鏡を見ると、そこにはアギトになった俺の姿が――――
って、えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?
え、ちょ!?どういうことだ、これ!
何でアギトになってんだよ!
ここ、『とらハ』とか『リリなの』の世界だよね!?
その2つが混ざってるのは納得できるよ?世界観に共通するところなんて多々あるし。
俺が魔力持ってたのも驚いたけど、まだ納得できる範囲内だよ?
けど、何でアギトになってるんだ?
もう、全く訳が分からない。
誰か説明してくれー!
第十五話「模擬戦」
数十分後、ようやく落ち着きを取り戻した俺は、とりあえずこれからどうするのかを考える事にした。
「やっぱ、リニスには話しておいた方が良いよなー。けど、コレどう説明したらいいんだ?」
つか、これどうやったら元に戻れるんだろうか。未だにアギトの姿のままなんですけど……
トン トン トン トン
「凌?一体何を騒いで……」
げぇっ、リニスが目を覚ましてこっちに来る!?
ちょっ、どうする?どうすんのコレ。
コン コン
「凌?入りますよ?」
「ちょっ、待っ!?」
俺の言葉も空しくリニスはドアを開け、俺の姿を見てしまった。
「凌!?その姿は…一体……」
俺の姿を見て驚愕するリニス。うん、その反応は正しいと思うよ?
「あー、何て言ったら良いか分からないんだけど・・・不思議な力に目覚めた…的な?」
「何で疑問形なんですか。何でそんなことになったんですか?」
「いや、目が覚めて、ひどい頭痛がして、体がすごい熱くなったと思ったらこの姿に。」
「じゃあ昨日の頭痛はその姿になる予兆だった、という事ですか。」
「多分、そうだと思う。」
いや、実際はあの少年の光を受けたのが原因だろうと思うが。
あの少年ってやっぱり闇の力と敵対していた光の力なんだろうか。
「それで、元の姿には戻れないんですか?」
リニスの言うことも尤もなのだが、戻り方が分からない。
ダメ元で念じてみようかな。『元の姿に戻れ』って。
俺がそう念じると、ベルトから光が溢れ、元の姿に戻ることができた。
(ホントに戻れたよ。何事もやってみるもんだな。)
「大丈夫なんでしょうか、その力は。」
「大丈夫だと思う。根拠とかないけど、そんな気がする。」
実際、アギトの力は使用者の心掛け次第で善にも悪にもなる純粋な力だったと思うし。
「・・・・・・少し、付き合ってもらえませんか?」
「はい?」
突然リニスにそう言われ、連れて来られたのは家の外だった。
「リニス?一体何を…」
俺がそう言った途端、町が静かになった。
以前、リニスの実力を見せて貰った時と同じだ。
静かすぎる町、俺とリニス以外の人間が存在しておらず、今この空間には俺達しか存在していない。
「封時結界を張りました。凌、もう一度さっきの姿になって下さい。」
「リニス、お前もしかして…」
「はい。あなたの力が何なのかは分かりませんが、どの様な物なのかは知っておいた方が良いと思います。ですから…」
「模擬戦して確かめようってことか。」
「はい。お願いできますか?」
丁度いいかもしれない。アギトの力が制御できなければ、万が一アンノウンもこの世界に存在していた場合、困ったことになる。
今のうちに戦闘経験を積んでいたほうが良いだろう。
「ああ、分かった。」
俺はTVで見た『津上 翔一』のポーズを真似し、腰に変身ベルト『オルタリング』を出現させ、そして――――――
「変身!!」
己を変質させる言葉を紡いだ。
(リニスside.)
「変身!!」
凌がそう叫ぶと、ベルトから光が溢れ、凌の姿が部屋で見た異形の姿に変わった。
そして、凌は体を動かし、建物を殴りつけたりして力の把握を行い始めたようでした。
それにしても、ただのパンチ一つで建物を易々と貫通する威力ですか、これは当たらないようにしないと駄目ですね。
あの時は戦うという意思が無かったからだろう。部屋で対峙した時には感じなかった威圧感が、今の凌からは感じられる。
けれど、見極めなければならない。凌の姿を変えた力が、凌に悪影響を及ぼすものなのか、そうでないのか。
そして、今まさに凌を介して私に流れ込んでくる未知の力がアレと同じものなのかを……
性能の把握が終わったのか、凌はこちらを向き、言った。
「行くぞ、リニス!」
「来なさい、凌!」
正直、侮っていたと言わざるを得ませんね。
凌を通して力が湧きあがってきて、いつもより速く動くことができるからそう簡単にやられることことはないし、
凌から放たれる拳や蹴りを回避することは容易ですが…
やはり、威力が強い。
少しでも当たればタダでは済まないでしょう。
こちらも魔力を両手に集中させ、隙があればカウンターをお見舞いしていますが、致命傷にはなっていない。
一体、この力は…
「ハァ!」
「!?ラウンドシールド!」
やはり、すごい威力ですね。腕が圧し折れそうです。
ピシッ、ピキ
っく、シールドが持ちそうにありません。
考え事をしている余裕はなさそうですね。
すみませんが凌。勝たせて貰います。
「これで決めます! 撃ち抜け、轟雷!サンダースマッシャー!!」
(凌side.)
拳も蹴りも一向に当たらない。
その癖こっちはリニスの繰り出すカウンターが良い具合に決まってかなりヤバい。
「セイ! テリャ!」
またも躱される。
しかし次の瞬間、初めてリニスに隙ができた。
チャンス!
「ハァ!」
俺はその隙を逃さずリニスに殴りかかった。
が、しかし。
「ラウンドシールド!」
っく、防がれた!
再び拳を構え、リニスに向かっていくと、いきなり前方に魔法陣が現れた。
やばっ!?
俺は咄嗟に後ろへ跳んで、防御の姿勢を取ろうとした。しかし……
バリッ バリリ
(なっ!)
いきなり四肢が拘束され、体の自由が奪われた。
「これで決めます! 撃ち抜け、轟雷!サンダースマッシャー!!」
その言葉を聞くと同時に、魔法陣から稲妻が放たれ、俺は意識を刈り取られた。
後書き
リニスさんと模擬戦。
リニスが受けたアギトの力の恩恵は、能力の底上げ。魔法の効果・威力や身体能力が上がります。
t単位のパンチをラウンドシールドで受けてひびが入っただけなのはそのお蔭。