貰うかは決めておかないとね。」
「ふぇ?G2じゃないんですか?能力はそちらの方が高いんじゃ……?」
「確かにスペックは上だけど、武装が少ないし相当鍛えていなければ使いこなせないでしょう。」
「まぁ、細かい事は開発者の忍が帰って来てからにしましょう。」
そう言って、さくらはファリンが持ってきたクッキーに手を伸ばしたのだった。
「いらっしゃいませー!」
学校が終わって今はバイトの真っ最中。
あの後、昼休みも寝て過ごした俺は、5時限目が始まる頃には眠気を吹き飛ばし、いつも通りに授業を受けた。
それにしても……侮れないぜ『高等技術』!まさかホントにバレないとは思わなかった。これからは眠くなったらああやって寝よう。
「はい、ベーコンサラダサンド1つとハムサンドが1つ、レモンティーが2つですね。少々お待ち下さい。」
そんなくだらない事を考えていてもちゃんと仕事はしなきゃいけない訳で、お客さんから注文を取って桃子さんの元に持って行く。
「桃子さん、オーダー入ります。」
「りょうか~い。凌君、3番のお客様のBLTサンド、あがったから持って行ってくれる?」
「はい、分かりました。」
こんな感じでいつもと同じく忙しくバタバタと働いている。
ちなみに、野郎たちの嫉妬の視線が俺に集まるのもいつもと同じ。
………桃子さん、やっぱり男のバイト増やしませんか?
「フィアッセさん、レジお願いします!」
「ちょっと待ってね、すぐ行くから。あ、リョウ、1番テーブルの食器、片付けお願い!」
「了解しました!」
働き始めて1時間くらいが経った頃、店内に厳ついスキンヘッドの不良と、モヒカンとロン毛の3人組が店内に入って来た。
「いらっしゃいませー。」
まぁ、一応客だし店員として挨拶はしないとな。
「あ?俺たちはカワイイ子が此処に居るって聞いたから来たんだよ、ヤローはすっ込んでろ、タコ!」
モヒカンが俺に向かってそう言い、ゲラゲラ笑い始める。
ムカッ
何だコイツ。すげぇウザいんだけど。
「んだよ、ビビって返事もできないのかよ!腰抜け!」
「おい、そんなヤツほっとけ!」
「そーそー。俺らの狙いはこの子だけだろ。」
俺が、恐怖で返事を返せないと取ったのか、モヒカンは尚も笑い、直後スキンヘッドに頭を小突かれていた。
そして、ロン毛が指差した先には―――
「わ、私!?」
フィアッセさんがいた。
「バイトなんかやめて俺らと遊びに行こうぜ?楽しいからよぉ。」
「そーそー、つまんねーダロ?バイトなんて。」
こいつ等、よりにもよってフィアッセさんをナンパするのか。
チラッと士郎さんの方を見ると、いつでも此方へ駆けつけられる様にしていた。
「こ、困ります!や、離して下さい!」
そして、モヒカンがフィアッセさんの手を掴んだ瞬間、俺の堪忍袋の緒が切れた。
能力を使って身体能力を底上げし、モヒカンに向かって歩いて行く。
「……すみません、お客様。」
「あ?何だお前か、今良いとこなんだからじゃますんじゃn」
ゴシャ!
モヒカンの襟首を掴んで此方を向かせ、顔面に右ストレートを叩き込む。
「ギャ!」
「店員に手を出すのはご遠慮下さい。でないと、力尽くで叩き出す事になりますよ?っと!」
モヒカンがよろよろと後退して、テーブルにぶつかりそうだったので、頸動脈に手刀を入れて意識を落とし、床に倒れさす。
「て、テメェ!何しやがんだコラァ!」
仲間をやられた事に逆上し、スキンヘッドとロン毛が殴り掛かって来るが、俺はそれよりも早くスキンヘッドの右手を掴んで捻り上げ、腹部に掌底を叩き込んで、喉笛に正拳突きを喰らわせる。
「ガァ!ゲッホッ!ゲホ!」
隣を見ると、ロン毛の方も士郎さんによって鎮圧されていた。
つーか、流石は士郎さん、カウンターから一瞬で此処まで跳んできたよ。
「士郎さん、この馬鹿共どうします?」
「ふむ、おい君。起きてるんだろう?そこで伸びてる2人を連れて出て行ってくれないかい?」
「て、テメェら俺たちに手ェ出して、タダで済むと思ってんのか!」
顔を鼻水まみれにしながら良く言うよ。
もっかい殴ってやろうか。
「ほぅ。どうなるって言うんだい?」
その直後、士郎さんから凄まじい殺気が放たれ、スキンヘッドは「ヒィッ!?」と悲鳴を上げ、ガクガク体を震わせて、無言でコクコクと頷くと、もう2人の馬鹿を引き摺って店から出て行った。
「ふぅ~、やっぱりああゆう輩って何処でもいるんですね。」
「そうだね。まぁ、この店で悪さしようものならタダでは済まさないけどな。」
俺は息を吐いて能力を解除する。
「しかし、凌君も中々やるね。あの身のこなしは大したもんだ。」
そう言って褒めてくれる士郎さん。
けど、そうだろうか?仮に能力を使ったとしても、高町はもちろんのこと赤星にだって勝てる気がしないんだけど。
「あ、あの、リョウ。」
「はい?あ、フィアッセさん、大丈夫でしたか?」
「うん、ありがとね、リョウ。その、か、格好良かったよっ!」
そう言って、フィアッセさんは顔を赤くして店の奥に走って行ってしまった。
はて、どうしたんだろうか。
「士郎さん、何でフィアッセさんはあんな態度を?」
「はぁ、凌君も相変わらずだね。」
士郎さんはそう言って苦笑し、結局答えを教えてはくれなかった。
そろそろ陽が傾き始めた頃…
「え!?試験運用?本当なの?」
「ホントよ。それで、G2とG3のどっちを送るかなんだけど……」
学校から帰った忍は、さくらから告げられた事に驚いていた。
「んー、やっぱりG3かな。武装も多いし、汎用性が一番高いから。それに、ファリンは戦いとかに向いてないしね。」
「そうね。あの性格じゃあね。」
そう言って2人は、ドジをやらかして涙目になっているファリンを想像する。
「(能力的にはノエルと同等なんだけどねー、あの子。)」
「(優しい娘だから根本的に戦いとかに向いて無いのよね。)」
「「うん、無理ね。」」
2人は脳内で考えた結果、同時に同じ結論に到った。
「あ、そう言えば、ノエルー!ファリンとすずかは何処に居るの?」
先ほどから、てんで姿が見えない妹と、その従者の事を不思議に思い、忍は夕食の準備をしているノエルに尋ねた。
「そう言えば姿が見えませんね。何処に居るのでしょうか。」
「あら、すずかとファリンなら、あなたたちが帰って来る少し前に買い物に出かけたわよ?」
「え?そうなの?」
「ええ、買い忘れた物が有ったとか騒いでたわね。」
「さくら様、ファリンは分かりますが、何故すずかお嬢様も?」
「図書館で借りた本を返却しに行くって言ってたわ。」
「そっか、ならいいんだけど。」
「?何か心配な事でも御有りなのですか?お嬢様。」
「うん、何か嫌な予感がすると言うか。」
そう言って、忍は窓から外を見て、未だに見えない2人に思いを馳せるのだった。
「くしゅん!」
「はわっ!風邪ですか?すずかちゃん。」
片手に買い物袋をぶら下げ、もう片方の手でお互いの手を繋いでいるすずかとファリンは、家への道を歩いていた。
「ゴメンなさい、すずかちゃん。私すっかり猫たちのエサの事忘れちゃってました。」
「ううん、私も図書館に行かなきゃいけなかったから丁度良かったよ。」
しかし、その近くには、リスティを襲った怪物と瓜二つの白い怪物が潜んでいた。
「ありがとうございましたー。」
もう少しで今日のバイトが終わるという時にソレは起こった。
「!?」
AGITΩの力がアンノウンの存在を知らせる。
「ッすいません!急用ができたんで帰ります!!」
「え?リョウ?」
「凌君?」
凌は翠屋の制服のまま店を出て、バイクに跨り、本能の命じるままにアンノウンの元へと急いだ。
家までもう少しだと言う時にソイツは姿を現した。
白い体に青いマフラーを巻いていて、ギラリとすずかとファリンの2人を捉えている鋭い目つきを持った化け物。
「あ、ああ、ぁ」
突如現れたその化け物をまえにして、すずかは恐ろしくて声が出せなかった。
ファリンは両手を拡げて、すずかを庇ってるがその顔には恐怖心がありありと浮かんでいる。
すずかは地面に尻もちをついて、ただただ目の前の存在に恐怖し、後ろに後ずさる。
グルルルルル
「すずかちゃん!きゃあ!」
化け物がファリンを払い除け、唸り声を上げながらゆっくりと近づいて来る。
すずかは遂に木の根元まで追い詰められてしまった。
「いや、イヤァァァ!」
化け物の腕がすずかの細い首に伸びようとした時――
ガァァァァァ
黒い影が横切り、白い化け物を殴り飛ばした。
「お嬢様、ご無事ですか?」
すずかを助けた黒い鎧からは、彼女の姉である忍の従者、ノエルの声が聞こえた。
「ノエル?ノエル!怖かったよぉ。」
「もう大丈夫です、すずかお嬢様。ご安心を。」
「す、すずかちゃん、あれ!あれ見て下さい!」
そう言ってファリンが指差した先には、大型トラックが停まっており、その傍らで忍が手を振っていた。
「すずかー!こっちこっち!」
「お姉ちゃーん!」
すずかは姉の忍に抱きつき、3人はコンテナの中に入って行った。
その中には………
「すごい……これ、何?お姉ちゃん。」
モニターや通信機、そして、1台のバイクが置かれている。
更に、すずかの視線の先には青い鎧のような物があった。
「説明は後。ファリン、大丈夫?」
「こ、怖いですけど、すずかちゃんを襲おうとしたあの人は許せません!それに、お姉様も戦ってますから!」
「分かったわ。私たちの家族に手を出したらどうなるか思い知らせてあげましょう!」
そう言って、ファリンは青い鎧を装着し、頭を完全に覆う仮面を被った。
そして、完全に青い装甲に身を包んだファリンは、バイクに跨りコンテナから下りた梯子を通って、ノエルの救援に向かったのだった。
果敢に攻め、何とかトラックから遠ざけたものの……
G2を纏ったノエルは、白い化け物に未だダメージを与えられずにいた。
「(くっ、速い!)」
黒い鎧と白い獣が交錯する。
しかし、両手に持つG2の武器『デストロイヤー弐型』はギリギリで避けられ、化け物の攻撃はノエルの右腕を的確に捉えてダメージを与える。
「クッ!」
≪ノエル、お願い!頑張って!≫
その衝撃で右の剣を落としてしまうノエル。
高速で振動し続ける刃は、当たれば間違いなく化け物の腕を切断できるだけの切れ味を誇る。
しかし、それも当たらなければ意味を為さない。
「ハァ!」
左に持った剣を横薙ぎに振るい、化け物との距離を取る。
「(ファリンが来るまで何とか耐え忍ばないと!)」
一方その頃、G3を装着したファリンの元にも黒い化け物が姿を現していた。
G3はバイクから『GM-01 スコーピオン』を取り出して構える。
「忍お嬢様、もう一体の化け物がっ」
≪何とか通り抜けられない?ノエルがピンチなのよ。≫
「(急がなきゃ、お姉様が危ない。)」
そうは思うものの、目の前の黒い化け物は此方をジッと睨んでタイミングを見計らっている。
少しでも動けばその隙を突いて跳び掛かって来るだろう。
「(けど、お姉様を助けに行かなくちゃ!)」
ファリンが覚悟を決め、戦おうとしたその時。
化け物は唐突に視線をG3から逸らした。
そして……
A、G、I、T、Ω
掠れた声で、己が怨敵の名を呼んだ。
『AGITΩ』そう呼ばれたその生き物は、ゆっくりと歩いて来る。
すると、黒い化け物はファリンを無視して、驚くべき俊敏さでAGITΩに接近し殴りかかる。
だが、それが当たるよりも速く、AGITΩの放った蹴りが化け物の腹を捉えていた。
化け物は後ろに蹴り飛ばされ、直ぐさま体勢を立て直すと同時に、頭上に円形状の輪を生み出す。
それは次第に広がり、そこから槍を取り出した。
化け物は、得物である槍を構えてAGITΩに肉薄する。
突き、振り上げからの斬撃、横薙ぎ、多彩な組み合わせで攻める化け物だったが、AGITΩはその全てを避け切り、逆に槍の柄を掴んで身動きを封じてしまう。
そして―――
ベルトの左腰のドラゴンズアイを押し、ベルト中央部から青き薙刀『ストームハルバード』を取り出した。
AGITΩは左手で持ったソレで相手の右腕を叩き、そのまま腹を突き上げて地面に叩き伏せる。
そのまま踏み付け、動けないようにすると、AGITΩは薙刀を体の前に突き出した。
左上腕部には青色のプロテクターが装着され、同時に体の色も金から青へと変化する。
ストームハルバードの先端が展開し、鋭い刃が現れる。
「変わった!?あなたは一体……」
ファリンがそう言うと、AGITΩはまるで、早く行けとばかりにノエルのいる方向を指差した。
「AGITΩ…あなたは――」
≪ファリン、ノエルが危ないわ、早く向かって!≫
「は、はい!お嬢様!」
ファリンはそう言って、ノエルの元にバイクを走らせた。
AGITΩは、G3が行った事を確認すると――
グァウ!
自らの足を払い除け、漸く立ち上がったアンノウンと対峙する。
AGITΩはストームハルバードを横に薙ぎ、化け物との一定の距離を保つ。
次々と仕掛けられるアンノウンの攻撃の全てを薙ぎ払い、次の瞬間、アンノウンの槍が届かない位置まで大きく跳躍する。
そして、AGITΩはストームハルバードを振り回し、風を操り始めた。
それとほぼ同時に、アンノウンは己の“貪欲の槍”を構え、穂先をAGITΩに向ける。
その一帯に風が吹き荒れ、辺りを砂埃が包む。
アンノウンが構えた槍は、激しい風によって穂先がぶれ始める。
AGITΩはその隙を逃さず、アンノウンに向かって突進する。
アンノウンも槍を突きだすが、AGITΩはそれを受け流し、ストームハルバードを振るう。
まさしく“疾風怒濤”
AGITΩは擦れ違い様にアンノウンへと三太刀浴びせ、致命傷を与える。
アンノウンはよろけながら後退し、輪が頭上に現れると、爆発して絶命した。
そして、AGITΩは己のバイク『マシントルネイダー』に跨って、その場を後にするのだった。
黒い化け物をAGITΩに任せ、ノエルの救出に向かったファリンが見たのは、今まさに化け物が、手に持った弓に番えた矢を放とうとしているところだった。
「!?お姉様!」
瞬時にバイクからスコーピオンを取り出し、手元を狙う。
!グルルルルルルルル
その衝撃で化け物は弓を取り落とし、ノエルとファリンをギラリと睨む。
「お姉様、大丈夫ですか?」
「ええ、危ないところでしたが、行動に支障はありません。」
グルルルルル!
化け物を見ると、再び矢を番え、放とうとしているところだった。
「お姉様、矢は私が打ち落としますから、その間に接近して、その剣でトドメをお願いします。」
「大丈夫ですか?」
「はい、すずかちゃんやお姉様を危ない目にあわせた報いはタップリ受けて貰います!」
ファリンはスコーピオンを構え、照準を矢に合わせる。
直後、ノエル目掛けて矢が放たれた。
しかし、ノエルは臆する事無く化け物に向かって疾走する。
何故なら、自分の妹の事を固く信じているからである。
そして、その信頼は報われる。
放たれた矢は、一発の銃弾によって軌道をずらされ、何の役目も果たさないまま地面へと突き刺さった。
アンノウンは回避行動を取ろうとするが、もう遅い。
デストロイヤー弐型を両手で振り上げたノエルは、化け物に向けて、それを渾身の力で振り下ろした。
化け物は咄嗟に手に持っていた弓でそれを受け止めたが、しばしの均衡の後、真っ二つに切り裂かれ、化け物の体も又、振り下ろされた刃によって鮮やかに切り裂かれた。
ノエルは後ろに後退し、その直後、アンノウンは爆散した。
そして、2つのGを纏った姉妹は、バイクに乗って自分たちの家族が待つところへと向かったのであった。
後書き
あれ?これ…ファリンのキャラと違くね?
なんとか完成しました。全く構想が浮かばず、前半gdgdです。すいません。
戦闘シーンはサクサク書けたんですけどね。
毎度のことで申し訳ないですが、変なところがあったら言って下さい。訂正しますので。