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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第十話 「オカマと何かの縁」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/20 00:51
悪魔の実を海に投げ捨てると言う、
人類史上恐らく初めてであろう快挙を成し遂げた後に、オレとロビンは次なる島へと辿り着いた。

グランドライン二つ目の島と言う事で多少は身構えた。
リバースマウンテンでの経験もある。
グランドラインには何があるか分からない。
そう考えると自然と慎重にもなった。
しかしその警戒はいささか杞憂だったようだ。

島には街があった。
活気のある人々によって彩られた温かい陽気な町だ。
いくらグランドラインと言えども人々の日々の営みまでは変わらない。
そこにある環境に順応し日々を積み重ねていくのだ。
当たり前のことだがこうして確認すると結構安心するものだ。

オレ達の船は海賊旗は掲げていないので正面から島に上陸し、
そして停泊の手続きを済ませ、ロビンと共に街へと繰り出した。

一通りの散策を済ませ、かねてから考えていた通りにロビンを誘い喫茶店へと入る。
ロビンは「しょうがないわね」とでも言いたげな様子で了承してくれた。

店内は満員だった。
オレ達はカウンターテーブルに腰かけた。
店の雰囲気からか、うるさすぎず、静かすぎず、程良い賑わいを見せている。
店主の趣味か、アンティーク調の装飾品で飾られた店内はシックな感じの内装なのだが、窓の位置が絶妙で温かな光が店内を明るく照らしていた。
なかなか良い感じの店だった。

ここまでの航海は少々以上に疲れた。
グランドラインの海を甘く見ていた訳では無いが、予想以上の困難さだった。
次からの航海はここまで荒れる事は無いそうなのだがそれでも気は抜けない事には変わりない。


話は変わるが、個人的な見解として疲れた時は甘い物が一番だ。
オレもロビンも簡単な料理は出来るが、本格的なもの……それもお菓子などの甘味は作れない。
それにコーヒーに砂糖を入れようとすればロビンに止められる。

なのでとにかく、甘いものがたらふく食べたかった。
猛烈に身体が糖分を欲していた。
今なら店デザートを全て食べられそうだ。
ロビンに止められるから出来ないけど……
あぁ、でも全部は無理だわ。
メニューを見た所、大人の味とか言う、神への冒涜以外のなにものでもない、甘さ控えめ系のデザートがいくつかあった。

メニューを置き店員を呼ぶ。
オレはカフェオレと取り合えずイチゴのショーケーキ。
ロビンはブラックコーヒーをそれぞれ注文した。

運ばれて来たケーキを一口食べる。
クリームの甘さが絶妙でスポンジも柔らかい。
思わず頬が緩む。
ロビンがそんなオレを見て微笑んだ。
綺麗な、オルビアさんに似た大人の笑み。
なんだか無性に悔しい。
今まではオレがロビンを微笑ましく見守っていたのに、いつの間にか立場が逆転していた。
好き嫌いに関してもそうだ。
昔はロビンがニンジンを残すのを注意していたのに今ではオレの糖分を制限されている。
ロビンはいつ大人になったのだろうか?
長く隣にいたせいでいつの間かその成長を見逃していたのかもしれない。
気づけば変わっていたそんな感じだ。

そんな事をぼんやりと考えていた時にロビンがオレに向かって腕を伸ばした。
ロビンのしなやかな指はオレの口元についていたクリームをやさしく撫で取る。
そしてそのクリームをついた指を瑞瑞しい唇に近づけなめとった。


「………………」


……その動作にドキッとした。
ロビンはごく自然によどみなくスムーズに動作を終えた。
逆転なんて状況じゃなかった。完全にアドバンテージを握られた気分だ。


「どうしたの?」

「い、いや……な、何でも無い」


ここで正直になれないオレは子供だろうか?
まぁ、いいか。
うろたえるのもなんだか悔しい。
落ち着きを取り戻すためにもオレはカフェオレを口元に運んだ。



感じの良い店に、おいしいお菓子。
カウンターテーブルの隣には長年連れ添った幼なじみ。
日差しは温かいのに柔らかい。
周りのうるさすぎない喧騒も程良いBGMだ。

こうしてロビンと二人和むのはなかなか楽しい。
オレもロビンもそんなに口数は多い方ではない。
しかし言葉を交わさずともお互いの雰囲気は伝わる。
今はとても楽しかった。
出来ればずっと続いていてほしいとも思えるような時間だ。

だから……






「あらーラブラブねえい。あちし妬いちゃいそう」


隣に座わる謎のオカマを海に沈めたいと思うのは間違いじゃない筈だ。

なんか色々と台無しだった。














第十話 「オカマと何かの縁」













「取りあえず言いたいことが色々とあるが、まず言っておこう……帰れ」


コレは恐らくこの店にいる全員の総意だ。
真っ白な生地にこべり付いた異色のシミのように隣のオカマはこの空間において浮いていた。


「ぬわんですって!! いきなりその態度はひどいんじゃない!!」

「………そうだなさすがに言葉が悪かったな」

「そうよ。あやまんなさい」


一呼吸置いて言った。


「今すぐに店から出ていってください」

「さっきと一緒じゃないのよう!!」


何なんだこのオカマは?
せっかくロビンと二人で和んでたのを盛大にぶち壊しやがって。
万死に値するぞ 。


「楽しそうな人ね」


その評価は間違ってるぞロビン。
こいつの場合は間違いなく変な人だ。


「まぁーまぁーそんな硬いこと言わないでい、
 ここでこうして会ったのも何かの縁じゃない?」


そんな縁はいらん。


「だぁーかーら!! ここはあんた達を見込んで一つ頼みがあるのよう」


オカマは急に真面目な顔になると頭を下げた。


「お金貸して頂戴」

「貸すかバカやろう!!」


コイツは何しに来たんだ。


「いやーね、最近のマイブームのタコパフェを食べに来たんだけどお財布を落としたみたいで困てたのよん」

「なに金を借りる前提で話を進めてるんだ。一銭たりとも貸さねぇよ」

「マスター!! マスター!!! タコパ頂戴!! ターコパ!!」

「話聞けコラァ!!」


そして運ばれてくるタコパフェ。
甘いパフェと茹で上がったタコが絶妙にマッチしない明らかに地雷の一品だ。
熱いタコのせいで冷たいクリームが溶解液の様に溶けている。
これでいてお値段は据え置かれない。


「クレス……」


さすがに耐えかねたのかロビンがオレに向けて言った。


「オカマさんの代金はクレスのお小遣いから引いておくから」

「何でオカマの味方!?
 しかもお小遣い制なんか取ってたっけ!?」


糖分だけでなく財布の紐まで握られていたと言う新事実が判明した。

オカマはそんなオレに構うことなくタコパフェを食べようとする。


「まて、返品だ!!」


オカマのスプーンがタコパフェをつつく前にそれを取り上げた。


「なにすんじゃボケェ!!」


野太い声のオカマ。
ドスが効きまくっている。
全力で男声だ。


「それはこっちの台詞だ、勝手に話を進めやがって!!
 ……と言うか金を貸す了承をした覚えは無い!!」

「な、なによアンタ……あちしからこの至福の一時を奪おうっての!!?」

「いや、奪うと言うかお前の至福の一時は元から存在してないと思うぞ」

「何て事……すぐそこに手を伸ばせば幸せは掴めるって言うのに、
 その手を阻むなんて………拷問にも等しき苦痛だわ!!
 鬼!! 悪魔!! あんたそんなにあちしが憎いなら殺しなさい!! 今すぐあちしを殺しなさい!!!」


まるで舞台の中心にでもいるかのように声を張り上げ涙をざめざめと流した。
この瞬間スポットライトはオカマにのみ当たり、
悲しげなヴァイオリン演奏が流れて来そうだった。

オカマに対して他の客から同情的な視線が送られる。

なぜかオレが悪者みたいだった。


「クレス……オカマさんに食べさせてあげたら?」


支払いはオレの小遣いなんじないのか。

しかしそうでもしなければこの空気の収集がつきそうにない。


「ほらよ……」


オレはオカマにタコパフェをそっと差し出した。


「あ、あんた……」


希望を見いだしたオカマ。


「ありがとう!! あちしこの恩を忘れない!!
 あんたは恩人よ、お・ん・じ・んー!!」


そうしてタコパフェに食らいつくオカマ。

感動の瞬間だった。

昼下がりに行われた寸劇は新事実(お小遣い制)の発見とオカマの爽やかな涙(無用の長物)と共に幕 を下ろした。






「いやースワンスワン。
 ご馳走になっちゃたわねい。
 お代わり頼んでもいかしら?」

「……どんだけ厚かましいんだよ」


「ごーめーんなさいねい。
 この恩はいつか必ず返すわよう」


個人的には恩よりも金を返してほしい。
小遣いがいくらなのか気になる。


「ところでオカマさんは何をしている人なの?」

「あら、あなたいいとこに気がついたわねい」


オカマは急に立ち上がり、背中に羽織った純白のマントをはためかせた。
マントには筆で“オカマ道”と書かれている。
そしてクルクルとつま先で回った後、バレイのように片足で立ちポーズを決めた。


「あちしの名前はベンサム。今は一人“オカマ道”の武者修行中よーう!!」


軽快で珍妙なポーズなのに、
ベンサムは峻厳な頂へと臨む修行僧のように言った。


「………頭打ったのか?」

「だまんなさいよ!!」


いや、ツッコミ所多すぎるぞ。
オカマ道の武者修行って何だよ。
極めたらどうなるんだよ?
変身でもすんのか?


「まぁ、こう言ったってあんた達にはわかんないでょうねい。
 あちしは悪い海賊さんを懲らしめる賞金稼ぎみたいなもんよ。がーはっはっはっはっ!!!」

「へぇ……」


賞金稼ぎか……
しかし、こうも開放的なとこを見るとオレたちを狙っている訳では無さそうだ。
賞金稼ぎとのいざこざも最近はほとんどない。
やはり成長して手配書と容姿が変わったのが大きいのだろう。

オレはロビンと視線を交わす。
どうやらロビンも同じ意見らしい。


「そういうあんた達はドゥーなのよ?」

「オレ達は考古学者とその護衛だ」


ベンサムからの質問には適当に返した。
別に嘘をついた訳でもない。基本的にはそう言う肩書きだ。
それにわざわざ本当の事を言って面倒を起こす事もない。
ベンサムはそのことについて特に追求する事は無かった。



オレとロビンそれに何故かベンサムを加えて喫茶店での一時を過ごす。
いつの間にか打ち解けてしまっていた。
なかなかベンサムは面白い奴だ。
目立つのはあまり本意では無いがコイツを交えた会話はなかなか楽しい。
静かなのもいいが、騒がしいのもまたいいものだ。
それと驚いたことにベンサムは悪魔の実の能力者だったようだ。

“マネマネの実”
他人の容姿をコピーする能力。
本人と同じで変わった能力だ。
何でもメモリー機能まであるそうだ。

そして、能力を使うためには右手で顔に触れる必要がある。
余興と称して勢いよく差し出された右手を反射的に避けたために、オレたちの容姿はコピーはされずに済んだ。

コイツに悪意が無くとも明確な手がかりを残すわけにはいかなかった。
それはオレ達の為でもありベンサムの為でもあった。



時が過ぎ、
カフェオレも二杯目へと突入する。
マナー違反ぎりぎりの音量でベンサムが騒いでいたそんな時だった。


「見つけたぞオカマ!!」

「よくも兄貴をのしてくれたな!!」

「ただで済むと思うなよ!!!」


入り口の扉を乱暴に開け、海賊らしき人間が数人現れた。


「どちら様?……お友達?」

「友達にしては随分と荒っぽい遊びのお誘いだな」

「あらん?あんた達まだ懲りてなかったの?」

「どう言う関係だ?」

「こいつらがオイタしてたからちょ―っと懲らしめてやったのよう」


ベンサムが立ちあがり三人を睨めつける。
もともと大柄なおと……オカマだ。
その眼光は鋭く海賊達をすくませる。

三人はベンサムの視線に怯むも、
それぞれに武器を取り出しすとベンサムに襲いかかった。
一応は知り合いだ。
手助けしようかと思ったがどうやらその心配は無かったようだ。

ベンサムは海賊達よりも圧倒的に速くその身を動かし、


「アン!」「ドゥ!」「クラァ!!」


しなるような蹴りを海賊達に喰らわせた。
珍妙な外見とは裏腹に確かな威力を持った蹴りだ。
海賊達はそれぞれ吹き飛び開け放たれた入り口から外へと退場する。


「がっはっはっはっはっは!!! 口ほどにもないわねい!!」


ベンサムは脚を上げ、バレイのようなポーズをとる。
そしてまたクルクルと回った。


「へぇ、なかなか……」

「……やるな」


さすがはグランドラインだ。
オレ達がが今まで出会った人間の中でも上位に入る強さだった。


「ク、クソ!! なんて強さだ!! まるでルージュ様のようじゃないか!!」

「オカマか!! オカマだからか!!?」


海賊の内の二人がまだダメージの残る身体を起こす。
そして完全にのびた一人を抱えると背を向け後退する。


「覚えてろ貴様等!! 我らマールック海賊団に喧嘩を売った事を後悔しやがれ!!」

「運が悪かったな!! 今の目標は“仲間は大切に”だ!!」


なんだか訳のわからん事を言い残し、海賊達は逃げて言った。



「なぁ……海賊達“貴様等”って言わなかったか?」

「……言ってたわね」


べンサムの仲間とでも思われたのだろうか……
もしかしたら面倒な事になるかも知れないな。
追い打ちでもかけるか?
いや、無駄だろう。海賊ってのはなかなかしぶとい奴らが多い。


「あ、あんた達今すぐ逃げた方がいい!!」


喫茶店のマスターが焦ったような声を出した。


「マールック海賊団はこの一帯を縄張りにする海賊だ!!
 船長のマ―ルックの賞金額は五千七百万!! それも嫌な話ばかり聞く男だ!!
 悪い事は言わない早く遠くへ逃げた方がいい!!」


案の定厄介事だった。


「ロビン、ログは?」

「ダメ……この島のログがたまるのは大体一週間くらいらしいの。
 まだこの地を離れる事は出来ないわ」

「面倒だな……」


相手が海賊と言うので一応は安心だが、それでも厄介事はごめんだ。


「あんた達なーに弱気になってるのよう!!
 マールック? ナッシィンッ!! ナーッシィン!!
 のこのこやってきたら、あちしのオカマ拳法で返り討ちにしてやるわよーん!!
 気分が乗って来たわ!! あちし回る!!!」


オレ達の気を知らずに暢気に回りつづけるベンサム。
一発くらい殴っといてもいいだろうか?













────────島の近海


そこには一隻の海賊船があった。
ベンサムが倒した海賊達を部下に持つ海賊団、マールック海賊団の船だ。

その船の船長であるマールックは早い夕食を取っていた。
異様に長い手を億通そうに動かし料理を口に運んでいく。
長いのは腕だけでは無かった。身体の全身が異様に長い。
立ちあがれば常人の倍以上の身長がある細長い男だった。


「………もう食えん」


そう言って手に持ったホークとナイフをテーブルに置く。
テーブルの上には大量の料理が残されている。
普段から大食いな訳では無い、それは明らかに許容量の限界以上の量だ。


「うっぷ……今回のはダメだな。“今日から大食い”は止めよう」


コックを呼び出し皿を引かせる。
皿を下げるコックは明らかにこうなることを予想していたかのように呆れ顔だった。


「おい!! 明日からは普段通りの量に戻せ!! こんなに食えるかバカ野郎!!」


コックに怒りをぶつける。
そして、まだ明るい外を見ながら、それから……と続けた。


「“今日から早寝早起き”も止める。明日からはいつも通りの時間に出せ!!」


マールックは“まがった事”が大好きな人間だった。
信条、性格、目標、そして生活習慣に至るまで何かを曲げることが大好きだった。
だから、なんとなく己の行動目標を曲げ続けるのを日課としていた。
その一環として女装をしたこともある。だが飽きて直ぐに止めた。

マールックが無理に詰め込んだ腹を苦しげに抑え、
トイレに行くかどうかで迷っていた時に入り口の扉が開いた。


「あら船長。また曲げちゃったの?
 今回のは続かなそうだったけど三日坊主ともいかなかったわねぇ」


全身を筋肉で固めた男が現れる。
いたるところも筋肉で常人の三倍はありそうな太さがあった。
胸元からは胸毛も覗いている。
しかし野蛮な身体とは裏腹に、髪は長く伸ばし丁寧に撫でつけられている。
まつ毛も長く、顔全体的に化粧が施されていた。オカマだった。


「んあ、ルラージュか?相変わらずどきつい顔しやがって……。
 あ!! しまった、“今日から短所を褒める”を曲げちまった。これも今日で止めよう」

「んまぁ、相変わらず難儀な性分ね。それよりも部下からの報告は聞いたかしら?」

「何のことだ?」

「やっぱりね。今の目標は“仲間を大切に”だったじゃないの。しっかりしてよね。
 どうやら部下達が賞金稼ぎにやられたらしいのよ」

「ふん……ほっとけと言いたいとこだが、それは前回の目標だったな」

「たしか“面倒は自分で解決”だったわね。
 どうするの? 行くのかしら? 私は久々に楽しみたいわぁ」


ルラージュは分厚い唇で笑みを作る。
そして自分が暴れる姿を想像し腰をくねらせ身もだえる。


「グニャニャニャ!! 確かに最近刺激が足りないと思っていたとこだ!!」


マールックは両頬を釣り上げ、立ちあがり扉へと向かう。
久しぶりの街への襲撃。部下の一件など口実でしかない。
マ―ルックは己の欲望の矛先を決めた。
マ―ルックは残酷で残虐な人間だった。
何よりも“まがった事”が大好きで、倫理や道徳と言ったことが嫌いだった。
ゆえに曲げる。捻じ曲げる。
マ―ルックの顔には懸賞金五千七百万ベリーの金額に劣らぬ凶悪な表情があった。



「さて、今回の略奪目標はどうするか、
 ……街を焼き尽くすのも良いかもしれないな」

「うふふふ、船長のそう言う残酷なとこ好きよ」


静かに海賊船はその進路を島へと向けた。













あとがき
出しちゃいましたね。ボンちゃん。
いつか出そうと思っていました。
今回から中編ですね。頑張りたいです。



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