「ところで兄ちゃん、なんかちょっと臭うよ?」
迷子の一刀のため迷宮探索を切り上げて、皆でテレポーターまで戻る途中、唐突に季衣がそう指摘をした。
その言葉にショックを受ける一刀。
確かに買ったばかりの新しい服は、汗と血に塗れてべちょべちょであった。
手持ちの金は2貫800銭。
逃げたりしたため、余り拾う余裕がなかったが、それでも今回の探索で得た小銭やアイテムを売れば、手持ちと合わせて3貫くらいにはなりそうである。
その金は薬と矢弾につぎ込もうと思っていた一刀であったが、季衣のその言葉に着替えやタオルなどの生活用品を買い直すことを検討した。
「でも、そんな荷物を持って探索なんか出来ないしなぁ」
「へ? 荷物なんか、部屋に置いてくれば?」
そんな季衣に一刀は、自分の部屋で起きた盗難の話を聞かせた。
一刀自身は怒りよりも哀しさを感じていた出来事だったため、それに対して思うことも特になく、ただ単にそういうことがあったんだ、的な口調だったし、季衣達も用心するようにと、忠告がてらのつもりであったのだ。
だが一刀にとって予想外なことに、その話を聞いた季衣や流琉は怒り心頭であり、一緒に聞いていた祭や穏も眉をひそめたのである。
「兄ちゃん、諦めないで、ちゃんと犯人を探さなきゃ!」
「そうですよ、兄様。そういう輩は懲らしめないと、同じことを繰り返します」
「いや、別に犯人探しをする気はないよ。なんていうか、うまく言えないけどさ、例えば盗んだ奴が大金持ちだったら、いや、普通に生活出来る金だけでもあったら、あんな襤褸切れになった服なんて盗まなかったと思うんだ。うーん、だから、許してやりたいというか、こんな境遇自体が悪いんであって、もちろん盗んだ奴も悪いんだけど、んー、やっぱりうまく言えないな。あー、要するに、罪を憎んで人を憎まず? そんな感じなんだよ」
「……兄様罪を憎むのであれば、やはり犯人を捕らえて反省させないといけないんじゃ?」
四苦八苦しながら季衣と流琉を宥める一刀であったが、やはり言いたいことは通じていなかったようであった。
「ボク達の部屋に荷物を置けばいいよ」
と言う季衣の言葉に甘えさせて貰うことにした一刀。
今までは服が乾くまで全裸で見張っていなければならなかったのだが、部屋で干させて貰えれば、その時間もLV上げに使える。
タオルや石鹸に下着と服、出費は全部で1貫と、手痛い出費となったが、必要経費だと割り切った一刀。
だが、出費はそれだけでは終わらなかった。
「む、お主のブロンズダガーじゃが、随分と痛んでおるぞ? もう数回で折れてしまうじゃろう」
祭の指摘を受けた一刀は、泣く泣くブロンスダガーも買い替えることにした。
この痛み具合では砥ぐだけじゃ済まず、修理するくらいなら買った方が丈夫で安く上がる、との祭の助言に従ったのだ。
ブロンズダガーの代金も1貫であり、残った金で回復薬、傷薬、毒消しをそれぞれ10個ずつ買った一刀には、矢弾を買う金が残らなかったのであった。
(まぁ、ボウガンがなくても慎重に戦えば大丈夫だろ)
そう自分を慰める一刀に、全員食堂へ集合しろとのお達しが届いたのであった。
食堂の一面に白い布が掛けられ、そこは俄か作りの大聖堂となっていた。
そしてそこには、神に祈るマッチョモンスター達が佇んでいたのであった。
「はーい、皆さん注目。今日は週に一度のお祈りの日ですよー。我こそはと思う人から順番に、巫女様に祈って貰って下さいねー」
七乃の仕切りに、一刀は自分のLVが上がっていたことを思い出した。
ということは、今回も『贈物』が貰えるはずである。
よっぽどのものじゃない限り、売却しよう。
そう考えながら列に並んでいた一刀に、ようやく順番が回ってきた。
「あらん、貴方、ここの子だったのねん。うふ、私がギルドから身請けしちゃおうかしらん」
「ぬぅ、儂も代金を半分出そう。最近夜の一人寝が淋しくてのぉ」
洒落にならない冗談(だと思いたい)を口にする漢女達に、一刀は冷や汗を流す。
そんな一刀の心境を知ってか知らずか、漢女達は一刀に向かって不気味にウインクをすると、太祖神に祈り始めた。
「先日『贈物』が出たばかりだから、今回はないと思うけど、ご主人様のためになんとしても出して見せるわん! うっっっふぅん!」
「ぬぬぬぬっふぅん!」
いつの間にか自分をご主人様呼ばわりするマッチョモンスターから、相変わらず視線を逸らす一刀。
漢帝国の巫女たる漢女達に敬意をまったく払っていない一刀であったが、ゲームシステムの力は偉大であり、そんな一刀に対しても『贈物』はきちんとポップしたのであった。
「あらやだ、本当に『贈物』が出たわ。私の真心を込めた祈りのお陰かしら?」
「ぬぅ、だが儂等の祈りで『贈物』の出現率まで変えられるのかのぉ?」
「そうよねぇ。普通の子なら、最初の『贈物』から早くても2週間は置かないと、次の『贈物』は出ないのよねぇ、おかしいわん」
漢女達が不思議がるのも無理はない。
探索者は通常パーティを組んで迷宮に挑むため、EXPも頭割りであるのだ。
そのため、一刀と同条件で戦っていたとしても、敵1匹に対しての1人頭の稼ぎは、一刀の数分の一なのである。
それに加えて、探索者達は一刀とは異なり、リアルな感覚で戦闘をしているのだ。
安全マージンを大きめにとったフロアでの戦闘をする者も多いし、緊急時でなければ連戦もしない。
更に、テレポーターの存在するフロアでLV上げをする探索者達は、一日2,3時間も戦えばいいところである。
その結果、1戦闘で得られるEXPが1,2であり、一日で稼ぐEXPが10、20程度の探索者も多い。
それがLV3であれば、LVアップして『贈物』が貰えるまでに3,4ヵ月かかる計算になるのだ。
テレポーターがまだ未設置である最前線で戦う華琳達のようなパーティであれば、他のパーティがいない分、連戦することも頻繁にあるのだが、彼女達のLV帯では次のLVに上がるためのEXP総量が多くなり、これもまた容易にLVが上がらない。
なによりも、一刀を除く探索者達は、その戦闘で得たEXPを知る術がないため、自分が適正なフロアで戦っているかどうかがわからないのだ。
そのため、効率的な狩りをしている一刀とは比較にならないくらいに、LVの上昇が遅いのである。
漢女達の言っている『早くても2週間』という言葉は、ソロで戦わざるを得ない低LVの剣奴が基準であるが、彼等ですら一日4時間しか戦っていないため、一刀とは比べるべくもない。
だが一刀は、そんな他の探索者達の状況には気づいていなかったし、漢女達の疑問などそれこそどうでもよい。
一刀はポップした『贈物』を拾い、そそくさとその場を後にしたのであった。
一刀の受け取った『贈物』、それは不思議な感じのする石であった。
だが、それを持つ一刀のステータスは、特に補正されていなかった。
剣奴ではないが、巫女が来ているなら祈ってもらおうと食堂に来ていた祭に、その石のことを聞いた一刀。
その石の効果は、驚くべきものであった。
「それは初期の方によく出る『贈物』でのぉ。強化したい武器でその石を割ると、その威力がわずかに上がるのじゃ。わずかと言っても、実感出来る程度には変わるから、なかなかの当たりアイテムじゃぞ。尤も、その効果があるのは初級クラスの武器だと言われておるがのぉ。儂もこの弓にそれを何度か試したが、元の威力が大きすぎて、効果があるのかないのかわからんかった」
まさに、手に入れたボウガンに使えと言わんばかりの『贈物』である。
だが、それでボウガンを強化したところで、矢弾がないのでは意味がない。
「とはいえ、己の命を預ける武器の威力が上がるアイテムであることには変わりない。手に入れた者は大抵自分の武器に使用するため、需要が供給を上回るアイテムじゃ。買値の相場は10貫、ギルドだと足元を見られて5貫程度の売値じゃろう。もしお主がそれを売るつもりであれば、儂が8貫で買い取ろう。どうじゃ?」
そんな祭の申し出をありがたく受け入れた一刀なのであった。
十分な矢弾代を手に入れた一刀の選択した新たな狩りの方法。
それは、ジャイアントバットのみを狙った乱獲であった。
仕事は相変わらずBF1のテレポーター警備であったが、BF1ではジャイアントバットを倒して得られるEXPが5になっており、またボウガンの威力も明らかにオーバーキルであったため、ダガーのみを振ってお茶を濁して休憩時間に充てることにした一刀。
自由時間を使って下の階のテレポーター周辺で狩りを始めたのである。
BF2から順番に試していった一刀であったが、1撃で倒せるのは今のところBF3までであり、そこを拠点に他の探索者達に交じってジャイアントバットを狩り続けたのであった。
だんだん隠しパラメータである射撃スキルが上がってきたのであろうか。
もしくは単純にLVが上がったせいであろうか。
3回に1回程度しか命中しなかったボウガンも、最近は2回に1回当たるようになってきていた。
コウモリにありがちな設定である、超音波による回避補正も入っているらしいジャイアントバットでもその命中率なので、コボルトやゴブリンなどを相手にすれば、もっと命中率が良かったのであるが、一刀は1撃で倒せるジャイアントバットのみを倒すことに拘った。
それは単純に効率の問題でもあったが、ジャイアントバットが比較的他者に嫌われているモンスターであることも、大きな理由であった。
ジャイアントバットが他の探索者に嫌われている要因は簡単で、まず発見しにくいこと、上空から襲ってくるため戦い難いこと、回避率が高いことなどである。
これがコボルトなどの敵であれば、一刀のペースで狩り続けていたら、いずれ狩場荒らしとして有名になってしまったであろう。
ギルドの剣奴である一刀に、その風評はまずい。
下手をすればギルドに苦情がきて、自由時間を制限されかねない。
その点、ジャイアントバットであれば、狩場を掃除したことで感謝されることはあっても、恨みを買う心配はほとんどない。
一刀は、心置きなくジャイアントバットの乱獲に勤しんだのであった。
1週間が経ちLV5になった一刀は、またしても『贈物』を得て注目の的になった。
「贔屓だ!」
「俺達にもしっかり祈れ!」
などと、剣奴達の不平不満は漢女達に向かっていたが、一刀に対する羨望は意外なほど少なかった。
なぜなら確かに『贈物』は羨ましいが、誰も漢女達のお気に入りなどにはなりたくなかったからである。
そういうことも含めて、かなりの恩恵を漢女達から受けている一刀であったが、相変わらず漢女達をモンスターの一種だと思って警戒していた。
漢女達の恋が実る日は来るのであろうか。
それはさておき、今回の『贈物』も前回と同じく、不思議な石であった。
同じ物が2度続くのは、かなり珍しいとのことである。
【お主、儂の折角の『贈物』を無碍にするでない!】
という太祖神の声が聞こえてくるようである。
だが、今回も一刀は祭を探して、前回と同様8貫で引き取ってもらった。
BF3のジャイアントバットで入手出来たEXPは15であり、途中でLVアップしてからは、それも10に減った。
そんなEXPしか貰えないのに、一週間で約2000のEXPを稼いだ一刀。
ステータスも『EXP:215/1250』から『EXP:955/1500』に変わっていた。
つまり、それだけジャイアントバットを乱獲したというわけで、8貫で買える矢弾400は、既に消費し尽くしており、また無一文になっていたのである。
だが、序盤の端金よりもまずはLVアップ、それがRPGの鉄則である。
一刀は、矢弾代を惜しまずに乱獲を続けたのであった。
ギルドに買われてから半月が経ち、新たに剣奴が購入されてきて、一刀達BF1警備隊は、BF2に回された。
それでも今の一刀にとっては、ほとんどBF1と変わらない状態であり、相変わらず仕事中を休憩時間に充てて、自由時間をLV上げに使っていたのである。
一刀はBF4に拠点を移したが、すぐにLV6に上がり、得られるEXPが10になってしまったため、今はBF5を拠点に狩りを続けていた。
BF5だと、さすがに1撃とはいかなくなったが、1発当てた手負いのジャイアントバットは、ダガーで止めを刺すだけでよかった。
だが、狩りの効率はがくんと下がった。
なぜなら、手負いのジャイアントバットを他の探索者や剣奴達に横取りされることが多かったからである。
それでも一応EXPは入ったものの、本来15入るはずのものが7に目減りしてしまうのだ。
その7という数値も、横取りした者がソロだった場合の話であって、探索者パーティに横取りされると、悪い時は2程度にまで目減りしてしまっていた。
このことから、EXPは頭割りであることがわかった一刀であったが、それを知ったメリットよりもデメリットの方が遥かに大きい。
毎回獲物を取られるわけではないので、数日間はBF5で我慢していた一刀であったが、さすがにこの状況は面白くない。
うーん、BF4に戻ろうかなぁ。
あそこのジャイアントバットなら、LVが上がって1撃で倒せるようになったし。
それともいっそBF6に進むか?
そんなことを考えていた一刀の眼に、大量のモンスターを引き連れてテレポーターに逃げ込む探索者の姿が映ったのであった。
NAME:キラービー
NAME:マッドリザード
NAME:オーク
探索者はBF6から逃げて来たらしく、初めてみるモンスター達が、かなりたくさんいた。
ギルドの監督員の指示を受けた剣奴達は、慌ててテレポーターを守るため、小屋の前に陣取った。
自由時間である一刀だったが、剣奴達を見捨てるつもりはなかった。
盾のない自分が小屋の前に陣取るよりも、背後からボウガンでモンスターを倒して数を減らした方がいいと判断し、一刀は行動を起こしたのであった。
でかい蜂の姿をしたモンスター・キラービーにボウガンを打ち込み、1匹ずつ倒していく一刀。
BF6のモンスターだけあって、EXPも50とかなり美味しいし、なによりもモンスターが小屋に集中しているため、ボウガンを巻き上げる時間があるのが楽だった。
「おいっ! お前も剣奴だろう! なにしてるんだ、さっさと小屋を守れ!」
一日外出権を獲得し、連続して『贈物』を貰った一刀の顔を見覚えていたのであろう、監督員から一刀に怒声が浴びせられた。
だが、何度も言うが、一刀にとって今は自由時間なのである。
監督員に指図される覚えはない。
監督員の指示を無視して、一刀は背後から敵を殲滅し続けたのであった。
美味しい敵達のおかげでLV7に上がった一刀を待っていたのは、自由時間にも関わらず小屋を守るのに協力したことに対する感謝の言葉ではなく、自分の指示に従わなかったという監督員からの叱責であった。
「お前も、先日テレポーターを放棄して逃げ出し、処刑された剣奴と同じだ! テレポーターの守備を放棄した罪で、公開処刑してやるからな! お前ら、こいつをギルドへ連行しろ!」
途中から救援に来た探索者の女の子達に命令する監督員。
そのうちの1人は、髪の色といい目の色といいおっぱいの立派さといい、明らかに雪蓮の血縁者であろう。
もう1人、髪と目が同色の少女がいたが、こちらはまだ幼女であるためおっぱいでの判断が出来ず、一刀の中では保留であった。
彼女達に連行された一刀は、だが自分の処罰に対しては余り心配していなかった。
一刀は、その時の剣奴と今の自分は全然違うと思っていたのだ。
仮にここで一刀が処罰の対象になってしまうと、今でさえ珍しい、自由時間に鍛錬をする者が皆無になってしまうであろう。
自由時間でも勤務時間と変わらず監督員の指示で死地に立たされることになるのならば、誰も迷宮などに降りない。
自主的に自分を鍛える剣奴は貴重であり、その剣奴のLVが上がることは、所有するギルドの戦力アップに繋がり、利益となる。
その芽を自ら潰すなど愚かな行為であることを、美羽はともかく七乃であれば理解するであろう。
こういった理由で一刀は、自分が処分されることはないであろうと考えていたのである。
そんな一刀にとっては、連行されていることよりも、連行する側である女の子達の方が気になっていた。
女の子達のLVは10前後であり、まだ加護を受けていない状態であったため確実ではなかったが、おそらくは雪蓮の関係者なのであろう。
剣奴が必ず集まらねばならない時に見た記憶がないことから、彼女達がギルドの剣奴じゃないことは間違いない。
こんな存在感のある女の子達を見逃すわけがないからだ。
そして、ギルドの救援部隊としてやってきたということは、ギルドの関係者、もしくは協力者であるはずだ。
だがそれにしては、彼女達に対する監督員の態度が上から目線の命令口調過ぎる。
『ギルド預かりの身分』と自分のことを言っていた雪蓮。
奴隷市での美羽とのやりとりからしても、雪蓮が美羽からかなりの制限を受けていることは、一刀も感じていた。
それにも関わらず、雪蓮のクランが探索者ギルドに協力しているのは、もしかしてこの子達となにか関係があって、協力せざるを得ないからではないか。
蓮華、小蓮、思春、明命、亞莎。
雪蓮や祭、穏に恩を返すためにも、彼女達の名前は覚えておいた方がいい。
そう考えながら、一刀はギルドに連行されていったのであった。
結論から言えば、一刀はお咎めなしであった。
一刀の予想通り、七乃はすぐに事情を理解した。
だが、これもある意味予想通りなのであるが、美羽はそんなことを欠片も理解していなかった。
七乃がさりげなく一刀を庇う方向へ持っていこうとしていたが、当初美羽には余り効果がなかった。
「監督員に逆らう剣奴など、妾はいらんのじゃ!」
「まぁまぁ、美羽様。こう見えても一刀さんは、今のところ非常に優秀なんですよ? さすが美羽様、80貫にしては、とてもいい買い物です。よっ! この悪徳商人! 可愛いぞっ!」
「む、うーむ……。じゃが、妾は反抗的な剣奴は……ぬ、この匂い! お前、なにを持っておる、見せい!」
一刀が持っていた物、それはキラービーのドロップアイテム・蜂蜜であった。
「おお、この香り、この色つや! ……よし、わかった。今回の件は、妾の広い心で許すのじゃ。その代わり、今後もこの蜂蜜が出たら、妾の元に持って来るのじゃ! まぁ、妾も貧乏な剣奴から搾取する程落ちぶれてはおらぬ故、蜂蜜ひとつにつき、1貫の褒賞をやるのじゃ」
「……美羽様、それ、ギルドショップでは250銭で引き取っているのですが」
「銭なんぞ、妾は触ったことがないのじゃ。というか、なぜ銀貨や銅貨がいるのじゃ? 金貨だけあればよいじゃろう?」
「……で、ですよねー。さすが美羽様、そこに痺れて憧れますぅ! というわけで一刀さん、蜂蜜を手に入れたら、私のところに持ってきて下さいね。金貨はちゃんとお支払いしますから」
お咎めなしどころか、非常に美味しい依頼まで受け取った一刀。
だが一刀は、なにか釈然としない、ムカムカしたものを感じていた。
自分でもよくわからないその感情が、所謂貧乏人の僻みと呼ばれるものであることを、一刀はまだ気づいていなかったのであった。
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NAME:一刀
LV:7
HP:78/100
MP:0/0
EXP:10/2000
称号:なし
STR:10
DEX:13
VIT:10
AGI:11
INT:11
MND:8
CHR:9
武器:ブロンズダガー、ライトボウガン、ブロンズボルト(24)
防具:布の服、布のズボン、布の靴、布の手袋、レザーベルト
近接攻撃力:40
近接命中率:30
遠隔攻撃力:39
遠隔命中率:26
物理防御力:27
物理回避力:29
所持金:3貫400銭