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No.11220の一覧
[0] とある幽霊の場合  (オリ主×再構成)[リットン](2010/03/26 21:58)
[1] 一話[リットン](2010/09/24 19:15)
[2] 二話[リットン](2011/05/01 19:10)
[3] 三話[リットン](2010/04/29 19:15)
[4] 四話[リットン](2010/04/03 00:42)
[5] 五話[リットン](2010/04/03 00:43)
[6] 六話[リットン](2010/04/03 00:43)
[7] 七話[リットン](2010/04/29 19:16)
[8] 八話[リットン](2010/04/03 00:55)
[9] 九話[リットン](2010/04/29 19:15)
[10] 十話[リットン](2010/05/03 09:54)
[11] 十一話[リットン](2010/09/24 19:14)
[12] 十二話[リットン](2010/04/29 19:13)
[13] 十三話[リットン](2010/04/29 19:13)
[14] 十四話[リットン](2010/04/29 19:12)
[15] 十五話 [リットン](2010/04/29 19:12)
[16] 十六話[リットン](2010/04/29 19:11)
[17] 十七話 A'sへ[リットン](2010/01/28 19:02)
[18] 十八話[リットン](2010/01/31 16:56)
[19] 十九話[リットン](2010/04/29 19:10)
[20] 二十話[リットン](2010/04/29 19:09)
[21] 二十一話[リットン](2012/03/20 03:00)
[24] 二十二話[リットン](2012/03/20 02:57)
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[11220] 十三話
Name: リットン◆c36893c9 ID:73b2310e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/29 19:13
「艦長、匿名でこちらに向けて通信が入ってます」

「こんな所で匿名? 何かしら?」

「読み上げます。えっと、こちら第97管理外世界から――えっ、ロストロギア?」








――「どげんかせんといかん!」

「……どうにかできるなら、どうにかしてよ」

ユーノくん、人ってのはね、何とも出来ないから何とかしないといけないと言うのだ。

具体的な案があるなら何とかの部分にそれが入るはずである。

「とりあえず時間をくれ!」

「はぁ、それはもう聞いたよ。聞きたいのは今出来る解決策だよ」

「……市民は無茶を言う。何とかしろ何とかしろ、おまえらはそのために何かしたんですか? 文句だけですか?」

「……いや、誰に対して言ってるのさ」

「政治家になりきってみました。にしても、今出来る事ね。とりあえず、おまえはなのはを元気付けることだと思うんだけど?」

「……出来たらやってるよ。何言っても“大丈夫だから、心配かけてごめんね”としか返ってこないんだよ。
 元気付けるためには自分が壊したと思ってるレイジングハートが必要なんだ」

「おっ、なんだ。なのははわかってるのか」

「? ――わかってるって何が?」

「いや、レイジングハートがこうなった原因だよ」

「……どういうことだよ」

ユーノが訝しげに聞いてくる。

こいつはわかってないわけね。

しかし、まぁめんどくさい事になってるね。

「おまえさ、なのはの闘い見てた?」

「いや、僕はアルフさんを引きつけるので精一杯だったから」

「さよか。う~ん、あのな。これ壊れた主原因は内部からなんだわ」

「……というとフェイトさんがやったんじゃないの?」

「いや、外部からの破損もかなりのものだから何とも言えないけども、まぁ少なくともなのはが無茶やったのは確実だな」

「そっか……」

「何でか知らんがデバイスの安全機構が吹っ飛んで直結状態になってる。この状態なら設計限界なんて働かないから文字通り全魔力ぶち込んだんだわな」

フルドライブでもリミットブレイクでもない。モードなにそれってな状態だ。

効率なんて考えてない決死の攻撃なんてな表現にすると好きな考え方ではあるがさ。

デバイスのことを思うとやっぱりそれってどうなのって話になる。

「全魔力? て、いうとリンカーコアにある分全部ってこと?」

「そう、全力全開なんてレベルじゃない。まさに己を賭した一撃」

「そんなの無理だよ。第一デバイスが耐えられるわけが――あっ」

「まぁ耐えられなかったのな。あまりの魔力量に処理が間に合わず術式の途中で転流失敗。本来ならその場で大爆発! なんだけどな」

「でも、爆発なんか起きなかったと。どういうこと?」

「さて、どういうことなんだか。だからお前に聞いてるんじゃない、なのはの闘いを見てたかってさ」

正直、なのはだけの問題じゃない。レイジングハートにも問題がある。

ログを見る限り最後に使おうとしたのは俺構成の大規模長語長演算専用演算器用の広域攻撃魔法。

使うには16384qubitを超える処理能力とデコヒーレンス時間を180秒は持たせないといけない。

そんなもの存在しない訳でつまりは、学生時代に遊びで作った戦略級魔法という名の理論魔法である。

アホなの? 馬鹿なの? と、ユーノに馬鹿にされまくった代物でもある。

恐らく、スピードについていけないから苦肉の策で絨毯爆撃することにしたってとこか?

他にもあっただろうに何故にアレなのか。よっぽど、むかついたのか何なのか。

「――レイハさんは俺の良き理解者であり過ぎました、か」

「どうしたの?」

「いや、何でも。……おまえさ。なんで俺の魔法削除しなかったの?」

「ん? フリードの魔法? 別に削除する程魔法は作ってないでしょ。それに登録してる奴は学生時代の思い出でもあるし」

アホらしいのばっかだけどねと苦笑しつつユーノが続けた。

……何も言えなくなるじゃねーか、この野郎。

「まっ、とりあえずはなのはが帰ってきてからだな」

「えっ今、念話で話すとかは?」

「こういうのは面と向かって話さなきゃ。おまえさんはメールで告るタイプの人間ですか?」

「いや、告白って……。それに、何を話すのさ」

「さて、何を話そうか? 説教もせないかんしな~」

「えっ、説教?」

「教えた身よ俺らは。無茶しそうなら止めなきゃね」

ただでさえ元気がない状態で学校に行ったそうだが、それでも言わないといけない。

そうでなくては誰も注意ができなくなってしまう。まぁ、教えた者の義務ですよ。

「そっか……」

「そーよ。頑張れよユーノ」

「な、なんで僕」

「おまえがやらなきゃ誰がやるのよ」

「えっ、フリードは?」

「……おまえ、俺が無茶するなよって言って聞くと思うの?」

「あっ、うん、確かに……――って、わかってるんなら直しなよ」

「自分の事を省みるのは死んだときって決めてるんだ」

「いや、死んだら省みれないでしょ」

「そうでもないぞ。あぁでも、死んでも特に省みたりはしなかったから今のは無しだな」

「???」

死んだら省みるなんてことよりお迎えの事を考えたしね。

我ながら現金だ。いや、人間ってそんなもんよね、きっと。

そうだ、そうに違いないのだ、きっと。

「――まぁ、とりあえずはレイジングハートの復旧か」

「!? ――やっぱりできるの?」

「さぁてね。ユーノ、レイジングハート弄っていいの?」

「……今の所持者はなのはだから、なのはがいいって言うなら僕は何も言わないよ。
 でも、本当に直るの? 大丈夫なんだよね?」

「うん? ぜんっぜん大丈夫じゃない。言っただろうが材料がないからどうしようもないって」

「えっ、じゃあどうやって?」

「さて、どうやってだろうね。まぁ、期待するなって事よ。そのうち閃くさ」

「そんな悠長な……。というか、言ってる事もめちゃくちゃだし。結局出来るか出来ないかどっちなんだよ」

「そう、焦りなさんな。ゆっくり急げの精神さね」

「なんだよそれ……」

急いては事を仕損じる。そんなイライラしてもしゃーないだろうに。

とはいえ、本当にどうするのか。

具体的な案は何もない。あるのはコレが出来たらいいなってなもんぐらいだ。

個人的にはそれでも十分納得できるが、それは出来なくてもしょうがないといった場合でしか通用しない。

確実な仕事を求められてる場面でそれはどうなのよってな話だろう。

「まっ、頑張ってみるから一人にしてくれ。気が散る」

「あっ、うん……。ごめん、頼んだよ?」

「おーよ。おめぇは頑張って励ます方法を考えろ」

「……そうだね、わかったよ」

そう苦笑しながら言いつつユーノは出て行った。







さてと、違法研究でもしましょうか。

「おい、聞いてたんだろ?」

部屋の隅に放置されている俺の相棒(予定)に聞く。

『聞かされていた、の方が正しいですね。それで、私にどうしろと?』

「レイジングハートのパーツを作る。復元と併せて足りない部分はジュエルシードを使ってそこらへんの屑鉄を励起させて補おうと思う。
 バンドの構造自体を変えるからそれの計算を行ってくれ」

『まさか合成ですか? こんな所で』

「そうだよ。こんなところでだ。せっかく高エネルギー結晶があるんだから使おうや」

『マスター、高エネルギー体を使ってエネルギー順位を無理矢理変えると、どうなるかわかってますよね?』

「電子じゃなくて原子にも影響がでるってな。結界張りながらがんばりまっしょい」

『……悪い事は言いません。他の子達からパーツを貰ってください。こんなところで原子崩壊を起こすことに比べれば軽いでしょう』

「まったくもって軽くない。そんな事するぐらいならやらない方がマシだね」

『また、完成したものから抜くのは駄目とかいうよくわからない理屈ですか』

「理屈じゃねー矜持だ。それにおまえ、娘に他人のために臓器を提供しろっていう親がどこにいるよ?
 そんなこと頼むぐらいなら親が頑張れってな話だ」

『……よくわかりませんね。それに、持ってきたストレージデバイスはどうなんです?』

「残念ながらあの子達は役目を果たしたよ。元々インテリジェントデバイスの装備をサポートするために作られたからな」

『役目、ですか。……それこそ傲慢な考え方ではありませんか?』

切ることをやめてしまったハサミは不幸なのか。

それとも切るということを目的として生まれた事が不幸なのか。

さて、どちらにせよわからないが俺に言える事は一つだ。

「俺の矜持だからね。手前勝手で突き進むそれが俺のジャスティスってな」

『…………開き直った馬鹿には勝てません。好きにするといいでしょう。ただ、ジュエルシードを使っての直接励起は禁止です。
 私を使っての間接的な励起にしてください。少なくともそれで原子崩壊は避けられるはずです』

「――ありがとよ。なんか今日、初めて相棒って思ったわ」

そう言って俺は笑った。






――こんなものだろう。

久々にこんな真剣に物事をやった気がする。

安全策をとっているとはいえ原子崩壊は怖いし、なにより作業自体がナノレベルだ。

窓の外を見ると夜の帳がおりている。作業開始が正午前だったことを考えると割と集中していたようだ。

にしても、ジュエルシードさまさまだな。こんな短時間で出来るとはね。

やっぱり、このジュエルシードってやつはすごい。思ったよりずっと安定している。

周りに常時力場を展開させない分、高レベル帯でのエネルギー運用では電気より遥かに上かもしれない。

何より驚いたことに、これ量子状態を――

「――フリードくん? 終わったの?」

「うぉっ!」

思わぬところから声が掛かったので、びっくりし振り返るとそこにはなのはが居た。

「あっ、脅かしちゃったかな、ごめんなさい」

「……何してらっしゃるんで」

「えっと、見てただけだよ?」

「いつから?」

「学校終わってからず~っと。ユーノくんがレイジングハートが直るかもしれないって言うから」

「さよか。つーか、あの野郎。はぁ、まぁ何とかなりそうだからいいか別に」

「あっ、なんとかなるの?」

ずずいっと体を俺の方へなのはが乗り出してくる。

なんつーキラキラした目をしてらっしゃるんでしょうか。

「お、おう、まぁな。それとなのは、レイジングハートを弄っていいか?」

「あっ、うんっ! あっ、でもレイジングハートにも聞かないと」

「聞いた、聞いた。そしたら、是非にとのことだ。むしろヤレってさ」

「あはは、そうなんだ」

これで、後は作ったパーツと残りを合わせて色々弄ってみるか。

しかし、今出来る最低限の事って感じでまったくもって面白みがないな。

どうなのよ、これ。こんなんでいいのか俺。

「……何かねーかな」

「何か?」

駄目だ何も思い浮かばない。

なのはの疑問顔を見つつ一緒に首を傾げるしかない。

「はぁ」

「にゃ!?」

目の前にある頬っぺたが、やけに引っ張りやすそうだったので引っ張る。

縦横斜め二倍、にばーいってな。

あいかわらずよく伸びる。

「いひゃい、いひゃい」

あー、いかん完全にまずい。

これはアレかスランプか。マジで何も思い浮かばない。

パーツを作れたことで、すでに大満足だ。なんというか作れた俺すごいで終わってしまっている。

だいたいなーこんなとこで出来ることなんて限られてるんだよ

あっでもバルディッシュのときは出来たからなー。

そうすると脳内麻薬か。そんな簡単にでーへんぞアレは。

なんというか追い込まれないといけない。

こう追い込まれると脳内の種めいたものがきっと割れるのだ。

今、別に追い込まれちゃいないしね。難しいよね。

どうしようか?いっそのこと――

「――」



「う~、痛いよぉ」

なのはが赤くなった頬っぺたを摩りながら半泣きでなにやらぶつぶつ言っている。

まぁ、そんなことはどうでもよくて、やっぱり何も思いつかない。

「――だいたい、なんでほっぺたを引っ張られたのかもわからないし」

「んっ? それは、そこに頬っぺたがあったからじゃないか?」

「……」

「よっと」

無言で手が伸びてきたので避ける。

「あっ!」

「あっじゃないが。何しようとしてるんだ」

「ほっぺたひっぱるもんっ!」

「やだ」

「う~」

なおも果敢に俺の頬っぺたを引っ張ろうと試みてきた。

それを手を払って対処する。誰が好き好んで引っ張られなーいかんのか。

「ちょっと、やめて、やめてください。迷惑ですよ?」

「……」

無言で睨みながら俺の防衛網を突破しようと手を差し込んでくる半泣きの魔王様。

それをヒラリ、ヒラリと躱わす、まさに蝶のように。

「甘い、甘い、翠屋のスィーツより甘いわ」

「む~っ!」

無駄だと悟ったのか今度は体ごと突撃してきた。

コレが噂のA.C.Sか!

特攻上等のゼロ距離射撃。

「特攻? ふむ……」

なのはの頭を掴んで押し戻しながら考える。

普通に考えればエクセリオンモードやらエクシードモードなんかが参考になる。

がそんな優等生なのでいいのかどうか。

だいたい、この猪娘はエクセリオンモードによる負担増で重症を負ったはずだ。

だとするなら無茶できて負担も少ないそして尚且つこの馬鹿みたいにでかい魔力量を活かせるような何か。

確か原作ではブラスターシステムで段階的に上げる事によって負担の軽減とかやってたはずだ。

それじゃあ面白くない。何より最終的な負担は変わりが無いのであれば意味がないし、そんなものは応急処置的なものでしかない。

では、どうするか。

効率を上げるのが最適解だろう。じゃあ、効率を上げるにはどうするか。

「う~む」

「にゃ!」

ちょっと目の前の頭が邪魔なので腕でロックする。

「う~、はなして~」

こうしてしまうと俺から見えるのは、なのはのどたま。

「つむ~じ、つむ~じ、うりうり」

髪が両サイドで縛られてるのでよく見えるつむじを押してやる。

「にゃーー! やめて~」

そういや、つむじ押すとなんかなるってな民間療法か何かなかったっけか。

まぁ、どうでもいいか。

それより効率、効率。

簡単な話、エネルギー運用で一番のボトルネックは熱だ。

熱として逃げるエネルギーと排熱処理に回すエネルギーで二重に食ってしまう。

デバイスに関しても同じように、圧縮魔力の残滓を放出してる時点で効率は推して知るべし。

ギミックを使っての排気ってカッコいいけどぶっちゃけあれ無駄でしかないのよね。

これをどげんかせんといかん。

「はぁまただ、いかんいかん。いやだから、どげんかとせんといかんではどうにもならんのよね」

「うぅ、フリードくんが自分の世界に入っちゃってる」

「……なのは。自動車のエネルギー効率ってどれぐらいか知ってるか?」

「えっ? 自動車? えっと、わかんないけど、それより離してよぉ」

「自動車のエンジンルーム開いてラジエター見りゃわかるが、あんなでかいので冷やしてんのな。
 そのせいでガソリン車ってだいたい10%程度しか効率はないのよ」

「……その話題と今の状況がどう繋がるのかがわかんないよーー!!」

「やっぱり排気系統の見直しだよな。熱機関の理論サイクルを圧縮魔力のサイクルに合わせてどうやって、なのはに最適化させるか」

「へっ? ……今、なのはの事で悩んでるの?」

「あたりまえだろう。他に何の懸案事項があるのよ?」

「そ、そうなんだ。そうなんだ……」

? ――腕の中でじたばたしていたのが大人しくなった。

ついに力尽きたか。お疲れ様です。

離してやると、そのままコテッと俺の太ももにおちた。

さて、邪魔者は居なくなったところでエネルギーサイクルの見直しだ。

いや、考え方的にはコストを無視したエネルギー協調か。コストを無視した協調ってなんか矛盾してるな。

まぁ、そもそも当人自体がコストを無視した存在なのでしょうがないか。

その当人を見やると、いつの間にやら仰向けになってこちらを見ていた。

「……えへへ、前と逆だね」

「うん、確かにデコピンしたくなってくるな」

「わたし、そんなことやってないよ!」

「男の子は好きな女の子には意地悪したくなるんだそうな」

「へっ? えっと、えっ?」

「気になるあの子の髪の毛を引っ張ったりといった身体的ちょっかいから、ちょっとした嫌がらせまで
 自分に気を引くためにあれこれとやってしまう。男の子ってそんな悲しい生き物なんだ」

「えっ? えっ? ふ、フリード……くん?」

「なぁ、なのは?」

「は、はい」

「そういう都市伝説があるらしいんだよ」

「……う~」

「て、のはちょっとした冗談で、多くの男の子に本当に当てはまるんだそうな。
 精神的に幼いから好きという事の示し方がわからないのよね」

「ふぇ?」

表情がコロコロ変わって実に面白い。

顔が赤いのは変わらず本当に目まぐるしく表情が変わる。

「えーっと、フリードくん?」

「わからないか、なのは?」

柔らかく微笑む。

なんて鈍感なんだろうか、この娘さんは。

「な、なにがかな?」

「この話題から分かる事はだ」

「う、うん」

「女の子より男の子の方が実は可愛いんじゃねってことだ」

そう、態度的に考えて。

好きなのに、どうしていいかわからず意地悪しちゃう。これってよく考えると後期型のツンデレじゃねーか。

元祖男性はツンデレだった。しかし、今はエロである。

おっ、なんか良いのできた。これは辞世の句として後世に残そう。

死ぬ間際に語るのだ。世の男性の諸行無常を。

聞いた皆、全力で少年だった時代の全てを振り返るに違いない。

そして、それを聞いた女性は“ちょっと、男子~、止めなさいよ! いつまで浸ってるわけ~”とかのってくれるのだ。

「――時代は男の娘か。認めたくは無いが、さもありなん。んっ? なのは、どうした?」

「……なんでもないもん」

「いや~世の中生きてりゃ色々悟れるものだよな」

「なんでだろ、何かに負けたような気がする」

「なのは、人は負けたと認めたときが負けなんだ。簡単に負けを認めちゃいけない」

なのはに説く。負けを認めたら前には進めるかもしれないが何かを失うかもしれないのだ。

そう、負けを認めた時点でウサギにも亀にもなれなかった者になってしまうのである。

「……」

「なれにほっへたふぉひっはらへなーいはんのれしょうは(何故に頬っぺたを引っ張られなーいかんのでしょうか)」

「そこにほっぺたが、あったからだよーだ」

睨みながら拗ねるというなんとも器用なことをやっている。

というか、なんでこの娘のために真剣に悩んでるのに頬っぺたを引っ張られなーあかんのか。

世の中往々にして理不尽である。アガペーはいったいどこにいったのか。

まぁ、この刺激が脳の何か活性化させるのかもしれない。

そう考えれば、このゆる~い痛みも許容できるか。

えっと、どこまで考えたっけか? あぁ、協調、協調。

排気をさせないレベルに効率を保つとなると処理を遅らせるしかない。

段階を経て処理をさせる。しかし、それでは戦闘に支障が出る、か。

となると処理を考えて転流余裕時間を稼ぐしかない。

ちょっと前に試しに作った融合型デバイスに近い考え方をすればいい。

リンカーコアで圧縮魔力を開放するのではなくそのままループをさせる。

ループ上で溶かしつつ帯域の太さと速さに当てて魔力素を動かす事でリンカーコアでの膨張を防ぐ。

そして、サイリスタもどきを使って分流して多重並列処理を行えばどうだ。

……うん、いける。なのはのリンカーコアの容量的には恐らく問題ない。

後はどこまで分流できるか。

ふと、なのはを見ると目が合った。

どうやら、いつの間にやら頬っぺたは引っ張られていなかったようだ。

「んっ? どうしたよ?」

「……ううん、何でもないよ。真剣に考えてくれてるんだなーと思って」

いや、まぁそりゃ本職だもんよ。これを抜きにしたら俺は飯すら食えない。

デバイス作りはまさに飯の種であり、俺の生き甲斐とも言えるのですよ。

「まぁ、そんなことよりだ。レイジングハートが今より格段に扱いが難しくなるが強くなるのと
 扱いは変わらないがそんなに強くならないのとどっちがいい?」

「えっ? ……レイジングハートを強くしたらあの子に勝てる、かな?」

「そりゃ、なのはの努力しだいといったところか」

「そっか、うんならレイジングハートと一緒に強くなる。そして、今度はあの子に弱いなんて言わせない!」

弱いって言われたのか。いや、まぁ確かに今は強いとは言えないけども。

とりあえず、ナレーションでも付けようか“こうして少女は魔王への道を歩み始めたのです”ってさ。

「……何か失礼な事を考えてる気がする」

「まさか。そういや、ユーノは?」

なのはがこんだけ元気なら励ますのにはどうやら成功したのか。

奴さんにしてはやるじゃない。

「えっと、フリードくんに任せるって伝えてって言ったきりジュエルシードを探しに一人で出かけちゃったよ?」

一緒に行こうって言ったんだけどと心配げな表情でなのはが続けた。

……なんじゃそりゃ?

「はっ? えっ、それって何時の話?」

「学校が終わってからすぐだよ? レイジングハートが直るかもしれないっていう話のすぐ後になるかな」

「……ないわ~。そりゃ無いですぜユーノくん」

「? ――どうしたの?」

「なんでもねーです」

「???」

疑問符を浮かべるなのはを見つつ考える。

あの野郎、今度絶対にフェレットとして愛でてやる。

とことん愛でてやる。俺の愛の重さを思い知らせてやる。

愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけまくってくれるわ!

「えーっと、フリードくん?」

「なんだい、なのは?」

「な、なんか怖いよ?」

「ははは、何を言ってるのかこの子猫ちゃんは」

「あはは……」

何故にジリジリと俺の太ももから逃げていくのか。

とりあえず、逃がさないように頭をガシッと掴んだ。

「へっ?」

「仕方あるまい。あの野郎が説教してないなら、俺がやるしかあるまいな!」

「えっ? えっ? えっ?」

「おい、相棒仮! 再教育プログラム“命の重さについて”と“魔導師の責任について”を用意してくれ」

『はぁ、構いませんが本気ですか?』

「本気も本気だ。バインド!」

『すいませんお嬢さん。Chain Bind』

「にゃーーー!!!」

なのはをバインドで簀巻きにする。

「ふ、フリードくん!?」

「大丈夫だよ、なのは。心配しないで。そのうち簀巻きでも戦えるような立派な変――いや、魔導師になれるから」

「立派な変って言いいかけたよね? 変って何? というか、そんな魔導師になりたくないよぉーーー!!!」

「そういや、よくよく考えたらこの部屋原子崩壊の可能性があってめっちゃ危険だったな。
 よし、“実験施設への立ち入りについて”も追加で」

『了解です』

「ふ、フリードくん? えっ、冗談だよね? これっていつもの冗談なんだよね!?」

「大丈夫ちょっと悪夢を見るだけだから。では、good luck!」

イメージリンクをなのはにつけて再教育プログラムが始まった。







「えっと、なのはを迎えにきたんだけど」

「んー? おまえの隣に居るじゃないか」

「えっ? ――うわぁ、なっなのは!?」

「わたしが死ぬことによって出る出費はおよそ300万。そして、今まで掛けた教育費もぜんぶ駄目になる。
 アリサちゃん、すずかちゃん、お願いだから喧嘩しないで、お父さん、お母さんも、もうやめて
 ごめんなさい、ごめんなさい、そんなに悲しまないで、ちゃんと生きますから――」

「な、な、ふ、フ・リ・ードォーーーぉ、お?」

「何かなフェレットくん?」

「えっ、なっ、なにそのデバイス?」

「ふふふふ」

「えっ? えっ?」


「――」

その日、尊いユーノの何かが失われた。





「えっと、あのね昔、お父さんが――」


そして、トラウマを微妙に抉ってしまった少女を癒すのに一晩を要してしまった。








――「うん、上出来、上出来」

上空に浮かぶなのはを見つつ出来を確認した。

うん、満足ですじゃ。

「あれってどうなってるの?」

「んっ? ただ単に並列ループさせてるだけよ? 三つのループでデバイスの強化を行って後のループで砲撃ってな。
 まぁ完璧に使いこなすにはちょいとレイハさんの処理能力が足りないでアレなんだけどもさ」

「えっ、そんな器用な事できるの?」

「得意なものならな。まっ、砲撃と防御さえできればいいんですよ」

そう、それだけできれば問題ない。

どうせ他は単純なものしか、なのはは使わないのだろうしね。

「いや、そんな歪な。なのはをどこに導こうとしてるのさ」

「夢はでっかく単独でアルカンシェル! 後で、海鳴よわたしは帰ってきたー! とか言いながら砲撃魔法をぶっ放すことを教えよう」

「……それ、なのはに言うの?」

「まさか。そんな恐ろしいことできるかい」

「自分だってヘタレじゃないか」

数日前の事を思い出したのかチクリとフェレット(笑)が言ってきた。

何を仰っていらっしゃるんでしょうかこのへタレは。

「ヘタレ具合が天と地の差ほど違うわ!」

「同じ、同じ」

「はんっ!」

見下すように言う。

このフェレット(笑)は自分が犯した失態に気づいているのだろうか。

「何だよ、その勝ち誇った顔は」

「おまえさんはなのはの過去を知っていますですか?」

「……なのはの過去?」

「そう語るも涙、聞くも涙のお話だ」

「な、なにさそれ」

「あは~? 知らないのユーノくん? 俺は知ってるのに?」

「あっ、なのは。ええっと、いっ、今の話、本当なの?」

ギギギッと軋むようにして後ろを振り返ると満面な笑みの魔王様がいらっしゃった。

笑顔が怖いってこういう事を言うんだね。僕とってもよくわかったよ。

「フリードくん? 内緒って言ったよね」

「言ってましたね」

「絶対に、絶対に誰にも話さないって言ったよね」

「それは大丈夫、ちゃんと話してないよ!」

「ユーノくん? ちょっとフリードくんかりるね?」

「あっ、う、うん」

この俺について来いと突きつけている、レイジングハートに浮かぶ4つの魔方陣を見つめるとちょっとワクワクしちゃうのはなんでなんだろうか。

あぁ俺も遂にやられちゃうんだねと訳の分からない思考が浮かぶのが実に不思議だ。








「もう、本当にだよ? 言ったら許さないよ?」

「えっ、あっ、うん」

予想外で~す。

まったくもって予想外で~す。

「? ――どうしたの?」

「いや、なのはあのな、少し頭冷やそうかって言ってみ」

「すこしあたま冷やそうか?」

首を傾げながら言われてしまった。

なんて可愛らしいんでしょうか。

というか、俺は何を期待していたんだろうね。

「なのは、変わらずそのままの君でいてくれ」

「???」

人間の成長ってのはどうなるかわからない。

もしかしたら、この子だってグレたりするのかもしれない。

……いやすぎる。

「いや、あっ――!?」

「どうしたの?」

「いや、どうも?」

行動早いね流石です。タイミングもバッチリ。はなまるあげちゃう!

さぁ舞台装置は全て整った。

コレで俺がもし失敗しても、どうとでもなる。

さて、すみませんが利用させてもらいましょうか。



――独眼竜眼帯に『探知波検波―時空管理局・巡航L級8番艦アースラ』と表示されていた。





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