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No.11220の一覧
[0] とある幽霊の場合  (オリ主×再構成)[リットン](2010/03/26 21:58)
[1] 一話[リットン](2010/09/24 19:15)
[2] 二話[リットン](2011/05/01 19:10)
[3] 三話[リットン](2010/04/29 19:15)
[4] 四話[リットン](2010/04/03 00:42)
[5] 五話[リットン](2010/04/03 00:43)
[6] 六話[リットン](2010/04/03 00:43)
[7] 七話[リットン](2010/04/29 19:16)
[8] 八話[リットン](2010/04/03 00:55)
[9] 九話[リットン](2010/04/29 19:15)
[10] 十話[リットン](2010/05/03 09:54)
[11] 十一話[リットン](2010/09/24 19:14)
[12] 十二話[リットン](2010/04/29 19:13)
[13] 十三話[リットン](2010/04/29 19:13)
[14] 十四話[リットン](2010/04/29 19:12)
[15] 十五話 [リットン](2010/04/29 19:12)
[16] 十六話[リットン](2010/04/29 19:11)
[17] 十七話 A'sへ[リットン](2010/01/28 19:02)
[18] 十八話[リットン](2010/01/31 16:56)
[19] 十九話[リットン](2010/04/29 19:10)
[20] 二十話[リットン](2010/04/29 19:09)
[21] 二十一話[リットン](2012/03/20 03:00)
[24] 二十二話[リットン](2012/03/20 02:57)
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[11220] 十二話
Name: リットン◆c36893c9 ID:73b2310e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/29 19:13
壁を見つつ思う。

旅館の壁にしては綺麗だ。

壁の下の方まで、手入れが行き届いている所をみるに、この旅館の女将は几帳面なのだろう。

いや、それとも清掃係の方の賜物なのか、または専属業者か。

まぁ、よくわからないがこれはあれだ。

「いい仕事してますね~」

思わず褒める。そう、いい仕事は褒めてやらねばならない。

でなければ、こんな低い位置までピカピカに磨いている仕事熱心な方が可哀想だ。

「幅木に積もる埃の少なさからして機械でやってないことがわかる。いや~、素晴らしい」

「……最近の子はよくわからないな」

「いや、あれはどうみても特殊な事例だろう」

後ろから、高町さん宅のデビル達の声が聞こえる。

人が職人の仕事っぷりに浸っている時に、なんて空気の読めない連中なのかしら。

ここは一つ文句を付けねばと、ゴロンとデビルたちの方へと体を向けた。

「館内は静かに! 職人さんに失礼だと思わないんですか?」

「……恭也。なのはが、ああなったらどうしようか」

「心配するな父さん。絶対無い」

「そうですよお義父さん。ご無理をなさらずに」

「……とりあえず、君に父と呼ばれる覚えがないな」

「申し遅れました。私高町なのはさんと結婚を前提にお付き合いさせて頂いているユーノ・スクライアと申します。
 是非、お義父様になのはさんとの交際を認めて頂きたく本日はこの温泉に参りました」

「――散々、自分でフリード・エリシオンって名乗ってただろうが」

「いや、流石はなのはさんの実兄。御慧眼に心から敬服致します」

「……突っ込むところはそこじゃないだろう恭也。はぁ、とりあえず簀巻きにされてる少年に娘はやれないよ」

「格好の問題ですか……。申し訳ございません。まだまだ未熟な身、不勉強が過ぎました。
 今日のところは、これ以上の失礼を重ねる事の無いようお暇したいと思います。解放をお願いできますか?」

「なのはと解放される事のどちらを取るかといわれたらどっちを取るんだ?」

「愚問ですね。もちろん解放される事です」

「……」

「……」

「さて、俺は桃子のところにいってくるよ」

「あぁ、俺も――」

「――ちょっと、待てー! いい加減解放しろ!! あんたら、児童虐待という言葉を知ってますか!?」

「心配するな。朝になったら解いてやる」

いや、そんな問題じゃないが。

分かった事がある。簀巻きは見た目より苦しい。

なんというか、動けないのがきつい。

こう、動けないのを意識するとイラッとくるのだ。

できるだけ、こう意識をしないようにこの床の建築材がいいねとか、ローアングルで見る世界はいとをかしとか思うしかない。

気持ちを落ち着かせるために、壁に使われている建築材達の伐採からここに至るまでの軌跡を、地上の星をBGMに紐解いてしまったりもした。

しかし、それでも限界がある。俺は縛られて喜ぶ属性は持ってないのだ。

いや、もしかしたら、これから開花するかもしれないけどもさ。

とりあえず、今のところはこの束縛感で自己発電することはできない。

「あ゛ぁぁぁ。てめぇら、もうゴロゴロするぞ? ゴロゴロしちゃうぞ? 本当にゴロゴロするからな?」

しょうがないので床の上をゴロゴロするしかない。

ひたすら左右に動く。

速さはできるだけ一律に。メトロノームに負けないように。

不協和音は駄目だ。リズミカルにいかなければ。

ここはアップテンポ。回転を上げる。急がずゆっくりと歩くような速さで。

あれっ? なんか楽しくなってきたよ?

「……なんというか本当に不思議な子だね」

「なんで転がって喜んでんだ……」

あっ、やばい転がりすぎた。壁が、壁が近づいてくるよ!

エマージェンシー、エマージェンシー、至急回避せよ!

必死で逆回転を掛ける。

が止まらない。止まってくれない。

くっ、仕方あるまい。

ここは伝説の――

「顔面ぶろーっくっ!!」

ガツンッと壁にあたりフリードローラーは止まった。

……ふふふ、止めてやったぜこの野郎。

痛くも痒くもない。もっと激しいシュートを撃って来いってなもんだ。

勝利に酔いつつ、再びローリングを開始する。

最早、俺を阻むものは何も無い。全てこのフリードローラーが轢いてくれるわ。

「……鼻血が出てるのに止めないのは、男の子として評価できるのかもしれないな」

「……いや、そんな問題じゃないだろ。なんで鼻血出しながら不敵な笑みを浮かべてるんだ」

むっ、さっそく障害物を発見!

目標は海鳴に巣くうキングデビル2匹。

フリードローラーフルスロットル!

「……こっちに向かって転がってきてないか?」

「でもこっちに来るまでにテーブルが――って飛んだ!?」

とっーい、とヒップアタックをかまし無機物を避ける。

動かぬ物に興味は無い。決して当ったら痛いからテーブルを避けたわけではない。

詰まらぬ物を轢く気はないのだ。

目標補足。

パターン青。

「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ――」

「……何か呟いてないか?」

「あぁ、何か――どうやら、そんな事いってる場合じゃないようだ。――来るぞ!!」


「――っち!」

初撃は難なく躱わされてしまった。

ならば――

「――今こそ我が身の鎖を断ち切れ――Acceleration」


――瞬間、全ての動きが止まって見えた。



「くっ、この――」

「――迅い、迅いな神速。だがな、速さが足りない!」

避けたと思っただろう恭也の後ろを取る。

「なっ――!?」

驚愕に歪んだ恭也に、勢いのままボディーアタックを食らわした。

神速の速度のまま壁に突っ込んで――

「――っと。簀巻きにされた年下の少年相手に何やってんだ」

「……」

ぶっ飛んでいった恭也を士郎が受け止め、何やら言ってるのが見える。

……よかろう。

父と子のタッグプレーなんぞに押されるほどフリードローラーの回転乱舞は甘くない。

こうなれば、いつもより多めに回すだけだ。

エンジンをターボに。

回転数を15000回転までキッチリ回す。

「ふははは、止められるものなら止めてみるがいい!
 全てはじいてくれるわ!! てめぇらの血は何色だーー!!」


部屋いっぱいを使った、どこにも記される事はないであろう男達の戦いが始まった。







――<<ユーノくん、これって結界だよね?>>

<<うん、そうだね。相変わらずフリードが馬鹿なことをやっているみたいだよ>>

アリサちゃんに撫でられているユーノくんに対し念話で気づいた事を聞いてみた。

やっぱりだ。また、何をやっているんだろうかフリードくんは。

<<何をやっているのかは、わからないのかな?>>

<<……なのは、首を突っ込まない方がいいよ。たぶん、疲れるだけだから>>

そうは言われても、やはり気になる。

最後にフリードくんを見たのは、お父さん達に引き摺られている姿。

ドナドナ~と何やら悲しげに唄う姿が印象的だった。

そのためか、あの後どうなったのかが、ひじょ~に気になる。

お父さん達に尋ねても安心しなさいとよくわからない返答しかもらえなかったし。

<<う~ん、やっぱり行って見ようかな?>>

<<……もう一度言うけど止めといた方がいいよ。それにこの結界、かなり小規模な封時結界だけどその為なのか、外部遮断性が強く設定されているみたいだ。入るのはかなり難しいよ>>

そう言われると余計に気になる。

そこまでして何をやってるんだろうって思っちゃう。

結界に入れなくても見れる方法とかないのかな?

<<ユーノくん、あのね――>>

「――そう言えば、フリードくんは大丈夫なのかな?」

お父さん達の部屋の方向を見つつ、すずかちゃんが聞いてきた。

同じように、引き摺られていた印象が残っているんだと思う。

やっぱり、あれは結構……うん、夢に出てきそうだったし。

もちろん、楽しい方ではなく悪い方の夢。

悲しい、悲しい夢。どこか遠く、みんなのいない場所へと連れて行かれるそんな夢。

「大丈夫でしょ。それに、恭也さん達があんな対応をとるって事はあいつが悪いんだろうし」

身も蓋も無い言い方をするアリサちゃん。

確かにその通りではあるけど……

「アリサちゃんは気にならないの?」

「あたしが? あいつを? なるわけないでしょうが。……それに殺したって死なないわよ、あれは」

「ふふふ、そうだね。アリサちゃん」

「な、何よすずか、そのわかってるって顔は!」

「うん、ごめんなさいアリサちゃん」

「もうっ!」

「あはは」

「……なのは~? 何笑ってるのよ!」

「何でもない、何でもないよ、うん、アリサちゃんはアリサちゃんなんだな~と思ったから」

「それは、ど~いう意味なのか説明してもらおうかしら」

「アリサちゃんはアリサちゃんってことだよね、なのはちゃん?」

「うんっ!」

「……あんた達~!」


部屋いっぱいを使った、少女達の鬼ごっこが始まった。





――よくあれだけ喋ったり動いたりできるなぁ。

少女達の寝顔を見つつ眠る前までの事を思い出しユーノは考える。

なのはは楽しそうな様子だったし、きっと元気も充填できた事だろう。

何回か踏まれたという些細な問題を除けば、ここに来てよかった、ユーノは真剣にそう思う。

そう感じざるを得ない程には楽しそうだったし雰囲気もそうだった。

ただ、巻き込まれるとあの元気に少々ついていけない気がユーノにはするだけだ。

<<ユーノくん、起きてる?>>

<<……なのは起きてたんだ>>

なのはの念話にユーノが答えると、もそもそと仰向けに寝ていたなのはが布団の中で動き、体を横にしユーノに向けた。

<<うん、起きてたよ。それより、さっきはごめんね?結構踏んじゃったりしたよね?>>

<<いや、そんなにだよ。それに、アレぐらいどうってこと無いよ。一応、僕も男だからね>>

<<そっか、うん、でも、踏んじゃったからごめんなさい>>

<<……>>

<<それにしても、結界無くならないね。フリードくんはまだ終わらないのかな?>>

<<……内側からの衝撃にもかなり耐えられるような仕様に変えられてるから相当な事をやってるんだと思うよ>>

<<そうなんだ。大丈夫なのかな?>>

<<大丈夫じゃないかな? アルフさん達が破ろうとして失敗したみたいだし>>

<<そんな意味じゃ――って、え? アルフさんってフェ、――あの金髪の子と一緒に居た人のことだよね?>>

<<うん、そう。えっと、なんで言い直すの?>>

<<だって、まだ、なのははお名前を教えてもらってないから……>>

<<あっ、ご、ごめんねなのは>>

<<ううん、大丈夫っ! 別に気にしてないよ。なのはは、これから、これから。フェスティナ・レンテ、だよ>>

<<……ふぇすてぃなれんて?>>

<<うん。事あるごとにフリードくんがわたしに言うから覚えちゃった。ラテン語でゆっくり急げって意味なんだって>>

<<……ゆっくり急げか。あまり意味が分からないね>>

<<あはは、そうかも>>

<<えっ、説明はされなかったの?>>

<<されたよ? でも、たぶん、わたしにしかわからないから>>

<<……どういう事?>>

<<なのはにはなのはの。ユーノくんにはユーノくんのゆっくり急げがあるって事だよ。
 えへへ、何言ってるのかわからないよね、ごめんなさい。フリードくんならもっと上手く説明できると思うよ?>>

<<いや、いいよ。……いつの間にそんな事話したの?>>

<<暇な時とか念話でだよ?魔法の訓練にもなるし、それにお話しするのは楽しいから。
 フリードくんには悪いけどつきあわせっちゃってる>>

<<……そうなんだ>>

「?」

<<いや――>>


――魔力の反応があった。











――「「「……どうしよう」」」

思わず三人が同時に呟いた。

目の前には見るも無残な惨状が広がっている。

「……嫌な事件だったね」

「あぁ、犯人は銀髪のクソガキのな」

「実は、大どんでん返しなんですよね。室内で二刀の刃物を使った奴が真犯人っていう」

「「……」」

無言でにらみ合う。

まだ、やろうっていうのかしら? 今度は、回転スーパーイナズマキック食らわすぞ、この野郎。

「――あぁ、もうやめなさい。やってる場合じゃないだろ。ここは如何にして切り抜けるかだ」

「ですよね! 流石は士郎さん、そこに痺れる、憧れる~!」

「「……はぁ」」

二人してもう限界まで疲れましたってな顔をしている。

若い身空で、いかんですなぁ。もっと元気を入れていかなーね。

元気があればなんでもできるってなもんだ。


「――ここはアレですね。野生の熊があらわれた事にした方が無難かと」

「……何が無難なんだよ。それに熊程度にここまで出来るか」

「そうだな。野生の北極熊が現れた……では無理があるし熊は駄目だ」

熊は駄目か……

他には、象やらサイか?

流石に、ここら辺に生息してない動物はつかえないしな~。

ここは宇宙の謎に賭けてみるべきか?

「謎の宇宙人が侵略して来たんですとかどうです?」

「そんな言い訳が通じるわけないだろ!」

「……何星人かによるな」

「いや、父さん……」

「ここは定番で火星とかじゃないっすか?」

一般人への説明はわかりやすくないといけない。

火星あたりが妥当だろう。

「じゃあ駄目だな。木星あたりなら……いや、やっぱり駄目だ」

「金星はどうですかね?」

「あそこには流石に住めないだろう」

「……木星が良くて金星が駄目な理由を教えてくれ。というか、何が基準なんだ?」

金星が駄目か~。

そうなると難しい。

いっそのこと、シナリオありきでやってみたらどうか。

「ベテルギウスとかどうですかね?」

「ベテルギウス?」

「はい。ベテルギウスまたの名を平家星。超新星爆発の予兆があるかないかで色々言われていますから、そこから逃げるようにしてやってきたっていう設定です」

「う~ん、わかりにくいね。ちょっと、伝わらないかな。桃子に言っても微笑まれて終わりそうだ」

「……いや、だからな」

「――ほい、じゃあ恭也さんも意見をどうぞ」

さっきから文句しかつけない高町さん家の長男に意見を求める。

文句を言う事なんて小学生でもできるのですよ。

「さぁさぁ是非、忌憚無き意見を!」

「うっ……謎の組織、とか?」

「――だそうです士郎さん」

「はぁ、恭也、それはないだろいくらなんでも」

あれだ普段から武術ばっか磨いているから発想が貧困になるんだな。

みごとなまでの脳みそ筋肉っぷり。

「……宇宙人がよくて謎の組織が駄目な理由を教えてくれ」

「士郎さん……」

「あぁ、すまないフリードくん。恭也はこういうところがあるんだ」

士郎さんと二人で恭也を見つめる。

可哀想に。もう駄目かもわからんね。

「……俺が間違ってるのか?」

真剣に可哀想な子を見る目で見られたからだろうか、恭也はどこか遠くを見つめ現実逃避してしまった。

顔は良いのにもったいない。やっぱ、モテればいいってもんでもないな

さて、アホの子はほっといてどうにかせねば。

「――あぁ、わかりました! 謎の傭兵部隊とかどうですか?」

「おっ、いいな。フリードくん冴えてるぞ!」

「はっはっは、そうでもありますよ」

「ちょっと待てーー!! 何で謎の組織は駄目で、謎の傭兵部隊はいいんだよ!?」

「「……」」

「だからそんな目で俺を見るな! くっ、父さんそいつに何かされたのか?」

「はぁ、ついには被害妄想が……」

「恭也……」


「――――」

世界はいつだって、こんな筈じゃない事ばっかりだよ。

ずっと昔から、いつだって誰だってそうなんだ。

目の前の可愛そうなお兄さんのボヤキ何時までも木霊していた。











そして、世界はどうやらリリカルだった。

信じるって素晴らしい。

そう思ったのは、さっきの事。

まさか旅館の女将さんが俺達の言い訳を信じるとはね。

「――しかし、フリードくん本当にいいのかい?」

「んっ? 修繕費用の事なら構わないっすよ。俺こう見えて金はあるんですよ。それに、主な原因は俺ですから……」

「フリードくん……いや、やっぱりここは――」

「――どうしても払うっていうなら、今度翠屋で何か奢って下さい」

浮かべるは、もちろんパーフェクトフリードスマイル。

打算なしのゼロ円スマイルである。

「……あぁ、わかったよ、何時でもおいで。その時は、嫌って言うほど食べさせてあげるよ」

「ありがとうございます」

そう言ってもう一度、士郎さんへスマイルを届けた。

自分で言うのも何だが、これぞ雨降って地固まる、って奴ですな。

「……いや、もう何も言わないが、父さん、せめて地面を転がる少年に話しかけてることに疑問を持てよ」

仲があまりよろしくなかったはずの俺達が、仲よさげにしているのが気に食わないのだろうか、俺達の後ろで恭也がぶつぶつ何か言っている。

やれやれ嫉妬ってのは見苦しいものだ。まだまだ青いね。

「恭也さん、頑張って下さい。ふぁいと、だよ」

「……」

恭也の方を向いて言ったら、目を逸らされた。

人が応援しているのに、その態度はいけないですね~。

それとも、そのおまえと話すと何かがうつるってな態度は新たなツン表現なのだろうか?

これはあれだなシリーズ乙女verに活かすべきか。

「恭也さん、ちなみにデレ期に移行したらどうなってしまうんです?」

「……」

無視だ。典型的だが、なかなかに強烈なツン具合だな。

うむ、参考になる。

人間観察こそ商品開発の基礎。観察のため、ゴロゴロと恭也の周りを回る。

おっ、ピクピクいってるな。これはあれだ、爆発の兆候とみた。

何か名台詞が飛び出すやもしれん。

「……」

しかし、そのまま無言で立ち去ってしまった。

うむ、上手い。ここで切れるより、相手に確実にダメージを与えられる去り方です。

「ははは、フリードくん、あんまり恭也をからかわないでやってくれ」

「いえいえ、とんでもない。愛でてるんですよ、これは。といっても後で謝らねばですね~」

「あぁ、そうしてやってくれ」

二人談笑しながら部屋へと向かう。

その途中――

「あなた、ちょっとお話があります」

――そこには笑顔の怖い桃子さんが居ましたとさ。



一生懸命言い訳をする士郎さんを横目ににゴロゴロと通り過ぎた。

そうか、そりゃ一晩中どっか行ってりゃそうなるわな。

それに合わせて、現れたと思ったら部屋がぶっ壊れてるってな状況だ。

うん、頑張って下さい士郎さん。

まぁ、桃子さんは怒ってるというよりあれは――

「――あんた何やってるのよ」

「おう? やぁ、Good morning.Alisa Burnings」

「……」

「Good morning」

「……morning」

「よろしい。挨拶は大切ですよ?」

目を瞑り思い出す。おはようから始まっておやすみで終わるそんな日常。

そう、こういう何気ない日常が大切なのです。

人は失ってから気づ――

「――ぐふっ!?」

ドンッと何か俺の腹付近に衝撃を感じ目を開けると、そこにはパツキンの暴君が座ってらっしゃった。

「……何をしてらっしゃるんで」

「……なのはの元気がないのよ」

「はぁ」

「だからなのはの元気が無いっていってるの!」

「……そりゃまたご愁傷様ですね」

「朝起きたらもう元気がなかったのよ。昨日寝る前までは元気だったのに。ねぇ、あんた何かしらない?」

「さぁてね。というか、本人に聞けばいいじゃない」

「……聞いたわよ。そしたら、なのはの奴何も言わないんだもん。何でもない、何でもないって、何でもあるわよ!」

俺に怒鳴られても困るのですが。

さて、昨日ね。ぶっちゃけ戦いに夢中で外で何があったかなんて、ま~ったくわからん。

一晩中回ってた記憶しかない。

大方、ジュエルシード関連しかないとは思うが……

原作では何だっけ、フェイトの事でどうこうだったよな。

にしても、もう俺の原作知識なんか役に立つか微妙だしな。

とりあえず、何があったか聞いてからか。

「まぁ、とりあえず会いにいこうや。さっきから俺達注目の的だぞ? スポットライト浴びてますよ?」

そう、先ほどからぼちぼち起きてきた人たちに奇異の目で見られている。

傍から見たら金髪の子が銀髪の子を簀巻きにして勝ち誇ってるように見えるのかもしれない。

きっと、外国に変な文化が伝わってるって思ってることだろう。

「!? ――あ、あんたのせいなんだからね!」

そう言い、ようやく俺の上からアリサが飛びのいた。

なんというか、これはあれだ。

「べ、別にアリサのために椅子代わりになってたわけじゃないんだからね!」

よし、ツン返し成功!

この程度できなきゃ、FC社の社長は務まらない

「……」

なにその思いっきりひいた目。

うわー、私のツンに勝てるとか思っちゃってるんだみたいな、そんな挑発ですか?

FC社なめんなよ。

「早く案内しなさいよね。しょうがなく、本当にしょうがなくだけど行ってあげるわ」

「……それ、もしかしてあたしのマネとか言わないわよね?」

「ち、違うわよ! そんなんじゃないんだから!」

「……」

割と難しいなツン。

何より自分で言ってるというのを意識すると死にたくなるってのが難点だ。

だがしかし、そこはFC社の社長として――

「――うぐっ」

気が付けばアリサにアイアンクローをされていた。

「言いたいことはそれだけかしら?」

「……すんません」

「よろしい。じゃ、これ解いてあげるから普通に歩きなさい。このままじゃ目立ってしょうがないわ」

「待って! 僕の住処を奪わないで! コレが無いと僕は――あっ、はいかまわないです、はい」

「よろしい」

あぁ、解かれちゃう。中身が零れちゃう。

このままじゃ、僕の全部が暴かれてしまう。

「あぁん……」

「変な声出すな!」

「お願いだから、お願いだから優しくして……」

「あぁ、もう! あんたはキモいって言葉をしらないの!?」

「なんでそんなひどい事言うの? アリサちゃんだからOKしたのに……」

「あぁーー、もうだまれーー!!」


ふむ、とりあえず、そこでビデオ回してるお兄さんには、ひとこと後で言わねばなるまいね。

映りはどうですかってさ。









「おまえら俺を誰だと思ってんの?この程度余裕ですよ、余裕」

「ほら言ったでしょなのは。フリードなら何とかできるって」

なのはの顔が輝いていくのが見てとれる。

その笑顔を見るとちと心が痛むがしかたない。

「と、言いたいところなんだがな。残念だが無理だ」

「なんで!?」

「落ち着けユーノ。正確には今は無理だ。あのな、材料がないのですよ」

「材料?」

「そうパーツに使うものがない。調達しない限りは無理だ」

壊れたレイハさんを前にそう話した。



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