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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第九十九話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/30 13:59
石化した穏を『解呪の聖水』で治癒し、崩れ落ちるようにその場で熟睡する一刀達。
折角街で買い込んだ食材や寝具の準備どころか、着替える余力すらも彼等には残っていなかった。

だが一刀達にとって、それは束の間の休息に過ぎない。
この場に辿り着くことが一刀達の目的ではないからだ。
今回の迷宮探索は、むしろここからが本番なのである。

翌日から一刀達は、早速LV上げを開始した。

「よし冥琳、今だ!」
「いや、もう少し待つのじゃ!」
「一体どちらなのですかっ!」

無論のこと、返事を待っている暇はない。
仕方なく祭のタイミングに合わせて【赤壁】を張る冥琳。
しかしその選択は、大失敗であった。

「ちょっと冥琳、サイクロプスが壁の内側に入ってるわよ!」
「あのぉ、ここは撤退しませんかぁ?」
「いや、呪殺はちゃんと入ってるんだ。5分だけ耐えてくれ、蓮華!」
「分かったわ。その代わり、祭の釣ったケルベロスは任せたわよ、一刀」

≪-不動如山-≫

穏の詠唱をその身に受け、鉄壁の守りを固める蓮華。
雪蓮と祭が、サイクロプスを相手に奮闘する蓮華の援護に回る。

ケルベロスも上の階層とは比べものにならない強さだったが、蓮華達の戦いが終わるまでは一刀だけで相手せざるを得ない。
倒す必要まではないのだからと自分に言い聞かせ、一刀は青息吐息で時間を稼ぐ。
いじましい戦闘を繰り広げる一刀、しかし彼の努力を嘲笑うように新たな敵が現れた。

「げっ、ジンがこっちに来てる! 雪蓮、ケルベロスの相手役を交替してくれ!」
「姉様、こちらは後2分ですから大丈夫、向こうへ行って下さい! ……うぐっ」
「ほらほら、余所見しないの。祭、蓮華のフォローは頼んだわよ」

横腹を晒しているケルベロスに猛追を仕掛けた雪蓮。
不意を突いた彼女の一撃が大ダメージを与えたのであろう、ケルベロスは完全に雪蓮へとヘイトを移した。

行動の自由を得た一刀、しかしジンは既に【赤壁】の辺りで呪文を詠唱している。
急いでタゲを取るべく動いた一刀だったが、その行為は愚かと言うより他に表現しようがない。
一刀はジンに向かって、うっかり『眉目飛刀』を投げつけてしまったのである。

「一刀の馬鹿! 残り1分だったのに、どうしてそこで『眉目飛刀』を使うのよ!」
「ごめん、つい反射的に……」
「サイクロプスを相手に実力勝負は、今の私達では無理だわ。皆、撤退よ!」

BF26以降の強敵には、呪殺を仕掛けてから【赤壁】で遮り。
BF21以降で戦い慣れた敵だけを選んで、雪蓮達が押し包み。
戦況が不利になれば、躊躇せず扉のある大部屋へと逃げ込んで。

幾度かの失敗を繰り返しながらも、雪蓮達は確実に実力を蓄えていった。



扉前の安全地帯には、今までにはない特徴があった。
それは中央に泉が沸き出していることだ。
特別な回復効果はなかったものの、それでも泉の存在は蓮華達を喜ばせた。
戦闘で身に染みついた血と汗を、大量の真水で洗い流せるからだ。

就寝前の水浴びタイム、最初はもちろん一刀だけ仲間外れの予定であった。
だがこれまで様々な軍師達の薫陶を受けてきた一刀に、死角はなかった。

「……貴方って、どうしてこういうことには、異様に気が回るのよ」
「いや、ほら、こんなこともあろうかとさ」

一刀が宝玉から取り出したのは、全員分の水着である。
年少組へのご機嫌取りに贈物攻撃を仕掛けていた時、ついでに買っておいたものだ。

口では文句を言いながらも、やはり好きな男性からのプレゼントは嬉しかったのだろう。
蓮華を筆頭に、次々と水着に着替え始めた。

蓮華にはモスグリーンのマイクロビキニ。
雪蓮には蓮華と色違いのアイリッシュピンク。
冥琳にはネイビーブルーのスリングショット。
穏にはワインレッドのセパレーツ。

長い時間を掛けて悩んだだけのことはあり、みんな良く似合っている。
うんうんと頷く一刀の肩を、祭が叩いた。

「では一刀よ、さっそく儂の背を流してくれ」
「分かった。って、祭さん、水着は?!」

別に一刀は、祭だけを仲間外れになどしていない。
祭にはきちんとアイボリーブラックのチューブトップとCストリングのボトム、そしてパレオを手渡したはずだ。

「体を洗うのに布なんぞ身に着けておれぬ。ほれ、早くせぬか」
「あ、ああ……」
「これ、もそっと力を入れんか。こそばゆいわ」

これぞ熟女の鏡と言った所なのか、ベッドの上とは異なり、全裸でありながら微塵も色気を感じさせない祭。
その堂々たる態度の前では、如何な一刀でも大人しく三助に徹するしかない。

(もう少し恥じらいを持ってくれてもいいのに。自分の豊満な肉体に自信がありすぎるのかなぁ……)

信憑性はほとんどないが、もし噂の通りに迷宮クリアで何か願い事が叶ったとしても、こちらに大切な恋人達がいる一刀は、現実への帰還願望など既に持っていない。
だからその時には、是非とも祭をロリババアにして貰おうと思う一刀なのであった。



格上相手の戦闘は時間の掛かるものだったが、こちらには『七箭書』がある。
どんなに敵であろうと確実に一定数を倒せるのだから、これ以上に効率的なLV上げ方法はない。
そして雪蓮達の取得経験値が増えていけば当然LVが上がり、相対的に敵は弱くなる。

数日後には、ブシドーやコカトリスなど凶悪な特殊攻撃持ちのモンスター以外とは、実力で渡り合えるようになっていた雪蓮達。
もちろんブシドー達とも戦えないことはないが、折角『七箭書』があるのだから、避けられる危険を冒す必要はなかった。
LVが上がれば経験値は減るものの、敵の選択幅は増えて殲滅速度が上がり、遂に全員がLV30へと達したのである。

後衛の『魔術レベル』も7に達し、新たなコモンスペルを覚えた。
実戦では消費MP320の魔術など使い物にならないが、第六段階目の系統魔術に対するコストが160から80に下がったことは、大きな戦力となるだろう。

しかし今後もLV上げを続けるかは、微妙なところであった。
LVアップのための必要経験値が、LV30から急激に増大したのだ。

「今のペースだと、全員がLV31になるまで後1週間ちょっとは掛かると思う」
「もう既に1週間以上経っているのだもの。いくら穏の【其静如林】があっても、それは少し厳しいわね」
「でも不可能ではないと思いますよぉ? 実力を上げてから挑んだ方がぁ、安全なのは言うまでもありませんしぃ」
「いや、もう十分に休憩も取ったんだし、今すぐに扉を開けるべきだ」

どちらかと言えば慎重派の一刀。
などと断言するには今までの実績からどうも嘘っぽく聞こえるが、少なくともより安全な策があるのならば、一刀はそちらを選ぶタイプである。
そんな一刀が決戦の判断をしたことには、もちろん自分なりの根拠があった。

必要経験値の増大が意味することはひとつ、メーカー側のバランス調整だとしか思えない。
恐らく緊張感あるラスボス戦に適しているのがLV30なのだろう。
制作者サイドの意図として、ユーザーにその位のLVで戦って欲しいが故の仕様だと一刀は考えたのだ。
言い換えれば、ラスボスはLV30でも十分に通用する相手だということである。

それにLV30となった今、BF30での戦闘に過不足はなかった。
である以上ゲームバランスの観点からも、同じフロアにいるラスボスが相手なら倒せないはずがない。

「無理にLV31まで上げて精神的に消耗しきった状態よりも、今の方が勝算は高いんじゃないか?」
「うむ、一理あるのぉ。儂も一刀に賛成じゃ。後1週間も戦い詰めなど、想像しただけで面倒だしの」

いい加減な意見に聞こえるが、年長者である祭の発言には重みがある。
穏と同調して拙速に反対だった冥琳や蓮華も、祭がそう言うならばと消極的な賛成に回った。

「よし、それじゃ行こう!」
「待って、一刀」

一刀を呼び止めた蓮華は、彼の左手を取った。
そして一刀の薬指に、ゆっくりと指輪を嵌める蓮華。

「これは私が母様から受け継いだ指輪なの。大切な人が出来たら、その人に渡しなさいって。一刀、この戦いが終わったら、私達と共に呉で暮らしましょう。だから、絶対に死んではダメよ……」
「ああ。ありがとう、蓮華。必ず生きて帰るさ。約束する」

蓮華をぎゅっと抱きしめる一刀。
ここで指輪の性能を確認するのは、無粋というものであろう。

そのまま蓮華の手を握りしめ、雪蓮達に続いて扉の向こうへと足を踏み入れる一刀なのであった。



岩肌が剥き出しになった、途方もない大きさの洞窟。
その奥に鎮座している存在こそが、この『三国迷宮』の主であった。

NAME:ファイアードレイク

古代中華風ファンタジーが舞台だったのに、なぜかモンスターは最後まで西洋風だったな、などと場違いな感想を抱く一刀。
見ただけで威圧感を受ける風貌も、心胆を寒からしめる咆哮も、雪蓮達はおろか一刀を脅かすことさえ出来ない。

幻獣の王、だからどうした。
そう言えるだけの実力を、雪蓮達は血と汗を流しながら必死で築き上げてきたのだ。
今更ヘビの親玉に怯えることなど、ありえようはずもなかった。

恐れもせず近寄って来る不遜な小さき生き物に烈火の如く怒り狂い、雪蓮に向かって炎のブレスを吐くファイアードレイク。
しかし雪蓮が、ブレス攻撃の単調な予備動作を見逃しているはずもない。
迫りくる炎を鼻で笑いながら余裕で避ける雪蓮だったが、それはいくらなんでもファイアードレイクを甘く見過ぎであった。
ファイアードレイクは巨大な首を振ることにより、炎のブレスを範囲攻撃へと変化させたのだ。

常人なら一瞬で骨まで溶かされてしまうだろう超高温の熱波を浴びれば、さすがの雪蓮でも唯では済まない。
だがそれは、あくまでもまともに受ければの話である。
いくら範囲攻撃とはいえ、ミクロな視点で見れば炎に晒されているポイントはひとつだ。
洞窟全体が炎に包まれているわけではない以上、確実に安全地帯は存在する。

炎の濁流を右へ左へと巧みに避けながら接近する雪蓮。
さすがに無傷とまではいかなかったが、穏と冥琳が重複して降らせた『治癒の雨』が、そのHPを回復させた。

雪蓮は渾身の力を込めて、『南海覇王』を振り降ろす。
加護を始めとした様々な効果で増幅された雪蓮の攻撃は、その鋼の鱗を容易く突き破り、ファイアードレイクに苦渋の雄叫びを上げさせた。

これだけの破壊力を持つ雪蓮の攻撃すらも、実の所は囮に過ぎない。
本命はその隙に接近し、『眉目飛刀』を投げ撃った一刀の遠隔攻撃である。

しかし残念ながら、『七箭書』にファイアードレイクの名は刻まれなかった。
ラスボスだけあって、恐らくは即死耐性持ちなのだろう。
尤もそれを半ば予測していたからこそ、一刀はすぐに書物をチェックしたのだが。

それに呪殺が通用しなくても、皆の戦意は些かも落ちない。
こちらの攻撃が十分に通用することを、雪蓮が身を持って示したからだ。
そして相手の攻撃が恐れるに足らぬものだと証明することは、もちろん蓮華の役割である。

鋭い牙と爪で報復を仕掛けるファイアードレイクに真っ向から対峙し、その攻撃から雪蓮を庇う蓮華。
轟音と共に地を足にめり込ませ、しかし蓮華はそこから一歩たりとも後退しなかった。
ドラゴンと戦う英雄譚は数あれど、その攻撃を避けずに受け止める選択をしたのは蓮華が初に違いない。

だが人としての枠を超えた蓮華の行為は、身の程知らずなものとしてファイアードレイクの逆鱗に触れてしまった。
バサリと翼を羽ばたかせたファイアードレイクは、そのまま宙返りに体を1回転させ、その勢いを以て自らの尾を蓮華に叩きつけた。
その攻撃をしっかりと盾で防ぎ、しかしその場に崩れ落ちる蓮華。
ファイアードレイクの尾に生えている猛毒のトゲが、体を掠めてしまったのである。

そうした蓮華の無謀とも言える一連の行動は、決して無駄ではなかった。
同じ場所に留まり続けてしまったファイアードレイクは、祭に照準を合わせる時間を与え過ぎたのだ。

満を持して『多幻双弓』から放たれた矢は、狙い違わずファイアードレイクの両眼に突き刺さった。
またもや苦渋の呻き声を上げるハメになったファイアードレイク。
その隙に一刀は蓮華を短剣飾りで回復させる。

そしていつの間にかファイアードレイクの後方へと回り込んでいた雪蓮は、妹の敵とばかりに丸太のような尾を一刀両断にした。
蓮華が受けた尾による攻撃を脅威と見た雪蓮、尻尾の切断は彼女のファインプレイと言えよう。

「行くぞ、カラミティバインド!」
「よしきた、儂の獅子奮迅を喰らうがよい!」
「私も合わせるわ! 因果応報!」

一刀の必殺技で動きを止められたファイアードレイクに、祭と雪蓮がそれぞれ奥義を放つ。
尻尾は雪蓮に落とされ、牙や爪は蓮華に防がれ、徐々にダメージを蓄積させていくファイアードレイク。
だがそれでもファイアードレイクのHPは、まだ黄色にもなっていない。

炎を避け損ねて焼かれる雪蓮。
爪を受け損ねて刻まれる蓮華。
突進を喰らって潰される一刀。

長時間、決死の戦闘が続けられた。
ようやくファイアードレイクが足を引き摺るようになった頃には、こちらも全員が満身創痍であった。
特に一刀は、たびたび蓮華を庇ったこともあり、五体満足ですらなかった。

後衛達に『再生の滴』を詠唱する余裕もなく、『金の短剣飾り』による血止めだけして後方で戦況を見守っていた一刀。
大暴れしているファイアードレイクのHPは赤、もはや瀕死の状態だった。
燃え尽きる寸前の蝋燭を思わせるファイアードレイクの最後の足掻きに、雪蓮達は攻めあぐねている様子である。
彼女達が止めを刺すきっかけを作るべく、一刀は行動を開始した。

一刀が洛陽で仕入れて来たのは、何も絹のふんどしや水着ばかりではない。
きちんと最終決戦に向けた準備もしていた。

一刀が宝玉から取り出したアイテム、それは巨大な魚網である。
迷宮に海岸が発見されて以来、このような物も街では作られるようになっていた。

魚網でファイアードレイクの動きを完全に止められるとは、一刀も考えてはいない。
だが少しでもその行動を制限出来れば、後は仲間達が何とかしてくれると信じていたのだ。

(釣りの神様の加護を受けた俺には、お似合いの役割かもな)

不思議な巡り合わせに苦笑しながら、魚網を潰れた左腕に巻き付け、折れた右腕で長いロッド状にした『新・打神鞭』を握る一刀。
感覚が鈍いで済む地点はとっくに通り越しているにも関わらず、一刀は全く痛みを感じていなかった。
耐えきれぬ激痛に、脳が神経を遮断した状態になっているのだろう。

幸い両足だけは無事である。
急加速してファイアードレイクに迫る一刀。

「届けっ!」

ロッド状にした鞭で地を突き、棒高跳びの要領でファイアードレイクを飛び越える一刀。
その左腕に巻き付けられた魚網が、敵の巨体を覆い尽くした。

魚網を引き裂こうと暴れるファイアードレイクに、一刀の左腕が持っていかれる。
もちろんそうなることは一刀も覚悟の上だ。
一刀の左腕と引き換えで行動の自由を奪われたファイアードレイクは、遂に断末魔の雄叫びを上げた。
その喉元にある逆鱗を、雪蓮の『南海覇王』が貫いたのだ。

やがてファイアードレイクの体が微細な粒子となり、光り輝く扉に変化した。



≪-再生の滴-≫

冥琳の魔術が、一刀の失った左腕や骨が飛び出した右腕を再構成していく。
ようやく両腕が復活した一刀の目に、扉を前に眉を顰めている雪蓮の様子が映った。

「どうしたんだ?」
「うーん、それがね……。どうも扉を開ける気になれないのよ」

他の誰でもない、雪蓮の勘である。
祭の意見と同様に、このクランでは最も尊重されるべきものの1つだ。

だが苦労の末にようやくここまで来たのだ。
何もせずに立ち去ることなど、出来るわけはない。

「姉様、私が開けます。防御さえ固めていれば、私なら何があっても耐えきれますから」
「……そうね。任せたわ、蓮華」

しかし、その決断を雪蓮はすぐに後悔することになる。
素直に自分の勘に従っておくべきであったのだ。
雪蓮がそれを理解した時には、最早手遅れだった。

『ふぅ。久しぶりの受肉だ。やはり現世は良いな』
「蓮華?! いえ、違うわ。貴方は誰なの!」
『む、兄上の依り代か。ならばその無礼な口の聞き方も咎めまい。さぁ、早く扉を潜るのだ』

NAME:孫権

HPもMPも表示されないパラメータは、蓮華のものではありえない。
姿形は蓮華そのままでありながら、彼女とは似ても似つかぬその様子に、一刀は警戒心を高めた。
いや、一刀だけではない。
雪蓮を始めとする一同も、既に臨戦態勢を整えていた。

『なんだ、その態度は。如何に兄上の依り代とて、増長が過ぎるぞ』
「……孫権様とお見受け致します。これは一体どのような仕儀なのでしょうか? 妹は無事なのですか?」
『ふん、こうしてお主の前に立っているだろう。予の依り代としてな』
「一体何を目的として降臨なされたのですか?」
『決まっている。天地人、その全てを支配するためだ。まずは古の昔に果たせなかった宿願である大陸の統一からだな』

まずは呉の英霊達を現界させ。
魏や蜀の薄汚い亡霊共の依り代は殲滅し。
この大陸に、孫呉の王国を築き上げる。

『呉の民草には、予に奉仕する栄誉を与えよう。他の畜生共は1000年王国の礎として、せいぜい血涙を流してもらうとしようか』
「馬鹿なことを! 御託はもうたくさんよ、さっさと蓮華を返しなさい!」
『お主等もこの場に立っている以上、迷宮で鍛えられた肉体は依り代として十分に耐えられるはず。自ら扉を潜らぬのならば、予が叩き込むまでだ』
「済まぬ、蓮華殿よ! この詫びは、あの世で必ず!」

いち早く行動を起こしたのは、祭であった。
このまま戦闘へと移行するのは、もはや確実である。
ならば雪蓮自らが妹に引導を渡すことだけは、避けねばならない。

祭の放った矢が、孫権の眉間へと吸い込まれる。
だが相手は神、いや、妄執に囚われた古の亡霊であるにしろ、その力だけは本物だ。

『小賢しいわ、黄蓋! 弁えよ!』
「ぐっ、げふっ」

飛来した矢を容易く掴み取り、数倍の勢いを以て祭に投げ返す孫権。
それは祭の胸に深く突き刺さり、なんと僅か一撃で彼女を戦闘不能へと追い込んだ。

「心臓に近過ぎますぅ! これでは矢が抜けないですぅ」
「まずは血止めの応急処置だ。祭殿、気を確かに!」
「ば、馬鹿者……。わ、儂のことより、優先すべきは向こうじゃ……」

だが相手とは、歴然とした力の差がある。
しかも蓮華が人質に取られているようなものなのだ。
身内意識の殊更に強い彼女達に、冷静な対処が出来ようはずもない。

いや、唯一人だけこの事態を無事に終わらせる可能性を秘めた者がいる。
【封神】の加護スキルを持つ一刀ならば、蓮華に害なく孫権だけを封じられるはずだ。
漫画史に残る名作『ソードマスターナデシコ』的な加護スキルかと思いきや、別にそんなことはなかったぜ、である。

無論一刀も、そのことには気づいていた。
だが問題は相手のHPを1割まで追い込まねばならないことだ。
非殺傷設定こそあるものの、相手の実力が高すぎるのである。

(それでも蓮華を無事に取り戻せるなら、俺がやるしかないんだ!)

「雪蓮、後ろに下がっててくれ」
「あまり見縊らないで! 私も戦えるわ!」
「そうじゃない。蓮華に血を流されると、俺が動揺しそうなんだ」

非殺傷設定の『新・打神鞭』を使ってすら、相手を敵だと思い込まねば攻撃に躊躇いを覚えてしまう一刀。
雪蓮の助力自体は、喉から手が出るほど欲しい。
だがそれで集中を乱され、唯一【封神】を使える一刀が殺されてしまえば本末転倒である。

俺に任せてくれ。
そう言って歩み出る一刀に、孫権が声を掛けた。

『ふむ? 呂尚……、思い出せぬな。呂蒙の血縁か?』
「誰でもいいだろ。どうせお前はここで終わるんだからな。さぁ、蓮華を返して貰うぞ!」
『この無礼者が! 大言壮語の罪、その身を以て償え!』

一刀のお株を奪うハイスピードで接近し、その勢いで剣を振り降ろす孫権。

1撃目は辛くも防ぎ。
2撃目は素早く避け。
3撃目は体を掠めて。

防戦一方に追い込まれる一刀。
しかし考えてみれば、防戦出来ていること自体がおかしいのだ。
祭を一撃で倒した時の動きを考えると、一刀など瞬殺されても何ら不思議ではない。

『ちっ、小娘が。依り代の分際で、いつまで予に逆らうつもりだ』

じりじりと一刀を盾ごと剣で押し込む孫権、その瞳から唐突に涙が溢れ出した。
そう、蓮華もまた、一刀と共に戦っていたのだ。

一刀の攻撃も、僅かながら孫権の体に当たっている。
10発貰って1発返す程度の割合だったが、その攻撃は確実に孫権へダメージを与えていた。

≪-赤壁-≫
≪-癒しの水-≫

一刀と孫権を囲うようにして【赤壁】を張る冥琳。
こうした配慮こそが、呉の頭脳たる冥琳の持ち味であろう。

仮に【赤壁】を展開せずに一刀を回復したら、孫権は先に冥琳達を潰しに来るかもしれない。
その可能性を予めゼロにしておくことで、冥琳は一刀が心置きなく戦える環境を造り出したのだ。

手数に差はあれど、【赤壁】の外から穏に回復して貰える一刀と、それが出来ない孫権。
一体どちらが有利なのかは歴然としているだろう。
だがこの事実を以てしても、確実に一刀が勝利を収めると断言することは出来ない。
なぜなら、この世界には即死攻撃という概念があるからだ。

祭が倒されてしまったように、どれだけHPがあっても心臓や脳を貫かれたら終わりなのである。
例え手足を犠牲にしてでも、急所だけは守り切らねばならない。

苦戦を強いられながらも、少しずつ孫権に対するダメージを積み重ねていく一刀。
1対1なので『グレイズの指輪』が効果を発揮し、WGも一気に溜まる。
しかし相手が蓮華の体を使っているためか、肝心の武器スキルは使用出来なかった。

(それが何だってんだ! 必殺技がなくても、何時間だって戦い続けてやるさ!)

一体何度、敵の攻撃をその身に受けたのだろう。
体の欠損を修復する魔術『再生の滴』を受けた回数だけでも、両手では全然足りない。
身も心もボロボロの一刀だったが、蓮華のことを思えばいくらでも力が沸いてくる。

ゾンビも顔負けの一刀に、やがて気押されていく孫権。
その隙を見逃す一刀ではない。
全身全霊を込めた『新・打神鞭』が孫権の腹部に撃ち込まれ、遂にそのNAMEが赤へと変化した。

即座に精神を集中させる一刀。
しかし蓮華の体を操っているのは、未だ孫権なのである。
蓮華なら昏倒したであろう瀕死状態でも、残念ながら孫権には当て嵌まらない。

無論のこと、一刀だってその可能性は十分にあり得ると考えていた。
だが最早一刀に対策を打てるだけの余力は、これっぽっちも残っていなかったのだ。

≪-封神-≫

蓮華の眼にいつもの凛とした輝きが戻った時、そこに映し出されたもの。
それは左胸から剣を生やしている一刀の姿であった。

「嘘、嫌よ……、いやあああぁぁぁ!」



**********

NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:30
HP:0/483(+77)
MP:30/0(+30)
WG:100/100
EXP:3739/15000
称号:天の御使い

STR:47(+15)
DEX:62(+26)
VIT:29
AGI:49(+15)
INT:30
MND:22
CHR:60(+22)

武器:新・打神鞭、眉目飛刀
防具:蛮盾、勾玉の額当て、昴星道衣、ハイパワーグラブ、極星下衣、六花布靴・改
アクセサリー:仁徳のペンダント、浄化の腰帯、杏黄のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、ブライダルリング、奇石のピアス、崑崙のピアス

近接攻撃力:316(+42)
近接命中率:146(+22)
遠隔攻撃力:178(+15)
遠隔命中率:135(+29)
物理防御力:248
物理回避力:164(+45)

【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。
カラミティバインド:敵全体を、一定時間だけ行動不能にする。
ホーミングスロー:遠隔攻撃が必中となる。

【魔術スキル】
覆水難収:相手の回復を一定時間だけ阻害する。<消費MP10>

【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。

所持金:312貫


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