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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/24 09:02
 ロビンはいち早く仕事を終え、昨日と同じ酒場でクレスを待っていた。
 今朝のクレスの様子を思い出す。
 隠しているようだったが、何かに後悔するような、そんな表情だった。
 ロビンが嫌いな表情の一つだ。

 クレスはバカではない。
 自分の起こす行動がどんな結果を生むかは予測できる。
 だが、クレスはその予測がどんなに酷い結果を生もうとも、必要だと感じたならば、迷わずに行える。

 大方昨日の一件も何か、自分には知って欲しくない事だったのかもしれない……

 隠しごとをされるのはなんだか不満だった。
 もう、守られているだけの弱い自分では無い。
 無理を言って、クレスに戦う手段も教えてもらったし、生き抜く為の術も覚えた。
 もう、クレスの後ろでなくて隣を歩ける筈なのだ。
 だけど、それでもクレスは自分を悪意から遠ざけようとする。
 未だに二人分の泥をかぶろうと考え続けている。
 それが、たまらなく不満だった。


(そう言えば、昨日の男性……)


 ロビンは昨日の一件を思い出す。
 クレスに突然声をかけてきた男。
 クレスも気づいていたようだったが、どう考えても一般人では無い。
 海賊か賞金稼ぎ、そんなとこだろう……。

 直線的だった男の性格を考えると疑問に思う事がいくつかあった。

 どこで悟られたかは知らないが、おそらく自分達の存在に気づいていた。
 しかし、何故かそれを確認しようとは思って無かった。
 どうしてあんな喧嘩を吹っ掛ける形で絡んで来たのか。
 おそらく、クレスがむきにならなければ戦いには成らなかった気がする。
 ……何故か酒の飲み比べになってしまったが。
 それはともかく、何故あんなに回りくどい事をおこなったのか?
 男の性格なら、いきなり武器を構えて突き付けてもおかしくは無い筈だ。

 そして酒場での言葉がどうしても引っかかる。
 

(どうして、クレスに感情をさらけ出したのかしら……)


 見ず知らずの人間が見れば、それは糾弾に聞こえたのかもしれない。
 しかし男の口調の端々には失望ようなニュアンスを感じたのだ。


(分からない……やっぱり様子を見るのが先決かしら……)


 黙考しながらロビンはグラスを傾ける。
 苦い酒の味が口の中に広がった。

 その時、店の外が騒がしくなった。
 店の中に一人の男が入って来て叫んだ。


「カジノで喧嘩だ!! 賞金稼ぎの“串刺し”が暴れてやがる!!!」














第六話 「意地と残酷な甘さ」













 ロビンは走る。
 カジノまではそう遠くない。

 カジノでの喧嘩。

 間違いなくそこにいるのはクレスの筈だった。
 そして相手は……おそらく昨日の男だ。

 ロビンは自分の見通しの悪さを呪った。

 様子を見るつもりだったが、まさか昨日の今日だとは思わなかった。
 男の意図は分からない。
 しかし、ただ自分達を打ち取りに来た筈では無いと思っていた。
 もう一度くらい、何らかの形での接触があると思っていたが、予測とは大きく外れてしまった。

 やがてロビンはカジノへとたどり着く。
 辺りは巻き込まれる事を恐れてか閑散としていた。

 ロビンが扉を開けカジノへと入ろうとした瞬間。


「!!」


 何かがロビンに向かって飛来する。、
 とっさにそれをロビンは悪魔の実の能力で受け止めた。
 腕に負荷がかかり痛む。
 現れた腕は全てロビンの腕なのだ。


「……すまん、助かった」


 飛来したのは、身体中に傷を作ったクレスだった。
 傷だらけの姿を見てロビンは驚いた。
 クレスは強い。
 少なくとも相当の実力者で無い限りは傷一つすらつけられない筈なのだ。


「クレス!!いったい何が!?」

「悪いが……今は後だ」


 クレスは鋭い視線を扉の向こうへと向けた。


「ははっ……ねぇちゃんまで来たか。
 様子見のつもりだったが、
 思ったより時間を食っちまったなようだな……」


 クレスが飛ばされた向うから、同じく満身創痍の男が現れる。
 予測通り昨日の男だった。


「っ!!」


 ロビンは男に向かって攻撃を仕掛けようとした。
 だが、何故かクレスはそれを制した。


「これはオレの戦いだ……」

「そんな事言ってる場合じゃ無いでしょう!!?」


 だが、クレスはロビンを無視するように立ち上がった。


「悪いな、ねぇちゃん……そいつの言うことを聞いてはくれないか……
 軽い気持ちで手を出したが、オレもこいつとはケリをつけたいと思ってた」

「……ロビンには手を出すなよ」

「……分かってるって。もともとその気は無かった」


 互いに今すぐにでも倒れそうだった。
 しかし、互いに意地だけで立っている。
 ロビンはそんな気がした。


「……いくぞ」

「来いや……」


 クレスは高速で男に接近し、男はそれを迎え撃った。













 少し時を遡る。

 クレスはハリスとカジノの内部で戦闘をおこなっていた。


「鉄塊“砕”!!」

「獲串!!」


 クレスの硬化させた全身が砲弾のようにハリスに迫り、ハリスはそれを手に持った鉄串で迎撃する。
 互いに一歩も引かない、命を削るような激しい攻防だった。


「いいねぇ!!強ぇじゃねぇか!!」

「ありがとよ!!でも、お前に言われてもうれしくねえよ!!」


 ハリスは攻撃の度にその表情を無邪気に歪める。
 そんなハリスにクレスは表情を忌々しげに歪めた。


(この……戦闘狂が……)


 内心で醜く吐き捨てる。
 恐ろしい程に厄介な相手だった。
 認めたくはないが実力は拮抗していた。
 そして厄介なことに傷を負っても怯むことなく寧ろ向かってくる。
 そして、攻撃の一撃一撃が正確で威力が高い。
 槍と言う武器の性質上威力が集約されるため、攻撃を受けるにしても常に全力の“鉄塊”を使わなければならないのだ。


「抹葉串!!」

「紙絵!!」


 雨のような連撃。
 放たれる突きの全てが正確無比でクレスの“紙絵”の上から更に攻撃を合わせてくる。


「くっ!!」

「貰った!!───二連棍!!」


 逃げ場は無くクレスは追い込まれ、苦肉の策として防御を選択する。


「鉄塊“剛”」


 凶悪な威力を秘めた一撃を受け止める。
 全身に響く衝撃。
 何とか持ちこたえる。


(このまま、何とか持ってくれ……!!)


 だが、攻撃は一度で終わりでは無い。
 先ほどと同等の威力を持った攻撃がクレスに迫った。

 メキッ、と言う嫌な音がした。
 ハリスの一撃は“鉄塊”を砕きクレスの身体を貫いた。

 吹き飛び、クレスはカジノのテーブルに突っ込んだ。
 パラパラとテーブルの破片が舞った。


「なるほど……見つけたぜお前の“弱点”。いや、“性質”とでも言った方が正しいか」


 ハリスはクレスに向かって口元を釣り上げた。


「お前、あの避ける技“紙絵”とか言ったか? あれ苦手だろ?
 それに“鉄塊”とやらにも面白い特徴があったな」


 ハリスは手に持った鉄串を投擲した。
 弾丸のような速度で迫るそれをクレスは“鉄塊”で防御する。
 鉄串はクレスの鋼鉄化した身体に阻まれ弾かれる。
 次の瞬間、ハリスが目の前に現れた。
 ハリスは投擲と同時にクレスに向かって高速で迫ったのだ。


「猛串!!」


 ハリスの攻撃。
 以前のやり取りでクレスが“鉄塊”で防いだ技だ。
 いかなる威力の攻撃だとしても、クレスの “鉄塊” を破るのは難しい。
 鉄串はクレスに直撃し─────────



──────クレスを吹き飛ばした。



 二ヤリ、と確信するようにハリスが笑った。


「やっぱり、その技もずっと同じ硬度を保っていられる訳では無いようだな。
 最大効果が出せるのはインパクトの瞬間だけってか?
 そして、同じ効果を出すには短いがタイムラグがある。
 それに、“剃”とか言う移動技もそうだな……迂回をする時、随分と刻ん出たじゃねェか。
 恐ろしく速いが直線移動しか出来ないんじゃねぇか?」


 クレスからの返事は無い。
 そしてそれが彼の考えが間違いでは無いのとの証明だった。


「随分とピーキーな性質の体技だな、オイ。
 オレが前に見た物とは起源は同じでもほとんど別物だな。
 さしずめ“一撃必殺の短期決戦型”とでも言ったとこか。
 おもしれぇ鍛え方をしたじゃねぇか」






 クレスが“六式”の訓練を受けたのは約三年間。それも幼少の時だ。
 基礎こそは習得したものの、そこから育まれる筈の錬度と言うのは全て逃亡生活の中での自己流だった。

 故に本家とは異なる歪んだ成長を遂げたのかもしれない。

 逃亡生活の中で求められたのは常に一瞬で相手を屠る為の力だ。
 そのため、クレスは一撃における“瞬発力”や“爆発力”に関しては群を抜いていた。
 一瞬で最大の効果を出せる事に関してはクレスは優れていた。
 しかし、その代償としての体技の“持久力”は失われていったのだ。

 また、“紙絵”が苦手なのには、一人での訓練しか出来なかったと言うのがある。
 そして、実戦においても多様する訳にはいかなかった。

 中には“紙絵”で避ける事の出来る攻撃もあった。
 しかし、クレスは避ける訳にはいかなかったのだ。
 彼が避ければ攻撃は全て後ろへと流れる。
 クレスの後ろには守るべき人がいた。
 彼女には敵の攻撃から身を隠す壁が必要だった。




 クレスは是が非でもロビンだけは傷つける訳にはいかなかった。




「それが……どうした」


 クレスは立ちあがった。
 倒れる訳にはいかない、そして倒れたことは無かった。
 彼が倒れ、捕まれば全てが終わってしまうのだ。

 クレス“は剃”でハリスへと迫った。
 二度も攻撃を受けたとは思えない程、鋭く地面を削り取るかのようなスピードだった。
 あまりのスピードにハリスはその進行を阻むように鉄串を突き出した。
 だが、それがクレスに当たる事は無い。
 クレスは突き出された鉄串を上空に駆け上がり避けた。


「指銃“剛砲”」


 クレスの拳がハリスを捕らえた。
 衝撃がハリスを揺らす。
 鉄串での防御は間に合わずハリスは吹き飛ばされた。


「こうしてオレの拳はお前に届く。
 そんな事が分かった程度でオレがお前に屈する要素には成りえない」


 ハリスの吹き飛ばされた方向から轟音が響く。
 ハリスが吹き飛ばされた際に巻き込んだ、備品の数々を吹き飛ばした。


「そりゃ失礼した。
 最後に立っていた方が勝者。
 オレとしたことが、そんなことも忘れてしまっていたとわな」


 額から血を流しながらも、ハリスは獰猛な笑みを浮かべた。
 二人は再び対峙する。
 互いに浅く無い傷をおってなお強い眼光で相手を睨みつける。


「ブっ倒す前に聞いとくわ……
 どうして昨日オレに声をかけた?」

「あ?」

「お前なら直接武器を向けて来ても疑問は無い。
 オレが賞金首だと感じた瞬間に行動を起こしたとしてもおかしくは無い。
 だが、それをしなかった。
 お前はオレ達を打ち取るつもりはもとから無かった。違うか?」

「まぁ……な、口惜しいがそのつもりはもともと無かった」

「さしずめ、興味が湧いた程度か?」

「やるじゃねぇか、
 ここまで来て口にするのは興ざめもいいとこだが。
 お前らを見つけたのはほんの偶然だった。
 それに、手を出しても、殺すつもりは無かったぜ。
 まぁ、死んだらそれはそれだったがな」

「ふざけた野郎だ。まぁ、そんな事はいい……
 で……どうして昨日オレを糾弾した?」

「自分の心に聞いてみな」

「……“弱虫野郎”“甘い奴”……お前からしたら失望だったのか?」

「まぁ……正解だ。
 詳しい事は言えねぇがお前らのことは知ってた。
 オレはお前に興味が湧いた。
 打ち倒してぇと思える程の衝動にも駆られたが我慢してた。
 だが、昨日の一件には失望したぜ。お前は力を振るう事を恐れたんだ」

「それで我慢出来なくなって接触したか……。
 昨日のこと……オレがあのおっさんを告発したことに関して知ってるらしいな」

「あぁ……知ってるぜ。
 お前を見つけた時からオレもあのカジノに時々通ってた。
 お前とあのおっさんが時折話していたのも聞いてたぜ」


 ハリスは額から流れてきた血を舐めとる。
 その瞳は怒りで揺らいでいた。


「知り合いだったんだろ? それも、そこそこ仲の良い」

「……意外と優しいんだな」


 クレスがロビンには話さなかったことだ。
 告発した男とクレスは顔見知りだったのだ。
 男の方から近づいてきた。
 そしてうちとけ共に酒を飲んだこともあった。
 今となってはその行動には邪心を疑う事が出来る。
 しかし、男とはクレスが切らない限り確かなつながりがあった。


「自分から仕掛けておいて、後悔を抱いた。
 隠してるつもりだったようだが、ねぇちゃんの押しに負けて一部を話してたよな。
 怒りでつい口が出てしまったぜ。オレの我慢の限界だった。
 力を振るったなら後悔なんかするんじゃねぇよ!!!
 そうじゃねぇだろ!! お前はもっと傲慢でいるべきだった!!」


 確かに失望だったのだろう。
 “強さ” に拘るハリスが強烈な興味を抱いた人物は、強すぎる力の振るい方も満足に分からない、知り合いを簡単に売れる心の弱い屑だった。

 そんなはずは無い……。
 お前はそんなくだらない人間のの筈が無い……!!

 昨日、今日との行動はそんなクレスを否定するためのものだった。







「勘違いしてるようだから言っとくぞ……」







それは仄暗い不気味な声だった。
ハリスをもってしても悪寒を抱かせる程の寒い声だった。


「オレは甘い……そんな事は知ってる。呆れるほどに弱い腐った心根だよ。
 だけどなこれだけは言っとくぞ、たとえ相手が女だろうが、子供だろうが、老人だろうが、聖人君子だろうが、神様だろうが」


クレスは一際強い口調で言った。


「─────力を振るうこと自体には何の躊躇いも無い」


 ハリスの言葉は正しかった。
 クレスは己の行動に後悔を抱いた。
 あの男を助けようと思えば、助けられた。
 しかし、しなかった。
 悪いのはイカサマをした男だ。
 あの場面では、自分の取るべき行動が分かっていた。
 振るうべきだから振るったのだ。
 ただ、それだけだった。


 それはクレスの中にある絶対のルール。
 師と仰いだ、リベルからの教え。


 ──────力は振るうべき時に振るうもの。


 後悔はする。
 だが、一切の躊躇いは無い。
 そのルールに従い、今までの十年間の人生を歩んで来たのだ。


「じゃあ、お前はあの男はああなって当然だったと思ったのか?」
 
「分からない、少なくとも……疑問は抱いた。
 だが、オレはそれを為した。手を下した事には躊躇いは無い」

「なるほどね……」


 ハリスはゆっくりと目を細めた。
 クレスは己の力の振るい方をわきまえていたのだ。
 それはよく考えれば歪んだ思想だった。
 だが、クレスはクレスの信念に従い行動した。
 知り合いを簡単に裏切るだけの屑だと思っていたがどうやら違ったようだ。


「はっはは……」

 
 強烈な歓喜が彼を包み込む。
 口元が強烈につり上がる。
 やはり間違いなかった。
 目の前にいる人間は紛れもない強者だったのだ。
 それもとびきり上級の、獲物としてこれ以上の人物はそういない。


「はっ、はははははははははははははははははは!!!」


 もう、我慢なんて不可能だった。
 目の前の相手を打倒したい。
 それだけの凶悪な感情に身を任せ走った。


「すまなかったな!!お前は確かに強者だぜ!!」

「誤解が解けて結構だが、そろそろしつこいぞ!!」


 クレスもハリスに向かって駆けた。
 己の持つ心の歪みを暴きだした強敵に向かって。
 不思議と嫌悪感は無かった。
 コイツを倒す。
 ただ、それだけの感情を持って拳を振り上げた。


「──────猛串“獅子闘”!!!」

「六式“我流”閃甲破靡──────!!!」


 互いの攻撃は、
 互いに相手の身体に吸い込まれ、
 互いを吹き飛ばした。














 ロビンの目の前でクレスとハリスは戦う。
 ロビンは二人を茫然と眺めていた。
 ロビンの力なら全快状態では無い二人を止めるのは難しくは無かった。

 しかし、ロビンはそれをしなかった。


 命を削るようなギリギリの攻防なのにその姿はどこか楽しげだった。
 互いの攻撃が当たるたびに笑みを深め、そして相手に新たな一撃を加える。
 その姿は互いを高め合うような、高尚な修練にも見える。
 あんなに感情をさらけ出しているクレスを見るのは本当に久しぶりだった。
 その相手に少し嫉妬した。
 自分ではなかなかあの表情は引き出せない。


 勝負はいつまでも続く。
 終わりは無いのではないかと思われたそれは一発の無粋な弾丸によって遮られた。


「動くな貴様等!!」


 クレス、ハリス、ロビンの三人はそちらに目を向けた。
 そこにはゾロゾロと大勢のカジノの構成員が集結していた。


「クレス! 良くやったぜ!!」

「いくらあの“串刺し”と言えどここまで弱わってりゃ敵じゃねぇ!!」

「店を滅茶苦茶にしてくれやがって!! タダで済むと思うな!!」


 口ぐちに汚い言葉を吐く構成員達。
 クレスとハリスの動きが止まった。
 彼らは互いに睨み会ったまま構成員達に目を向けた。
 その瞳に映るのは同じ光。楽しみを邪魔されたような理不尽な怒り。


 曰く、─────────邪魔をするな。


 そして、同時に動いた。


 後になってクレスはこの行動を後悔するのだろう。
 しかし、振るわれた拳には一切の躊躇いは無かった。

 後になってもハリスはこの行動を後悔しないのだろう。
 やはり、振るわれた鉄串には一切の躊躇いが無かった。


 クレスとハリスの攻撃は互いに、──────無粋な乱入者に突き刺さった。


 呆然とする構成員達。
 しかし、ロビンにはなんとなく予想出来ていた。
 二人が構成員達に攻撃を加えた瞬間に彼女もまた、悪魔の実の能力によって構成員達を拘束し締め上げた。
 次々と構成員達が崩れ落ちた。


「「「う、裏切りやがった!!!」」」


 響く悲鳴と怒号。
 その中をクレスとハリスは駆け抜け、ロビンはその後を追った。













「懐かしいわね……」

「はぁ……若いってなんだろうな……」

「あら、あの時のクレスカッコ良かったわよ」

「……あんまりうれしくないぞ」


 この話はここで終わりだった。
 なぜならばその後、ハリスと決着をつけよう思っていたら、
 いつの間にかあいつの姿が消えてしまってたのだ。
 未だに不思議でならない。
 いなくなった理由にしても。
 その方法にしても。
 アイツは絶対にオレと決着をつけようとしていた。
 オレもそのつもりだった。
 アイツが自分からいなくなるなんてあり得ないのだ。

 誰かに邪魔されたような、そんな気がした。

 だが、確認する術は無かった。


「そろそろ、朝ね……」


 空を見れは夜が朝日に溶けだしたような紫色だった。


「いつの間にか、話しこんじまったな……」

「明日はグランドラインに向けての準備ね……」

「そうだな……寝るか」

「そうね……寝ましょ」


 長くも短い夜が終わった。
 明日からまたがんばるか……












あとがき
申し訳ございませんでした。
今回の話は「見せ方」に問題があったと思います。
話の構成等にもう少し時間をかけた方が良かったかもしれません。
今回の一件はハリスがカジノでのクレスの行動に怒りを抱いたのが原因です。
自重はしていたが、我慢出来なかった、と言った状況ですね。


取りあえず過去編は今回で終了です。
次からグランドラインですね。
頑張りたいです。


11/28
修正しました。


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