「六式」の訓練が開始されて一年がたった。
やっと軌道に乗ったと言ってもいいレベルになった。
リベル (敬意など払ってやるものか!!) はオレを強くしたいのか?
それとも遠回しに殺そうとしているのか?
辛い、苦しいなんてレベルの鍛錬じゃねえよ。
正直なところまだ生きている自分が不思議でならない。
自分でも忘れたりするけどオレ肉体的にはまだ六歳児なんですけど。
まぁ、いい…………良くないけど、いいことにする。
一年たって、なんとかまともな生活がおくれるようになった。
と言うか、訓練を始めた頃から半年くらいの出来事が全く思い出せない。
まるで脳が思い出すのを拒否しているかのようだ。
母さんやロビンに聞いてみたら、何故だか顔を逸らされた。
「…………少し気合いが入り過ぎてしまったかもしれん」
と、したり顔で言うリベルのおっさんは殺していいと思うんだ。
これでオレが六式を使えるようになったのかと言うと、そうではない。
オレはまだ技の一つもまともに使えない。
じゃあ、この一年(記憶があるのは半年ほど前から)は何だったんだ!? と言うと、
基礎を作るための基礎トレーニングらしい。
わかりやすく言うと、
六式を使うにあたっての資本となる
超人的な身体能力の苗床となるための土作りというわけだ。
まぁ………これには納得だ。
これから六式というとてつもなく育ちにくい花を咲かせるために
毎日地道に鍛錬を積み重ねると言うわけだ。
途中で投げ出すのも癪だしやるだけやってみますか。
第四話「悪魔の実」
最近ロビンに元気が無い。
普段と何も変わらないように見えて、どことなく陰があるように見える。
母さんに聞いてみたら、ロビンが自分で話すまで待つように言われた。
何やら複雑な問題らしい。
だが、「ハイそうですか」と退く訳にもいかない。
他ならぬロビンのことだ、ほっとくことも出来きない。
しかも最近町で妙な噂を聞いた。
なんでも「妖怪」がどうだとか………。
それもロビンが側を通る度にヒソヒソと………、
この話がロビンと関係がありるのは間違いない。
このヒソヒソにも鬱陶しくなってきたので
その辺にいた生意気な子供を捕まえて知っている情報を吐かせた。
途中でロビンの悪口を言ったので良心的な範囲で ギタギタにしてやった。
六歳といえど六式修得のための訓練をしているオレが
ただの子供に負けるはずもなく、速やかに事はなった。
子ども相手になにやってるのかと思わなくもなかったが……
この子供から聞いた話はかなりオレを混乱させた。
話によるとなんとロビンは悪魔の実を口にしたようなのだ。
オレはいてもたってもいられず。ロビンを探しに走り出した。
ロビンは賢い子供だった。
ただ、知識があるだけではない。
自分の中の膨大な知識を知恵に換えるだけの能力があった。
ロビンは、自分が悪魔の実を口にしたこと知っていた。
そして、その力が自分の周りの人間にどのような反応あたえるかか予測ができた。
そのため、ロビンは人知れず自分の能力の考察をおこなった。
いつもいっしょにいる幼なじみのクレスはリベルと共に「六式」の訓練をおこなっていたため、一人の時間を作るのに問題はなかった。
そのことに少し寂しさをおぼえたが、
能力を把握するためには十分な時間がつくれた。
ロビンが口にしたのは、「ハナハナの実」
いたるところからでも、己の一部を花のように咲かせることのできる能力だ。
ロビンは能力者になったことに喜んだ。
泳げなくはなってしまったが、
自分の能力は様々なこと応用が効く便利な能力だ。
だが、同時にひとつの不安をおぼえた。
もし、母が能力者となった自分を嫌いになったら……
ロビンはそんな考えを否定する。
母はきっとそんな人間じゃない。
考古学の勉強もがんばっているのだ、
母が帰ってきたときはきっと自分も連れってってくれる。
そのときは、クレスやおばさまも一緒だったらいいな………
母と自分、そしてクレスにシルファー、クローバーに図書館のみんな、
ロビンが思い描いた幸せの形とは、
大好きな人たちと一緒にいることだった。
島中を探しまわる。
家にも
図書館にも
ロビンの姿は無い。
思い当たるとこは全部探した。
残っているのは海岸線くらいだ。
ロビンは考えた結果、能力を隠すことにした。
便利な能力ではあったが、生活に絶対必要なわけではない。
そして、能力を使うことで今の生活が変わってしまうかもしれないことを恐れた。
幸いにも、ロビンの能力は自分が使おうと思わないかぎりは、
泳げなくなるだけで、他に変化はない。
隠すことは簡単だった。
だが、ある日その事件はおこった。
きっかけは、簡単な事故。
本来ならば数人が怪我をしたであろう事故。
ロビンは偶然その場に居合わせ、
それを収める能力があった………
日も暮れかけた時、オレは海岸で聞いたことのある泣き声を耳にした。
やわらかい頬を涙で濡らしながらとても寂しそうに泣いていた。
オレはゆっくりと近づいて後ろから声をかけた。
「どうして泣いてんだ?」
ロビンはこんなとこにオレが来るとは思ってなかったのか、
目を丸くした後、走って逃げ出そうとした。
「おい待てよ!」
オレはロビンを追いかけようとした。
「ついてこないで!!」
ロビンが叫ぶ。
その時驚くことがおこった。
腕。
腕が咲いたように地面から現れたのだ。
「………ついてこないで」
絞り出すような声だった。
オレはそれを驚きと共に見つめる。
「…………悪魔の実の能力。やっぱりほんとだったのか」
ロビンはオレと目を合わせないようにうつむいた。
その姿を見てオレはため息と共に地面に咲いた腕を飛び越える。
ロビンが驚いた。
まぁ、オレの身体能力は相当高くなったので、驚くのも仕方がないと思う。
オレはロビンの近くに降り立った。
「もう、日も暮れる、家に帰ろう、ロビン」
ロビンはうつむいたままふるふると頭を振った。
「まだ……帰りたくない」
「母さんが心配するぞ」
「………でも、……まだ…帰りたくない」
「そっか………じゃあ、オレも帰らない」
「えっ!?」
「ロビンが帰るまで帰らない」
オレは冷たくなったロビンの手を包み込む。
「……そんな…そんなの、ずるいよ………クレス」
ずるい……か。
まぁ、そうだわな。
これはロビンの優しさを逆手に取っているのだ。
だが、こうでもしないとロビンは動いてくれそうになかった。
「なぁ………教えてくれないか。どうしてお前は泣いてたんだ?」
「………………………」
やっぱり沈黙か。
まぁ、簡単に話せるようなことだったら、
わざわざこんなとこまで来て泣かないか。
「悪魔の実の事か?」
自分で言っといて違うと思った。
全くの的外れって訳ではなさそうだが事の本質からはずれているきがした。
「…………………ちがう」
案の定、不正解だ。
オレの考えが正しければおそらく悪魔の実の事は引き金だ。
となると………
「──────オルビアさんのことか?」
ロビンの肩が震える。
正解だったようだ。
しばらくの沈黙の後ロビンはすがりつくように語り出した。
「わたし…………お母さんに捨てられたのかな?」
誰がそんなことをっ!!
と叫びそうになったが、踏みとどまる。
世間の目からみれば、そうとられるのだ。
「…そんなことない」
こんな言葉しか浮かばない自分がむかつく。
「今日も言われたの……妖怪って、……気持ち悪い、来るな、
─────────だから、捨てられたんだって」
その言葉はロビンをどれだけ傷つけつたのだろうか?
幼くして母と別れて暮らす事になってしまったんだ。
母に置いていかれたこと、そのことで負い目を感じたんだろう。
────捨てられた。
これはロビンが一番不安に思っていることだろう。
「わたし、…………お母さんのこと全然覚えてないの。
ただ…………お仕事で海に行ってしまった事だけ知ってる。
やっぱり、こんな私じゃお母さんは嫌なのかな?
わたしお勉強がんばったの。
お母さんが帰ってきたら一緒に行けるように。
……………でもやっぱり!!」
「ダメなんかじゃ無い」
オレは涙を流すロビンを抱きしめる。
ロビンは優しくて賢い。
優しいから、オレや母さんに寂しさを悟られないように努力している。
賢いから、心配をかけないように悪魔の実のことをや寂しいことを隠そうとした。
「オレはオルビアさんが悩んでいたことを知っている。
オルビアさんにとってロビンを残して海に出る事は
身が引き裂かれるほどの事だったはずた。
………だからオルビアさんは必ずお前を迎えに帰ってくる。絶対にだ。
だから、お前のお母さんを信じろ」
ロビンは声を上げて泣く。
オレは泣き止むまでずっとロビンのことを抱きしめた。
そのとき見た、夕日が沈んでいく水平線が無性に遠くて
腹立たしかった。
あとがき
悲しい話になりました。
ワンピースのキャラの過去話はどうも重くて……
ロビンは一味の中でも、とくにつらい過去の持ち主ですよね。
誤字の報告感謝します。
……西をサウスと書いた過去の自分が恥ずかしい。
感想やご意見を下さる皆さまに深く感謝します。