希望というのは大きければ大きいほど絶望に変わった瞬間にその分深く砕けるものだ。
「嘘よ……」
幼いころから慕ってきたぺルの敗北はビビの心に大きな傷をつけた。
茫然と倒れ伏すぺルを見つめるも、ぺルが立ち上がることはない。
勝者はぺルではなくクレス。これはビビにとって最悪の結果であった。
「……行きましょうか。ボスと海賊達があなたを待っているわ」
ロビンは感情を伺わせないまま、能力を使い、力無く座り込んだビビを立ち上がらせる。ビビはただ従うしかなかった。
「……現実はいつだって厳しいものよ。前を見なければ何も得られない」
ロビンの言葉は誰に向けたものなのか、ビビには分からなかった。
第十三話 「07:00」
後始末をクレスに任せ、ロビンは言葉通りビビをレインディナーズで待つクロコダイルの元へと連行する。
人通りの無い裏道から『秘密地下』へと続く裏口へと入り、扉の前に立った。
裏口は表の煌びやかな玄関口とは異なりどこか殺伐とした雰囲気で、扉は他者を拒絶しているかのようにそびえ立っていた。
ビビはその意味を中に入った瞬間に理解した。
扉の中には武器や火薬など、これまでアラバスタの破壊工作に使われてきたであろう物資が整理され山積みにされていた。
この地はクロコダイルの管轄地と化している。政府も王国も一切の立ち入りを禁じられており、バロックワークス社が物資を隠すには最適なのだろう。
「ココだけじゃないわよ。他にもこの町の中を探せばいろんなものが出てくるわ」
ビビの考えを読み取ったのか、ロビンが補足を入れた。
「まぁ、その中でも特に重要な物はココにあるわね」
するとロビンは片隅に置かれた巨大な金庫を指差した。
「アレなんか特に、あなた達が血眼になって捜したものでしょうし」
「まさか……」
ビビは直ぐにその答えにたどり着く。
その逸品こそがアラバスタを崩壊へと導いた悪魔の粉。
「ダンスパウダー……!!」
「そう、正解」
ビビはロビンをキッと睨めつけた。
ダンスパウダーはアラバスタ国王が代々に渡り使用を禁止していた逸品だ。
バロックワークスがこの国に持ち込まなければ、雨を奪い合う戦いは起きなかった。
「怖い顔ね」
ロビンは気にした様子もなく歩みを進めた。
倉庫のような広い空間を抜け、その先にあった長い廊下を歩いた。
やけに長く感じさせる通路はビビを不安にさせる。
ロビンとクレスの言葉から察すれば、この先にはクロコダイルがいてルフィ達が捕まっているのだという。仲間達がどうなったのかも心配だった。
ビビが自身の中に芽生え始めた恐怖を必死に抑えつけていた時、目の前に豪奢で重厚な扉が現れた。
「そろそろコレを返しておこうかしら」
扉の前で立ち止まり、ロビンはコートの中からビビから取り上げた武器を取りだした。
そしてビビの拘束を解き、困惑するビビにそれを返した。
「この先にボスはいるわ。どう使おうとあなたの自由よ」
「………………!!」
ビビは己の武器を握りしめた。
ロビンがビビに対して武器を返した意味をビビには理解できた。
アラバスタに住むビビはクロコダイルの<能力>を知っている。その力は大きくビビの力では抗うことができない。だが、ビビの目には暗い光が灯っていた。
「……早くクロコダイルに会わせて」
「そう、頑張って」
ロビンはクロコダイルの待つ『秘密地下』への扉を開けた。
◆ ◆ ◆
「さて、と」
クレスは意識を失ったぺルから鉄線を外し、担ぎ上げ適当な日陰に放置した。
意識こそないものの、ぺルの傷は奇跡的にそう深くはない。それはクレスの驚異的な手加減のおかげでもあった。
「勘弁しろよ……ロビンにやられた方がひどいことになるんだからな」
クレスはぺルを一瞥すると、少しだけ考え、腰元のサイドバックから紙切れを取りだした。
サラサラと適当に殴り書きをして、意識の無いぺルの手の中に握らせる。
「もうこんな時間か……そろそろだな」
クレスはめんどくさそうにぺルから離れ、倒された社員達の後始末に向かった。
クレスが残したメモにはこう書かれていた。
『16:30、時計台の片隅、選択はお前次第だ』
◆ ◆ ◆
ギィ……
重い扉が擦れるような音と共に開く。
そしてビビは一歩を踏み出した。
そこは水槽の中のように寒々しい空間だった。
取り付けられた窓から覗く光景は湖の中を我がもの顔で泳ぐバナナワニ。
扉の向こうは広々としたホールとなっていて、エントランスからそこに続く長い社交場のような大きな階段が続いている。
そしてその階段の先、ビビは豪奢なディナ―テーブルに座った男を視界に納め、煮えたぎるような感情の矛先を定め叫んだ。
「クロコダイル!!」
名を呼ばれたクロコダイルのみならず、檻の中に囚われたルフィ達も驚いてビビの声に視線を向けた。
扉の前に立つビビをクロコダイルは両手を広げ歓迎するかのように招き入れる。
「やァ……ようこそ“アラバスタの王女”ビビ。いや、ミス・ウェンズデー。よくぞ我が社の刺客をかいくぐってココまで来たな」
「どこまでだって行くわよ。あなたに死んでほしいから……!! Mr.0!!」
息まくビビにクロコダイルは酷薄な笑みをもって答えた。
「死ぬのはこのくだらねェ国さ、ミス・ウェンズデー」
「……ッ!!」
小馬鹿にするようなクロコダイルの答えに、ビビの押さえつけていた感情が爆発する。
「お前さえこの国に来なければ……!! アラバスタはずっと平和でいられたんだ!!」
ビビは右手に円刃を鎖状につないだ武器を持ち、一気に階段を駆け降りた。
檻に捕らえられた仲間達すら視界には無く、ただその瞳に憎きクロコダイルのみを納めた。
飛びかかり腕を振るい、円刃の鎖をディナ―テーブルから動こうともしないクロコダイルに叩きつける。
「孔雀一連スラッシャ―!!」
鞭のように叩きつけられた円刃はクロコダイルの頭部に直撃し、そのまま後ろの椅子まで斬り落とす。
クロコダイルの頭部が爆ぜるように砂となって四散した。それと同時にビビがディナ―テーブルの上に乗りつけその上に置かれた料理をぶちまける。
「……気は済んだかねミス・ウェンズデー」
頭部の無いクロコダイルの身体がサラサラと砂に変わっていく。
崩れ落ちた砂はそれぞれに意志を持ちビビの前を通り過ぎた。そして再び集結し、ビビの後ろにその姿を形作った。
「この国に住む者なら知っている筈だぞ。おれの<スナスナの実>の能力ぐらいな」
押し潰すかのような重圧と共に、ビビの後ろにクロコダイルが顕現した。
<スナスナの実>の砂人間。悪魔の実のなかでもその存在を異にする<自然系>の能力で、クロコダイルは砂に関する全ての現象を司る。
息を飲むビビの口元をクロコダイルは渇きの魔手である右手で塞いだ。
「ミイラになるか?」
ビビはクロコダイルの放つ殺気にあてられ、這い上がるような寒気を感じた。
それが、クロコダイルとビビの間にある決して埋められない実力の差であった。
「コラお前!! ビビから離れろ、ブッ飛ばすぞ!!」
ルフィの怒声が響く。だが、檻はルフィ達がビビの元へと駆け寄る事を許しはしない。
「座りたまえ」
殺気から解放され、無理やりにビビはディナ―テーブルの椅子に座らされる。
「……そう睨むな。
丁度いい頃合いだな。そろそろパーティの始まる時間だ。違うか? ミス・オールサンデー」
事態を見守っていたロビンはクロコダイルの問いに答えた。
「ええ、七時を回ったわ」
後に歴史に刻まれる長い一日が始まる。
──────07:00 『ユートピア作戦』開始。
◆ ◆ ◆
──────アルバーナ宮殿
コブラが下した遠征の準備のため慌ただしくも殺伐としていた雰囲気の宮殿内は、今、浮足立っていた。
『国王様を探せ──────っ!!』
国王コブラの突然の失踪。
始まりは臣下の一人が報告のためコブラの元へと向かった時であった。その時、いつもなら王の間にいる筈のコブラの姿がなかった。
不審に思い、思いつくところを捜索しても姿がない。警備の者も誰も姿を見ていないのだという。臣下は泡を食って人数を割き、くまなく探したが姿は何処にもなかった。
「チャカ様、やはり何処にもいません!!
王の間から穀物庫にバルコニー、宮殿内も庭もくまなく探しましたが何処にも御姿がありませんでした!!」
「……そんなバカな話があるか!! 夜間に外出されたんじゃないのか?」
「しかし、チャカ様。昨夜から王の間の周りの警備は万全でしたし、国王が誰の目にも触れる事無く外出することはあり得ません」
「ならば何故、王の間から国王が消えるのだ!!」
「それは……!!」
チャカは部下を一喝する。
「出陣の時だぞ!! 探すんだ、宮殿の外も町も全て!!」
「はっ!!」
再び部下達は国王の捜索に戻った。
「……探し人はぺルの得手なのだが、今にかぎって奴はレインベースへ敵地視察」
チャカも混乱していた。コブラが遠征を命令したのはつい昨日のことである。
これからクロコダイルの待つレインベースへと出陣しようというこのタイミングでコブラが姿を消すことなどありえないことだった。
ぺルも宮殿にいない。何もかもタイミングが悪すぎた。
(コブラ様の身に何か起きたというなら……私が勝手に兵を動かす訳にもいくまい)
国王の命により、国王軍は全軍をレンベースへと向ける事となっている。
事実上の最高司令官という立場だが、国の趨勢が決まる今、チャカの一存で兵をどうこうできる筈もなかった。
最悪の場合、遠征そのものを中止にする必要もあった。
(今この時になにがあったというのだ……!!)
頭を悩ませるチャカ。
だが、彼の思考は慌てた様子で飛び込んできた部下によって中断させられる。
「チャカ様!! 国王様が!!」
「おられたか!?」
「それが、そういう情報はあるのですが……」
チャカに一筋の希望が差すが、困惑気味の部下の報告は彼を驚愕に陥れた。
「な……!! 何だと!?」
◆ ◆ ◆
──────同時刻、港町ナノハナ
「だから、正直に謝罪しているのだ。この国の雨を奪ったのは私だ」
ざわめくナノハナの住民達。
そこには「ありえない」と言いたげな国民の前で、国王軍の兵士達を引き連れ、超然した態度で謝罪の言葉だけを口にする男の姿があった。
「もう一度言おう。この国から雨を奪ったのは私だ」
男は高慢に国民達を突き落とすように言い放った。
息を飲む国民達は間違える筈の無いその姿を視認する。
彼らの前に立っているのは現在アルバーナで失踪している、国王コブラであった。
「コブラ様……なにをそんな冗談を」
「国王様……」
「嘘でしょう? 国王様!!」
信じがたい言葉を口にするコブラに、彼を信じていた国民達から声が上がる。
だが、コブラはそれらを拒絶するよう続けた。
「よって、あの忌々しいダンスパウダーの事件を忘れるために、───────このナノハナの町を消し去る」
そこから覗いた非情な国王の表情に国民達から血の気が引いた。
「不正な町だ!! 破壊して焼き払え!!」
『はっ!!』
その言葉を合図に、後ろに控えていた屈強な国王軍の兵士達が武器を取って襲いかかった。
銃を乱射し、手に持った武器で目に着いたものを切り払う。兵士の中にはあろうことか町に火を放つものまでいた。
突然おこなわれる国王軍の濫行に国民達は逃げ惑う。
破壊されていく町の中心でコブラはその様子をただ冷徹に見つめていた。
「おい国王!!」
その国王に立ち向かう小さな姿があった。
つい数日前、反乱軍へと入ることを希望した少年カッパだ。
カッパはハンマーを手に果敢に国王へと詰め寄った。
「お、お前が雨を奪うから町はみんな枯れていくんだ!!」
コブラは自身に向かってくる余りにも小さな姿を視界に納め、虫でも払うかのように蹴り飛ばした。
小さなカッパの身体はもんどりうって地面に転がった。
コブラの見開かれた目が周囲を睥睨する。国民達は子供であろうと容赦なく手を下した国王に恐怖した。
「みんなの仇を……取ってやる!!」
蹴り飛ばされ鼻血を垂らすカッパはそれでも国王に向かおうとするが、近くの女性に押さえつけられる。今のコブラに歯向かえば、最悪殺される可能性すらあった。
その時、馬の嘶きが聞こえ、人ごみをかき分けて一人の青年が姿を現した。
「……何の真似だ、貴様」
目の前でおこなわれる国王の凶行に、茫然とした様子のコーザが馬から飛び降りる。
コーザは国王がナノハナに現れたという情報をもとに困惑しながらも、その真意を確かめるために反乱軍の拠点から馬を飛ばした。
そして、駆けつけた時に見たものは、あろうことか町を破壊する国王軍だった。
「謝りに来たのだ」
コーザの問いにコブラは自若として答えた。
「フザけるな!! ……なんて屈辱だ!!」
「ダンスパウダーでこの国を枯れさせているのは私だ」
「黙れと言っているんだ!!」
国民達は反乱軍のトップに問い詰められる国王コブラをを遠巻きに眺める。
かつて名君として馳せた頃に培った信頼は薄れ、国民達に浮かぶのは暴君に対する怯えに近い表情だった。
「くそったれ!!」
バカにしたように同じ言葉を繰り返すコブラに業を煮やしたコーザが飛びかかる。
コブラに触れる直前で国王軍の兵士達に取り押さえられるが、それでもコーザは吠えるように言葉を為した。
「枯れた町や倒れた奴らがどんな気持ちで死んでいったのかを知っているのか!?
お前に怒りや恨みを持っていた訳じゃない!! どいつもこいつもお前の事を信じて戦ってきたんだ!!」
ダンスパウダーがこの町で見つかり、国王に疑惑が寄せられても、初めは皆コブラを信じ何かの間違いだと一笑に付した。
だが、日照りは続き、国王が疑わしいとの証拠が続々と見つかった。
怒り立ち上がる者もいた。だがそれでも、町が枯れても、倒れたものが出ても、彼らは皆、国王の事を信じていたのだ。
戦いが起きても多くの者が反乱軍の説得をおこなってきた。『国王のせいじゃない』『あの人は立派な人だ』そう言って言い聞かせた。
「───嘘でもせめて『無実』だとお前が言わなきゃ、彼らの気持ちはどうなるんだ!!」
──────乾いた銃声が響いた。
コーザの視界がかすんだ。
やけに熱い胸に赤いシミが広がって行く。
コブラは何も言わない。
無言の内に国王は全ての言葉を否定した。
永遠にも見えた一瞬の後に、ドサリとコーザが崩れ落ち、人々の悲鳴が響いた。
「国が……本当はみんなが……その答えを知りたかったから……おれ達は戦ってきたんじゃないのか?」
荒い息でコーザが言葉を為す。
だが、膨れ上がった喧騒にのまれその声を聞き届ける者はいなかった。
「少なくとも……おれはそうさ」
◆ ◆ ◆
「コーザ!!」
「コーザさん!!」
「国王、よくも……!!」
遅れてやってきた反乱軍のメンバー達が、国王軍に撃たれたリーダーを視界に納めた。
反乱軍のメンバー達は怒りの矛先をコブラ率いる国王に向ける。
「まさかあの国王様が……」
「そんな……」
「おれ達は裏切られたのか?」
人々が国王に抱いていた疑いが核心に変わり始めた。
いくら過去に名君として名を馳せても、こうして目の前でおこなわれる凶行がそれら全てをぬり潰す。
国民達は皆一様に思った。国王は落ちるところまで落ちてしまったのだ。
疑惑や疑心が渦を巻き、最高潮に高まりつつあったその時、
「そろそろ時~~~~間、だ~~~わねいっ!!」
国王が二ヤリと笑みを浮かべ、部下達にのみ聞こえる声で言った。
次の瞬間。港が騒がしくなり、誰かが大声で叫んだ。
「巨大船が港に突っ込むぞ!!」
言葉通り、港を押し潰しながら巨大な商船が港に乗り上げた。
◆ ◆ ◆
「なんだあの船は!! 港に突っ込んだぞ!?」
「ヤバい、離れろ!! 巨大船が倒れる!!」
港に乗り上げた巨大な商船から逃れようと人々が我先にと駆けだしていた。
その姿はまるで河の氾濫のようで、勢いに何もかもがのまれるようだ。
だが、その人ごみの中にぽっかりと空いた穴のような空間があった。
「最終作戦にしては骨の無い仕事だったわ」
「今まで一度も骨のある仕事があったか?」
逃げ惑う人々の中を悠々と歩く二人組。
人々は知らず知らずのうちにその二人を避けていた。
一人は、鍛え抜かれた肉体に丸刈りで刃物のように鋭い容貌の男。
もう一人は、大胆な黒のレザーを着た棘のように鋭い雰囲気の女。
Mr.1とミス・ダブルフィンガー。バロックワークス随一の殺し屋ペアであった。
「町の外れでMr.2と落ち合わなきゃ。そして、仕上げはアルバーナ」
「フン……精々楽しみてェもんだ」
◆ ◆ ◆
「がーっはっはっはっは!! さぁ、火を放って退却よ!!」
「はっ!!」
港に巨大船が突っ込み、混乱する人々に紛れ、国王である筈の男が楽しげに声を上げた。
男の声に対して、国王軍である筈の男達がわざとらしい敬礼で答えた。
「ぷ───っ、やっぱこれが無いと落ち着かなーいわねい」
そう言って、国王である筈の男は頭にバレイの衣装のような妙な飾りをつける。
そして、部下達を引き連れ一目散に走り去った。
混乱の隙に逃げた彼らの姿を最後まで追いきれた者はいなかった。町を襲った国王軍は忽然として姿を消す。
「ど~~うだったかしら? あちしの──────」
そう言って、コブラらしき男は左ほほに触れた。
すると、その顔だけでなく姿までもが別人のバッチリメイクのオカマに変化する。
「──────王(キング)っプリは!!」
「最高っす!! Mr.2・ボン・クレー様!!」
もはや笑いが堪え切れないのか、部下の一人がいたずらを成功させた子供のように笑いだした。
大柄のオカマ、ボンクレーも上機嫌だった。
「が~~~~~~っはっはっはっは!! “あやふや”ねい!! あちしの好きな言葉は“あやふや”!!
男なんだか女なんだかわかんないあちしがオカマであるように!! タコパフェの生タコがフニャフニャである様に!!
この国の王はもう王なのかどうなのかこれで“あやふや”!! 作戦成功ねいっ!! バンチは何処!?」
「はっ!! 町の西にMr.2ボンクレー様!!」
「よ~~~しっ!! いったるわよアルバーナ!!」
ボンクレーと部下達は走り去った。
人々は混乱の最中で彼らに気付く様子はなかった。
だが、ただ一人国王に仕返しをしようと後を追った幼いカッパがその姿を目撃していた。
「……国王が、オカマになった」
カッパはその意味に辿り着き、とんでもないことに気がついた。
「あの国王は偽物だったんだ……!!」
脚が震える。だが、一刻も早くこの事をみんなに知らせなければならない。
そう思い、走り出そうとして、ドンと何かにぶつかった。
「いけないボウヤね。いったい何を覗き見てしまったのかしら?」
「……あのオカマ野郎、くだらねェミスしやがって」
「だ、誰?」
カッパは目の前の男女を怯えた表情で見上げた。
二人の放つ空気は幼いカッパにも恐怖というものを十分に刻みつける。
「黙っていてくれなんて言っても、無駄だろうな」
カッパの答えも聞かず、Mr.1は腕を振るい、路地裏に鮮血が飛び散った。
◆ ◆ ◆
「水だ!!」
「こっちもだ、水が足りない!!」
「待ってくれ!! それはうちの商品だぞ!!」
「バカ野郎!! 町が燃えてるんだぞ!!」
「火を消せ!!」
「クソがっ………!! 国王め!!」
「だめだ火の手に追い付かない!!」
「逃げろ!! もう駄目だ!!」
国王軍が放ったとされる火の手は勢いを増し、もはや止めることは出来なかった。
人々は苦渋の思いで町の一部を取り壊し、火の手が最低限で済むように抑え、燃え盛る町から脱出する。
収拾のつく見通しのない混乱の最中、反乱軍のメンバー達は血まみれで倒れ伏す少年を発見する。
「大丈夫かボウズ、しっかりしろ!!」
「酷い、まさかこれも国王軍が……!!」
血まみれの少年は自身の血に溺れながらも、うわごとのように呟きを繰り返す。
「……チガ……ゴホっ、チガ……」
「血!? ああ、心配すんな直ぐに止めてやる。あんまり喋るな、直ぐに医者に見せてやるから」
「チガ……だ、チガ…う……だ!!」
──────違うんだ!! あの国王は偽物なんだ!!
血まみれの少年の言葉の意味が届くことはなかった。
必死に言葉を為そうとしても、喉が血で詰まって上手く動かない。
「おい、病院も燃えちまってる!!」
「なら医者を探せ!!」
その時、人ごみの中から胸元を血で濡らした、コーザがが現れた。
胸元の傷のせいか仲間に肩を借りて、重傷の少年の元まで歩み寄った。
そして、そっと優しく苦しむ少年の額に手を置く。
「……この国を、終わらせよう」
噛みしめるように声を発して、コーザは仲間達に言い聞かせた。
「全支部に通達……これを最後の戦いとする」
若き反乱軍のリーダーは決起する。
「戦うのかコーザさん!? でも、まだ武器が……」
「いや待て、今港に突っ込んできた船は武器商船だ。武器なら腐るほどある」
「ホントか……!?」
反乱軍の最大の問題は、膨れ上がった兵たち全員に行き渡る程の武器の貯蔵が無いことだった。
その憂いが無くなった今、戦いの準備は完了したことになる。
「まるで……天の導きだな」
皮肉げにコーザは呟き、サングラスの奥の瞳を燃やした。
「皆を集結させろ!!」
◆ ◆ ◆
───アルバーナ宮殿
「バカを言え!! コブラ様がそんな事を為されるものか!! 何かの間違いだ!!」
チャカは部下からの冗談と呼ぶには質の悪すぎる報告を聞き、声を荒げた。
「ですが!! 国王様は現に王の間から消えていて、移動時間の計算も合います。もはや何の言い訳も立ちません!!」
「……!!」
「今やナノハナの一件はアラバスタ全土に広がり、各支部の反乱軍も王への怒声を上げています!!
それどころか、今まで王を信頼していた民達まで王を疑い武器を取り始めました!! 今までのような“鎮圧”では効かぬ数の暴動!! 国中が怒り、このアルバーナを目指しています!!」
部下の兵士は悲鳴のように続けた。
「もう止まりません!!」
それはつまり国王軍は国全てを敵に回したということであった。
疑いは燎原の炎のように広がって全土を覆う。そして、怒り狂った反乱軍となってアルバーナに押し寄せる。
「チャカ様御判断を!! 我々は貴方様に従います!!」
チャカは頭を抱えた。
疑えば昨日の王の言葉さえ霞むような事態。チャカには王が不在の今、何をを導に判断を下せばいいのか分からなかった。
だが、事態は彼に決断を強要する。こうしてチャカが手をこまねいている内にも、反乱軍はアルバーナに向かいつつあるのだ。
もしこのまま無防備な国王軍が反乱軍と激突すればどうなるか。そこに待っているのは圧倒的な数の差で行われる一方的な虐殺だ。
アラバスタを守るため、チャカが今為すべきことは何か。チャカは己の領分にのっとり最も優先させるべき事項を選択する。
「かくなれば、我らの本分を全うするまでだ。我らはアラバスタ王国護衛隊……!!」
チャカは柱に拳を振り落とし一切の迷いを捨てた。
「兵たちを集めろ!!」
◆ ◆ ◆
──────ナノハナには怒りを胸に集まった反乱軍の兵士達。
途切れることなく続く人海。コーザは急ごしらえで積み上げた壇上で疼く傷を抑え込みながら声を張り上げた。
「聞け反乱軍……!! 現アラバスタはもう死んだ!! これが最期の戦いだ!! 国王を許すな!!」
──────宮殿には使命を胸に集まった国王軍の兵士達。
埋め尽くす森林のような大軍。チャカは設置された演説台の上で剣を抜き全体に響くような大声で叫んだ。
「聞け国王軍……!! 国王不在にして滅びる国などあってはならぬ!! 目に見える真実を守れ!! この国を守れ!!」
「アルバーナに総攻撃をかける───!!」
「───反乱軍を迎え撃つ!!」
「「───全面衝突だ!!」」
──────その瞬間アラバスタ全土で、何処までも遠く、国土全てを震わせるような鬨が一斉に上がった。
◆ ◆ ◆
「クッハッハッハッ……ハッハッハッ!! ……ハッハッハッハッハ!!」
アラバスタ全土が怒声を上げると同時に、地下の冷たい空間でクロコダイルの高笑いが響いていた。
「何て作戦を……!!」
「……外道って言葉はコイツにぴったりだな」
「おいマジかよ!? 始まっちまったのか?」
「この野郎がァ!!」
麦わらの一味は始まってしまった反乱に表情を険しくさせた。
「どうだ気に入ったかねミス・ウェンズデー?
君も中ほどに参加していた作戦がこうして花開いたんだ。耳を澄ませばアラバスタの唸り声が聞こえてきそうだな」
クロコダイルはビビに一字一句を沁み渡らせるように語る。
バロックワークス社、最終作戦『ユートピア』。集大成ともいえるこの作戦によって反乱はもうどうしようもないほどに加速する。
「皆、心にこう思ってるのさ。『おれ達がアラバスタを守るんだ』とな」
クロコダイルはうすら笑いを浮かべ、
「アラバスタを守るんだ」
絶望するビビに顔を近づけ、
「ア ラ バ ス タ を 守 る ん だ」
あざ笑いながら何度も何度も言い聞かせる。
「やめて!! どうしてこんな非道いことを……!!」
耐えきれなくなったビビが悲鳴を上げる。
その声を聞き、クロコダイルは満足したように続ける。
「泣かせるじゃねぇか。国を思うその気持ちが、国を滅ぼすんだ」
何処までも外道なクロコダイルのもの言いに、檻の中にいるルフィが息まくが、檻はルフィが手を出すことを許さない。
「思えばここへ漕ぎつけるまで数々の苦労をした。
社員集めに始まり、"ダンスパウダー"製造に必要な"銀"を買うための資金集め、滅びかけた町を煽る破壊工作、社員を使った国王軍濫行の演技指導、じわじわと溜まりゆく国のフラストレーション、崩れゆく王への信頼……!!」
クロコダイルは演説のように語り、突如ビビへと問いかける。
「何故おれがここまでしてこの国を手に入れたいか分かるか?」
「あんたの腐った頭の中なんて分かるものか!!」
「ハッ……口の悪ィ王女だな」
クロコダイルはもう興味はないと話を打ち切った。そしてビビに背を向ける。
その時、ビビが後ろ手を拘束され無理やり座らされていた椅子を倒した。そしてそのまま這いずるように出口を目指す。
「オイオイ、何をする気だミス・ウェンズデー?」
呆れ果てたようにクロコダイルが言った。
「止めるのよ!! まだ間に合う……!!
これから東に真っ直ぐアルバーナへ向かって反乱軍よりも先にアルバーナへと回り込めばまだ反乱を止められる可能性はある!!」
「ほう……奇遇だな。
オレ達もこれから丁度アルバーナへと向かうところさ。秘密裏に誘拐した、てめェの親父に一つだけ質問をしにな」
「一体父に何を!!」
「んん? 国民と親父どっちが大切なんだ? ミス・ウェンズデー」
クロコダイルは胸元から見せつけるように鍵を取り出した。
「その鍵はまさか!?」
「クク……一緒に来たければ好きにすればいい」
クロコダイルはルフィ達が捕らえられている檻の前まで歩く。
「鍵ィ!! その鍵この檻のだな!! よこせコノ野郎!!」
そして鍵を欲しがるルフィ達の前で、わざとらしく床へと放り投げた。
「あッ!?」
鍵は床に落ちる事無く、床に空いた落とし穴から更に下へと落ちて行った。
落ちた先は全面をガラス張りにした水族館のような空間。獰猛なバナナワニが闊歩する処刑場だ。
「さァ……好きにすればいい、ミス・ウェンズデー」
その時、縛られていたビビの腕が解かれた。
それを為したのは能力者のロビンだ。腕を咲かせビビを縛っていた縄を解く。
スモーカーはその様子を思うところがあるのか厳しい目で眺めていた。
「ああっ!? バナナワニが!!」
「どうしたビビ!?」
「鍵を…………飲み込んじゃった」
「何ィ~~~ッ!! 追いかけて吐かせてくれ、ビビ!!」
「無理よ私には!! だってバナナワニは海王類でも食物にする程獰猛な動物なの、近づけば一瞬で食べられちゃうわ!!」
焦るビビを後目に、クロコダイルはわざとらしく肩をすくめた。
「ア~~コイツは悪かった。
奴らココに落ちたものは何でも餌だと思いやがる。おまけにこれじゃどいつが鍵を飲み込んだかわかりゃしねぇな」
「フザけんなこの野郎!!」
クロコダイルはビビ達を玩ぶかのように愚弄する。
全てが計算ずくの罠。どう足掻こうが彼らに逃げ場などない。
「さて……じゃあおれ達は一足先に失礼しようとするか」
クロコダイルのその言葉に応じ、ビビの正面の巨大な扉が開いた。
「──────なお、この部屋はこれから一時間をかけて自動的に消滅する。
おれがバロックワークス社社長として使ってきたこの秘密地下はもう不要の部屋。じきに水が入り込み、レインベースの湖の底に沈む」
クロコダイルはディーラ―のように両手を広げる。
「罪なき100万人の国民か、未来のねェたった四人の小物海賊団か……。
救えて一つ、いずれも可能性は少ないがな。“賭け金(BET)”はお前の気持ちさ、ミス・ウェンズデー」
ギャンブルは好きかね? そう問いかけてクロコダイルは見下すように哄笑した。
その声は何処までも響きクロコダイルという男の強大さを刻みつける。
そして、思い出したようにビビに言い放つ。
「この国は実にバカが多くて仕事がしやすかった。
若い反乱軍のリーダーや、ユバの穴掘りジジイ然りだ」
「何だ!! カラカラのおっさんのことかっ!?」
「なんだ、知ってるのか」
クロコダイルは面白いものを見つけたとばかりに笑みを浮かべた。
「もう死んじまってるオアシスを毎日黙々と掘り続けるジジイだ。
ハッハッハッハッハ……、笑っちまうだろ? 度重なる砂嵐にも負けずせっせとな」
「何だとお前!!」
ユバで世話になったトトをバカにされ、ルフィが激怒する。
「……聞くが麦わらのルフィ。"砂嵐"ってやつがそう何度も町を襲うと思ってるのか?」
突如問いかけたクロコダイルに、ルフィ達は困惑する。
航海士のナミは「まさか……」とその答えに辿り着いた。
クロコダイルは口元を釣り上げ、右手をワイングラスでも傾けるかのように差しだした。
ブオオオオオオ……!!
クロコダイルの手の中から──────砂嵐が生まれた。
「お前がやったのか……!!」
ルフィの怒りをクロコダイルは肯定するように嗤う。腹を抱え、どうしようもなく滑稽で可笑しいと。
「殺してやる……」
ビビは初めて殺したいほどに他人を憎悪した。
クロコダイルは何処までもアラバスタを愚弄し玩ぶ。ビビにとってそれは、とても許せるものでは無かった。
ビビの視界が急速に色を失っていくように薄れていく。
「げっ!! 水が漏れて来たぞ!! このままじゃ部屋が水で埋まっちまう!!」
ウソップが悲鳴を上げる。その言葉通り部屋の端々から水が溢れて来ていた。
しかし、それすらもビビの目には入らない。
──────国か仲間かですって……!!
ビビは涙を浮かべ、去りゆくクロコダイルとロビンを怨嗟の表情で睨めつけた。
──────どうせ何も返してくれる気なんて無いんでしょう?
ビビの手が己の武器を握りしめる。
──────私の命だって……アルバ―ナへ着く前に奪う気なんでしょう?
歯を食いしばり、腕を振り上げる。
──────分かってるんだ、お前を殺さなきゃ何も終わらないことぐらい……!!
震える腕に意志を込め、拭いがたい憎しみと共に振り回す。
──────何も知らないくせに……!!
──────この国の人たちの歴史も……生き方も、何も知らないくせに!!
だが、それでもビビの腕が振るわれることはなかった。
一歩、また一歩、どんどんとクロコダイルはビビの武器の射程から離れていく。
ここでたとえビビがクロコダイルに武器を振るったとしても、クロコダイルは何も変わることなく歩みを続けるだろう。
ビビにはクロコダイルを殺すだけの力が無かった。今更何をしても無駄だった。ビビの力は弱く一人では何も守ることは出来なかった。
「ううっ………」
力なくビビの武器が硬質な床に落ち、乾いた音を奏でる。
ビビは嗚咽のようなくぐもった苦悶の声を上げるしか出来なかった。圧倒的な力の差に、為す術もなく、絶望でビビの体から力が抜けた。
「─────ビビ!!」
俯くビビにルフィが声を張り上げた。
「何とかしろっ!! おれ達をココから出せ!!」
「……ルフィさん」
ルフィは打ち奮えるように叫ぶ。
その声はクロコダイルにも届いた。
「クハハハハ……何だついに命乞いを始めたか麦わらのルフィ? そりゃそうだ、誰でも死ぬのは怖いもんさ……」
ルフィはクロコダイルの嘲りの言葉には耳をかさず、ただ真っ直ぐにビビだけを見つめて、その怒りを代弁する。
「お前がココで死んだら……!! 誰があいつをブッ飛ばすんだ!!」
ビビの目に光が灯り始めた。
クロコダイルという魔物にのまれすっかりと失念していた。ビビは一人で戦ってる訳ではないのだ。
だが、ルフィの言葉に反応したのはビビだけではなかった。
強大な自我を持つ砂漠の魔物。クロコダイルもまた気に入らないとばかりにルフィの姿を怜悧な両眼に納めた。
「自惚れるなよ───小物が」
「───お前の方が、小物だろ!!」
七武海のクロコダイルを小物と言い放つルーキー。
虚勢では無い。輝き始めた新星は本気でクロコダイルに喧嘩を売っていた。
「…………!!」
ビビは唇をかみしめ立ち上がる。
まだ終わったわけじゃない。ビビは両足に力を込め立ち上がった。
「まぁ、好きにすればいい」
クロコダイルは扉の向こうに空いた巨大な穴から、獰猛な唸り声を響かせるバナナワニを呼び出した。
しかも一体だけでは無い。現れた後ろにはまた新たなバナナワニが順番待ちのように並びつつある。時が立てば新たなバナナワニが侵入してくるだろう。
「コイツ等を見捨てるなら今の内だ。……反乱を止めてェんだろ?」
重い足音を響かせバナナワニがゆっくりとビビの前に歩み寄る。
その姿が近づくにつれビビはその大きさに圧倒された。全長は軽く20メートル以上はあるだろう。牙だけでビビの半分くらいある。
絶望的な状況であったが、ビビは武器を握りしめ懸命に立ち向かおうとした。
「……やる気らしいな。全部殺せばどいつかの腹の中に鍵がある」
それは誰の目から見ても無謀な試みだっただろう。
ただの人間と海王類をも捕食する巨大な海獣。戦うという前程が間違いだ。
「よし!! 勝てビビ……!!」
「無茶言うな、デカすぎるぜ!!」
「ビビ!! 取り合えず逃げ回りなさい!!」
「……チッ、この檻さえなければあんな爬虫類共」
バナナワニがビビに標的を定めた。ビビは腕を交差させバナナワニを攻撃しようとして──────砲弾のように飛び込んできたバナナワニを、勢いよく横に飛んで避けた。
その巨体からは想像も出来ないようなスピードだ。しかもビビを食いちぎるつもりで閉じた顎は石造りの階段を噛み砕いた。
「きゃあ!!」
バナナワニの尻尾が巨大な鞭のようにビビに向けて振るわれる。
直前で回避し僅かに掠っただけなのにビビの体が大きく吹き飛ばされた。
膝をつくビビ、後ろには迫るバナナワニ。
「立てビビ!! 食われちまう!!」
「早く逃げろ、ビビ!!」
のしのしとその巨体を移動させ、ギチギチと歯を鳴らし、ビビを食いちぎろうと歩みを進める。
──────プルルルルルル
その時、室内に電伝虫の呼び出し音が響いた。
幸運なことにバナナワニは突如鳴り響いた電伝虫に気を取られた。
「……連絡が」
呼び出し音を鳴らしているのはロビンの持っていた子電伝虫だ。
ボタンを押し、ロビンは呼び出しに応じた。
「なに?」
『もしもし? あ~~もしも~~し? 聞こえてますか?』
「ええ、聞こえてるわ。ビリオンズね」
『おい、これ通じてんのか? おれ電伝虫使ったことねェんだよ……もしもし?』
「なんなの?」
「おい、さっさと用件を言え。何があった?」
『ああその声……、聞いたことがあるぜ……』
「なに?」
クロコダイルは訝しげに子電伝虫からの声に耳を傾けた。
『え~~~こちら、クソレストラン』
あとがき
今回は長くなったので二本立てとなっています。
チェックが終わり次第投稿いたします。