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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第七話 「羅針盤と父の足跡」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/27 02:03
「……て、…レス……て」


緩やかなまどろみ。
船は穏やかな波によって心地よく揺れ、
柔らかな日差しはクレスを更なる眠りへと誘う。


「…レス、起きて」


身体を揺らされた。
それは優しくも確かな安らぎへの反抗だ。
断固抵抗しなくては成らない……
クレスは身じろきと共にその手を振りほどく。


「クレス、起きて」


声がはっきりと耳に入る。
今、自分が成すべき事は分かってる。
しかしそれには今この瞬間の安らぎを手放さなければ成らないのだ。

それにはわずかだが確かに抵抗があった。


「……もう、仕方ないわね」


動作が止んだ。
束の間の平和。
再び訪れる幸福の一時。
だが、クレスの中の冷静な部分が警鐘を鳴らす。

思い出せ、
今動かなければ痛い目にあうと……。

しかし、クレスはその警告を無視し再び深い安らぎに向かって潜った。


「──六輪咲き」


突然襲う衝撃。
どこからともなく咲いた腕はクレスを持ち上げ投げ飛ばす。


「ぐぉ!!」


目覚ましには痛すぎる一撃。
床から伝わる冷たい感触。
床に落とされ完全に眠気が吹き飛んだ。
毎度の事だが……もう少しやさしくして欲しいと思うのはわがままだろうか?
寝ぐせのついた髪をボリボリと掻きながらクレスはロビンに抗議する。


「……おはよう、ロビン。ひどい朝だな……」

「おはよう、クレス。良い朝ね。
 ひどい顔よ、顔でも洗ってきたら?」

「………………」














第七話  「羅針盤と父の足跡」














「賑やかな町だな」

「エイティングタウン……“西の海”から“偉大なる航路”へのぞむ最寄りの島。
 “西の海”出身の海賊達が“偉大なる航路”へ向かう際には必ず立ち寄る島……」


昨日、一晩を過ごした海域から、
穏やかな南東の風を受け二時間程波に揺られてクレスとロビンは目的地へと辿り着いた。
海は緩やかで、空も青々と晴れ渡り、
波に揺られながらのんびりとやって来た。


二人旅は久しぶりだった。
海を渡る時は海賊船に潜り込む事が多く。
こうして二人船に乗って波に揺られるのは遺跡に向かったりする時ぐらいだった。
クレスもロビンも航海に関しては専門家ではなかったが、
海を渡るために必要な知識は持っている。


クレスはロビンと並び町を歩く。
活気のある声があちこちから聞こえる。
港から中心街に続く道には露天のテントが数多く立てられ、道行く人たちの目を引き付ける。
やはり人通りが多いためか、それにつられるかのように町は賑わいを見せていた。


「これからどうする?」

「そうね……まずは必要な物をそろえないと」

「水と食料、生活用品、それに………ログポースだっけか?」

「そう、グランドラインを渡るには絶対に必要なものよ」


記録指針───ログポース。
“偉大なる航路”を航海する上で必ず必要となる特殊なコンパスである。
球体上に浮かぶ指針は前後左右上下のあらゆる方角を示すが、
一般的なコンパスとは異なりログポースに字盤は無く方位を示さない。
滞在地の記録(ログ)を貯める事によって次の目的地のみを指すと言う代物だ。


「でも、それを扱ってるとこなんてあんのか?
 今まで、そんな話なんて聞いた事なんて無いぞ」


クレスはその存在については半信半疑だった。
しかし、その存在はグランドラインに関する文献においては必ずと言っていいほどに記術されている。
これからロビンに付き添い“歴史の本文”を求めてグランドラインを旅するには必要不可欠なモノなのだそうだ。


「分からない……でも、それが無ければグランドラインの航海は難しいと思うの
 グランドラインに近いこの島なら扱ってるお店もあるかも知れないわ……」

「まぁ、探すだけ探せって話か
 見つかったそれで良し。悩むのは見つからなかった時でいいか」

「そうね、とりあえずは町を見て回りましょ」



その後は、クレスとロビンは二人ぶらぶらと無計画に町を見て回った。
未知の土地を歩くのは楽しい。
賑やかな町の様子を横目にしながら、
途中時々立ち止まっては気になった店に入ったり、
小腹がすいたら出店で食い物を買う。
クレスはこう言った大した意味のない散策の時間が好きだった。


「あら」


そんな中、ロビンが町の一角に目を向けた。
クレスは一瞬顔をしかめた後、
しょうがないか……、とため息をつきロビンの後を追った。
そこには品のいい店構えの洋服店があった。

扉をくぐり店内に入る。
木造の店内は清潔で他の客も何人か入っていて賑やかだった。
ロビンは早速商品を手にとって選定する。
世の中の女性の例に漏れることなくロビンも買い物が好きだった。
別に商品を買うだけでは無い。
並べられた服を見て、触って、気にいったなら試着し、欲しいなら購入する。
そういった過程が楽しいのだろう。
ロビンの楽しそうな姿を見るのは好きだったが、
服選びに付き合わされるのは勘弁してほしかった。
一端、服を選定し終わった後にロビンはクレスを試着室の前へと呼んだ。
感想が聞きたいらしい。
クレスは頭を抱えながらも渋々と従った。


「クレス、これなんかどう?」


ロビンが試着室から出てきた。
うっ、ヤバい……
クレスは一瞬視線をどこに向けようか迷った。
健康的ながらもどこか妖しさを帯びたロビンの肌が視界に入った。
大きな果実のような二つの膨らみに、形のいい臍、長くスラッと伸びた細い脚。

ロビンが現在着ているのは水着のように身体の各部の露出激しい服だった。


「似合ってるけど、少し肌を出しすぎてるんじゃないのか……」


内心の動揺を悟られぬように努めて平静で言った。
正直、肌の露出は控えて欲しい。
ロビンに向けて下卑た視線を向ける人間がいたら海に沈めたくなる。


「……クレスはこういうの嫌い?」


ロビンはまるで誘惑するかのようにその瑞瑞しい唇を震わせた。


大好きです!!と思わず叫びそうになったが、全力で押し込める。


「……あほ」

「ふふっ……残念ね」


コケティッシュな笑みを浮かべてロビンは更衣室の扉を閉めた。
くそ……絶対からかって遊んでやがる。



時計は確実にその時を刻んでいく。
ロビンによるからかいを潜り抜けたクレスは、
手早く済んだ自分の服を選びを終え、店内に備え付けられた椅子に座ってロビンを待っていた。
隣には自分と同じように連れの女性を待つ男性がいる。
妙な連帯感が生まれた気がした。


(……これが男の甲斐性と言う奴か?)


クレスは幼いころにシルファーとロビンに服店でよく待たされたのを思い出した。


(あの頃は、ロビンがよく母さんに着せ替え人形にされてたっけ……)


楽しかった思い出だ。
過去のことは風化していくものだ。
しかし、母との思い出は不思議なことに鮮明に思い出せた。


「なつかしいな……」


クレスは口元を緩ませて、やっとやって来たロビンを見た。



予想通り洋服店で時間を消費したため、昼過ぎとなった。

散策をとりあえず切り上げクレスとロビンは喫茶店で休憩を取っていた。
水や食料、それに一通りの生活用品はそろえた。


「手がかりは無しか」

「そうみたいね……」


だが、肝心のログポ―スが見つかっていない。
町の人間に聞いてみても答えは思わしく無かった。
行き交う人々からもそのような話をしている人間はいなかった。
やはり、ログポースのことは一般的では無いようだ。


「どうする、一端船に戻るか?」

「そうね、一度出直しましょう」


どうやら、裏に潜らなければならないようだ。














日も沈み夜となった。
クレスとロビンは一度船に戻り、荷物を置いてからもう一度町に出た。
船に置いた荷物にはクレスが狩り用の仕掛けを仕掛けた。
愚かにも手を出した人間には手痛い教訓となるだろう。



明かりの灯る町を人の流れに乗って進み、
クレスとロビンは溶け込むように裏路地へと出た。
裏路地は表の明かるい通りとは違い暗く薄暗い、
気の弱い人間なら一瞬で不安になるような雰囲気だった。
クレスとロビンの二人はそこを特に気にした様もなく進む。
そして、とある酒場の前で立ち止まった。
どこか寂れたような雰囲気の店だった。
しかし、扉の隙間からは眩しい光が漏れ、そこからは数多くの笑い声や騒ぎ声が聞こえた。
昼間の散策途中で見つけた、非合法の酒場。
おそらく海賊御用達の酒場だ。
クレスはロビンと二人その中へと入った。

店内は賑やかと言うには少々荒っぽすぎるような喧騒に満ちていた。


「ぎゃははははは」

「それは、オレの酒だ!!!」

「うるせぇ!!黙れ!!」

「おい!!こっちに酒の追加だ!!早く持ってこい!!」

「こっちの肉が先だ早くしろ!!」

「んだとてめぇ!!殺されたいのか!!」


あちこちで酒が酌み交わされ、笑い声と共にそれを飲み干していく。
中には取っ組み合う人間もいたが、それすらも周囲の一部として溶け込んでいた。


「賑やかね」

「……うるさいだけだろ」


クレスとロビンは船の上での打ち合わせ通り、互いに別れて情報の調査を始めた。
話を聞きだすには男女二人より、個々の方がやりやすいし、効率の面でも優れている。
それに、下手に二人で行動すると思わぬ因縁を吹っ掛けられたりするものだ。

クレスもロビンも生き抜く為の術として、情報収集は必要不可欠なものだった。
どちらに逃げればいいのか?
誰が正しいのか?
そもそもこの情報は正しいのか?
広い海を渡り逃げ続けるためには情報は欠かせない。
長い逃亡生活において自然とその技術は身に付いた。

ある程度、情報が集まったとこでクレスはロビンと合流した。
ロビンの方へと近づくと、ロビンの隣にはこれでもかと言うくらいに酔っぱらった男がいた。
時々うなされるようにうめき声を出す。
おそらく、酔わせて聞き出したのだろう。
どう考えても限界以上飲ませれている気がするが、まぁ死なないだろう。
「やりすぎたわ」と至極真面目な顔で言うロビンにクレスは僅かに頬をひきつらせた。
そして昔の無邪気な姿を思い出し心で泣いた。

互いに得た情報を照らし合わせ検証する。

結論から言うとログポースは存在する。
中には知らない者もいたが、その存在は確かだった。
やはりその存在はグランドラインでは無い地域では一般的では無いらしい。
そして表だって扱う店は政府や海軍の直轄となっているようだ。
考えれば当然だろう。
大海賊時代の最中、星の数といる海賊達はグランドラインを目指す。
ならば管制令が敷かれていてもおかしくは無い。


「さて、それじゃどうするか……いっそのこと誰かから奪うか?」

「その必要はないわ、さっきそこの人から面白いことを聞いたの」


ロビンは酔いつぶれた男を指して言った。


「どうやら、グランドラインからの横流し品を扱ってる店があるそうなの……非合法のね」






酒場を出てさらに歩く。
進んで行く方向はどんどん明かりが消えていき、人通りも少ない。
今は夜だったがそれでもこの静寂は寂しすぎた。


「店に行くのはいいが、もう夜だぞ。開いてんのか?」

「気まぐれな店主みたいね。
 グランドラインから帰還した元海賊らしいわ。
 気が向いた時に店を開ける、今日は夕方くらいから開けてたみたい」

「そりゃまた適当な……ほとんど道楽目的か、暢気ななもんだな」

「あら、あそこみたいよ」


ロビンの指さす方向には暗い町はずれの中にひっそりとたたずむ小さな店があった。
明かりは点いているようで店は開いているらしい。
どう考えても胡散臭い店だったが、
ロビンからの情報だ、可能性は高い。
クレスはいぶかしみながらも扉を開けた。

店内は申し分程度の明かりがともった埃っぽい空間だった。
異種様々な、見る人間によればガラクタにも映る商品が適当に並べられている。
来客を知らせる入り口のベルが鳴っても店主は顔を出さない。
そもそも、本当にココが店であるかも疑わしい。

クレスは無造作に棚に並べられた商品の一つを手に取った。
それは、大きな手のひらサイズの貝殻だった。


「なんだこりゃ?」


クレスはその貝を適当に玩ぶ。
そしてその裏側にボタンのような突起があった。
クレスは何ともなしに好奇心に駆られそれを押した。


「のあ!!」


突如吹き付ける強烈な風。
クレスは思わずその貝を取り落とす。
床に落ちようとしたその瞬間、ロビンが能力でその貝を掴んだ。


「なにしてるの?」

「すまん……つい」


ロビンは突如風を吹き放った貝を拾う。
そしてしばらく観察した後に棚に戻した。


「風を吹く貝……どこかで読んだような気が……」


ロビンが記憶思い起こそうとした時。
店の奥からギシギシと音をたて男がやって来た。


「勝手に触ってくれるな」


奥から酔っぱらっているのか顔を真っ赤にした男が現れた。
男はふらふらと店内を歩き、通常よりも時間をかけロビンの前までやって来た。


「こら、ふらふら動くな辿りつけんだろうが」

「……お前が酔っぱらってるだけだろ」


クレスの呆きれた声。
しかし、男はクレスの言葉をさして気にした様子もなく、
ふらふらと動き先ほどの貝を手に取った。


「たしか……これは、ダイヤルとか言うもんだ。詳しくは……知らん」


男はロビンに向けて投げやりな説明をおこなう。

次に男は目線をクレスの方に向けた。
男としては視界に入った程度だった筈だ。
クレスも何も思わなかった。
しかし男はクレスの姿を見た瞬間にその眼を見開いた。
クレスと目が合う。
赤らんだ顔がだんだんと蒼白に変わっていく。
男は何故かクレスの姿に恐怖を抱いていた。
そして男はクレスに向けて腰に下げていた銃を突きつける。


「!」


突然のことにクレスは驚く。
どう言うことかと考える暇もなく。
反射的に身体が動いた。
クレスは一瞬で男の銃を蹴り飛ばし、男を床へと押し倒した。
一瞬での出来事の後に抑えられた男は震える声で叫んだ。


「なんで貴様が生きてんだよ……
 海軍本部大佐“亡霊”エル・タイラーっ!!!」


思わぬ父の名前にクレスは動揺した。
しかし、その動揺を悟られぬことなく男を拘束し続けた。






その後に、ロビンの手よって勘違いは解かれた。
明かりの乏しい店内では分からなかったが姿は似ていたとしても、
クレスの髪と瞳の色は母親譲りの黒色だ。


「すまん……気が動転した」

「いや、いいって……こちらは怪我が無かった」


男がもしロビンの方に銃を向けていたら、腕の一本や二本は折っていたかもしれない。
そう思ったが、口には出さなかった。


「それよりも、さっきの話聞かせてくれないかしら?
 クレスが襲われた理由くらい知りたいわ」


ロビンがクレスを気遣い男に問いかける。
それはクレスが気になっている、父のことだ……
男はあからさまに嫌な顔をしたが、
銃口を向けた事についての謝罪のつもりかゆっくりと語り出した。


「……オレはもともと海賊だった。
 この辺の海じゃそれなりに名の売れた海賊団の航海士だったよ。
 グランドラインへと渡り、数年の航海を経てこの海に帰って来た……」


名前こそ出さなかったが、
それなりに腕に自信のある海賊団だったのだろう。
そうでなくては、グランドラインに赴き生きて帰って来れるものではない。


「グランドライン……あそこは面白いとこだ。
 何もかもがでたらめで常識を疑う程に無茶苦茶だ。
 あまたの未知と冒険にあふれた海賊達の楽園。
 オレ達は一端故郷の海に帰った後にもう一度あの海に行くことを望んだ」


男は懐かしむように語った。
海賊に墓場と呼ばれる場所も男達にとっては楽園だったのだろう。
男は年老いた今でさえそこに行く事を望んでいるように思えた。


「しかし、それは叶わなかった」


男が苦虫をかみつぶしたように顔を歪める。
そして、憎しみさえ込めて言葉を紡いだ。


「もう一度グランドラインへと向かうために意気揚々と、
 この町に乗り込んだオレ達は、たった一人の男に壊滅させられた……」

「それが……“亡霊”」


ロビンはあえて異名の方を口にした。


「あぁ……今でも夢に見るよ……
 奴は突然現れた。何の前触れも無く唐突に。
 気づけば船長が倒されていた……
 仲間が驚いて武器を向けた、だが……そこに姿はなく、
 気づけば別の仲間が倒された。正直訳がわかんなかったよ。
 恐怖で脚が竦み逃げのびるだけで精いっぱいだった……」


男は酒をビンごと口に運んだ。
それは臆病だった自分を責めるようだった。


「後にオレ達を襲った奴が、新たにここら辺を縄張りとする事になった海兵だと知った。
 “亡霊”の野郎が来てからこの街もすっかりとおとなしくなったもんだ……
 名のある奴らは海軍に捕捉された瞬間に“亡霊”に潰された」

「強かったんだな……そいつ」

「バカ野郎!!!弱い奴なんかにオレらが負けるか!!
 ハッキリ言って異常だったよ、グランドラインでもあんな奴はそういなかった」


男はまた酒をビンごと口に運ぶ
そして、酔いが再び回ったのか虚ろな目で呟いた。


「だが、奴も死んだ。革命軍とやらと戦って負けたらしい。
 奴が死んでからこの街も以前の活気を取り戻したよ……」


そして男は酒のビンに蓋をつけた。
話は終わりらしい。


「……悪かったな。話をさせて」

「気にするなら聞くんじゃねぇよ!!」

「そうだな」


クレスは軽く笑って答えた。


「まったく……。
 お前らもここに来たってことはグランドラインに向かうのか?」

「そのつもりだ」

「止めとけ、お前ら程度ならすぐに死ぬ」

「そんなの行ってみなければわかんねぇだろ?」


クレスは不敵に笑った。
ロビンもクレスにつられて微笑む。
男はそんな二人を酔いのまわった顔で見た後に、
棚をごそごそと漁り、クレスに向かい腕時計のようなものを放り投げた。


「お前等が欲しいのはそれだろ」


手の中にはクレスとロビンが探していた一品、
記録指針──ログポースがあった。


「おいくらかしら?」

「金はいらん。
 あの野郎に似た人間から貰った金で酒を飲んでもちっとも嬉しくないわ」

「それならありがたく頂戴するよ」

「あぁ、もってけ。
 その代わり二度と俺の前に顔を見せるな」


男はうっとおしそうに手を振る。
とっとと出て行けと言うことらしい。

クレスは去り際に疑問に思っていたことを聞いた。


「あんた、グランドラインにまた行きたいのか?」


グランドラインからの横流しだと言う品々を取り扱う店をグランドライン最寄りの島で営む元海賊の男。
やはり、未練があるのだろうか?


「アホ抜かせ、あんな恐ろしいとこに、一人で向かってなにが楽しいんだ」


クレスとロビンはグランドラインを楽園と呼んだ男の答えに、声を出して笑った。














翌朝、二人は船を出した。
始めは穏やかだった海は次第に荒れ、現在は嵐の中にあった。
クレスとロビンを乗せた船は嵐の中をグランドラインへと向けて進む。

この天候はこの先の航海の厳しさを暗示するかのように激しさを増した。
そんな嵐の中でクレスとロビンは甲板の中心にに一つの樽を置いた。
二人はその上に片脚を乗せ宣誓する。
それは、偉大なる航路に船を浮かべる為の進水式だった。


「世界の真実、“真の歴史の本文”を求めて」


クレスはロビンを見た。
いつの間にか守るだけでは無い、互いに支え合える存在となった幼なじみを


「お前を守る。母さんとの約束を果たすため、そしてお前と世界を旅するために」


ロビンはクレスを見た。
昔から変わらないその背中を追って、やっと隣に立てた幼なじみを


吹きすさぶ風の中クレスとロビンは脚を振り上げ、
そして一気に振り下ろす。



「「───行くぞ!!!偉大なる航路!!!」」











あとがき

次でグランドラインへと入ります。
今回は謎の男タイラーについて今回は少し触れましたね。

大変恐縮なのですが今回は試作的に文章の書き方を変えました。
クレス視点だったのを三人称もどきに変えました。
よろしければ感想をいただければ幸いです。



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