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No.1023の一覧
[0] Fate/s,CRY,ed[無茶ゴリラ](2006/02/24 14:24)
[1] 第一話 『カズマ』[無茶ゴリラ](2006/02/08 12:32)
[2] 第ニ話 『ダチ』[無茶ゴリラ](2006/02/09 20:01)
[3] 第三話 『ランサー』[無茶ゴリラ](2006/02/24 15:26)
[4] 第四話 『聖杯戦争』[無茶ゴリラ](2006/03/12 19:46)
[5] 第五話 『■■』[無茶ゴリラ](2006/04/05 18:45)
[6] 第六話 『邂逅』[無茶ゴリラ](2006/09/13 22:27)
[7] 第七話 『はぐれ者』[無茶ゴリラ](2006/09/26 16:29)
[8] 第八話 『契約』[無茶ゴリラ](2006/09/26 19:24)
[9] 第九話 『シェルブリット』[無茶ゴリラ](2006/11/26 06:01)
[10] 第十話 『アサシン』[無茶ゴリラ](2007/01/24 15:47)
[11] 第十一話 『キャスター』[無茶ゴリラ](2011/04/07 17:41)
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[1023] Fate/s,CRY,ed
Name: 無茶ゴリラ 次を表示する
Date: 2006/02/24 14:24




――――悠久の時は、全てを飲み込んできた。




 二人の青年の憎しみも、悲しみも。




――――蒼穹の空は、全てを包み込んできた。




 彷徨える拳の行方も、憤る正義の過去も。




――――失われた大地は、全てを受け入れてきた。




 無茶で無謀な男共の欲望も、理想も。






                        Fate/s,CRY,ed

                          第零話

                        『ワタルモノタチ』






 果てしなく広大な極彩色の空間。

 地面も無ければ壁も無く、空すら無い。

 故に、上下の概念が無く。重力さえ無い。

 在るのは、ただ深遠に広がる虹色の空間。

 正常な神経の持ち主ならば、数分で気が触れてしまうかもしれない。


 そんな空間の中に、二人の男が居た。

 否、漂っていた……と言った方が良いだろうか。

 それも当然と言えば当然。

 なにせ重力が無いのだ。

 そして、足場になるような物も無い。

 だから、まるで宇宙遊泳をするかの様に二人は漂っていた――――――――。








――――――許さねぇ……。




 二人の内の片割れは、そう思った。

 疼く右腕と右眼を無視して、唯一開く左眼をギラつかせながら。



 守るモノは既に無い。

 長年の相棒であった悪友も、逝ってしまった。



 別に、ソレが初めてという訳でもない。

 痛みも、裏切りも、別れも、今まで幾度と無く味わってきた。




――――――けどヨォ…………!




 緩みかけていた拳を再び握り締め、その男は顔を上げる。

 諦念染みた考えを振り払うかの様に、もう一人の男を睨み付ける。




――――――アイツだけはッ! 目の前に居る、このヤロォだけは絶対に許せねぇ!!




 男は拳を振り上げる。

 荒々しいまでに振り翳す。




――――――ヤロォも、そう思ってるはずだッ!!




 胸を突き上げてくる激情のままに、男は拳を振り下ろす。

 眼前を漂う、もう一人の男に向かって。




 激情の拳を奮う男の名は――――――カズマ。




 拳に生きる男であった。








――――――なんだ……此処は?




 二人の内の片割れは、そう思った。

 疼く額の傷を無視して、状況を確認する。


 少し前の方を、男が漂っている。

 間違いなく、先ほどまで自分と戦闘を繰り広げていた男だ。


 しかし、こんな空間は知らない。

 自分が踏み締めていたはずの赤茶けた大地は、何処に行ってしまったのだろうか。





 ふと、そこで気付いた。

 前を浮かぶ男―――カズマの背後から、強烈な存在感を感じる。




――――――アレは……!




 男は愕然とした。

 徐々に姿を現す、その存在に。




――――――まさか……ッ!




 知らず知らず、唇が震える。

 揺れる瞳は、その存在の姿をハッキリと捉えていた。




 右腕が黒く、左腕は白い。

 雷を伴った奇妙なヒトガタ。




 男の脳裏に、母の死に様がよぎる。


 あの日あの時、自分から大切なモノを奪って行った者。

 自分に、正義と復讐を誓わせた者。



 ソレは、己が仇。




――――――キ、貴様……ッ!




 上手く噛み合わない歯を鳴らしながら、男は眼を見開く。

 血液が沸騰していた。

 余りにも原始的で、攻撃的な感情が胸を突く。



 憎しみ―――と呼ばれるモノが男の思考を満たしていく。




――――――キサマァァアァァッ!!




 一瞬で己の能力を開放し、己が分身を顕現させる。

 此処が何処なのか、などという疑問は既に吹き飛んでいた。


 “憎い”などという言葉では生温い。生温すぎる。

 それ程の激情が、男の中に渦巻いていた。


 一直線、最短距離を以って仇に突っ込む。




 しかし、そこで立ち塞がる者が居る。




 拳の男、カズマ。




 無視をするなと言わんばかりに、カズマは拳を振りかざして突撃してくる。

 男は、仇に叩き込むはずであった拳を、カズマの拳に合わせた。




 拳と拳の激突が、極彩色の空間を揺るがす。




 復讐の拳を奮う男の名は――――――劉鳳。




 正義に生きる男であった。










 赤茶けた荒野に、そそり立つ光の柱。



 ソレを見下ろすかの様に、一人の老人が宙を浮いている。


「若いな……若造共」


 ニヤリ、と歯を見せる初老の男。



 老人が此処に来たのは偶然で、ただの暇潰しでもあった。

 しかし、予想以上に面白いモノが見れた。



 老人の眼に映るのは、拳をぶつけ合う二人の男。

 その光景は、光の柱の中で行われている事であったが、老人には見えていた。



「刹那の感情に身を任せ、己の全てを叩き込む。
 そう、これこそが……この姿こそが……」



 クッ、と喉を鳴らす。

 赤い瞳をニヤつかせながら、老人は二人の男に、かつての己を幻視した。



 気に入らない、と笑って死地に赴いた事もあった。

 堕ちてくる月に向かっていった事もあった。



 闘う理由は、いつだって単純で。

 立ち上がる理由など、別に必要無かった。



 ずっと、自分勝手に生きてきた。

 そんな昔の自分に、この二人の男は良く似ている。




――――――しかし、同じ世界に似たような“馬鹿”が二人も居るとは……。




 もう一度、喉を鳴らす。



 これほどの“馬鹿”が同じ世界に二人も居る。

 その事実が、老人を酷く愉快にさせていた。


「クククッ。じゃが……その覚悟、一体どれ程のモノか」


 老人が、懐から不可思議な短剣を取り出す。

 宝石を削りだして作られたかの様な、豪奢な短剣。


 どうやら、いらぬ悪戯心が芽生えたらしい。


「生と死の狭間で揉まれてこい」


 振りかざした宝石の剣が、徐々に輝きを増してゆく。


「それでも……それでも揺るがなかったならば、また会おう」


 眼も眩まんばかりの光を湛えた剣が、老人の手によって薙ぎ払われる。




「若造共よ…………ッ!」




 老人の声と共に、光の柱は無限大に膨れ上がってゆく。

 天を衝く極光が放射状に拡散する様は、人に成し得る業ではない。

 やがて光は老人をも飲み込み、世界を純白に染め上げる。



 その日その時その世界で―――ひとつの奇跡が行使された。











 その日、言峰綺礼は雨の音を聞いていた。

 シトシトと降り注ぐ小粒の雨の中、何をするわけでもなく教会前の広場で立ち尽くしている。


「…………」


 小雨の中、無言で佇む言峰。

 その長身を包む神父服はずぶ濡れで、長時間そうしている事が窺える。

 もうすぐ二月に入るとはいえ、矢張り一月の雨は冷たい。

 それでも、彼は立ち続ける。

 ナニカを待っているかの様に。


「酔狂だと思うかね? ランサー」


 一人ごちる神父服。

 誰に問い掛けているのか、と首を傾げたくなる場面であるが。

 しかし、神父服の隣。何も無い空間から返事は返ってきた。


「知るかよ」


 素っ気無い、男の声。

 少しの苛立ちを滲ませたその声に、言峰は口の端を吊り上げる。

 見る者に不快感を与える、不吉な笑み。


「それは残念だ。実を言うと、私も何故こんな事をしているのか理解できなくてね。
 お前の意見を聞こうと思ったのだが……」

「あぁ!?」


 訝しげな声が言峰の言葉を遮った。

 困惑の空気が、その場を包んでゆく。


 十秒か、二十秒か。


 気まずい雰囲気の中、佇む言峰と“ランサー”と呼ばれた見えないナニカ。

 沈黙と静寂が支配するその場の空気を打ち破ったのは、言峰でもなく、見えないナニカでもなかった。



 ドシャリ、という何かが崩れ落ちる音。



 言峰は前方を見やると、人が倒れていた。


「……?」


 先ほどまで、周囲100メートルに人影は無かった。

 それに、この教会に来るのならば基本的に一本道だ。

 見逃すはずも無い。



 しかし、いつの間にやら倒れ付した人間が其処に居る。


「……なるほど、胸騒ぎの原因はこの者か」


 そう言いながら、言峰は近づいて行く。

 カツカツと規則正しい靴音を響かせながら。

 果てしなく不気味な笑みを浮かべながら。



 その様子は、新しい玩具を買ってもらった子供の様。



「ようこそ。
 彷徨える子羊よ……」



 そう呟いて、言峰は男を担いだ。

 ごう、と突風が吹き、神父服が大げさにはためく。



 ―――空まで哂ってやがる。

 何も無い空間から、そんな呟きが聞こえた。



 担がれた、その男の右手にはボロボロの黒いグローブが一つ。




 拳が砕けたかの様に、ささくれ立っていた――――。









 その日、衛宮士郎は雨の音を聞いていた。

 傘を差して、小降りの雨の中を足早に歩く。



―――バイト帰り。

 いつもの家路である。



 しかし。


「なんだ……この感じ?」


 胸騒ぎ、とでも言えばいいのだろうか。

 そんな圧迫感とも焦燥感ともつかぬ強迫観念に急かされて、
衛宮士郎は早足で歩いていた。



 シトシトと、絶え間なく降り注ぐ雨を厭わしく思いながら、ただ歩く。

 最後の角を曲がり、自宅が見えた所で、士郎はピタリと立ち止まった。


「人……ッ!?」


 自宅の玄関先で、倒れている男が一人。

 士郎は傘を投げ捨てて、男に走り寄る。


「大丈夫ですか!?」


 うつ伏せに倒れていた男を助け起こし、問い掛けてみるが反応が無い。


「……ッ!」


 危険なモノを感じ取った士郎は、直ぐに男を担いで家の中に駆け込んだ。



 今日は家に夕食を作りに来る後輩も、たかりに来る虎も居ない。

 この事を幸いと思うべきなのか、不幸と思うべきなのか……。




 ごう、と突風が吹き、男の着ている制服が大げさにはためく。




 担がれた、その男の腕には“HOLY”と刻まれた腕章が一つ。




 虚しく、その存在を輝かせていた――――。








************




あとがきっぽいもの




どうもはじめまして、無茶ゴリラと申します。
今回、スクライドとのクロスを執筆させていただく事になりました。
まだまだ初心者ゆえ、見苦しい点などが目立つと思いますが、
どうかこれから宜しくお願いいたします。


無茶ゴリラでした。






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