地上の光が一切届かない地面の下
地下に位置するその場所には
人工の光に照らされている広大な空間が広がっていた
そこには機械的な装甲に身を包んだ3人の姿が有った
「これより、Gシリーズの最終テストを行います。各自構えて下さい。」
そして、それを観察する1人の人間の姿もそこには有った。
声が空間に響き渡ると同時に3人は動いた。
燃え盛るような赤い装甲に金色の角を持つ一人がファイティングポーズを取る。
深い闇のような漆黒の装甲、片手に鈍い銀色の光を放つブレードを握るもう一人は体勢を低く落とし、ブレードを握る手に力を籠める。
最後の一人は青色の装甲に身を包み、右手に銃を握り、左手をそれに添えたまま唯々前を見続ける。
「最終テスト開始!!」
閑話その1「Gの鼓動」
ビーーーーーーーーーー
ブザーが鳴ると同時に何も無かった筈の壁に穴があき、鋼鉄の砲弾が次々と飛び出してくる。
ドカン ドカン ドカン
キン キン キン
バァン バァン バァン
次々と壁から放たれる砲弾を次々と破壊していく3人。
時には避け、受け流し、受け止め、様々な動作を正確にこなしていく。
「ハァッ!」
己の拳で次々と砲弾を粉々に破砕する赤い装甲の装着者。
「フッ!」
手に持つ刃でその全てを真っ二つに切り裂く黒い装甲の装着者。
「…………………」
高速で撃ち出される砲弾を正確無比の射撃で破壊し尽くす青い装甲の装着者。
ビーーーーーーーーーー
「テスト終了!3人とも戻ってきて!」
ブザーが鳴り響き、3人の装着者たちは顔に手を当て、顔を覆っていた頭部ユニットを外した。
そこには、何れも劣らぬ美しい女たちの顔があった。
演習場から出た彼女らを出迎えたのは3つのGの開発者である月村忍だった。
「ゴメンねー、何度も何度も付き合わせて。でもこれで一応完成だから。」
彼女たちが着ている『対未確認生命体用強化服(通称Gシリーズ)』を脱がしながら謝る忍。
「気にしないで、忍。元々これを作って欲しいって依頼したのは私なんだから。」
そう言って纏めていた後ろ髪を解きながら、G1の装着者である綺堂さくらは、机に置いてあったワインを手に取った。
「お気遣いは無用です、忍お嬢様。しかし……私は大丈夫なのですが、ファリンは……」
「ふぇぇぇぇぇん、ここここここ怖かったです~~~?!」
「う~ん、何でG3を装着してる時は平気なのに脱いだらこうなるのかしらね~。」
ファリンはペタリと地面にへたり込んで涙を流しており、ノエルはそんなファリンを慰めつつ忍に対して言葉を述べる。
実際、何度も同じような事をやって来たのだ。その中には今回よりもはるかに難しい内容のテストだって少なからずあった。
にも拘らず、G3を装着している時は淡々と恐怖心の欠片も無く作業するというのに一度脱いでしまえばこのようになってしまうのがファリンであった。
この辺りはファリンを創った忍でさえサッパリ分からない。
「とにかく、これでGシリーズは完成したのね。」
「まだ、最終調整が残ってるけどね。でも、それもすぐに済むし、もうほとんど完成したも同然。」
「そう、なら良かったわ。」
さくらはそう言ってワインを優雅に飲みながら自分の装着していたG-1に視線を向ける。
「それにしても驚いたなぁ。2年前にいきなり資料渡されて、『あなたの技術で何とか再現できないかしら。』なんて言ってくるんだもん。」
「あら、資料に目を通してすぐに『うん!やるやる!うーん、漲ってキター!』って叫んだのは誰だったかしらねー?」
「うっ!あ、あははー。い、いいじゃない!こうゆうの作るのは私の夢だったんだから。」
「ふぅ、いいけどね。それより、ファリン?そろそろ泣き止みなさい。ノエルが困ってるでしょ。」
「ふぇぇぇ。さくら様ぁ、すみませ~ん。」
事の始まりを思い出し自然と笑顔になる忍。
忍をからかいつつ、ファリンを泣き止ませるさくら。
涙声でさくらに謝るファリン。
その様子を微笑ましげに見つめるノエル。
こうしてGシリーズは完成したのだった。
閑話その2「久遠の1日」
あさ くおん おきる りょう となり ねてる
くおん ほっぺた なめる りょう おきない
はな なめる りょう うごいた
みみ なめる りょう こっちむいた うれしい
すりよって りょうのかた たたく
りょう ねぼける くおん だきしめた しあわせ
だっこ きもちいい あったかい ぽかぽか
においかぐ いいにおい すき
くおん ねむくなった りょう いっしょ ねる
ジリリリリリ ジリリリリリ ジリリリリリリリ
おおきいおと くおん おきた となり りょう おきた
りょう くおん だきあげる うれしい
くおん りょう いっしょ りにす いっしょ ごはん たべた おいしい
りにす りょう かた のった ずるい くおん もやもや
くおん あたま のる たかい ふさふさ きもちいい
りょう おべんきょう くおん ひざ りにす あたま のる
りょう べんきょう おわった
りょう くおん あそぶ りにす いっしょ ごろごろ もやもや
おひる くおん おあげ りょう ごはん おいしい
りにす いなくなった した おさら かちゃかちゃ くおん りょう いっしょ ふしぎ
りにす もどってきた ひざ のる りょう りにす なでる もやもや
くおん りょう あたま たたく ぽふぽふ
くおん にらむ りにす じーー
りょう あたま なでた うれしい
こたつ ぬくぬく りょう ぽかぽか しあわせ
りょう りにす みかん たべさせる ちくちく
くおん りょう て たたく りょう わらう
りょう みかん さしだす くおん たべる ゆび くわえた おいしい なめる
りょう おどろく ゆび ひっこめる くおん かなしい
りょう あやまる みかん さしだす くおん びくびく ゆび くわえた りょう えがお あんしん
りょう りにす みつめあう ちくちく
くおん りょう かお なめる
りにす こっち みる くおん まけない
おそと まっくら おへや あかるい
「りょう~、御飯よ~。」
りょうのおかあさん きのう あった やさしい
よる くおん ごはん たべた りょうのおかあさん ひざのうえ
りょう びっくり りょうのおかあさん えがお おちつく
りょう べんきょう くおん みはり たのまれた りょう ねたら おこす
りょう ねむった りょう いたいほうがいい いった つめ たてる
くび あてる ち でた りょう おきた いたそう ごめんなさい
くおん あやまる りょう わらう あたま なでる ゆるしてくれた?
りょう べんきょう おわる くおん あそぶ りにす いっしょ あそぶ
くおん ねむくなった りょう いっしょ ねる りにす いっしょ ねる
くおん りょうのむね のる あったかい ぽかぽか
あした なみ かえってくる たのしみ
あした りょう わかれる かなしい
くおん なみ すき
くおん りょう すき
くおん なみ りょう りょうほう すき
後書き
短いのは勘弁して下さい。
何だか無性に久遠が書きたくてやった。
こんな感じで良いんでしょうか、久遠の思考って。
その1のGシリーズ装着者は装甲脱いでから着替えてないのでインナースーツで会話してます。想像したらすごくエロかった。
時系列は、その1が春休み終了間際。その2が19話の次の日。
次から突入するとか言っといてこんなの書いてごめんなさい。