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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/04 22:58
───肌寒い風が流れている。


グランドラインのとある島の洞窟の中にクレスとロビンの姿はあった。

薄暗い中を足元を確かめるように進んでいく。
隔絶された洞窟内には太陽の光は届かない。
光の届かない空間だが真っ暗だと言う訳ではない。
洞窟内のあちこちが淡い光を放っている。
蛍石と言われる光を発する鉱石のおかげだ。


「綺麗……だな」


クレスがぽつりとつぶやいた。
声は洞窟の中で反響し優しい余韻を残した。


「どうしたの? 」

「いや……真昼間だってのに、洞窟の中が夜だとしたらまわりの光が……」


クレスの言う通り、時刻はちょうど昼過ぎを回ったところだ。
洞窟の外では太陽が地上を活発に照らしている事だろう。
島の季節は夏。刺すような陽光だ。


「星……みたいでさ」


真面目な顔でクレスは言った。

確かに、夜のような暗闇の中で小さくも強い光を放っている情景はそうも見えなくは無い。


「ふふふ……」

「……なんだよ」


思わず笑いが零れてしまったのは仕方ないとロビンは思った。


「だって、クレスが言っても似合わないもの」

「なっ!」

「ふふふふ……ごめんなさい。
 でも……クレスは意外にロマンチストだものね」

「悪かったな、意外で。
 どうせオレは流れ星を見かけたら反射条件のように願いを呟きますよ」

「星座も詳しいものね」

「ほっとけ」

「七夕の日にてるてる坊主作ったり」

「うるさい。……雨降ったらもったいないじゃねぇか」


そう言うとクレスは黙り込んでしまう。
拗ねてしまったようだ。
そっぽを向く姿は子供の様でかわいらしい。


「ごめんなさい。怒った?」

「別に……怒ってなんかない。
 まぁ、似合わないってのも事実だしな。
 あ、そこ気をつけろ。滑りやすいから」


クレスが指したところを避ける。
前を歩くクレスの背中は大きくて頼りになる。
昔から、こうして危険な道を探検をするときはクレスが先導してくれた。


「ありがとう。
 でも、私は嫌いじゃないわ。クレスのそういうところ」

「そう言うところって、ロマンチストなところか?」

「ええ。少なくとも、つまらないリアリストよりもずっといいと思うわ」

「そりゃどうも」


そして、二人、星のような光が照らす洞窟内を歩く。
クレスに倣うなら、星の中を歩いているとでも言うべきなのだろう。
静かで、綺麗な星粒だ。それが燐光のように浮き立っている。
月が無いのが残念だと思った。

……もしかしたら自分もクレスのことを笑えないのかもしれない。

そんな事を思い、ロビンは口元に柔らかい笑みを作った。














第十六話 「洞窟と水面」














クレスとロビンが辿り着いたのは、寂れた雰囲気の島だった。
石造りの家々が立ち並ぶ街並みが美しい島だったのだが、人々に活気というものは無い。
その日、その日を、無気力に細々と暮らしている。
そう言う印象を受けた。

街の中心にはかつては繁栄を誇ったであろう巨大な城跡があったが、
時が経ち、ロクな手入れもされずに放置されていたため、風化し、かつての美しい景観を垣間見る事が出来なかった。
もしかしたら、いつかは、誰からも完全に忘れ去られてしまうのかもしれない。
盛者必衰と詩人のように衰退を詠う者もいるだろうが、少なくともクレスとロビンはそういった気分にはならなかった。

建物と共にそこにあった歴史や当時の人々の思いまで消えていくのはとても悲しいことだ。
だからと言う訳でも無かったが、ロビンは遺跡の調査を行うことにした。
遺跡と言うものには種類を問わずに興味をひかれる。
建造物などは劣化が激しく、調査は困難を極めたが、予想外の手掛かりを掴むことが出来た。

意外だったが、どこか、確信のようなものを感じた。

そして、街の人間に聞き込みをおこない。
島のはずれに、古くから伝わる洞窟があることを突き止めた。

クレスとロビンが洞窟の中を進むのには当然理由がある。
二人が到着したのは島には、二人が求めるものがある可能性があった。
二人が長年に渡り探し続けて来たもの。


───歴史の本文。


それが、この先にある予感がした。






クレスとロビンは洞窟内を進む。

洞窟探検───ケイビング。

洞窟の探検は本来困難とされている。
最悪の場合、酸欠や事故によって死に至る。
それは洞窟内の構造が複雑なことに起因していた。
極端な狭洞に行く手を阻まれることもあれば、そびえたつ洞壁を登らなければならないこともある。
そして、洞窟によっては光の届かない為に真っ暗闇の中を僅かな明かりを頼りに進む必要も出てくる。
暗闇の中、迷子になればそう簡単には出られない。

洞窟は自然が育んだ景観の一つだ。洞窟に挑むことは山や海と同じで自然に挑むことに等しい。


それを踏まえれば、クレスとロビンが現在進む道の難易度はそれほど高くは無かった。
洞内は広く進みやすいし、日の光は当たらないが蛍石のおかげでライトもいらない。


「毎度のことだけど、疲れたら言えよ」


クレスがロビンを気遣う。
洞窟内は温度が低く、農産物を保存する例もある。
中には、巨大な氷柱が発見されることもあるのだ。
寒さは人からたやすく体力を奪う。
だから、無理をして休むのを怠れば痛い目をみる。


「わかってる。でも、まだ大丈夫よ」


嘘では無い。
そのことに関しては正直にクレスに従うつもりだ。
探検やサバイバルに関してはクレスの方が専門家だ。
誰かから教授した訳ではないが、その腕は間違いなく一流だった。
ならば、その指示に従うのは当然だろう。


「洞窟探検か……昔を思い出すな。
 覚えてるかロビン? 初めて洞窟に入った時の事」

「ええ」


過去にも何回かクレスとロビンは洞窟を進んだ。
洞窟は考古学にとっては定番のようなものだ。


「始めて入った時、暗闇を怖がって泣きそうになってたしな」

「……そんなこともあったわね。あの頃はまだ暗いのがダメだったもの。
 たしか、あの時はクレスが脅かして大声を出したら、びっくりして泣いちゃったのよね」

「いや、あの時はさすがに悪かったと思う」

「それだけじゃないでしょ」

「ん?」

「その後、クレスの大声に反応した蝙蝠達が一斉に襲ってきて二人で逃げたじゃない」

「あ、ああ……そ、そうだったな。
 さすがにあれは焦ったわ。お前を抱えて本気で走ったからな」

「尋常じゃなかったわね」

「その後、ボス蝙蝠と戦ったしな」

「大スペクタクルだったわね」

「勝利して、仲良くなったしな。仲間思いの良い奴だったし」

「感動ね」


「…………………」


「…………………」


「…………………」


「…………………」


「…………………ごめんなさい」


今だからこそ笑い話だが、当時は大変だったのだ。
一斉に襲って来た蝙蝠は本当に怖かった。
しかも、ボス蝙蝠は当時のロビンの何倍もあったのだ。
洞窟内に響く、無数の羽ばたき音の中に混じった一際大きな羽ばたきの音が無性に不気味だった。



慎重に、時には楽しげに会話を交わしながらクレスとロビンは洞窟内を進んだ。
途中にこれと言った障害は無かったのだがある程度進んだときに、前を歩いていたクレスが立ち止った。


「まずいな……」


クレスの前には川があった。
それが進行方向に向けてずっと続いている。
そしてだんだんと天井も低くなって来ていた。
まだ、水深が浅いのが幸いだった。

洞窟探検には危険が付きまとう。
特に厄介なのは洞窟内に水が流れていて、その中を進む必要がある場合だ。
能力者のロビンにとっては海や川などの水の溜まった場所は何よりの弱点だ。
泳げない為に、足を滑らせれば命に関わる。


「どうする? 進むか?」


クレスはロビンに問いかける。
この道がロビンにとってどれだけ危険なのかはクレスは十分に分かっている。
しかし、この先には “歴史の本文” の手がかりがあるのだ。
その事についてはおぼろげでは無く、十分に信頼できる確証だった。
だからクレスは問いかけた。
引き返すことを提案したいのだろうがロビンに判断を委ねた。


「ええ……お願い」

「……そう言うと思ったよ。
 ただし、無理だったったら引き返すからな」


クレスは予測していたのか、しょうがないと言った様子で答えた。
その事に申し訳なさを覚えつつも、ロビンはこの先にある遺跡に思いを馳せた。
グランドラインに入っての初めてにして最大の手がかりだ。
“西の海” ではどんなに探しても見つける事の出来なかった、自分達が求めるものがそこにあるかも知れないのだ。
いや、かなりの可能性でそこにはある。長年培った、考古学者としての勘がそう告げている。
期待も膨らむ、危険を犯す価値もあった。



浅い水の中を二人は進んだ。
一歩一歩を踏みしめるように慎重にだ。

水が浅くて助かった。
余りに多いと能力者のロビンは動きをかなり制限されるのだ。
クレスは終始心配そうだったが、進むことに問題は無かった。

しかし、それもだんだんと困難になっていく。
水深がだんだんと深くなって来ているのだ。
初めは足首辺りまでしか無かったのだが、徐々に深さが増し、現在は太ももの辺りを越えた。

ロビンの身体に変化が現れる。
全身の力が抜けていき、一歩を踏み出すのが酷く辛い。
息も自然と荒くなっていった。

能力者になったことによる弊害だ。
海に嫌われカナヅチとなったロビンにはこういった環境はかなり厳しい。

だが、それでもロビンは前に進もうとした。

前には、探し求めていた手がかりがあるのだ。
こんなことで、立ち止まれない。
それに、クレスにも迷惑をかけているのだ。
まだ行ける。能力者だからって甘えていられない。


「……アホ」


いつの間にか、クレスは立ち止まりこちらを向いていた。

クレスはロビンに近付くと軽々とロビンを抱え上げた。
何の負担を感じさせることも無く、当然のように易々とロビンはクレスの腕の中に納まった。


「疲れたら言えって、言っただろ」


呆れたようにクレスは言った。


「……ごめんなさい」

「……謝る必要はない。悪い事した訳じゃないんだから。
 だいたい、海が苦手なのは別にお前のせいじゃない」


昔のように、クレスが優しくもぶっきらぼうに諭す。

ロビンは目を伏せた。
昔からクレスには迷惑をかけてばかりだった。


「あそこにちょうど陸地があるから、そこで一端休もう。オレも疲れてきた」



クレスとロビンの二人は岩の上で火を起こし暖を取った。
洞窟内の水は冷たく、体温が低下していた。
異常なまでに丈夫なクレスは大丈夫そうだったが、ロビンは別だ。
このまま強硬に進んでいたら危険だったかもしれない。

ロビンが休む間に、クレスは一人でこの先の様子を見に行くことにした。
この先に遺跡があるのならば、どうにかそこまで辿り着きたい。
しかし、道が水の中ならば二人で進むのは危険だ。
最悪の場合、後戻りをしなくてはならない。
ならば、クレスが先行し様子を見てからその道のりによって、その後の行動を決めるのが賢明だ。


「出来ればメシでも作っといてくれ、腹減って来たから」

「分かったわ……気を付けてね」

「了ー解」


クレスはすいすいと洞窟内を進んで行き、やがて見えなくなった。

ロビンは一人岩場に取り残される。
ロビンは足を投げ出し、ゆっくりと目を閉じた。
星空のような明かりは完全に消え、目に映るのは暗闇だけだ。

今回はクレスに迷惑をかけないようにするつもりだったが、無理みたいだ。

謝る必要は無い。
お前のせいじゃない。

クレスは言った。
でも、迷惑をかけているのは事実だった。

疲れて来た。
腹が空いた。

どちらもおそらく嘘だ。
クレスなりに気を使ってくれているのだ。


「ダメね……」


ロビンの声は僅かに響いた。



嘘であろうが、お腹が空いたとクレスが言ったのだ。
料理を作るのは当然だろう。
ロビンはクレスが背負っていた鞄の中から小さな鍋を取り出し、簡単なスープを作った。
スープが煮立ち、湯気が立ち上り始めた時に、クレスが帰って来た。

クレスは水の中から上がると、濡れた服を絞った。
何故か髪の毛までビショビショだった。


「どうしたの……? づぶ濡れじゃない」

「いや、十分ほど地底湖を潜っただけだ。
 うおっ! 寒っ!! おっ、料理作ってくれてたんだ。ありがとう」


クレスはロビンの作ったスープを器によそい、おいしそうに食べる。


「潜ったって……」


ロビンはクレスがサラりと言ったことに驚く。
相変わらず、物凄い身体能力だと思う。

特に潜る為の装備を準備していた訳では無い。
クレスは素潜りで、ダイビングの中で最も危険と言われる洞窟潜水をおこなったのだ。


「いや、それほど難しい訳じゃ無かったぞ。
 蛍石のおかげで視界の確保は簡単だったし、極端な狭洞があった訳でも無かったしな」

「それで……どうだったの?」

「ん?」

「遺跡の事よ」

「ああ……」

「……どうだったの?」

「そんな事より、おかわりくれないか? 腹減ってしょうがないんだ」

「えっ……ええ、わかったわ」


ロビンはクレスに違和感を覚えた。
何かを隠しているようなそんな様子だ。


「いや、相変わらずおいしいな。
 インスタントの食材でここまでおいしく作れるのはすごいと思うぞ」


クレスは相変わらず笑顔のままで食事を続ける。
張りつけたような笑顔だった。


「それにしてもこの辺は綺麗だよな。夜みたいだし、少し昼寝でもしようかな」


やはり感じる僅かな違和感。
それはどうしようもない不安に変わる。


「クレスっ!!」


気付けばロビンは叫んでいた。
何か嫌な予感が頭から離れない。


「……どうしたんだロビン? そんな大きな声を出さないでも聞こえてるぞ」

「どうしたのクレス? 帰って来てから様子がおかしいわ」

「気のせいだろ? オレはいつもこんな感じだぞ」

「誤魔化さないで、何を隠しているの?」

「……隠すって、何を隠す必要があるんだよ」

「じゃぁ、向かった先で何があったのか教えて」

「どうしたんだ? 何時ものお前らしく無いぞ」

「らしくないのはクレスの方よ。 
 洞窟の先に何があったの? ………お願い、教えて」


ロビンはクレスに詰め寄った。

クレスの様子がおかしいのは間違いない。
いつものクレスなら真っ先に結果を報告してくれる筈だ。
その結果の如何に関わらず正直にありのままを伝えてくれる。

だけど、今回は違う。
先延ばしにして、うやむやにしようとしている。
クレス自身も考えあぐねているみたいだ。

何があったのかは分からない。

でも、どんな事だったとしても信頼して伝えてほしいのだ。


しばらくの間、互いに沈黙する。
あたりには水のせせらぎが洞内に響き、静かに流れる。
二人の視線は合わさらない。
ロビンからクレスが逃げるように目を反らしていた。


「っ! ああ!! くそっ!!」


沈黙を破ったのはクレスだ。
彼は苛立ちげに髪を掻き回すとロビンに頭を下げた。


「……すまない。オレもどうすればいいのか分からなかったんだ」


クレスは少しづつ、言葉を選ぶ様に話していく。


「遺跡らしきものはあった。 詳しくは……分からなかったけどな」


言葉を濁している様だった。


「遺跡はちゃんとあったの?」

「……ああ。あるには在った。でもたどり着くことは無理だ」


どうして? 
と言葉を紡ごうとして直ぐにその理由にいきあった。


「……水の中にあるのね」


クレスは一瞬だけ迷うように答えた。


「惜しいけど違う。
 遺跡は地上にあったんだが、たどり着くまでには水の中に潜らなければいけなかった」


しかし、ロビンにとってはどちらも変わりは無い。
どちらにしても一人では向かうことは出来ない。


「一応、ほかにも入り口が無いか探したけど、それらしいものは見つから無かった」


再び沈黙が降りた。
それはロビンにとっては余りにも残酷な事実だ。
グランドラインに入って初めてにして最大の手がかりを前にして、この状況は歯がゆすぎる。
カナヅチである事を呪いたくなった。


「……悪い事は言わん。今回ばかりは諦めた方がいい。
 これで最後な訳じゃないんだから探せば他の場所が見つかるさ」


慰めるようにクレスはロビンの頭に優しく手を置いた。

そんなクレスにロビンはわずかな引っかかりを感じていた。
クレスは嘘はついてはいないだろう。
しかし、まだ肝心なことを話してない。


「……潜水する時間はどれくらい必要なの?」

「五分だ」


ロビンには想像もつかない数字だ。
しかし、引き下がることは出来ない。
ロビンは一瞬の逡巡のあとクレスの瞳を強く見つめた。


「お願い……連れて行って」

「……バカ言うな。 今回ばかりは無理だ。リスクが大きすぎる」

「ワガママを言ってるのは分かってる。……でも、諦めきれないの」

「それでもダメだ。遺跡は他にもあるんだから、今回はこれまでだ」


正しいのはクレスなのは分かっている。
自分が子供のように彼を困らせているだけ。
でも、どうしても気持ちの整理がつかないのだ。


「……クレス、お願い」


ロビンの声は小さく、震えるように響いた。


「…………ダメだ」

「じゃあ、クレスは何を隠しているの!!?」


ロビンが声を張り上げた。
いつものように冷静ではいられなかった。
先程からはぐらかされ続けていることだ。
今まで、こんなことは無かった。


「……………………」


クレスは何も言わない。
あくまで話すつもりは無いようだ。


「……クレスが話してくれないなら私は分からない。クレスは遺跡で何を見たの?」

「……………………」

「……どうして、私を遺跡から遠ざけようとするの?」


いつもとは違う様子、歯切れの悪い回答、肝心なところは話さない、リスクだけを告げる。
どれもが一つに結びつく。

クレスはこの水面の向こうに何を見たのか。
それは、そんなにも自分には見せられないものなのか?

ロビンの訴えにクレスは小さくも長いため息をついた。


「…………わかった」


長い、ロビンには永遠にすら感じる時を経てクレスは絞り出すように答えた。


「ただし、気をしっかりと持て。
 ……オレの口からはこれくらいしか言えない」


その言葉には、諦めと悔しさが含まれていた。



能力者のロビンが水の中に入る事など初めから想定していない。
もちろん、専門の道具など持ってはいない。
だから、クレスは持ちうる装備で最大の効果を引き出すことにした。
クレスはともかく、下手をすればロビンの命に関わる。
慎重に細心の注意を払いロビンが潜水するための準備をおこなった。


「ゆっくり深呼吸しろ。
 気持ちを落ち着かせて、全身の力を抜く、リラックスすることだけ考えろ」


ロビンは現在クレスに後ろから抱きかかえられる形で水の中にいた。
足はもう底には届かない。
全身に全く力が入らない。
クレスの腕にしがみつく事で精一杯だ。

クレスとロビンの身体はロープに互いに繋がっている。
これは、クレスと離れないようにするためだ。


「三分で終わる。
 だから、それまで我慢してくれ」


さっきは五分と言っていた。
つまりは、それだけ急ぐと言うことだろう。


「……ごめんなさい」


つい漏れた呟き。
それを、クレスはたしなめる。


「謝るなって。誰にでも出来る事と出来ない事がある。だから、謝るな。
 謝罪よりも、もっといい言葉があるだろ?」


この優しさは好きだ。


「……ありがとう」

「ああ、気にするな。
 ───そろそろ、行くぞ」


クレスの言葉にロビンは覚悟を決める。


「……吸って」


背中越しにクレスの鼓動が聞こえる。


「……はいて」


強く、強く、
刻まれるリズム。
ロビンはそれに自分の鼓動を重ねようとした。


「大きく吸って」


重なる鼓動。
二つは一つに、より強く。

この場所は何よりも安心出来る。


「止めて。……潜るぞ」


二人は水の中へと潜った。

水の中はとても美しい。
蛍石が瞬き、まるで星空の中を飛んでいるかのような錯覚を覚える。
これで息さえ続けばどんなに良かったか。

ロビンはクレスに連れられてどんどんと水中を進んでいく。

クレスはロビンを抱えているにも関わらずスイスイと魚のように進んでいく。
魚人のように水掻きが付いていたとしても何ら不思議は無い。

ある程度潜ったところ、底の方に船でも入れそうな程の横穴があった。
クレスは迷うことなくその中に入っていく。

穴の中には洞内を直接彫り抜いて作った装飾や石像が並べられていた。
当時は通路として使われていたのかもしれない。
現在は水の中にあるのは地底湖の水量が増したからだろう。
様式などは詳しく調べてみなければ分からないが、何かを奉る神殿のような印象を受けた。


そこまでを反射的に考えてロビンの意識は急速に薄れかかる。
能力者になってから今まで泳いだ事もないのだ。
……苦しい。空気が足りなかった。
やはり、能力者の自分が潜水なんて無理だったのかもしれない。
後どれくらい保つかなんて分からないが、そう長くは無いかもしれない。

その時、不意にクレスの腕の力が弛んだ。
クレスは前に進みながら器用に体制を変え、ちょうど仰向けになるように泳ぐ。
ロビンを前から抱きしめる格好となっていた。

クレスの心配そうな顔がロビンをのぞき込むようにして近づいていく。
そして、そっとロビンを抱き寄せ……





ロビンの意識はここで途絶えた。






ぱちぱちといった。
薪が弾ける音で目を覚ました。


「ん……ここは……」


僅かに感じる身体の重さを無視してロビンは起きあがる。
身を起こすとパサリと毛布代わりにかけてあった服が落ちた。
クレスが着ていた服だ。


「起きたか。……どうだ体調は?」


クレスが心配そうに聞いて来た。
それにロビンはゆっくりと答えた。


「ええ、大丈夫。
 ありがとう。ここまで運んでくれて」

「気にすんな。結構無理したからな、もう少し休んだ方がいい」


クレスはロビンに器を差し出した。
中にはロビンが先ほど作ったのと同じようなスープが入っている。
ロビンはそれをゆっくりと飲んだ。


「ここは地底湖を抜けた先だな。遺跡にはここを真っ直ぐ、壊れた石像に沿って行くと辿り着ける。
 なぁ、今更なんだが引き返すつもりはないか? 当然、来た道と違う道を探す。だから……」

「───クレス」


ロビンは遮るように言った。
やはりクレスは自分に遺跡を見せたくはないようだ。


「私はここまでやって来てしまったわ。
 遺跡を目の前にして考古学者が引き下がる訳が無いじゃない。それは私も当然同じ」

「……だよな……やっぱりそうだよな。引き下がる訳無いか」

「ええ」


ロビンは空になった容器を片付け、立ちあがる。
その瞳は前を見つめている。


「……分かった。オレも一緒に行く。
 だから……いや、すまん。何でも無い」


クレスは何かを言おうとして口ごもった。
表情も優れない。ロビンには見えなかったが目は悲しみで満ちていた。



遺跡までの道のりはわりと平坦で歩きやすい。
地面には劣化が激しく分かりづらいが石畳が敷かれ整備がされていたようだ。
水中でも見かけた石像や石造りの建造物もみられる。
しかし、その様子がおかしい。
古く劣化しているのは当たり前だ。しかし、それにしては損傷具合がおかしいのだ。
風化ではありえない傷つき方だ。
これではまるで壊れたのではなく、壊されたようではないか。

蛍石が照らす道のりを二人は言葉無く歩いた。
遺跡に近づく程、その損傷度合いは酷くなっていく。
それは石像や建造物だけにとどまることなく洞内全体へと広がって行く。

ロビンは不安に駆られ走り出した。
息を切らし前だけを見て走る。余所見はしないようにした。

そして、通路のような洞内を抜けた先にその光景はあった。


「…………っ!!」


それは、余りにも残酷なものだった。

かつての荘厳さを微塵にも残していない粉々に砕かれた神殿だったであろう石屑。
地面のそこらじゅうに突き刺さった、血糊のような汚れのついた剣に見える鉄屑。
そして、あちこちに散乱する、かつては人であった筈の串刺しとなっている骨屑。

そこは戦場跡だった。
いや、もはやこうなっていてはただ死体の散乱する墓場のようなものだ。

叫び出したいのを押し堪え、ロビンは最深部へと走った。
壊れた石畳の通路を駆け、砕かれた階段を上り、白骨化した死体を乗り越えた。

そして、そこにある光景に言葉を無くし、崩れ落ちた。

ロビンは悟った。
だからクレスはこの場所に連れて来たくなかったのだ。
この光景はあまりにも、絶望が大きすぎる。

意気揚々とこの地にやって来て、散々クレスに迷惑をかけてきてこの様だ。
自分はなんてバカだったんだ。自分達の敵が誰か忘れたのか。
期待して、こんなにも簡単に裏切られた。


「……どうしてっ!!」

「オレも、来た時は同じ事を思ったよ」


追いついたクレスがロビンの背中に語りかける。
怒りで声が震えていた。


「たしかこの島は……」

「ああ、 “非”世界政府加盟国だ」


なるほど……どこかでそんな気はしていた。

これで全ての情報が結びつく。
気力の無い島の住民、崩れゆく城跡、そしてこの戦場跡。
最大の根拠は目の前に広がる空洞。

巨大な正方形がちょうど納まりそうな空洞だ。
その空洞が悲しげにその陰を深くする。
地面には、乱暴に引きずったような跡がある。
巨大な硬石を引きずったような跡だ。

ロビンとクレスが探していたもの、


─── “歴史の本文” がそこには無かった。


「かつての、この地の人々は戦ったのね」

「ああ、そして……敗れた」


クレスはロビンの隣に座り込んだ。
座りこんで、ただそこにいる。
不用意な甘い言葉をかける訳ではない。
何も言わない、同じ思いを感じている。その共感が今は嬉しい。

だから、そっと手を握った。



───肌寒い風が流れている。

───強くはないのに、芯から冷え込むようだ。

───でも、今はそれでいい。

───今はこの冷たさを分かち合ってくれる幼なじみがいる。

───今はまだ、この手のひら分の温もりだけでいい。

───だけど、いつかは……













ロビンの思いとは裏腹に、手がかりはは全て封じられていく。
敵の名は世界政府。その存在は余りにも大きい。
夢である、 “真・歴史の本文” の発見は遠のくばかりで、その身には絶望のみが募る。
二人は旅を続けるも、個人レベルでは限界を感じ始めていた。



故に必然だったのかもしれない。
後に、砂漠の王国を舞台に引き起こされる大事件に二人が関わってゆくことは……













第二部 完












あとがき

不意打ちのように終わらせてしまいましたね。
もう少し原作キャラが登場するオリジナルの話を書こうと思っていたのですが、ここで打ち止めみすることにしました。
期待されていた方がいらっしゃったなら申し訳ないです。
もしかしたら、番外編としての短編は書くかもしれません。

今回はクレスの本領発揮ですね。
やはり、泳げると言うのは結構重要ですね。
糖度が高すぎたかもしれません。

第三部は当然アラバスタ編です。
未だに未熟な作者ですが頑張りたいです。


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