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No.11220の一覧
[0] とある幽霊の場合  (オリ主×再構成)[リットン](2010/03/26 21:58)
[1] 一話[リットン](2010/09/24 19:15)
[2] 二話[リットン](2011/05/01 19:10)
[3] 三話[リットン](2010/04/29 19:15)
[4] 四話[リットン](2010/04/03 00:42)
[5] 五話[リットン](2010/04/03 00:43)
[6] 六話[リットン](2010/04/03 00:43)
[7] 七話[リットン](2010/04/29 19:16)
[8] 八話[リットン](2010/04/03 00:55)
[9] 九話[リットン](2010/04/29 19:15)
[10] 十話[リットン](2010/05/03 09:54)
[11] 十一話[リットン](2010/09/24 19:14)
[12] 十二話[リットン](2010/04/29 19:13)
[13] 十三話[リットン](2010/04/29 19:13)
[14] 十四話[リットン](2010/04/29 19:12)
[15] 十五話 [リットン](2010/04/29 19:12)
[16] 十六話[リットン](2010/04/29 19:11)
[17] 十七話 A'sへ[リットン](2010/01/28 19:02)
[18] 十八話[リットン](2010/01/31 16:56)
[19] 十九話[リットン](2010/04/29 19:10)
[20] 二十話[リットン](2010/04/29 19:09)
[21] 二十一話[リットン](2012/03/20 03:00)
[24] 二十二話[リットン](2012/03/20 02:57)
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[11220] 十話
Name: リットン◆c36893c9 ID:73b2310e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/03 09:54
あなたは何故戦うのですか?

今尚戦い続ける戦士達に問う。

辛くは無いのですか?

逃げたくはないのですか?

そんなに辛そうなのにまだ戦うのですか?


――そもそも戦う必要があったのですか?


考えてみてください。戦わなかったら得られた幸せを。

考えてみてください。あなたの幸せはその先に本当にあるのかを。

考えてみてください。目的のために何を犠牲にしたのかを。

だから、全てを終えた後に私はあなたに問います。

――今、あなたは幸せですか?




目的があった。

親友との誓いがあった。

少女との約束があった。

それら全てが戦う原動力となるはずだった。

それら全てが背中を支える力になるはずだった。

――もう戻れない。

今や全て死地へと赴く己への足枷となっている。

行くなと語りかける。逝ってくれるなと語りかける。

……もっと早く耳を傾けていたなら。彼らの声が理解できていたならば。

そう、フリード・エリシオンは見捨てたのだ。救いを、そして自らを。







――――フリードがフリードである限り僕は君の味方をする、それだけだよ

決して見捨てなかった親友が居た。


――――バルディッシュの強さをあなたに見せてあげる!

優しさと誇りを持った少女が居た。



脳裏に浮かんだ映像に苦笑を洩らしフリードは頭を振った。

今更なのだ。今更過ぎるのだ。

最早、なるようにしかならない。

もう、賽は投げられ――



「――ぐはっ!」

題名“死地へと赴くカッコいい俺ver1681”が強制的に止めれてしまった。

「いっつぅ、何すんだおまえ。こっからだったのにっ!」

「何の話よ! だいたい、さっきから無視すんなって言ってるのに聞かないあんたが悪いんでしょうが!」

「まぁまぁアリサちゃん」

現在、俺様車上の人である。

つまりは、連行中の身の上であり逃げ場が無い。

故にこのパツキンにいい様にされている。

妄想すら許されない。これって人権侵害だと思うんだ。

「……まずこの配置がおかしい」

そう、窓際なのはいい。なぜにこのお嬢様が隣なのか。

「あんたをなのはの隣に出来るわけないじゃない」

「う~ん、大丈夫なんだけどなぁ」

「なのははこいつを知らないからよ」

おまえは俺の何を知っているというのか。

あれか俺の知らない秘密を握っているのか。

実は俺、戦闘機人でしたみたいな。

どうせなら仮面の方にして欲しいものだ。

アレには憧れて止まない。

ちなみに夏は辛いだろうなぁと考えてしまった事があるのは、夢を追い求める者として失格なので伏せておく。

「……怪人でもいいなぁ」

「あんたはこれが大丈夫に見えるわけ?」

「あはは……。えっとね、ちゃんとするときは本当にちゃんとするんだよ?」

「こいつが?」

「うんっ!」

でも、やっぱりメタルメタルした物もいいよね。

ここはやっぱガンダムか。

あれだ意思のあるガンダムになるんだ。

乗り込んだパイロットと意見が衝突してピンチに陥ったり、量産型に負けて俺はガンダムにはなれない……とか言ったりするんだ。

きっとあれだな、途中で絶体絶命になった時にコクピットを切り離して自爆したりもするに違いない。

そして、パイロットがなにか決意めいたイベントをこなした後、相手の新型機に負けそうな時に颯爽とパワーアップした俺が……

「えぇ、これはえぇ!」

思わず自画自賛しちゃう。

ブラボー俺。viva俺。

「……」

気が付いたら、ひいた目で見るアリサと、苦笑しているなのはと、いつもの事だと我関せずアリサの膝元で寝ているフェレットもどきが居た。

「なぁ、Alisa Burnings.パイロットにならないか?」

「なんの話よ。ならないわよ!」

惜しいな。意思を持ったガンダムなんぞどうせ叩かれるし、いっその事ロリツンデレでも入れてしまえと思ったんだけどな。

「そうか。なのは……はいいや」

「え~なんでっ!?」

「なんというか、いや、うん、なんというかな」

「なんで目を逸らすの!?」

あなたは、そのまんまの魔法少女でいて下さい。

むしろ変わらないことを願ってます。

「う~、アリサちゃんやっぱり席変わって欲しい」

「なんでよ。こいつ殴りたいの?」

「それもあるけど――」

「あるのかよ!」

「――うん、それ含めてちょっとお話しがしたいかな」

「まっ、そういう事なら、って、あんたなんであたしの手を掴んでるのよ!」

「イカナイデクダサイ。どうか行かないで下さい」

その子は俺相手だと配慮を忘れるのです。

怒ったらスターライトブレイカーを迷わず撃ってくるような子なのです。

元はといえばこの素知らぬ顔で寝ているフェレットもどきが全ての元凶なのだ。

フリードに何言ったって聞かないよ多少小突くくらいはしないと、とか余計なことを言ったせいだ。

始めは、えいっ、ポカってな感じだった。

和んだ。大いに和んだ。もっとやれ状態だった。

だが次第に、いや、事は指数級数的にエスカレートしていった。

えいっ、ゴスッに変わり、

えいっ、シュインッに変わり、

えいっ、ズドーンに変わり、

最終的には、辺り一面桜色で埋め尽くされる事になった。

そう、わずか一週間で素質が花開いてしまった。

満開だ。大フィーバーである。

きっと、俺相手だと高町の血がこいつを倒せと輝き叫ぶのだろう。

「……こいつに何かしたわけ?」

「別にしてないよ? 失礼なんだよフリードくんはっ」

「ふ~ん」

「失礼な事をした覚えがないな」

俺はいつだって変態と言う名の紳士です。

道を間違える事はあっても踏みはずす事は無いのです。

だって、歩いた道が俺の道なのだからbyフリード。

「む~、たくさんあるよ! 今日だって約束忘れて寝てるし」

「オールかました後ぐらい寝させてよ」

「だから、なんで寝ないの! あれだけ言ったのに!」

「男にはやらなきゃいけない事がたくさんあるのさ~、ららら」

「そういう態度が失礼っていうんだよ!」

「気持ちを声に出して詠うことのどこが失礼なのか。俺は流離う吟遊詩人よ。
 世を嘆き、世を憂い吟じる事を使命に生きてきたのさ」

「そんなの聞いたこと無いよ!」

「話してないからな。誰にだってある2面性、それが俺にとっては吟遊詩人なのだよ。
 然らば、ここで一句。眠いのさ、とにかく帰って、眠りたい」

「う~」

「……あんたらねぇ人を挟んで何やって――」

「――えいっ」

「――だが、なんとここでアリサ障壁が発動!」

「にゃっ!?」「なっ――!?」

手を伸ばしてきたなのはに対してアリサを無理やり楯にした。

お陰でなのははアリサに体ごと突っ込んだ形となる。

これぞまさに、組んず解れつ状態。

「なんということでしょう。勢いあまって親友が親友を押し倒してしまったのです。
 この後、親友同士が血で血を洗う争いをする事になるとは誰にも想像がつかな――」

「――あ、あんたねーー!!」

「ごっ、ごめんねアリサちゃん」

「なのはじゃないわよ! こいつよ、こいつ!」

「取りあえず、ほら、落ち着いて、ね?」

「このっ――」

「――なんとここでユーノバリア!」

「ふぎゃっ!」

パシーンと叩かれたユーノが飛んでいく。

まぁ、車内なので直ぐに当り止ってしまったが。

にしてもあんな人間っぽい叫びを上げるとはフェレット魂が無いな。

「あっ、ご、ごめんなさい。――なのは、この子大丈夫かな?」

「えーっと、うん、大丈夫みたい」

念話でユーノの大丈夫だと言う言葉と俺に対する罵詈雑言が聞こえた。

暢気に寝てないで、てめぇもさっさと舞台に上がれってな話だ。

「欧州人は摩訶不思議なり。いきなりフェレットを殴る文化が有るとはなんとも面妖な」

「あんたも外人じゃない! というか、これ全部あんたのせいよ!」

「アリサさん、全てを人に押し付けるということは良くない悪癖ですよ?
 ごめんなさい、全てはこれから始まる日本の良き文化です。我々も見習わなくては」

「あー、もう、こいつむかつくーー! というか、あたしは日本人よーー!!」

「そうか。実は俺も日本人なんだ。よろしくっ!」

同類ミツケタネ。ここは仲良くシェークハンドネ。

「誰がするか!」

バシッと手を払われた。

どうやらこの世は悪意で満ちているらしい。

「なのは俺は悲しい」

「えっ? えっ、でも、これは全面的にフリードくんが悪いんだよ?」

「考えてごらんなのは。喧嘩の末に勇気を出して仲直りのために握手をしようとしたら、その行為すら認めてもらえなかった者の気持ちを。
 悲しくないか? この世は悲劇しか無い、そういうことかい?」

「あっ、う~、そんな事言われても……」

「洗脳すんな! なのはも騙されちゃ駄目でしょうが。こいつのどこにそんな殊勝な気持ちがあるってのよ!」

「やれやれ、本筋が見えないようではこの先苦労するぞアリサちゃん?」

「くっ――」

「――おっと」

「あーー、避けるなーー!!」

避けるなといわれても、そんな振りかぶったら避けてくださいと言ってるようなものだ。

思わずボディがガラ空きだぜって言うところだぞ。

「平手打ちは避けろと当家の家訓なのですよ」

「このっ――」

「――ボディがお留守だぜ!」

「ひゃんっ」

殴りかかってきたので空いたわき腹を突っついてやった。

いい声で鳴くじゃねーか。

ふぅ、いかん、いかん僕は紳士という名の変態です。

……あれっ?

「何すんのよ! それに、平手打ちじゃないのに何で避けるのよ!」

「グーで殴り掛かって来たなら避けて反撃せよが当家の仕来りなのです。まこと申し訳ない」

「くぅ、じゃあ、何なら当るのよ!」

「熱いベーゼならいくらでも」

ニコッと微笑む。

鏡が無いのでわからないが割といい笑顔をしている自信がある。

コレを機にパーフェクトフリードスマイルと呼ぼう。

ちなみに、お値段はもちろんゼロ円設定だ。

「……ふふふ」

「えーっと、アリサちゃん?」

「わかった、わかったわ」

「なんだキッスでもしてくれるのか?」

そう返した瞬間、金髪が車内で煌く。

「っ――!?」

なんらかの一線が俺の頬を撫でた。

見てしまった。俺は覗いてしまったのだ。

開けてはイケない深淵の底を。

「覚悟……なさい」









「馬鹿な、これは!……くっ、マーシャルアーツだと!?」

「あんたが、あたしの限界を突破させてくれた。礼を言うわ。
 鮫島直伝の技見せてあげる。くらいなさいっ!!」

「まだだ、まだ終わらんよ!」

「はっ!!」

「あっ白――」













――「何故に目的地に着いた時点でこんなに疲れないかんのか」

「「……」」

ふむ、最早突っ込む元気すらないか。

ならば、ここに宣言しよう俺様完全勝利と。

<<フリード流石にやりすぎ>>

念話で話しかけてくる別名フェレットサンドバック。

結構ぼこぼこ殴られてた割には元気だな。

流石は結界使い。

<<楽しい道中でしたな>>

<<ああいうのをカオスっていうんだね。思い知ったよ>>

<<まさか。カオスってのはこれから起こるようなことを言うんだ>>

<<えっ>>

<<今から行くところは魔窟だからな>>

<<どういうことだよ?>>

<<さぁな。まぁ、お楽しみあれだ>>

<<……>>

正直、正面から乗り込むなんざ愚の骨頂のような気がするが来てしまった以上はしょうがない。

ここはあれだ。

「なのは、何がなんでも俺を離さないで」

「ふぇっ?」

なのはと手を繋ぐ。やれるもんならやってみろだ。

ただしその際は、なのは諸共だがな。

「……うーん、さっきみたいなのはもう嫌だよ?」

「あぁ、心配するな。何があってもなのはが守る!」

「……なのはが守るの?」

「Sorry.なのはを守る!」

じーっと握ってる手を見つめるなのはさん。

「何か問題が?」

「……ううん、何から守るのかなーって思っただけだよ」

「そりゃ、あらゆる災厄からでしょう」

「フリードくんがその災厄の場合は?」

「……この後ろから殴ろうとしているお嬢様が何とかします」

「えっ?」

「うっ」

振り向くと俺を殴ろうとしたまま止まったアリサが居た。

<<アリサさん止まっちゃだめだ! そのまま殴るんだ!>>

<<……おーいフェレットもどきー、心の声が漏れてるぞー>>

まったく、なんて奴だよ。

まぁ、殴られたらユーノバリアを張ってた訳ですが。

「……何でもないわよ。それで何であんた達は手をつないでるわけ?」

「えっと――」

「アリサちゃんに見せ付けようと思って。わたし達のLOVEを」

「にゃっ!?」

「――だそうだ」

「ち、違うよ! 今のは、フリードくんが――」

「――なのはにLOVEはないのか、これは悲しいね」

「えっ、な、な、何を。って、えっ?」

真っ赤になって、腕を忙しく動かすので手を振り回される格好になる。

そういう時は手を離せば良いと思うYO。

「しょうがない。これは手を取り合って行きましょう!」

そう言いつつアリサの手を取る。

まさに両手に花。またの名を両手に爆弾。

「なっ何すんのよ!」

「にゃっ!?」

そのまま突っ込む魔窟へと。







「……えっと、これはどういう反応をしたらいいのかな?」

導火線に火が点いた爆弾をそのまま抱えて持ってきた。

海鳴に来て何戦か経験のあるメイド長も流石にこの格好の俺には向かってこなかった。

どうやらまたしても俺の完全勝利のようだ。

「とりあえず休憩、かな?」

「……それをお願いするわ」

「……ごめん、すずかちゃんわたしも」

「俺はどっちでも――」

「はっ!」「えいっ!」

「ぐはっ!」

両脇から攻められるマイボディ。

馬鹿な……この俺のボディが甘かった、だとっ!?

そして、なのは、流石だ。まさかレバー……とは……







――楽しげな声が聞こえてくる。

これはいったい?

「目が覚めたか」

その声に思わず臨戦態勢になる。

「……おきっぱに戦闘は勘弁して欲しいね」

「別にやらんよ。お嬢様から固く言われている」

まぁ、もっともお前が望むなら別だがなとクールなメイド長さんが続けた。

「そんなの望みませんよ」

「そうか。目が覚めたのなら庭へ行け。お嬢様達が待っている」

ふむ、何やら知らない間に敵意が解けている?

なんか知らんが助かった。

ここは素直に状況に甘えましょう。





見れば微笑ましい光景だ。

なんつーかアレに野郎は邪魔だろう。

ここは、にゃんこと戯れよう。

「にゃんこよ、にゃんこ。おまえは何でにゃんこなんだい?」

「な~」

そんな事は知らないと気持ちよさそうに撫でられるにゃんこ。

「……あはぁ」

思わずトリップしそうだ。

「えへへ~、可愛ええのう」

ふと、視線を感じる。

誰っ!? 僕からにゃんこを奪おうとしているのはっ!

見るとこちらを見て微笑んでいるすずかが居た。

……ちっ、見つかったか。

さよなら、にゃんこ。行こうか戦場へ。


「あっ起きたんだ」

「ちっ」

「そんなに喜ぶなよアリサちゃん」

「どう見たら喜んでるように見えるのよ!」

元気だねー。いい事だ。

名は体を表す。まさに燃えるぜバーニング。

まぁ、ここは大人しく席へ行きましょう。

「……なんで今度は反応がないのよ」

「平和が一番よ。そういう気持ちをさっき貰いました」

見ればすずかにニッコリと微笑まれてしまった。

「? ――どうしたのすずかちゃん」

「うん、なのはちゃんの言うとおりだなと思って」

にゃんこ好きに悪い奴はいないと言うつもりなんだろうか。

世の中にゃんこの中にも悪い奴はいるのでそれは微妙だと思うけどな。

「あっ、そっか。うんっ! ちょっと変なところもあるけど」

そういってなのはが満面の笑みを浮かべる。

あぁ駄目だ。こそばゆい。純粋すぎて調子が狂う。にゃんこの群れに突進して俺はそんな出来た人間じゃなーいと叫びたい。

俺は、俺は汚れてしまっていたのか。

お天道様の真ん中を歩いていたつもりでいつの間にか外れていたのか。

「あぁ……」

思わず頭を抱える。

「……っで、これがどうちょっと変なわけ?」

「あはは……」

「でも、うん、悪い人じゃないよ」

「うっ、すずかまでこいつの味方に」

「アリサちゃんだってホントはそう思ってるんでしょ?」

「えっ、うー、まぁ……」

なんだこいつら聖女か。

いっその事殺せよ。この穢れきった僕をさ。

その聖なる剣で貫いておくれよ。

「うふふふ……」  

「とりあえず、コレはどうにかしたほうがいいんじゃないの?」

「えーっとね、そのままの方がいいかな。こういう時は放置してってフリードくんのお知り合いさんがいつも言うから」

「こいつの知り合い? また、碌でもなさそうな奴ね」

「そう、奴は碌でもない」

「あっ、復活した」

「あんた脈絡が無いにも程があるわよ!」

「奴の悪口のためなら涅槃の畔だろうがアビスの底だろうが駆けつけるさ」

「……カッコつけて言ってるけど、言ってる事は最低だよね」

奴のために、そう親友のために不肖ながらフリード・エリシオン帰ってまいりました。

何から話そうか、すずかに撫でられて気持ちよさそうにしているユーノを見ながら考え――

「っ――!?」「えっ――!?」

『“――フリード!”』

どうやら、にゃんこが戯れに賽を振ってしまったようだ。

仕方ない。さぁ、魔法少女始めようか。












――「あらー?」

こんなところまで原作と乖離しているわけね。

既に想定していた巨大ネコはいなかった。

代わりに居たのは死神ちっくな少女と中空に浮かぶジュエルシード。

「……女の子?」

隣に居たなのはが呟く。

「う~ん?アルフは?」

「ここに居るよ」

そう言いアルフが右手の方の木々から出てきた。

恐らく周囲の警戒か。まぁ本来この屋敷に忍び込むのは相応の度胸が必要だったりするわけだけども。

「フリードくんのお知り合いさんなの?」

「あぁ、生き別れた姉妹達だ」

「えーー!?」

「なのはいちいち本気にしたら駄目だよ」

良い反応で驚くなのはをユーノが嗜める。

そういう積み重ねが彼女の純粋性を削っていくんだというのにっ。

「相変わらず適当な事言ってるねぇ、あんたは」

「性ですから。変えられ無いね」

「そうかい」

「そうよ。んでフェイト、そうやって待ってるってことはジュエルシードを賭けて戦えということか?」

「……うん、でも予定が変わった」

「?」

なんのこっちゃ。準備しようと思ったところで待ったがかけられた様なものだ。

思わずガクッとなりかける。

「その子に用がある」

「えっ? わたし? なんだろ」

「……今ジュエルシードは何個持っている?」

「えーっと、6個かな」

「それは、フリードに貰ったの?」

「えっと、4つは貰って、1つは一緒に捕まえたよ。ねっ?」

なのはが確認するように俺に聞いてくる。

「おう、それで間違いは無いぞ」

「……そう」

なんでそんな責めるような目を。

しょうがないじゃない。一応俺は元々お手伝いのために居るんだし。

――そして、彼女の瞳は悲しさを湛える瞳へと変わった


「いや、元からジュエルシードはここに居るユーノ達のために集めていたから――」

「――いいよ、もういい! 後はその子から奪う! 邪魔しないで!」

何アホなことってやばっ!

「ちっ!」「にゃっ!?」

金色の砲撃が辺りを薙ぐのを、なのはを抱えてなんとか躱わす。

狙いは完璧になのはだ。

「くそっ、おいおいアルフさんよ、こりゃいったいなんだ?」

前方で構えをとるアルフに問う。

なんであんなに怒ってらっしゃるのかを。

「……あんた、本当にわからないのかい?」

「さぁてな。少なくとも怒られる義理は無い気がするね」

「そうかい。あの子は敵でその子は味方――こう言われてもわからないかい?」

「……さよか。なら伝えてやってくれ、俺はアンパンマンよりバイキンマンの方が好きだってな」

「……何の話か知らないけど、それは自分で伝えな!!」

『Protection』

アルフが打ち込んできた拳にレイジングハートが対応する。

「つぅ、なのは闘えるか?」

「う、うん!」

「よっしゃ、じゃあ任せた」

「えっ? フリードくんは?」

「あのお馬鹿さんを止める!」

実戦の少ない今のなのはじゃ、アレはキツイ。

恐らく話し掛ける前に墜とされる。

「Erいけるか?」

『もちろん、さぁ常闇へと引きずり込もうではないか』

「おっしゃ! んじゃ、ユーノ、なのはを任せたぞ!」

「わかったっ!」




「邪魔しないでって言ってるのに!」

「そう言われると邪魔したくなる年頃なんだよ!」

「う~」

打ち合ってわかる。この子は以前とは全然違う。

自分用に調整されてるとはいえ、一週間で新規と言っても過言では無いデバイスを使いこなすか。

「頼むからちったぁ人の話を聞いてくれ」

「聞きたくない! バルディッシュ!」

『Sonic Form』

フェイトのバリアジャケットが変移する。

しかし、見つめる先は俺ではなく、なのはだ。

最高速で突撃する気かよ。

「ちっ、Er!」

『了解したよ』

スピードで来ると言うなら、付き合ってやろうじゃねーの。

「あっちばっか見てないでこっちにも気を配りな!」

『シュートバスター』

フェイトへ向かって銀の射撃を撃つ。

「っ――、もうっ!」

もうじゃねーです。

とりあえず止まりなさい暴走少女。

『ブリッツ』

そして、使うは高速移動魔法。

全てを置き去りに――

『Blitz Rush』

――はどうやら出来なそうにない。



「はっ!」

「くぅっ」

上段からそのままErを叩きつける。

周りは全て止まっている。

その中で俺とフェイトだけが動いていた。

一合、二合、三合。

切り結ぶ。

ぶつかり合う。

加速が途切れた時が勝負の分かれ目。

それを察しているのか一歩も引かない。

スピード勝負で負けるわけにはいかないと目が語っている。

さっきまでの目はもうしていない。俺だけを見ている。

ならばと、さらに加速を重ねる。

『加速』

『Acceleration』

これ程の加速は初めてだ。空間が時折制御できず端の方が燃え上がっているのがわかる。

失敗すればソニックブームに巻き込まれてミンチは確実。

恐らくは後一段上げればそれは起こる。

笑える。最高に笑えるじゃないか。

何より精一杯論理を考え無理やり制御して加速している俺より、天賦の才能で本能的に加速している彼女の方が空間的に安定しているのが良い。

コレより先を見たくば天賦の才を超えろ。そう言ってるようだ。

デバイスの処理能力は、ほぼ互角。

言い訳なんかできない。

「はははは」

「くっ、フリードもう止めて!」

「なんでだよ。これからだろーが」

「違う! どう見てもこれ以上の加速は――」

「――ならね、止めてみな!」

「うっ」

無駄口を叩くフェイトへと切り込む。

どうやら気づいていない、さっきと立場が逆転してしまっている事に。

まぁ、そんな事はどうでもいい。さっきからアドレナリンがドバドバ出ている。

最早、止められない。自分ではどうにも出来ない。

男としての闘争本能に完璧に火が点いている。

「さぁて、どこまでいこうか?」

「もう、馬鹿っ!」

『Acceleration』

さらに加速するか。ならばこちらも――

――加速したままフェイトが突っ込んできた。

「なっ――!?」

見えるのはフェイトの頭。

デバイスを振り下ろすわけにはいかない。

そして、突っ込んできたフェイトにそのまま抱きしめられた。

『Ring Bind』


墜ちていく。

加速が止まってしまった俺達をようやく動いた世界が迎える。

にしてもバインドで自分ごと拘束して強制的に加速を止めるたぁね。

「――そういやフェイト、さっき馬鹿とか言ってたがそりゃお前さんのことだ」

「……この状況でよくそんな事が言えるね」

「だってな、あんな石ころの1つや2つでこの世の終わりみたいな顔した奴にゃ言わないとな」

「……そんな問題じゃないよ」

「どんな問題だよ。じゃあ、聞くよ。おまえさんの相棒、バルディッシュは誰が強化したよ?」

「……」

「それだけじゃあ不満ですかお姫様?」

「……」

無言で抱きしめられた。

それが答えと受け取っておこうか。






――「待ってっ! わたしは高町なのは。あなたは?」

「……私はまだあなたを認めていない。だから教えられない」

「えっ」

なのはの顔が失意に歪む。

そう簡単には名前を許さないらしい。

ここで俺が教えたらどうなるんだろうと思わないでもない。

「それとフリード。次、あんな無謀な事したら許さないから」

「……ほ~い」

人を怒る余裕があるとは。どうやら完全に立ち直ったようで。

ちなみに、ここのジュエルシードはフェイトが持っていくことになった。

どこか思うところがあったのかユーノが言い出した事だ。

奴なりに思惑があるのかもしれないが、渡すと決めた際に頼んだよフリードと言った言葉が気になるところではある。

何か責任が微妙に増えてる気がするが大丈夫なんだろうか。

「行こうアルフ」

「はいよ!」

二人を橙色が包む。

そして、そのまま虚空へと消えていった。

「あっ……」

なのはの何ともいえないような声が漏れ聞こえる。

「さぁて、戻りますか魔窟に」

「……あのねフリードくん――」

「――あの子の事は自分であの子に尋ねる。その方が良いと思うけどね」

「……」

暫く、地面を見つめたと思ったらグッと胸の前で拳をなのはは握った。

「うん、そうだね。わたしあの子とお話ししてみる!」

「おう、頑張っていきまっしょい」

まぁ、結局は魔法に依るどつき合いに終始するような気もするけどもね。

そう、魔王様的に考えて。

「……また、失礼な事を考えてる気がする」

「まさか、俺はいつだって真剣になのはの事を考えてるよ」

「う~」

真っ赤になりながら睨んでいる。

照れるのか睨むのかはっきりして欲しいところだ。

「まぁまぁ、とにかく今はお茶でも飲んでゆっくりしましょう」

「あっ、そういえば。あの子の言ってたフリードくんの無茶って何かな?」

「よし、行くぞ、そこの空気!」

「えっ、ちょっ、ごっ、ごめんなのはーーー」

ドップラー効果で叫び声を上げるフェレットもどきを鷲づかみにしながら魔窟へと駆ける。


「あっ、待ってよーー」





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