「てめぇらちゃんと仕事してんだろうな!!!」
スパンダインが苛立ちにまみれた声を上げる。
オルビアをクザンの助力によって拘束したスパンダイン達は
オハラの考古学者達を集めさせた広場にやってきていた。
彼は現在屈辱の極みにあった。
政府直属の機関CP9の長官である自分が女子供相手に敗北し、
部下一人が倒され当分動けない。
クザンの助力のおかげで何とか事無きを得たが、
それでもなお傷つけられた彼のプライドは一向におさまらない。
苛立ち紛れにわめき散らそうとも、それは自分の失態を露呈するだけだ。
ならばせめてと、
オルビアとクレスを傷つけることでで憂さ晴らしを行おうとしたが、
何故かクザンによってたしなめられた。
スパンダインはやり場の無い猛烈な怒りを
自分のことを棚に上げ部下に当たり散らすしか無かった。
オルビアは片腕を役人によって拘束されながら、
わめくスパンダインを黙って見ていた。
クザンによって確保されたクレスの為に
オルビアは自らの身と情報を差し出す事を約束し、
クザンはそれを承諾した。
クザンに何の思惑があったかはオルビアには分からなかったが、
二人の間に取引は成立した。
オルビアの身柄はスパンダインが預かる事になった。
スパンダインは怒りの赴くままオルビアを痛めつけようとしたが、
クザンによって阻まれる。
スパンダインは逃亡の可能性を示唆し、
動けないようにするべきだと進言するが、
クザンは不要だとはねのけた。
結局はスパンダインがほぞを噛む形となり決着がついた。
そして、オルビアはスパンダインに連れられて全知の樹までやって来た。
そこではやはり政府による強制捜査が行われていて、
学者達は全知の樹の前の広場にへと集められていた。
政府の手は確実に首もとへと伸びており
後はただ上手くやり過ごす事を祈るだけだった………
そんな中、オルビアは集められた学者達の中に
不安そうな表情をした少女を見つける。
(…ロビン、大きくなったのね………)
六年前に半ば捨てるような形で置いていった自分の娘。
こんなにも愛おしさが溢れてくるなんて思ってもいなかった……
抱きしめたい、だがそんな願いも今となってはもう叶わなかった。
オルビアは溢れ出そうな涙を必死で抑える。
自分がオハラの関係者であることを悟られる訳にはいかなかった……
オルビアが役人に連れて来られたことに
シルファーは他の学者達と同じく悟られはしなかったものの大きく動揺した。
オルビアには大きな怪我も無さそうでひとまず安心したが、
そこにクレスがいない事に何かとてつもなく嫌な予感がしたのだ。
杞憂であって欲しいと願う。
しかし、ロビンの話によるとクレスはオルビアを追った可能性が非常に高いのだ、
そしてクレスの性格を考えるとオルビアを助けようとしたはずだ……
だがオルビアは役人に捕まり、クレスは不在。
最悪の答えが一瞬頭を横切るが、それを必死に否定した。
(……クレス、無事でいて………)
第十二話 「悪魔の証明」
図書館内部で爆発音が響いた。
学者たちが動揺する。
ただの強制捜査では無い、今までに類を見ないほどの強硬捜査。
一切のためらいの無い無慈悲な行動。
目的のためには手段をも選ばないその行為には戦慄すら感じた。
このままでは、……
学者たちがそう思い始めたとき、
『────発見致しました!!!
地下に部屋があり
“歴史の本文”と見られる巨大な石と明らかな古代文字の研究書類が!!!』
悪魔の証明はなされた。
「ムハハハハハハ…!!
さて、忌まわしきオハラの学者達よここに貴様らの
────────“死罪”が確定した!!!」
オハラの学者たちは、咎人となったのだ。
深いまどろみの中にあった。
ひどく凍てつくような、深淵。
抜け出す術は無かった。
ヤバいなぁ……
自分の状況は何となくわかる。
自分はクザンに敗北したのだ。
これが力の壁か…と実感した瞬間だった。
まさか、傷一つつけることが出来ないとは思わなかった。
オルビアさんを逃がして、
どうしてもロビンに合わせてやりたかった。
だが、オレが負けてしまったならおそらく……駄目なんだろう。
クザンと対峙した時点で勝負は半分詰んでいたようなものだ。
そこからもう半分の勝機をオレは手繰り寄せらられなかった。
終わってしまったことだと諦めるには少し悔しすぎた。
まぁ……もう仕方ないんだけどね……
とりあえずこの状況をどうにかしなくてはならない。
と言っても何ができるわけでもない……
「────────────────────────」
は?
誰だよあんた、何か言ったか?
「クレス起きるでよ!!」
地鳴りのような振動が全身に響いてく
オレはまだ重い瞼を開けた。
「………サウ…ロか?」
「おおっ!!起きたんか!!
なかなか起きんから心配しとったんでよ!!」
「ここ…は?」
オレは周りを見渡した。
オレは巨大な手に包まれていた。
どうやらサウロの手の中にいるようだ。
「いったい何があったんか!?
えらいことが起こったんで急いで走っとたら
道端にお前さんが倒れておったんでよ!!」
「……お前が助けてくれたのか………あの状態をどうやって…
いや、いい…そんなの後だ。
それよりもえらいことが起こったって言ったな。何があったんだ?」
「それが、海軍の軍艦がそこまでもうやってきとるんでよ………!!」
「死ぬ前に“五老星”と話をさせろ!!
──この考古学の聖地オハラが長きに渡り研究をし続け
夢半ばながら“空白の百年”に打ち立てた仮説を報告したい!!!」
クローバーは世界最高権力である“五老星”に
オハラの学者達が命をかけて究明した仮説を語る。
それは、今日この場で命を散らすオハラの考古学者達の最後の意地だった。
────過去の人々が何故わざわざ硬石のテキストを使い
その歴史を未来に伝えようとしたのか?
それは、歴史の本文を残した人々には“敵”がいたからだ。
その者達が何らかの理由で滅亡したと仮定するならば、
それに勝利した“敵”はその後も生き残っているはずである。
そして奇遇なことに“空白の百年”が明けた800年前に
ちょうど誕生したのが、現在にいたる“世界政府”。
ならば、こうは考えられないだろうか………
“滅びた者達”の“敵”が現在の世界政府ならば、
“空白の百年”とは世界政府によってもみ消された
不都合な歴史じゃないだろうか?
そして“歴史の本文”を読み取ることによって
一つの巨大王国の姿が浮かび上がった。
おそらくは“世界政府”と名乗る連合国の前に敗北を悟った彼らは
決して砕けぬ硬石に全ての真実とその思想を託した。
それこそが、現在に至る“歴史の本文”ではないのか?
古代文字によって呼び覚まされると言う“古代兵器”は世界の平和を脅かす。
だが、それ以上にその王国の“思想”と“存在”が
世界政府にとって脅威となるのではないか?────────────
「その脅威が何なのかは解き明かさなければわからんが
全ての鍵を握るその王国の名は──────」
「──消せ」
思わずクローバーに呑まれていたズパンダムが
五老星の言葉に銃の引き金を引いた。
乾いた音が響き
クローバーは崩れ落ちた。
あとがき
ごちゃごちゃと視点の変わるわずらわしい文章ですいません。
もう少しスマートな文章が書きたいです。
青キジによって結局は原作と同じ展開になってしまいました。
私もこの展開で良いのかと少し後悔しています。
ですが、何とかがんばって書ききりたいです。
クレスの聞いた声は誰だったのか?
一応は複線のつもりです。
次もがんばります。
ありがとうございました。