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No.1070の一覧
[0] きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/05/11 18:32)
[1] Re:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/10/23 13:02)
[2] Re[2]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/10/23 21:43)
[3] Re[3]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/10/24 12:27)
[4] Re[4]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/11/29 18:59)
[5] Re[5]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/08/19 20:02)
[6] Re[6]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/10/28 00:01)
[7] Re[7]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/10/28 19:50)
[8] Re[8]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/01/25 10:35)
[9] Re[9]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/11/20 19:09)
[10] Re[10]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/11/24 13:53)
[11] Re[11]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2005/12/13 12:08)
[12] Re[12]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/01/25 10:44)
[13] Re[13]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/02/20 18:02)
[14] Re[14]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/02/23 19:43)
[15] Re[15]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/05/06 18:17)
[16] Re[16]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/05/11 19:23)
[17] Re[17]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/05/28 17:21)
[18] Re[18]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/02/03 22:45)
[19] Re[19]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/06/11 14:44)
[20] Re[20]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/02/03 22:59)
[21] Re[21]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/06/17 15:01)
[22] Re[22]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/06/23 12:51)
[23] Re[23]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/06/30 23:22)
[24] Re[24]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/07/06 22:37)
[25] Re[25]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/07/09 19:38)
[26] Re[26]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/08/19 20:00)
[27] Re[27]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/10/21 18:11)
[28] Re[28]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/11/21 22:27)
[29] Re[29]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2006/11/29 23:42)
[30] Re[30]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/02/27 23:08)
[31] Re[31]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/02/03 23:46)
[32] Re[32]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/03/10 03:20)
[33] Re[33]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/03/20 20:39)
[34] Re[34]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/03/20 20:36)
[35] Re[35]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/03/20 21:00)
[36] Re[36]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/04/08 00:19)
[37] Re[37]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/04/08 00:12)
[38] Re[38]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/06/09 03:02)
[39] Re[39]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/07/09 23:14)
[40] Re[40]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/09/09 21:44)
[41] Re[41]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2007/12/07 23:47)
[42] Re[42]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2008/03/06 23:13)
[43] Re[43]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2008/07/05 22:16)
[44] Re[44]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2008/07/20 22:40)
[45] Re[45]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2008/08/19 23:04)
[46] Re[46]:きんのゆめ、ぎんのゆめ[志穂](2009/07/20 21:12)
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[1070] Re[31]:きんのゆめ、ぎんのゆめ
Name: 志穂 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/02/03 23:46


まだ、散策している二人に、見張りが必要だからと俺は逃げるように地下室を後にした。いや、事実逃げたのだろう。
煮えたぎるような感情を、理性という歯車で蓋をしているつもりだが。どんな顔をしているのか分からない。そして、それを俺は見られたくなかった。こと、表情に関しては俺の主観は尽く裏切られたのだ。今回もその例に漏れはすまい。
降りるときには気にならなかった音が、酷く耳に障った。


吐き出してしまいそうな不快感を、心の内の鞘に納める。棺に蓋を。今は必要のないものだ。そうして、俯いていた顔を上げた。
教会自体は、少々小さいながらもその姿は実に潔い。華美な装飾などなく、清廉なそれは本音を言えば嫌いではない。残っていた血痕がそれを侵しているとはいえ、その程度では失われるものはない。
隠り世から現世へ。それをつなぐ橋のような血。堆積した苦痛の残滓の上に、荘厳なる世界が浮かぶ。既に死人のこの身では、生者を助けること叶わず。それはキャスターとて同じこと。もっとも、俺が生きていたとて……変わるのは早いか遅いかだけ。
ほとんど無意識に、並んでいる椅子の一つに指を這わせる。何も纏っていない指に、椅子は冷たい。よく手入れされているのだろう。一人でこの教会を維持していたのだろうか。たった半刻程度のことだ。だが、それだけで俺の精神は疲れを感じていた。
トスン、と椅子に腰を下ろす。お世辞にも座り心地が良いとは思えなかったが、それだけで楽になった気がした。長椅子に背を預けながら、礼拝堂を見回す。ゆっくりとそれは移動し、最後に偶像を中心に据えて固定された。
――――はたして、奴は神を信じているのか?

「アーチャー?」

いつの間にここに戻ってきたのか、衛宮士郎の声が礼拝堂に響く。動くだけで判るものを、捉えることができなかった。この身が剣だとしても、まるでとんだ鈍だ。衛宮士郎の接近に気がつかなかったことが忌々しいのならば、そんなことを考える自分にも腹がたった。
偶像から目を逸らさぬまま、衛宮士郎に問いかける。

「もういいのか?」

俺が応えるとは思っていなかったのか。僅かに戸惑うような気配を感じる。俺は死人だが、ここにいる。などと、衛宮士郎に言ってしまいそうになった自分に、力が抜けた。あいつに死人などと言っては、諍いになってしまうだろう。

「あ、ああ。俺に判ることなら、遠坂は解っている。そもそも、俺が判ることなんてなかったけど」

「そうか」

それで用は終わりと、俺は黙る。しかし、衛宮士郎はそうではないらしい。

「ああ、だけど、アーチャー」

「―――なんだ?」

礼拝堂に音を響かせながら、衛宮士郎が近づいてくる。それでも俺は偶像から目を離さない。
そうして、衛宮士郎は俺から数メートルも離れてない場所で立ち止まった。

「何か、俺に隠し事してないか?」

「――――はっ」

思わず笑いがこぼれる。弱った理性は、感情の抑制をするに足らない。これが笑わずにいられようか。小さく吐き出すように漏れた笑いは、止まることを知らず、瀑布のように礼拝堂に響いた。

「あれ? 俺、なんか可笑しなこと言ったか?」

どこかむっとしているような、それでも、それに徹しきれてないような声だ。

「ああ、おまえの認識は正しいよ。今更何を言っている。俺がおまえに対して、何かを隠している? はっ、何を寝ぼけた事を。初めから貴様に全てを話すつもりはないし、義務もない。第一――――、知っても益はない」

そうして、俺は初めて、偶像から目を離し衛宮士郎の方を見た。だが、そこに居るのは衛宮士郎だけではなかった。入ってきたばかりなのだろう、奥の扉の閉まる音が響く。

「あら、益があるかどうかは、聞いてから判断するものだと思うわ。何かに気がついているのなら、詳しく教えてもらいたいわね」

何やってんのよ、あんた。と言いたげに凛は目を細めている。見張りがどうとかと言って、一足先に出たのだ。しかし、やっている事は長椅子に座って寛いでるのだから。しかし、まあ、いいか、と凛も椅子に腰掛ける。正しい座り方とは思えないが、俺から何かを聞くつもりなのだから、それは正しい座り方とも言える。その目は早くと、俺を促していた。

「ここに来て判ったことなど、凛と変わりない。キャスターがここを襲い、そして、もう居ないというだけだ」

「ふーん。まあ、そんなところでしょうね。キャスターはこの教会を襲い、そして綺礼は破れた。どうしてキャスターがここを襲ったのかも、そしてここに居ないのも、理由は判らないわ」

衛宮士郎は凛の顔に気がつかない。当然だ。顔が見えてないのだから。だから、俺が二人にまだ何かを隠していることを。そして、凛がそれに気付いていることに、衛宮士郎は気付かない。

「じゃあ、キャスターを倒すには」

「柳洞寺を攻略するしかないでしょうね。だけど、それは不可能。いくらなんでも四対一じゃ逃げることすら至難の業でしょうね」

無言で頷く。衛宮士郎が何か言いかけるが、それを手で制す。確かに、セイバーは令呪に抵抗できているが、それは一つの令呪に対してにすぎない。いくらセイバーが破格の対魔力を持っているとて、令呪を使うのもまた魔術師としては現代のそれとは桁が違うのだ。二つ目の令呪を使われれば、それこそセイバーは数分と持たないだろう。そして、これはただの四対一ではない。キャスターは柳洞寺に陣を敷いている。あの場所に限って言えば、俺は突破するだけでも難しい。セイバーですら一対一で突破できなかった山門を、剣技で劣る俺が挑むのだ。それはセイバーが抵抗している今も変わりない。三対一でも結果は同じだろう。だからこそ、キャスターがここに留まってくれれば、望ましかったのだ。
そして、ここに居る誰もが勝ち目がないことを理解している。そして、二人ともそれを打開する手段が思い浮かんでいるのだろう。

「なあ、遠坂。他のマスターはこの状況、どう思っているのかな」

最初に口を開いたのは衛宮士郎だった。俺自身は、今は何も言うつもりはない。どう決まるかはある程度の予想がつく。

「その言葉が、どうして出てきたのか訊きたいけど。そうね。キャスターについてないサーヴァントはバーサーカーとランサー。彼らのマスターが誰であれ、この状況を好ましいとは思ってないと思うわ」

その言葉に、何かが警鐘を鳴らす。それは、推測に過ぎない。危険な考えである事に変わりない。バーサーカーの主は、己が従える巨人の最強を疑いはしない。それは、未だ判らぬランサーの主とて同じ。そいつには、ランサーをハルカに超える切り札ガ……。
なんだ? 僅かに覚える頭痛に眉を顰める。未だ思い出せぬ、かつての聖杯戦争の欠落。それが致命的なものだと、何かが俺に告げている。その答えを、意識の大部分を裂いて探す。それが無意味と理解しながら。おそらくは内部の働きかけではこの欠落は埋まらない。
衛宮士郎が言葉を発するのを、凛が止めた。

「まって、状況を整理してみましょう? それからでも、衛宮君の考えを聞くのは遅くない。キャスターだけならたいした事はない。だけど、白兵戦に長けた葛木。アサシン、アーチャーにも護られているのだからさすがに手が出せない。そして、セイバーが操られるのも時間の問題。まだ、操られてないとしても、それはキャスターの気持ち次第に過ぎない。状況は時間とともに悪くなっていくわ。それを踏まえた上で、衛宮君、何か打開策はある?」

その凛の行為に意味はあったのか。先の言葉から衛宮士郎の意図は読めている。なら、この確認の作業は衛宮士郎のためではなく―――

「じゃあ、遠坂。俺達にできるのはやっぱり―――」

そこで、言葉を止めた衛宮士郎は、凛ではなく俺のほうへと視線を一瞬向ける。どちらにせよ、その顔では考えていることはだだ漏れだ。

「怒らないから、さっさと言え」

凛に先んじて衛宮士郎へ言葉を放つ。凛は頷きながらも俺に鋭い一瞥をなげた。

「他のマスターと共闘するしかないと思う。といっても、相手は一人しか思いつかないけど」

その言葉に凛はほうと息を吐く。凛はその言葉に否定はしない。内心どうあれ、それしか方法がないのだから。だが、気乗りしていないのは表情からも明らかだ。そんな顔をしているから衛宮士郎に気を使われてしまう。

「そうね。ランサーのマスターは不明。交渉可能なのはバーサーカーのマスター。イリヤスフィールなわけだけど」

「うん。あの子なら話を聞いてくれそうな気がする。無茶な要求もないと思うけど」

衛宮士郎は、話せば判ってくれると、イリヤに対して思っているのだろう。だが、楽観できることではない。彼女は天使な悪魔。彼女が無茶なことを言うのはおかしくはないのだから。

「うーん。判らないわね。私はあの時、その場に居なかったから。なんとなく衛宮君に執着があるように見えたんだけど。やばい要求されるかもね」

「う、脅かすなよ遠坂。まだ一度しか会ってないんだしそんなことあるわけないだろ。だいたいなんだよ、無茶な要求って」

その怯えは、両者の実力差を考えれば、当然のことである。そしてイリヤにはバーサーカーが居る。衛宮士郎が求められるのは

「――――そうだな、イリヤの使い魔にされて、彼女の玩具にされるくらいではないか? 別に命をとられるわけではないだろう」

二割の思考で応える。未だ、答えは発見できない。無理とは判断したが、探さないわけにもいかない。

「あ、アーチャー? なんでそんな具体的な例が出てくるのかしら?」

「そ、そうだよ。お、玩具って何さ」

二人とも顔が引き攣っている。想像してしまったのだろうか。玩具と言っても言葉の意味だ。だが、実際はどうなのか。彼女のことだから、不気味なものには転送しないだろう。あの部屋から想像するに。

「む、まあ、なんとなくだ。彼女のことだから、ぬいぐるみとか人形の類ではないか?」

「ぬ、ぬいぐるみ……」

「もっとも、そんなことになれば交渉はご破算だろうがな。今まで一人で出歩かなかったのは誇っていいぞ。ふわふわはみっともない」

あれは大甘らしいから。バッサリされるぞ。バッサリ。

「ふわふわ? それと一人で出歩く事の何の関係があるんだ? それなりに一人だったと思うけど」

それから、まだ何か言おうとした衛宮士郎に、凛が何かを耳打ちした。あまり関係なさそうなので意識はしないが。たいした事ではないだろう。あまり、衛宮士郎にかまってやれるわけではない。

「とにかく、今はイリヤスフィールに賭けるしかないわ。バーサーカーならアーチャーにアサシン、キャスターが相手でも負けないでしょう。こっちにもアーチャーが居るんだから十分勝機はある」

「それは、そうだろうけど。そう上手くいくのか? セイバーと取り返すってことは、キャスターを倒すってことだろ」

「キャスターの陣営でバーサーカーを傷つけられるのはアサシン以外全てだ。セイバーのマスターがキャスターに代わったことで、彼女がどれだけ力を取り戻しているかにもよるが、宝具が使えるのなら関係ない。侮ればバーサーカー共々散ることになろう」

「え、セイバーの宝具じゃ、十二の試練を―――」

衛宮士郎の言葉を凛が遮る。まだ、見つからない。やはり無理なのか。

「そう、それで、あなたにそれを防ぐ手段はある?」

「不可能ではない。だがそれはセイバー共々私が消えることを防ぐと言うのならば、だが。いや、他にも何か」

魔力の量から言えば聖剣の使用は問題ない。十全に引き出すことが可能だろう。だが、そんなことをせずとも俺にはそれを防ぐ手段がなかっただろうか?

「そう。とにかく、異論はないわけね。キャスターを倒すために、イリヤスフィールと手を結ぶ」

「まあ、あまり気は進まないが、心変わりするつもりはないのだろう?」

「ええ。時間がない現状で、これ以外の方法がないのなら、ね」

「じゃあ、決まりだな。だけど、どこにいるんだ? あれだけの魔力を持っているってのに。感じたことはないぞ」

すでに、二度ほど会った。

「大体見当はつくわ。昔、父さんから聞いたことがあるの。アインツベルンは郊外の森に別荘を持っているって」

あれは、別荘と言うよりは城だ。

「「――――――――――」」

「それで、すぐ動くのか?」

「詳しい場所は調べてみないと判らないわ。だけど、そんな悠長なことはしてられないか」

「いや、それくらいの時間なら」

「必要なかろう。森全てがアインツベルンのものなら、侵入すればすぐにばれる。誘導してもらえる、というのはただの希望的観測だが、隠れ家を探すのは弓兵の仕事でもある。私が何とかしよう」

「ま、アーチャーが言ってるんだし。今からで大丈夫なんじゃない? 私が言うのもなんだけど、一応アーチャーは弓兵だしね」

「アーチャーがすごいってのは判るけど、ほんとに大丈夫か?」

衛宮士郎の心配する声を聞き流す。些かニュアンスが違ったようにも思えたが。

「まあ、すぐに元に戻るわよ。とにかく、方針も決まったんだし早くここから出ましょう。あんまりいい場所じゃないんだし」

そう言って凛は立ち上がる。確かにいい場所ではないが、嫌いではない。これ以上は、やめよう。

「そんなに綺礼のことが気になるの? まだ、会った事もないのに」

「さあな。会ったことがない以上、なんとも言えない」

もう一度、偶像を見上げ、そして足元の血痕に視線を移す。はたして、奴は神を信じていたのか。

「そう。綺礼といえば、貴女が今着ている服も、あいつがくれたものだったわね……」

少し憮然とした顔で俺は自分の服を見つめた。セイバーや凛が着れば似合うだろう。俺としてはあまり意識したくないから除外する。

「服に、罪はない」

そう短く言葉にする。そう、この服に罪はない。セイバーの服にも、凛の服にも。もっとも、服に罪の所在を求めるなど、正気の沙汰ではないが。

「そうね。それでいいんじゃない。あんまり嬉しくないようだけど、貴女に似合ってるもの、その服」

最初の服とは違うそれを見る。セイバーに渡したものと違って、数はないらしい。今、俺が着ているのは黒のブラウスに黒のスカートだ。代わりにタイが赤。あまり、人に見られたくない。霊体で移動したかった理由にこのことがある。もっとも、どのような姿であれ、この姿をさらすのは抵抗があるのだが。考えないようにしなければ、精神が擦り切れそうなのだから。

「嬉しくない」

だから、そう言い返すのが俺には精一杯の抵抗だった。



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