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No.11215の一覧
[0] 妙薬の錬金術師(現実→鋼の錬金術師、転生TSオリキャラ)【R15】[toto君](2012/03/30 23:20)
[1] 1話[toto君](2009/10/02 00:13)
[2] 2話[toto君](2009/10/02 00:13)
[3] 3話(さらに修正)[toto君](2009/10/02 00:13)
[4] 4話 上編 (修正)[toto君](2009/08/28 15:40)
[5] 4話 下編[toto君](2009/08/30 19:41)
[6] 5話 上編(修正)[toto君](2009/09/27 12:01)
[7] 5話 下編(修正)[toto君](2009/09/15 15:29)
[8] 6話(修正)[toto君](2009/09/18 22:28)
[9] 7話 上編(修正)[toto君](2009/09/18 22:53)
[10] 7話 下編[toto君](2009/09/26 17:32)
[11] 8話[toto君](2009/10/02 00:30)
[12] 閑話[toto君](2012/03/25 16:10)
[13] 閑話2[toto君](2012/03/25 20:50)
[14] 実家編1話[toto君](2012/03/27 00:20)
[15] 実家編2話[toto君](2012/03/26 23:34)
[16] 実家編最終話 【暴力表現あり】[toto君](2012/03/30 23:17)
[17] キメラ編 1話[toto君](2012/03/30 20:36)
[18] キメラ編 閑話[toto君](2012/03/30 20:46)
[19] キメラ編 2話[toto君](2012/03/31 07:59)
[20] キメラ編 3話[toto君](2012/03/31 13:29)
[21] キメラ編 4話[toto君](2012/04/15 19:17)
[22] キメラ編 5話[toto君](2012/04/01 10:15)
[23] キメラ編 閑話2[toto君](2012/04/02 00:30)
[24] キメラ編 閑話3[toto君](2012/04/02 12:08)
[25] キメラ編 最終話 上[toto君](2012/04/02 20:50)
[26] キメラ編 最終話 下[toto君](2012/04/03 02:45)
[27] 9話[toto君](2012/04/15 19:18)
[28] 閑話 魂の合成 自己採点編[toto君](2012/04/15 19:17)
[29] 閑話 怠惰な兵士と戦うアルケミスト 1話[toto君](2012/04/16 02:33)
[30] 閑話 怠惰な兵士と戦うアルケミスト 2話[toto君](2012/04/21 23:49)
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[11215] 実家編最終話 【暴力表現あり】
Name: toto君◆510b874a ID:a283f18c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/30 23:17
両親は帰るなり私に

「座れ」

といきなり蹴り、強引に居間のソファーに座らせ。させる。

怯えながらゆっくり座ると

「遅い」

と髪を掴まれ6発ほどビンタで頬を叩かれる。

やっぱりお父上は兄よりもマシだ。

まだビンタぐらいの可愛らしいもの。

と、思いきや座った私の鳩尾に蹴り。


「がはっ………」

思わず、呼気が搾り出され、大きく呻く。
髪を掴んだまま蹴られたので衝撃の逃げ場なく、下手をしたら内蔵に傷がつくほどの痛み。
手加減してください、これから子供つくるかもしれないのに。
貴方達が私に望む機能も果たせないかもしれませんよ。


「間抜けが、なんの為に育ててきたと思っている」

やっぱりです。

そんな事を思いながら咽ながら俯き、掴まれた髪に痛みを感じながら黙り込む。

頑張れ私、貝のように余計なことを言わずにただ、静かに嵐が通り過ぎるのを待つのだ。
どうせ結婚するから痕が残るような怪我はさせないはず。

「よりにもよって国家錬金術師殺しの事件に巻き込まれるとは」

そしてギリギリとアイアンクロー。
54過ぎても相変わらずの握力ですね、お父様。


あ、痛い、痛い、痛い。

顔面、凄い痛い。

呼吸が止まりそう、息が詰まる。

女性の方が痛みに強いので女性人格のまま耐える。
男性女性の切り替えが進んだのってこのお陰である。

ああ、愛が痛い。


絶賛説教中の私をパトリシアが心配そうに私を見る。

そして

「少将、発言よろしいでしょうか、ユーリック御嬢様の今回の件は、私が至らない為に起きたこと、私がしっかりと護衛をこなしていれば
このようなことは起きませんでした」

「黙れ、全てはこの娘にある、こいつがしっかりと予定を決めていれば、このようなことにならない」

で、パティは黙り込み、泣きそうな顔で私を見る。

正論です。

一人暮らしに浮かれてだらしなかった私のせいです。
つーかパティ、駄目フォロー禁止。
フォローするたびに私の無計画さが顕わになりますから。

此処で空気を読まず、別に縁談は破談になっていないんだからいいじゃないですか、とか言いそうになるけど
お宅の娘さん、相変わらず勇敢でよろしいですね、ますます家の息子と結婚させたいわ、なんてお褒めの言葉つきじゃないですか。

なんでこうまで怒られる。

一言物申したいが

我慢、我慢、我慢。

しっかし、キャデラック少尉、貴方そのまま報告とか、我が一族のこと全然知らなかったようですね。
流石、生真面目バートン派です。
私からすれば空気を読まない程の馬鹿真面目っていう感じなんですが。





そして隣に座る我が母が私の小指を掴み、折れるか折れないかのギリギリまで曲げる。

「う………あ…む」

無理、無理、無理、火がついたように泣き喚きたいぐらい痛い。

必死に口を閉じ、痛みに耐える。
耐えてやる、絶対泣かない。
私は錬金術師だ、知によって人でありながら、人を超えるべき者。
こんなもの、私には効かない。

錬金術師は心が折れなければ、負けない。
心が折れることを敗北と言うならば、私は折れない。


「なんだその眼は」

どうやら、必死に痛みに耐える私の眼は父にとって不快だったらしい。
怒りの雰囲気が増してきた。

うあ、素直に泣いとけばよかった。

そして目ざとくある物に眼をつける。


私の首に掛かる大事な大事な懐中時計。
国家錬金術師の証である銀時計。



狗になった証の首輪だが、それなりに思い出があったのに。
これを手に入れたとき、飛び上がって喜んで、沢山の人たちに頑張りますって見せてきたのに。



――――置いてくればよかった。


「もういらんな、こんなもの」


容赦なく私の首から外され、豪快に床に叩きつけられる。
錬金術で分解するような精密な分解ではなく、どこまでも粗暴な破壊という分解。

くるくると私の目の前で精密部品を巻き散らかせながら時計が壊れていく。
まるでその程度で壊れる程度の価値しかなかったように壊れていく。

嘲笑うかのように、時を刻むのを止める。






あーあ。



泣いてもいいですか。

てゆうか別にぶっ壊さなくても。

あとでこれ、国に返上するんだぞ。

あとパティ、私より真っ先に泣くな。



「知っているだろう、ユーリック……我々は代々、力在る者の下で力を振るい、長年血を保ってきた一族だ。
昔からそうして生き永らえてきた、そして力在る者の為に利益を追求し、認められてきた、わかるか」


知るかっ!

初耳だっ!

「国家に対し忠誠を誓う軍人として常に臣民を守る為に戦う事こそ誉れとせよ」

という奇麗事は嘘だったのか。
歴史に生き残るために作りあげた嘘か。

所詮、犬か。
狗にもなれない雑兵の一族か。

結局はその程度か。

おかしいとは思っていた、でも、信じてきた。
私の直接の先生達は皆優しい人たちだったから。

だから頑張ろう、そう思ってきた。











でもお前達は屑だったのか。





この歳になってやっと眼が覚めた。

何度も顔を叩かれ、それでも、失望はやめない。
痛い、でも痛みよりも笑いがでるのを我慢しなくちゃならないから、歯がぐらぐら行くこのビンタも

気付け薬のようなものです、と私は思う。




いかに強くても、所詮その程度。
アメストリス南部、最強の少将といってもその程度か。

ああ分かる、いつまでたっても出世出来ないのが分かりますね。

ふん、狗でなく竜に成ろうとする東部の焔よりも、器が狭い。
ああ、男だったら、ああいう男こそ、出世するものだ。
何一つ捨てずに向かう、あの男。
気障りな人だが、あの人は良い男だ。

我が家の馬鹿どもと来たら、どいつもこいつも

それに結局、子供の中で私が一番出世してるじゃないか。

えーと一番上の兄が少佐だったかなー。

35で少佐って結構凄いですけどねぇ。

私はね、国家錬金術師として少佐位ではなく実は大佐位なんですよ。
まったく意味の無い位ですけど。

大本の国家錬金術師運営委員会と大総統しか知りませんけど。


ああ、国家資格返上するの嫌だなぁ………。

去年、総統に「私って少佐扱いですかー」と聞いたら

「いや大佐だ、はっはっは、これからも発明よろしく頼むよユーリ君」と頭を撫でられたものだ。
いっとくが、私ほど経済的に国益向上を行なう国家錬金術師は居ないのだ。

だから好き勝手やっても許して貰ってるし。

査定半年無視とか余裕ですよ?
だって無視した分だけ1000倍返し余裕。
特許は全てほぼ無償に近い金額で売ってるんですよ?

特許元の食材はある程度、私だけ無料という条件を理由に。

面倒そうだから両親には報告させてないけど。
私の手がけたあの世界のパクリは全て中央、東部で大ブレイクしてますからね。
ここ数年、今では一日に国民が食べる物の中に私が考えた物が大抵混じってますからね。
大まかに知っているのはパティと各企業と国家錬金術運営委員会と大総統。



バターよりも安価なマーガリンとか(マルガリン酸の発見者、ありがとう)
落花生ジャム、ようはピーナッツジャムとか(アメリカのどっかの兄弟ありがとう)
シリアルとか。(ジョン・ ハーヴェイ・ケロッグ博士、ありがとう)
フルーツグラノールとか(開発者わからんけど、ありがとう)
シーチキンとか。(はごろもフーズ、ありがとう)
粒果コンソメとか(開発者わからんけど、ありがとう)
エトセトラ。


食文化が浅いアメストリスに浸透させてるの私ですからね。

完成させたのは企業だが、原型は私だ。

ピーナッツジャムは1920~30年代に出来たらしいからほっといても誰か作ったかもしれんけど。

パン食民なアメストリスの朝は私から始まっていると言っても過言ではない!
私のもう一つの渾名しってますか?


【起業の錬金術師】

私の趣味でどれだけの会社が出来たことか。
私の趣味の一つに、あることがあります。

人が私の発明じゃなくてパクリを口にしているのを影でニヤニヤすること。
ちなみに誰がつくったのかと、聞かれれば、答えてあげるが世の情けではありません。
過度な期待は怖いので、黙ってます。
製品化されてもあんまりにもな発明は隠してます。

所詮パクリだからなんだか後ろめたいし。

私はちょっとアイディア出す感じの謎の錬金術師でいい。

ある意味、傷の男も真っ先に狙う功績の数。

アメストリス人の中では1番名が売れてるんですよね。

インパクトに欠けて話題にあんまりならないですけど。
キャラが薄いのだろうか、私。





でも昔身近だった食品作成にずーっと錬金術を使ってたんですから。

いつかあの紅蓮をボロクソに笑うために。


所詮古臭いロートルだな、とユーリックは心底馬鹿にして、でもここは頷かないと駄目だと判断しコクリと首を下げる。

「お前のやってきたことは認める、だがな、果てしなく無意味で無価値だ、くだらない、そんなことのために育てた心算はない!
折角の錬金術も、ただのお前の遊戯でしかない!子供のお遊びだ!くだらない!無意味で無価値だ!」

耳元で激しく怒鳴られる。









あ?








あれですよねお父上?

結局。


ワタクシが事件に巻き込まれ、結婚直前に経歴に傷がついたから怒ってるだけですよね。
私自身を心配して怒ってる訳じゃないですよね。


そしてこの言い草。



流石に……………切れるぞ。

意味も価値も誰がそれを決めると思う?

私だけだ。

私が培ってきたものだけは、私のものだ。
何が認めるだ、無価値だって?無意味だって?

違う、絶対に違う。
意味も価値も私は求めない、私は―――――。

やりたいから好き勝手にやってるだけだ。
私が良かれと思ってやっている。

だから、知るか。

知ったことか。




私は貴方達にしてみれば道具だが、意志はある。
家族だろうが、なんだろうが、譲れないモノはあるのだ。


そこのところ分からせてやろうではないか。
私は自立した一人の大人だということを。


一気に女性格から男性格に切り替える。

現在、私の首を絞める父、小指をへし折りそうなぐらい曲げる母ちなみに最初にやられた方は既に脱臼している。


こんなもの

実は滅多に使わないが、私には特技がある。
二重人格さながらの人格の切り替えでマスターしたある技術だ。

それは暗示による、自己変革。

しかし時間が掛かる、咄嗟には行えない、脳みその中でゆっくりと、まるで錬金術を行なうように
自らを錬成する。

理解、分解、再構築。

こんなもの

父の片手で腕を掴み、母に握られた片手に力を込める。

一気に

跳躍する。

強引に拘束を引き千切る。

ぼきり、と小指が折れるのを感じた。
食い込んだ指が首の肌を削るのを感じた。

こんなもの

私にとって無意味で無価値だ。

屋敷のソファーから跳ね上がり、私は空中で一回転する。

なんと見事なバク宙か。

泣きながら私を見ていたパティの表情が驚愕に変化していくのがよく見て取れる。

そして見事に着地。

秘技、脳内錬成。

ま、ただの肉体のリミッター解除なんですけど。
元々、生体錬金が主として教えられた錬金術だったので、人体にはそれなりに詳しいのですよ、私は。
痛みなぞ、所詮電気信号。

こんなもの私には無意味だ。

余裕に耐えられる。
心に傷がつくほうがよっぽど痛い。
私は命が一番大切な物じゃない、もっと大切なモノがあるならば、傷つくことを厭わない。
大切なモノが傷つくぐらいなら、身体の傷など厭わない。



私は妙薬の錬金術師。

私の誇りは傷つけはさせない。
錬金術師を名乗る時の私は、大切なものを捨てたりしない。
いつだって、どんな時でもあっても逃げない。


絶対に誰であろうと敗北しない。

暴力程度の苦痛に負けることを敗北と言うならば

どんな苦痛にも耐えてみせる。

そしてこの手で大切なモノを掴み取る。

だから、本当にこの程度のこと、くだらない。



くだらなすぎるのだ。


さっさとこんな詰まらない茶番は終わらせたいものだ。

私は床に散らばった懐中時計を拾い上げ錬成し直し、首に掛けなおす。
あとで、時計屋に持っていこう、などと思いながら。

こんなこともあろうかと、錬成陣は懐中時計の蓋に掘り込んであるんですよ。
流石、国家錬金術師の為の懐中時計、外殻はとても丈夫です。


「で、私はいつ結婚すれば宜しいのでしょうか、お父様、お母様」

私はおしとやかに典雅に舞うように振り向き、優雅に両親に微笑んだ。


それに対し、苦々しく私を見る両親。

どうせ、言うことを聞かない、じゃじゃ馬娘め……なんて思ってるんでしょうけど。

お父様、貴方は軍人としては優れてますけど、親としては最悪ですよ。
お母様、貴女は婦人としては優れてますけど、親としては最低ですよ。

私はね、レディでなく、軍人でもなく、錬金術師ですから。


そういう視線を籠めて睨み返す。



ああ、相変わらず、価値観の共有がどこまでも不可能な家族ですね、と胸の裡で苦笑する。

地球は丸くて曲線だというのに、相変わらずの平行線。
一応、理解はしてあげますけど、納得は一生しませんよ。

これは我侭です、私らしい、ね。

だからねお父様、お母様、二人とも、周囲の鈍器で私を殴らないでくださいね。

死にますから。






実家編3







あれから3日。

両親を華麗に挑発してから
暫く恐ろしい数の折檻を受けたが、折れぬ私に業を煮やし
私は両親から頭を冷やしてこい、と家から追い出され南部の街中を歩いている。
結婚式前日まで帰るな、との御達し付き。



「なんという無茶を……ユーリ」

「あれでいいんですよ、パティ、家族間のコミュニュケーションですよ」

私はジュリから渡された紅茶が入った水筒を時たま傾けながら街を歩く。
タンニンは傷の回復を早めるのだ。


あんなことをやってしまった後なのに気分よく街中を歩く。


ああ、すっきりした。
家庭に入る前の心残りその1が今日達成された。

清清しい。

頭の包帯と顔の絆創膏と首に巻かれた包帯と小指に巻かれた包帯に大変痛々しさを覚えるが、気分は最高です。
しばらく誰にも見せられないほどの傷を全身に作りましたけど。

内出血がいっぱい出来たぐらいだ。

うん全治1月だね、と私は朗らかに笑う。

丁度兄が家から出かけてたのが不幸中の幸いである。

アレに折檻に参加されていたら、本気で死を覚悟するだろう。

私の乳歯を殆どをバキ折ったのは、あの兄だ。

最早DVだ。

幼い頃は口癖が「ぅあがー」だったし。
ご飯も碌に食べられなくて、何度食事中に殴られたことか。





でもお陰で衣装合わせもサクサク進むだろう。
露出が多いのは着れないだろうし、楽チンだ。




「でもあのユーリは格好よかったですよ、あのバケモノ少将に、あんな風に言い返すとは……」

貴女が軍人であれば、貴女の元で戦いたかったです、とパティは微笑む。

「ありがとう、パティ」

実際ブチ切れてからの行動だったから、あんまし実感ない。

「手が……震える」

今更ながらに恐怖で全身が震え始める。

盛大なやっちまった感が……。

ここ数日は怪我の痛みで殆ど呻きっぱなしでベッドの中で実感する暇もなかったが


ああ、やってしまった。









「すいません、パティ……しばらく貴女の家に泊めてください」

両親はまだいい、あの加減を知らない兄とだけは遭いたくない。
反抗すれば嬉々として私をぶん殴るだろう。
軍人にならなければ、ただの異常者な兄のこと思うと、流石に恐怖する。

クルーガー兄さんこそ、私がこの世で一番恐れる人間。
戦いだけに喜びを感じる、生粋のバートンの血族。
あれに理屈は通用しない。

私なんてそこら辺の犬ころと変わらない、と断言したあの兄が怖い。

いくら私がいくら心の奥底では勝利していようが、バートン家の人間は私を容赦なく殴るだろう。
そういう、家なのだ、あそこは。

私が何言おうがどうせ変わらん、変わらん。
あの家の人間は戦闘能力だけはピカイチなのだ。
あの時の拘束からの脱出も両親の手加減があったからこそ出来た行為だ。
リミッター外そうが、所詮私は非力な素人。

普段だったら私が束になっても絶対に勝てない。
だから自分を犠牲にして逃げた。




「しょうがないですね、ユーリは……でも、貴女が一番好きですよ、誰よりも……貴女を守りたい」

それは残念。

男だったらパティと結婚していたのに。
私に後ろから抱きつくパティの温もりに思わず微笑む。


「では、結婚前に貴女と浮気をしましょうかね」

ぐるりと回りパティに正面から抱きつく。
相変わらず、無駄がない戦闘職の女性らしさの欠片もない硬質な身体だが。

私は好きだ。

戦場でもこの身体で私を守ってきてくれたし。



「………私はそのケはないですけれど、貴女ならいいかもしれません」

そう、言って。

またパティお得意の私に対する胸揉みセクハラが開始される。

「いや、それは勘弁……」

それは虚しいだけだし。

ないものはないのだ。

あればよかったのになぁ。

「上手くいかないもんですね、世の中って」

「嫌いですか、世の中」

一緒に逃げますか?

とパティは冗談交じりで私にそう、言う。
でも少し、瞳には本音がある。

優しい人だね、パトリシア。

私は笑う。

守られるばかりの立場もそろそろ逆転しないと。

「いえ、嫌いじゃないですよ、だってすごい面白い」

世界は面白い。

エド君、アル君、旅は楽しいですか?
旅立ちの元々はツライことかも知れませんけど、世界は楽しいですよ。
旅は苦しくても楽しいものですよ、楽しむものなんです。

美味しいもの食べて、いろんな場所みて、いろんな人にあって。




私も戦場に旅立った時は苦しくて泣きそうなことがいっぱいありました。
それ以上に旅は広さを感じて、面白かったですよ。

不味いもの食って、酷い処ばかり見て、酷い人ばかりにあっての三拍子でしたけども。
それでも拷問のような我が実家よりも、多くの人たちに頼られたこともあり、それなりに不幸だけの記憶じゃないんですよ。

私も本当に貴方達に着いて行きたかったです。


多分、貴方達なら笑って私を旅のお供に連れてってくれたでしょう?

そして頼ってくれたでしょう?


本当はそうしたかった。
初めて出来た、私の錬金術を馬鹿にしない、二人の錬金術師の友達。
私の他愛もない錬金術に対し本気で応援してくれた二人。
最初はどこか後ろめたい目が私に向けられたが、最後は友として私を見てくれた。
頼ってくれた。
錬金術師の多くは誰しも皆、どこかずっと私を下にみたり、羨んだり、そういう感じの人たちばかりだった。
そんな風に考えてもしょうがないのにね、と笑い飛ばしてきたが。

実はちょっと寂しかったのだ。

そういう評価や風評が入らない場所で態々一人、田舎で研究を続けてきたし。

情けないが、所詮、私もこの程度。





「パティ、後のことは後に考えてですね…また市場に行きましょう」

取りあえずは気晴らし、気晴らし。

「え、またですか?」

「どうせ結婚まで一月なんですから、遊んでる内にあっというまですよ」

とりあえず、遊びながら急いで怪我を治さないと不味いな、と笑う。

私もこれでも女だ。
強がってても、やっぱり顔はさっさと治したい。
結婚する時は一番綺麗な時じゃないと嫌なのだ。

我が両親が用意してくださった婚約者は良い男なのだ。
あの戦場で、ただ一人泣いた、国家錬金術師。
私は彼が婚約者になる前から知っている。


誰かの為に本当に涙を流せる人ほど素晴らしい。

ポケットの中に入っている白百合の押し花で作った栞はまだきちんと残っている。
懐中時計よりもこっちの方が大事で隠しておいて置いたのだ、


誰しも、女ならお花をプレゼントされるのは、嬉しいものですし。


「ええ!?」

「超早まりました」

大戦果である。

行くも地獄、行かずも地獄の大戦果。

これぞ、背水の陣。

錬成陣を張ってきた私も驚く大戦果。



「でも、その顔で市場に行くのはおやめになった方が……」

「あ、不味いですか………」

「下手したら本当にお嫁に行けなくなります」


取りあえず、パティの家で安静に過ごすかな、と私は溜息を吐く。

あ、そういえば、先生の家に行けば傷の一つや二つは簡単に直してくれそう。


決めた。


久しぶりに先生の家で、お喋りしよう。





実家編 了



キメラ編に続く。





結局はチキンな我が主人公
所詮、力を持っても根本的には逃げださない主人公。
ただの貧乏性とも言う。


そして実は史上最大の物凄い超才能の無駄遣い国家錬金術師。

実は勝手に一人でも生きていける。
でも、貧乏性が板についていて逃げ出せない。
旅行に出かけたら、取りあえず、旅先で家燃えてないかなぁーとか心配するタイプである



次回も続く。





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