自然にあふれた森の中、二つの生命がそれぞれの炎を燃やし、対峙していた。
一方は鎧を身にまとった中年の男。右足の太ももから血液が流れ出して、男の体力を奪っていた。
もう一方はワニのような頭部を持つ緑の異形。全身にびっしりと生えた鱗は太陽の光を反射してまるで濡れているようにすら見えた。
「なんで……なんで、こんなところに」
男は泣きそうな声でつぶやく。握っている剣の先が震えていた。
異形はその大きな口からよだれをたらしており、その姿勢は今にも目の前の人間に襲い掛からんと前に傾いていた。ハッハッと呼吸に合わせてその身体が上下している。
男は意を決したのか、剣の柄をさらにきつく握りしめた。
「うっ、うわぁぁぁっ」
「ギシャァァァァァッ」男と異形の叫び声がこだました。
風にざわめく森だけが、その結末を知っている。