雪蓮クラン+一刀+華雄=11人。
桃香クラン+恋+ネネ=13人。
総勢24人での迷宮探索は、これまで行って来た数々の探索とは全くの別物だった。
はっきり言えば、探索効率が悪すぎたのだ。
それでも全員が高い実力を有しているため、初日はいつも通りにBF20まで辿り着けた。
しかし2日目以降、その攻略ペースは落ちる一方であった。
これはムネムネ団時代の一刀が悩んでいた、団員達の攻略ペースの遅れと同様の問題である。
つまり味方の人数が多すぎて、敵を回避出来ずに余計な戦いを強いられていたのだ。
元々雪蓮達は、全員が一丸となって敵と対峙する戦い方であった。
防1攻3という前衛陣の顔ぶれを見れば、それ以外の戦法が取れないことも確かである。
従って突破戦こそ強いが、夜営時には絶対的な安全地帯が必要不可欠なのだ。
このことを考えると、雪蓮達が階層を進めるためには桃香クランとの同盟が必須だったと言えよう。
だがそれで人数が増え過ぎ、攻略の難易度が高くなってしまうのは本末転倒である。
桃香クランから前衛を2,3人借りるのがベストだったし、今回の場合はそれすらも必要ない。
なぜなら一刀と華雄が雪蓮クランに参加すれば、2パーティに分けることは十分に可能だからだ。
それらを全て理解した上で、それでも全ての人数を動員することに決めたのは、雪蓮クランの頭脳である冥琳だった。
冥琳は、この大き過ぎるデメリットを甘受してでも、多人数であることのメリットが必要だと考えたのだ。
第一に、安全性が挙げられる。
各クラン2パーティずつ、計4チームでの迷宮探索。
余裕のあるローテーションは仲間達の体力の消耗を防ぎ、足は遅くとも確実に目的地まで辿り着けるだろう。
BF25へは到達した経験があり、そこから海岸までは一刀の導きがあるのだから尚更である。
第二に、多様性である。
今回の主目的は迷宮探索ではなく、対アトランティス戦だ。
未知の敵と戦うのだから、何が起こるか分からない。
だがどのような事態になっても、様々なスキルを持った仲間がいれば十分に対応出来る。
BF26以降へ進みたいならともかく、要するにBF25まで辿り着ければよいのだ。
それに主眼を置くのであれば、多少の探索効率低下は問題にならないというのが冥琳の判断だったのである。
さて、この辺りで一刀の入った蓮華パーティの構成を挙げておこう。
パーティメンバー:一刀、蓮華、思春、明命、亞莎、小蓮
パーティ名称:筋肉少女帯
パーティ効果:STR1.5倍、VIT1.5倍
普通の後衛にはあまり恩恵のないパーティ効果だったが、亞莎は暗器の、小蓮はチャクラムの使い手でもある。
このパーティ特性を活かすため、魔術や召喚は最小限に留めて物理攻撃を主体とした戦術を提案した一刀の考えは、これまでの所かなりの成果を上げていた。
今の彼女達は、紛うことなき物理特化パーティとなっていたのだ。
ちなみに雪蓮達の方は、それ以上に極端であった。
攻撃特化の雪蓮に、烈火の名を与えられる程の攻撃力を持つ華雄が加わり、更にそれを穏の固有スペル『侵略如火』でブーストした結果は、以下の通りである。
「はわわ、脳筋にも程がありましゅ!」
「あわわ、防御なにそれ美味しいの……」
「ふん、1発殴られる間に、3発殴り返せばいいのよ!」
「その通りだ。さすがは『江東の虎』と称された母御を持つだけのことはある」
「あら? 華雄は母様と知り合いだったの?」
「うむ。存命の時分には、よく手合わせをして頂いたものだ。尤も、私が勝てたことは遂になかったが……」
桃香クランの誇る優秀な軍師達からの酷評にも、雪蓮や華雄はどこ吹く風なのであった。
「ふっ!」
ゴーレムの重みのある一撃を、しっかりと盾で受け止める蓮華。
技術こそ姉の雪蓮には及ばぬものの、蓮華の秘めたポテンシャルは他の誰よりも高い。
母から譲り受けた頑健な肉体は、敵の苛烈な攻撃にもびくともしない。
常に最前線で攻撃を受けながらも動じない心は、厳しくも暖かく育ててくれた姉のお陰であろう。
2度目の攻撃も受け切った蓮華に、更に追撃が放たれる。
大重量のゴーレムから撃ち出されるという一点だけで、単純な左右のパンチが必殺の威力を纏う。
その衝車のような一撃を、蓮華は左に受け流した。
「せいっ!」
「はあっ!」
蹈鞴を踏んで体を泳がせるゴーレム。
その先には、狙い済ましたかのように思春と明命が待ち構えていた。
いや、狙い済ましたかのように、ではない。
そこにゴーレムが来ることを、思春達は知っていたのだ。
蓮華ならば、きっとこうするという読み。
思春達ならば、きっとそこで待つという読み。
お互いの意志がしっかりと噛み合った、見事な連携であった。
それだけではない。
蓮華は一刀の位置取りを横目で確認すると、即座に思春の前に回り込んだ。
そして思春に対して行われたゴーレムの反撃を、今度は右に受け流したのである。
ゴーレムの無防備な背中が、ちょうど一刀の目の前に現れるように。
一刀は、ただ全力で鞭を振るえばいいだけであった。
無論その軌道上に味方は存在しない。
まるで蓮華が初撃を受け止めてからここまでの流れが、全部お膳立てされているかのようだ。
(……もしかして、お膳立てをしてくれてるのか?!)
思えば今までの戦闘も、いつもより遥かに気を配らずに済んでいた。
皆をフォローする一刀の戦闘スタイルを考えると、こんなことは偶然では起こりえない。
逆に言えば、これは彼女達がパズルのピースを埋めるようにして戦闘を進めている証拠である。
特に戦いのイニシアティブを握っている蓮華が、2手先3手先を読んで敵を誘導しなければ、こうして戦闘の流れを作ることなど不可能であろう。
技術的には雪蓮に劣ると蓮華を評した前述は、撤回せねばなるまい。
桃香クランのメンバーが雪蓮達との合同探索で腕を上げたように、蓮華達もまた桃香クランと共に戦闘を行うことで成長していたのだ。
蓮華達に負けてはいられぬと、彼女達の位置取りや動きに追従する一刀なのであった。
いつもの倍以上の時間を掛けつつも、2日目にはBF22、3日目にはBF24まで辿り着いた一刀達。
LV24~25の混成部隊だけのことはあり、道中の安定度は抜群であった。
その順調過ぎる行程の中、一刀のステータスにあまり嬉しくないご褒美が追加されていた。
【武器スキル】
ホーミングスロー:遠隔攻撃が必中となる。
遠隔武器ということで半分予想していたが、今更こんなスキルが追加されても使い所などあるわけがない。
意味のない死にスキルに、一刀は溜め息をついた。
正直に言えば、残りの半分くらいは期待感を持っていた一刀。
元々はダガーなのだから、デスシザーやインフィニティペインなどの必殺技が復活するかもと考えていたのだ。
「もしくは、『眉目飛刀』の目から怪光線が出るとかさ。そのくらいのことはあってもいいじゃないか」
「それはもう分かったから、ちょっと声を落としなさい。みんな寝てるんだから」
一刀の愚痴を窘めたのは、蓮華である。
3日目の夜営、今は蓮華達が見張り番だった。
「大体、悩みが贅沢なのよ。私なんて、そんな特殊技能なんか1つも持ってないわ」
「蓮華の武器は、雪蓮と同じ両刃剣だろ。なら、雪蓮と同じ技が使えるはずだぞ」
「……桔梗さんからもそう言われたんだけど、駄目だったのよ」
「となると、単純にスキル不足ってことか。雪蓮に比べると、蓮華はどうしても盾が主体の戦い方に……待てよ、盾か」
ステータス上の名称は『武器スキル』であり、盾は『防具』である。
従って、普通に考えれば盾スキルの上昇と必殺技の習得に関連性はないだろう。
しかしRPGでは、シールドバッシュなど盾を使った技も多く採用されている。
試すだけならタダなのだから、挑戦しない手はない。
「考えられる効果は、強烈なノックバックだな。後は全体防御とか絶対防御とか、もしかしてシールドブーメランみたいな遠隔攻撃の必殺技かも」
「よくそんなに思いつくわね。……私には出来ない発想だから、羨ましいわ」
「素敵で可愛らしい蓮華の役に立てると思うからこそ、アイデアがいくらでも湧いて来るのさ」
「ふふ、一刀。貴方のそういう所、好きよ」
一刀の美辞麗句には、そろそろ慣れてきたのであろう。
大げさな一刀の言い回しに、軽い口付けを返す蓮華。
いい雰囲気になりつつあったが、残念ながらここは迷宮内である。
そして見張り番についているのは、一刀と蓮華だけではないのだ。
「蓮華様、一刀様。お忙しそうなところ、申し訳ありません」
「ひゃん! ……明命、気配を消さないでよ」
「すみません。お2人の邪魔をしてはと」
「で、どうしたんだ?」
夜営している場所の周辺を見回っていた明命の報告によると、突然向かいの小部屋に宝箱が湧いたそうである。
このフロアの宝箱には、恐らくキメラのドロップする『金の鍵』が使えるはずだ。
鍵は探索中にもいくつか出ていたし、一刀も以前手に入れた物を所持していた。
「見つけたのは明命なんだから、明命が開けろよ。雪蓮達を起こすのもアレだし、鍵は俺のを使っていいからさ」
「いえ。一刀様の鍵なのですから、一刀様が使って下さい」
「私達はこれまでにも何度か宝箱を取ったことがあるの。だから、遠慮しなくてもいいわよ」
「……ありがとう。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうな」
その場に蓮華を残して、明命と共に向かいの部屋に向かった一刀。
彼が開けた宝箱の中には、液体の入った小瓶が5つほど入っていた。
BF16~BF20までの宝箱は装備品が中心であったが、どうやらBF21~25の宝箱は消耗アイテムがメインのようである。
どんな効果があるのか分からないが、とりあえずそれらを大事にしまって、一刀達は蓮華の元に戻った。
「お、帰ってたのか、思春。周りはどうだった?」
「付近に敵はいない。もうしばらくはゆっくり出来るだろう」
「残念だわ。早く一刀のアイデアを試してみたいのだけれど……」
「明日だってあるんだしさ。正直、敵が来ないのはありがたいよ。小蓮や亞莎を起こさなくて済むんだから」
「それもそうね。後衛は精神力も消耗するのだし、休める時にしっかりと休んで貰わないと」
敵が来たらいつでも参戦出来るよう、部屋の隅で寝転がっている小蓮達。
一刀の提案した戦術に基づいて普段よりも多く物理攻撃を行ったために、彼女達は見張り番をする体力が残っていなかったのである。
小蓮や亞莎の特別扱いに不公平さを感じる者は、この中には誰一人としていない。
ここまで深いフロアだと、後衛の消耗度が迷宮探索に大きく影響するからだ。
従って出来る限り休むのは、言わば魔術師の義務であるし、下手な遠慮をされる方が余程迷惑なのである。
もちろん余裕のある時にも手を抜いた方がいいという話ではない。
消耗を抑えるという意味では正着手でも気の緩みが発生するのは避けがたく、それがいずれ最悪の事態を招くからである。
要は自己管理をしっかり行いましょうね、あと無理は禁物ですよ、というだけの話だ。
あどけない顔で眠る小蓮と亞莎で目の保養をし、明命や思春と交替して周囲の索敵に向かう一刀なのであった。
4日目の夜。
たかが5階層の移動に丸3日を費やしながら、一刀達はようやくBF25海岸へと到着した。
探索終了予定日まで残す所あと3日、ここからが本番である。
海岸へ辿り着いた夜のうちにアトランティス対策を練り、実戦で確かめることになった一同。
それはまさに、軍師達の独壇場であった。
参謀:冥琳
作戦:アトランティスを【赤壁】で囲み、魔術攻撃のみで決着をつける。
一言:「熱光線が物理攻撃ならば、敵は手も足も出ないはずだ」
結論:敵の攻撃は【赤壁】をも貫いた。冥琳を庇った一刀の魔術攻撃無効マントも貫通したので、熱光線はどうやら特殊攻撃に分類されるらしい。
感想:「ふっ、やはりそう上手くは行かないか」「冥琳、格好つけてないで、さっさと逃げろって!」
参謀:穏
作戦:蓮華を『不動如山』などで最大限に強化し、熱光線を防ぐ。
一言:「これで敵の攻撃が防げればぁ、ぐっと戦いやすくなりますよぉ」
結論:土系統の魔術は一部有効であったが、敵の攻撃を完全には防げなかった。
感想:「てへっ、失敗失敗ですぅ」「……穏、ちょっと向こうでOHANASHIしましょう」
参謀:亞莎
作戦:恋にタイマンを張って貰う。
一言:「恋さんなら、恋さんならきっと何とかしてくれます!」
結論:確かに何とかしてくれたが、さすがに連戦までは無理そうだった。
感想:「こんなの、策とは言えませんね。もっと勉強しないと」「お腹空いた……」
参謀:朱里
作戦:翠の【錦馬超】で敵の攻撃を防ぎ、その間に力を溜めた鈴々が一撃必殺の攻撃で仕留める。
一言:「はわわ! 穏さんと被っちゃいました!」
結論:具現化した錦は熱光線を通さなかったが、近距離で全てを受け切るのは不可能だった。
感想:「翠さんの身体能力でも、難しいですか……」「翠は根性が足りないのだ!」「なんだと、このっ!」
参謀:雛里
作戦:自身の加護スキル【連環の計】で敵の足止めを行い、遠隔攻撃のみで倒す。
一言:「敵の熱光線は直線的で軌道が読みやすいですので、遠距離であれば確実に避けられるかと……」
結論:弓などより遥かに敵の攻撃回数が多かったため、結果的に苦戦を強いられた。
感想:「雛里ちゃん。私みたいな年寄りを、あんまり扱き使わないでね」「年寄りだなんて、そんなことない。紫苑さんは十分に魅力的だよ!」「あわわ……、ち○こもげろ……」
様々な作戦を試し、効果を検証する参謀達。
彼女達が特に注目したのは、穏の作戦で使用した土系統6段階目の魔術『泥の形代』であった。
土系統を得意とする魔術師がLV25から使用出来る『泥の形代』は、実に160ものMPを消費する大魔術である。
その効果は敵の攻撃を一定回数だけ無効にするというものであり、アトランティスの熱光線も例外ではなかった。
通常の探索では効率が悪過ぎて使用出来ないこの魔術も、今回の場合に限っては非常に有効だと言える。
敵が確実に単体であり、戦闘がパターン化されていること。
敵の攻撃は単調で避けやすいため、被弾自体が少ないこと。
敵はHPが低いので、少人数で撃破可能であること。
これらの条件が出揃っているため、『泥の形代』をベースとした戦術を選択することが可能だったのである。
「次、行くぞ。それっ!」
合図と共にアトランティスを釣り上げ、それと同時に横っ跳びで地に伏せる一刀。
この瞬間、5割程度の確率で熱光線が一刀に向けて放たれることが分かっていたからだ。
一刀の真上を熱光線が通過する。
このパターンの場合、こちらの最初の1手は雪蓮の斬撃だ。
銃という武器は撃ち終わりの隙が出来にくいが、それでも無防備に伸ばされた右手は格好の的である。
ここでアトランティスの行動は、雪蓮の攻撃を避けるか、それを無視して左手で更に攻撃を加えようとするかに二分化される。
今回は後者を選んだアトランティスの右腕が宙を舞い、しかしその左手に握られた銃は雪蓮をロックオンした。
「姉様!」
そこに飛び込んできたのは、アトランティス討伐メンバー最後の1人である蓮華だ。
自慢の盾で敵の腕をかち上げ、蓮華はその照準をずらす。
しかしタイミングが微妙に合わなかったのであろう、発射された熱光線が雪蓮の左頬を焼いたかに見えた。
その瞬間、雪蓮の姿が一瞬だけ霞んだ。
焼き爛れるはずの雪蓮の顔面の代わりに、幻想の形代が燃え上がる。
だが今は、そんなことに構っている暇などない。
蓮華によって弾かれたアトランティスの左腕を、鞭で絡めとる一刀。
そうなってしまえば、決着はついたも同然だ。
正面から背後から、雪蓮が蓮華が、唐竹割りで袈裟切りで、アトランティスに襲い掛かる。
一瞬で昇天するアトランティスの姿がやたらと満足気げに見えたのは、恐らく一刀の不純な願望が入り混じってしまったせいであろう。
「雛里、『泥の形代』が切れたわ」
「あ、わかりました……」
そう雪蓮に答えたものの、雛里のMPが160を切っているのが、一刀には分かっていた。
NAME:雛里【加護神:鳳統】
LV:25
HP:360/309(+51)
MP:122/352(+100)
これまで見た中で誰よりも高いMPを持つ雛里だったが、それでも『泥の形代』を3人にばら撒き続けるのはキツいように思える。
しかし一刀は、何も口出しをしなかった。
雛里には鬼性能の加護スキルがあることを、一刀は知っていたからだ。
≪-落鳳坡-≫
鳳統が主君の身代わりとなって命を落としたとされる故事。
その伝説が嘘か真かは知りようもないが、一刀だけには雛里の身に何が起こったのか一目瞭然であった。
NAME:雛里【加護神:鳳統】
LV:25
HP:122/309(+51)
MP:360/352(+100)
雛里の呪文は、まるで上記の故事のように自分のHPとMPとを入れ替える効果があったのだ。
『泥の形代』を雪蓮に掛ける雛里と、彼女を支えるようにして『癒しの水』や『活力の泉』を唱える朱里。
だが彼女達は、その貢献度に相わしい恩恵を全く授かっていなかった。
そう、雪蓮達は3人だけでパーティを組んでいたのである。
この非情とも思える措置は、意外なことに朱里達自身の提案であった。
LVが平均的なパーティよりも突出した人物がいた方が、迷宮探索において有利であることは周知の事実である。
それを最大限に利用したのがPLであることからも、その法則は分かり切っている。
更に言えば、前衛のLVさえ高ければ後衛は多少低くても問題ないが、その逆はありえない。
これらのことから、雪蓮クランの攻防の要である雪蓮と蓮華のLVを集中的に上げようというのが、軍師達の総意であった。
もちろん可能であれば一刀も外したかったのだが、残念ながら敵を釣った時点でタゲを取ってしまうので、それは不可能である。
従って一刀達が3人でパーティを組み、対アトランティス戦を集中的に行うことになったのだ。
朱里と雛里を含めた5人だけを残し、他のメンバーはそれぞれ近場でLV上げを行っている。
そのLV上げにも参加出来ない朱里達の献身に報いるためにも、1体でも多く敵を倒そうと頑張る一刀達なのであった。
戦闘自体は極めて短時間で終わるため、一刀達の連戦速度は凄まじいものがあった。
朱里達に負い目を感じていた分だけ、自分達を追い込んでしまったというファクターも見逃せない。
普通であれば気が狂ってしまうような地獄の3日間は、彼等の心身を確実に蝕んでいた。
それが最終日の後半ともなると、特に一刀を見る雪蓮の目が常軌を逸しているほどにやばかった。
「あっはぁ。わ、私、もう……」
「……姉、様?」
「欲しくて、欲しくて……」
「雪蓮、蓮華。次の奴、行くぞ」
「……堪らないのよっ!」
一刀に飛び掛かった雪蓮は、そのまま彼に馬乗りとなって自身の服を引き裂いた。
『泥の形代』があったとはいえ、彼女達を貫こうと飛び交う熱光線の脅威自体が消えることはない。
長時間に渡る過度の緊張と、命を危険に晒し続けた反動により、雪蓮は極度の発情状態へと陥っていたのだ。
「ごめんなさい! 妹達や冥琳の彼だからって、ずっと我慢してたけど! 愛してるわ、一刀!」
「むくちゅっ、ぷはっ! 待って、ちょっと待てって! その気持ちは嬉しいけど、朱里達だっているんだからっ!」
「はわわ! す、すぴー、すぴー」
「あわわ……、ぐうぐう……」
「とにかく続きは、帰ってからにしよう! 蓮華も雪蓮を止めてくれ」
「一刀、姉様のことを好きなら、このまま抱いてあげて。私、ずっと自分の気持ちを抑えてた姉様の思い、よくわかるから……」
あまりの突然さに思わず止めに入ってしまったが、元々一刀は倫理感の強い方ではない。
雪蓮のムチムチとした肉体感に、だんだんと子供達の前であることがどうでも良くなってきた一刀。
(むしろ朱里達の性教育になって、かえっていいんじゃないか?)
などと一刀は、遂に自己正当化をし始めた。
しかし、なぜか性行為にのめり込めない一刀。
歳の差に関係なく愛情を抱いた季衣達や、元からエロティックだった小蓮とは違い、朱里と雛里はあまりにも初月である。
一刀はそのことに、どうしても罪悪感を覚えてしまったのだ。
そんな一刀の様子を察した蓮華が、ここで参戦してきた。
初めての時以来、なぜか複数プレイの機会に恵まれている蓮華。
彼女の戦技が防御特化ならば、その性技は3P特化と言える。
「れ、蓮華。そ、そんなとこ、汚いわ……」
「姉様の体は、汚くなんてないです」
「はぁん! ふふ、蓮華もいつの間にか、あっひ、ず、随分と大人になったのね」
「ぺちゃ、はむっ、はぷぅ……、姉様、気持ち良くなって下さい……」
姉に尽くす蓮華と、彼女を愛おしげに抱きしめる雪蓮。
彼女達の痴態は、一刀の罪悪感をあっけなく吹き飛ばしてしまった。
2人の絡み合いが、それほどまでに官能的であったのか。
いや、決してそれだけが理由ではない。
性行為を通じて伝わる、蓮華の姉への敬意。
そして雪蓮の妹に向ける愛情。
彼女達の間には、ただエロスとだけでは表現しきれない何かが、確実に存在していたのだ。
結局の所、積極的に彼女達の交わりに参加することとなった一刀。
雪蓮と蓮華を交互に相手取りながら、姉妹の絆をしっかりと感じていた一刀なのであった。
**********
NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:27
HP:487/432(+55)
MP:30/0(+30)
WG:70/100
EXP:6472/9000
称号:○○○
パーティメンバー:一刀、雪蓮、蓮華
パーティ名称:棒姉妹
パーティ効果:クリティカルヒット率アップ
STR:40(+11)
DEX:55(+22)
VIT:30(+3)
AGI:43(+12)
INT:29(+1)
MND:22(+1)
CHR:55(+18)
武器:新・打神鞭、眉目飛刀
防具:スパルタンバックラー、勾玉の額当て、大極道衣・改、ハイパワーグラブ、仙人下衣、六花布靴・改
アクセサリー:仁徳のペンダント、浄化の腰帯、杏黄のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、奇石のピアス、崑崙のピアス
近接攻撃力:301(+39)
近接命中率:125(+14)
遠隔攻撃力:167(+15)
遠隔命中率:113(+18)
物理防御力:197
物理回避力:129(+24)
【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。
カラミティバインド:敵全体を、一定時間だけ行動不能にする。
ホーミングスロー:遠隔攻撃が必中となる。
【魔術スキル】
覆水難収:相手の回復を一定時間だけ阻害する。<消費MP10>
【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。
所持金:41貫