昔々、ある緑に溢れた森の中にそれはあった。
向こう側への入り口でもあるそれは何物をも拒まず。されど身に包んだものには容赦がない。
それへ入っていく者は大小の差はあれど、その悉くがそしりを受け、強欲、愚者のレッテルをはられる。
それから出てきた者は大小の差はあれど、その悉くが賞賛を受け、富を、栄誉を手に入れる。
数多の人間が栄誉を求め、愚者のそしりを受けながらそれの中へと入って行った。
僅かな人間はそれの深くから生還し、望んだままの富と栄誉を手に入れた。
いつしかそれの周りには人が集まり、森は切り開かれ、街ができた。
それへ向かう人間は後を絶たず、街は日に日に広げられ、その国最大の都市として世に名を知らしめる。
そんなある日、それを攻略したという男が現れた。
男はそれの最深部まで至り、全てを目にしたと告げる。
都市の人間はそれの中で気でもふれたのかと同情を禁じ得なかったが、「至りし者」という名前を見て男の話を信じた。
男の名はシュリングベルト・デルフォール、後に国を立ち上げし者。
都市の名はダンザニア、今では王都と呼ばれる場所。
それの名は誰も知らない、皆から地下街と呼ばれるダンジョンの入口である。