「あのオラウータンめっ!! 船を更に破壊してくれやがってよ」
「気がつきゃいつの間にかボロボロだなこの船も……かえ時か?」
「勝手な事いってんじゃねェ!!」
ジャヤの東海岸。
ショウジョウに破壊されたメリー号を修理しつつ、一味は目的の場所に辿り着いた。
東海岸は町のある西海岸とは違い、岸沿いに深い森が広がる密林地帯となっている。
そんな中にただ一つだけ、ポツリと波が打ち寄せる岸に建てられた“家”があった。
「ココが例の場所?」
「モンブラン・クリケット」
「夢を語り町を追われた男か……」
クレスは船の正面に見えた“家”を見つめた。
正面から見たそれは、絵本などで出てくるファンシーお城に見えた。
ルフィ、ウソップ、チョッパーは嬉しそうに歓声を上げたが、それは正面から見た限りの話だ。
「バーカ、よく見てみろ」
「少なくとも、見栄っ張りではあるようだな」
「へ? 何が?」
メリー号を岸に着けるとおのずとその家の姿が見て取れた。
正面の“お城”はベニヤ板に描かれた張りぼてで、家に当たる部分はその後ろに岸に"切り断つように"建てられた、石造りの古めかしい家だった。
夢を語り町を追われた男。いかにも胡散臭い様子の家であった。
「一体どんな夢を語って町を追われたの?」
「詳しくはわからないけど、このジャヤという町には莫大な黄金が眠っていると言っているらしいわ」
「黄金!!」
「どっかの海賊の埋蔵金かしら!?」
「さぁ……どうかしら」
黄金という言葉につられ、一味は次々と島に降り立った。
それぞれ思い思いに周辺を探索していた時に、ナミが切り株の上に置かれた一冊の絵本を見つけた。
「ずいぶん……年季の入った本ね」
ナミはその絵本を手に取り、タイトルを読み上げた。
「『うそつきノーランド』」
第三話 「幻想」
「何やってんだあいつ等?」
ロビンと共に船番を請け負ったクレスは、メリー号の上から島で見つけた絵本を囲む一味を見下ろした。
「どうしたのクレス?」
「どうやら航海士が絵本を見つけたみたいでな」
「絵本?」
「『うそつきノーランド』」
普通は見えるような距離ではないが、クレスは絵本のタイトルを読み取った。
「あら、懐かしいわね」
「そうだな。……結構好きだった話だ」
『うそつきノーランド』
北の海に伝わる有名な童話だ。
クレスとロビンの故郷は西の海なのだが、島に世界最大最古の図書館があったため、読めない本は無かった。
「うそつきのノーランドに騙された王様が黄金郷を探しに行くんだけど、やっぱり見つからなくて、王様を騙したノーランドはうそつきの罪で死刑になってしましました。
過去の実話をもとにした“うそをついてはいけません”っていう教訓の話ね」
「オレも話の内容は今でも覚えてるよ。
『うそつきのノーランドは死ぬまでウソをつくのをやめませんでした』って奴か」
クレスは船の欄干にもたれかかる。
そして、幼いころロビンと二人、シルファーに絵本を読んでもらったことを思い出し、小さく微笑んだ。だが、その表情はどこか寂しげでもあった。
ロビンはそんなクレスの表情の変化に気づいていたが、何も言わなかった。
「そう言えば、ノーランドの本名って確か……モンブラン・ノーランドだったけ」
「ええ、そうね」
クレスは情報を引きだしてから、どこか引っ掛かるような気がしていたその訳に辿り着いた。
ロビンもまた、その可能性に気がついた。
この話のモンブラン・ノーランドという冒険家は400年前に実在した人物なのだ。
「モンブラン・クリケット……同じ名字」
「なるほどね……じゃあ、これから会おうと思っている人物は───」
ロビンが言葉を紡ごうとしたその時、
「うわあああああああああ!!」
クレスとロビンはルフィの悲鳴を聞き、直ぐに島へと視線を向けた。
海から上がって来る気泡を眺めていたルフィは、突如現れた腕に掴まれ海に落とされ、それと同時に一人の男が海から飛び上がった。
鍛え抜かれた肉体に、頭に栗のような何かを乗せた男だ。
「誰だてめェら? 人の家に勝手に上がり込むとはいい度胸。ここらはおれの縄張りだ。狙いは金か? 死ぬがいい」
<海賊「猿山連合軍」最終園長(ラストボス)>モンブラン・クリケット。
クリケットは一味をジロリと見回すと、有無を言わさず一味に向けて殴りかかった。
襲いかかるクリケットにサンジが応戦する。
クリケットの攻撃は鋭く抉りこむようだった。潜水によって身体が衰弱している状況であろうにも関わらず、恐ろしいまでの身体能力を発揮する。
鋭い攻撃を受け、さすがのサンジも本気にならざるをえない。
「やるな、あのくり頭のおっさん」
「彼がモンブラン・クリケットかしら?」
「そうみたいだな」
クリケットはサンジに猛攻を浴びせかけるも、体術で相手をするのは面倒と感じたのか懐から銃を取り出して発砲した。
間合いの違いに苦戦するサンジ。その様子を見ていたゾロは、参戦しようと刀を握り、獣のような速度でクリケットに抜刀しようと駆けだした。
だがその時、何故かクリケットが苦しげに息を切らして倒れ込んだ。
「なるほど……当然か、潜った直後にあれだけ暴れれば倒れるわな」
様子を見ていたクレスが倒れ込んだクリケットを眺めながら呟いた。
クリケットが倒れたのはおそらく潜水病だろう。クレスもたまに潜水の直後にめまいや立眩みを覚えた経験がある。
一味は取り合えず、クリケットを介抱することにした。一味はチョッパーの指示の下、クリケットを部屋の中に運び込んだ。
◆ ◆ ◆
日も更けて夜となった。
一味は事情を説明し、誤解も解け、『空島』に関する情報を聞き出し、紆余曲折あって一味はクリケット、ショウジョウ、マシラの協力を取りつけることに成功する。
クリケット達も空島を目指す一味を気に入ったのか、家に招き宴を開くこととなった。
「───で、つまりはそういうことだ」
「なるほどな」
船番をしていたクレスとロビンは宴の中で、ウソップからだいたいの話の流れを聞いた。
クリケットは先祖であるノーランドが見たという黄金都市を探しているらしい。
ショウジョウとマシラは絵本のファンで、勝手にクリケットの部下となってクリケットに協力しているそうだ。
“勇敢なる海の戦士”を目指すウソップは、なにか心に響くところがあったのか、しきりに感動したように二人に語った。
「じゃあ、空島に行くには、その“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”に乗って、“積帝雲”を目指すのね」
「で、下手すれば死ぬと」
「お、おうよ!! た、だぶん、だ、ダイジョウブだ。おっさんたちを信じろ」
「……そこは怖いんだな。声震えてんぞ」
海底爆発によって巻き起こる“災害”の中心に船を進める。
命を捨てるに等しい行為だが、クレスは一味に入り込んだ以上、その事に口を出すつもりは無かった。
最悪の場合でも“月歩”を使ってロビンを助け出せばいいと思っているせいでもあったのだが。
「いや、今日は何て酒がうめェ日だ!!」
「さァ、食え、食え!! まだまだ続くぞサンマのフルコースは!!」
「あっひゃひゃひゃひゃ!! おもしれェなサル!!」
「そんなホメんなって!! ウッキ―!!」
「いける口だなおめェー」
「まだ、量のうちじゃねェよ」
一味はすっかりクリケット達と打ち解け、共に宴を楽しんでいる。
好きなだけ、食べ、飲み、笑う。
開かれた直後から宴は最高潮だった。
「それにしてもこの航海日誌は興味深いわね」
騒ぐ一味を視界に入れながら、ロビンはノーランド本人の航海日誌を膝にのせ呟いた。
「なんかわかったのか?」
「そうね、空島がある確率が高くなったかしら」
「ははっ、そうか」
ロビンが傷をつけないようにやさしくページをめくる。
クレスはロビンが開いたページを覗きこんだ。それは最期のページのようで、滲んだ文字でこう書かれていた。
「『髑髏の右目に黄金を見た』」
「……顔が近ェよ、おっさん、殴るぞ?」
いつの間にか真正面にいたクリケットが二人に顔を近づけその一文を読み上げる。
酔いが回っているのか、迷惑そうな二人を特に気にした様子も無く、立ち上がり皆の視線を自分に集めた。
そしてノーランドが残した謎を語る。
「涙で滲んだその文がノーランドの書いた最期の文章……その日ノーランドは処刑された。
このジャヤに来てもその意味はまったくわからねェ。
髑髏の右目だァ!? コイツが示すのはかつてあった都市の名か、それとも己への暗示か……。続く空白のページは何も語らねェ。
だから、おれ達ァ潜るのさ!! 夢を見るのさ海底に!!」
「そうだぜ、ウキッキー!!」
「ウォーホ―!!」
「おれ達ァ飛ぶぞ───ッ!! 空へ飛ぶぞ!!」
「おお!!」
心地よい酔いに任せ、クリケットは語る。
ノーランドの残した謎を、無念を、寂寞を。
そして、その幻想に立ち向かう自身の情熱を。
同情されるつもりはない。ただ、共に夢を追う海賊達には語らずにはいられなかった。
「ジャヤ到着の日!! 1122年5月21日のノーランドの日記!!」
酒をあおり、クリケットはおそらく暗唱するまで何度も読み返したであろうノーランドの日記を読み上げる。
冒険家ノーランドの話に周りから歓声が上がった。
「───その島に着き、我々が耳にしたのは、森の中から聞こえる奇妙な鳥の鳴き声と、大きな、それは大きな、鐘の音だ。
巨大な黄金からなる鐘の音はどこまでもどこまでも鳴り響き、あたかも過去の都市の繁栄を誇示する様でもあった。
広い海の長い時間に咲く文明の儚きによせて、たかだか数十年生きて全てを知る風な我らにはそれはあまりにも重く言葉をつまらせる!! 我々はしばしその鐘の音に立ちつくした───!!」
「おっさん、何だよ、やっぱノーランド好きなんじゃねェかっ!!」
「あ───!! イカスぜノーランド!!」
「素敵、黄金の鐘だって」
まるで散文詩のような一節に、皆酔いしれる。
気分が乗って来たのかクリケットは隠し金庫から大きな袋を取り出した。
「これを見ろ」
クリケットは包みの一つを広げた。
「うわっ!! “黄金の鐘”!!」
「へェ……こりゃ、大したもんだな」
クレスはクリケットが取り出した黄金に感心し、目を見張った。
許可をもらい、光に当てながら全体を見渡した。
光沢、重さ、純度。どれをとっても一級品の金塊だった。
「でも、これのどこが巨大なんだ?」
「ちげェよ長鼻。……こりゃ“インゴット”だ」
「おっ、よく知ってんじゃねェか。
別にコイツが鐘って訳じゃねェ、鐘の形をしたインゴットだ。これを三つ海底で見つけた」
「やるなァ、おっさん。このレベルはそうそう出るもんじゃねェぞ」
「ハハハ……!! 大したこたねェよこの程度」
口ではそう言っても、クリケットは誇らしげだった。
クレスはロビンと共に世界中の遺跡を見て回ったが、このレベルの財宝に巡り合うことはそうそう無かった。
無理やりに、それこそ遺跡荒らしのように探せば話は別だったのかもしれないが、実行すればロビンに殺されていただろう。
「何だよ、あるじゃん、黄金都市」
「そーいう証拠にゃならねェだろ。この量なら何でもねェー遺跡から出てくる事もある」
「───だけど、この辺りに文明があった証拠にはなるわね。
“インゴット”は金をグラム分けするために加工されたもの。それで取引がされていたことになるわ」
ロビンが専門家としての意見を上げた。
黄金のインゴットが作られたという事は相当栄えた文明だったのだろう。
「そう、それに前文にあった奇妙な鳥の鳴き声。おい、マシラ」
「オウ」
マシラが新たな包みを広げる。
「うわっ!! まだあんのか?」
「こっちのはでけェな」
「綺麗……」
包みから現れたのは、鐘を持った大きなくちばしと特徴的な鶏冠を持つユーモラスな鳥の黄金像だった。
「変な鳥だな……ペンギンか?」
「いや待て……どっかで見た事あるぞ、この鳥」
特徴的な鳥の姿にクレスは眉根を寄せた。
「黄金の鐘に鳥……それが昔のジャヤの象徴だったのかねェ」
「わからんがこれは……何かの造形物の一部だと思うんだ」
共にサンジとクリケットは煙草をふかす。
過去に潜む謎と言うのは多くの人々を魅了してきた。
「コイツは“サウスバード”っていってちゃんと実在する鳥だ」
「鳴き声が変な鳥か?」
「ああ、日誌にある通りさ」
サウスバード。
クリケットの言葉にクレスは引っ掛かっていた鳥の事を思い出した。
「そうか、思い出した“サウスバード”か。
そう言えばコイツは便利な鳥だって聞いたことがある」
「便利ってなんだ、クレス?」
チョッパーの問いにクレスは答える。
「この鳥は面白い習性があってな、昔から船乗りの間じゃあ……」
クレスが言葉を為そうとした時、
「「───しまったァ!!!」」
同じような話をしていたマシラとショウジョウが、愕然としたように声を張り上げた。
「こりゃマズイ!! おい、お前ら森へ行け!! 南の森だ!!」
クリケットもまた焦ったように一味に告げる。
「オイ……まさか、この島からどこかの方角を指した永久指針があるワケじゃないのか?」
「ああ。しまったぜ、おれとした事が……」
「は? クレス、おっさん、何言ってんだ?」
意味がわからない一味は突如焦り出したクリケット達に困惑する。
「この像と同じ鳥を連れて来るんだ!! 今すぐに!!」
「この鳥がなんなんだ?」
「いいか、よく聞け。
お前らが明日向かう“打ち上げる海流(ノックアップストリーム)”はこの島から真っ直ぐ南に位置している。そこへどうやって行く?」
「船で真っ直ぐ進めばいいだろ?」
「ココは“偉大なる航路”だぞ!? 一度海に出ちまえば方角なんてわかりゃしねェ!!」
航海士のナミはクリケットの言いたいことに気がついた。
「そうか……目指す対象が“島”じゃなくて“海”だから頼る指針がないんだわ。じゃ……どうすれば真っ直ぐ南に進めるの?」
「その為に、鳥の習性を利用する。ある種の動物は体内に正確な磁石を持ちそれによって己の位置を知ると言うが、サウスバードはその最たるものだ」
「じゃあゾロは動物以下だな」
「てめェは人の事言えんのかよ!!」
クレスが呆れたように口を開いた。
「サウスバードはどんなに広大な土地に放り出されても、その体に正確な方角を示し続ける。この習性から船乗りに方位磁石代わりに飼われて来たんだ」
「へ~そりゃすごいな」
暢気なルフィにクリケットが声を張り上げる。
「感心してる場合か!!
とにかくこの鳥がいなけりゃ何も始まらねェ!! 空島どころかそこに向かうチャンスにすら立ち会う事も出来んぞ!!」
「え───っ!!」
「何で今頃そんなこと言うんだよ!!」
「もう真夜中だぞ!! 今から森に入れだって!?」
「夜の森は危険ね。獰猛な動物は夜行性が多いもの」
「特に密林は月の光も届かないから、危険を察知しにくいし、崖とかからも落ちる可能性もあるな」
「ぎゃあああああああああ!!」
「ガタガタ言うな、時間がねェんだ!! おれ達はこれからお前らの船の強化にあたる!! 考えてみりゃ宴会やってる場合じゃなかったぜ!!」
「だから今更言うなって!!」
◆ ◆ ◆
───南の森。
「うわっ……真っ暗」
夜の密林は暗い。
月の光は深く茂った緑に遮られ、影が折り重なり澱のように光無き闇が沈滞する。
深い闇は人々に恐怖を呼び覚ます。風に揺らめく木々は疑心を抱かせ、葉音はそこに潜む何かを連想させる。
「何でいきなりこんな事になんの!?」
「うえっ……おれ、腹いっぱいで苦しい」
「さっさと捕まえて飲みなおそうぜ」
「まったくこう言う事は先に言えよなぁ……」
口々に文句を垂れる一味。
さっきまで宴を楽しんでいたのを打ち切って、こうやって来たくもない夜の森にやって来ているのだからそれも当然だ。
「おい、鳥は?」
「どこにいるか分かってたら全員で探しにこねェだろ」
「おい、クレス、お前なんか知ってんだろ?」
「いや、オレも実際に見たわけじゃないから何とも言えないな」
「チッ……使えない野郎だぜ」
「うるさいぞクルマユ、吊るすぞコラ」
クレスはサンジにガンを飛ばした後に、一味にとりあえずの情報を伝えることにした。
「手がかりはクリケットが言って通りの鳴き声だけだ。姿は黄金像で見た通り」
「あんなフザケた形の鳥ホントにいんのか?」
「そこを疑っちまえば始まらねェだろ。心配すんな。姿はあの通りだ」
「それにしても……変な鳴き声って曖昧すぎんだろ」
「そういや、それも森に入ればわかるって言ってたぞ、あのおっさん」
鳴き声でわかる。
そう言われてもそれはあまりにも曖昧だ。
鳴き声など動物によって様々で、聞きようによればどの動物も特徴的に聞こえるだろう。
広く深いこの森で特定の動物を見つけるのは非常に困難に思われたが、
『ジョ~~~~~~』
「「「うわっ、変な鳴き声」」」
案外、簡単に標的が絞れそうだった。
「……アホそうな鳥だな」
「楽そうでよかったぜ」
間抜けな鳴き声に気の緩む一味。
そんな一味にクレスはかつて図鑑や人に聞いた知識で警告する。
「いや、あんまり気を抜くな。
サウスバードってのは常に南を指し続ける便利な鳥だ。だが、余り広まってないのは何でだと思う?」
「なんだよいきなり……な、なんかあんのか?」
「数が少ねェとかか?」
「それもあるが、それ以上に言われてるのは“捕まえる事が難しい”ってことだ。
幾人ものハンターが捕獲に向かったんだが、そのことごとくが返り討ちにされたと聞いた」
「は? どういう事だ?」
「詳しくは知らないが、サウスバードは“森の司令塔”って言われているらしい。捕まえるなら気をつけた方がいい」
クレスが伝えた不穏な単語にウソップ、チョッパー、ナミが一気に不安になる。
そんな中、ルフィがいつものように声を上げた。
「よし、……こうなったらとにかくやるしかねェ。
じゃ、行くか!! 変な鳥を……ブッ飛ばすぞ!!」
「いや、捕獲だろっ!!」
一味はサウスバードを探すために三手に分かれた。
メンバー構成はロビンを巡りクレスとサンジの間で荒れに荒れたが、ナミの一喝によって納まった。
現在クレスはゾロとロビンとの三人で密林の探索をおこなっている。
「まったく……無計画すぎるだろ」
「もう、ぼやかないの」
夜の密林とはいえ、遺跡を巡り様々なところを旅してきたクレスとロビンの足取りは軽い。
「それにしても……」
クレスがため息をついて後ろに振り返る。
「そっちじゃねェよ、ロロノア!! 何回目だ!!」
「おっ、なんだそっちか」
「何が起こったらこの距離で見失えるんだよ。魔法か」
対照的に独特の方向センスを持つゾロは幾度も勝手に森を進もうとする。
クレスも始めは酒にでも酔ってるためかと思ったが、どうやら素面でこの状態らしい。
「……首輪でもつければ治るかしら」
「待てロビン、その思考はいろいろとヤバいから」
少しダークなロビンの思考。
クレスは時々幼なじみの事がわからなくなる瞬間がある。ちなみに今のはゾロには聞こえていない。
「ん?」
そんな時、遠くからガサガサと何かが移動する音が聞こえてきた。
クレスは澄ませ、その音がこちらに向かってこようとしているのを感じ取った。
「右か」
「何だコイツ?」
「さァ……縄張りでも荒らされて怒ったのかもな」
「へェ……」
ゾロもまたその気配を感じ取り刀に手をかけた。
そして、茂みの中から音の主は姿を見せた。
「ムカデ?」
「やけにでかいな、まぁ、どうでもいい」
そう言うとゾロはこちらの様子をうかがっていた巨大ムカデに向かい走り込み、抜刀。
強烈な峰打ちによって、一撃で昏倒させた。
クレスはゾロに討ち取られ倒れ伏したムカデを思案顔で見つめた。
「どうもおかしいなこの森は。さっきからやたらと虫が出てくる」
「そうね……さっき、悲鳴も聞こえたし」
「放っとけ。鳥を捕まえればいいんだろ? 先に進むぞ」
不穏な空気を感じ取ったクレスとロビンを置いて、ゾロは先に進もうとする。
「待て、ロロノア」
一人森の中を進んでいくゾロはクレスの声にうっとおしげに振り返る。
「おれに意見するな。
だいたい……いいか。まだ、尻尾は出さねェ様だが、おれはお前たちを信用してんェんだ。それを忘れんな」
そして、先に一人で進んでいく。
クレスもロビンも一味に対し何かをしようという気は無かったが、少なくともゾロの中ではまだ不信感はぬぐえていないようだ。
もともとは敵同士だった関係だ。それも仕方ないのであろう。信用はこれから勝ち取っていくしかない。
「……だけど」
「何だよ」
二人を置いて先に進もうとするゾロにロビンが声をかけた。
ゾロは今度は振り返らない。
「そっちは今来た道」
ゾロの全身が硬直した。
クレスはため息を吐き、半ばゾロを無視しながら辺りを探る。
そしてサウスバードの独特な鳴き声を聞き取り、ゾロとは真反対の方向へと進んだ。
「こっちだな」
「剣士さん、そこのぬかるみには気をつけてね」
「はまんなよ、たぶん底なしだ」
固まっていたゾロはしばし取り残されるが、暫くするとクレスとロビンの後を追った。
「オイ……待てって……うわっ!!」
そして見事に指摘されたぬかるみにはまった。
ぬかるみにはまったゾロの身体はズボボボ……とだんだん沈んでいく。
クレスはぬかるみから抜け出そうとするゾロの手前までやって来て、めんどくさそうに頭をかいた。
「一応聞いてやろう。……助けてほしいか?」
「うるせェ!!」
数分の格闘の後、ゾロは何とか意地で脱出した。
その後、三人は鳴き声を頼りに森の中を進んで行った。
いきなりこの鳥を探して来いと言われても、とりあえずは森を散策しなければ始まらない。過去の生活から狩りに精通したクレスもそれは同じだ。
今回は鳴き声である程度の居場所がわかるので、本格的に動くのはある程度の居場所を掴んでからのつもりだった。
暫く森の中を歩いていたその時、クレスは違和感に気がついた。
「……待て」
「どうした?」
やけに自身の足音が大きく響いていた。
口に出した言葉も、まるで洞窟内のように吸い込まれていく。
「───音が消えた」
その瞬間、どこかでサウスバードの特徴的な鳴き声が上がった。
静寂な夜の森に鳴り響いたそれは、まるで魔笛のようでもあった。
───この森を荒らす奴は、殺してやる。
森が震える。
クレス達は統制された軍靴のごとき足音を聞いた。
「なんだ?」
「近づいてくる」
「……多いな」
暗闇の向うには、黒く硬質な目が光っていた。
数も尋常ではない。
そして大きさもまた相当デカイ。立ち上がった体長は一メートル以上ある。
それらが隊列を為し森の暗闇からクレス達に立ち塞がるかのように姿を見せた。
「お、オケラ?」
それは大量のオケラ軍団だった。
二本脚で立ち上がりファイティングポーズを取ったオケラ達は警告するようにクレス達に向けて羽を震わせる。
ジー……ジー……と初夏に聞く事もあるその羽音は、クレスとゾロを無性にイラつかせた。
「「何なんだこの森はァ!!」」
他の二か所に分かれた一味と同じように叫びが上がった。
それを合図にしてかオケラ達が襲いかかって来る。
一斉に飛びかかって来る体長一メートル近くのオケラ達。虫嫌いの人間がいたら怖気を覚えそうな光景だった。
クレスは飛びかかって来たオケラを"鉄塊"で固めた拳で容赦なく殴り飛ばす。
ゾロもまた刀を走らせオケラ達を圧倒する。
ロビンは今回は戦う気は無いのか、男二人がオケラ軍団をなぎ倒すのを眺めているだけだった。
オケラ達は数が取り柄なのか個々の力はそう高くなかった。
「何なんだコイツ等……」
「ウザってェ……」
早くもクレスとゾロはオケラを相手するのに辟易してきていた。
オケラ軍団は二人の強さに怯え始めたのか、腰が引けている。だが、それでも立ち向かってくるのだ。しかも涙目で。
クレスとしてはそういう諦めの悪い姿勢は嫌いではないのだが、別にそれをオケラには求めていない。
「キリがねェ!! 何でかかって来るんだよオケラ軍団!! 邪魔だぞ!!」
ゾロが苛立ちの限界が来たのかオケラ達に向けて叫んだ。
オケラ達はそれでも涙目でファイティングポーズを取っている。
クレスもだんだんイライラしてきた。
『ジョ~~~~、ジョ~~~~~!!』
「……今鳥の声が」
ロビンが鳴き声が聞こえて来た方向に目を向ける。
「なるほど……“森の司令塔”か」
クレスはその意味を理解した。
こうやって虫たちが集団で襲ってくる事はまず無い。先程から断続的におこなわれて来た虫たちの攻撃はおそらくサウスバードによるものだろう。
サウスバードの声はどこか小馬鹿にしているようにクレスには聞こえた。
クレスは自制ができるタイプの人間だったが、今回はその気は起きなかった。
「……ナメやがって、焼き鳥にしてやる」
ギラついた目で森を睨めつけた。
◆ ◆ ◆
『ジョ~~ジョ~~~~』
『ジョ~~、ジョ~、ジョ~~~~』
『ジョ~~~、ジョ~~~』
サウスバート達が南を向きながら楽しげに鳴いている。
人間の言葉で表せば、「や~~い、ば~か、ば~~~か」「お前らなんかに捕まるかアホ~~」「マヌケ~~~」と言ったところだ。
昔から行われて来た、虫たちを使っての侵入者退治は今日も順調だった。
虫たちを統率し、侵入者を痛めつける。そして自分達は安全な位置からの見物。
蜂、殺人カマキリ、巨大テントウムシ、オケラ軍団、ゴキブリ、ブタ(?)。森中の虫たちが自分たちの鳴き声一つで敵を追う。
必死で逃げ回る侵入者たちを見ていると、たまらなくおもしろく、最近これが癖になっている。
今日の侵入者たちもまた一段と面白い。
目的はどうやら自分たちを捕まえに来たようだが、はっきり言って捕まる気がしない。
二度と来ないように徹底的に痛めつけて、追い返してやるつもりだ。
『ジョ~~ジョ~~ジョ~~~』
仲間たちに連絡。
次はどの虫を使って追い込むか。蜘蛛なんかがいいかもしれない。
長年住み慣れたこの森は自分たちのフィールドだ。どこにいようと手に取るようにわかる。
だが、その時ふとした違和感に気がついた。
『ジョ~~ジョ~~ジョ~~~』
最初の内は声が小さいだけだと思った。
もしくは、向うが侵入者を追いまわすのに夢中で気づいていないだけ。
『ジョ~~ジョ~~ジョ~~~』
だが、どれだけ鳴いても帰ってこない。
『ジョ~~ジョ~~ジョ~~~』
帰ってこない。
『ジョ~~~ジョ~~~ジョ~~~!!』
仲間たちの声が帰ってこない。
『ジョ~~~~~?』
いつの間にか辺りは静寂に包まれていた。
サウスバードに底知れない不安がよぎる。何故、返事が返ってこないのだ。
侵入者を撃退するのに夢中になっているのか? だが、それにしても先程まで何羽かとは連絡が取れていたのだ。
サウスバードはついつい南を向いていしまう顔を回して、辺りを探る。
だが、誰もいない。余りに静かすぎる。
そうだ、虫たちに聞こう。
従順な配下の虫たちは森中にいる。直ぐに仲間たちの事もわかるだろう。
そう思い、サウスバードが鳴き声を上げようとする。
『ジョ~~~』
サウスバード達は気付けなかった。
慢心していたと言っていい。
彼らは森の支配者で絶対者だった。
虫たちを統率し、狩りのように侵入者たちを追い払って来た。
虫の大軍の力は強力だ。今まで負けた事など一度も無い。その成果として、リゾート地としてジャヤが開発された時も、虫たちを使って森を守り抜いた。
故に、考えもしなかった。
狩るものと、狩られるもの。
その立場が、逆転する瞬間が来る事を。
『ジョ~~~~』
───音は無かった。
『ジョォォォォォォォォォッッッ!!』
袋のようなものを被せられ、視界は闇に覆われ、声は外に届かない。
必死に、羽をバタつかせるも、身体に強い衝撃が走った瞬間動けなくなった。
身体の自由が利かなくなり、そしてだんだん眠くなった。
◆ ◆ ◆
「ダメだ……姿すら一羽も確認できなかった」
「おれ達は見たんだけど、虫だらけでそれどころじゃなかったぞ」
「走ってばっかだ」
「私、もうこれ以上走れない」
「ところでクレスはどうした?」
「知るか。『絶対守れ、傷一つつけるな、ついてたら殺す』とか訳わかんねェ事言ってこの女を押しつけて、どっか行きやがった」
「クレスならサウスバードを探しに行ったわ。狩りだったら一人の方がやりやすいと思うし」
「ハァ……じゃあ、クレスを待つしかねェか。
まいったな、七人いてゼロだと? しっかりしろおめェら!!」
「てめェもだよ、ウソップ」
スタート地点に再集合し一味は確保数の確認をおこなうが、現状の数はゼロだった。
まだ帰って来ていないクレスに期待しようとも思うが、一味の惨状から考えるとそう期待も出来ない。
このままだと空島に行くチャンスそのものを失ってしまいかねない。
ため息と共に一味の肩が下がった。
『ジョ~~ジョ~~~』
そんな時、一味の目の前の樹に目的のサウスバードが止まった。
そして樹の上から見下し、心底バカにするような声で鳴いた。
「『お前らなんかに捕まるか、バ――カ』って……」
「何をォ!! わざわざそれを言いに来たのか!! 撃ち落としてやる!!」
ウソップがサウスバードの挑発に乗り激怒する。
森の中を逃げ回り、散々苦汁を飲まされた身からしてみれば当然だ。
だが、サウスバードの行動はあまりに軽率だった。
サウスバードからすればどんな事をされても逃げ出せると思っているのだろうが、そうではなかった。
ロビンが微笑む。ロビンの<ハナハナの実>の能力は、如何なるところにでも身体の一部を咲かせることが出来るのだ。
故に、目で見えてさえいれば、サウスバードを捕獲するのはそう難しくは無い。
ロビンはサウスバードを捕まえるために腕を咲かせようとして、
「あら……」
狩人は音も無く現れた。
闇に紛れ、油断していたサウスバードの背後から腕が伸び、重力に任せ降下し、一味を見下すサウスバードに麻生袋を被せかかった。
サウスバードからしてみれば何が起こったか分からなかっただろう。いきなり視界が闇に覆われ、無理やりに浮遊感を味わい、羽をバタつかせようにも何かが邪魔で動かない。
「!?」
一味も突然降り立った男にさすがに仰天する。
男は麻袋の入り口を縛り、暴れるサウスバードに手刀を叩きこむ、するとサウスバードは静かになった。
その男は軽く息を吐くと、ロビンに向けて麻袋を掲げた。
見れば背中に同じような麻袋を三つほど背負っている。
「すまん、遅くなった。待ったか?」
「お帰りなさい、クレス」
呆然とする一味の下にクレスは戦利品と共に帰還した。
「いや、悪い。一羽だけでいいとわかってたんだが、コイツ等の声がイラついてな、ついつい乱獲してしまった」
「もう、ダメじゃない、クレス」
一味は目的のサウスバードを捕まえ、クリケット達の家へと戻っていた。
クレスが捕まえたサウスバードは4羽。だが、必要なのは一羽だけだったので始めに捕まえた三羽は逃がした。
逃がしたと言っても、麻袋に詰め込まれ、気絶はしていたがクレスの高速移動に付き合わされたため、相当グロッキーな状況だったので“捨てた”に近い。
始めは食用にでもしてやろうかと思っていたが、クレスも袋の中のあまりの惨状を見て、考えを取りやめた。
「あれだけ苦しめられたけど、私、あの鳥に同情するわ」
ナミはサウスバード達の惨状に引きまくり、半死半生のサウスバード達の苦悶の声を聞いたチョッパーはクレスに怯えまくっている。
「よーし!! 後は、おっさんたちを待って空に出発だな!!」
「よっしゃァ!!」
待ち遠しいのかルフィ、ウソップが早くも目を輝かせた。
「めくるめく、美女二人と行く天上の旅。あぁ!! 待ち遠しいぜ!!」
「アホかてめェ」
「んだとマリモ!!」
「同感だ、頭冷やして来い」
「んだとパサ毛!!」
一味はそれぞれに空島に思いを馳せ、森を抜け、クリケットの家まで戻った。
「なっ!!」
そして、目に飛び込んできた惨状に目を見開いた。
クリケットの家は見るも無残に破壊されていた。壁は砕かれ、部屋中荒らされ、張りぼての板には大穴が空いている。
「ひし形のおっさん!!」
「マシラ!! ショウジョウ!!」
クリケット、マシラは血を流しながら地面に横たわり、ショウジョウは海まで吹き飛ばされたのか力無く浮かんでいた。
息はあるものの相当なダメージを負っている事が一目見てわかった。
一味は急いで三人を介抱する。
「見ろ!! ゴーイングメリー号が!! なんてこった!! 誰だこんな事しやがったのは!! 畜生!!」
破壊はメリー号にまで及んでいた。
船の前方部が無理やりに叩き崩され、メインマストも修理個所を支点としてへし折られている。
ウソップはその姿に怒りを通り越し蒼白となった。
「……すまん」
「あ!! おっさん気がついたか」
ボロボロの身体でクリケットがルフィに対して口にしたのは謝罪であった。
そして血を吐きながらうわごとのように言葉を並べる。
「ほんとに……すまん……おれ達がついていながら情けねェ……。だがよ、ちゃんと……まだ朝まで時間はあんだ……ちゃんと船を強化してよ……」
「待てっておっさん!! 何があったか話せ!!」
「いや……いいんだ、気にするな……もう、何でもねェ。それよりも……よくサウスバードを捕まえて来れたな……それでいい」
気にするなと、クリケットはその一点張りで一味に接する。
そして動かない身体を無理やりに動かして、その場に座り込んだ。
「ルフィ!! 金塊が……取られてる!!」
「!!」
もしやと思い、荒らされた部屋の中へと入ったナミが、そこにあるべきモノがない事に気づいた。
「金塊狙いか……」
クレスが険しい顔で呟いた。
奪い去った者はどこかで噂を聞き、始めからクリケット達から金塊を奪い取る事を目的にやってきたのだろう。
「……いいんだ、そんなのはよ……忘れろ、これは。それよりもお前ら……」
「“そんなのは”ってなんだよ!! おっさん、10年も体がイカれるまで海に潜り続けてやっと見つけたんだろ!?」
「黙れ。いいんだ……これァ、おれ達の問題だ。
聞け。猿山連合軍総出でかかりゃ、あんな船の修繕・強化なんざわけはねェ……。朝までには間に合わせる。お前らの出航に支障は出さねェ。
……いいか、お前らは必ず!! おれ達が空に送ってやる!!」
クリケットの覚悟は本物だった。
同じ空想を追う同士として、一味達を今持つ最大の力で、命をかけて、空島まで送ろうとしていた。
今まで彼が10年にも渡る年月において積み上げた成果さえ、捨ておいてだ。
「おい、ルフィ」
「?」
ゾロが壊された家に塗りつけられたマークを指差した。
円形に斜線の入った、どこか不気味な笑いを浮かべた髑髏マーク。
ルフィ達が昼間喧嘩を吹っ掛けられた<ハイエナのベラミー>が掲げていたマーク。金塊は昼間に出会った不愉快な海賊達に奪われたのだ。
「手伝おうか?」
「いいよ、一人で」
「ダメよ、ルフィ!! バカなこと考えちゃ!! 出航までもう時間はないんだから!!」
ナミが金塊を取り返しに行こうとするルフィを止める。
ルフィを行かせてしまえば空島へと向かうチャンスを逃してしまうだろう。
だが、ルフィは大人しくしているつもりはなかった。
「ロビン、海岸に沿ってたら、昼間の町に着くかな?」
「ええ、着くわよ」
「行くつもりか? 麦わら」
「ああ」
「そうか。……航海士の言う通り、時間は無い。
空島に行こうと思うなら……」
クレスは静かな怒りを燃やし始めたルフィに向けて告げる。
「瞬殺してこい」
「わかった」
だが、金塊を奪い返そうとするルフィをクリケットは止めようとした。
金塊を奪われたのは自分たちの責任だ。そんなつまらないことでルフィ達をチャンスを潰すわけにはいかなかった。
しかも、相手はクリケットたち三人がかりでさえ無様にやられたほどの相手なのだ。ルフィが行って、無事に帰ってこれるかも心配だった。
「待て小僧!! 余計なマネすんじゃねェぞ!! 相手が誰がわかって……」
「止めたきゃ、これ使えよ」
「………!!」
そんなクリケットにゾロが自らの刀を差し出した。
そこまでされれば、クリケットは押し黙るしかない。
「朝までには戻る」
麦わら帽子を深くかぶり直し、ルフィは拳を握りしめた。
あとがき
空島まで行かせるつもりでしたが、長くなったので切りの良いところで切らせていただきました。申し訳ございません。
クレス、サウスバードを狩るの回です。狩られたサウスバードには結構同情しますね。
次こそ空島へ行きます。頑張りたいです。