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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第十二話 「リベンジ」 《修正》
Name: くろくま◆31fad6cc ID:be9c7873 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/10 13:42
 バロックワークスの秘密地下。
 そこには、豪奢なディナ―テーブルや調度品のほかに、その他の調度品とは存在を異とする強固な檻があった。
 檻は彼の有名な海底監獄『インぺルダウン』と同じく<海楼石>によってつくられた特別製で、その強固さから絶対なる禁錮を強制させた。
 元々秘密地下は湖の底に造られた薄暗く冷たい空間だ。この空間にはむしろこのような陰のある逸品の方がふさわしく、場違いなのは豪奢な調度品の方なのかもしれない。


「こうみょうなわなだ」

「ああ、巧妙な罠だ。しょうがなかった」

「敵の思うツボじゃない。避けられた罠よ。バッカじゃないのアンタ達!!」


 勇みクロコダイルの待つレインディナーズへと乗り込んだものの、罠に落ちルフィ達は囚われの身となっていた。 
 完全に檻の中に閉じ込められ動くことができなかった。檻自体を壊そうにも海楼石の檻は硬く能力者の力を封じるため逃げ出すことは出来ない。 
 海楼石の存在を知らないルフィは檻に触れると力が抜けることに首をひねっている。
 罠に落ちたのは、<麦わらの一味>のルフィ、ゾロ、ウソップ、ナミ。そしてルフィを追ってきたスモーカーだ。
 これがルフィ達だけならば良かったものの、一緒に罠にかかったスモーカーは海賊達の天敵である海兵だ。
 海賊と海兵。共に追い追われる関係だ。それがこうして一緒の檻に入ってしまったからと言ってその関係が変わる筈はない。


「……………」


 その時、スモーカーが背負っていた巨大な十手に手をかける。静かに構え、ルフィに向けて勢いよく突き出した。


「ルフィ!!」


 ゾロが直前で気付きルフィの名を呼ぶも既に遅く、スモーカーの十手はルフィの体を吹き飛ばした。
 吹き飛び、檻に叩きつけられ、大の字に倒れたルフィにトンと十手の先端を置く。するとルフィの身体から力が抜けた。
 ゴム人間のルフィに本来ならば打撃技は無効なのだが、スモーカーの十手は特別製で先端に海楼石が仕込まれている。
 故にルフィの能力を無効化し、なおかつ能力者のルフィを無力化したのだ。
 

「て、ててて、てめェ!! や、やるならやるぞ煙野郎!! 
 おれは爆弾男を仕留めるアシストをした男だ、てめェを仕留めるアシストぐら……ごめんなさい」

「もうちょっと頑張りなさいよ!!」

「……この檻でさえなければ、とっくにココを出てるってのに、───お前ら全員を二度と海に出れない体にしてな……!!」


 苛立つスモーカーにゾロが刀に手をかけた。


「なんなら、試してみるか?」


 スモーカーがゾロを睨みつける。
 互いに殺気を発し、二人の中心で空気が乱れる。
 その空気にウソップとナミが泡を食ったように停戦を呼びかけるが二人が耳を貸すことはなかった。
 だが、ゾロとスモーカーの二人は新たな声に停止を余儀なくされる。



「止めたまえ。
 共に死にゆく者同士、仲良くやればいいじゃないか」



 豪奢な椅子に座り、見下すような笑みと共にルフィ達の目的の男が語りかける。
 スモーカーが目を見開き、唸るように男の名前を呼んだ。


「クロコダイル……!!」

「オ―オ―……噂通りの野犬ぶりだなスモーカー君。おれを最初から味方とは思ってくれてねェようだ。
 だが、それで正解だ。てめェには事故死でもしてもらうことにしよう。麦わらって小物相手によく戦ったと政府には報告しておくさ」


 クロコダイルは狡猾に言い放つ。


「おいお前!! 勝負し……ホぉ~」

「その檻に触んなって!!」


 クロコダイルの登場に、スモーカーに倒されていたルフィが立ち上がり猛犬のように檻を揺らした。
 だが、檻は海楼石で造られた特別製だ。ルフィが触れば全身の力が抜ける。


「麦わらのルフィか……よくここまで辿り着いたな。まさか会えるとは思ってなかった。ちゃんと消してやるからもう少し待て」


 檻の中の海賊達に向け、クロコダイルは続けた。


「まだ、主賓が到着してねェ。今おれのパートナーを迎えに行かせたところだ」













第十二話 「リベンジ」












「ずいぶんと暴れてくれたみたいだな」

「もう使い物にならなさそう。大切な社員なのに……」


 クレスとロビンは倒され転がっているビリオンズ達を視界に入れ、それを為したぺルに向かって語りかけた。


「よろしければ王女様を私達の屋敷に招待したいのだけど、どうかしら?」

「くだらん質問をするな。問題外だ」


 ぺルはロビンの問いかけを切って捨てる。そして屋上に向け厳しい視線を向けた。
 屋上にはクレスとロビンそして、王女であるビビがいる。


「ビビ様、少々お待ちください。今すぐそちらに向かいます」

「いや、その心配には及ばねェよ」


 ビビの前に立ち塞がるように立っていたクレスは、屋上の端に足をかけた。


「あんまり時間をかけちゃダメよ」

「分かってるって、手短に済ませる」


 そして、まるで散歩に出かけるかのように一歩を踏み出し、飛び降りた。
 屋上から地面までは相当な高さがあったのだが、トンと軽い音だけ響かせて着地する。
 軽い驚きを見せるぺルに、


「来いよ」


 クレスはそう言った。


「Mr.ジョーカーとかいったな……」


 ぺルは目の前に降り立ったクレスを観察する。
 パサついた黒髪に、夜のような瞳。見覚えのある体格に声色。
 ぺルはクレスが言った「久しぶり」という言葉の答えに辿り着いた。


「貴様がまさか……国王様を襲撃した賊か?」

「ああ、そうだ。久しぶりだな」


 クレスは肯定し、もう一度言った。


「そうか……」


 ぺルは静かに呟き、腰元に下げた剣に手をかけた。


「ならば、憂いはない。存分に力を振るい、貴様を倒そう!!」


 クレスは半身になり、拳を静かに持ち上げた。

 
「……ああ、付き合ってやるよ」


 怒気と共に殺気を放つぺルに、それを受け流すクレス。
 一瞬の緊迫の後。
 ぺルが地面を蹴って一瞬で肉薄しながら剣を振るい、クレスはそれを素手で受け止めた。


「へえ……」


 剣を"鉄塊"で硬化させた腕で受け止め、そこから感じる衝撃にクレスは関心したように呟いた。


「前より、かなり強くなってんじゃねェのか?」


 ぺルの返事は再び振るわれた剣。
 クレスと一度戦い己の無力を実感し鍛錬に打ち込んだ末に高め上げた力だ。
 振るわれた剣は全てにおいて過去のぺルを上回っていた。
 クレスは大気ごと切り裂くような一撃をしゃがみこみ避け、片手で体重を支え独楽のように回りぺルに足払いを仕掛けた。
 ぺルはそれを冷静に見極め、素早く身を翻し後ろに飛び避ける。そして、その足で再び地面を蹴り、渾身の力を込め剣を振り下ろした。


「はっ!!」


 振るわれた剣に対しクレスは獣のように地面を蹴って飛び上がり、ぺルの上を取る。
 そして、剣を振り下ろしたぺルに対し硬化させた足で強襲をかけた。


「鉄塊“砕”」


 上空からぺルを踏み潰さんとするクレス。鉄塊によって硬化されたクレスの脚が鉄槌のように振り下ろされる。
 だが、ぺルはそれを読んでいたかのように剣を振り上げた。


「!!」


 これに驚いたのはクレスだ。
 ぺルが振るった剣はクレスの脚をすり抜け、クレスの無防備な胴体を狙ってきたのだ。
 遮られることの無い剣はクレスの胴を捕らえた。


「くっ……!!」


 だが、表情を歪めたのはぺルの方だった。
 クレスの胴には"鉄塊"がかかっていた。
 鋼鉄の硬度を誇るクレスの鉄塊はぺルの剣を受け止める。


「……やるな」


 言葉とは裏腹に動きの止まったぺルに対しクレスは容赦なく腕を振り払った。


「がっ……!!」


 クレスの裏拳はぺルのこめかみに直撃し、ぺルを吹き飛ばす。
 ぺルの体が吹き飛び、近くに積み上げられていた木箱の山に突っ込んだ。
 

「………………」


 クレスは拳を見て、


「……なかなかやる」


 そう呟いた。
 クレスはぺルの方へと視線を戻す。


「……やはり強い」


 ぺルは立っていた。巻き上がる塵を後ろに、問題なく歩みを進めた。
 怪我はこめかみを強打され軽く出血しているものの、それだけだった。


「当たった瞬間に後ろに跳びのいたか」

「……そう易々とはやられはしない」


 そして再び剣を構えた。





◆ ◆ ◆






「ぺル!!」


 二人を見守っていたビビが臣下の名を呼んだ。
 クレスはバロックワークス内に流れる噂では実質上組織でクロコダイルに次ぐ実力を持つとされている。
 ぺルは強い。しかし、それでもクレス相手では不安があるのだろう。


「ふふ……結構やるわねアラバスタ最強の戦士さん。でも、彼相手にどこまでもつかしら?」

「ミス・オールサンデー……!!」


 冗談めかして言うロビンにビビは怒りを滲ませる。
 その時、ビビにある考えが浮かび、ロビンの隙をみてビビは賭けに出た。


「───っは!!」

「あら……」


 暗器に近い武器を回転させビビはロビンに向けて攻撃する。
 隙を突いたと思われたビビの攻撃だったが、その攻撃は宙を裂くだけにとどまった。
 ロビンはビビの攻撃を軽く身を引くだけで避け、おまけにビビの腕を取っていた。


「……残念」

「アンタこそ」


 武器は片手だけでは無い。ロビンはビビの自由なもう片方の腕に回転する暗器を見た。
 一本目はロビンを欺く為のフェイクでビビの本命はこの一撃だ。
 ロビンに片手を掴まれた状態ではあったが、ビビは無理やりに体を捻り腕を振るう。
 ビビの<孔雀スラッシャ―>がロビンを襲った。


「───えっ!!」


 だが、ありえないことに後ろ側からビビ腕が拘束された。
 後ろには誰もいない筈だった。クレスは下で、ロビンの位置は変わらない。
 だが、ビビの腕は確かに後ろから掴まれていた。
 ビビは驚愕し後ろを振り返る。するとそこには自分の背中から腕が"咲いていた"。


「ほらね、残念」


 ビビの考えは、ロビンが一人きりという状況を狙っての奇襲であった。
 ロビンはエージェントではあるものの、おもな戦闘はクレスが請け負っているためその実力は謎に包まれている。
 船の上で見た"力"からおそらく能力者だと推測されるが、それでもまだ付け入る隙があるように思えた。
 しかし、ビビの認識は完全に間違いであった。
 クレスがこの場を離れたのは"ロビンの実力ならばビビ程度がなにをしたところで問題はない"と判断したからだ。
 そうでなければ拘束もしていない相手に対し無防備にロビンを一人にしたりはしない。


「ぐっ……!!」


 ビビの口から苦悶が漏れた。
 掴まれた腕がうごめき、ビビの関節を締め上げたのだ。
 武器がだらんと垂れ下がったところでまた腕が咲き抜き取られる。
 自然と膝が折れ、腕は上に固められる。少しでも動けば固められた腕が痛む。一切の抵抗が許されなかった。


「大人しくしてなさい。私達はあなたに危害を加えるつもりはないわ」

「……悪魔の実」

「そういえば、あなたは二度目だったわね。
 私が口にしたのは<ハナハナの実>。体の各部を自在に咲かせる能力よ」


 ロビンの言葉に応じ、ロビンの腕から新たな腕が咲く。
 腕を咲かせたロビンは異様でありながらも息をのむような妖艶さを醸し出していた。


「咲く場所を厭わない私の体は決してあなたを逃がしはしない。……おわかりかしら?」

「くっ……!!」


 完全に動きを封じこまれたビビはただ唇を噛むしかなかった。






◆ ◆ ◆



 


「ビビ様ァ!!」

「おっと、他を気にしている余裕があんのか?」


 隙を見せたペルにクレスが容赦なく拳を叩きこむ。
 顔を歪めペルは拳を剣の腹で受け流し、後ろに跳んで大きく距離をとった。


「どうするんだ? このままじゃオレは倒せないぞ。
 王女が心配なら気にすることはない。国王の時と同じで手を出すつもりはないからな。
 このまま能力を使わずに様子見を続けるか? そのつもりなら生憎とこちらはそんなに時間がないから倒させてもらうぞ」


 状況は国王の襲撃時と酷似していた。むしろペルにとってはビビを拘束する人間がいるためさらに状況が悪い。
 ビビの救出に向かっても必ずクレスが邪魔をする。
 ビビは命を握られ自分から動くことはできない。
 単独で斥候としてやってきたために援軍は期待できない。
 そして、元より撤退の二文字は無い。
 ペルの勝利条件はクレスを倒し、そしてビビを拘束するロビンを退け、ビビを救出することだけだった。
 


「一つ聞きたい」

「何だ?」

「貴様らの組織でイガラムさんを殺したのは誰だ?」


 ペルにとっては時間稼ぎに近い問いかけだった。
 だが、質問自体に一切の遊びは無くペルの本心からの問いかけともいえた。


「イガラム? ああ、Mr.8」


 クレスはその答えにすぐにたどり着いたが、あえて考え込むように振る舞う。
 そして、わざと口元を釣り上げながら答えた。


「あの男なら───海に捨てた」


 クレスの答えにペルの目が見開かれる。
 体内に暴れ狂うような激情が走った。
 この男は国王や王女だけではなく、敬愛する上司まで手にかけていたのだ。
 

「貴様ァアアアア!!」


 ペルの体に変化が起こった。
 指先は鋭い掻き爪に変わり、肌はなめらかな羽毛に覆われる。そして背中から生まれた大きな翼がばさりと羽ばたいた。
 その姿は巨大な隼。ペルの能力<トリトリの実>の力だ。


「アラバスタの砂となれ!!」
 
「それは勘弁願いたいな」


 ペルの翼は街中に暴風を生んだ。街路に積もった塵を巻き上げ吹き飛ばす。
 クレスはペルの起こした暴風にさらされながらも、怯むことなくペルを見据えた。
 瞬間。ペルが翼で巻き上げた塵の中を切り裂くように飛び出した。風を掴んで飛ぶ姿はまるで巨大な弾丸のようであった。


「ハァ!!」


 速度に乗せ切れ味を増した剣がクレスを襲う。
 <動物系>の能力者が能力を行使した際の力は人間時の何倍にもいたる。
 様子見とはいえ、クレスと渡り合ったペルの力がお遊びに見えるほどの威力を秘めていた。


「……!!」


 クレスはペルの剣が届く瞬間、地面を爆発させるように強く踏み込み横に跳んだ。
 間一髪で剣はクレスから逸れ、空気を切り裂くだけに止まった。


「おいおい……マジか」


 クレスが先ほどまで自分がいたところを見て呆れ声を出した。
 そこは轍のように深く地面がえぐれていた。ペルが猛スピードで飛び去った跡である。
 少し遅れてクレスの背中に冷たい汗が流れた。もし回避が遅れていれば“鉄塊”をかけていたとしてもただでは済まなかっただろう。
 挑発はクレスの戦闘時の常套手段なのだが、今回はそれが予想以上に効き過ぎていた。


「避けたか……だがっ!!」


 上空に飛び上がったペルが旋回し、標的を再びクレスに定めた。
 体を重力に任せ、翼の羽ばたきによって一気に加速し、嘴を中心として回転し空気の抵抗を極限まで消す。
 野生の隼は狩りの際、遥か上空から獲物に狙いを定め、時には時速300㎞にもいたる高速で獲物に強襲するという。
 隼の攻撃にさらされた獲物はたいていは即死か失神状態であり、鳥類最速の名を誇る隼はそのスピードを武器に獲物を捕食する。
 その隼の力がペルには備わっていた。しかも悪魔の実によって強化された肉体はたやすく野生の隼を上回る。
 ペルの体は風に乗り音にすら近付いた。


「チッ……」


 爆撃のようなペルの攻撃をクレスは前方に跳び込んで避けた。
 今のペルには“鉄塊”の防御ですら得策ではない。仮にクレスと同じ厚さの鉄板をもってしてもペルならば易々と深い爪痕を残すであろう。
 

「うっとおしい攻撃だ」


 ペルの攻撃には厄介な特徴があった。
 それは超高威力かつ高速の強襲に加え、一瞬でその場を離れ手の届かない上空へと舞い上がる完璧なまでのヒットアンドアウェイである。
 通常、人間は空を飛ぶ相手に対しての攻撃手段は無い。制空権というのは圧倒的なまでのアドバンテージであった。


「外したか……」


 上空からペルは戦場を見つめた。
 クレスとは離れ建物の屋上にビビとロビンがいる。
 今からビビの場所に向かえないことは無い。だが、それを行うにはロビンの能力があまりにも危険であった。
 ロビンの能力はペルにとって天敵ともいえた。ペルは翼を完全に制御しきっているものの、ロビン能力によってその制御を乱さればペルは無様に地に落ちることとなる。
 下手に欲を出して王女の救出を優先させれば間違いなくペルはクレスとロビンの二人の相手をすることになるだろう。
 理由は分からなかったが、自身の相手は現在クレス一人だ。ならば今はクレスを全力で倒すことが得策と思えた。
 ペルは再び重力に身を任せ、地上にいるクレスに向けて加速しようとして、



「あんま調子乗んなや。───空で戦えるのはお前だけじゃねェぞ」



 空中を蹴り、自身に接近するクレスを視界に収めた。
 驚きがペルを支配する。空は完全に翼を持つペルのものであった。だが、クレスはいともたやすくペルの認識を砕く。
 クレスは“月歩”によってそこにまるで地面があるかのように空を駆けていたのだ。
 だが、一瞬の動揺はあったもののもともと空中はペルの領域である。ペルは翼で風を掴みそのままクレスに向けて抜刀する。
 それはクレスも読んでいたのか、拳を固めペルに向けて振りかぶった。
 ぺルの銀閃が煌めき、クレスの鉄腕がうねり、両者の攻撃が交差し、甲高い音を奏でた。
 クレスの攻撃を受けきったペルは再び翼を駆り空をかけ、離脱する。
 対するクレスはペルとすれ違った瞬間、前方の空気を蹴りつけ宙を舞った。そして振り向き様に鋭く脚を振りぬく。


「嵐脚“乱”!!」


 ペルへと向かう無数の斬撃。ばら撒かれた斬撃を背にペルは更にスピードを上げた。
 自身を追う斬撃。だが、ペルが羽ばたき、速度を増せばクレスの攻撃を置き去りにした。
 そして、宙返りを果たすと、お返しとばかりにクレスに向けて吊下していたガトリングガンの引き金を引いた。


「おいっ!!」

 
 クレスが焦る。
 ペルの両翼の陰に下げられた銃口は無数の弾丸をばら撒いた。ペルは戦闘機のようにクレスを追い弾丸を発射し続ける。
 弾丸が空気を切り裂く音を聞きながらクレスは“月歩”によってペルを撹乱しながら弾丸を避け、ペルの予想とは逆に一気にペルに向かい空を駆け抜けた。


「六式“我流”───っ!!」

「面白い───!!」


 空中で己に向かってくるクレスにペルは更にスピードを上げた。そして自身の鋭い爪を軋ませる。
 晴れ渡った大空を行く二つの影は残像を残して一瞬で交差する。


「───閃甲破靡“空牙”!!」

「飛爪───!!」


 互いの渾身の一撃は空を軋ませ、地上をも揺らした。






◆ ◆ ◆






「ペル……凄いっ!!」


 目の前で繰り広げられる激戦にビビが息をのんだ。
 ペルはクレスに対し互角、いや空中戦ならば互角以上に戦っていた。
 あれほど恐れられていたMr.ジョーカーを倒せるかもしれないとビビの中に希望が浮かんだ。


「…………」


 これに表情をわずかに面白くなさそうに変えたのはロビンだ。その表情は自慢しているものを馬鹿にされた子供に似ていた。
 だが、ロビンの表情はそれ以上は変わらなかった。
 ペルは確かに強い。それもクレスとまともにやりあえるなど過去においても数えるほどであった。
 だが、単純な強さだけではクレスには敵わない。その理由をロビンは知っていた。


「残念だけど。……Mr.ジョーカーは負けないわ」

 
 ロビンの言葉にビビは眉根を寄せた。
 まさか、と思うがビビの思惑は外れる。ロビンはビビを餌に有利な状況を導くことを否定した。
 ここでロビンが手を出せばクレスがペルよりも劣っているという証明でもあった。
 ビビの困惑にロビンは少し意地悪な声でに答えた。


「彼はただ強いだけじゃない。例えるならそう───“狩人”かしら」






◆ ◆ ◆






 戦いは空中から地上へと場面を移していた。
 クレスの"月歩"はペルの飛行に比べ小回りが利きクロスレンジの素早さで上回る。
 ペルの飛行は翼がある分速度ではクレスを上回り空中での追撃では軍配が上がった。
 互いの性質を比べればほぼ互角となる二人であったが、クレスの"月歩"は空中を蹴り飛び上がる技だ。無尽蔵に近い体力を持つクレスだが、当然いつまでも飛び続けられるわけではない。
 まだまだ体力にはゆとりはあるものの、ペル相手の空中戦の愚を悟り、隙を見て地上へと舞い戻った。


「……訂正する。お前は強い」


 地面に立ち止まり、突如殊勝な態度で語りかけたクレスに、ペルはわずかに困惑したもののすぐに視線を鋭いモノへと変えた。


「実は結構ビックリしてんだよ。白兵戦には自信があったからな。正直ココまで手こずるなんて思わなかった」

「…………」

「だけど、まぁ……アイツにカッコつけた手前このままやり合って傷だらけの"苦勝"じゃカッコ悪いし、それに時間をかけると怒られるんだ」

「貴様の都合など知らん。私は戦い貴様に勝つだけだ」


 殊勝な態度ではあるものの、自身が勝つことを前提として話を進めるクレスにぺルは警戒を募らせた。
 ぺルは感じていた。クレスは根拠の無い自信だとか、意味の無いハッタリで言葉を為しているのでない。それを確固たる事実であるかのように、ぺルに向けて宣誓していたのだ。


「そう言うなって、オレはこの『六式』に誇りを持ってるし、何よりの武器だとも思ってる。
 だけどな、世の中にはこれだけじゃままならない奴らもいるんだよ。悔しいがそいつらに向かってバカ正直に戦うのもリスクがある」


 クレスは腰元に下げたサイドバックからサバイバルナイフを複数本取り出し、両手に納めた。


「じゃあ足りない場合はどうすればいいかってのは、補うしかないんだよ。別の何かでな。だって、勝負は一度きりだ。負けるつもりはないしな」

「それは私とて同じだ。今この瞬間に貴様に負けるわけにはいかない。貴様らを倒し、祖国に平和を取り戻す!!」

「そりゃ、そうだな。……まぁ、お前の場合背負ってるものも大きいしな。……だが、あえて言おう」


 クレスは上空のぺルに視線を合わせたまま、ナイフを隠すようにだらんと両腕を下げた。


「───オレが背負うと決めたもんはお前よりも大きいってな」


 そしてクレスはペルに向けて捕食者のような凄惨な笑みを見せた。
 ペルはクレスの表情に一瞬怯むも、油断なくガトリングガンで牽制を行いながらクレスに向けて強襲を仕掛けた。
 高速で迫るペルを視界に収め、地面に突き刺さる弾丸の風切り音を聞き、何発か直撃した弾丸を鉄塊で受け止め、クレスは浅い息を吐き、ペルの接近を待ち受ける。
 そして、ぺルを十分に引きつけ、爆発させるように地面を蹴りムーンサルトの要領でバク転と共に両脚を振りぬいた。


「嵐脚"断雷"」


 両脚で起こされた巨大な三日月のような形をした"嵐脚"の斬撃がペルの目を釘付けにした。
 直撃すれば間違いなく両断されるような斬撃。ペルは瞠目し直前で体を捻った。ペルの胸元が裂ける。直撃こそ免れたのものの傷は浅くは無かった。
 だが、それだけだ。流れる血をそのままに、突き進むペルの進行は止まらない。


「飛爪───!!」


 ペルが鋭い爪を振るう。クレスといえど直撃すれば間違いなく引き裂かれるような威力を秘めた一撃。クレスは技を放った直後で避けきることは難しいだろう。
 だが、その認識は裏切られる。この瞬間においてもまだぺルはクレスの力の全てを認識できていなかったといっていい。いや、それ以上にクレスの動きが余りにも異常過ぎた。
 クレスは後ろに跳んだ後に、ぺルと目線が交叉した瞬間、着地するでもなく垂直にもう一度空中を蹴り、ぺルへと肉薄したのだ。
 渾身の一撃の後の加速。動から静そして再びの動。流れるようなその動きにぺルは幻惑される。


「───指銃"剛砲"!!」


 ぺルの振るう掻き爪にクレスの鋼のように固い拳が合わせられるように振るわれた。
 接触は一瞬。しかし衝撃は音叉のように響き渡った。
 クレスが直撃をずらすようにぺルの掻き爪に拳を打ち込み、互いの攻撃は二人の腕に鈍い疼きを与えただけにとどまった。
 ぺルが仕留めきれなかった事を苦々しく思いながら、再び上空に舞い戻ろうと高度を上げた瞬間、
 
 

「さぁ、大捕物だ」



 すれ違ったクレスの不気味な殺気に触れた。


「───っっっっ!!」


 ペルの眼前にそれは現れた。
 見えないようにほぼ透明にカラーコーティングされた鈍く光る鉄線。それが幾重にも重なり網となってペルに立ち塞がる壁ように展開されたのだ。
 離れた所から見ればそれは巨大な鳥を拘束する鳥籠のように見えただろう。
 突如現れた網に急ぎペルは減速し逃れようとする。だが展開した網に既に逃げ場は無かった。
 悪魔の実によって隼の速度を手に入れたペル。だが今回はその速度がペルを苛んだ。
 隼の翼は高速で飛行することには向いているのだが頻繁な旋回や方向転換は不得意とされていた。 
 加速した速度を急に止めることはできない。ましてや後ろに逃げ出そうとするのも不可能だ。方向を変えようにも距離が足りなさすぎた。
 隼の天敵はワシミミズクなどの猛禽類だ。夜の暗闇に紛れ音もなく忍び寄り彼らは油断した隼を刈り取るのだという。今のぺルにとってのクレスの攻撃は恐れるべき天敵の一撃のようでもあった。


「ぐあっ!!」


 ペルが巨大な網に捕えられる。
 翼を絡めとられて制御を失った隼は地に転がった。
 それに伴い鉄網の先端に付けられたサバイバルナイフが建物や地面から抜けていく。
 クレスは嵐脚でペルの目を欺き、その隙にサバイバルナイフを投げ、罠を設置したのだ。
 今にして思えば不自然にぺルに語りかけた会話も、この罠を設置する場所を吟味していたのだろう。
 そして、ぺルの視線を自分に釘付けにして、油断したところで本命をぶつけた。
 クレスは強い。だが、彼がここまで至るまでに挫折を味わなかった訳ではない。むしろ彼の人生の中では自身の弱さを呪うような瞬間の方が多かった。
 敵に追われ、逃げ道を塞がれ、戦うしかない状況。敗北は許されなかった。ならば勝つしかないのだ。
 そして、勝てないのならば、勝てる状況を作り上げるしかない。
 自身の力と相手の力。様々な道具や武器。地形に天候。それらから状況を読み取り、状況を操り、相手を仕留め、勝利を握りしめる。
 クレスには狩人にも似た相手を追い詰める力があった。
 

「残念だったな。それは対海王類用の特別製だ」


 地面に転がりあちこちを打ち付けながらも罠から脱出しようともがくペルに、クレスは更なる追い打ちをかける。
 獲物は既に罠の中。ならば、後は一撃で仕留めるのみだ。


「六式“我流”───」


 ペルは己に向かってくるクレスを歯を食いしばりながら見つめた。
 クレスは地面を蹴り、大きく飛び上がる。一瞬だけ上空に止まりフワリとペルの元へと現れる。
 緩やかでありながら力強い動きで舞い降りて、鉄塊で固めた踵で膝をつくペルを踏み砕いた。


「───落葉!!」 


 クレスの踵を支点として全身に衝撃が響き、一瞬でペルの意識が刈り取られた。
 薄れゆく意識と視界に敬愛する王女の姿を収めながら、ペルの意識が閉じる。


「ビビ……様……申し訳……ございま……せ、ん」


 呟きは風に乗りビビの元に届いて、彼女を絶望に陥れた。






 





あとがき
ペルvsクレスはクレスに軍配です。
修正させて頂きました。
本筋は変わっていませんが、加筆してセリフの一部を変更いたしました。
クレスの狩人設定に少し囚われ過ぎて、性急すぎました。申し訳ないです。


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