<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.10069の一覧
[0] メガトンの修理屋[taka234Me](2014/05/04 10:37)
[1] メガトンの修理屋 第1話 Valutの穴蔵からアイツはやって来た[taka234Me](2012/02/07 13:33)
[2] 第2話 メガトンからアイツは旅立って行った[taka234Me](2009/07/10 19:46)
[3] 第3話 雑貨店からアイツは地雷を拾いに行った[taka234Me](2009/07/08 21:09)
[4] 第4話 メガトンからアイツは蟹を観察しに行った[taka234Me](2009/07/10 02:11)
[5] 第5話 メガトンから俺は馬鹿を助けに出た[taka234Me](2009/07/15 02:54)
[6] 第6話 グレイディッチから餓鬼は厄介事を持ってきた[taka235Me](2009/07/22 01:45)
[7] 第7話 テンペニータワーから俺はロブコ施設へ探索に入った[taka234Me](2009/07/28 03:49)
[8] 第8話 市街地からアイツは西部へと横断していった[taka234Me](2009/08/09 21:53)
[9] 第9話 タワーから馬鹿はグール達のねぐらへと潜入していった(らしい)[taka234Me](2009/09/07 03:56)
[12] 第10話 Vault112から俺達はトランキル・レーンに囚われていたようだ[taka234Me](2009/10/12 03:08)
[13] 第11話 Vault112から俺達はリベットシティへと横断していった(No.1)[taka234Me](2009/10/21 03:32)
[14] 第12話 Vault112から俺達はリベットシティへと横断していった(No.2)[taka234Me](2009/11/15 05:49)
[15] 第13話 Vault112から俺達はリベットシティへと横断していった(No.3)[taka234Me](2009/11/15 05:55)
[16] 第14話 Vault112から俺達はリベットシティへと横断していった(No.4)[taka234Me](2009/11/29 04:38)
[17] 第15話 ジェファーソンメモリアルへやって来た俺達は浄化プロジェクトを開始した[taka234Me](2009/12/27 23:45)
[18] 第16話 リベットシティから逃げ出した修理屋は帰還する場所を見失った[taka234Me](2009/12/28 00:32)
[19] 第17話 ポトマック川を渡河した修理屋は要塞で思わぬ再会をした[taka234Me](2010/01/09 23:17)
[20] 第18話 要塞を旅立った2人はウルトラマーケットの手前で口喧嘩をした[taka234Me](2010/01/27 20:20)
[21] 第19話 メガトンに着いた2人は自分の故郷の変貌に驚愕した(前編)[taka234Me](2010/02/11 21:37)
[22] 第20話 メガトンに着いた2人は自分の故郷の変貌に驚愕した(中編)[taka234Me](2010/02/18 12:38)
[23] 第21話 メガトンに着いた2人は自分の故郷の変貌に驚愕した(後編)[taka234Me](2010/02/24 04:51)
[24] 第22話 リトルランプライトを目指した2人は荒野で死神と遭遇した[taka234Me](2010/03/08 20:54)
[25] 第23話 リトルランプライトを通過した2人はVault87へと突入した[taka234Me](2010/03/21 21:32)
[26] 第24話 Vault87へ突入した修理屋は、運命の出会いを果たした[taka234Me](2010/04/03 17:24)
[27] 第25話 『G.E.C.K.』を手に入れた2人は、人生最大のピンチを迎えた[taka234Me](2010/05/02 12:25)
[28] 第26話 エンクレイヴに捕縛された2人は、怪しい御人に怪しい取引を持ちかけられた[taka234Me](2010/05/17 02:11)
[29] 第27話 レイヴン・ロックに連れ込まれた2人は、恐るべき存在と出会った(前編)[taka234Me](2010/07/07 00:55)
[30] 第28話 レイヴン・ロックに連れ込まれた2人は、恐るべき存在と出会った(後編)[taka234Me](2010/09/20 03:15)
[32] 第29話 全てを滅ぼそうとするエデンを、2人は民主主義の旗手と共に迎え撃った(No.1)[taka234Me](2011/01/18 21:31)
[33] 第29話 全てを滅ぼそうとするエデンを、2人は民主主義の旗手と共に迎え撃った(No.2)[taka234Me](2011/07/09 17:26)
[34] 第30話 全てを滅ぼそうとするエデンを、2人は民主主義の旗手と共に迎え撃った(No.3)[taka234Me](2011/08/01 19:39)
[35] 第31話 俺達は清浄なる水を荒野へもたらす為に、浄化プロジェクトを取り戻した 【メインクエスト完結】[taka234Me](2011/08/12 00:28)
[36] メガトンの修理屋後日談:フォークスとキャピタル・ウェイストランド[taka234Me](2011/08/20 03:59)
[37] メガトンの修理屋後日談:その後の二人[taka234Me](2011/08/26 01:17)
[38] 設定資料 メガトンの修理屋[taka234Me](2012/01/28 09:37)
[39] new vegas外伝 医師アルケイド・ギャノンの憂鬱[taka234Me](2011/10/28 08:51)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[10069] メガトンの修理屋 第1話 Valutの穴蔵からアイツはやって来た
Name: taka234Me◆6742ef9e ID:142ad80a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/07 13:33


物心着いた頃から、俺はこの擂り鉢状のクレーターに張り付いたバラックの街メガトンに住んでいる。
生みの親父は育ての親父と知り合いだったスカベンジャーらしい。
生みの親が拾ってきた機械を育ての親父が直して売る。そんな関係だったとか何とか。

んで、生みの親父が廃墟でミスして重傷を負い、メガトンまで逃げ帰って来た所で逝った。
そして育ての親父は天涯孤独となった俺を引き取り、ロボット整備士として育て上げた。
酒好きで良く俺を殴ったが、腕は良かったしこんな世知辛いこと極まりない世界で血縁の無いガキを育ててくれたんだ。
今でも親父には感謝している。

親父がモリアティの酒場近くのフェンスから酔った勢いで転落死した後、俺は親父の家業を引き継いだ。
メガトンの市長兼保安官であるルーカス・シムズの要請でもあり、俺自身が生きていく為の決断でもあった。
集落にとって技術者は手放したくない人材だ。だからフラフラやって来る入植者には冷たいメガトンの街も、俺みたいな手に職を持つ者には結構優しい。


そんなこんなで俺はメガトンからはあまり出ず、親父の残した工房で戦前の機械を弄くり回す日々を過ごしていた。
俺はそんな日常がずっと続くと思っていた。そう、思っていたんだ。







第1話 Valutの穴蔵からアイツはやって来た







その日、俺は何時も通りに入手した廃棄ロボをばらして予備パーツへと変えていた。

「ち、聞こえづらいなぁ……」

修理に修理を重ねた年季もののラジオをパンパンと叩くが、ノイズだらけの放送は一向に改まらない。
最近はずっとこんな調子だ。スリードックのトークは真剣に聞く分には下らないが、作業中に聞く分には丁度いい。

仕方がないので、ギャラクシー・ニュース・ラジオの他でまともに聞こえるラジオにチューニングを合わせる。

『アメリカを蘇らせるのは唯一無二の存在たるエンクレイヴの仕事だ。君達の手は患わせない』

ありゃりゃ、大統領閣下の演説中かよ。
合間合間に入る曲は結構気に入っているんだけどな。
俺はラジオの電源を切ると、溜息を吐きながら部品分けの作業を続ける。
久し振りにいい状態で手に入った野良プロテクトロンだ。Dr.ホフのキャラバンガードが仕留めた奴らしい。

「おーい、今時間あるかい?」

ドンドンドンドンドンとドアが叩かれ、俺は機械いじりを止めた。
工房入り口の磨り硝子に人影が差し込む。
天上に張り付いているアンと、工房の片隅に居るクルの銃口がすっと入り口の方に向く。
しかし俺は聞き覚えのある声と、来客用の『ドアを五回叩く』合図を見て、傍らに置いてある端末を弄りアンとクルに警戒体勢を解除させた。
工具入れの横に忍ばせてあるレーザートーチを改造したレーザーピストルを使用する事も無いだろう。多分。

「入ってもいいよビリーさん。鉛玉もレーザーも飛ばないから安心しな」
「相変わらず用心深い奴だなぁ……」

ドアをゆっくりと開けて顔を出したのは、眼帯で片目を覆ったひげ面の男だった。
彼はビリー・クリール。俺の知り合いであるモイラ姐さんの店を初めとする、メガトンの店舗にキャラバン商人の商品を卸している仲買人だ。

「で、どうしたんだい」
「お前にお客さんだ。いつもの、アウトキャストの御方々さ」

ビリーの表情は苦々しげだ。キャラバン相手だと結構愛想がいいのに。
まぁ、確かに厄介な客ではあるけどな。それでもお客はお客だ。
前みたいに工房の前まで押し掛けられ、入り口で武装した分隊に包囲されて押し問答されるよりゃずっと紳士的だ。

「解った。手っ取り早く済ませるさ」
「ああ、そうしてくれ。早いトコ立ち去ってくれないとみんな怯えるんだ。頼むよ」
「そんな嫌な顔しないでくれよ。俺が対応してるから、あいつら街に入って来ないんだからさぁ」

そんな事を言いつつ、俺は整備道具を一式入れた工具箱と手押し車を担ぎ、腰のホルスターにレーザーピストルを指し込む。
町中とはいえ、ろくでなしやチンピラ、スリなどを行おうとする輩は結構居る。用心するに越した事はない。
俺は最後に壁際の小型端末を弄り、識別信号を所持している者以外は射撃を行う様アンとクルに指示を出してから工房を出た。

無論、入り口の鍵は三重にかけて、だ。
こそ泥にでも這入り込まれて、あちこちに弾痕が出来た工房と転がっている射殺死体を片付けるのは嫌だからな。





昼時のメガトンの入り口はそれなりに人通りがある。
日中は解放される街の扉を、雑多な人種と職業の人間が出入りしている。
流れ者、旅商人、入植希望者、傭兵、スカベンジャー、山師、ハンター、服装も性別も実に様々だ。
問題起こす奴とレイダーと奴隷商人とスーパーミュータントはお断り。
無理に押し入ろうとすれば自警団と警備ロボットが放つ弾雨で丁重にお帰り願っている。

入り口で延々と案内用のボイスを垂れ流しているプロテクトロンの副官ウェルド。
機械式の門の上に設えた監視所で小銃を手に周囲を監視してるストックホルムを始めとする自警団。
バラモンを連れた商隊達が街から出て来た住人やビリーを初めとする仲買人と取引をし、取引現場と周囲をキャラバンガード達が鋭い目で監視している。
広場の片隅で物乞いのミッキーが綺麗な水を乞うているが、相手にする奴は全く居ない。懲りない奴だよなぁアイツも。
俺が知る限り、アイツが誰かから施しを得たという話を聞いた事がない。
その割にゃ数ヶ月間此処で生き延びている。
実はレイダーの偵察員かもしれないな。
まぁ、実際にそうだったら副官ウェルドに始末して貰わないといけないが。

「奴らはあそこに居る。じゃ、頼むぞ。俺はキャラバン隊と商談を付けなきゃいけないんでな」

門を出た所でビリーはさっさと別の方に行ってしまった。
薄情者、と言いたいところだが、誰だってあんな連中と深いお付き合いなんてしたいとは思わないだろう。


「修理屋、仕事だ」

むっつりとした、威圧感溢れる声音。
黙っていても向けられてくる負の重圧を伴った雰囲気。
メガトンの入り口の端で彼らは俺を待っていた。

黒と赤でコーティングしたパワーアーマースーツに身を包み、手にはアサルトライフルかレーザーライフルが握られている。
中にはロケットランチャーやグレネードボックスを背中に担いでいたりもする。かなりの重武装だ。
これだけの装備をしているのは市街地側で活動しているエルダー派のBrotherhood of Steelか、タロン・カンパニーの愚連隊共位だろう。

彼らの名はアウトキャスト。かつてはエルダー・リオンズ率いるBrotherhood of Steelに居た連中だ。
Brotherhood of Steel。西の果てからやって来た、荒野のあちこちに眠る科学技術を蒐集して廻っている集団だ。
断じて言うが正義の味方なんかじゃない。スリードックは良いDJだが、奴らへの賛美だけはどうにも好かない。

何故かは知らないがエルダーと袂を別った彼らは、主に市街地ではなく市街地の外苑に広がる荒野の方で活動している。
勿論、メガトンとその周囲も彼らの活動範囲だ。
背中の背嚢が大きく膨らんでいる所を見ると、探索を終えて彼らの拠点に帰る途中なのだろう。
メガトンから少し離れた場所に、軍事基地跡に作られたアウトキャストの拠点があるのだ。

それなりに人通りと人の集まりがある場所なのに、彼らの周りには人気がない。
誰も彼もが、横目で見ては足早に遠離っていく。ま、確かにそうするよな普通なら。
水が欲しくて仕方がないミッキーの野郎は、1回駄目元で頼み込んで水の代わりに威嚇射撃を恵んで貰ったらしい。

「これを直せるかどうか見るんだ。可能なら動けるようにしてくれ」

アウトキャストの連中の俺を見る視線は……一般的なウェイストランド人を見る温度よりはちょっぴり温かい……とは思いたい。
「助けられる事しか能の無い」一般人なんざ助ける価値なんて無いと断言してる彼らからすれば、ちっとは役に立つ存在なのだろう。
アウトキャストは冷徹で差別的であるが、働きに対しての報酬や等価交換を基本的には守る。
Brotherhood of Steelのエルダー派だろうがアウトキャスト派だろうが、物資や武器の調達を全て自分達だけで行える訳ではない。
現地住民から買い取ったりする必要はどうしても発生する……幾ら武力を持っていてもこの地の商売のルールは守らなければならないのだ。
違いと言えば、アウトキャスト共の方が頑固でなかなか『現地民』を頼ろうとはしないって所か。

だから俺がアウトキャストに呼ばれるとすれば、結構面倒な事態なのだ。

「あのさ、隊長さん」

俺達の視線を浴びているのはプロテクトロン、二足歩行のロボットだ。
戦前に存在したロプコっていうロボット製造会社が生産してた汎用型ロボットだ。
俺も今まで沢山弄ったりばらしたり直したりしている。
軍用と産業用と警備用、様々な用途にしようされ、世界が崩壊した今でも稼働機が人間に利用されているのだ。
その黒と赤で塗装されたズングリとした機体のあっちこっちに穴が開いている。
近くにある小学校を根城にしているレイダーとの交戦時に損傷したらしい。
ロボット整備に心得のある奴が応急処置をして、騙し騙しメガトンまで連れてきたのはいいが入り口に着いた途端に動けなくなった。
アウトキャストの人員は基本的に科学技術への知識は高い。
しかし本格的なロボットの整備や修理を行うのはスクライブと呼ばれる科学者連中だ。
スクライブ達が拠点や研究室から出て来るのは重要な技術が眠る施設や装置が見つかった時だけだ。
普通の巡回や捜索には出て来ない。
だから、俺みたいな修理屋に(本当に)渋々頼る事もあるのだ。
こんな風に派手に壊れて応急処置程度じゃどうしようもなくなった場合は、だ。

「残念だけど中枢の方まで壊れてる……修理は難しいと思うけど?」

俺の返事を聞いた分隊の指揮官であるパワースーツ姿の男が、聞こえよがしに舌を鳴らす。
同時に探るような視線をパワーヘルメットのバイザー越しに向けて来た。
この隊長、毎度毎度俺が嘘言っているどうか見極めようとしやがる。
俺が高い修理費でも吹っ掛けようと嘘言っているのかと思っているのかねぇ。
残念、俺ぁ商売に関して嘘は言わない。
胴体にエナジー・セルの弾痕が開いていて、何カ所か重要な回路が焼き切れている。
こりゃもう、直すより新しいのを廃墟から探してきた方が楽だ。
しかし、小学校のレイダー共はレーザーピストルなんぞ持ってたのか?
精々整備がなってない中国軍の安物ピストルか、ハンターから分捕ったハンティングライフル程度しか持ってない筈だ。
タロン・カンパニーのベイビーキラー共なら光学兵器を装備してても不思議じゃないがね。

『メガトンヘヨウコソ』

副官ウェルドの耳障りな甲高い合成ボイスの声が響く。
こいつの宣伝文句は評判が悪いらしい。俺が調整してモリアティの御大がGoサインを出したのになぁ。
そんな風にどうでもいい事を考えてたら、仲間と小声でボソボソ話していたリーダーが不機嫌極まりない声音で俺に指示を出す。

「使える部品とエナジー・セル、核分裂バッテリーを取り出せ。残りは報酬と一緒にお前にくれてやる」
「了解」
「ジャンクの部品を使う時は我々の塗装を落としてから使えよ」
「……了解」

どうやらコイツはお役ご免になったようだ。
俺はさっさと仕事を始める。機嫌の悪いパワーアーマー集団なんて怒らせたくないからな。
早く仕事を終わらせて報酬を貰って、ブラス・ランタンでリスシチューとウィスキーでも啜ってから寝るか。
何だか疲れた。工房のプロテクトロンの解体は明日にしよう。


「……っぁああ~、終わったぁ」

メガトンの門を潜り、俺は思いっきり背伸びをした。
非友好的な視線を浴びながらの仕事は肩と腰に来る。
アウトキャスト達はもうメガトンに居ない。
部品を渡すと俺にキャップの入った袋を放り、挨拶の一言も言わずにさっさと立ち去った。
彼らの無愛想さなんか一々気にしてても仕方がない。
キャップが手に入ったんだからそれで良しとしよう。

俺は工房から引っ張ってきた手押し車を慎重に押しつつメガトンの街を下っていく。
ロボットの残骸は結構重い。転がしてしまったら坂を上がり下りしている連中が何人か死ぬだろうな。
不慮の事故で市民権を剥奪され、メガトンから追い出されるのは嫌だ。
なので慎重に下っていく事にする。

「ん……?」

診療所手前まで降りてきた所で珍しいものが目に映った。
辺りをキョロキョロ見渡しながら、鉄板を強いた勾配路を上がっていく若い男の姿だ。
何がどう珍しいかと言えば、そいつの着ている服だ。
よれよれだったり薄汚い暗色な入植者の襤褸切れでもない。
真っ青な汚れなんて見当たらない生地で作られたスーツをそいつは着ていたんだ。
背中にデカデカと『101』と白い数字が描かれたスーツをだ。

「驚いた……またValut101から出て来る奴が居たとは」

俺のちっこい頃、物心が付くかどうかの頃にValutから人間が出て来たっていう話を聞いた事がある。
俺はその頃の事なんざ覚えてないし、モイラ姐さんが話してた内容は正直眉唾だ。

しかし、確かに人が出て来た事は事実だ。
モリアティの御大が機嫌が良い時にValutの住人との話を聞かせてくれたし、モイラ姐さんの店にも『証拠』がある。
姐さんのセンスで彩られて台無しになった、101のジャンプスーツがカウンターの向こう側に飾ってある。


俺がぼんやりしている内にそいつは勾配路を上がりきり、モイラ姐さんの店に入っていた。
そして数秒後に小規模な爆発音が響き、聞き覚えのない野郎の悲鳴が聞こえた。多分、Valutの住人だろう。
姐さんの雇っている傭兵はあの程度の爆発じゃ悲鳴も上げないからな、慣れってのは恐ろしいぜ全く。

「ま、俺にとっちゃどうでもいい事か」

Valutという温室育ちにとって、ウェイストランドはあまりにも厳し過ぎる場所だ。
此処に来るまでに時折メガトンへ攻めてくるレイダーや、モールラットとかち合って餌にならなかっただけでも僥倖な位だ。
多分数日中には死ぬだろうと俺は思った。のたれ死にか、レイダーのバーベキューパーティの主菜かどうかは知らないが。


「さっさと残骸を工房に入れて、飯でも喰いに行くか……」




これが、奴との最初の出会いだった。




次回へ続く


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.027714967727661